2018年から始まった本シリーズも第100回を迎え、
今回は補足編として個人的な「お気に入り」レンズ
(ただし2016年以降の近代に発売されたレンズに
限定する→「2016年断層」仮説に関係する)を
7本紹介しよう。
今回が、きりの良い第100回目につき、本記事を
もって、本シリーズの最終回とする。
以降の新規レンズ紹介等は、また別シリーズを新たに
企画するが、本ブログは画像保存容量が上限に達して
いる為、近日中に新ブログに移行する予定である。
----
では、最初のお気に入りレンズ

レンズは、SIGMA 135mm/f1.8 DG HSM | ART
(中古購入価格 102,000円)(以下、A135/1.8)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ(APS-C機)
2017年発売のフルサイズ対応高描写力AF大口径望遠
レンズ。
レンズ・マニアックス第6回記事、および
特殊レンズ超マニアックス第12回記事等で紹介済み。
さて、各レンズについての長所短所等の詳細な評価は、
前出の記事群で既に行っている為、重複するので割愛する。
今回は、そのレンズを必要とする理由や、当該レンズを
取り巻く状況等についての話を主体にしよう。
(ただし、相当に長い記事となる。まあ最終回につき
普段の記事よりもだいぶ長い、超長文記事という訳だ)

で、本レンズは現行のフルサイズ対応(一眼レフ用)
の開放F2未満の(AF)レンズとしては、最も望遠の
焦点距離(135mm)である。
(注:開放F1.4級の最長焦点距離は一般に105mmまで。
海外製で、MFの135mm/F1.4レンズも存在するが、
それは受注生産品であり、特殊な製品と見なしている)
開放F値の明るい望遠(系)レンズが必要な状況は、
私の場合では主に暗所でのライブ・ステージ撮影であり、
その要求仕様は・・
*できるだけ明るい大口径(F1.4~F2.8級、できれば
開放F2未満)で、
*中望遠~望遠(85~200mm程度)のAFレンズで、
*手持ち撮影が可能なもの(概ね1.5kg以下程度)
という条件である。
なお、このスペックを満たすレンズは、銀塩時代より
現代に至る迄、概ねフルサイズ対応となるであろう。
(参考:APS-C以下機専用では、OLYMPUS ED75/1.8等、
かなり限られた機種数しか無いと思われる)
で、こうしたフルサイズ対応の望遠系レンズを使う際の
母艦をフルサイズ機とするか、APS-C機やμ4/3等と
するかは、その撮影環境(ライブ会場等)次第である。
この目的には、いわゆる「大三元望遠ズーム」
(70-200mm/F2.8級)が向くとは思われるが・・
個人的に「大三元」は「三重苦」(大きく重く高価)
な故に好みでは無い。また、開放F値は、F2.8より
もう1段程度明るい方が望ましい状況だ(できれば
F2未満)この場合、「単焦点レンズ」となるだろうが、
それはそれで問題は無い(ズームでなくても良い)
(参考:SIGMA にはAPS-C機専用の50-100mm/F1.8
ズームが存在するが、やや望遠画角が足りない。
また、OLYMPUSには銀塩OM-SYSTEMで250mm/F2
レンズがあった模様だが、高価なレア品で見た事も無い。
また、OLYMPUS ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm/F2も
存在したが、これは、終焉した4/3システム用である)
そして、CANONにはEF200mm/F1.8L USM(1988年)
という製品が、かつて存在した。
そのレンズは、知人の上級マニア氏が、銀塩時代末期の
中古ブームの頃に所有していて、ちょっと借りて持たせて
貰ったが、非常に重く(当時の資料では約3kgの重量)
かつ最短撮影距離も、焦点距離の10倍則の2mを上回る
2.5mという、あまり寄れない仕様であった為、全般的に
ハンドリング性能が悪いと見なし、興味が持てなかった。
後日、そのマニア氏が当該レンズを、私に安価な価格で
マ「買わないか?」と、話を持ちかけてきたのだが、
匠「重たくて、使いこなせそうにありません」
と、丁寧に断る事とした。
ちなみに、そのレンズは2008年に、開放F値を僅かに
下げてF2とした「CANON EF200mm/F2 L IS USM」
に、リニューアルされている。(未所有)
ただ、依然2.5kg以上と重量級であり、重すぎる。
私は「200mmで実用的なのはF2.8まで」と判断し、
もっぱらライブ撮影では200mm/F2.8級レンズ
(例:MINOLTA HI-SPEED AF APO 200mm/F2.8
「最強200mm選手権:決勝第2位の名レンズ)を
2000年代では持ち出す事が多かったが、2010年代
に入ると、カメラ側に「デジタルテレコン」、または
「クロップ機能」が搭載された機種が増えてきていて、
200mm単焦点レンズではなくても、135mmレンズで
デジタル拡大機能を併用すれば、多くの(ライブ等)
撮影条件においてもカバー可能な事がわかって来た。
そこで、「SONY Sonnar T* 135mm/F1.8 ZA」
(SAL135F18Z)を、2010年代中頃に中古で入手し、
その目的に充てようとしていた。
要求仕様(目的)にぴったりのレンズが入手できた
ので、数年間は機嫌よく使っていたのだが、この
レンズはツァイス銘というものの、発売が2006年
と、やや古く、2010年代後半においては、少々性能
(AFの速度や精度、解像感等)に不満も出てきた。
なので、2017年に新発売された本A135/1.8が
次なる、目的(要求仕様)にマッチするレンズとなり
これを購入した次第である。
ただ、本A135/1.8は、重量が約1.1kgもあり、
重いと思ったSONY ZA135/1.8の約1kgよりも、
さらに重くなっている。
しかし、丸一日の(手持ち)撮影等ではなく、数時間
程度のライブ撮影では、ハンドリング性は課題には
ならない。現在、本A135/1.8は、200mm画角を得る
場合には、CANON EOS 7D MarkⅡを母艦とする場合が
多いのだが、将来的には、より軽量の中級機における
AFやドライブ性能が向上された場合(例:EOS 90D等)
その手の機体を母艦とすれば、システム(カメラ+
レンズ)のトータル重量は軽減できる、と見ている。
(または、SIGMA MC-11やCANON EF-EOS M、「電子
アダプター」を用いて、適切なミラーレス機で用いる)

