
今日は、コシナツアイスの P85/1.4を持ち出してモデルさんの撮影だ。
このレンズは、Y/C(ヤシコン、ヤシカコンタックス)時代の名レンズ
「プラナー85/1.4」を近年、コシナがニコン用マウント(ZF)として復活
させたものである。 レンズ構成はヤシコン時代とほぼイコールで
コーティング等に微妙な差がある程度。
元々描写力には定評のあるレンズであるが、MFであり、被写界深度は
極めて浅く、ピント合わせがかなり困難なレンズとしてヤシコン時代から
悪名に近い状態で有名だ。
そしてデジタル一眼の小さいファインダー視野ではなおさらピント合わせは
厳しく歩留まりが悪くなる(=ピンボケ多発)はやむを得ない。
レンズの外観仕上げはコシナツアイスになってかなり精密感と高級感が高い、
ただその分お値段も高く、新しいレンズであるし中古も出回っていないので
ヤシコンのP85/1.4の中古に比べると2倍くらいの価格になってしまう(汗)
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今回のモデルさんの
Syuriさんは女優養成の学校で学びながら、同時に
看護士をも目指している、プロのモデルさんの卵といったところか。
まだ若く、将来に色々な夢を持っているところが好感が持てる。
撮影は、以前の記事でも紹介した写真ギャラリーバーで行なわれた。
バーという環境を活かし、通常のモデル撮影の場ではなかなか得られにくい
シーンが撮れるのが最大のメリットだ。

人物、特に美人のモデルさんを撮影するとなったら、撮り慣れない人の場合
撮っている方が緊張してしまう事も多いであろう、そんな場合、カメラマンの
緊張はモデルさんにも伝わって悪循環を引き起こす。
また、モデルさんを単なるお人形さんのように、物体としての被写体としか
見ていないという人も多いであろう。
その2点はカメラやレンズの設定をどうするとか、照明のセッティングを
どうするとか、といった技術的な問題以前に、非常に重要な課題となる。
モデルさんだって血の通った人間なのであるから、撮る際にも様々な
コミュニケーションをはかりながら、撮る方、撮られる方のイメージを
合致させる事が大切だ。
先日の
成人式の撮影の記事で、その時の新成人のI嬢は衣装に応じて
自分なりのイメージを頭の中に描いていたという事を書いたのであるが、
相手がプロのモデルさんとは言え、撮る際にはそうしたシナリオの
イメージのようなものを伝えつつ、あるいはその場で創造しつつ、
共有していくのが良いと思う。
今回の1つのテーマは、「バーで彼氏を待つ」というイメージシナリオだ。
まだ若い Syuriさんであるから、例えば「失恋して一人バーで飲む女」という
イメージは大人びていてあまり似合わない。
一見クールな雰囲気のある彼女ではあるのだが、ここはあえてクールな中での
子供っぽさ、というか、ちょっと背伸びした雰囲気、そのあたりのイメージで
撮っていきたいと思った。

開店前のバーなので、アングルやシチュエーションには自由度がある、
このブログの「バーシリーズ」のように、実際にお客さんのいるところで
実際の状況でスナップ的に撮るよりは遥かに楽といえば楽なのだが、
自由度が高いという事は、裏を返せば、「何かシナリオやテーマを定めて
おかないと、どう撮ったら良いかわからない」という事にも繋がってしまう。
そして多少現実離れしたシチュエーションではあるが、バーのカウンター
の上に乗って寝転んでもらうというような事も自由にできるのは楽しい。
今回はフラッシュは使わない、自然光やアベイラブルライト(=その場で
準備できる光、自然光やごくシンプルな照明など)の方が、さらに自然で
あるのだが、夕方の窓からの外光はやはり足りず、バー内の人工照明や、
スタジオ用の照明設備などを補助に使う。
この写真ギャラリーバーのマスターの東野さんはプロカメラマンなので
撮影に関する設備が充実しているのが頼もしいのであるが、
それでも、私的には、今日は自分なりの写真が撮りたいのであるから、
