
デジタル(一眼レフ)カメラが世の中で一般的になっている現在では、
デジタル対応・デジタル専用と謳った、レンズやアクセサリーが多数存在する。
特定のカメラにつける専用アクセサリーを除くと、だいたい以下のようなものか?
A:デジタル専用レンズ
B:デジタル対応レンズ
C:デジタル対応フィルター
このうち、Cのデジタル対応フィルターについては、あまり気にしなくても良い。
効果があるのかもしれないし、無いかもしれない・・
あったとしても、それは、医学で言うところのプラシーボ(偽薬)効果かもしれない。
ちなみに、「プラシーボ」とは、たとえば、不眠で悩む被験者のグループを2分し、
片方のグループには、権威ある医師が、
「これは大変良く効く新薬の睡眠薬である」と言って、たとえば栄養剤を与える。
もう一方のグループには、アシスタントの医師が出てきて
「こちらは、まあ、栄養剤ですので、とりあえず飲んでみてください」と言う。
すると、権威ある医師が与えた栄養剤を飲んだグループは、多くの人が、
「昨夜は大変よく眠れました、さすがに新薬の効き目はバツグンです・・」
などと言う事になる。
つまり、プラシーボとは思い込みによる効果であり、人間に心理的に安心感を
与えることが、薬学的な効果よりも大きい場合がある、という事である。
写真においても、「これはいいレンズ」だよ、とか言われれると、
「それじゃ、上手に撮らなければ・・」と真剣に作品作りをする場合もあるので、
あえてプラシーボがまったく効果が無いわけでは無いと思う。
そして、もしかすると、デジタル対応三脚とか、デジタル対応カメラバッグなど
もあるかもしれない(笑)
もちろん、そんな製品が出てきたとしてもプラシーボ効果を期待して買う分には
止めはしないが・・・まあ、普通に考えればアクセサリーに関しては、デジタル
対応と謳う意味があるか無いかは容易に推察できるであろう。
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さて、Bの「デジタル対応レンズ」、これはちょっとややこしい。
通常のレンズと違うところは、だいたい以下の2点
1)レンズ後玉のコーティング処理がある
2)テレセントリック特性に配慮した設計になっている
1)は、今までのフィルムとちがって、デジタルの撮像素子は表面が光を反射しやすいので、
その反射がレンズの後玉にあたってさらに乱反射をすることを抑えていると言う・・・
まあ、もっともらしい理屈だが、フィルムだって光を反射するんだから、
大差ないような気もしないでもない。
2)のテレセントリックとは、レンズの後ろ側から出た光は、周辺に行くにしたがって、
フィルムや撮像素子に斜めにあたる。
銀塩フィルムだったら、多少斜めにあたる光でも、しっかり感光するのであるが、
CCDやCMOSなどの撮像素子は、斜めからあたる光はその分だけ弱くなって、
周辺の画質が低下したりする可能性がある。
だから、レンズの後ろから出る光をできるだけ撮像素子に垂直に当たるように
「テレセントリック特性に配慮した設計」のレンズをデジタル対応と呼ぶ。
1)と、2)がしっかりできていれば、さすがに「プラシーボ効果」とは言わずに、
まともに作っているな、という気もするが。
世の中には、こないだまで普通に売っていたレンズが市場からなくなって、
いつのまにか「デジタル対応」と銘打って・・しかもどう見ても前のモデルと
同じレンズ構成・・・(テレセントリックに配慮した場合、レンズ設計自体が変わる)が
売られていて、下手をすると価格まで上がっている場合もある。
後玉にコーティングを施したくらいだと、いままでのモデルと大差無いじゃん、
と思うのであるが、プラシーボ効果を期待してか、わざわざ旧モデルを
(デジタル対応と言っている)新モデルに買い換えてしまうユーザーもいる、
そして、まあ、高いお金を出して買ったものだから
「さすがにデジタル対応は、旧型よりもヌケが良く、画質が向上している・・」
とか言うのだから、きっと測定器並の目を持つユーザーなのであろう(笑)
そんなわけで、基本的には、あまり「デジタル対応」は気にしなくても良い。
お金に余裕があればそういう新しいレンズを新品で買えば良いし。
少しは(ほんの僅かは・・)デジタル一眼につけると画質が良くなっている
のかもしれない(?)