なお、近代の135mm単焦点は寄れる性能である場合
が多く(例:ZA135/1.8の最短撮影距離は72cm、
本A135/1.8の最短が87.5cm)
この特徴をAPS-C機+クロップまたはデジタルテレコン
で使用すると、ほぼ望遠マクロ的な用途として活用
する事ができる。
(レンズ・マニアックス第66回「望遠マクロvs近接
135mm編」記事参照。
まあつまり、大口径135mm(単焦点)は、ライブ撮影
のみならず、様々な用途にも使えると言う事なのだが、
それでも、あまり、初級中級層が指向する被写体等
(例:風景や人物等)には、向かない仕様であり、
使いこなしもやや難しい為、基本的に本A135/1.8は、
上級層以上における実用(依頼/業務)撮影向けレンズ
である。
----
では、2本目のレンズ

レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
(新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)
2018年末に発売された、フルサイズ対応MF中望遠
等倍マクロレンズ。
レンズ・マニアックス第25回、第32回記事および
特殊レンズ超マニアックス第11回記事等で紹介済み。
現在では残念ながら投機対象となってしまった(つまり、
希少価値から不条理なまでの高額相場となってしまった)
旧機種MAP125/2.5を、17年ぶりにリニューアルした
新型レンズだ。
両者の出自や、その違いは、レンズマニアックス第32回
記事「新旧マクロアポランター対決」編に詳しいので、
本記事では、そのあたりの比較は大幅に割愛する。

シンプルに、本MAP110/2.5だけの話をするならば、
近代的な設計であり「極めて高い描写力を持つ高性能
なマクロレンズ」という点が最大の特徴であろう。
しかしながら、近代のマクロレンズは、たいてい
どれも非常に良く写る。それでいて本レンズの定価
あるいは中古品相場は、10万円越えと高価であり、
例えば定番のTAMRON SP90mm/F2.8系のマクロで
あれば、古い世代のものは1万円台で中古購入する
事も可能であるから、数倍の入手価格となるだろう
本MAP110/2.5が、その価格差に見合う「数倍も優れた
描写力を持つ」・・・という訳では勿論ないし、
その描写性能の差異は微々たるものである。
まあつまり本MAP110/2.5は「コスパが悪いレンズ」
という事が、最も大きな課題となる訳だ。
高価な理由は、2010年代よりカメラ市場(交換
レンズを含む)が大きく縮退しているからであり、
つまり、あまりカメラやレンズの数が売れないから、
1台(本)売れば利益の出る「高付加価値型商品」に
各カメラ(レンズ)メーカーの商品戦略がシフトして
しまっているからである。(=値上げされている)
「高価すぎる」と思えば「買わない」という選択肢も
勿論、消費者側にはある。
誰も新製品を買わなければ「市場の状況に対して
製品価格が高すぎる」という市場分析になろうから、
メーカー側が低価格帯商品を出してくる可能性はある。
かつて1970年代末頃では物価上昇が激しく、それに
連動して、銀塩MF一眼レフやMF交換レンズの値上げが
酷く、当時の消費者層はそれを買わなくなったのだが、
1980年頃に、各社からコストダウン型のMF一眼レフ
(例:RICOH XR500やMINOLTA X-7等)が発売
されると、消費者層は飛びつくように、安価なそれら
を買い、大ヒット商品となったという歴史がある。
(参考:その当時は「物品税」という税制があった為
ヒットカメラ群は、それに掛からない、定価4万円
という価格帯に設定されていた。上記機種群に限らず
NIKON EMもOLYMPUS OM10も同様の4万円カメラだ)
また、近年2010年代末頃では、極めて多数の中国の
メーカーより、安価な交換レンズ群が国内市場に参入
してきている。これらも「日本製レンズは高価すぎる」
という弱点を突いた市場戦略であろう。
CANONも2020年には、開放F11固定の超望遠レンズ
を比較的安価に(ミラーレス機用として)発売し、
TAMRONも2019年頃から比較的安価な、ミラーレス機
専用・広角単焦点準マクロレンズを数機種発売している。
(注:「比較的安価」と言っても、CANONのこの望遠は
10万円前後もする。仮に、メーカー側等の関係者等が、
この値段で、コストダウン的商品を買うのだろうか??
なんだか「市場の金銭感覚がおかしい」としか思えない。
消費者が負担なく買える相場は、近代の中国製レンズと
同様の1万円台迄だろう、10万円は相当な覚悟がいる。
又、CANONでは、APS-Cミラーレス機(EOS R7/R10)
を低価格で発売する模様だが、低価格とは言っても
近年の他機・他社機と比べて若干安価に思うだけであり
APS-C機で約20万円(EOS R7)は、やはり高価すぎる)
・・で、これらは「製品群が高価になりすぎた市場」に
対して、消費者層でのターゲットとなる価格帯を調整
する意味もあると思われる。すなわち「市場」は自ら、
都合が良いバランス点を求めて推移していく訳だ。
でも、コシナ(フォクトレンダー)のアポランター(系)
レンズは、ちょっと、新しい市場戦略には乗り切れて
いない。 むしろ「アポランター」(APO-LANTHAR)を
「ブランド」とし、「高級品」として売りたい様相が
見受けられる。(2017年、2018年、2019年に発売
された、新規アポランター系レンズ3機種の定価は、
いずれも10万円を軽く超え、高価すぎる印象が強い)
余談が長くなったが、本MAP110/2.5や、関連する
アポランター系商品の課題は、その価格の高さであり、
これを「高価すぎるから買わない」と見なすか、又は
「高価でも、パフォーマンス(描写力)が高いから、
コスパ(価格性能比)の低下は最小限だと思う」
と判断するのか?は、消費者(ユーザー)個々の価値
感覚に依存するであろう。
なんとも難しい判断だが、とりあえず私は購入した。
ただ、中古品も流通数が少ない訳では無いので、あえて
急いで新品を買う必要もなく、「数年待って中古品を
購入した方が正解だったかも知れない」とも思っている。
(しかし、中古相場はあまり下がらず、比較的高価な
ままで推移しているので、やはり早めに買って正解
だっただろうか? 結局、ここも微妙な判断である)

