例によって、仮想キャラクター達による、なりきりシリーズ。
好評(?)に応え、今回は長編なので、お忙しい方はお時間がある時にでも・・
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霜月了「なあ、匠のオッサンよ、オレも最近は少しは写真の事がわかってきた、
久しぶりに、ちょっとEMAと手合わせをしたい」
(注:霜月了=29歳、男性、「オレ流」ストレートフォト、 EMA=28歳、女性、表現派)
匠「・・・ああ、いいんよ、やってみな」
EMA「ワタシは、なんかイヤだな・・写真なんて、そもそも競争とか対決するものじゃないし」
匠「・・・うん、それもそうだな。 じゃあ、二人で神社のお祭りにでも行ってきたらいい」
霜月「ん~ オレはなんか嫌だよ、一人で撮らないと落ち着かないし、お祭りは苦手だ」
EMA「ワタシも、人ごみが苦手なのね・・」
匠「・・・まあまあ・・ そもそも霜月は神社が好きだろ? それに、お祭りとかはスナップの
練習にもいいし。 なんなら、ハミルさん(注:外国人の仮想キャラ)や、森田重雄氏
(注:年配の初心者の仮想キャラ)も連れていって、撮影会にしたらいい」
霜月「いやあ・・ ハミルさんや森田さんは苦手だよ・・・」
匠「・・・だったら EMAと行ってきなさい」
EMA「まあ、ワタシはいいよ、で、どこへ行くの?」
匠「・・・んじゃ、決定。 京都の下鴨神社で、ちょうど御手洗(みたらし)祭りやってるから
そこを撮ってきて。 ああ、機材はまた条件をだいたい同じにしてな・・」
霜月「(・・ブツブツ、なんか騙された気がする。 まあ、しゃあないか・・
・・と言うか、どうせハミルさんやら何人連れていっても、結局匠のオッサンが
ひとりでやっているだけじゃないか・・ まったく、多重人格かいな?・・汗)」
というわけで、一行は京都に向かった・・

(注:イラストはいつものようにASさん)
霜月「さて、着いたな、ここが鴨川か・・」カシャ。

森田「あの~・・・」
霜月「うわぁ! びっくりした~。 なんだ、森田重雄さんか・・」
森田「お久しぶりです。 え~、なんでも今日は神社を撮影するということで
実は私も神社は大好きでして、是非ご一緒させていただきたいと思いまして・・」
EMA「いいんじゃない? じゃあ、森田さん、行きましょうか・・」
森田「はい、よろしくお願いいたします」
霜月「(ふ~、なんだか、ほっとしたような、ちょっと残念なような・・ややこしい人が
出てきたような、なんか良くわからない気持ちだよ・・)」
EMA「ここが下鴨神社? きゃ~、カワイイ~ 何これ~」 カシャ。

森田「え? EMAさん、カメラ構えずに撮影するんですか?」
EMA「ええ、ノーファインダー撮影って言うの。(エヘン)」
森田「でも、これは構図が傾いてしまってますねえ・・」
EMA「ガクッ・・(汗) まあ、いいのよ、構図の傾きなんて、気にしない、気にしない」
森田「そうなんですか? いやあ、ふうむ、さすがに若い人たちの写真は斬新ですねぇ」
霜月「(うむ・・ まあ、ノーファインダーでは垂直は取れない事は多いけど、
そして、多少の傾きは、画面にリズムや臨場感を与えることがあるのもわかるけど
ちょっとこれはオレから見ても傾きすぎだと思うよ、でも、EMAはこれで良いと
言っている。ううむ・・なんかオレまで古い考えになっているのだろうか?汗)」
霜月「まあいいや。 今日のオレのカメラは使い慣れた Dimage A2 だよ。
葉っぱにピントを合わせて、DMF機能でピントをチョイチョイと微調整、
露出補正をプラス補正、チョイチョイ・・っと」 カシャ。

森田「ほ~。 綺麗な緑と赤ですね。 でも、ちょっとお聞きしますが、何故葉っぱの
方をキッチリ写されていて、神社はピンボケになっているのでしょう?
そして、この葉っぱは穴が空いているので、あまり綺麗でもないように思うのですが・・」
霜月「むぅっ・・ あのね、森田さん・・・」
EMA「霜月さん、霜月さん」(ツンツンと肩を叩く。 あまりモメるなという合図・・)
霜月「(わかったよ・・) まあ、この場合、色の対比と形の対比がテーマですからね
被写体自体が綺麗なのものかどうか、というのは、あんまり関係ないんですよ」
森田「なるほどねえ・・ 私は神社の門といったら、それを綺麗に写すことばかり
考えているんですが、それではいけないのでしょうか?」
霜月「まあ、いけないこと無いんですけどね・・・ほら、それじゃ誰が撮っても同じでしょう?」
森田「え? 写真って、上手な人の写真を真似することで、上手くなっていくのではないので
しょうか? ほら、上手な人は、構図が上手いとか、そういうものかと思ってますが?」
EMA「森田さん、あんまり、そんなの気にすることないんですよ・・
写真は、自分が目についたもの、感じたものを自由に撮ればいいんですよ」カシャ。

