広島県の尾道(おのみち)の続編。
高低差の激しい尾道では、高所から海が見えて景観が良い。
特に広い範囲が見える景色の場合、ついぞ広角レンズやズームを広角にセットして
撮りたくなる場合もあると思うが、標準や望遠域でも景色は撮れないわけでは無く、
景色の特徴的な部分を切り出して撮るという方法がある。
また、広角はただ単に広い範囲を撮るレンズという事でも無い。
広角の視点においては、被写体と背景と、その遠近感を整えるというのもまた
広い画角を得るというポイントと並んで、広角の代表的な使い方なのであろうと思う。
----
さて、尾道の散歩を続ける・・
前編でも述べたとおり、坂と古い町並みとネコの町、というのが尾道の印象では
あるのだが、古い、というのを通り越して朽ちた雰囲気の場所も多く、
観光地であるのに若干そのあたりは不思議な印象もある。
これは他の場所の記事、たとえば近江八幡においても、観光地の中での
朽ちた場所の例をあげたが、やはりそういう部分はどうしても目につく。
ただ、その町並みも高い所から見た様子では、そうした朽ちた場所も見えず、
景観の中に紛れ込んでしまう。
----
尾道にはまたお寺も多い。 その中の1つで高い所にあるお寺から町並みを
見下ろしてみよう。
このお寺には鐘があるのだが、たとえば鐘と町並を同時に撮ろうとすると、
天気の良い日だと、輝度差、つまり明るさがとても大きい事に気が付くと思う。
肉眼で見ている分には、お寺の鐘も、見下ろす町の明るさも大差が無いが、
実際に写真に撮ってみると、こんな風になる。
輝度差が大きく、町並みに露出を合わせると、どうしても鐘がシルエットになってしまう。
加えて鐘にピントを合わせると、標準~中望遠域のレンズにおいては、
よほど絞り込まない限り背景の町並みはわずかに、あるいは大きくボケる事になる。
仮にボケをあえて意識して撮っていたとしても、鐘の露出がアンダーになっている状況
では、主役がなんだかわからず、ピンボケ写真のような印象になってしまうであろう。
そこで、こんな場合、日中シンクロの技法が使える。
日中シンクロは、
以前の記事でも述べたように、昼間にフラッシュを使う技法であり
様々な用途があるが、「輝度差を減らす」と言う目的にも使える。
加えて、一眼ではなく、広角のコンパクトに持ち替え、被写界深度もかせぐ。
写真的にはやや不自然になるが、実際に肉眼で見ているイメージに近いのは
こんな感じだろうと思う。
なお、この作例ではあまりにフラッシュを使った事がはっきり出てしまっているので、
必要に応じて、光量をもう少し弱める(後述する)のも良いであろう。
また、輝度差が大きい場合でも常に日中シンクロを使えば良いというわけではなく、
できるだけ自然光のままで撮れるならば、まずそれを試して見るのが良いであろう。
たとえばこんな感じ。
で、これは広角マクロでもあるので、実際にはこの状況でフラッシュを使うと、
被写体の距離が近すぎて、真っ白になってしまう。
白くなるのを回避するには、(つまりフラッシュを弱めるには)
1)絞りを絞る
2)ISO感度を下げる
3)フラッシュの光量を減らす(フラッシュ調光補正、またはデフューザーを使用)
の3種類の手段があり、それらを単独または組み合わせて使う。
ただ、この場合は、もう最低感度でかつ絞りも十分に絞った状態なので、
この状況でフラッシュを焚くには、光量を減らすしか方法が無い、
あいにくこのコンパクトでは、調光補正がなく、かつデフューザー(光を拡散させる
為のもの、専用のアクセサリーの他、簡易的には紙や布などを用いても良い)代わり
になるものも生憎持ち合わせがなかった。
他には、レフ板または光を反射する簡易レフ板などを用いても被写体に光を当てる
ことはできるが、まあ、旅先でおみくじの人形を撮るのに、そこまで凝った事を
しなくても・・という気持ちもある。
----
さて、尾道散歩の続きだが・・
高所から降りてくると、尾道はまた漁港や大きな商店街や古い町並みのある面白い
町としての側面もまた見えてくる。
漁港、そして商店街・・
映画のロケが何度も行われた町、尾道は、時間があればゆっくり色々なところを
見て歩きたい町でもある。
しかし、時間には限りがあり、あっと言う間に夕方・・
もう移動しなければならないので、残念だけどこの町を後にする・・
なんだか、何処に行ってものんびりできないのは、普段の都会の暮らしのリズムに
すっかり体が慣れてしまっているせいか?
何も無いところで、ボーっとしたいと思う事も多いが、まあ、性格上からも
そんな事はなかなかできないのであろうなあ・・ と、そんな風にも思った・・