総括だが、「現代における最高性能のマクロ」という
ものを体感したいのであれば、本MAP110/2.5の
購入の選択は悪くない。しかしながら、最高性能とは
言え、TAMRONやSIGMA製の安価で優秀なマクロレンズ
との性能差は大きなものでは無い。その僅かな差異を
求める為に、10万円オーバーの出資を容認できるか
否か? そこが最大の選択肢となるだろう。
まあ、基本的に上級マニア層向けとしておく。
ただし、本レンズが後年に相場高騰するとは思えない
状態であるから(理由:2000年代のフォクトレンダー
製レンズは、少数生産で希少品になりやすかったが
2010年代のフォクトレンダーは、長期に渡り継続生産
されているものが多く、希少化する事は考え難い為)
・・(という状況)だから、本レンズはコレクター向け
や投機層向けではなく、あくまで実践用(実用)レンズ
である。
旧機種MAP125/2.5は、私が「修行レンズ」と称して
いるくらいに実用性が低いレンズであったが、新型の
本MAP110/2.5では実用性は雲泥の差で向上している。
本レンズを使わずに死蔵しておくのは、極めて勿体無い
為、是非、実用に供して、その高い描写力を体感し、
レンズの価値を見極める感覚を養う為のリファレンス
(=「最高のレベルというのは、このあたりにある」
という感覚値を得る為の、「参照」するべき機材)と
してマニア層等に使ってもらいたいと思っている。
----
では、3本目のレンズ

レンズは、7artisans(七工匠) 55mm/f1.4
(中古購入価格 11,000円)(以下、七工匠55/1.4)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)
2018年頃発売の中国製のミラーレス機(APS-C機以下)
専用、MF大口径標準(中望遠画角)レンズ。
レンズ・マニアックス第36回、第51回記事、および
特殊レンズ超マニアックス第54回記事等で紹介済み。
本レンズは、異マウントで2本所有している。

