前編から引き継ぐ、「なりきりシリーズ」対決編。
キャラクター紹介も少し心理面にこだわって・・
霜月了:29歳男性、技術にこだわる職人気質、ただし自ら表現したいことが無いのが悩み。
EMA:28歳女性、写真表現にこだわりを持つ。 技術や対人関係にコンプレックスを持つ。
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そして、今回の撮影地は、瀬戸内海に浮かぶ小島の「犬島」である。
周囲4kmほどの小さな島、独特の古びていて、人気(ひとけ)の少ないた街並みは、
映画やヌード撮影のロケにも良く使われると聞く・・
被写体的には「廃物系の宝庫」とも言え、その手の撮影が好きな人だったら1日中でも
写真が撮れることであろう。

・・・さて、じゃあ、引き続き「なりきり対決」の開始である。
匠『じゃあ、後編の開始。 これまではEMAの2勝1敗1分け。
そしたら、次のテーマは、港だ』
<テーマ5:港を撮る>
霜月「港か・・ ムズカシイな。 まあ港といえば船だろうが・・
そして、匠のオッサンが良く言っている作画意図とか、そんなのもオレも考えて
いくべきなのか? う~ん、よくわからない。 オレはあくまでオレ流だよ」カシャ。

↑Dimage A2
EMA 「港かあ・・ やっぱ船よね。 で、その船はどうしたいのだろう?
停泊する船・・ しばしの休息。 安全で落ち着ける場所・・ 」カシャ。

↑Dimage A2
匠『ふ~ん。 まだ稚拙な部分もあるけど、ちょっとは考えてきているね。
まず霜月、この写真では浜辺で作業する人が入っているけど、霜月にしては
人物を入れるのは珍しい写真だな。 これは何故入れたかった?』
霜月「ん? 別に意味は無いが、外海から帰ってくる船に、オレたちが島を守っているぞ
というようなイメージで作業しているオジサンを入れてみた」
匠『そういうのを作画意図と言うんだよ、なかなかやるじゃあないか・・
そして、EMA。 この写真はどうやって撮った? 難しかっただろう?』
EMA 「はい、鎖と言うのかな? 金属の輪っか・・これを構図の下に置くと安定すると思って、
半押しでピントを合わせてから構図を変えてみました。
で、絞り優先モードで絞りを適当に決めたたら、背景が上手くボケてくれました。」
匠『そういうのを、技術を用いた作画表現、と言うんだよ、良く撮れている。
若干EMAらしさに欠けるところが気になるが、まあ、少しは、表現するために技術を
使うという事がわかってきたみたいで良しとしよう。
で、今回は引き分けだ。』
霜月「う~ん、どうして勝てないんだ? どこが悪い?」
匠『別に悪いところなんかないよ、構図的にも技術的にも問題ない、
おまけに今回は、初めて作画意図らしきものも入っている。
ただなあ・・ インパクトに欠けるんだよ。
そしてEMAのも平凡すぎて心に残らない。 表現するならば、いつまでも見る人の
記憶に残るような斬新さが必要だ』
EMA 「難しいなあ・・」
匠『難しくないよ、作画意図から表現するための技術は、知識や経験が加味されることも
多い、だから、今はとももかく撮影枚数が少ないんだ、だから経験もつかないし、
おまけに勉強不足だから、カメラの知識も欠けている。
正直言えば、EMAの作風としては、ちょっと普通とは変わった斬新なものが多い、
見えている被写体が人とは違うのだろう。 だったら、もう少しそれを活かせば、
それが個性として出てくると思う。』
霜月「オレの写真には個性は無いのか?」
匠『そうとは言い切れないが、極めて薄いことは確かだ。
それだったら、確かに、めったに人の行かない場所で、めずらしい被写体を見つけて、
よほど良い機材を使って、よほど技術的に凝った写真を撮らなければならなくなる、
でもなあ、そんなことは、お金とヒマが無いとできないんだ・・
霜月の性格だったら、そんな事は好まないだろう?』
霜月「当たり前だ、金と時間を費やして力ずくでねじ伏せるような写真を撮って楽しいか?
オレはオレの腕1本で勝負したいんだよ。」
匠『それならEMAと、目指すところの、いったいどこが違うんだ?』
霜月「はっ・・・」
匠『まあいい、次のテーマは、いわゆる「廃物系」だが、今度は犬島らしいものを撮って
来てもらおうか・・・』
<テーマ6:犬島らしい廃物を撮る>
霜月「う~ん、犬島らしい廃物? そういえば、オレは、いつでも自分の好きな被写体を
探して撮っていたなあ、でも、犬島らしいといったら、誰もがこの島の特徴を
わかるように撮らなければならない・・・ しかし、そうしたら絵葉書や名所案内
のような写真になってしまうのじゃないのか? う~ん、わからない」 ・・・カシャ。

