初級者は一眼レフを(初めて)買う時に、まず100%と言っていいほど交換レンズを
意識して買うことは無いであろう。
よく聞くのが「どこのメーカーのカメラを買ったら良いのですか?」
という質問であるが、ぶっちゃけ、そんなの知らんがな・・
いったいいくらカメラ機材に予算をかけるつもりであって、どんな被写体をどのように
撮りたいか、その機材をどんな時に使うか・・ 色々な条件を聞かないかぎりは
レンズは決まらないし、もちろんカメラだって決まらない、ましてやメーカーなんか
そんな聞き方をされたら「どれを買っても一緒だ」としか答えようが無い。
で、とりあえず一眼にオマケズームのKIT、またはちょっと奮発して高倍率ズームを
買うのが普通であろう。 今時である、デジタル一眼に50mm/F1.4の大口径標準を
最初から買う人は皆無である。(MF時代は、それが普通だったが・・)
でもとりあえず半年なり1年なりしてくると、レンズに初めて興味が出てくる、
で、マクロレンズが欲しいという話を良く聞く。
「匠さん、マクロはどこのメーカーが良いのですか?」
・・・いまさらそんな事を言われてもなあ・・ 最初からマクロを購入するのが前提
ならばレンズを選んで、それに見合うカメラを選ぶこともできたが、すでにカメラ
量販店の店員さんに言いくるめられて入門者向けのKITを買ったところで、
それと同額にも相当するような高性能マクロレンズなんか、なかなか推奨できないよ・・
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さて、今回はマクロレンズである、定評のあるミノルタAF50/2.8Macro
このレンズは初期型またはⅠ型という、いちばん古いタイプのレンズで発売されて
かれこれ20年が経過する。 私は10年ほど前に15000円の価格で中古購入したが、
その後も何度も友人にこれを勧め、中古購入に何度も付き合い概ね9000円~13000円
の範囲で何本も買ったことがある。
正直非常に安価なレンズであるが、私が思うに、マクロのベストレンズとも言える
ものであって、そのコストパフォーマンスから言えば、まさに「スーパーレンズ」である。
で、その安価で良く写るスーパーレンズを持ち出してみる。
しかし今回の記事は、「名レンズ編」では無いので、その性能うんぬんよりも、
どちらかといえば使いこなしの方に主眼を置くことにしよう。
まずは、マクロと言えば花の撮影、とばかり、まあ、一種条件反射的に、
あるいは固定観念により、花=マクロ、マクロ=花という風に思わないであろうか?

↑絞り開放近く(トリミング)
しかし、綺麗な花を綺麗に撮るだけでは何ら写真としては面白くはない、
マクロレンズの練習とばかり花を撮り続けるのも良いが、いつまでも練習と言って
いたら意味が無いであろう、そこから何か次のステップを考えていかなければならない。
そりゃあ、もちろん花を撮るのだって、ただ単に綺麗な花を撮るばかりではなく
そこに表現を持たせることだってできるわけだし、そんなに奥が浅い被写体ではない、
ただ、そこ(つまり花を撮ること)ばかり見ていたら、写真というものもマクロレンズ
というものも、その可能性やら面白さが見えてこない場合が出てくるのではなかろうか?

↑絞り開放(撮ったまま)
デジタルでは、紫の花は色再現性が難しい。 マイナス補正を行い雰囲気を出そうと
はしているが、デジタルの宿命か、見たままの色を出すのは難しい。
また、見ているモニターやそれをプリントする環境によっても色は変わるので、
銀塩の時代のように「見たままをそのまま出したい」という欲求は、実現はできない。
できないばかりではなく、持つ必要も無いのではないかと思う。
だって、そんな仔細な事にこだわるより、写真というのはもっと楽しく撮らないと
意味がないのではなかろうか? 銀塩時代、このフィルム(特にリバーサル)と
このレンズの組み合わせで、色の再現性がどうのこうの・・ とかやっていても
デジタルなら極端に言えばレタッチで色なんてどうにでもなる。
頑ななまでにノーレタッチで通すのは、それは以前から言っている「レギュレーション
の美学」であって、たとえばブログ上で写真を通じてのコミュニケーションや
自己表現を行うという世界とはまったく違うものになってしまう。
私がマクロレンズを持ったら、とりあえずこれだよね・・

