女性「あの~、私、マニュアルカメラが欲しいのですが・・」
匠「・・・・う~ん・・ あ、そうだ! お~い、霜月、出番だぞ!」
霜月「あ~? なんだ? また悩み相談室かよ? オレはもうこの件から手を
引きたいって何度も言っていただろう?」
(注:霜月了は仮想キャラ。 29歳男性、オレ流ストレートフォト。
技巧派で真面目な性格、感覚面に弱く最近はそれが悩みの種)
匠「まあ、そう言わんと・・ で、彼女、マニュアル機が欲しいそうだ」
霜月「そんなの匠のオッサンの方が詳しいだろうに? テキトーに安い名機を
紹介したら終りだろうが?
んで、カワイイ娘だったら一緒に付いていって買い物に行ったりするんだろう?」
匠「いや、まあ・・(汗) 霜月にもちょっと勉強してもらいたい意味もあって・・」
霜月「しゃあないなあ・・まあ、わかった。 で、そこの彼女はどんなのが欲しいんだ?」
女性「え~、全然わからないんですよ。 だから聞きにきたんです。」
霜月「わからないって・・ わからないのにマニュアル機が欲しいのか?
そもそも何でそう思った? 一眼は持っているんじゃないのか?」
女性「持ってますよ、キヤノンの・・」
霜月「キヤノンの何だ? キスデジNか? ゴーゴー(注:EOS 55)か?」
女性「え・・ わからないです(汗) お店の人に言われて買ったんで、
あ、デジタルじゃあないです、フィルムを入れるやつで・・・」
霜月「ズデッ・・ 自分のカメラの型番を知らないのか? それで良く写真が撮れる
もんだな・・(苦笑) まあいい・・ じゃあちょっと説明しよう。」

霜月「まず、このカメラは、オレが以前使っていた NIKON FE2だよ。
今はオレもすっかりデジタル派になってしまったがな・・
で、マニュアル機というのはこういうのを言うんだ。」
女性「うわ~、やっぱり格好いいですね・・ なんだかカメラらしくって
そうそう、こういうのが欲しいのですよ。 これ、おいくらですか?」
霜月「いくらって・・(汗) まずこのカメラは今は売ってないんだ、だから中古で
買うようになると思うんだけど、え~と、ボディ・・本体は、いくらくらいかな?
匠のオッサンではないから相場はわからないけど、オレが買ったときは
確か5万円くらいしたぞ。 今はいくらするのかな? もっと安いかもな。
で、カメラだけじゃないんだ、別にレンズもいるんだ、それは知ってるな?」
女性「え? レンズってカメラについてくるんじゃないんですか?」
霜月「ズデッ・・(汗) (そうか・・ 今時、女性がカメラを買う場合は、ほとんど
レンズKIT付きだからな・・ レンズを別に買うという感覚が無いのか・・)
いや、別に買わないといけない、結構高いぞ。 このレンズも今は売ってない
んだが、3万円や4万円はすると思う。」
女性「そんなに高いんですか? 両方で8万円? え~、それなら、もうデジカメ
買っちゃおうかな? 私は、3万円くらいで買えるものだと思ってました。」
霜月「まあ、マニュアル機といっても星の数ほど種類があるんだ、そりゃあ中には
レンズ付きで1万とか2万とか、超格安なのもあるぞ、でもまあ、どうせ
買うのなら、ある程度ちゃんとしたカメラとレンズを買わないと意味が無い
んじゃないのか? あんまり安いのを買うと壊れたり飽きたりして無駄になるぞ」
女性「はい、まあ、そうなんですよね・・ でもやっぱりマニュアルカメラが欲しいな」
霜月「まあ、カメラの格好とか、写真を撮っている気分だとか、写真の勉強を真面目に
するのにマニュアル機は良いところが多いのだが、それにしても何でマニュアル
なのか? という理由をはっきりしなくちゃなあ・・ そうでないと、勧めよう
もないし、オレの使っていたFE2くらいしか今のところ思いつかないよ・・」
女性「え~、デザインもそうなんですけど、私、今は全部オートで撮っているんですよ
だからなんか写真がどれもこれも同じように見えて・・ なので、マニュアルで
撮ったら何か写真が変わるんじゃないかと思って・・」
霜月「ん? オートって、AFか? それともプログラムか?」
女性「え~・・ Pで撮ってます。 エーエフとかプログラムはわからないです。」
霜月「何! AFも知らないで撮っているのか? で、マニュアルって言ったな?