さて、今から50年/半世紀も前の1970年代前半の
話だが、日本製カメラの世界的な台頭により、西独
の老舗有名ブランド(カメラ)メーカー群は苦戦を
強いられていた。
CONTAXを擁する、かのカール・ツァイス社も同様で
1970年代前半にはCONTAXのカメラ(レンズ)事業
から撤退をしてしまう。
宙に浮いた「CONTAX」のブランドだが、これには高い
商業価値がある。ツァイスは、これを日本のメーカー
に移譲(商標の使用権を売却する)する事を考えた。
当初、旭光学(PENTAX)に打診があった模様だが、
これは成立せず。まあ、当時のPENTAXは独自性が
強い社風が見られ、どちらかと言えばブランド嫌い
の様相も垣間見られたので、そうなるだろう。
結局、「YASHICA」が「CONTAX」を引き継ぐ事となり、
1975年に、まさしく”鳴り物入り”で国産CONTAXの
初号機「CONTAX RTS」が発売された。
(銀塩一眼レフ第5回「CONTAX RTS」編記事参照)
しかし、なんとYASHICAは、その年に倒産してしまう。
すぐさま「京セラ」等が資本投下をして、CONTAXの
ブランドは存続する事ができたのだが、それもまた
30年後の2005年には「京セラCONTAX」は、カメラ
事業から撤退してしまう。
・・で、その1975年、ビッグブランドであるCONTAX
の国内外の市場への浸透を磐石にする為に、交換
レンズも又、それなりに高性能なものが発売された。
まずは、標準レンズPlanar T* 50mm/F1.4だが、
わざわざ国産の部品を、西独で最終組み立てを行い
「Made In West Germany」と銘打った。
まあ、こうしておけば、高価なCONTAXを欲しがる
金満家層等においても「これは西独製なんだぜ!」と
自他共に所有満足度やステータス、ブランド価値を
高める事が出来るだろうし、また、休業の危機にある
西独のツァイス系工場の操業の確保にも役立つだろう。
で、もう1本が「Planar T* 85mm/F1.4」である。
当時あまり類を見ないスペックであるが、その後の
時代において「人物撮影ならばパーゴイチヨン」
(注:85mm F1.4の事を称した俗語である)という
常識を作り出した歴史的価値のあるレンズであり、
かつ、これはCONTAX(と言ってもYASHICA/富岡光学
であるが)の用意した「秘密兵器」でもあっただろう。
Planar T* 85mm/F1.4は、その価格の高さから、
おいそれとは買えないものであったが、消費者層の
憧れは、ブランドや当該レンズへの神格化に繋がって
行く。また、このレンズは、複雑な撮影条件が上手く
決まる(ハマる)と爆発的な高描写力を発揮する。
ただし、その撮影条件を整える事は非常に難しく、
私の経験上では、その成功確率は3%以下でしか無い。
つまり、銀塩時代に、36枚撮りフィルムを用い、
その中に1枚でも気に入った写真があれば良い、という
感じ(成功率/歩留まり)であった。
でも、条件が決まれば無類の高い描写力を発揮する為、
雑誌、カタログ、他者の撮った写真等で、そうした
高描写力を見せ付けられた消費者層は、その成功例の
裏に、とてつもない数の失敗(ボツ)写真があったの
かは知らずに(汗) 高価なPlanar 85mm/F1.4を
無理をして購入した。
しかし、ビギナーの金満家層では、この難しいレンズを
上手く使いこなせる筈も無く、同時代にマニア層を中心
に「このレンズは難しい」という噂も流れ、後年の
1980年代~1990年代位には、中古市場に、この
Planar 85mm/F1.4が溢れかえった。
(参考:もっと酷い事に、前述のPlanar 50mm/F1.4
の時と同様に、国産部品を西独で最終組み立てし、
「Made In West Germany」を謳ったバージョンも
逆輸入されていた。このPlanar 85mm/F1.4が、
「難しい/成功率が低いレンズだ」と誰かが言うと、
「それは性能の低い日本製だからだ。オレの持って
いる西独版は、とても良く写るぞ」と、同じ中身
なのに、高価に買ったモノを自慢する人まで現れた。
哀れ、その話を信じて、日本製から西独製に買い換えた
人も多数現れ、中古市場にはさらにPlanar 85/1.4が
多く流通するようになった・・・)
私も1900年代末には、このPlanar 85mm/F1.4を
手放し、Planar 100mm/F2に買い換えていた。
まあ、さすがに、”フィルム1本あたりで1枚位しか
成功しない確率”では、「歩留まりが悪すぎて、やって
いられない」と思ったからである。
ちなみに、Planar 85mm/F1.4は唯一無二の存在では
無く、同様の設計は、その後の時代に定番となり
1980年代位には各カメラメーカーからも類似構成
のMF85mm/F1.4級レンズが発売されるようになる。
(これらを総称し「プラナータイプ」と呼ぼう)
さて、本レンズ「七工匠55/1.4」の出自としては、
1970年代~1980年代頃の、そのプラナータイプの
85mm/F1.4レンズを、2/3程度にスケールダウンして
設計された「ジェネリック・レンズ」である。
「七工匠」は、こうした設計手法を得意とする
中国のメーカーであり、他にも、過去の名レンズの
「ジェネリック」(縮小設計)を何本も発売している。
(ただし、Web等には、その情報は書いていないので、
消費者/ユーザー側で調査検証しないと、わからない)
銀塩時代のプラナー系設計に対し、ミラーレス機用と
する為に、フランジバック長の調整等の理由からか、
後群のレンズ構成が少し変化している状況ではあるが
基本的に、この手の(ジェネリック)設計手法では
設計の元となったレンズの長所も短所も、ある程度
引き継いでしまう模様だ。
この件は、私が七工匠製をはじめ、多数の近代の
中国製等の海外製レンズを入手していて、それらの
一部は明らかに、オールドレンズの設計を元本とした
「ジェネリック・レンズ」である事が見てとれ、
かつ、そのオールドレンズそのものを保有している
場合には、徹底的に両者を比較し、検証した次第だ。
その検証結果として「ジェネリック・レンズは設計元
のオールドレンズの特性を引き継いだ姉妹レンズだ」
という結論を得た訳である。
なお、こうした、元のレンズ設計を拡大または縮小して
別のレンズとして設計しなおした例は、海外(中国製)
レンズのみならず、国内においても多数の実例がある。
国内での実例を2つほど挙げておけば、
PENTAX-FA★85mm/F1.4→PENTAX-DA★55mm/F1.4
NIKON MICRO AiAF60mm/F2.8→DX Micro 40mm/F2.8
がある。(レンズ構成等を見ていると、他にも各時代で
沢山実例がある模様だが、コピー元とコピー先の両レンズ
を同時に所有していないと、実施検証が出来ない。
推測のみでは物事を書きたく無いので、他の例は割愛する)

