
K嬢「わたしね・・ 雨の日に生まれたんだって・・」
・・・ふ~ん、そうなの?
「だからね、雨は嫌いじゃないの・・」
ああ、そうかもね。
「海、見に行く・・?」
雨の日にか?
「雨だからね・・」
・・・わかった・・

「カメラ、濡れても平気かな・・?」
少しくらいならな。 でもレンズはちゃんとクロスで拭いてな。
タオルでカメラもくるんで・・
「船、乗ろう?」
揺れるのとか、怖いんじゃなかったっけ?
「観覧車とかジェットコースターはね・・ でも船は大丈夫」
・・・カレシが観覧車に一緒に乗りたいって言ったらどうするんだ?
「他のオンナを選んでよ。・・って言うわ」
はは・・ なるほどね。

「船、どこまで行くの?」
・・・さあ。 どこまで行きたい?
「外国まで・・」
無理だな。・・あいにく対岸までなんだ。
「わたしね、外国人に生まれたかったんだ。」
ん? なんで?
「金髪・・ なんか格好よくない?」
ふふ・・・別に今のままでもいいと思うけどね。 さ、船が着くぞ。
「日本は狭いね・・」
・・・うん。

「ISOはいくつにして撮ってるの?」
400。 だけど、私のレンズは明るいからな・・ 800がいいよ。
「800ね・・・今日は誰もいないね」
・・・こんな雨の日に、港で写真を撮っている人もいないだろうね・・
「今日の写真は、なんだかどれもEMAさんの写真みたいね」
アンニュイな雰囲気のときはEMA風に限るよ。
「どうやったらアンニュイに撮れるの?」
・・・どう説明したらいいんだろう・・? 技法的には普段となんら変わらないけど、
被写体を探す目線に気持ちを宿すことかな。

「雨は、しずくというわけ?」
それもあるが、そうでもない。 雨の日には雨で無いと撮れない被写体がある、
けど、雨だからと言って、しずくや水溜りや傘を見つけて撮るのは直接的すぎるかも。
「傘・・ さしたままでも撮れる?」
雨の中では、片手に傘では、どうせパシャパシャと写真を撮るのも難しい、
一眼の片手撮りは明るさも暗いから手ブレもやむを得ない。
技法面は一時置いておいて、まずは雨の日の気分の被写体を探すのがいいかな。
「ふ~ん、雨の日の気分ね」
・・・まあ、無理に撮ろうとしないで、ただ歩いているだけでもいいかもね。

「少し涼しくなってきたね。」
ああ・・・ じゃ、ちょっとお茶でもしていこうか?
「甘いものがいいわ・・」
わかった。

「何で一眼で撮るの? 普段はコンパクトじゃあ・・・?」
ボケラーがやりたかったからな。
「ボケラー?」
・・・ああ、1点にしかピントを合わせない撮り方だ。
従来の料理写真とは正反対の撮り方だな。
「ふ~ん、それもEMAさん風?」
ああ。
「わたしといるからEMAさん風に撮るの?」
・・・いや。 そんなこともないよ。 あくまで「気分」かな・・
「なんだ、ちがうの?」
・・・え?
「わたしね、結婚したいくらい好きな人がいたんだ」
・・・ああ。そうなの?
「でもね、別れちゃった・・」
・・・自由が欲しかった?
「さあ・・ 自由か自由じゃないかも自分の気持ち次第かもしれないね」
ああ。そうかもな・・
「もう夕暮れね」
・・・ああ、時が過ぎるのは早いね。 すべてが過去の記憶になっていく・・

「わたしは夜の方が好きかな?」
・・・ああ。 でも写真撮るには難しくなってくるかもな。
「どうやったらブレない写真が撮れるの?」
ISOを上げて、絞りを開けて、手ブレ補正がついていればそれを使う。 簡単だろ?
「でもブレてもいいわ」
・・・まあね・・ ブレも夜のイメージかもしれないな。

「雨は雨、夜は夜で、それぞれイメージがあるのね。」
そうだよ、だから、その日、その時しか撮れない写真があるんだ。
「気持ちも写真に出てくるの?」
被写体を探す心理、何を表現したいか、そして写真を選ぶ心理、すべてが関係してくる。
だから写真には必ず気持ちが表れてくるんだ。
「ふ~ん、ちょと怖いね」
・・・そうかもね。
「もう雨もあがったね」
ああ。
「傘がちょっと邪魔だわ」
でも傘をさして無ければ両手で撮れるぞ。
「ブレないってこと?」
・・・それだけじゃないよ。 一眼で両手を使わなければ撮れない写真もあるんだ。
「なにそれ?」
ああ、たとえば、ライトアップがあるだろう? まず普通に撮る。

「都会の夜はにぎやかね」
・・・ああ、眠らない街だよな。
「わたしは静かな夜が好きだわ」
・・・夜はさまざまな人間の感情が交錯するからな。
楽しい夜、悲しい夜、寂しい夜、甘い夜・・・
「昼間とは違う顔っていうことかしら?」
かもしれない。 人間はそうやって生きていくのかも・・・

「この写真はどうやって」
両手写真だよ・・ ピントを少しずらしてあげたんだ。 ずらし方でイメージも変わる。
「じゃあ、これはどんな夜?」
・・・さあ・・ アンニュイな夜?
「ふふふ・・もう雨はあがったよ」
・・・そうだな・・ 写真には気持ちが出るんだったよな・・
「ふふ・・ どんな気持ちかな?」
あはは・・ さあね・・