森田「あの~ 私、森田重雄といいますけど・・ 匠さんは、ご在席でしょうか?」
匠「・・・はい、ご在席(?)ですが? 森田様? ・・・ですか」
森田「突然あいすみません、わたくし、ちょっと写真をご覧になっていただきたくて・・」
匠「・・・ご覧になってですか(?) ・・じゃあ、ちょっと拝見・・」
(・・・数枚の写真をペラペラとめくる)
匠「・・・ううむ・・(汗) お~い。 霜月! EMA! 出番だぞ~」
(イラストはいつものように
ASさん Thanks!)
EMA「は~い! 呼んだ?」
霜月「あ~ん? なんか呼んだか?」
匠「森田さん、彼等は私の門下生です。 私は生憎今から出ないといけないので、
申し訳ないですが、彼等に写真を見てもらうという訳にはいかないでしょうか?」
森田「はあ、匠さんの生徒さんでしたら・・・ 是非、それでお願いします」
匠「・・・じゃあ、霜月、EMA,まかせたぞ・・」 アタフタ・・・
EMA「匠さん、なんか忙しそうねえ・・ じゃあ、私たちで・・」
霜月「(なんかおかしいなあ・・ 裏があるような・・・ まあいい・・)
森田さんとおっしゃいましたね・・ 生憎と匠氏ではなく申し訳ありませんが、
私達が拝見させていだきます、評価させていただけばいいのですね?」
森田「はい、よろしくお願いします。」
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さて、ここで、ハミルさん、霜月了、EMAに続く、第四番目の仮想キャラクターの
「森田重雄」氏の登場である。 じゃあ、いつものようにプロフィールを。
森田重雄、63歳。 サラリーマン一筋で40年間勤めた会社を昨年退職。
定年までまだ数年あったが、リストラの一環に巻きこまれる前に早期希望退職制度に応募。
経理畑一筋で、最終ポジションは課長であった。
性格は目立たず、真面目。 家族構成はお見合い結婚した妻(60歳)と、長男(32歳)、
長女(29歳) 子供達はいずれも結婚して独立、今は、郊外の4LDK一戸建てに、妻と
ペットの犬(シェットランド・シープドッグ)と共に住む。
退職直前から、銀塩一眼レフ、NIKON F80Dを購入し、旅行などでポツポツと撮影
していたが、このたび退職金の一部で、デジタル一眼レフNIKON D70s と、
ズームレンズを購入。
写真歴は比較的長いが、本格的にやりはじめたのは、退職後のここ1年ほど。
家にいてもやることが無いので、色々なところに出かけて写真を撮ろうとするのだが、
1回(1日)の撮影での撮影枚数は多くはなく、30枚前後というとこか・・
写真教室にも行きたいと思っているのだが、まあ、その前に、匠に自分の写真を見てもらい
今後のなりふりを決めようと思っていたところである。
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霜月「森田さんは、普段は、どんな写真を撮られているのですか?」
森田「ああ、いつもは風景や花なんかを撮ってます。
え~、で、今日は、写真を4枚だけ、とりあえず持ってきています」
EMA「じゃあ、ちょっと見せて?」
霜月「EMA,年上の方にあまり失礼な口調で話すなよ!」
森田「あ、かまいませんよ。 私も生徒になりたいと思ってますから、皆さんと同じですよ」
霜月「わかりました、じゃあ、私達も、普段の調子でお話させてもらいますね」
森田「じゃあ、まず、この写真です。 ハスの花ですけど、どうでしょうか?