さて、という訳で、本レンズ七工匠55/1.4は、
「ミニ・プラナー85mm/F1.4」という風に解釈でき、
APS-C(以下)機専用レンズであるから、APS-C機で
使用すると銀塩時代のブラナー系85mm/F1.4と、
ほぼ似た感覚で撮影が可能だ。
しかしながら、銀塩時代のMF85mm/F1.4級レンズは
概ね、定価が10万円前後、中古でも銀塩時代では
5万円を下る事は、まず無かった訳だから。
現代において、七工匠55/1.4が中古で1万円強で
入手できる事は、コスパ面での多大なメリットがある。
また、銀塩CONTAX Planar 85mm/F1.4は、
1)開放近くでのピント歩留まりの悪さ
2)ボケ質破綻の頻繁な発生
3)焦点移動の発生
4)最短撮影距離の長さ
5)価格の高さ
・・という課題があったのが、本レンズ七工匠55/1.4
は、ミラーレス機で使える事、および仕様そのもので
上記の課題を全てクリアしている(または、クリア
する事が可能である)ので、まあつまり「本レンズの方
が、銀塩用プラナー系85/1.4より、遥かに使い易い」
という事になる。
初級マニア層以上には、文句無く推奨できるレンズだ。
(注:上記に挙げた課題の意味がわからない、という
ビギナー層には推奨しずらいレンズであるので念の為)
----
さて、4本目のレンズ

レンズは、NIKON AF-S NIKKOR 105mm/f1.4E ED
(中古購入価格 148,000円) (以下、AF-S105/1.4)
カメラは、NIKON D5300(APS-C機)
2016年に発売された、フルサイズ対応高付加価値仕様
大口径AF単焦点中望遠レンズ。
レンズ・マニアックス第63回、第74回、第94回
記事等で紹介済み。
ニコンで言う「三次元的ハイファイ」を具現化した
レンズとしては2本目の発売である。
(レンズ・マニアックス第63回「三次元的ハイファイ」
編を参照)

「三次元的ハイファイ」とは、そういう名称の部品や
技術が使われている、という訳ではなく、一種の
「設計コンセプト」(設計思想)である。
一般ユーザー層では、「撮影機材に、それが作られた
理由や目的がある」という、そうした「概念」は、あまり
持たないであろうし(まず、設計という業務が、どんな事
をするのか、ほとんど理解していない)
また、その設計コンセプト自体の内容も難解であり
(・・というか、ニコンがあまりノウハウ開示をしない
ので、「企業秘密」に近い状態になってしまっている)
・・(難解であるし)その効能も微々たる物であるから、
よほどの「研究派の上級マニア層」でもないと、これの
良さや特徴・差異もわかりにくい、という状況である。
多分だが、「三次元的ハイファイ」は市場から理解
されないので、もう新製品は出せないのではなかろうか?
すると、「AF-S58/1.4G」と、本「AF-S105/1.4E」の
2本で打ち止め、という感じであろうか?
理解されにくい1つの理由は、2010年代でのカメラ
(レンズ)市場の大幅な縮退により、製品価格もまた
高価になりすぎ、高価すぎるそれらを買う主力の
購買層は、商品における適切な相場感覚(価値感覚)
を持っていない、ビギナー層ばかりになってしまって
いる状況がある。特にNIKON製品ではそれが顕著であり
主力ユーザー層の大多数が、まったくのビギナー層で
ある事が2010年代での特徴だ。
よって、あまり難しい事を言っても、そうした
ビギナー層では、さっぱり理解不能な訳だ。
いや、わからない事をいい事に「三次元ハイファイ
という、凄い機能が入っているから、このレンズは
凄いのだ」などという、それこそ意味不明な論議や
解釈となってしまっている。
「三次元ハイファイ」について説明をすると、際限なく
記事文字数を消費してしまう。前述の本シリーズ第63
回記事で詳しく書いてあるので、本記事では割愛しよう。

総括的に言えば、「三次元ハイファイ」については理解
しようとする必要はない。何故ならば、それはコンセプト
であるからで、原理とか技術の内容では無いからだ・・
例えば、下世話な例をあげれば、巷のカレー屋さんに
おいての味付けで、激辛で特定の顧客にウケを狙うか?
または万人に親しまれる味付けのカレーとするか?等と
いった、「商品コンセプト」と類似の話である。
その際、消費者において「このカレー屋さんの辛さは
5段階で4点だなあ・・」等と分析する事は、あまり
意味が無いだろう、そこまでの絶対的評価基準を持つ
事は難しいし、それよりも、単純に、そのカレーの味が
気に入るか、そうでないか?そこだけしか、顧客側の
関心は無い筈だ。
本AF-S105/1.4も同様、この描写傾向の「味付」けが
気に入るか気に入らないか?だ。あるいは一歩進めて
考えるならば、この特性を、どんな被写体状況で、
どのような表現を狙う為に用いるのが効果的なのか?
そこを考える(=用途開発を行う)事が重要だ。
初級中級層はもとより、マニア層にもあまり推奨できない
レンズであるが、決して悪い描写力のレンズでは無いので、
価格の高さが容認できるのであれば、購入の選択も悪くは
ない。ただし「とても難解な/用途開発が難しいレンズ」
である事は、何度でも注意点として繰り返し述べておく。
----
さて、5本目のお気に入りレンズ。

