
手前左 CONTAX Tvs 手前右 CONTAX Tix
奥左 Nikon F3/T 奥右 OLYMPUS OM-4Ti
「チタンボディ」・・・実に魅力的な響きである。
チタンはご存知金属の名前である、軽量で堅牢、身近な工業製品だと、やはりカメラ、
そして時計、ゴルフのクラブヘッド。
あるいは、航空機の部品や、冷戦時代の旧ソ連潜水艦「アルファ級」にも使われた
という噂もある。
チタンは加工が難しく、コストは鉄の数十倍とも言われる高価な金属である、
軽くて丈夫だと言われており、一部の高級カメラに使われていた。
ニコンであれば、F3/T,F3白チタン、FM2/T などがまあ今でもセミレア品ながら
中古でなんとか手に入れることができる。
F2のチタン(ネーム、ノーネーム)は、特別仕様品で、今やレア物になってしまい、
数十万円の価格で取引されている。 F3/Tでも白になると20万を超えるものもある、
FM2/Tは5-6年前までは市販されていて比較的安価で良く見たのであるが、
今やほどんど見ず、あっても10万円を超える値札がついている。
FM2/Tには、海外特別仕様のドラゴンだとかドッグイヤーだとかがあって、これらも
レアモノの10数万円の相場である。
またF5などの一部のパーツ(ファインダー等)にチタンが使われているが、
これはチタン(ボディ)カメラとは言わない。
キヤノンでは最近のIXYの高級機を除き。チタンのカメラは確か無かったように思う。
きっと、キヤノンの製品戦略上、チタンカメラなどにはあまり興味がないのだろうか?
PENTAXでは、LXチタンという限定発売カメラがあったと思うが、レアで1度見かけたが
30万円以上の値札がついていた(汗) なお、LX2000は銀色であるがチタンではない。
また、P30/Tという普及機は、チタンカラーと言うものの、これもチタン製ではない。
大衆路線のPENTAXも、チタンにはあまり興味が無いのだと思われる。
OLYMPUS では、OM-3Ti、OM-4Ti、OM-4白チタンの3機種があったと思うが、
うちOM-3Tiは、生産台数が3000台強と少なく、レアモノになっている。
今から8年ほど前に、それでも新品を13万円ほどで入手したのであるが、その時点で
北海道からの在庫を取り寄せた、今やまったく見ることができない。
OM-4Tiの黒、白はまだ良く見るが程度の良いものは8万円ほどの相場になっている。
ミノルタのチタンカメラは、まず銀塩コンパクトのTC-1がある。 これは単焦点高級
コンパクトとしては最も高価なカメラで、いまでも中古で7~10万円程度で取引される。
また、幻のα-9Tiという一眼があり、これは過去中古で1度しか見たことがなく、
価格も26万円くらいとかなり高価であった。 私はノーマルのα-9を愛用しているが
チタンバージョンはノーマルより100g以上軽いという噂があり(正確なスペックが
今やなかなか入手できないため、確かでは無いが・・)かなり欲しかったのであるが
さすがに価格が高すぎて購入をあきらめた・・
コンタックスでは、銀塩高級コンパクトのTvsシリーズ、そして、T2,T3,あるいはAPSの
Tix がチタンボディである、高級コンパクトが絶滅した3年ほど前からT3はかなり
品薄になったが、最近ようやく6万円前後でまた中古を見ることができるようになった。
APS最強のTix は3万円前後の投売りが続いたが、あまり欲しがる人は多く無い。
またレンジファインダーでは、G1,G2があるが、コンタックスのカメラ事業撤退以来
あまり人気が無く、今ではかなり安価で入手できる。
コンタックス一眼では、S2やS2bがあるが、S2bはセミレア品。これは10万円弱で
以前入手したが、今ではまず見ることができない。 S2はたまに6万円前後で見かけるが
ほとんどが60周年記念モデルでかつスポット測光のみのカメラなのであまり人気が無い。
S2bや、T3,T2ブラックは、窒化チタンという黒っぽい塗装になっている。
高級路線のコンタックスらしく、チタン製のカメラは各メーカー中、最も多い。
コニカのHEXER RFのLimited は銀色の塗装であったが、これははたしてチタンだったか?
