森田「え? 霜月さん、縮小と圧縮の話はもう終ったのではなかったでしたっけ?」
霜月「森田さん、前回オレが解説している間、匠のオッサンは風邪をひいて寝込んで
いたらしい。 で、今回は匠のオッサンも解説したいそうだ・・(苦笑)」
(注:森田重雄、霜月了はいずれも仮想キャラクター)
森田「あ、そうなんですか・・」
匠「え~、森田さんも、だいぶ画像の縮小と圧縮がわかってきた様子だけど、
今回のはちょっと新しい内容なんです、そして霜月も知らない事だぞ・・」
霜月「むう(怒) オレだって相当勉強しているぞ・・」
匠「え~と、今日は JPEG 2000の話だ」
霜月「げっ・・(汗)」
森田「(ちょっと、霜月さん、ジェーペグ・ニセン、って・・?)」
霜月「(いや、なんか新しい規格らしいんだが。 オレも良く知らないんだ・・)」
匠「じゃあ始めるぞ、まずJPEGの圧縮をこないだやってみて、何か問題という
のに気が付かなかったか?」
霜月「むう・・JPEGの問題点か? まあ、圧縮しすぎるとすぐ破綻するところか?」
森田「それと、元に戻せないというのもありましたね・・」
匠「2人とも正解、だいたいそれでいいけど、まあ破綻というのは、ブロックノイズ
とかモスキートノイズが出ると言い換えても良い。
元に戻せないのは、不可逆圧縮だという事だな。
それから、文字とかイラストのような線の圧縮に弱いというのもある。」
森田「ふむふむ・・」
匠「で、今回紹介するJPEG2000は、そうしたJPEGの弱点を解消した画像の圧縮方式と
して最近出来てきたものだ。 けど、あまり普及はしてない・・」
霜月「むう・・ そんなに優秀ならば何故普及しない?」
匠「それをこれから説明していくんだよ・・・ まあいい、じゃあ、具体的に
JPEG2000の威力を見てもらおうとしようか・・
まず、写真ではなくてCGなんだけど、この画像を見てほしい」
森田「ほう、写真みたいなんですが、これは、コンピューターで描いた絵なんですか?」
匠「そうだけど、まあ、それは今回のポイントじゃあないんだ・・」
霜月「何故CGを使う? 写真の方が実践的ではないのか?」
匠「CGの方が効果が分かりやすいからなんだ、特にJPEGでも少し余分に圧縮できる
事と、破綻した時がわかりやすいからな・・
・・で、このCGの解像度は、528x352で作ってある、3:2ということで
銀塩一眼レフやフォーサーズ以外のデジタル一眼の縦横比率と一緒だ。
森田さん、この画像の非圧縮時のサイズはいくつになるかな?」
森田「え? あ、え~と、覚えてますよ。 縦x横x3でしたな。
では・・・ 528x352x3=(電卓ピコピコ) 55万7568です。
これは、どうするんでしたっけ? 約550KBとするのでしたかな?」
匠「はい正解。 では、この画像のファイルサイズと圧縮比は?」
森田「ファイルサイズ・・え~・・ 53.2KBですね。 約1/10ということですか?」
匠「はい、よくできました。 これはつまり1/10なのでJPEGでは適正ということですね。
では、これをもっと極端に圧縮してみましょう。 約1/60の9KBを目安にします」
森田「破綻しましたね・・」
霜月「おい、匠のオッサンよ、それは以前オレが説明した方法と同じじゃあないか、
これのどこがJPEG2000の説明だ?」
匠「まあ、あせらない、あせらない・・・ じゃあ、これを同じようにJPEG2000で
圧縮してみようか、極端にいくぞ、1/100の5KBまで落としてみよう。 ドン!」
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森田「何も出ませんねえ・・」
匠「実は、JPEG2000は、ブログ、つまりブラウザでは表示できないんだ・・」
霜月「なに? それじゃあ何の意味も無いじゃあないか・・」
匠「なので、これをJPEG2000の読めるソフトで一旦読み込み、JPEGで再圧縮して
表示してみる、するとこうなる」
森田「ほとんど元画像と変わりませんね・・ 匠さん、これは本当に1/100まで
圧縮したのですか?」
霜月「あ~、53KBもあるじゃあないか? 1/100というのはウソだな?」
匠「ウソじゃあないよ、表示された画像をJPEGで比較的高品質で保存したから53KB
あるけど、これはJPEG2000で、5KBの画像とほぼ同じ品質だと思ってもらったら良い」
森田「5KB、1/100圧縮ですか、すごいですねえ・・」
霜月「ふん、いくらすごくても表示できなくちゃ意味が無い・・苦笑」
森田「そもそも何で表示できないんですか? それって元に戻せないという事ですか?」
匠「いや・・ 元に戻せるかどうか、というのと、パソコンで表示できるかどうか、