霜月「あいかわらず大胆な構図・・そして大胆なレタッチ・・ ううむ・・」
森田「ほえ~ これはまるで絵ですね。 これで写真なのですか?」
EMA「へへへ・・ まあ、私も最近は匠さんの特殊加工をちょっと真似してみたりして・・・」
霜月「う~む、オマエにはまだ早いだろう?」
EMA「あはは、きっと霜月さんは自分ができないからそんな事言ってるんだ・・
匠さんは、レタッチは無限に何でも出来てしまうから、テキトーにやっても良い結果に
ならないと言ってたよ。 それと、またオマエって言ったわね・・ 気をつけてよ!」
霜月「ぐ、わかったよ・・で、オレはそんな加工には頼らないよ、あくまで正統派だ」カシャ。

森田「みたらし祭りのちょうちん。ここ水の中でしょう? 良く撮れてますな」
霜月「ああ、ここは水の中ですよ。 すそをまくって入るんですよ。 足が冷たいけど
まあ、暑い季節なので、冷たくて気持ちいいですよ。」
EMA「そうそう、蝋燭(ろうそく)を持って、そこに火をつけて運ぶのね・・
これがまた、結構消えそうで大変なんだ・・ でも、今がチャンスね」 カシャ。

森田「凄い写真ですね! これはいったいどうやって撮ってるんですか?」
EMA「コンパクトのマクロモードで片手撮りで接写しただけですよ」
森田「私のデー70でも、花のマークがありますけど、そこに合わせたら撮れますか?」
霜月「まあ無理でしょう・・ というのは、デジタル一眼の場合、花のマークに合わせても
最短撮影距離が短くなるわけではありません、接写をするにはちゃんとマクロレンズ
を買わなくてはいけないんです。 なんとかモードなんて、みんなインチキですよ」
森田「真っ黒レンズですか?? で、インチキなんでしょうか? ほお・・」
霜月「それはマクロレンズね・・(苦笑) まあ、インチキとは言わないけどね。
そもそも銀塩一眼の絵文字モードなんてのは、ほとんど意味がなかった。
まあデジタルになって、多少色やらシャープネスやらをいじくっているらしいよ、
それに、ある絵文字モードにしか出来ない機能もある(例:キャンドルモード=高感度
とか、スポーツモード=コンティニュアスAFとか、ソフトフォーカスとか)
でも、まあ基本的には入門者向けの子供だましの機能だよ、だって、絞りやシャッター
の仕組みがわからずいつまでもそんな絵文字モードで撮ってても意味ないし、
色の調整やらなんやら、レタッチでやった方がよほど自由度が高く好みに補正できるぞ。」
森田「いやあ、私は何もわかってないもんで・・ 今まで風景といったら、山のモードに
合わせて撮ってましたが、それではいけなかったのですなあ・・」
EMA「(ふ~ん、絵文字は意味が無いかあ・・ いい事聞いた。 今度からそんなのに
頼らずに、マニュアルで撮ってみようっと。 ・・はっ、でも、マニュアルって
何をどう決めて撮ったらいいんだろう・・ そこが良くわからないのよね・・・汗)」
霜月「まあ、森田さん、これからは、Aモード、つまり絞り優先モードで全部の写真を
撮ってください。 他のモードは使ってはいけませんよ。 絞り優先だけです。」
森田「はあ、まあ、そうしますが、絞りはどう調整したらいいのでしょう?」
霜月「(だから、なんでもかんでもすぐ人に聞くのをやめない限り・・ ブツブツ・・)
まあ、追々教えていきますわ。 じゃあ、絞りをしぼって・・・」カシャ。

霜月「(フン、オレだって多少の特殊加工くらいできるぞ・・)」
森田「おお、お祭りの雰囲気が良く出てますねえ。 そうなんですよ、私が撮りたいのも
こんな風なスナップ写真でして・・」
EMA「そっかなあ・・ なんか霜月さん、この写真は説明的すぎない?」
霜月「あ、森田さん、うん。 じゃあ、こんど、パンフォーカスのスナップを説明しますよ。
絞り優先の練習にもなるし、一石二鳥です。 で、EMAさん、キミは黙ってなさい!」
EMA「(なによ・・ブツブツ・・ ちょっと人に教えられると思って、喜んじゃって・・)
あ、かわいいのみつけた・・これ撮ろうっと・・」カシャ。

