「なかなか時間がとれなくて写真を撮りに行く暇が無い・・」
まあ、良く聞く話である。
私も、写真をあまりやっていない人とこんな会話をする時がある
Q:「どちらまで写真を撮りに行かれるのですか? 海、それとも山?」
A:・・・え、まあ、その辺を色々と・・(汗)
Q:「どんなものを撮られるのですか? 風景、それとも花とか?」
A:・・・え~と、その~、なんだか良くわからないものばかりで・・(苦笑)

確かに、数十年前だったら、「写真を撮りに行く」という風に、
「わざわざ」、「いかにも」という要素が大きかったのであろうと思う。
15年ほど前、たとえば当時の女子高生達は、常にカバンの中に「写るんです」
を入れて、どこででも写真を撮るようになっていた。
そして6~7年ほど前より、小型のコンパクトデジカメが普及し、現像代、フィルム代
などをのコスト気にせず、どこででもパシャパシャと写真を写せるようになり、
さらに、ここ5年程では、携帯電話にカメラが内蔵され、一般の誰しもが、いつでも
どこでも写真を撮るようになってきたのである。
結局、今時は「わざわざ」写真を撮りに行く、という風に、「構え」なくても、
いつでもどこでも写真は撮るものだ、と、文化も変わってきているのだろう思う。

さて、そんなわけで新シリーズ、「30分圏内で撮る写真」である。
これは「写真は遠くに行って、旅行とか観光とかの非日常の世界で撮るものだ」
という感覚を、私自身もなるべく持たないようにしていく、つまり地元あるいは
地元に隣接した地域で、日常の生活圏、行動範囲を撮っていくという企画である。

今日の撮影地は、大阪の天王寺界隈。
天王寺は、JRや複数の地下鉄、市電等が交差しているターミナル駅である。
駅そのものは、複合的な商業施設が立ち並び、お洒落な雰囲気であるが、
駅から少し外れると、古き良き大阪、という言い方をするべきか・・ あるいは、
コテコテというべきか、寂れたというか・・ なんとも言いがたい独特の雰囲気の
文化圏が存在する。
そしてさらにそこから少し離れていくと、今度は、古い町並みやお寺などの
歴史を感じる要素のある街となる。
いわば、繁栄、退廃、歴史という複数の顔を持っているのがこの天王寺界隈の特徴だ。
それぞれの地域の雰囲気を撮るには、それぞれの地域に応じた撮り方があるのだろうが
今回訪れた区域は、その3番目の、歴史的な雰囲気を持つ天王寺である。

正直な話、30分で来られる場所とは言え、今までは、天王寺あたりに来る目的としては、
単にターミナルとしての乗り換え、あるいは天王寺公園や天王寺動物園、
それから第1の顔、複合商業施設で食事をしたり買い物をしたり、
さらには、第2の顔、つまり大阪の下町の雰囲気を感じたり、おそるおそる撮影を
したり(注:大阪のいくつかの地域では写真撮影は極めてリスクが高い場合がある、
具体的には、写真に写されたくない人、モノ、場所などがあるから、それを知らずに
パシャパシャやっていると、トラブルになる事必至である)
そんな風な目的で天王寺に来る事がほとんであった。
で、今回の第3の顔、歴史的な天王寺、というのは初めて訪れる区域も多い、
近いが故に、あまり来ないということだ。

しかし、来てみると、そしてたとえば、撮った写真を並べていくと。
これが「あの天王寺」で撮った写真とは、思えない写真が続く。
大阪の都会の、キタ(梅田)、ミナミ(難波)に次ぐ、ターミナル・繁華街という
土地の雰囲気ではないのである。

まあ、言ってみれば、だから写真とは怖いものであって、
自分自身の被写体に対する見方を変えることで、ごろっと撮る対象も変わるし、
写真の選び方1つで、その場所の持つイメージを、ガラっと変えて表現する事もできる。

近代的な施設を持つターミナル駅としての天王寺の顔、
コテコテの古き良き大阪、しかし今は少し寂れている天王寺の顔、
そのどちらでも無い天王寺のイメージがここにあった。

家から30分圏内・・ 地元あるいは準地元なんて、もう知り尽くして思っていると
思っていると、実はそうでも無い事もあるという事だ。
「写真を撮りに行く時間がない」と、お嘆きの皆さんも、準地元あたりの近場で
意外な雰囲気、意外な世界が、そこに発見されるかも知れない・・