雨の日の撮影・・・
「きゃっ!」撮影仲間の女性が短い悲鳴を上げる。
「どうした・・」と駆け寄ると、足元を滑らせて転倒した様子だ。
・・・大丈夫、怪我は無い?
「はい、大丈夫です」
・・・どこかを打ったのかな?
「いえ、別にどこも打ってないから大丈夫ですよ」
・・・そっか、よかった。 撮影は続けれるみたいだな。
「あ! 匠さん、カメラが真っ暗になっている・・・」
・・・どれどれ、ああ、ミラーアップだな、転倒した時にカメラにショックを
与えてしまったのかな?
「直ります?」
・・・わからない・・ 実は「ミラーアップ」状態は、銀塩では致命的な故障に等しいんだ(汗)
・・・まずは、電池は?
「予備電池があります」
・・・それに変えてみよう。
AE、つまり電子式シャッターを持つカメラの場合、電池が無くなると、
ミラーが上がったままになってしまう事がある。
「電池を変えると直るんですか?」
・・・うん、実は機械式(メカニカル)カメラの場合に、この症状が出るともうお手上げなんだ、
修理に出すしか無い。 でも、マニュアル機でも電子式ならば、それで直るかもしれない。
「変えました・・ けど動きません(汗)」
・・・電源を切ったり入れたりしても・・・ダメだね。
・・・じゃあ、非常用の機械式シャッターだ(
メンテナンス(4)で解説)
えっと、この機種の機械式シャッターは・・・げ、無いカメラだったか。
(注:ミラーアップ説明写真のカメラと、実際に壊れたカメラは異なる)
「匠さん、どうしましょう?(半泣)」
・・・う~ん、今日は予備のカメラは持ってきている? え?無い・・(汗)
・・・じゃあ、こうしよう、今から、ちょっと荒療治をする、それで直らなければ、残念ながら
このカメラは修理行きだ。
でも、今日は私の予備のコンパクトを貸せるから撮影は続行できる。
「わかりました、やってみてください」
・・・了解、いくよ。
カメラのマウント部の前で指を曲げて爪でミラーを叩く!
「エイッツ!」 バシッ! カシャ。
「あ、直った!!」
・・・まだわからない・・ これでシャッターを切ってみるよ。
フィルムは入っているの?
「入ってますが、別にいいです」
・・・じゃあ。。 カシャ、カシャ。 おお、快調に切れるよ。
・・・フィルム1本撮り終わったら言ってね・・ 裏フタを開けてシャッター速度全速チェック
(注:
中古カメラ購入記事参照)をやるよ。
「はい! 匠さん、本当にありがとうございます」
・・・いえいえ、とりあえずは直ってよかったよ。
「今度おかしくなった時の為に、今の直し方教えてくれますか?」
・・・ぐっ(汗) 実はこれは、あまり正統派の直し方じゃないんだよ、
昔で言えば、写らなくなったテレビを叩いて直すのと同じだよ(笑)
・・・だから、この直し方は覚えなくても良いんだよ。
基本的には、ミラーアップが発生したカメラは、
☆メカニカル(機械式)カメラの場合 →即修理
☆電子式(AE)カメラの場合 →電池交換、非常用機械シャッターでチェック
☆ニコン高級機等の場合
→ミラーアップスイッチが誤ってONになっていないかを調べる。
☆キヤノン等のAFカメラや、各社デジタル一眼レフの場合
→カスタムファンクションあるいはメニューを見て、「ミラーアップ」の項目、
あるいは「センサークリーニング」がONになっているかどうかを調べる。
の方法でチェックをする。
機械式を含め、いずれも問題無い場合、すなわち明らかな「故障」の場合は、
あくまで「最後の手段」として、軽いショックを与えてみる。
もちろんこれで直る保証は無いし、余計に壊れても文句は言えない。。
けど、万が一直る場合もあるので、撮影中などで緊急の場合は、無茶しない程度に
試してみても良いかもしれない。
特に今回の場合は、「転倒」によるショックが原因である事が明白だったので
また別のショックで直る可能性は高かった。
精密な電子機器であるカメラを「叩いて直す」などは、あくまで邪道である。
けど、精密であっても機械の部分があれば、そこに関しては、ショックで直すというのも
ありうる話である。 だが、何度も言うがあくまでそれも、1つは最後の手段としての
応急処置であり、また1つは、その力加減やショックを与える場所、方向なども、
メカの仕組みをある程度理解していないでむやみにやってはならない。
あくまで「良い子はマネしないでね」という類の話であるのだが、
まあ、本当に最終手段として、こんな直し方というのもあるのだと言う事を
頭の片隅においてもらえればよいだろう。