↑Cyber Shot T7 (セピアモード)
EMA「廃物系は得意よ! でも、もう霜月さんと同じような写真は撮りたくないわ、
今回はGRを使ってみようかな。 それでモノクロだよね。なんて言ってもモノクロは
格好いいし! で、あれ? これ、モノクロモード無いの? わからない・・(汗)
文字モード?? うん、モノクロみたいだからこれで撮ってみよう・・・」 カシャ。

↑GR Digital (文字モード)
EMA「キャー! 匠さん、これ、画像が表示されないんです~(泣)」
匠『何だ? ん? これは文字モードで撮ったな? これはモノクロじゃないぞ、
2階調トーンと言って、画像を白か黒かの2種類、つまり1bitのデータで表現するんだ、
おまけに、JPEGは文字表示が苦手だから、このモードではTIFFになる。
モニターの表示ルーチンでは、非圧縮のTIFFはJPEGと違ってデコードに時間が
かかるんだ。 数十秒またないと表示できないぞ・・・ ほら、やっと出てきた』
EMA 「ああ、よかった、カメラが壊れて撮れなかったと思った・・・
それにしても、匠さん、説明が何言っているか全然わからないんですけど・・」
霜月「あ~あ、ほら見たことか。 知らないのにそんな機能を使ってどうするんだ?」
匠『EMA の弱点が顕著に出たな。 モノクロにしたら格好いいとかなんとか言っていても
その原理とか長所、短所を良くわかっていないと、むやみに使うべきではない。
若い人の中で、モノクロが流行っていると言っても、その90%以上が単なる色抜き写真
にすぎない、カラーで撮った方がいい被写体ですらわざわざモノクロにしている。
モノクロの変換方式だって、グレイスケールその他の方式もわかっていない・・
おまけに本来モノクロに向いた被写体という部分も理解しておらず、さらには、
コントラストの処理も、覆い焼きや焼きこみといった暗室技法も、何も知らないで
やっているにすぎない。 カメラの機能の使い方も知らないから、たとえばこの写真が
たまたまもっと上手い被写体に出くわして撮ったとしても、次回それと同じことを
やれと言われてもまったく再現性が無い。 何度も言っているが、同じ条件が得られた
場合に再現性の無い写真は、残念ながら無価値だ・・
したがって今回は霜月の勝ち・・』
EMA 「そりゃあ、私が知らないから悪いのはわかったけど、でも、私はただ写真を写したい
だけなのに、なんでそんな、ティフだとかグレイなんとかとか、そんな試験勉強
みたいなことを覚えなくちゃいけないの? 私はただ写真でコミニュケーションを
したいだけ。 だから、技術のことなんかわからないでも、楽しくやれればいいの・・」
匠『ついに個人の勝手論が出たな・・(汗) まあ、素直に聞いているなら救いようがある、
でも、そこまで勝手論を振りかざすなら、しかたない・・
じゃあ、ぶっちゃけ言ってしまえば。 そういう風にたまたま撮れた写真を、それが
ワタシの個性、みたいな見せ方したら、見ている人に対して失礼なんだよ。』
EMA 「なんで失礼なの? どこが悪いの?」
匠『ウソをついているからだよ。 そんなの個性でもなんでもない。 自分がこう思って
だからこういう写真を撮った、と言うなら何にも問題ない。
でも、プロセスもなく、結果も予想できずに、たまたま偶然で撮れた写真を
ワタシの表現などと言われたら、もしその写真に見る人が共感する要素があればあるほど
見る人は、次にも同じEMAらしい表現を期待する・・でも、もう2度とそれはできない。
最近のアート系のプロは確かに(技術的に)崩した写真表現をすることがあるけど、
彼(彼女)達の写真は、再現性がある。 そうでなければ、プロのアーチストとして、
個人の作風を常にファンに対し、提供しつづけていくことなんかできないだろう?
だいいち、EMAの作風は毎回微妙に違っている、これは「写真の撮り方に悩んでいる」
わけではなくて、技術的な基礎が無いから、安定した作風を作りだせないんだ。』
EMA 「ワタシは遊びでやっているんだから、プロの人達と一緒にしないでよ・・」
匠『だったら写真なんか人に見せたいと思うなよ!一人で撮ってアルバムにでも入れておけ!
人に見せる以上、そこには誰か一人でもファンができるだろう? そのファンを裏切らない
ように努力することは、プロもアマも変わりは無い。
自分勝手な理屈ばかりこねて、何か難しいことがあって、それができないとすぐ言い訳して
逃げるから、いつまでたっても「お嬢様写真」と言われるんだよ!』
EMA 「・・・」
匠『まあいい、これで霜月の2勝2敗2分けだ、ちょうどイーブンだな。
次のテーマは、花あるいは草だ』
<テーマ7:花あるいは草を撮る>
霜月「EMAもだいぶヘコんだみたいだなあ・・ 匠のオッサンもちょっと言いすぎの
ようにも思うが、まあ、いい薬だよ。 これでちょっとは変わって欲しいな」カシャ。

