
今日の名レンズは、シグマの AF24/1.8 (EX DG ASPHERICAL MACRO)である。
大口径広角レンズであり、シグマのデジタル対応レンズ(=DG)としては最初期
(約6年ほど前)のものとなる。
デジタル対応レンズと言っても、最初期の頃はその概念(定義)があいまいであった。
APS-Cサイズの小型撮像素子に対応するため、銀塩時代と変化してしまう画角への
対策として、焦点距離を切り詰め、イメージサークルを小径化し、APS-Cでないと
使えないように設計された小型の「デジタル専用」レンズは、まあその特徴は明らか
であるが、じゃあこのレンズのように、銀塩でもデジタルでも使用可能な広い
イメージサークルを持つものは、はたして何が「デジタル対応」なのだろうか・・と。

↑ローアングルパンフォーカス
実のところ、「デジタル対応」と盛んに言われていたのは、デジタル一眼レフが
急速に普及しはじめた3~4年前の話であり、今は各メーカーとも
そうした謳い文句は言わなくなっている。
そのころのメーカーの弁を借りれば、
第一に、フィルムは斜めから入射する光でも化学反応により良好な画像を得る事が
できるが、撮像素子の場合は、斜め入射光は(マイクロレンズやフォトダイオード
にあたる)光の量が減り(cosθに相当)撮像素子周辺のダイナミックレンジが
低くなってしまう、その対策のために、できるだけ撮像素子に垂直に光が
入射するようにレンズ後部からの光路を整えた。(これをテレセントリック光学系とか
テレセントリック特性の向上と呼ぶ。)
第二に、撮像素子の表面はフィルムよりも反射率が高いため、レンズ後部から
進入した光の一部がまたレンズ後部(後玉)に反射し、それがまた撮像素子に
戻って写真の写りに悪影響を与える、その対策の為にレンズ後玉にも
コーティング(表面加工)を施し、有害な反射を抑えるようにした・・

↑大口径を活かした暗所での撮影(&マイナス補正)
・・ということであったのだが、これらはカメラの原理というよりもまるで物理学か
なにかの世界みたいな話でわかりにくく、一般のカメラユーザーにはほとんど理解
されなかった。
ましてや当時は一般ユーザーの銀塩からデジタルへの乗り換えの真っ最中、
銀塩時代のカメラ知識で、そんな難解な内容が理解できるはずもなく、
たぶん当時の(いや今も?)全国のカメラ店の売り場では毎日のように
「ワシが今まで使っていたレンズ、これデジタルでは使えないのかのう?」
と言ったレベルの質問が多数繰り広げられていたに違いない。
そんな時にメーカーが「デジタル対応レンズ」などと言い出したら、
これはそのレンズの販売を促進させるどころか、一般のビギナーユーザー
の不安を煽り、下手をすれば
「今までのレンズは使えませんから直ちにこちらのデジタル用レンズに乗り換えてください」
などと、詐欺まがいな販売をするなどの悪い方向性に発展しかねない。
まあ、その後、別に従来の銀塩用レンズでも何等問題なくデジタルで使える事も
ユーザーに広く認識され、さいわいにして市場がパニックになる事もなかったし、
同時にデジタル対応などという良くわからない謳い文句も市場からはなくなっていった・・

↑最短撮影距離の短さを活かした撮影
でも、思うに、近年の「手ブレ補正ブーム」だって、ある意味同じ事じゃあないかと思う。
手ブレした写真、補正ONの写真、と並べて比較されたコンパクトカメラの宣伝には、
普通ではありえないくらいに手ブレしたような写真が添えられていて、
ユーザーの「手ブレに対する恐怖感」を煽っているように思える。
たいがいのカメラに手ブレ補正がつくようになって、それが一段落すると、
今度は顔認識だ。
一度に10人の顔を認識する? だからどうした・・ピントが合うのは1人だろうが?
そんな機能が付いていても中級者以上は誰も使ってないよ・・
そこでもビギナーを騙して売るような事をいつまでも続けているのだろうか・・
そんなことより、コンパクトの操作系を改善してくれよ・・・
もっと使うべき機能を、ちゃんと使いやすく論理的にユーザーインターフェースを
設計してくれよ。
とりあえずダイレクト露出補正とISOダイヤルだけで十分だ。
それから広角レンズ(広角ズーム)、最低(換算)21mmくらいは欲しいところだ。
さらには、大口径、まあf1.8あれば十分だろう。
銀塩末期のコンパクト FUJI NATURA S これには24/1.9という大口径広角単焦点
レンズがついていた・・・ こういうデジタルコンパクトが欲しいよな。
GRD(=28mm/f2.4)では、少しだけ物足りない時もある。
そして、あとは高感度と低感度だ、ここばかりは、いくらでも上下に可変範囲が伸びて
もらっても何等問題は無い。