↑絞り開放(プラス補正と特殊レタッチ)
友人のI嬢のポートレート撮影であるが、50/2.8マクロは、APS-Cサイズの
デジタル一眼においては、銀塩75mm相当の焦点距離(画角)に相当し、
ポートレートにおける、人物のパーソナルスペースを侵さない適切な距離から
会話などのコミュニケーションを行いながらの撮影が可能となるレンズである。
銀塩ではこの目的には85/1.4などの大口径中望遠が使われたのであるが、
では、50/1.4を使えば良いのでは? となるが、実際にはそうでもなく、
50/1.4は一般にどのレンズも高性能ではあるが、85/1.4と比べると見劣りする
部分も多い。 そりゃあ、まあ、50/1.4と85/1.4では価格も3倍程度違うのだから
当然とも言えるかもしれないし、逆に言えば価格が3倍も違う意味は無いとも言える、
ただ、やはり50/1.4では、ボケ量、ボケ質などの面で、不満を感じてしまうことも
あって、85/1.4が使いたくなるのだが、デジタルの85/1.4では画角が狭すぎて
ポートレートには残念ながら適さない。
で、最近のマイブームでは、優秀な50/2.8標準マクロをポートレートレンズとして
使うことである。 特にこのミノルタAF50/2.8マクロはポートレートにおける
描写特性が適切であり、安心してこの用途に使うことができる。
ポートレートに必要な描写特性とは、ボケ質(特に背景側、後ろボケ)、ボケ量、
ピント面の適度なシャープネスなどであり、基本的にデジタルではボケ質がよければ
たいがい後の要素は基本的な補正レタッチでどうにでもなる。
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「モデルさんに恵まれない場合はどうしたら良いのか?」というコメントを
良く目にするのであるが、先日読んだある統計によると、一般の方が撮る写真の
およそ8割~9割は人物が入っている写真だと聞く。
まあ、そりゃあそうだろう・・ 世の中は記念写真が圧倒的だ。
でも、じゃあ、表現写真だ、なんだかんだ、と言って、いきなり人物を撮らなくなる、
というのもどうなんだろうか? 写真の基本はあくまで人物なのであろうから、
別に若くて美人の女性を撮るばかりが人物写真(ポートレート)の全てではない、
身近な家族や友人や、あるいは色々な社会的な行動の中で出会った人物を撮るのも
写真の主要な楽しみなのではなかろうか?
・・・さて、マクロレンズの話であった・・(汗)
まあ、マクロレンズだから花を撮るばかりではないということである、
しかし、小物やミニチュアを撮るというのも結局花を撮るとの大差ないであろう、
「小さいものを大きく撮る」というのが固定観念なのであって、今日みたいに
マクロレンズ1本しか持ってきていない場合、小さいものばかりを必死に探して
それを撮っているようでは、やはり視点がどうしても狭くなってしまう。
マクロは、すなわちボケ量のコントロール範囲が広いレンズだと思ってもらっても良い。

↑中間絞り(撮ったまま)
ボケ量は絞り値で決まる・・ これは初級者の常識であるが、実はボケ量を決める要素は、
それ以外に、「レンズの焦点距離」(これは長ければ長いほどよく被写界深度が浅い)
さらには被写体距離(近ければ近いほど背景や前景がよくボケる)、加えて
被写体と背景(または前景)距離の差(大きければ大きいほどよくボケる)がある。
すなわち「マクロレンズはF2.8だから、F1.4のレンズに比べてボケないよ・・」
というのは誤りであって、試しにマクロレンズをF2.8のままでいいから、最短撮影
距離近くまで近寄って、かつ背景との距離差が大きい被写体を狙って写してみると良い。
すると、だいたい45cm までしか寄れない50/1.4の大口径標準レンズのF1.4開放
背景ボケ量よりも、20cmあたりまで近づいて撮った50mmマクロのF2.8開放の方が
大きいのに気が付くと思う。
だとすると、マクロレンズは近寄れる被写体では背景(や前景)がむしろボケすぎて
しまうので、適切な値に絞り込むか、あるいは撮影距離をあえて遠ざけて(引いて)
写すか、または被写体と背景(前景)の距離差が小さい状況を探して撮らないと
表現という意味ではコントロールしずらくなってしまう事がある、という事を示している。
でもまあ、絞りを絞ったりすれば、今時のデジタルだ、シャッター速度が遅くなれば
ISOを上げれば良い話であり、自分の表現に求められる被写界深度をマクロレンズで
コントロールすることはさほど難しくは無い。

↑中間絞り(撮ったまま)
そうやって、適切なボケ量を自在に得れるのがマクロレンズの使い方としては
重要な要素なのであろうと思う。 決して「近寄って小さいものを大きく写す」
だけがマクロレンズの特徴ではないのである。
だから、マクロレンズ1本あれば、本来は極めて広範囲の被写体やその表現に
対応できる、ということである。
よく初級者から「マクロって、近いものしか撮れないのでは?」と聞かれるが
それは極めて勉強不足の発言。 マクロは最短撮影距離から無限遠まで、自分の
目の前にあるものすべてが被写体になる極めて便利で有益なレンズなのである。
私は、よく、「マクロを使うと、いままでのズームでの面の広がりから、タテの
つまり奥行きの広がりが見えるようになるよ」と言うことがある。
すなわち初級者のうちは、被写体を見るとき、平面の構図でしか認識できない、
だから、目の前に広がる景色をいったいどれくらいの範囲で撮るか、ということ
ばかり考えてしまうため、どうしてもズームに頼り、かつズームが無ければ何も
撮れないと言う。 でもそれは、写真のごくごく一部の撮り方しか見えてないので
あって、マクロを持てば、自分の目線は、平面ではなくて奥行きに変わるので、
画角、つまりズーミングで絵作りをする、という感覚から脱却することができる。
そして、マクロにも焦点距離があるのだから、一般的な撮影においては、50mmなら
50mmという画角で被写体を捕らえることもできる。