森田「・・・」
霜月「・・あの、EMAさんよ、こんなの撮って面白いの?」
EMA「なによ! これは可愛いから撮ったのよ。 いいじゃない、人の写真に文句言わないで」
霜月「いや、別に文句はつけてないけどなあ。 ちょっと変わってるって(汗)」
EMA「霜月さんこそ、今日は古臭い写真ばかり撮ってどうしちゃったのよ・・
少しは匠さんに言われた「作画意図」とかを練習してみたらどうなのよ?」
霜月「古臭いとはなんだ!(怒) 正統派のストレートフォトと言ってくれ。
作画意図は込めているよ、「お祭りの日」だよ・・ どうだ、表現が伝わるだろう?」
EMA「あはは・・ 「お祭りの日」、あたりまえじゃない! そういう客観的なテーマなんか
作画意図になるわけないでしょう? 霜月さんが何を感じたのか? 何を思って
写真を撮っているのか? その写真で何を伝えたいのか? そこが作画意図よ・・」
霜月「ぐう・・(汗)」
森田「あのう・・ なんか良くわからないのですが、お祭りの様子を写真に撮るのは
よくないのでしょうか?」
霜月「いや、そんなことはないんだ・・ けどね、要はオリジナリティとか個性が無い写真
になってしまうということなんだ。 あとは表現とかだけど、このへんはオレにも
正直言ってよくわからない・・ まあ、そうだなあ、たとえばこんなか?」 カシャ。

EMA「ほう・・ なかなか霜月さんも、やればできるじゃない。 そうよ、こういう写真よ。
なんだかわからないけど、力があるわ。 それに美しいし・・」
霜月「そうだろう? うんうん、オレもちょっと工夫してみた。
どうだこの完璧な構図感覚は、鳥居をただ普通に撮るわけではない、対角線に
ビシっと決まるような構図で撮ってみたんだ」
EMA「余計な解説はいいの! でも、まあ、これは認めてあげるわ。 どうせ作画意図は
何もないと思うけど、まあそれはしかたない。 じゃあ私は、これよ」カシャ。

森田「ううむ・・・ EMAさんは、いったい何を撮られているのでしょう?」
霜月「オレにもわからん・・(汗) でも、なんとなく、これも構図的な美を感じるのは
確かだ・・ でも、いったいどうしてこんな角度でこんなものを撮りたいと思うの
だろう? オレにはそこがわからん。 いったい彼女の頭の中はどうなっていて、
何故ここでシャッターが押せるのだ? オレだったら間違って撮らないかぎり無理だ・・」
EMA「え? これ・・? 雲が綺麗だったから撮ったのよ・・」
霜月「ズテッ・・(汗) 主役は雲なのか? ううむ、そう言われてみればそうも見えるし、
やはりなんか計算されつくした構図のようにも思える・・・ ううむ、不思議だ・・」
森田「はあ~ なるほど、雲を撮られたのですね・・ いやあ、これはお上手です!」
霜月「(なに~? 森田氏がEMAの作品に興味を持って理解しようとしている・・・汗
そりゃあ、お年寄りには無理だろう? でも、もしかして、オレだけがわかって
いないのか? もしかして、オレがいちばん感覚が古く固まっているのだろうか?)」
霜月「いやいや、そんなことは無い・・ じゃあ、いくぞ。」カシャ。

EMA「ふ~ん。 これが被写界深度を減らした写真っていうやつね・・ やるわね・・」
霜月「被写界深度は「浅い」というんだ・・ でも、EMAもやっと覚えたか・・(苦笑)」
森田「素晴らしい写真です! お見事! この背景の光がとても素晴らしい!
いったいどうやったらこういう風に撮れるのか、教えてくれませんか?」
霜月「いや~、単純に A2をテレマクロのモードに切り替えて絞りを開けて・・」
森田「色々設定の腕前がお上手ということですなあ、さすが、師匠!」
霜月「いや~、師匠なんてものでは・・ あはは・・」
EMA「ふん、でも、ピント甘いんじゃないの?(苦笑)・・まあいいわ」 カシャ。