お金に余裕がなければ・・あるいはノーマルな金銭感覚を持つならば(笑)
デジタル対応のレンズが売れて、いらなくなった旧型の中古とか、
在庫処分で回ってきた旧型レンズとかを安価に買えば良いだけの話である、
そういうレンズをデジタル一眼レフにつけても、ちゃんと写真は撮れる。
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さて、最後は問題の「A:デジタル専用レンズ」である。
これについては、まず、以下の写真を見てもらいたい。

左がデジタル一眼レフ、ニコンD2H。 右が銀塩一眼レフ、ニコンF5である。
マウント(レンズをつける穴)の中に見えるミラーの大きさが、デジタルの方が小さいのが
おわかりだろうか?
わかりにくので、もっと近接して撮ってみる。
(ミラー部にピントを合わせているので、マウント部はボケているが気にしない・・)

↑フィルム(銀塩)一眼レフ、ニコンF5

↑デジタル一眼レフ、ニコンD2H
なんか景色のようなものが写っているのは、ファインダーを通して後ろの部屋の中の
様子が見えている。 デジタルの方が小さいことがわかる。
まあ、ファインダーから画像なので、実際のフィルムのサイズと撮像素子のサイズの比は
ここまで極端では無いのであるが、デジタルの方が明らかに小さいのは確かである。
どれくらい小さいのかは、その機種による。
フィルムのサイズ:約36mm x約24mm
EOS-5D,EOS-1Ds系:約36mm x約24mm (1.0倍)
EOS-1D系:約28.7mm x約19.1mm(1.3倍)
EOSその他 :約22.7mm x約15.1mm(1.6倍)
シグマ:約20.7mm x約13.8mm(1.7倍)
ニコン :約23.7mm x約15.6mm(1.5倍)
フジ写真フィルム:約23.0mm x約15.5mm(1.5倍)
ペンタックス :約23.5mm x約15.7mm(1.5倍)
コニカミノルタ :約23.5mm x約15.7mm(1.5倍)
フォーサーズ :約17.8mm x約13.0mm(2.0倍)
後ろに書いてある数字は、銀塩に対する(対角線比率)の倍数である。
銀塩よりもデジタルの撮像素子は小さいから、同じレンズを使っても
被写体の一部しか写らない、つまり画角が小さくなるということである。
画角では概念的にわかりにくいので、一般的にはレンズの焦点距離が変化するという
概念になっている。 たとえば、100mmのレンズは、1.5倍のデジタル一眼レフでは、
150mm相当(の画角)になるということである。
要は、実際にはレンズの焦点距離が伸びて望遠になるわけではなくて、
被写体の真ん中だけ写してそれを引き伸ばすから大きく見えるだけである、
まあ、銀塩で言うところのトリミングと同じ効果である。
初級者のうちは、望遠レンズが欲しい、と良く言うが、大きな画素数で写して
必要なところだけ拡大すれば、被写体は大きく写せる。
重たく高価な望遠レンズを振り回すより、その方が簡単である。
ただし、これは単に被写体のみを大きくしているので、背景や遠近感の圧縮効果や
背景のボケ量を増やすといった、いわゆる「望遠レンズの効果」は、このトリミング技法では
出ないので注意すること。
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さて、肝心なのは、撮像素子の小ささによる画角の変化ではなくて、
撮像素子が小さいと、レンズも小さくて済む、ということである。
レンズの後玉から出る光の大きさ(直径)を、イメージサークルと言うが、
大きな銀塩フィルムや、フルサイズ撮像素子の場合は、イメージサークルも
大きくする必要がある。 これまで販売されていた、通常の銀塩一眼レフ用の
すべてのレンズは、36mmx24mmのフィルムサイズをカバーするだけの十分な
大きさのイメージサークルがある。
しかし、これをたとえば23mmx15mmの小さな(慣習上 APS-Cサイズという)