というのはまったくの別問題なんだ。
で、元に戻せるかどうかはさておき、圧縮された画像をパソコンで表示するという
のは、実は以前の霜月の説明ではちょっとわかりにくい点があったと思うぞ」
霜月「ん・・・?」
匠「JPEGというのは圧縮した画像だよな? じゃあその圧縮されたままの状態って
本当に画像なのかな? 霜月が説明していたように、データを別の数字で置き換えたり
色々な事をやって圧縮して小さくしたデータの塊じゃあないのかな? それそのものは
画像じゃあないだろう?」
霜月「それはまあ、その通りだが・・」
匠「なので、じゃあ、JPEGの画像が何故パソコンとか、カメラ上とか、携帯電話とか
で見れるか? というと、そこには、JPEGを解凍する仕組み(デコーダ)が
入っているからなんだ・・」
森田「怪盗・・ですか?」
匠「いや・・ 解凍(笑) 電子レンジでチン、というやつと同じだね。
元々圧縮したやつを元に戻すには、復元という用語が良いと思うのだけど、
パソコンが発達したのは電子レンジの発達よりも後なので、元に戻すことを
レンジに例えて解凍と言うようになってきた、変な用語に思えるかも知れないが
これはなかなか名訳だと思うぞ。」
森田「電子レンジでチンですか・・??」
霜月「匠のオッサンが言いたいのはこういうことだ、つまり圧縮されたJPEG画像は
そのままでは画像として見ることができない、これはちょうど冷凍食品のように
固まっているから、食品は食品でもそのまま食べることができないという事だ。
それを食べれるようにする為には、電子レンジでチンとやってから食べる。
つまり圧縮されたJPEGも、電子レンジでチンとやらないと画像として見れない
ということだな・・ そうだろう?」
匠「その通りだ。 で、電子レンジは今はどこにでもあるわけで、家にも勿論あるし、
会社や、学校や、コンビニや、スーパーにもある、これはつまりどこでも解凍が
出来るという互換性が高いということだ。
で、JPEGもそうなんだ、JPEGを解凍する電子レンジ、つまりデコードのソフト
は、デジカメ本体はもとより、パソコン上のレタッチソフトにも、ワードやエクセル
にも、IEやネットスケープのブラウザにも、あるいは携帯電話にも、高性能TV
にも、プリンタにも、ポータブルストレージにも、携帯ゲーム機にも、どこにでも
入っている、つまり非常に普及しているので、JPEGだったらたいていの機器で
気にせずにどこでも見ることができるというわけだ。」
森田「なるほど・・ JPEGはどこででもチンして見れるわけですね。」
匠「で、JPEG2000だけど、これはJPEGと同じ圧縮のやりかたはしていない。
説明するのは大変だけど、より高度な圧縮方法を使っていると思ってもらえば良い。
高度というのは、圧縮も大変だし、解凍も大変だということなんだ。
そうだなあ・・ 冷凍食品を例にあげれば、JPEG2000の冷凍食品は、単にチン
するだけでは食べられない、具体的には一度解凍した後でもういちどテンプラ油で
揚げて調理するような、手のこんだ高級冷凍食品だと思ってもらったら良い。」
霜月「ふん・・ テンプラ鍋くらいだったらどこにでもあるのでは?」
匠「そうかなあ? 鍋はあっても油を入れて暖めて適切な温度で揚げるのは面倒だぞ、
家庭ではできても、会社やコンビニでは無理だよ、会社でお弁当でテンプラを揚げて
いる社員を見たことがあるかな?(笑)
まあ、JPEG2000も似たようなものだ、家で使うパソコン用のちょっと高級な
レタッチソフトだったら、JPEG2000を扱えるものも数多くある、でも、それが
携帯とか、TVとかプリンタとかになったらまずお手上げだ。 手間がかかりすぎる
から、携帯の中にわざわざJPEG2000を解凍できるテンプラ鍋は用意していない・・・」
森田「なるほど・・ JPEG2000は手の込んだ冷凍食品ですか・・
つまり、いくら美味しくても、いくら凄くても、それを作ったり食べるまでの
手間はかかるし、食べれる環境もあまり多くないということですな・・」
匠「はい、その通り・・・ じゃあ、話ばかりでも退屈なので、こんどはまた別の
CGでまた同じように、JPEG2000の実験ね、今度はもう少し単純で圧縮しやすい
画像を選んでみよう」
森田「同じ 528x352ですね、基準値550KBに対して、34KBですから・・ えっと
約1/16というところですか・・ 良く圧縮できる画像ですね」
匠「さすがに森田さんは計算はお得意ですね、1/16に圧縮できるのはまあこれが
CGだからというのもありますよ。 見た目ではわかりにくいけど、元々計算で
作られている画像なので不規則な部分が少ないんですよ・・・
