今年で第6回目を迎える「
大阪総おどり」
ドラゴンボート等で色々とお世話になっているサンスポさん主催のイベントだ。
依頼があって撮りに行く事になったのだが、とは言え撮りに行くのは
今年が初めて、さていったいどんなイベントなのだろうか?
また機材の選択はどうするべきなのか?
まず思ったのは、広角系が中心だろうな、という事だ、
HPなどによれば数千人(昨年は7000人とも言われている)という参加者が
来られるらしいので、ともかく人がごちゃごちゃ、っといるイメージが撮りたい。
またこのイベントは長時間におよび、昼の1時から夜の8時までの長丁場だ。
昼はともかく夜間の撮影では高感度+大口径が必要だろう。
手ブレ補正をどうするか迷ったが、踊りということで被写体は常に動いている、
だから自分がブレてなくても被写体ブレが起こってしまう。
「よし、手ブレ補正は無しだ、電池も喰うしな・・
長時間の撮影だからできるだけ小型軽量で電池の持ちが良いカメラを
複数持って行こう・・」
というわけで選んだ機材は、OLYMPUS E-300に広角系の標準ズーム、
PENTAX *istDsに大口径中望遠、GR Digital、そして NIKON S50(コンパクト)
の4台体制だ。予備のカードやバッテリーは必要最小限で、いちおうこれでも
1000枚やそこらは軽く撮れる、1日の撮影としてはこれくらいで十分だろう。
前日にバッテリー類の充電を済ませ、準備万端だ。
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しかし、イベント当日・・大阪は大雨洪水警報が出るほどの荒天で見事に中止(汗)
順延となって翌日の開催となった。
翌日、午前中に雨が残りさらに1時間短縮されて2時からのスタートだ、
1時前に着くと、会場はところどころ水溜りが残り、大量の砂袋を積んだ
トラックが到着、スタッフによる準備も、なかなか慌しい雰囲気だ。
けど幸いにして天気は急速に回復、晴れ間も出て少し暑くなってきた、
「これは絶好の踊り日和になるな・・」
地面が乾くのはいいが、ちょっと暑すぎるかもしれない、
でもまあ、夜の部の「盆踊り」と言えば普通は真夏のイベントだから、
まあこれくらいの気温(27度くらい)だったら丁度良いくらいか・・?
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さて、「総おどり」、その第一部は「太閤おどりバトル」
太閤秀吉と対抗をかけているのだろうか?
30組程の出演者は自由なジャンルの踊りの演技を競う。
出演者の多くは大人数(少なくとも10名、多いと70名くらい)のグループで
すでに多くのグループが事前に会場に到着し事前練習に余念が無い。
見るからに阪神タイガースカラーで統一された団体が奇声をあげていれば
そりゃあ、通行人の方も驚くよなあ・・・(汗)
参加者の年齢層は10代くらいの若いチームと60代以上の2種類に
綺麗に分かれている様子だ、できれば20代くらいの女性チームが
沢山参加してくれれば嬉しいところなのだが、まあ贅沢は言うまい(笑)
・・いや、やはり今度サンスポさんに提案してみよう・・
「間違いなく来場者数増えますよ!」と・・(笑)
さて・・ 開始時間が延びたし暇だな、取材でも行くか・・
おへそを出したコスチュームで元気が良さそうな若者グループに目をつける。
「こんにちは、格好いいね! 何番目に出るの?」
「あ!、3番目です」
「(プログラムを見る・・)Vivi Popかな? 何を演(や)るの? HIP HOP?」
「はい、ViviPopです、ヒップホップというか・・え~、何て言うんだろう?」
知らない人に気軽に声を掛けれるのはスタッフパスの効果もあるのだが、
それより色々なイベントを撮り慣れてくると、参加者とか選手に案外気軽に
声をかけれるようになってくる。
会場にアマチュアカメラマンは結構多く来ているのだが、
残念ながら彼等はまず絶対と言っていいほど参加者(や選手)に声をかける
事ができない。これは多くのアマチュアカメラマンの大きな弱点であり、
結果、遠くから恐る恐る隠し撮りのようになってしまったり、撮った写真を、どこかに
発表する際などでの肖像権の問題をなかなかクリアできなくなってしまうわけだ・・
「ふ~ん、そうしたら何か演技の中でキメのポーズとかあるでしょう?
