シリーズの「関西の楽しみ」 今回は大阪を離れて京都編である。
<京都:とある冬の休日Ⅰ>
京阪四条駅または阪急河原町駅を降りると、もうすぐに祇園(ぎおん)である。
「祇園」という地名を聞くと非常に日本的なイメージ、たとえば舞妓さんやら
油とり紙(注:レンズペーパーでは無い・・・笑)やらを連想してしまう。
祇園と名前がつく近年の音楽作品も多い、いずれもが日本的な音階を用いた曲であるが、
祇園をイメージして曲を作ったのか、あるいはそういう曲ができたから、そういうタイトルを
作ったのかは良くわからない、けれど、ある意味、日本的なイメージを持つ地域は
残念ながら、他にはもう数が少ないのかもしれない・・・

↑①花見小路交差点より(広角パンフォーカスと特殊レタッチ)
・・・だから当然、祇園の写真を撮る上でもそういう「和の心」を持って望み、
結果的にどうしても和風の街並みやらに目が行くのであるが、祇園も何度も行くとなると、
もう同じような写真ばかりで、撮るものがなくなってくるように思えてしまう。

↑②花見小路のちょうちん(大口径レンズによる背景ボカシ)
・・・こういう写真はもう何十枚も撮ったよな・・(汗)
・・・祇園らしいといえば祇園らしいけど、毎回こんな写真でも芸が無いよね。
そこで、今日は、もう少し目線を変えて、祇園あるいは京都の持つ日本的イメージに
こだわらず、少し面白いものに着目して撮ってみようと思った。
機材は、デジタル一眼レフに大口径標準、そしてGR Digital と銀塩コンパクトGR1である。
銀塩換算の焦点距離は、各 75mm,28mm,28mmとなる。
焦点距離がかぶったカメラを持ち歩くのは異様に思えるかもしれないが、
デジタルにはデジタルのよさ、銀塩には銀塩のよさがあるから両者は別物なのである。
花見小路をブラリと歩く・・
・・・あ、面白いな、招き猫の手が動いているぞ。
店頭ディスプレイの人形を見かける。
すぐさま一眼レフを取り出し、低速シャッターによる動感効果を狙う。

↑③招き猫 50mm f=22 ISO200 +1/3補正 シャッター速度=1/8秒
厳密にシャッター速度を決めて撮る場合は、やはり一眼が便利である、
低速シャッターを使えば、被写体の動きを表現する事ができる。
勿論注意するべきは手ブレである、50mmレンズはこのデジタル一眼レフでは銀塩換算
で75mmに相当するので、1/75秒以下になると手ブレの可能性がある。
しかし、ここで用いたのは手ブレ補正内蔵カメラであって、通常、中級者であれば
これより3段遅いシャッター速度でも手持ち撮影が可能である。
1/75秒、これをまあ、約1/80秒としたとき、3段落ちのシャッター速度は、
1/80→1/40→1/20→1/10秒となる。 つまり1/10秒までは安全圏。
さらに、ブレ無いカメラの構え方ができる人であれば、さらに1段~2段遅い
シャッター速度でも撮れる場合がある。
ただ、この場合むやみにシャッター速度を遅くすれば良いというものでもなく、
動いている被写体(あるいはその一部)の速度を見ながら、動感が効果的に出る
シャッター速度を選ばなければならない。 この場合、直感的に1/8秒を選択し、
露出補正込みでISOや絞りをそのシャッター速度に合わせるように調整したので
あるが、実際のところは少し遅すぎたと思う。
小さい液晶モニターで見ていたらこんなものだと思ったのであるが、
PCで大きくして見ると、手の動きが派手すぎて、やりすぎ感が強い。
恐らく、1/15秒程度でバッチリだったのではなかろうか? しかし、なかなか判断が
難しかったので、撮影時にシャッター速度をいくつか変えて撮ればよかったと思った。