↑大口径による被写界深度の浅さを活かした撮影
AF24/1.8の記事なのに、すっかり脱線してしまっている・・(汗)
さて、このレンズの特徴だが、上でちょっとだけ触れた銀塩コンパクトの
24/1.9というもののデジタル版が欲しい、という話でのスペックに極めて近い。
ただ、勿論24mmは銀塩では十分な広角レンズであったものの、フルサイズでは無い
APS-C等の撮像素子の場合は、36mmとか40mmとか、そのあたりの画角となり、
広角と言うには、画角上は物足りない。
対してf1.8というのは十分に明るく、これをf1.4にしろ、とかf1.2にしろ、という
ユーザーニーズはまず存在しないと思う。
さらにこのレンズの最大の特徴は、最短撮影距離が僅か18cmという事であり、
これはAPS-Cデジタルで撮影倍率が上がる事を考慮すれば、レンズに書かれて
いるMacro という表記は(1対1まではいかなくても)十分に納得できる。
だいたい18cmという撮影撮影距離は、単焦点にしては大柄のこのレンズの先端部
からの距離(すなわちワーキングディスタンス)は、ほとんどゼロに近い位置
まで被写体を持ってくる事ができるわけだ。
必要に応じてフードをつけておかないと、被写体に迫っていくと、どこまでも寄れるので
好ましくない(苦笑)被写体に接触してしまう危険性もある。
(同様に凄く寄れる GR Digitalで、食べ物に突っ込んで油でレンズフードが
閉まらなくなって修理に出したこともある・・苦笑)

↑近接撮影と、大口径による被写界深度の浅さを活かした撮影
77mmΦ(径)と大きなレンズで、保護フィルターも高価であるが、
できるだけ、いや、絶対に保護フィルターをつけておいた方が良い。
ちなみに、姉妹レンズ SIGMA AF20/1.8はさらに大きい 82mmΦだ、
こちらも同様にレンズ先端近くまで寄れるのでこれも保護フィルター必須。
さらにちなみに・・ 保護フィルターに対する考え方だが、これは銀塩時代は
賛否両論あったが、私の考えは単純だ「保護が必要ならばつければ良い、以上。」
別にどんなレンズにもつけなければいけないというわけでも無い。
レンズが奥まっているマクロだったら、あえていらないだろうし、それでもレンズ
の上から何か落すことが不安だ、と言うならつけておけば良いだけだ。
レンズの前玉は仮に僅かなキズがあったとしても、まず写りに大きな影響は無い、
対して後玉のほうがもっとシビアだ、キズがあったら一発で終わりだ。
前玉を気にするくらいなら、後玉の扱いに神経を払ったほうがよほど実践的だ。

↑中間撮影距離でも、大口径の開放で被写界深度を浅くできる
それでもまあ、保護フィルターが必要だと思うならば、ここで私独自の
価値計算式をあげておく。
フィルターの適正価格<=レンズ本体の購入価格の5%
という事だ。
これは具体的には1万円で買ったレンズには、500円(迄)の保護フィルター。
5万円のレンズならば2500円まで、10万円のレンズには5000円まで、
という事になる。
もちろん良い(高性能の)、「なんとかプロ」とか、「なんとか37」とか言う
高級保護フィルターも世の中には多く存在しているし、私もそんなフィルターを
買って使っている場合もあるのだが、5000円あるいはそれ以上もする
高級フィルターを1万円のレンズにつけても意味がない。
「ヘボ将棋、王より飛車をかわいがり」ではないが、そうなったら、
「フィルターにキズがつかないように大事にする」というハメになる、
まさか、保護フィルター用の保護フィルターを買って2重につけるのか?(笑)
だから、そのあたりの価値観をまとめると、フィルターの価格はレンズの5%まで、
それだったら大きな経済的負担もなく、レンズの価値に見合った、あくまで保護と
しての目的でフィルターを選べる。
そういう考え方で私の場合は保護フィルターを買っている。
そんなに安くフィルターを買えないよ、と言うならば、もう一度、自身の
カメラ購入(流通)経路を見直してみれば良い。 中古やジャンクという手もあるし、
今行ってる量販店よりもっと安く買える店は、世の中にいくらでもあるだろう・・
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さて、フィルターの話しの直前に「フード」の話も出たが、実はフードも
本来の有害太陽光のカットなどの目的の他に、レンズ保護の役割も果たす
わけである。 フードをつけておくことにより、不用意にカメラが何かに
接触した際にクッションの役割、あるいはフードが外れて、または破壊されて
高価なレンズや、虎の子の(笑)高級フィルターを守ってくれることが多々ある。
そして、この SIGMA AF24/1.8は実はちょっとした欠点(? 特徴?)を
持っているレンズである。