↑絞り開放(撮ったまま)
ちなみに、この水車は絞り開放で中距離での撮影だが、やはり被写界深度は浅い。
ここでこのマクロのまま、絞りを目一杯に近いところまで絞ってスローシャッターを
得てみよう。

↑絞り込んだ状態(撮ったまま)
当たり前であるが、スローシャッターで動感表現ができる、
手ブレは怖くない、αのデジタル一眼は全て手ブレ補正が補正機能があるため、
相当のスローシャッターでも手ブレをすることはない。
そして、もう一つ注意することは、絞りこんだことで被写界深度も深くなり、
水車から右側の水路にまでピントが合っていることである。
マクロレンズであっても、このように通常のレンズと同様に、絞りとシャッターの
設定により自分が必要な表現を得ることができる。
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マクロレンズと離れるが、ここで、絞りとシャッターとISOの関係について
補足として以下述べてみよう。(以下は中上級向け説明である)
もし、この際に、上側の水車のように高速シャッターで水車の動きを止めて、
かつ(絞って)被写界深度をかせごうとしたら、どうすれば良いのか?
また、下側の水車のように低速シャッターで水車の動感を得ながら、かつ絞りを
開けて被写界深度を浅くしようとしたら、どうすれば良いのか?
前者の場合、超高ISO設定があれば解決する。 とは言え、今のデジタル一眼や
新世代コンパクトで最高水準の ISO3200程度ではお話にならない。
具体的には、上の水車の撮影データは F2.8 ss=1/125 で、ISO400である。
また、下の水車の撮影データは、F11.0 ss=1/8秒で ISO400である。
☆すなわち、この条件での絞りとシャッター速度の関係(at ISO=400)
F2.8 1/125
F4.0 1/60
F5.6 1/30
F8.0 1/15
F11 1/8
で、この条件でシャッター速度1/125秒以上をキープしたまま、F11まで絞りこもう
とすると、ISOを上げれば良いことになる。
☆シャッター速度とISOの関係(at F11.0)
1/8 ISO400
1/15 ISO800
1/30 ISO1600
1/60 ISO3200
1/125 ISO6400
1/250 ISO12800
とりあえずISO6400か、ISO12800が欲しくなる。
私の手持ちのカメラでISO6400がついているのはD2Hの1機種のみだ。
このカメラは高感度でノイズが多いと嫌われて不評だった不遇のカメラだが、
そりゃあ6400まで上げればノイズが多いのは当たり前である(苦笑)、ちゃんと
考えて使えば何も問題は無い。
また、以下は逆の例である。 (絞りを開けて低速シャッターにしたい場合)
☆絞り値とISOの関係(at ss=1/8秒)
F11 ISO400
F8.0 ISO200
F5.6 ISO100
F4.0 ISO50
F2.8 ISO25
ここで絞りをF2.8まで開けたまま低速シャターを得るには、ISO25の設定が必要になる。
自分で絞りとシャッター速度を決めると、それに追従してISOが変化する
一眼レフが存在する。 ニコンは、D70あたりから以降の機種ではM露出モードで
それを採用しており、コニミノのαからAUTO ISOがあり、また新鋭のPENTAX K10D
ではその機能をフィーチャーして露出モードダイヤルに組み込んでいる。
しかしいずれの機種も、ISOの変化範囲が 200-3200 あるいは 100-1600と
非常に狭い。 これではせっかくのISO自動追従の機能が有効にはたらかない
のである。
上記計算結果を見てもわかるように、100-3200のISOの変化範囲よりも
すくなくも上下に2段、できれば3段ないし4段の変化の幅が無いかぎりは、
絞りとシャッターを決めれば自在にISOが追従するという機能は不十分である。
つまり、最低でもISOの可変範囲は、ISO25~ISO12800までは必要で、
できれば、ISO12~ISO25600 、さらには、ISO6~ISO51200までの可変範囲が
技術的に可能になった、その時にこそ、初めて、ISO自動追従の機能が
「使える」機能として役だつのであろうと思う。
「ISO51200なんて無理だよ」なんて言うなかれ、デジタルの世界は日進月歩である、
メーカーが真剣にやれば、ほんの数年から10数年でそこまでのレベルに到達する
のは難しくないであろう。 その時に、いままでの写真常識である
「絞りとシャッターの関係」という概念は完全に崩れる。
絞りとシャッターは作画意図、作画表現に応じて自由に決めるもの、そして
可変ISOがそれをサポートするもの、という新たな写真表現の世界が身近になる、
で、実は、今でもちゃんとISOのことを考えて撮れば、完璧では無いもののそれが
可能なのである、PENTAX K10Dでは、わずかにISO100-1600までの狭い範囲でしか
変化しないが、また、一般のデジタル一眼でもちゃんと考えて撮ればISOの範囲
内でその操作が可能であるが・・
ここにデジタルカメラの新しい未来がわずかに見えているように思えてならない・・