↑④「模様」 50mm f=2.5
次は静止被写体である、階段の手すりの部分が面白い模様に見えたので、
シンメトリック(対称的)に構図を決める。
この場合は、ほぼ水平に撮影をしているが、模様のパターンが主題であるから、
わざと傾けても面白いであろう。
絞りを選択する場合、大口径レンズ(開放f1.4)では、ある程度近接して撮影すると、
被写界深度は非常に浅くなる、すなわち、ごく薄い厚みにしかピントが合わなくなってしまう。
このような被写体の場合、模様となっている金属は少し厚みがあるので、あまり絞りを
開けすぎると、金属の厚み全体にピントが合わず、たとえば表面しかピントが来ていない
という状況になると、ピン甘に感じてしまう危険性もある。
これはAF(オートフォーカス)でもMF(マニュアルフォーカス)でもどちらでも同じことである。
そこで、少し被写界深度を稼ぐために、絞りを僅かに絞り込む。
この場合は、経験的にf=2.5とした。
あまり絞り込みすぎると背景の階段の詳細までくっきり写ることになるが、
それはそれで背景の状況まで見せたいのならば、そういう作画意図も有りである。
ただ、ここでは模様が主役なので、関係ない部分は見せないようにボカす事で対応した。
意図通りに撮れているか心配であれば、あるいは意図をどうするべきか決めかねている
場合、これも↑でシャッター速度を変える話をしたのと同様に、
今度は、絞りを、f2.8前後、f5.6前後、f11前後など、何枚か撮ってみれば良いであろう。
なお、注意点としては、被写界深度はピント面(の前後)に働くのであるから、この作画意図
の場合は全体にピントを合わせたいので必ず被写体の模様に平行に正対して撮影する
事が大事である。
最初に「傾けて撮っても良い」し言ったが、それはあくまで被写体に平行に立った上で、
カメラをたとえば右45度に回転させるように撮るのであって、全体を等距離にする事である。
奥行きが変化する方向、たとえば前倒しにしたり右前に傾けると遠近感が変わるので、
ここで考えている作画意図が出ない。(それはそれで別の作品になってしまう)

↑⑤「ガードレール」 (コンパクトによるローアングル撮影)
今度は、面白い形のガートレールを見かけた。 何故こんな形になっているのかは
わからないが、まあ、祇園周辺の狭い路地であるから、色々と工夫があるのだろう。
低い位置にあるから、コンパクトの出番である。 通常の一眼レフではファインダー
が見えないから地面に伏せるようにして撮影しなければならなくなる(汗)
今度でたオリンパスE-330や一眼レフタイプ高機能コンパクトのように
バリアングル(角度可変)ファインダーを搭載している機種であれば、こういう場合にも
困らないのであるが、実際には、この作画意図の場合、普通の液晶モニター固定の
コンパクトでは、手をだらりと下げてノーファインダー撮影をした方が簡便である。
もうひとつ、ここで注意したのは、シャッターチャンスである。
「ガードレールを撮るのに何のシャッターチャンスが必要なんだ?」と思うかもしれないが、
まず、この物体がガードレールである事を作画表現的に示すか示さないかを決める事が
第一に重要である。 もちろん「謎の物体」として表現したければ、なるべく「謎」に見える
変な撮影アングルを上下左右から探して撮ればよい。
しかし、ここでは、あくまで「これはガードレールである」という事を表現したかった。
だとすると話は変わってくる。
まずは、形をはっきり出さなければならない、だから、コンパクトカメラはだらりと
下げながらも、垂直を意識して被写体と正対して構える、これで形は出る。
ノーファインダーと言いつつも、下げた手が垂直かどうかは上から見ることができるし、
液晶モニターも斜め上からの角度で見えにくいが、僅かに確認する事が可能である。
そして、「ガードレール」であることを示すには、「車」が必要である。
だから、少し待って、車が来た瞬間を捉えてシャッターを押す。
時速20km程度の低速で走る車は、1秒間に約5m程移動するが、数百分の1秒の
シャッター速度では、車のブレは数mm~数cmになるので、被写体のブレは殆ど
気にならない。 問題は、シャッターを押すタイミングと、カメラ自体の遅れ、
つまりシャッター(レリーズ)タイムラグである。
比較的タイムラグが短い(遅れない)コンパクトデジカメでも、100mS(=1秒の1/10)
くらいの遅れが発生する。
被写体の車が、時速18kmで動いている時は、100mSでは、50cmも移動する。
これよりもっとタイムラグが長い(遅い)カメラでは、被写体の車は1mも2mも移動して
しまうことになる。 だから、上手い具合にガードレールの後ろに車を入れたかったら
(カメラ毎の)タイムラグを見込んで少しだけ早目にシャッターを切る必要がある。
そこまで注意していても正確に背景の車の構図を決めることは不可能に近い。
この作例では、結果的に車のバックミラー部とガードレールがかぶってしまい、
ちょっと残念だった。 できればミラーの部分は少し前か後ろにあって欲しかったが
まあそれは結果論なので、あまり神経質になってもしかたが無い。
どうしてもそうしたければ、何十回も同じようなチャンスを待って写し、気に入った
構図となった作品を選ぶしか無いであろう。
ちなみにコンパクトでもISOを下げ、絞りやシャッター速度をコントロールできる機種で
あれば、低速シャッターを選択して車を止まっているように写すのではなく
わざとブラして、さらなる動感効果を出すことも可能である。
あるいは一眼+広角レンズでノーファインダー、あるいは一眼+バリアングル
ファインダーでそれをやっても良いであろう。 しかし、まあ、今回はそこまで
凝った事はせず、単に車が背景に入ってくれればそれで良しとする作画意図であった。
まあ、でも、背景で車がビュンビュン走っているような写真であれば、ガードレール
の「安全性」というものが意図として表現しやすい写真になったかもしれないが・・
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・・・さて、撮影をしていたらお腹が空いた・・
今日は京阪三条駅前にある大衆食堂「S屋」での昼食である。