EMA・霜月「・・・・・」
森田「いかがでしょう? デジタブル一眼、ニコンのデー70で撮った写真ですが・・」
EMA「(苦笑)それ言うなら デジタル一眼・・」 霜月「し~っ!」
森田「実は今日は、あまり上手に撮れた写真は持ってこれなかったのですが・・・」
霜月「(・・・匠のオッサン、ハメやがったなあ・・汗
この森田さんとやら、まったくの初心者だよ・・ 自分で評価するのがイヤだから、
オレ達に任せてトンズラだよ・・ クソッ! まいったぜ・・・)」
EMA「(・・・まいったなあ・・ 実際、こういうオジサンが一番困るのよね、考え方が古いし、
理解力に乏しいし・・おまけに何か言ったらすぐ気にするし・・どうしようかなあ・・)」
森田「あの~ なにかいけない点でも? 遠慮なくおっしゃってくださいよ・・」
霜月「あはは・・(汗) いやあ、これは、ハスの花ですか? どちらで撮られたのですか?」
森田「奈良県にある植物園に行きました・・ ほら、昼間は人が多く来ますからね、
私が三脚で撮ってたら、邪魔になるかと思いまして・・ 朝7時に出て、9時の開園
と同時に入りましてね・・ この写真を撮ったんですわ」
霜月「え~と、これ、ちょっとピンボケのように見えるんですが・・(汗)」
森田「(老眼鏡を取り出し、かける)どうも歳を撮ると目が悪くなってね・・
どれどれ(プリントを近づけて見る) ああ、確かにピンボケですね・・・
いやあ、失礼しました。 これはダメですね・・ ビリビリ(写真破く)」
EMA「ちょ、ちょっと~(汗) 別に写真を破かなくてもいいですよ~ 」
森田「いえ、ピンボケ写真はダメな写真でしたよね? お恥ずかしい・・ 目が悪いものか
今はじめて気が付いた次第ですわ・・ 申し訳ない、じゃあ、次の写真を・・」
霜月「なんか、ずいぶんパキパキっとした写真ですねえ・・」
森田「ああ、これはですね、知り合いの写真屋さんで、コンピュタァーで手を入れて
もらったんですよ。 なんとかホトショップを使って、なんとかシャープレス加工
をかけてもらいました。 写真は細かいところまでくっきり見えていないと
いけないと、その方はおっしゃってましたが・・ どうです?」
霜月「(・・ブツブツ・・ 言いたい事言えないと、もうキレそうなんだけど・・ )」
(霜月、EMAの方をチラっと見る、目線で合図・・ EMA,軽くうなずく)
霜月「えっと、森田さんね・・ これ、アンシャープマスクをかけ過ぎて酷く荒れた
写真になっているんです。 これはちょっとやりすぎですよ・・」
森田「いや~ おはずかしい、コンピュタァーのことはさっぱりわからないんです。
ほら、私なんかは、昭和の戦時中の生まれですからね。
いやあ、今の若い人達は、戦争とか無い時代でいいですなあ・・
私が子供の頃はね、もう食べ物も無くて、それはそれは苦しい時代でしたよ・・」
霜月「ああ、そうですか・・・ で、それが何か写真と関係あるんですか・・?
で、わからなかったらどうするんですか? 勉強したらいいんじゃないでしょうか?
それから、私達がいい時代に生まれて来ているのも、それも何か関係が?・・ブツブツ」
EMA 「霜月さん!」 (霜月の肘をツンツン・・ってする・・)
霜月「EMA,もうほっとけ、オレももう我慢がならん!」
EMA 「霜月さん!ちょっと~(汗)」
霜月「あのなあ、森田さんよ。 アンタが若い時に苦労したのは、それはオレ達と何の
カンケーがあるわけ? で、アンタがパソコン1つまともにいじくれないのは
まあしかたないと思うよ、でもなあ、アンタ何しに来ているんですか?
写真を見て評価して欲しいわけだろう? だったら、関係無い話とか、言い訳
がましい話は一切して欲しくないな・・全部自分の実力の話だよ、わかってるの?」
EMA 「霜月さん、あんまり失礼な事言っちゃダメ・・(汗)」
森田「いや、EMAさんとやら・・ いいんですよ。。
この歳になるとね、ズバリ言いたい事を言ってくれる人も、周りにはいないんですよ、
それにね、若い人の考えとか意見を聞けるのも、貴重な経験ですからね・・」
霜月「・・・あ、すみません、つい興奮して・・」
EMA 「はいはい。 じゃあ、森田さん、次の写真を見せていただけます?」
森田「はい、じゃあ、これですけど・・・」
EMA 「可愛いアジサイの鉢植えですね・・」
森田「はい、植物園の後で、ちょっと古い街に寄りましてね、そこで撮りました」
EMA 「・・・」
森田「・・・で、評価の方は、いかがなものでしょう・・」
霜月「EMAじゃ無理だ・・・ じゃあ、オレが・・