もしかして、それ意味がわかって言っているのか? マニュアルって何だよ?
MFのことか? それともマニュアル露出のことか?」
女性「え~(汗) つまり、そういう専門用語が全然わからないから、マニュアルで
撮って勉強したいということでして・・」
霜月「センモンヨ~ゴ? こんなのカメラの基本中の基本じゃないか、専門でもなんでも
ないぞ、ソレも知らないので今まで写真を撮ってたのか?」
女性「ひっ・・(泣) すみません・・」
霜月「あ・・いや。声を荒げてすまん。 知らないものはしょうがない・・んだったな。
それなら・・ まず、う~ん。 いいか? マニュアルって一口に言っても、
ピントを合わせる部分で、AFとマニュアルフォーカスがあるんだ。
で、露出を決定する機能として、AEとマニュアル露出がある。
それで、今使っているカメラはなんだっけ? あ、わからないのか・・
まあいい、今の一眼でも必ず、露出モードの切り替えやMFはついている
はずだぞ、それを使えばマニュアルで撮れるんだ。」
女性「え? 私のカメラもマニュアルになるんですか?」
霜月「当たり前だろう・・ (あ、知らなければしょうがない・・しょうがない・・と)
まず、露出モードだけど、P,A,S、Mのように書いてあるスイッチが
どこかについてないか? ほら、こんなやつだ」

女性「私のカメラにはそんなスイッチはついてないです」
霜月「まあ、こういう風にはっきりとしたダイヤルがついている機種はむしろ珍しい
のかもしれないが、どんな一眼レフでも、どこかのモードボタンを押しながら
切り替えると、Pモードではなくて、MでもAでも好きなモードで撮れる。
取扱説明書は読んでないのか?」
女性「説明書は何が書いてあるか、さっぱりわからなくて・・(苦笑)」
霜月「まあいい・・ 電子機器の取説はわかりにくいものと相場が決まっている、
でもまあ、今度ちゃんと読んで、PとかA,とか・・ あ、キヤノンの
場合は、AvにTvだったな・・ まったく、何でいまだにカメラ業界は
用語の統一すらできないんだ・・ 困ったものだ、これだから初心者が
混乱するんだよ。 だからいつまでたっても初級者からステップアップできない。
カメラメーカーは自ら首を絞めていることに気が付かないのか?
はっ・・ 今はそんな事を言っても始まらないか・・(苦笑)」
女性「で、そのMモードに切り替えると、マニュアルになるんですか?」
霜月「ああ・・ その通りだ。 でも、何で、わざわざマニュアル露出にするんだ?
Pで撮りたくなかったら、絞り優先のAやAvで撮れば良いじゃないか?
マニュアル露出にしたって、どうせ露出計のメーターを見ながら自分で合わせる
だけだから、単に手間を増やしているだけだぞ」
女性「え? マニュアルって、結局何かを見て合わせるのですか?
自分でシャッターとかそんなのを自由に決めて撮るのではないのでしょうか?」
霜月「そんな事をしたら露出がバラバラになって、真っ黒や真っ白な写真を量産する
だけだよ・・ いいか? まずは露出の仕組みを勉強しなければならない、
マニュアル露出はそれからだ・・ で、それもすぐにあまり意味が無いことに
気が付くだろう。 本来マニュアル露出というのは、花火やら夜景やら、
あるいは照明が色々変化する状況とか、非常に特殊な状況でしか使わない機能
なんだ、初級者がマニュアル露出なんか使ってもほとんど意味が無いぞ。」
女性「そうなんですか・・ なんだか意味がわからないので、まだピンとこないですが、
マニュアルにしたからって自分の好きには撮れないのですね・・」
霜月「その通りだ・・
(なるほど・・ だんだん匠のオッサンが何故この相談をオレに廻したのか
わかってきたぞ・・ これは初級者の陥りやすい誤解とか、そういうのを
理解するための勉強なんだな・・ わかったよ、ならもうすこしキレずに
付き合ってやるか・・)
で、マニュアル露出は意味があんまり無いけど、マニュアルフォーカスだったら
初心者でも十分に使える機能なんだ、まずはそこからやったらどうなんだ?」
女性「わかりました、それはどうやって設定するのでしょうか?」
霜月「AF/MFの切り替えスイッチがあるだろう? こんな風にカメラについている」

女性「え~? 私のカメラには、確かこういうのはついていなかったような・・」
霜月「まあ、AFは普通、S(シングル)とC(コンティニュアス)があるからな、
じゃあ、AFとは書いていないかもしれない、こういうやつだ・・」

女性「?? ワタシのはキヤノンだからついてないのでしょうか?」
霜月「あ~そうそう・・ オレはあまりキヤノンを使わないのでうっかりしていた、
確か、キヤノンの場合は、AIサーボだか、ワンショットだか・・
で、あ、そうだよ、キヤノンは、カメラ側にAFとMFの切り替えのスイッチは
なかった、レンズ側だよ、レンズ側。 そう、こんな風になっているはずだ」

女性「これは確かついています。 でもAFにしておかないとピンボケになると言われたので
使ってませんが・・」
霜月「ぐう・・(汗)(いったい誰にカメラの事を教わっているんだ?