でもまあ、これも大きく圧縮すると勿論壊れます、約1/80までしてみますね」
霜月「ふん・・ 7KBまで圧縮すれば壊れるのは当たり前だろう・・」
匠「じゃあ、同じ7KBまでJPEG2000で圧縮してみよう、JPEG2000では目標圧縮値を
決めてそれにほぼ近づける値に圧縮しやすいのも特徴だ、目標値7000byte・・ドン!」
匠「例によって表示不可能だから、いったんソフトに表示させてJPEGで再保存している、
それにしても、JPEGでも26KBとなかなか小さくできたぞ・・」
霜月「むう・・ しかし、同じファイルサイズでJPEGとJPEG2000の差はあきらかだなあ、
ブロックノイズが一切出ない、JPEG2000でも画質破綻する事はあるのか?」
匠「あるよ・・ まあ、これも画像の種類や元々の解像度によりけりだけど、
1/100~1/300くらいの間で破綻してしまうと思う。 それでも、画像はケバケバしく
なってくるだけなので、JPEGのように破綻が目立つことは少ないんだ。」
森田「いやあ、JPEG2000は凄いですなあ・・」
匠「それと、もう1つ特徴がある、JPEG2000では、森田さんの言うところの元に戻せる
圧縮ができるんだ。 可逆圧縮、または「ロスレス圧縮(=ロスが無い)」と言う。
じゃあ、やってみるぞ、ドン・・」
霜月「(掛け声はいらんと言っているのに・・苦笑)」
匠「JPEG化したので元と同じ34KBだけど実はこのJPEG2000ファイルは176KBある・・汗」
霜月「なに? それではJPEGよりずっと多いじゃあないか? 何のための圧縮だよ?」
匠「だから元に戻せるというメリットがあるんだ。表示(解凍)で戻すのではないぞ、
圧縮した後に元に復元できるんだ。 で、よく考えてみたらわけるけど、
元々の非圧縮では、550KBあるはずだ、それが176KBになるのだから、だいたい1/3
くらいにはなっているということだね。 まあがんばっている方じゃあないかな?」
霜月「むう・・ まあ、記録写真とか、医療写真とか、そんな厳密な分野であれば
何も失うことなく1/3に圧縮できるなら効果的ということなのだろう・・
でも、オレだったら元に戻せないでもいいからJPEGでいいや・・」
森田「あのう・・わたくし疑問があるのですが・・・JPEG2000の凄さはよくわかりました
それなのに、何故普及しないのでしょう?」
匠「さあ・・ もういまさらここまでJPEGが普及しているから、なかなか新しい
フォーマット(画像形式)は使いにくいということではないのかな?
だって、今までのJPEGとは互換性が無いから、デジカメもパソコンもプリンタ
も携帯もTVも全部買い換えて古いのはもう使わないという事にしないかぎりは
JPEGがJPEG2000に置き換わるという事は無いのかも・・・」
森田「それは大変ですなあ・・」
匠「まあ、実際にはパソコンはソフトを追加すればなんとかなるし、カメラだって
JPEGモード、JPEG2000モードを切り替えれるようにすれば、だんだん自然に普及
していくかもしれないけど・・
楽器で言うところのMIDIと同じだよね・・ MIDIはもう20年以上前、
インターネットすらなかった時代にできた規格で、楽器と楽器を繋いで音を出す、
つまり、こっちのピアノの鍵盤をポンとたたけば、あっちのシンセが鳴るというものだ。
でも今時の光ファイバー回線の1/1000程度の速度でしか通信しない(汗)
これでは沢山の楽器を繋いだりパソコンから制御するのは遅すぎる、まあ、
古い規格だからしかたない・・ 当時は最新だったわけだしな。
けど、だからと言ってMIDIを捨てたら、昔の楽器をコントロールできなく
なるので困ってしまう、だから今でもまだずっと、この古いMIDIの端子が
楽器にはついているわけだ・・」
霜月「ふうむ・・ 一度普及してしまった規格を変えるのは大変ということだな・・」
匠「まあ、だからこれからもJPEG2000はもしかしたら一切普及せず、このまま消えて
幻の画像フォーマットになってしまうかもしれないぞ。
でもそれではあまりに勿体無い・・ 今時の携帯もだいぶ計算能力はパワーアップ
されているわけだし、テンプラを揚げるくらい(笑)できない事も無いだろう・・
あとはメーカーにやる気があるかどうかだよな・・ 」
霜月「まあよくわかったが、そもそも今日の解説の主旨はなんなんだよ?
優れているけど使えない圧縮方式の話しをしてもしかたないだろう?」
匠「まあまあ・・(汗) 元々、「幻の・・」、「限定品・・」、「今だけサービス」
「大特価、半額」、「なんと1/100!」とかの謳い文句に弱んだよなあ・・」
森田「匠さん、それ、ウチのカミサンも同じですよ・・」
匠「はあ・・・まあ・・ 誰でも弱いのかもね・・(笑)」