↑GR Digital (マクロモード)
EMA 「なんか落ち込んじゃった・・・ どうせワタシなんか、なんのとりえも無いし、
だから、写真をやって少しでも、自分というものを認めてもらいたかっただけなのに・・
写真だったら、シャッター押すだけだから、ワタシにも出来ると思ったのに・・
それでこんな難しいの? だったら、もう写真なんか、やめたいなあ・・・」カシャ。

↑GR Digital (マクロモード)
匠『ふ~ん、霜月。 これはどうして撮った?』
霜月「いや、別に・・ でも、なんとなくこの花は寂しげだった・・」
匠『ほう、作画意図が少しわかってきたんじゃないのか? EMAはこれはどうして?』
EMA 「え? これは何も考えて撮ってないよ。 ただ、ちょっとネガティブな気持ちに
なっていたから、この草はこんな悪い環境でも、空に向かって伸びようとして
いるんだなあ・・ って思って、自然に撮ったんだけど・・」
匠『おもしろいね、霜月が作画意図を込め始めたのはいいとしても、EMAの場合は、
自分の持つ喜怒哀楽の感情そのままで被写体を見つめることができるんだね・・
ふうむ、これは、2人ともがんばった、引き分けだ。』
霜月「まだイーブン(同点)か・・ なら、匠さんよ、あといくつあるんだ?」
匠『あと2テーマだ。 じゃあ、次は、このちょっと汚れたペンギンの人形を撮る』
<テーマ8:ちょっと汚れたペンギンの人形を撮る>
霜月「まったく同じ被写体というわけだな? だったら負けるわけないだろう・・」カシャ