霜月「うう・・ EMA得意のローアングル広角マクロか・・ これはいいなあ・・」
EMA「どう? 霜月さん・・ フフン!」
森田「う~ん、私には霜月さんの写真の方が綺麗に撮れていると思いますが・・」
EMA「え?・・ (ガーン・・ そっか~、森田さんのような年配の方には、私達の撮る
写真は理解できないんだ・・ でも、まあ、それはしかたない気もするかな、
だって、ワタシの写真は、年配の人に見せる為に撮っているんじゃないもの・・)」
霜月「うん、最後の写真はなかなかいいな、さすがにこういう撮り方は得意だな」
EMA「(ほらほら・・ 霜月さんには好評よ。 はっ! でも、もしかしてワタシが写真展
やらブログに写真を載せたら、それは誰が見にくるの? 若い人たちばかりじゃあ
ないわ・・ ・・ええっと・・ じゃあ皆が好む写真とか、そんなのあるのかなあ?)」
霜月「・・・EMA,おい、EMA,どうした?」
EMA「はっ! ちょっと考え事してたの・・ でもまた今度話す・・」
霜月「それで今日の勝敗だけどなあ・・ どうする? 匠のオッサンに評価してもらうか?」
EMA「・・ダメ!」
霜月「なんでダメなんだ? じゃあ、森田さんにも見てもらうか?」
EMA「そっか、そうなんだ・・ ワタシ、わかったわよ。 写真で表現するということは、
見る人が誰かを決めないといけないんだ。 というか、誰に対して表現したいという
ことを考えないといけないんだ。 ワタシは今まで、何かを表現したいという事は
勿論常に考えていたけけど、それを誰に向けて、という部分までは考えてなかった・・
だって、ワタシは常に一人だったし、だから、一人だから余計に・・ 誰かに自分を
見てもらいたくて・・ でも、それは違うわ。 誰かなんて、結局自分の考える範囲は
ごくごく狭い範囲しか考えていなかったんだわ。 ワタシと同年代の人の他に世の中には
色々な年齢や価値観の人が存在している。 でも、そんな事なにも考えてこなかったわ、
だって、それはワタシの生活とはかかわりの無い人たちだもん・・」
霜月「何をブツブツ言っているんだ。 で、勝敗はどうするんだ?」
EMA「もうそんなことどうでもいいわよ! そんな次元で勝ち負けとか、上手い下手なんか
決まるわけないでしょう? 写真はそんなもんじゃないわ。 霜月さんもいつまでも
子供みたいなことを言ってないで、少しは自分の写真について考え直したらどうなの?」
霜月「なんか、機嫌悪そうだなあ・・」
EMA「いや、私は機嫌悪くないわよ。 むしろ嬉しいの、ルンルン・・」
霜月「女の考えは、さっぱりわからんわ。 わかった、今日はもう引き分けにしよう」
森田「そうですね、2人ともお上手だし。2人ともよく頑張った、ということで引き分けで」
霜月「森田さん、今日は御参考になりましたか?」
森田「はあ・・・ まあ、いちばん驚いたのは、私は、お祭りの写真といえば、
お祭りをお祭りらしく綺麗に撮ることだとばかり考えていました・・
ところが、お二人の写真は、お祭りの雰囲気を出すことを主眼に被写体を探して
いるのですねえ・・ なるほど、全然視点が違います。
私なんかには、そこまで被写体は探せません・・いったいどうしたらいいのでしょう?」
霜月「まあ、ちょっとは参考になったみたいですね。
でも、まあ、世の中の多くの人は森田さんみたいな考えで写真を撮ってます、
だから悪いとは言いませんよ。 でも、それでは人に見せる写真にはならないです、
自分だけの記録にしかならない・・ ん? 自分だけの記録・・??」
森田「はあ・・・まあそうですね」
霜月「(ガ~ン! オレはいったい今日の写真を誰の為に撮っているんだ?
それで誰に見せる? もちろんEMA? いやいや・・そうじゃなかったなあ・・
そっかあ・・・作画意図とかなんとかいうものは、そもそも誰の為にその作画意図を
創出するか、という部分が鍵だったのか・・ なるほど、オレは誰の為にという事を
全然考えてなかった。 じゃあ、それはあたかも誰も視聴者を想定していない
TV番組みたいなものじゃあないのか・・ そっか・・ むむむ・・ そうだったのか)」
森田「霜月さん、どうなされました?」
霜月「いやあ、うん、確かに、今日の私の写真はあまり参考になりませんね・・」
森田「いやあ、そんなことはないですよ」
EMA「そうね・・ 今日の霜月さんの写真は、まあ、それでも今までの神社の写真に
比べたら、ずいぶんマシになってきたわ。 作画意図やら表現までは行かなくても
少なくとも、自分の個性を出そうとしているのはわかったわよ」
霜月「・・・ううむ・・ 次は個性・・・ ううむ・・(いったい何じゃそりゃ・・?)」
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匠「・・・ああ、みんな、お疲れさん・・」
霜月「あれ? 匠のオッサン、いままでどこに行ってたんだ?」
匠「・・・いやあ、写真撮ってた・・」
EMA「匠さん、どんな写真撮ってたの? ちょっと見せて?」
匠「・・・ああ、まあ、こんな感じ」

霜月「ぐう・・ オレ達がこんなに真面目に写真撮ってるのに・・・
このオッサンは、浴衣のオネイサンと遊んでたのか~!!」
匠「・・・あはは、まあ、いいじゃん、写真はまず楽しんで撮らなきゃ・・」
霜月「その言い訳・・ 全然参考にならん・・(苦笑)」