レンズは、Lomography New Petzval 55mm/f1.7 MKⅡ
(新品購入価格 41,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)
2019年に発売された、フルサイズ対応MF単焦点標準
「ぐるぐるボケ」レンズ。
レンズ・マニアックス第71回、第82回記事等で紹介済み。
特に第82回記事は「ぐるぐるボケ・グランドスラム」編
として、4機種(+α)の「ぐるぐるボケ」レンズを
比較しているので、興味があれば参照されたし。
さて、その「興味があるか否か?」が、こうした特殊な
仕様のレンズを必要とするかどうか?という話に直結する。

「ぐるぐるボケ」は確かに面白い効果ではあるが、それが
映像(写真)表現に直結する訳では無いと思うし、仮に
そう(表現)であったとしても、「ぐるぐるボケ」の出る
レンズを買ってくれば、まあ、高い確率で、それを発生
させる事は誰にでも出来る為、「他者と差別化した表現」
を得るという訳にはいかない。まあつまり、その効果の
大半はレンズの手柄であり、撮影者の手柄ではない訳だ。
ただまあ、「テクニカル的」に言えば、「ぐるぐるボケ」
レンズを買ってくれば、いつでも、どんな場合でも、その
効果を出せる訳では無い。複雑な撮影条件(絞り値、撮影
距離、背景距離、背景の図柄等)を、上手く整えないと、
「ぐるぐるボケ」は発生しない場合すらもある。
よって、テクニカル的に、それを上手く出せるようにする
事が、まず「エンジョイ度」を高めるポイントとなる。
また、「表現的」に言っても、「ぐるぐるボケ」を作画上
のポイント(特徴、効果、言いたい事)とする事は、そう
簡単な話では無い。
だからまあ、例え同じ「ぐるぐるボケ」(レンズ)で
あっても、テクニカル面や表現面で他者と差別化が出来ない
訳では無い。
だけど、いずれも、とても難しい話だ。
被写体に対峙し、それを肉眼で見ている状態において、
「ここに、ぐるぐるボケが出たら、どんな感じだろうか?」
と、想像する事は困難な話だ。そして例えそれが想像できた
としても、自分が思うように「ぐるぐるボケ」を発生させる
事も大変難しい。
このままでは結論が出ないので、ここで2つのポイントに
ついて説明しておこう。
まず、特殊効果レンズ(ぐるぐるボケを始め、軟焦点、
ティルト、シフト、魚眼、トイレンズ、収差レンズ等)
や、特殊レンズ(超望遠、超広角、(超)マクロ等)は、
肉眼で被写体を見ている時とは、全く別の映像が写真に
写る。「だから面白い!」とも言えるかも知れないが、
そう思えるのも、恐らく初級中級層のうちだけであろう。
その効果が「自分の思うようにコントロールできない」
と、いずれ思うようになってくるだろうし、そうした場合
での特殊効果系レンズのコントローラビリティはとても低く、
かつ高度だ。つまり、使いこなす事が出来ない場合では、
いすれ、そうした特殊効果レンズは「飽きてしまう」
(より正確に言えば、「使いこなせないので、諦めて
死蔵させてしまう」)という状態となる。
もう1つのポイントは、そうした特殊系レンズの効能に
強い興味を持ち、それを極めようとするくらいに、その
撮影技法に特化して修練を積む方法論がある。
特殊効果レンズを多く発売する、米国のLENSBABY社では、
彼らの製品(ティルト、ソフトマクロ、ぐるぐるボケ等)
にハマり、それでばかり撮影するユーザー層の事を
「フリーク」(=熱中する人)と呼んでいる模様だ。
まあ、わからない話でも無い、1つの特殊レンズの効果
で数万枚レベルでの大量の撮影をすれば、その特化した
分野を、ある程度、極められるかも知れない。
この方法論は、時間も手間もかかるので大変ではあるが、
私としては興味はある。
何も撮影しないで「こんな特殊なレンズ、何に使うのだ?」
と考えているだけでは始まらない。あれこれ頭の中で考える
だけではなく徹底的に試してみるのも良いのではなかろうか?
そうしたプロセスの中で、また、何か新しい発見があるかも
知れない訳だ。それもまた「マニア道」の一環であろう。