↑Dimage A2(望遠マクロモード)
EMA 「私ならこうかな?」カシャ

↑Dimage A2
匠『ふうむ。 まず霜月・・ これはダメだ。 単に被写体を綺麗に背景をボカして撮った
だけだよ。 EMAの作品と比べてみれば一目瞭然だろう?』
霜月「ああ・・ 確かに、オレは人形を大きく綺麗に、つまり深度を考えてポートレートの
ように撮っているだけだ。 EMAさんの作品は悔しいけど、物語がある・・」
匠『その通り・・ ちなみに言っておくが、どんなストーリー(物語)か、というのは、
見る人が決めればいいだけの話だ、EMA本人は、なんらかを想定して撮ったのだと
思うけど、それが一致する必要は無い・・ 写真の見方に正解なんかないんだ・・・』
EMA 「私は、ただ単に・・」
匠『まあいいよ・・ 説明しなくても伝わるのがいい写真だ、この写真は色々な見方が
あるだろうけど、それはどうでもいいんだ、色々想像してもらうのも写真の楽しみだよ。
じゃあ、これで、EMAの3勝2敗3分けだ。
そして、最終テーマは犬島をモチーフにした自由作品だ』
<テーマ9:自由作品~犬島を撮る>
霜月「今日も負けるかもしれないな・・ でも、まあいいや・・
この対決を機に、今日は何か色々なことを学べた気がするよ・・」カシャ。

↑Dimage A2
EMA 「今日は色々なことを言われて落ち込んじゃった・・
しかも雨も降ってくるし~ もう最悪・・ 島のお店で借りた傘は男モノで
ごつくて重くて、おまけに錆びているし。 でも、まあ傘を貸してくれるなんて
島の人達も親切だよね・・ じゃ、傘さしたままで撮ろうっと・・」 カシャ。

↑Cyber Shot T7 (マクロモード)
匠『ふ~ん。 面白いなあ・・
なんか、2人とも、大きく作風が変わってきたように思えるよ。
霜月の写真は今までに無い感じだね。
この帽子・・・ 捨てられているのか、忘れられているのか・・
それが、この犬島の旅の終わりを余韻として残してくれている。
構図的にも工夫しているし、露出もわずかにオーバー目で彩度やコントラストも
下げていて、ちょっと思い出的な雰囲気を上手くだしてきている。
EMAの写真も不思議な構図だけど、雨が降っても楽しかったという気持ちを
うまく表現しているように思えるよ。背景のパイプや花の入れ方が大変面白い。』
匠『う~ん、困ったなあ・・・ これは優劣付けづらいよね。 私は霜月の写真の方が
良いとも思うけど、ちょっとそう簡単には判断できないよね・・
今のところ、EMAの3勝2敗3分け・・ 霜月が勝てば完全にイーブン。
そしてEMAが勝つか引き分ければ勿論EMAの勝利だ・・』
霜月「オレは今回はいいよ・・・ なんか、勝ち負けとか言う以上に色々なことが
わかってきたような気がする・・ EMAの勝ちでも別にかまわない・・」
EMA 「でも、そりゃあ私の勝ちなら嬉しいけど、なんか、勝った気がしないし、
それより、私も今回は欠けていることが、はっきりわかったように思うんだ・・」
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匠『わかった、じゃあ、この最終テーマの判定は、ブログの読者にゆだねるとしよう・・
でも、最後にもう一度だけ言っておく、写真は勝ち負けじゃないぞ』
霜月「まあわかったよ、今回オレは、オレ流に加えて新しい武器の使い方を覚えた気がする
今回の勝負なんかどうでもいい、これでEMAに勝つ自信がついた、ざまあみろ」
EMA 「ざまあみろですって? 私だって、今回は霜月さんの技をずいぶん盗めたんだから
十分だわ、私の表現力に技術がついたら最強よ、誰でもかかってらっしゃい!」
霜月「また、せっかく女の子らしく、しおらしいところ見せてたのに結局生意気だなあ」
EMA 「女の子らしいってなんなの? そんな江戸時代みたいなことをいつまでも言ってるから
古臭い写真しか撮れないんじゃないの?」
霜月「古臭いとはなんだ! おまけに江戸時代だと?
オレは21世紀の最新最強のフォトグラファーを目指しているんだ、お嬢様なんかに
そんなことを言われたくは無い・・ みていろ、EMA、次回はひねりつぶしてやろう」
EMA 「き~! ほんと、このオッサン、何を言っているんだか!」
霜月「オッサンだと~? オマエこそ何を言っている、このオバハンが・・」
EMA 「なによ! 私はまだ28よ! オバハンとはなによ・・オバハンとは・・ き~っ!」
匠『まあまあ・・・ いつもながら人の話しをまったく聞いてないよな~・・・(苦笑)』