↑フード無しで、ゴーストを出現させた撮影
「ゴースト」とは言わずもがな、レンズの内部などでの光線の乱反射による意図しない
有害光のうち、形のあるものを差すのだが、このSIGMA AF24/1.8は
ゴーストやフレア(ゴーストと類似だが、形がなく、白っぽくコントラストが低下する、
これらの症状・現象をまとめて「ハレーション」と呼ぶ場合もある)
が割りと出やすいレンズなのである。
ただ、銀塩時代の常識では、
「ゴーストやフレアが出るのは悪い(性能が低い)レンズ」と一刀両断に
切捨てられてしまったのであるが、現代の常識ではそんなことはない。
たとえば、「真夏の暑さ」を表現するにはゴーストは必須だ、
映画やドラマ、あるいは写真でそんなシーンで映像にゴーストが入っているのを
誰しもが見たこともあるだろう。
あるいは都会の超高層ビル、ビルの高さを表現するのにゴーストはこれまた
必須の効果となる。
そのためにわざわざゴーストが出やすいレンズを選んでみたり、
どうしてもゴーストが出せない高性能レンズの場合、アフターレタッチで
擬似的にゴーストを合成して追加することすら多々ある。
だから、つまり、意図せずにゴーストが出るのは好ましくないが、
意図したい時にゴーストを出せる、というのは現代においては欠点どころか
長所となりうるわけだ。

↑フード無しで、ゴーストとフレアを同時に出現させた撮影
ゴーストが出したくなかったら、ちゃんとフードをつけて、かつゴーストが出やすい
撮影環境(太陽光に向かうアングル等)を避けて撮影すれば良いだけの話だ、
「このレンズはゴーストが出るからのう・・」などとブツクサ言ってるのであれば、
それがゴーストである事やその原理(原因)を知っている中級者以上であれば、
それを避けて撮る、またはあえて利用して撮る事など簡単にできるはずだ。
ただ単にレンズの弱点に文句をつけるだけなら、何等工夫や生産性が無いではないか、
それでマニアだのレンズグルメだの言っていて、果たして楽しいのだろうか??

↑パンフォーカスとパースペクティブを強調した撮影
それから、言うでも無いが、真っ直ぐのものが真っ直ぐに写らない歪は、
広角レンズの場合、パースペクティブ歪と、収差の2通りの原因があって
それぞれを混同してはならない。
収差はレンズの欠点であり、実際このクラスの高性能単焦点ではいくら
広角といっても(歪曲)収差は発生しないに等しい。
肉眼で明らかに収差がわかるのは、主に低性能の普及ズームレンズを
広角端で用いた場合だ。 もうそのあたりになると「論外」とも言えるので、
「早いところちゃんとしたレンズを買いなさい」としか言いようが無いのであるが、
どんなに高性能の広角レンズでも被写体の直線性に正対しない場合は、
そのパースペクティブ(遠近感)の強調により、真っ直ぐなものとて真っ直ぐ
には写らない。一番簡単な例は、たとえば2つの高層ビルを真下から見上げて
撮る事を想像してみたら良い、2つのビルは中央に寄って傾いて写るであろう。
これと同じことで、あらゆるシーンで「真っ直ぐに撮ったつもりが傾いて
写っているよ」という事が広角レンズでは頻繁に起こる。
ビルを傾けて写したくなければ、遠方から被写体に正対して撮るしかない、
シフトレンズがいるのでは? という風に思うかもしれないが、それとて
近距離から上(など)に向けて遠近感が存在しているのを中和する措置
であるわけで、いくら広角とは言え、等距離上にあるものは歪んで(曲がって、
傾いて)写ることは無いから、まずは正対する事がポイントだ。
(このことは、魚眼レンズを持って(装着して)アングルを色々変えてみると
遠近感の歪みがどう出るのか、あるいはどう出ないのかが、わかりやすいと思う)