原理とか基礎とか、そういうのをまるっきりすっとばしている。
で、たぶん、安全に撮るための設定しか教えないんだ。 写真ではなくて
カメラの操作を教えているだけだ。
これじゃあ彼女も原理が身に付くわけが無いよな・・ かわいそうだよ)
まあいい・・ で、これをMFに切り替えて使ったら、マニュアルフォーカスに
なるんだ、ちょっとこのカメラを見てごらん」
女性「はっきり見えませんが・・ これはピンボケなんでは?」
霜月「だからあ・・ ちゃんとはっきり見えるようにリングを廻すんだ・・」
女性「廻してますが、見えません・・」
霜月「そりゃあズームリングだろうが! ピントリングだよ。 ピント・・
(はっ・・ またキレそうになるところだった・・汗
アホらしいが、つまり彼女はきちんとしたカメラの原理の教育をまったく受けて
いないのだったな。 それだったらやっぱ、1から教えなくてはならないのだろう、
でも、ここまでまったく何も知らなくても写真が撮れてしまうのは、今のカメラが
高度に自動化されているからだ。 だからカメラのカの字も知らない自称
フォトグラファーが世の中にはいくらでもいる。 しかし、それは自分で写真を
撮っているのではなくて、カメラが撮っているにすぎないのではないのか?
う~ん・・ それでいいのだろうか?)」
女性「あ、こっちを廻すのですね、はい、はっきり見えました。 なるほど、
ピントはこうやったら合うのですね。」
霜月「まあ、そういうことだ・・
(はっ! わかったぞ・・ そうか、彼女だって自分ではなくてカメラが写真を
撮っている事なんて、とっくに気が付いているんだ。 だから自分の力で
写真を撮りたくて、マニュアル機が欲しいということなのか・・ う~む、
なるほど、よくわかった、それが彼女達のニーズなんだな・・)」
女性「わかりました、これで少しはマニュアルで撮れそうです!」
霜月「あ、じゃあ、もう少し補足しておくぞ。
いいか、MFに切り替えて使うと、まず今までAFでは画面の中央のあたりで
しか ピントが合わなかったのが、画面のどこでも自分の見た目でピントを
合わせることができるんだ。 だから、中央に被写体を置いた「日の丸構図」
ではなくても、画面の隅にでも横でも上でも被写体をおいて好きな構図で
撮ることができるんだ、わかるかな?」
女性「ちょっと待ってくださいね、メモします・・」
霜月「お、なかなか感心だな。 じゃあ続けるぞ。 実はAFには弱点があって、
模様の無い被写体やキラキラ光る水面や、あるいは動物園の檻の中の動物とか
花を撮るときに、オシベやメシベの1本とか、そういう細かい被写体には
AFは合わないんだ、だから、そういう場合はMFに切り替えて撮る・・」
女性「ちょ、ちょっと・・(汗) キラキラの水面の次はなんでしたっけ?」
霜月「動物園の檻や柵の中だ・・ 書けたかな? じゃあその次が・・
(はっ! もしかして、これじゃあ、オレはちゃんと教えている事にならないん
じゃないのか? 原理を教えないと、じゃあ、その次は雪だるまにピントを
合わせる場合とか、暗い場所で蝋燭にピントを合わせる場合とか・・そんな風に
いくらでもケース(状況)を列挙しなくてはならなくなる・・
彼女はそれをまるで英単語を覚えるように暗記していくだけだ・・
知らない単語が出てきたら対応できない、そんな事は習ってなかったと言う
だけになってしまうだろう・・ う~ん、こりゃあまずいな・・
原理を教えなくては・・ しかし、AFの原理なんて、どうやってオレが説明
できるんだよ・・ う~ん、う~ん・・)」
女性「霜月さん? どうされました? 動物園の次はなんでしょう?」
霜月「あ、いいんだ・・・ もういい・・