バックスクリーンの前でクネクネと魅惑的なポーズをしているような
一般的なモデルさん写真を撮りたいという気持ちは殆ど無い。
ZFレンズをデジタルで使う為のボディはD2Hを用意している、
現在は超ド級カメラのD3が発売されたところなので、すでにかなりの旧機種と
なってしまったが、少画素ながらも秒8コマの高速連写ができ、MFのニコン
マウントレンズを使った場合でも、レンズ情報手動入力機能により、
ちゃんと露出計が動作し開放測光ができる。
D3は魅力的なカメラだが、高すぎて今は手が出ない。
デジタル機器であるパソコンや携帯などを買い換える時と同様、デジカメは
2世代進化したら買い換えるくらいの気持ちがちょうど良いであろう。
D4が出たらD4にするかD3の中古を買うか迷えば良いくらいのペースだ。
D2Hはもう古いとは言えまだ3年程しか使っていない、
高価なカメラを3年ごときで買い換えていたらやはりそれはどう考えても
サイクルが早すぎるのではなかろうか? 市場の流れを見極めるのは重要
だが、単にその事に流されていてもしかたが無い。
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P85/1.4ZFレンズ絞りの値は、開放よりやや絞ったあたり、f2近辺を中心に使う、
開放では深度が浅すぎるし、このレンズの利用方法としてはY/C時代から
f2~f4の間で使うというのが、定番的なスタイルとして確立している。
ISO感度はその場の明るさに合わせ400に設定。
営業中のバーであれば暗い照明下で絞り開放+高感度を強いられてしまうが
幸いにしてある程度の照明は得られ、いざとなったらカメラセッティングを
変えるよりも照明セッティングを変える事ができるので、ある意味楽だ。
これでシャッター速度は数百分の1秒という十分な値が得られているので
さらに若干絞る事も可能であるが、せっかくボケ質の良いプラナーを持って
きているので、あくまで美味しい絞り値のあたりで撮りたいという事だ。
ちなみにこのレンズは絞り値と被写体撮影距離、背景距離の組み合わせで
ボケ質が大きく劣化(破綻)するポイントがあるが、こと今回の人物撮影に限って
言えば、その条件はあまり発生しないであろう。
単焦点の85mmは、ポートレートレンズと呼ばれ、モデルさんあるいは
被写体となる人物との距離感を適切に保ち、コミュニケーションを取れる
距離で撮影でき、かつ大口径であればその大きなボケ量で背景整理を
する事ができるのが特徴であるのだが、(APS-Cサイズ)デジタルにおいては、
画角的には望遠レンズの範疇になってしまい、モデルさんとの距離は遠くなる、
でもまあ、だからと言って、50/1.4やその近辺の大口径標準を持ってきて
銀塩換算85mm前後の画角に合わせてまでセッティングする必要は
この場ではあまり関係ない・・撮影位置の自由度が高いからだ。
ただ、これも以前の記事に書いた事があるが、望遠レンズではアングルの
自由度は制限される、真上から見下ろして撮ったり、ローアングルから
見上げて撮るような事は難しいわけだ。
だから、そういう意味では、50/1.4や、もう少し短い、たとえば35/1.4あたりの
大口径レンズの方がアングル的な自由度が高く使いやすい場合もある。
しかしながら35/1.4は大口径といえども、やはり焦点距離が短いから
85/1.4に比べて大きな背景ボケ量は得られないので、結局、何を優先するかで
機材(レンズ)の選択は変わってくる。
まあレンズを2本持ってくれば済む話なのであるが、ここ数年は、単焦点1本だけで
撮るスタイルがすっかり定着してしまったので、チマチマとレンズ交換はせず、
今持っているレンズで撮れる写真を撮るという考え方だ。
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撮影中、Syuriさんに言うのは、「こんなポーズをしてください」という指示
ではなく、どちらかというとイメージを伝える事がほとんどだ。