ちなみに本「Petzval55/1.7Ⅱ」は、ペッツヴァール型
2群4枚構成の後群の2枚を分離させ、3群4枚構成と
する事で非点収差や像面湾曲を発生させるのだが、その際
に、後群の分離度を「BC環」(「ボケ・コントロール」の
意味であろうか?)で制御できる。
つまり、「ぐるぐるボケ」の発生度合い(量)や、ボケ質
を撮影者が制御する事が出来る、という面白い仕様だ。
(参考:一部のマニア層では、「ぐるぐるボケ」の発生量
を「回転数」と呼ぶ事がある。勿論、原理上でも効能上
でも正しい表現とは言えないが、言いえて妙で悪く無い)
これに加え、画角(母艦となるカメラのセンサーサイズや、
それをクロップ/デジタル拡大/トリミングした状態)や
絞り値(=絞り込むと像面湾曲や非点収差は減少する)に
より、さらに「ぐるぐるボケ」の発生状況をコントロール
する事が出来る。すなわち、「難しいが、テクニカル的に
とても面白いレンズ」となっている。
私のレンズ個人評価DB(データベース)においても、
本レンズの「エンジョイ度」評価は、5点満点である。
「フリーク」に成りたいと思うマニア層には推奨できる。
----
では、6本目のレンズ。

レンズは、TAMRON SP 85mm/f1.8 Di VC USD(Model F016)
(中古購入価格 70,000円)(以下、SP85/1.8)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2016年発売の、フルサイズ対応高描写力単焦点AF中望遠
レンズ。
レンズ・マニアックス第4回、第85回記事、および
特殊レンズ超マニアックス第8回記事等で紹介済み。
近代的な設計、かつ、大柄なレンズの割りに開放F値を
欲張らない(=一般に人気があるのは85mm/F1.4級だ)
コンセプトであり、その効能で、描写力が極めて高い。

特に(被写界深度が浅すぎ、かつ開放近くで諸収差が
出易い)85mm/F1.4級よりも写真の歩留まり(成功率)
が高い長所がある事から、業務/依頼撮影等の「失敗が
出来ない撮影シーン」において、非常に役に立つ中望遠
レンズとなるであろう。
具体的な用途としては、2000年代の超名玉である
smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limitedの代替レンズと
して、室内や弱暗所における人物の近・中距離撮影だ。
(ステージ、冠婚葬祭、イベント等)
当該「ナナナナ」も高描写力だが、設計がやや古い為、
現代の感覚では、解像感やAF性能に不満を持ち始める
状況になりつつある。それが本SP85/1.8であれば、
同様の画角用途において、殆ど不満の無い性能である。
(注:「ナナナナ」は2021年に後継型が出ているが、
光学系の変更は無く、HDコーティング化と円形絞りが
搭載されただけである)
「手ブレ補正や超音波モーターが入っている事」は
それが無かったとしても、技法で、ある程度回避できる
ので、まあ、どうでも良い話ではあるのだが・・
やはり「失敗がしにくい」という要素は、そういう状態
が必要とされる撮影状況では、大きな武器であり、また
安心感(信頼感)にも繋がっていく。

大きな弱点は無く、業務用途以外の一般趣味撮影でも
被写体汎用性が高く、使い勝手が良い。
まあ、あえて小さい課題を挙げるならば、本レンズは
NIKON Fマウント品で購入したが、これは「電磁絞り」
仕様であるから、ほぼ、NIKONの現代一眼レフ機でしか
使用する事が出来ない事(=他機使用の汎用性の無さ)
である。この弱点については「異マウント品の追加購入」
(例えば、CANON EFやSONY α(A))を、いずれ行う事
で、課題を回避する予定である(例:SONY α(A)機
で使うならば、MF時にピーキング機能を使用できたり、
「ピクチャー・エフェクト」を併用できたりする)
(というか、一眼レフ用でしか発売していなかった
点も問題点であった事だろう。このレンズの企画・
開発・発売時点でミラーレス機用を意識しておくべき
だったと思う)
また、開放F1.8に抑えた事でカタログスペック的に弱く、
現代の初級中級ユーザー層には不人気なレンズである。
TAMRONから見れば商売が厳しい状況であろうが、
本レンズの本質を見抜ける消費者層においては、
新品・新古・中古価格が、いずれも低廉となっている
本SP85/1.8を安価に入手する事で、「非常にコスパの
良い買い物」となるから、何も課題は無い訳だ。
「開放F1.4に拘らず、わかる人だけが買えば良い」
と、まあ、そういう類の「通好み」のレンズである。
マニア層向けよりも、実践派の中上級者向けのレンズだ。
----
さて、次は今回ラストのお気に入りレンズ。

レンズは、SONY FE 100mm/f2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM)
(中古購入価格 129,000円)(以下、FE100/2.8STF)
カメラは、SONY α7S(フルサイズ機)
2017年発売の、アポダイゼーション光学エレメント
搭載型フルサイズ対応高描写力単焦点AF中望遠レンズ。
レンズ・マニアックス第15回、第31回記事、および
特殊レンズ超マニアックス第0回記事等で紹介済み。
開放F値はF2.8だが、アポダイゼーションで光量が
減少する為、T値(=実効F値)はT5.6である。