できたらそれやってよ、写真撮るから。」
「はい、じゃあ、あれやります(メンバー同士目配せする)」 ・・カシャ。
「はいOK,ありがとう! またホームページとかに載ると思いますよ」
「うわ~、ありがとうございました~」
・・・こんな調子で、いくつかのチームを廻って取材を続ける、と同時に
サンスポの公式ホームページのみならずブログへの掲載許可も貰って廻る。
・・あ、もう開始の時間だよ、早いなあ・・
「太閤おどりバトル」 予定時刻より順次スタート。
皆アマチュアの踊り手なので実力にはバラツキがあるのだが、
なによりも出演者の表情は楽しそうだ。これはなかなか良いイベントだなあ・・
阿波踊り、よさこい、演舞、ジャズダンス、エアロビ、ベリーダンス、太極拳、
河内音頭、ヒップホップ・・ etc,etc 踊りのジャンルは何でもありだ。
そして最初に思った通り、どの出演者も本当に楽しそうに踊っている。
バトルとは言っても特に優勝がどうとか、そういう順位はつけて無いのだが
約30組の2時間半以上にもなる演技がどんどん続いている。
ふう・・踊っている方も勿論大変なのだろうけど、これは撮っている方も
なかなか大変だ、ひっきりなしに次から次へ参加チームが出てくる・・(汗)
ハイペースで撮っていたら撮影枚数は恐らく1000枚を軽く越えてしまうだろうし、
趣味で撮る写真なら何枚か選んで終わりだろうけど、これはちゃんとまとめて
納品する写真なんだから、枚数が多いと後処理も時間がかかりとても大変だ。
「次は本大会初登場のベリーダンスチームです」
・・お! やったベリーダンスだ!(喜)
う、これはなかなか良いじゃあないですか。
そしたら、このチームが終ったら個別に取材に行って~、それでもう何枚か
撮らせてもらって~、ついでに掲載許可も貰ってきて~
・・さ、終った、よし、ひと呼吸置いてから取材だ(笑)
・・数分後、次のチームを何枚か撮ったところで、ベリーダンスのチームを
探して駆け寄る・・
し、しかし、そこにあった光景は、10数人程のアマチュアカメラマンが
10mくらいの距離を置いてダンサー達を遠巻きに囲んでいる様子では無いか・・
「う・・出遅れた(汗) そういえばカメラマン達の姿が見えないと思った」
で、よく見ると、その中の1人に顔見知りが・・
「あ、Tさん!」
「おお・・匠さんか、こんなところで会うとはね。ん?今日は仕事の撮影か?」
Tさんというのは、大手新聞社系の全国区の写真組織に属するアマチュア
カメラマンで、大きなフォトコンテストの上位の常連さんである。
良い機材も持っているのだが、機材ばかりではなく、周囲の人たちとは
あきらかに1段も2段も腕前のレベルの違う実力者だ。
そりゃあまあ、周囲のメンバーが「富士山の朝日」のような写真を撮って
いるところに作画意図をバリバリに効かせたスナップ的風景写真を出して
くるわけだから、勝負になるはずもない。
「Tさん、ベリーダンサーではフォトコン作品にならないのでは?(笑)」
(とは言うものの、Tさんは以前、ミスター筋肉コンテスト(?)で、出場者の筋肉を
うらやましそうに見ている男の子供の写真を出してフォトコンに入選している・・)
「あはは・・匠さんもここでサボってないで、さあ撮った撮った(笑)」
「いちおう取材なんだけどなあ~(笑)」
・・・というわけで、Tさんの妨害工作で(笑)結局ベリーダンスのチームとは
接触できず、顔出し許可も貰う暇もなく、とっても残念であった・・(苦笑)
まあいいか・・サンスポさんの方には多分載るだろうし・・
そして「太閤おどりバトル」はまだまだ続く・・
元気の良い若手チームは本当に疲れ知らずで、数分間の演目を一瞬も止まる事
なく動き続ける。
こちらはカメラは数台を持ち替えて使っている。
広角と望遠くらいズーミングで済ませられると思うだろうが、
たとえば広角でパンフォーカス、望遠で深度を浅くした撮影、というのを
交互にやろうとしたらズームリングの操作だけでなく、絞り値や、場合により
露出補正の設定変更操作なども同時にやらなくてはならない。
それだったら絞りを開放近くにした望遠をつけたボディと、
広角系ズームで絞りを少し絞り込み、逆光に備え+0.3程度露出補正を
かけてあるボディとを交互に持ち替えて撮影した方が切り替えが早い。
複数台のカメラを使うというのは、そういう意味もある。