「じゃ、今度は、彼氏がなかなか来ないでちょっと寂しそうな不安な感じ」
とかそういう類の事だ。

モデル撮影会などでは「こんなポーズしてください」とか「目線ください」とか
そんな指示が殆どだと思うが、じゃあ、そういう撮り方をする考え方の
根拠はどこにあるのだろう? 最初に言ったとおりモデルさんはお人形さんでは
無いのであるから、撮り手側の考えや想像(あるいは妄想?・・笑)だけで
モデルさんの持っている(撮られる)イメージと一致する事は無いのでは
なかろうか? そりゃあモデルさんは皆美女であるから、綺麗にカワイク撮る
のは難しく無いとは思うが、写真とは花や風景やあるいは美女をただ単に綺麗に
撮るものではない、というのはいつもこのブログで言っている通り。
それから、もう1つ重要なポイントがある、
良く(男性が)女性を撮影する際に言われるアドバイスで
「被写体の女性は自分の恋人だと思え」というのがあると思う。
これは何を意味するか? と言えば・・
まあ、異性を見るとき、とくに男性が女性を見るとき、その女性のどんな
表情、仕草、あるいは顔や体の部分に異性を感じるか、つまり「好きか」という
事につきると思う。
自分の恋人(彼女)であれば、彼女のこんなところが好き、というのは言葉には
出さないまでも男性は感覚的には明確に持っていると思う。
で、どんなところが好きか、というのが、それがすなわちその男性の個性に
繋がってくる。異性の好みは十人十色であると同時に、同じ異性を見た時にも
人によって、その異性に対し自分が好むポイントが変わってくるという事だ。
だから、被写体の女性(異性)を自分の恋人だと思え、
というのはすなわち、その被写体が自分にとって好ましく思えるような
パーツ、アングル、シチュエーション、など様々な要素からなる「写真」を
個性的な視点で創りあげるという事になってくる。
それは「ポーズ」や「目線」という外面的な要素のみならず、内面やシナリオ
やそれらを組み合わせた、いろいろなシチュエーションが無限に考えられる
という事だ。
そして、たとえば女性(異性)にラブレターを出す時の事を考えてみたら良い、
ラブレターではなく、告白でも別に同じ事なのだが、その女性(異性)に対し
自分が好きなポイントを書く(言う)こともあるだろうし、
書かない(言わない)までも、外面や内面を併せ持ったその女性(異性)の
好きな点を色々考えたりするだろうし、そういう点をなんらかの形で相手に
伝えたいと思う事だろう。
そういう事は一種の「表現」と言えるだろうし、それを写真の場合に置き換えて
みれば簡単に理解できると思うが、つまり自分が撮った写真で相手の事を好きだ
という気持ちを伝えるという事になる、と考えれば良い。
「そんなに簡単に感情を写真に込められないよ・・」と思うかもしれないが、
これは意外に簡単な事で、勿論撮る時にある程度それは重要なポイントとして
意識するのであるが、撮った写真を後でセレクトする際に、自分の視点において
「あ、この彼女の表情(や仕草)は可愛い」と思った写真を重点的にセレクト
すれば良いだけの話だ。
それは誰にでも出来る筈だし、そのセレクトの仕方で十分個性も出るし、
撮った人の感情も写真に込められるという事になる。
それが「被写体の異性を自分の恋人だと思え」という事の意味であり、
私が見ている貴女(貴方)は、こういう人なんですよ、という気持ちを
写真の中に入れて(込めて)いくという事になる。
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ただ、それに関しては・・
ある時には、それがズバリとはまる事もあるかもしれないが、そうで無い場合もある。
すなわち、「自分が見ている貴女(貴方)」という、感情を込めた写真が
必ずしも相手に受け入れられるかどうか? という点である。
これは写真ではなく実際の恋愛でも同じ事、自分の気持ちを受け止めて
くれる場合もあればそうで無い場合もある、所詮恋は難しいのである(苦笑)
写真で言えば、「私が見ている貴女のイメージ」は、彼女の持つ自分自身への