まずこれは、ずいぶん露出オーバーになってますね、おそらく反射率が低い暗めの
格子戸に露出が引かれ、意図せず露出計が迷ってるんでしょう・・ マイナス補正は
されましたか?」
森田「はあ? マイナスホセイと言いますと?」
霜月「マイナス補正と言ったら、マイナス補正ですよ・・ わかりませんか?」
森田「写真が明るいということでしょうか? はい、これは昼間明るい時に撮りましたが・・
ちょっと明るすぎましたね・・ もう少し日が暮れてから撮ったら良かったのですが・・」
霜月「あのねえ・・ そういう問題じゃないでしょう? (プチ、プチ・・)」
EMA「霜月さん、またキレるよ・・(汗) そこはワタシが説明するわ・・
森田さんねぇ・・ 写真は、その場の光によって、明るく写ったり、暗く写ったり
したりすることは全然無いの。 だってね、もしそうだったら、昼間は真っ白に
写って、夜になったら、真っ黒に写ってしまうでしょう?」
森田「はあ・・ まあ、確かに」
EMA「だからね、自分の好きな明るさに写真をしようとしたら、露出補正というのを
調整するのよ・・ 昼間、明るすぎると思ったら、マイナスにして暗くして。
夜、暗いと思ったら、露出補正をプラスにしないといけないのよ・・」
霜月「EMA~! オマエ、テキトーな事を教えるんじゃないよ!(怒)」
EMA「なによ? どこが間違っているの? これは写真の原理でしょう?」
霜月「解説の前半は合ってるよ。でも、後半がウソッパチだ。
いいか、露出補正で作画表現をすることはあるよ、それは当たり前だ。
でも、その前に、露出計は、反射率の高い被写体を見ると、光が沢山入ってきてると
思って、見た目よりアンダーな調子になる。 反射率の低い黒い被写体ではその逆だ、
で、露出計が正しく調子を再現できるのは、18%のニュートラルグレイの被写体の
場合だ。 極端に言えば、真っ白な被写体も、真っ黒な被写体も、写真に写ると
いずれもニュートラルグレイになってしまう。 それは露出計の欠点だから、それを
防ぐために、白い被写体はプラス補正、黒い被写体はマイナス補正するんだ!」
EMA「ニュートラムグレー? なにそれ? もっとわかりやすく説明してよ!」
霜月「ニュートラムじゃあない、ニュートラルだ! それに、これ以上わかりやすく説明
できるか? これは基本中の基本だ!」
EMA「何よ・・ 匠さんが言ってたわよ。 人に教えるのは、自分が理解することより10倍も
難しいんだって・・ で、難しい事ほど、人に教えるには、その人が理解できるように
簡単な言葉やわかりやすい原理に置き換えて説明しなくちゃいけないって・・
霜月さんの説明は、さっぱりわからないわよ・・ どこかの本に書いてあることを
そのまま言ってるだけでしょう? まさか、貴方も全然わかってないんじゃないの?」
霜月「ぐぅ・・(汗) まあ、とりあえず、その事は、コッチに置いておいて・・
今は、森田さんの作品だ。 森田さん、次は?」
森田「はあ・・(汗) なにやら、さっぱりわかりませんけど、もしかして、何か
ご迷惑をおかけしているのでは? どうもすみませんなあ・・・ じゃあ・・」
霜月「お、望遠レンズですな・・ しかし、ちょっとコントラストが低いかな・・?」
森田「三脚立てて撮りました。 なにやら望遠はブレるとか・・」
霜月「あのね・・ 単純にそうともいえないんですが・・
しかし、この画像、なんか変ですね・・ ん? もしかして・・」
(霜月、PCの表示画像をクリック・・ 本当は便宜上プリントで評価という記事の
設定であるが、ここだけその点はかんべん・・)
霜月「ひょえ~ 10KBしかないよ! どうりでネムい筈だ・・」
森田「眠いですか? え? どういう意味なんです? お疲れということで?」
霜月「いや、ネムいというのは、コントラストが低く、シャキっとしていない画像です、
本来このサイズの画像なら、JPEGで普通に圧縮すると、40KB~50KBが
必要なのですが、この画像は、それらの4~5分の1のサイズの10KBしかない、
だから、JPEGとしては、画質が破綻寸前・・ いや、すでに破綻してますねえ・・
破綻しているから、なんか画像のトーンがシャキっとしてないように見える・・」
EMA「それ、画像を縮小しすぎってこと?」
霜月「縮小じゃない、圧縮だ! 縮小とは、解像度を変えること、もっと簡単に言えば
縦横のサイズを小さくすることだ。
圧縮は、同じ縦横サイズの画像でも、ファイルサイズを小さくして、文字通り圧縮
することだ」
EMA「ふ~ん、じゃあ、この写真は、圧縮しすぎで画質が悪くなっている」