撮像素子に当てると、イメージサークルの周辺が余ってしまう。
普通、イメージサークルを大きくするためにはレンズも大きくしなければならない。
大きなフィルムを使う中判カメラや大判カメラのレンズが巨大なのがその一例である。
じゃあ、デジカメの小さな撮像素子にあわせて、イメージサークルも小さくすれば、
レンズは小型化できるのでないか? ・・まあ、そいうことである。
ついでに、デジタルでは画角が変化して、望遠側は、まあ伸びるから嬉しいのであるが、
広角側が全然足りなくなっているので、そのデジタル専用レンズでは広角側にずらして
設計しなおしてしまえ・・ まあ、そういう事なのである。
だから、従来銀塩で人気があった、28mm-300mmの高倍率ズームは、
1.5倍相当で使うことを意識して、18mm-200mmの高倍率ズームに置き換わった。
これで、(18x1.5=)27mm~(200x1.5=)300mm相当のレンズとなり、おまけに
イメージサークルも小さいから、レンズの大きさも小さくなった。
でも、この「デジタル専用レンズ」は、たとえマウントが同じ(ニコンならニコン用、
キヤノンならキヤノン用)であっても、銀塩一眼レフやフルサイズデジタル一眼レフに
使用することはできない。
まあ、これらの「デジタル専用レンズでも」一部のレンズを除き、同じマウントであれば、
「銀塩やフルサイズにも」普通につけることができるようになっている。
ところが、イメージサークルが小さいために、銀塩やフルサイズの撮像素子の周辺まで
光が行きわたらない。 つまり周辺が黒く陰ってしまう(ケラレ、周辺減光)
多少絞りを絞ると、(たとえばf8.0やf11くらい)周辺が陰らずに使える可能性もあるが、
実用上はそういう制限があるのは、使えない事と同じである。
デジタル専用レンズ、の名称は、各メーカーによってちがう
たとえば、キヤノンはEF-S レンズ、ニコンは、DXニッコール、シグマは、DC 、
タムロンは DiⅡ 、ペンタックスは DA などである。
デジタル専用レンズは銀塩と互換性が無いので、銀塩とデジタルを併用するユーザーで
あれば、必要最低限の購入に留めておくと良いだろう。
あえて意味があるとすれば、デジタル一眼で弱点となる広角を補強する意味、
具体的には、10-20mm や 11-22mm といったズームレンズ、または、14mm前後
の単焦点レンズを、デジタル専用で購入する意味はあると思う。
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あまり好ましく無い例を上げる、
A氏は、キヤノンEOS-7s と タムロン 28-300XRを使用する銀塩ユーザーであったが、
デジタル化をするため、両方を売却して、EOS KISS Digital Nと、デジタル専用レンズ
タムロン 18-200 を購入した。
そして、KISS Digi Nでは性能的に物足りなくなったため、EOS 5D を購入したが、
これはフルサイズデジタルであるため、タムロン 18-200が使えなくなってしまった(汗)
銀塩の 28-300を持っておけばよかったのであるが後のまつりである。
またやむなく、タムロン18-200を手離して、28-300XRのデジタル対応Di型を
再度購入するハメになってしまった・・(泣)
さらに、EOS 5Dでは連写性能が物足りなくなり、EOS 1DmarkⅡを追加購入したが、
今度は 28-300XRDiでは広角側が足りなくなり、EF-S 10-20mmを追加購入した、
ところが、このEF-Sレンズは、EOS 5D では使用できない事に気がつき、
何をやっているのか、わけがわからなくなってしまった・・(大泣)
これは変化の激しいデジタル市場の「規格」に振り回されている典型的な例である。
こんな買い方をしていたら、お金がいくらあっても足りない。
別の賢いユーザーがいれば、A氏が二束三文で下取りした、EOS 7s やタムロン