さて、第一部も無事終了、次は第二部「メチャハッピー総おどり」である。
こちらは「大阪メチャハッピー踊り子隊」による模範演技と、参加者や
観衆を巻き込み、イベント中で最も参加者数が膨れ上がる状態となる。
「し・・しかし人が多い・・(汗)」
数千人はいるだろうか?(主催者発表で5000人)まさに「総おどり」だ。
目立っている大阪市信用金庫さんは、このイベントのスポンサーであり、
ハッピを着た職員さん約100名を投入し、会場を盛り上げてくれている。
プレス(報道)系のプロ(カメラマン)2~3人がこの輪の中に入って
撮っている姿を見て、よし、とばかり私も突入を企てるが、
大混雑の中の近接撮影では、人数の多さが表現できないと気が付き
オーバーヘッドのハイアングルでノーファンダー撮影を何枚か撮った後、
また輪の外に戻っての撮影だ。
あ、でも、せっかく入ったので、可愛いオネイサンをちょっと撮ってから・・(笑)
・・・陽も少し傾きかけ、しかしながら数千人の熱気は少しも冷めることもなく
大群集はそのまま第三部の河内音頭(盆踊り)に突入だ。
日中はISO感度を最低の100または200にして撮っていたのが
日没前となるとISOを400にセットしなおす。日没直前でISOを800とし、
日没後ではISO1600これを標準とする、さらに照明の様子をみながら
場合により暗い条件下ではISO3200を使ったり、
また明るいステージ撮影時などでは逆にISO400に下げたりする。
ISOをコロコロ変えるのは適切なシャッター速度とノイズのトレードオフであり、
いずれにしてもこのISO操作は夕方~夜間の撮影では必須だ。
今日、ISO変更が極めてやりにくいEOSを持ってこなかったのはこの問題もある。
α-7DにすればISO変更もやや楽だし手ブレ補正もあるのだが、このカメラは
初期の手ブレ補正内蔵カメラの為、その機能をONにすると電池の消耗が
激しくなるのが弱点だ。 いちおう予備のバッテリーとかを持っていたと
しても、撮影中はカメラと貴重品のみ身につける軽快な状態にしておき
予備機材などは本部のテントの中に置いておくのでいちいち肝心の時に
本部まで戻っていたら面倒だ。
だいいちやってみればわかるのだが、盆踊りの輪の中に入ってしまったら
なかなかそこから外に出るのは至難の業だ(汗)
何重にも輪になった踊り子さんたちの隙間を狙って1つ1つの輪を外に
くぐりぬける、音楽や振り(踊り)を聞きながら、見ながら、よし、ここだ、
という感じでくぐり抜けないとならない(笑)
気持ちよく踊っている人たちの邪魔をするわけにもいかないし、接触したり
するとこっちはカメラを沢山ぶらさげているわけだから大変だ。
で、慎重にくぐりぬけるとその外の輪は逆周りに廻っていたりして・・(汗)
しかし、河内音頭だけで3時間・・ ほんと参加者の方々はみな踊りが
大好きなのだろう。 一種の「トランス状態」になって踊り続ける人も多く見れる、
汗びっしょりで・・・でも気持ち良さそうだ、そして楽しそうだ。
この調子で3時間、撮り始めてからはもう7時間だ、
こっちもそろそろフラフラであるが、まあでも長時間の撮影は慣れているので、
せいぜい今夜ぐっすり寝れる程度で後には残らないだろう。
・・あ、撮った写真の選別やレタッチが・・(汗)
まあいい、また時間のあるときにやったらいい。
19時40分、最後のトリとして今回の第三部のプロデュースを行った
井筒屋小石丸師匠の登場である。
師匠の写真に対しては多少無粋であるが(汗)ここで、ちょっと写真を加工して
カメラのファインダー内のAF測距点のイメージを追加してみよう。
実際には今日持っていっているカメラはこのような5点測距の仕様では
無いのだが、まあ、測距点数の差はあれども、だいたい一般的な一眼レフの
AFのフレームはこんな調子(中央に寄った数点~十数点)であろう。
何が言いたいのかというと、ファインダーの中央部に寄った測距点では
こんな場合にどの測距点を選択しても、師匠の顔の位置にピントを
合わせることができない、ということだ。
望遠レンズは夜間の撮影においては、手ブレ対策でシャッター速度を
稼ぐために、ほぼ必ず開放で用いる事になる、すると当然ながら
大口径(中)望遠レンズでは被写界深度がかなり浅くなる。
師匠の位置から数m奥まっただけのバックの三味線や看板のあたりでは
すでに被写界深度外でボケている。