(たぶん違うと思う)限定レンズ付き定価42万であるが在庫がかなり残っていて、
新品を半額で入手したが欲しい人に譲ってしまった。
ライカのMシリーズにも一部チタン製があると聞くが、私は、ライカは今のところ手を出して
いないので(見ると欲しくなるから)、見て見ぬふり・・(笑)
私もなんだかんだチタン製のカメラを良く買ったものだが、結局今でも手元に残って
いるのは5台にすぎない。 結局チタンのカメラが欲しくて買っても、実用的には
あまり使えないので防湿庫に眠ってしまうのである・・
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では、チタン製のカメラのどこが優れているのであろうか?
まずは、軽量・・ とは言っても、カメラの場合、内部部品まで含めて全部チタンで
できているわけではなく、外装の一部、あるいは表面がチタンなだけである。
だから、500g前後の中級機の場合、たとえばFM2とFM2/T あるいは OM-3/4 と同Ti版
を比べても、20~30g程度チタン製が軽いだけである。 これでは大差が無いといえよう。
700g前後のF2/F3でもチタン版はあまり軽量ではない。 900g台のα-9になって
100g以上軽いのであるが、これは前述したように確証のあるデータではない。
また、CONTAX のGやTシリーズでは、チタンでは無いノーマル版が無いので重量の
比較の対象が無い。 でも、Tシリーズはもともと重量感がかなりあるカメラであり、
Tvsなどは、軽量一眼レフ並みの400g近い重さがある。
これだったら同じ銀塩高級コンパクトでもGRシリーズのマグネシウムボディの方が
かなり軽い(もっとも、マグネシウムはパキっと割れやすく、私の初代GR1は
一度それをやって壊してしまった・・)
では、チタンの次の特徴・・堅牢(丈夫)なこと。
これも実際には比較の対象が無い、一度、どこかで、チタン製カメラを鉄製ストーブの
上に落したら、カメラにはキズがつかず、ストーブにキズがついた、
という話を聞いたことがあるが、これはちょっと眉唾である。
チタンは細かい擦り傷とかそういう場合には強いが、衝撃に対しての強度は
鉄の数倍も強いわけではなく、ましてや総チタン製のカメラなんか無いのだから
落したら壊れるに決まっている。
チタン製のカメラの中古の90%以上がピカピカで傷ひとつ無いのは、そのオーナーは
チタンの高価なカメラだから、とても大事に、丁寧に扱っていたからであって、
念のため裏ブタをあけてフィルム圧版のあたりをチェックすると、ほとんどフィルムを
通していない、つまり、写真を写していなかったことが明らかなカメラがほとんどだ、
つまり、チタンカメラは普通はお金持ちのコレクターが道楽で集めるカメラであって、
実用的にガンガン使われていたカメラは、せいぜいOM-4Tiのシリーズあたりであり、
他はほとんどがコレクターズアイテムとなっていたのであろう。
だから、チタン製のカメラが丈夫だとか頑丈だというのも誤り、それは、傷でスレスレ、
ボロボロに使い込まれた中古のOM-4Tiを見れば、「ああ、やっぱりカメラはカメラ
なんだろうな・・・」と思ってしまう。
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ではチタンカメラの特徴とは何か?