イメージや特徴と異なるかも知れないという事だ・・
「え~、ワタシってこんな風に見られているの?」と意外に思うかもしれない、
その意外性も、好感を持って「へ~、そうなんだ~」と思われる場合もあれば
「こんなの違うよ~」と悪印象になってしまうケースもあるという事だ。
(まあ、これらも実際の恋愛とまったく同じと言えば同じなのだが・・)

・・で、そのイメージギャップに対する対応方法であるが、解決策が無い訳でもない。
つまり、それは撮ってからいきなり写真を渡す際に主に生じる違和感(ギャップ)
であるのだから、まあ恋愛で言えば、いきなり相手に告白した(相手から告白
された)ようなものであり、少なからず違和感があるという事なのだが、
写真を撮っているときに、ある程度そのあたりは意識しながら撮っていれば
たとえば、「うん、貴女はちょっとクールな表情をしている時がいいね」
「そうそう、そんな風に・・それいいね、ゾクっとするよ~」とか、
自分の持つイメージを伝えながら撮っていけば良い。
イメージを伝えつつ撮っていくということで、コミュニケーションを計れる、
イキナリ、突然の「告白」は、成功率低いよ、と、そういう意味だ(笑)
今回の場合では「ちょっと大人びて背伸びした女の子の魅力」という部分が
好みのポイントとなっているわけだから、想定されるイメージシナリオと
しては、具体的に言えば、たとえば私がSyuriちゃんをバーで待たせて
(それはもしかして策略?笑)ちょっと慣れないバーでSyuriちゃんが不安に
なっている様子を思い浮かべながらも、
「ごめんごめん、会議が長引いてね・・」とか言って、ちょっと息を
切らしながらバーに到着する、不安げで寂しげな様子から急変する彼女の表情。
とりあえずマスターに「あ、私はスコッチをオンザロックで・・」とか言いつつも、
「ごめん、ずいぶん待ったかな?」と言えば、
「フフ・・そんな事無いよ」と答えてくれる・・
・・・実際にはそんな美味しいシチュエーションなんてあるはずも無いのだが(苦笑)
でも写真でそんなストーリを組む事は、それがすなわち写真の面白みであるのだし
その写真を彼女に伝える事で自分の気持ちや感情というのを「表現」できる訳だ。
ましてや、万が一で、あるが、Syuriさんが私の表現を気に入ってくれて
イイ感じ、にならんとも限らない(笑) そういう事は、やらないよりやった
方がいいに決まっている、やらなければ確率0%だ、でも何かすれば、たとえ
0コンマ何%でも可能性はある。相手がモデルさんでなくて一般の人であれば
なおさら可能性は上がる。友達以上恋人未満とか、そんなシチュエーションで
あったら、その一枚の写真がその後の進展の決め手にならないとも限らない。
仮にある時、自分でもいい写真が撮れたと思ったのであれば、
「もし君が将来カレシに写真を撮ってもらったとしても、
きっとこの写真より良い表情の君はなかなか撮れないと思うよ・・」
などと口説き文句を添えても効果的かもしれない。
ともかく、動かないよりも動いた方がいい、恋愛はそういうものだ(笑)
そういう考え方は、モデルさんをただ単に綺麗にとかかわいくとか撮りたいと
思うよりもずっと実践的だし、ある意味「綺麗に」とか「かわいく」というのは
イメージには抽象的すぎる、そう思うよりも、なんからの具体的シナリオが
あった方が楽しいに決まっているし、それがまた写真の楽しみの本質、という
事にもなるのであろう・・
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【追記】近年ではモデル撮影会などでの写真は、肖像権の観点と、たとえば
モデルさんが将来特別な付加価値を得る(具体的には企業のイメージガール等)
場合などを想定し、モデル所属事務所等の許可が無い場合は、撮影者は無断で
Webや写真展、コンテストなどで発表する事は出来なくなってきています。
今回は、
アクターズスタジオ関西校さんおよびSyuriさんご本人の快諾を得て
写真を掲載しています。