「アポダイゼーション(光学エレメント)」の効能は
簡単に言えば「ボケ質の改善」であるのだが、現代の
多くのカメラ・ユーザー層は、大口径レンズを買わず、
「ボケ質」に関する概念知識や、拘りを持っていない。
よって、この手のレンズには「ただ高価なだけの、金満家
向けレンズ」という認識しか持っていないかも知れない。
現実に、このレンズが現代の一般層(マニアでは無い)に
沢山売れている、という様相は無く、巷にあるレビュー
(評価)記事の大半は、市場関係者側が高価なレンズを
売るが為の「宣伝記事」となってしまっている。
本レンズの描写性能は完璧に近いものがあり、個人評価
DBでの「描写表現力」は、5点満点である。
この点数クラスのレンズは、数百本の所有レンズ中、
上位5%程度しか無いので、この性能に文句をつける
理由が何も無い。
むしろ、私が気になる点は、現代のカメラ市場において
「宣伝記事」(提灯記事)ばかりが横行してる、という点だ。
つまり、それらは流通(販売側)に属する記事であるから、
「製品の弱点を書かない」という制限がある為、それらの
記事等の内容は、頭から信用するには値しない。
だったら製品の実際のユーザー層のレビューはどうか?
だが、これもユーザー毎に、機材の使用目的や価値感覚
あるいはスキル(知識、経験、技能)がまちまちなので
これも残念ながら信用できない。
本来、こうしたユーザー側情報を提供していたマニア層
も、カメラ市場縮退により、高額な新製品に興味を持てず、
2010年代後半から激減してしまい、絶滅危惧種だ(汗)
また、「宣伝記事」と「ユーザーレビュー」の中間的な
ものとして、「アフィリエイト」(≒Web広告収入)を
目論んだWeb記事が増えている。どこかからか、借りて
きた新鋭機材などを、比較的ユーザー目線で評価を
している。旧マニア層または流通・販売側に近い層に
よるものだと思う。
(見分けるには、ビギナー向けの俗語用語の使用が多く、
対象商品を、自身で購入している様子が全く無い事だ)
ただこれは、アクセス数を増やさないと小銭を稼ぐ事が
出来ない為、話題性だけの内容や、長所ばかりを強調
する事もあるし、基本的に、執筆者自身がお金を出して
購入した所有機材に対しての評価では無いので、あまり
信用する事ができない。
(それに、記事の本文が殆ど無く、次々にバナー広告
ばかりが出てくるようなサイトは、鬱陶しくて、全く
読む気もしないし、そもそも、参考になる情報は無い)
結局、現代での他者からの情報は「無視する、あるいは
話半分に聞いておく」という対処方法しか無く、機材の
評価(価値)感覚は、個々のユーザー毎に磨いていくしか
無い状態だ。
ただまあ、1つだけ注目点(ポイント)がある。
それは「評価をしている人が、実際にその機材を所有
(購入)していない場合は、一切信用するなかれ」という
大原則についてなのだが・・
これをもう少し深読みすれば、「もし専門的評価者等が
書いたレビューで、かつ、その機材を購入した様相が
見られない場合・・・」(→いつ、どこで、いくらで
購入したか、などが一切書かれていない場合)
このケースにおいては、専門的評価者というのは、当然
ながら、知識、経験、機材所有数、評価感覚等のレベルが、
一般層よりも高い状態であろう。
で、そういう人たちが「(新製品等の機材を)買わない」
というならば、「それは購入には値しない機材だ」という
極めて信用できる「逆情報」になる訳だ。

さて、余談が長くなった。本FE100/2.8STFだが、
弱点も色々ある。仕様面で具体的には、AFの速度と精度、
MFの操作性、マクロ切り替えの操作性、価格の高さ、
まあ、そのあたりであろう。
ただまあ、多くの弱点は撮影技法上で回避が出来る。
また、心理的な弱点もある。
それは、本FE100/2.8STFや、これの旧機種である
MINOLTA/SONY STF135/2.8[T4.5]には、「描写力が
高すぎる」という課題がある状況だ。
これについては、1つは「誰が使っても、高い描写力が
得られてしまう為、技能上での他者との差別化が出来ない」
という問題だ。これは中上級層以上には、気になる課題と
なるだろう。
もう1つは「レンズに撮らされている」という状況になって
しまい、「撮影者の主体性に欠ける」課題に繋がる。
いずれの心理的課題も中上級層での「エンジョイ度」評価
の低下、すなわちこの状態は「あまり楽しめないレンズ」
という事にも繋がって来る。
まあでも、それらの心理的な弱点は、贅沢な悩みとも
言える話であり、撮影者が高性能レンズに心理的に負けない
位の強い意志を持って対処すれば済む話とも言える。
すると、問題は「価格の高さ」(定価188,000円+税)
の、ただこれ1点だ。
しかし、「最上級の描写力」という強力な特徴を
持つレンズである、この場合の「コスパ」(価格対
性能比)を考察するのは、とても難しい判断となる。
まあ、中上級層、マニア層等に向けては、
「欲しければ多少高くても買うべき。
描写力上の不満は一切無い筈だ。
最上級の物(レンズ)が、どんなレベルであるかを
知っておくのは、価値感覚を鍛える上でも悪くない。
ただし、このレンズの細かい弱点を回避しながら使い、
かつ高性能なレンズに負けないくらいの主体性を持つ
には、それなりのスキルも必要となるであろう」
という総括にしておく。
----
では、今回の記事は、このあたりまでで。
以上を持って、レンズ・マニアックスシリーズを終了する。