そんなことを覚えるより、もっと簡単な方法がある。
AFで撮ったら、まずどこかにピントが合う。 いいかピントはどこか1点か
あるいは同じ距離にある平面にしか合わないんだ。 それはわかるな?」
女性「はあ、なんとなく・・・」
霜月「(チッ・・その辺もやはりわかってないのか・・まあいい、もうわかっただろう)
で、その時の様子は、ファインダーの中をちゃんと見れば画面のどこにピントが
合っているかわかるだろう? で、もし、それが気にいらなかったら、
つまり、たとえば動物園で、奥の動物にピントを合わせたいのに勝手に檻に
合ってしまったら、そういうときはAFが苦手な被写体ということだから、
MFに切り替えて自分の目でピントを合わせるんだ。」
女性「はい・・」
霜月「最初から全部MFで撮るのもいいけど、それだとAFがどんな場合に迷うのか
とか、そういうケースが体験的に理解できない、だから、通常はAFで撮って
何かおかしいな、と思ったらMFに切り替えることを繰り返すことで、だんだん
AFの長所短所が理解できるようになってくると思う、つまり経験だな。
ある程度経験を積んだところで、そこから初めてAFの仕組みを本とかで
勉強したらいいんだ、そうすればあっと言う間に理解できるぞ」
女性「はい、わかりました・・ つまり、まだマニュアルで撮るのは早いという
ことなのですね・・」
霜月「そうは言っていない。 オートもマニュアルも、まずはそれぞれのメリットと
デメリットを理解するという事だ。 それがわかったら、マニュアルでも
なんでも好きなようにしたらいいんだ。 まずは今までと違うところは、
何故上手くいくのか、何故失敗するのかを、ちゃんと反省、分析することが
大事だ、ということだな。」
女性「了解です、ではしばらくそうやって撮ってみます。
霜月さん、今日はありがとうございました・・」
----
匠「うん、よしよし、霜月もやればできるじゃあないか・・ 」
霜月「ふう・・ いやあ、オレは初級者が何故簡単な事も理解できないのか、という
事を常々不思議に思っていたのだが、今日、それが少しわかったように思えたよ。
それに、もう1つ重要なことにも気が付いた。」
匠「ん? なんだ?」
霜月「彼女達は、カメラが写真を撮っている、ということに気が付いている、という
ことだ。 だから自分の力で写真を撮りたい、そういう向上心を持っている
んだな、ということに気が付いた。 オレは今まで、ああいう娘たちは
カメラの勉強をしたくないから、放棄しているものだとばかり思っていた。」
匠「・・ああ、その通りだよ。ただ、勉強したくても、どうやったいいのかわからない
だけなんだ。 で、周りから、あれやこれやと・・ そう、さっきの霜月の
途中のアドバイスのように、AFの苦手な被写体みたいな、意味も無い詰め込み
教育をするか、あるいは、もっと最初の方の話のように、どうせコイツは理解
できるわけないと見下して「AFにしないとピンボケするぞ」と教えること自体を
放棄したようなアドバイスをする。 これがイカンのだな・・」
霜月「まさにそうなんだろう・・ でもオレも今まで、そういう意味だったら
あまりにテキトーに教えていたように思うよ、ちょと反省したぜ。」
匠「まあいい・・ 今回の事で霜月もちょっとは勉強になったようだな、
じゃあ、また次回も悩み相談頼むぞ。」
霜月「またやるんかよ・・ オレはもういいよ・・」
匠「何を言うか? 霜月は森田さんとかEMAにも今後教えていく必要があるんだろう?
だったら、ちょとは真面目に勉強せんかいな?」
霜月「ぐぅ・・・ というかむしろ、森田さんやEMAには教わることも多くて・・」
匠「・・まあ、それが持ちつ持たれつ、というやつだよ、わかったかな・・?(笑)」