↑⑥「名物:皿盛り 560円」 GR Digital マクロモード撮影
この大衆食堂はレトロな感じがする店であるが、気軽には入りにくい雰囲気もあり、
駅前の好立地でありながら、混雑せず、昼食時でも待たずに食べれるのが良い。
お店の名物の「皿盛り」は、一種のカツカレー(ライス)であるが、カレーうどんの
つゆのような和風の味付けと片栗粉のトロミがユニークな料理。
料理の写真を店内で撮る場合、普通は白熱灯(電球光)によるオレンジ色味が出て
しまうので、通常はホワイトバランスをオートから手動に変更して撮影をする。
しかし、ここでは、窓から差し込む自然光が強かったので、ホワイトバランスはオートの
ままで撮っている。なおオートであっても被写体に白い部分が無いと適切な色味が
出ない場合もあるので注意すること。
あとは美味しそうに見える撮り方である・・・ 色々なノウハウがあると思うが、
今回は簡単な一点を紹介、それは「料理の全体を入れないこと」である。
これは、特にボリューム感のある料理の場合に使えるテクニック。
皿の全体を構図に収めてしまうと、そこで全体が見えて「おしまい」となってしまう。
皿(料理)の一部しか入れなければ、「まだ続きがある」ように思えてくるので、
ボリューム感が増す。
勿論どんな料理でもそうすれば良いというわけではなく、小さい懐石料理の一部だけを
写してみてもしかたないであろう・・笑
あくまで料理にボリューム感を持たせたい作画意図がある場合に限る。
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さて、最後は友人の美女NANAさんの撮影。
今回は逆光ポートレート、なるべくカメラを意識しないようにしてもらって、
広角コンパクトで超逆光の角度から近接し、プラス補正をして撮ってみた。

↑⑦GR Digital (銀塩換算)28mm f=2.8 +0.7補正(特殊レタッチ)
思いっきりフレアが出ているが意図通り。
フレアとは逆光時に白っぽく写るような現象であり、レンズあるいはカメラの弱点とも言える。
普通は露出補正無しで逆光で写すと被写体はかなり暗くなるのであるが、逆光の記事で
書いたように、プラス補正あるいは日中シンクロ(フラッシュを焚く)ことで被写体を明るく
写す事ができる。
完全な逆光で、プラス補正の場合は、このようにフレアが目立つことがあるが、
光が被写体の手前にまで回り込むように見えるので「ソフトな光の中にいる」という
作画効果が得られる。
さらに弱い色彩加工と周辺にも光を回らせるレタッチを施して出来上がり。
「匠さん、甘いもの好きですか?」 NANAさんが言う。
・・・うん、いけるよ。
「じゃあ、これ・・」
・・・え? くれるの?
「先日、レンズ買うのに色々手伝ってくれたから・・・」
・・・いや、別にそんなの気にしなくても・・
・・・でも、嬉しいね! 少し早いバレンタインとして喜んでいただくよ(喜)
「えへ、また次回もよろしくお願いします」

↑⑧α-7D AF85/1.4GD Limited
嬉しかったので自宅で対美女用スーパーレンズを取り出しての撮影・・・
美女からいただいたものは、やはりそれなりの気持ちを込めて写さねばなるまい(笑)
明らかに被写界深度が非常に浅い描写は、どこの角度からどうやって、どこにピント
を合わせていいか非常に迷う。
美女撮影同様(笑)に神経を使うが、結局リボンのマークにMFでピントを合わせ
リボンの結び目は立体的にボカしてみることにした。
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・・というわけで、シリーズ第3回目は、これまでの日常の地区と違って観光地での
撮影であった。
その観光地に初めて行く場合は、いかにも観光地です、といった被写体の写真を
撮るのはやむをえないであろう、まあ、説明的な目的で「こんな所でした」という
写真が必要な場合もあるとは思う。
しかし、何度も同じ場所を訪れている場合、そこは観光地ではなくて単なる日常の
場所として見えてきて、そこを観光地と意識しない目線で被写体を探せるかもしれない。
今回は「祇園のちょうちん」の写真が無ければあえてここが祇園だとは思えない写真
ばかりであろう、でも、なかなか他の場所にない被写体も確かに良く見ていけば見つかる。
観光としての意識がなければ、そういう被写体を見つける事ができるのかもしれない。
そして、被写体を見つければ、あとは、いつもと同じように、作画意図を盛り込んだ
写真を普通に撮っていけば良いと思う。