↑通常距離撮影でのボケ質のチェック(その1)
あとは重要なポイントとしてレンズのボケ質がある。
広角レンズだから、絞ってパンフォーカスで使う、というのも、これもまた
古い銀塩時代の常識。
そもそも、そうした常識が生まれた時代の背景は、たとえば30年から40年前・・
28mmあたりの広角レンズといえども、最短撮影距離は下手をすると60cmあたり、
さらには開放f値もf3.5あるいはそれ以上と暗く、さらにレンズ設計やガラス材質の
問題で、絞り込んで使う方が明らかに高画質が得られた、という状況である。
この現代の SIGMA AF24/1.8レンズと比べてみよう、
24mmは十分に広角でありパンフォーカスで使うにしても、広角だから
ちょっと絞り込めばその効果が十分に出る。
また、最短撮影距離は18cmだからマクロと呼べるほど近接できるし、
その条件では被写界深度は広角と言えどもかなり浅くなる。
そして開放f1.8は十分に大口径であり、暗所での撮影時にシャッター速度を
稼げる他、近接ではない通常撮影においても被写界深度を浅くして背景を
ボカす撮影を行う事ができる(つまり絞り値選択の自由度が高い)
すなわち、このクラスのレンズともなると、広角と言えどもボケ質(ボケ味)
が性能判断の為の対象ポイントになってくるわけだ。
パンフーカスでしか使わないなら、せっかくの大口径や近接性能が勿体無い。

↑通常距離撮影でのボケ質のチェック(その2)
・・でも、正直言うと、このレンズのボケ質は、あまり上質とは言い切れない。
むしろ中望遠や標準のオールドレンズに近いような、なにか絵画チックと
言うか独特のボケ質を持つ。
ただ、見ただけで明らかに破綻しているような汚いボケ質になる事はなく、
そして、このレンズのように広角で大口径で寄れる特長を持つレンズが
他には皆無かあるいは極めて少ないために、他の同等のレンズと優劣を
比較することもできない。
というかそもそも広角レンズでのこれだけのボケ量・ボケ質をあまり体験した事が
無いというのが正直なところだ、
あえて比較するならば、GR Digital の 28mm/f2.4レンズの近接撮影
くらいであるが、まあ、それに比べると若干クセがあるというところだ。
ただ、あきらかに不満となるような低性能なボケ質では無いので、
各自の好みの問題もある。 ・・いや、好みというあいまいな感覚では論議したく
無いので、もっとちゃんと言えば、被写体(背景)によりけりという事になると思う。
つまり、若干カクカクとした絵画チックなボケ質であるので、それを
作画表現と見なせるような背景スタイルが良いと思う。
たとえば「物理的」には、古いものや、古い町並み、
あるいは「感覚的」には、夢の世界、思い出の世界、昔の記憶・・
そんな風な表現に使うのにベストマッチであると思う。
原理的に背景を大ボケさせるような表現はできないので、ポートレートとか
花単体の近接撮影には向かない、・・というかパースがつくので、ポートレート
にはそもそもあまり向いてはいないと思うが。(流行のアイドル風撮りは除く)
最後に価格面だが、最近では価格がこなれてきていて新品でも3万円台位、
中古流通は極めて少なく、大阪で見かけるのは、年に数本くらい。
あっても3万円弱ほどの相場であるので、マウントがうまく合致する保証も
無いので、たまたま見かけた場合以外であれば新品を買うのが手っ取り早い。
じゃあ、3万円という値段に見合う価値であるかどうか? であるが、
広角、大口径、近接、という表現力が欲しければ何の迷いもなく「買い」な
レンズである。 ただ、撮影スタイルはそれに合致したものでないと、
このレンズの特徴を何も活かせないことになる。 遠距離から絞り込んで
パンフォーカスで撮るような撮り方はこのレンズを使う意味が無い。
ガンガン寄って、絞りを開けてとる、そうした広角の新しい撮り方に
シフトしていかないかぎり、このレンズの特徴は活かせないということだ。
もしそうした撮り方が必要ならば、あるいは試してみたいのであれば、
他にこのレンズに相当するスペックのものは無い、仮に生産中止とかになって
「しまった」とか思う前に速攻で買いだ・・