28-300XR やKISS Ditigal N を喜んで中古で安くゲットしていくだろう。
あまり最新の機材を次々に買い換えていくのは、回転が速く規格も変化する
デジタルの市場ではあまり賢いやりかたでは無いと思う。
何も知らないユーザーを惑わせるようなメーカーの売り方も問題があると思うが、
デジタル対応とか書いてあると、焦ってそれを買ってしまうユーザー側にも問題があると思う。
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TVの世界では、2011年7月に、地上波デジタルになってアナログ放送が終了するから
と言って、今から2年も前から、TV売り場で、お金を持ってそうなシニアのお客さんが来ると
「今のテレビはいずれ見れなくなりますよ、こっちを買っておいた方がいいですよ」と
勧められて、地上波デジタル対応の高価なTVを買わされて帰る人達がいる。
別に構わないんだけどね・・・ そのテレビ、8年も使うの? まあ、物持ちが
いいだろうという事はわかるけどね・・・と、今は2006年だから、あと5年か、
じゃあ、私は2010年ごろに焦って駆け込みで買い換えるユーザーの大型液晶
テレビを安く中古で買って、その頃には出ているだろうデジタル・アナログ変換
ユニットでも安く追加で買うとするか・・40万円分くらいは浮くな、しめしめ・・
デジタルの世界は古いものは二束三文である、ここで衝撃的な情報を言ってしまうが、
私が使っている EOS D30 という古いデジタル一眼レフは、定価35万円強のものを、
新品在庫で2年前に7万円で購入した。
また、ニコン D2H は、定価50万円強のものを、新品在庫で 12万6千円で昨年購入した。
いずれも理由は「型が古いから」であって、特に性能的に問題があるわけでは無い、
実用的にはどちらも十分であり、もちろん現役で快適に使っている。
D30はさすがに古いが、ブログ用で150万画素しか使っていないから、
連写も30~40枚もバシバシ快適に撮れる。おまけにさすがに35万円もするカメラだけ
あって、作りもなかなかしっかりしていて良い。
D2Hにいたって、は、いまだに現役最速クラスの秒8コマの連写で、カメラの
仕上げもとてもしっかりしていて、さすがにハイエンド一眼の風格がある。
正直、D200を新品で買おうという気はさらさら無い、きっと買うならD300が出たころに
なって、6~7万円くらいで中古購入できたら、いい頃合か・・・
オリンパス E-1や、ペンタックス *istDs も、今買いごろなのであるが、
なかなか中古や新品在庫の出物が無いのが難点・・・しかし、いずれは出てくるだろう。
どちらも3.5万円以下なら即GETである!
(追記:ちょうど *istDs をこの値段で売却したいという連絡が入った、はい、買います・・笑)
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さて、そんなわけで、デジタルの市場では良く流れを見極めて商品を購入するのが
良いと思う。
「デジタルの世界はわからないから、新しいモノで勧められたものを買う」・・
そんな事では損しまずぞ・・ まあ、それで日本経済が潤っているならば、ある意味、
それはそれでいいのかもしれないが・・ 知らない事は損をする、
流れが読めないことは損をする・・・つまり、情報や知識に価値がある時代が、
もうとっくに来ているという事を再度認識するのが良いと思う。
銀塩高級コンパクト、CONTAXのカメラやレンズ、ニコン銀塩カメラとMFレンズ、
さらには、コニカミノルタのカメラやレンズ・・ こうして無くなっていく商品も最近は多く
あわてて購入したり、あわてて売却したりする人も多いと聞く・・・
しかし、どうなんだろう? カメラの中古市場は結構昔の製品も良く見かけるので、
私自身はほとんど(全然)焦ってないのであるが、まあ、基本はやはり状況や情報を
よく見極めた上で必要な時に必要な機材を買えば良いのではなかろうか・・・?