私が思うに、それは感触性能であるのだと思う。
感触性能とは、たとえばMFカメラであれば、ファインダーの見えやピントの合い具合
MFレンズのヘリコイドの重さ、などがあげられるが、全体の作りというのも感触性能
の一部である。
現行(デジタル一眼レフ)カメラで感触性能を持つものはほとんど無い、
しいてあげれば、ニコンD2シリーズ、キヤノン1Dシリーズの最高機種であるが、
これも感触性能というよりは、「しっかりした作り」と言う方が適切であろう。
同じニコンやキヤノンのカメラでも、F3(/T)や、New F-1などを一度触ってみれば
感触性能のなんたるかがわかると思うし、PENTAX LX などは、その極致である。
AFカメラではせいぜいα-9くらいか・・あとのカメラは単なるフィルム箱にすぎない。
ライカは・・ ハマると怖いので触らないようにしてる。
もちろんツアイスイコンも触るのはイヤだ・・(饅頭怖い・・笑)
で、チタンカメラの感触性能であるが、その最大のポイントは、カメラを持ったときの
肌触りである。 ひんやりとして、少しザラっとした感触、これはいかにも高級な
工芸品のようなイメージがあり、所有することの満足度が高まる・・
けど、それを所有感だけにフォーカスしてしまうと、コレクターになってしまい、
防湿庫のこやしになるのがオチである。
すばらしい感触のカメラだからこそ、写欲を高め、フィールドに出たくなる、
つまり、次の休日も愛機を持って写真を写しに行きたいという気持ちになる。
それがノーマルな感覚なのであって、チタンだから勿体無いから写真を写さない、
というのでは、何のためのカメラなのだかわからない、あくまで道具は使うことに
価値がある。
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AF時代から以降、デジタルも含めカメラは単なる耐久消費財の位置づけに
なってしまい、所有感を満足させるカメラは皆無になってしまった。
近年では、キヤノンのIXYデジタル1000がチタンを使っているらしいが、
他は皆無に等しい。 逆に言えば、AF、デジタルカメラにおいて、感触性能を
満足させるようなものは全然無いということである。
だから、そういうチタンカメラを知っていれば、デジタル一眼を触ればすべてが
玩具のように安っぽく思えて当然である。 チタンカメラあるいはMF時代の
最高級を知らなければ、やれ今度でた新製品の一眼はしっかり作っているとか
その程度のレベルの範囲での比較しかできない。
そして、プラスチックのペナペナのカメラしか知らない人が、チタンカメラや
MFの高級機を一度触ってみると、そのあまりの差に驚愕するのである、
「これが本来のカメラなのか・・」と・・・
このブログではよく「自分なりの価値観の判断基準を持つ」という話をしているが
それは、最低ランクのものから最高ランクのものまで一通りすべて知らないと
価値観のスケールは身につかない。
とは言え、常に高価なものを買え、とは言わない。趣味にかけれる予算は人それぞれ
だし、かならずしも高価な機材が、性能的にも感覚的にも優れているというわけでは
無いからである。 だから、いちおうその範囲(幅)を知った上で、この価格であれば
コストパフォーマンスが良いとか、悪いとか、そういう事を判断できるようになる
のが良いということである。
私がいつも言っている「スーパーレンズ」というのもそれである、
価格をはるかに超えた性能を持つレンズ、それは概ね1万円~10万円までの範囲で
購入できる優れた描写力を持つレンズの事である。
レンズの事を知らず、あるいは中古カメラ屋なんて行った事も無い人は、
メーカーのレンズカタログを見て、一番高価なレンズは最も良い写りをするものだと
勘違いして、カタログの値段を見てため息をつく・・
そしてボーナスや貯金をはたいて無理して買ったレンズは、もうあばたもえくぼで
悪いところなど見えやしない、「このレンズは凄いぞ・・・」と思い込み周囲にも
言いふらす・・ そんな高価なレンズを買ったことも使った事も無い周囲の人達は
「へえ、やはり高いレンズはいいんだなあ・・・」と羨望も込みでそう思い込む。
でも実際のところはそうではない・・ 20万円以上も出して高いだけで何のとりえも
無いレンズを買うくらいだったら、4万円のスーパーレンズを5本買った方が
よほど実用的である、じゃあ、その4万円のレンズを見分ける力、価値観、それが
重要なのである。
「買ってみなきゃわからないではないか・・」、そう、レンズに関してはその通り、