霜月「オレの見立てでは、それは原因の1つにすぎない・・ おそらく原因は他にも
あると思う。 まず、レンズの性能が悪い、安物だ・・ メンテもしてないから
前玉に汚れがついているのかもしれない・・ で、三脚を立てているにも
かかわらず、僅かなブレボケ・・ ブツブツ・・ だったら三脚を立てても
立てなくても一緒じゃないのか? きっと、ヘナヘナなヤワな三脚で、レリーズも
使わず、酷い環境でテキトーにシャッターを押したのだろう・・
だからブレボケが残っている。 それでもコントラストが低いのは、カメラのパラメータの
設定ミスか、そしてレタッチの酷さだ・・ 最後に圧縮率を間違えて、終わってる・・」
森田「やっぱ、腕が悪いという事ですか?」
霜月「残念ながら、腕以前の問題です・・
森田さんの場合、まだ、カメラや写真ということが全然わかっていません、
もちろん、それでも個人の楽しみとして写真を撮る事は否定しませんよ、
でも・・ この状態で人に写真を見せるのは失礼ですよ・・」
森田「失礼ですか・・ それは、見苦しいものを見せていると・・?」
EMA「霜月さんが言うとカドが立つわ・・ ワタシが代わりに説明してあげる・・
あのね・・ 森田さんの写真は、それは誰かに見てもらいたいという気持ちは
よくわかるんだけど、誰かに見せたい、という何かがあるわけじゃないのね・・
人に写真を見せたいのなら、その人の事を思って、その人に何かを伝えたいとか
あるいは、そこまでいかなくても、見る人の時間を割いてもらっているんだから
そこから何かを得る事で、同時に感謝の気持ちを持つようにしてあげないと
いけないと思うンだ・・」
森田「はあ・・ 確かに・・」
EMA「でもね、正直言うと、森田さんの写真は、まだまだ全然そのレベルは達してないのね、
今の段階で、人に写真を見てもらっても、評価のしようがないのよ。
だって、評価の内容が、技術面であっても、心情面・表現面であっても、
何を言っても、全然理解してもらえないでしょう? だから、今は、まだ言葉が
通じない段階なのね・・ せめて、何を言われているのか、理解できるレベルに
達しないと、写真を見てもらうのに、見るほうも、見せる方も、時間がもったいない
だけだと思うの・・ え~と、言ってること、わかります?」
森田「はい、よくわかりました。 残念ながら、まだまだ未熟だということですなあ・・
腕が無いという事ですかねえ・・
すみません、最後に、じゃあ、腕を磨くためには何をしたらいいのでしょうか・・」
霜月「そういうクダラナイ質問をしないことだよ! なんでも質問するから上達しない!
わからない事は、自分で調べる、あるいは試してみる・・
シニアは何でも人に聞くからダメなんだ・・ 自分で考えるという事をしないかぎり
何をやっても絶対に上達はしない・・ 」
EMA「霜月さん、ちょと言いすぎ・・(汗)」
霜月「そうか? これは大原則だぞ、何も間違った事は言っていない。
シニアというのが気に障るのなら、別にシニアに限った事じゃあないぞ、
EMAのような若い女の子だってそうだ、何も自分で考えず、人に聞いてばかりだ・・」
森田「あの~ すみませんでした・・ 出直してきますわ・・」
EMA「あ、すみません。。 お構いもしませんで・・ ではでは・・・」
(パタン・・ ドアが閉まる)
EMA「こら~っ! 霜月! 今日の対応はなによ! もう、思いやりも何もない・・」
霜月「オレが悪いんじゃない、オレ達に押し付けた匠のオッサンのせいだ・・」
EMA「何でも人のせいにしないの! 匠さんは、ワタシ達の為を思って、ワタシ達に
難しい仕事を頼んだんじゃない! それがちゃんとできなかったからといって
いちいち人のせいにしない! すべてはまず、自分に責任があると思わなきゃ!」
霜月「ぐぅ・・ わかったよ・・ 今度森田氏が来たら、ちょっとは考えて対応する」
EMA 「よしよし・・ じゃあ、ワタシも、少しはちゃんと評価ができるように
勉強しておくわ。 霜月さんもよ! いいね、わかったわね!」
霜月「は~い!(しかし、なんで、こんな女の言いなりになるんだよ・・ブツブツ・・)」
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匠「・・・あ~あ・・ 遠くから見ていたが、やっぱ案の定、滅茶苦茶だよ・・(汗)
でも、まあ、これで、霜月も、EMAも、色々勉強になっただろう・・
森田氏は、いい生徒であり、いい教材だよ。
評価は、森田氏の為にもなって、同時に霜月とEMAの成長も促す・・
今は、まだまだだけど、みんな、これからどう変わっていくか、楽しみだよ・・」