AF測距点を中央に固定してある状態では、そのままではピントが中抜け
して背景に合ってしまい師匠がボケてしまう可能性もある。
ならば、まあ、半押しAFロックをして構図を変えるのが良いのだが、
あるいはAF測距点を自動選択とすると最も距離の近い部分にピントが合うのだが、
この場合はセーフだが下手すると前を横切る人物やステージ上のスピーカーや
別のものにピントが合う危険性もある。
AF測距点を手動選択とすると、5点とか9点でジョイスティック状の
ダイヤル操作子で直接制御ができれば良いのだが、下手に多点測距だと
その選択操作そのものが面倒になるる。
つまりAFでは何をやっても余分な動作が必要となるので、
この場合のようにステージ上でほぼ動かず止まっている状況ならまだしも
昼間の踊りのチームのように常に動き回っている状態や、
あるいは、ステージ上であっても、ロックミュージシャンのように常に
動いているような場合であったら、AFの各種操作はかったるい(間に合わない)
ということになる。
だから基本的に望遠レンズによる撮影は全てMF(マニュアルフォーカス)となる。
MFであれば測距点に関係なくピントリングの操作、つまりレンズを支えて余っている
左手の操作だけで全て事足りる。
右手は基本的にはシャッターに集中したいのである。
シャッターに指をかけながらAFの測距点選択やらAFモードそのものの
変更とかを右手で行うのはあまり合理的では無いのである。
(ファインダーから目を離して操作子を捜す事になるようだとさらにまずい)
AFに頼った方が楽なのは主に広角系の場合だ、
少し絞って十分に被写界深度を確保した状態では、AFは極端に言えば
「どこかに合っていれば良い」わけであり、自動選択あるいは中央1点で
精度をかせぎながらAFロック→構図変更で十分だ。
測距点に連動した評価測光露出計測が・・とかややこしい事は言わないで十分
どうせ極端なケースでもせいぜい1/2段ほど変わる程度だ、実際にはそこまで
正確な測光アルゴリズムかどうかも、絞りの精度が追いついているかどうかも
疑問であるので、テキトーに撮って(汗)アフターレタッチでもしたら十分だ。
ともかく言いたい事はあまりAFに頼らないこと、
そしてAFが悪いからダメカメラだとか、露出の精度が悪いからダメカメラ
だとかいう評価も下さない事、要は全ては使い方次第だし、原理的に不利
な機能を不利な状況で使うというのは、カメラの問題ではなく使う側の人間に
問題があるという事だ。
カメラの原理をよく理解し、せっかくの機能はちゃんとその機能が発揮できる
状況で使ってあげるのが一番良いという事だ。
・・・わざわざ苦手な事をやらす必要もあるまい。
最近特にAFに「だけ」頼りきっているアマチュアカメラマンを
大変多く見かけるので、すごく気になっている。
MF操作なんかなんら難しいことないのに、それをやろうともせず
AFが合いにくい悪条件やそもそもAFなんか使うべき状況ではないときに
「AFがおかしい」とカメラに文句を言う・・・
そりゃ変な話だろう? まずはカメラのことをちゃんと良く知るのが先決だ。
AFを使っても顔に合わないとか言っているユーザーが増えてくると、
このままでいくと1~2年後には多くの(初級)一眼レフに顔認識AF機能が
搭載されるようになってくるかもしれない(汗)
まあ余計な機能がついていても使わなければ良いのだが、本来の撮影の為の
基本性能のアップではなく付加機能、特に不必要なまでの自動化を推し進める
というのは一眼レフの正常な進化の方向性では無いと思うし、
顔認識のためにわざわざライブビュー機構までつけて撮影前映像情報から
顔を解析する・・そうした余分な機能・機構をユーザーが付加価値と見なせない
ならば、そういう部分にはお金は払いたくないというのが正直な気持ちだ・・
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最後は「総おどり」から脱線してしまったが、まあともかく
「2008大阪総おどり」なかなか楽しいイベントであった、
そして思ったのはやはり「大阪人(関西人)の庶民的なノリ」がこのイベントに
色濃く現れていることだ。
最近いろいろ元気が無い大阪ではあるのだが、こういうイベントを機に
またちょっとハッピーに元気に皆がなっていったら良いのだろうな・・