だから、私も膨大な金額の投資をレンズにしてきて、自分で買ったレンズ以外の
評価は一切言わないようにしてきている。 聞きかじりや、たまたま雑誌で1枚や
2枚の写真を見た程度で、あのレンズの描写はどうのこうのと、素人のような事は
絶対に言いたくない、ただ、良いレンズはこのブログではいくつも紹介している。
で、レンズはそうであるが、カメラボディの場合は、店頭や友人のカメラを触る機会は
いくらでもあるだろう、でも、その時に、良いカメラか悪いカメラを見分ける評価の
価値観をもたなければ、何の意味も無い。
古臭い性能の低いカメラだと、PENTAX LX が中古市場でまったく人気が無かった
時期があった・・ 私は45000円、55000円の価格で2回LXを購入したのであったが、
その後、ロングセラーであったLXが発売中止になって、初めてLXに興味を持った
ライターやマニアがLXを初めて触ってみて、「これは凄い・・」ということになり
LXの本が何冊も出て、中古市場からタマがなくなり、高騰したことがあった。
(というか、今でも高値のままである・・)
何で売っているときに気が付かないの? 私は、それが不思議でならなかった。
GRだってそうだ、3万円くらいで、いくらでも売っている時があった、
私は、GR1からGR1s に買い替え、GR1を友人に2万円で売った。それでも高く売れたと
思っていた。 ところがリコーが銀塩から撤退し、GR1シリーズが発売中止になった
3年ほど前からの高騰ぶりはどうだ? 市場からは1台も中古がなくなり、あっても
定価と変わらないような価格で取引されている。
何人もの友人に「匠さん、GR1どこかで安く手に入らない?」と聞かれた。
私はそのたびに「何であるときに買っておかない? 何度も勧めただろう?」と答えた。
今でこそ、GRDが発売されているので、GR熱もややさめ、中古もたまに見ることが
あるが、それでも安くても7万円くらいする。 GR1は優秀なカメラではあるが
7万円も払う価値はない。 せいぜいが4万円くらいがいいところである。
これが「絶対的な価値観」であって、それを持たないから、無茶苦茶な買い物を
してしまうわけである。
ましてやGR21、私が新品発売と同時に138000円の高価なカメラを11万いくらも
出して買ったとき、周囲の人は「何故そんなものにそんなお金をかけるの?」と聞いた、
まあ、確かに使ってみれば、「これは6万円程度の価値だよな・・」という気がしたので
あるが、それでも実際にはその時に買っておいてよかった。 GR21は案の定
生産している間はまったく話題にもならないカメラであったのが、これも発売中止と
同時に大騒ぎになって、オークションで20万円以上で売られるという異常事態。
先日も中古で18万円で見かけた・・(汗)
「絶対的価値観を持たないからだ・・これではカメラバブルだよ・・」
「売ったら儲かるんでは?」といわれる事もあったが、私は使うために買ったのであって
カメラは投機の対象ではない、そこを勘違いしてもらってはこまる。
私の変わった知人に外国人の中古カメラブローカーがいるが、彼は写真を撮らない、
あるお店で相場より安く買ったカメラを、(それを欲しがる)別の店で相場より高く
売って、その差額で利益を得るのである。(古本のセドリと同様である)
たまに私が中古カメラ屋をまわっていると、色々な場所で彼に出くわす。
お店の人は「その筋」の人である事は、知っているのであるが、
私に向かって「あ、お友達ですか?」と言われると困ってしまう。
「いえいえ・・」とそ知らぬ顔をして、自分が使うために欲しいカメラやレンズを
探すのである。 だが、すでにお店の人に警戒されている視線が背後から痛い・・(汗)
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チタンカメラの話からずいぶんそれてしまったが、今回の結論としては、やはり
カメラは写真を撮るための道具なのであるから、そこにはちゃんと自分なりの
価値観やこだわりを持って、道具を選ぶのも良いということである。
そして価値観は知らなければ、使わなければ、投資しなければ身につかない部分もある。
機材に興味が無ければ写真の楽しみはやはりかなり減ってしまうであろう、
また興味を持ちすぎて機材オタクなっても、同じく写真の楽しみは半減する。
さらには、人の言うことばかり信じていては、自分の価値観は育たない・・
ともかく、楽しく写真を撮るためには、バランスよく自分なりの道具に対する
こだわりを持つことが大切なのであろうと思う。