今回記事は補足編として「ハイロー(Hi-Lo)85mm」編
とする。
「Hi-Loシリーズ」全3回記事の中編であり、今回は、
高価な85mm(Hi)と安価な85mm(Lo)レンズを3組、
計6本を紹介(対戦)する。
で、今回の「ハイロー」シリーズ記事の目的は、
「高価なレンズが、必ずしも安価なレンズよりも
全ての面で優れているとは限らない」事の、
検証である。
なお、今回は、各ペア(の対戦)においては、
同一のマウントの85mmレンズとし、母艦となる
機体(カメラ)を揃える措置を取る。
・・が、この措置は「だから公平な条件だ」とは
言い難い点もある、具体的には、組み合わせにより
装着レンズの特徴を十分に発揮できないケースも
あるからだ。(・・と言うか、母艦の選択は本来、
レンズ個々の特性とマッチさせる必要がある。
→「弱点相殺型システム」という考え方)
だが、今回は、そういう点は無視し、同じ母艦を
使った際の、描写力の差が、どれほどのものか?
という点にも着目しよう。
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ではまず、今回最初のHi 85mmレンズ

レンズは、CANON EF85mm/f1.2 L USM(初期型)
(中古購入価格 94,000円)(以下、EF85/1.2)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)
1989年発売のEOS EFマウント用大口径AF中望遠レンズ。
コスパが悪く、個人的に「嫌いなレンズ」の代表格
である。まあ、その事は、本レンズの何度かの紹介記事
で毎回のように書いてあるので、今回は、もうその詳細
については割愛しよう。
「用途が無いレンズだ」とも評価した事もあったが、
そういう意味でも、なにかしらにつけ、使ってあげる
機会を作るのも良いかと思っている。
そこで今回の用途は、「対戦用レンズ」である(汗)
対戦相手(後述の2本目)とは、約7倍も価格差が
あるので、本来ならば、当然本レンズが圧勝する筈だ。
だが、本当にそうなるのだろうか・・?

余談だが、TVのバラエティ番組で、食品や楽器等で
高価なものと安価なものを両方用意しておき、芸能人
等の出演者に、その両者を食べ比べ/聞き比べ等を
行ってもらい、「高価なものはどちらか?」という
クイズを出す、という人気の番組企画がある。
その際、食品の味は視聴者ではわからないが、楽器の
場合、その音を聞いていると・・
まあ、元々、アナログ楽器の一部では、希少価値から
プレミアム価格化している物も良くある訳だし・・
(つまり値段と音質は比例しない)
また、巧妙なのは、それらを試奏する演奏者が、とても
上手であり、普通では、わからない位の微妙なレベルで、
高額な楽器の演奏は手を抜き、逆に安価な楽器の方は
物凄く頑張って上手に演奏しようとしている模様だ。
まあ、「弦楽器等のアコースティック楽器の場合は、
その演奏者(プレイヤー)の技量次第で、8割方
出音の音質は決まってしまう」というのが、私の
持論だ。(私は元音響エンジニアであり、かつ、自身
でもギターやキーボード等を趣味的に演奏している。
勿論、カメラやレンズと同様に、多数の楽器を所有
している(いた)為、楽器の値段と音の因果関係も
単純に価格だけでは決まらない事も良く知っている)
まあつまり、上手な人が楽器を弾けば、たいていの
楽器で同等の音質となるように意図的にコントロール
する事が出来る訳であり、その分野に造詣が深くない
人では、音の差や値段の差は全くわからなくなる事で
あろう。(いやむしろ、安価な楽器の方が、音が良く
聞こえるように演奏する事も十分に可能だと思われる)
まあ、その事実が、すなわち「バラエティのクイズに
なり得る」という仕掛けであり、たいていの芸能人は
高価な楽器の方を見抜けないから、皆、正解できずに
どんどんと罰ゲームを喰らってしまい、その模様を
視聴者が見て笑っている、という構図である。
では、写真(レンズ)において、それ(楽器)と
同様な事ができるのか? つまり「高価なレンズの
写りを悪く見せ、安価なレンズの写りを良く見せる
事が可能か否か?」と思うだろうが・・
実は、それは可能だ。
いやむしろ、音楽(楽器)の場合よりも、遥かに
容易であろう。まず楽器では、それを上手く演奏する
あるいは良い音質を奏でる為には、とてつも無く高い
レベルの修練が必要であるが、写真(カメラ)の
場合は、そこまで高い撮影技能を得ずとも、まあ
基本的な撮影技能があれば、後は、シャッターを押し
さえすれば普通に写真は撮れる。
そして、音楽はリアルタイムの時間芸術であるから、
リスナー(聴衆)が聞く、その瞬間に良い音や
上手な演奏表現が必須となり、これは高難易度だ。
しかし写真は、ノンリアルタイム(=今現在では無い)
芸術であるから、例えば、高いレンズと安いレンズで、
それぞれ数千枚とか、多数の枚数を撮ってしまい、
それを後から選別する事が出来る。ごく簡単には
その際に、高額レンズでは悪い写りの写真を選び、
廉価版レンズの良い写りの写真を選べば、もはや
ギャラリー(閲覧者)は、どちらが高価なレンズ
なのか?は、わかりようも無い。
では、「低廉なレンズで良い写りが得られるのか?」
という点だが、そこは、本ブログでは毎記事のように
書いている事だが、「レンズを使う上では、レンズ
の弱点を回避しながら使う事が必須」という要点が
存在する。
つまり、これは安価な楽器での、構造上での弱点を
目立たせないように演奏する事、と、意識的には
類似の事だ。この例えは、楽器を演奏しない人には
わかりにくいかも知れないが、例えば、安価な初心者
用のアコースティックギターを買ったとする。
そこでまず、高音質が出る高品質な「弦」に張り替え
さらには、そのギターで良い音が出る、フレットや
ポジションを探し、加えて、音の減衰や反響を耳で
聞いて、指弾きで、良い音が出るポジションや奏法や
タッチを探り出す。
そうやって、様々な点に配慮して演奏すれば、
安価なギターであっても、その価格からは想像が
出来ない程の良い音が出せる訳だ。
勿論、演奏技術も重要だ、技能が劣っていて、かつ
情感も込められていなければ、そのギターの音色は
高価なものには聞こえない。
まあ、楽器の例えは難しすぎるかも知れないが、
写真用レンズの場合は、もっと容易だと思う。
ごく簡単な例を挙げれば、解像感に劣るレンズは
解像感が要求されない被写体を撮れば良い。
以下、全てについて同等であり、ボケが汚ければ
ボカさない、ズームの望遠域や広角端で画質が
落ちたり収差が出るならば、そこは使わない。
逆光耐性が弱ければ、逆光では撮らない・・
これらは、むしろ楽器演奏の場合より、ずっとわかり
やすい弱点回避の対策ではなかろうか?
で、そういう小技を、使おうとすれば使える訳だから、
巷にあるレンズ評価での作例など、本当に信用できる
のだろうか? と疑いの目を持つ事は悪くは無い。
特に、レンズの評価を貶める事は簡単であり、たとえ
ビギナー層であっても容易に出来る。具体的には、
わざと、失敗作とか酷い写りとなっている写真を選んで
持ち出して、「このレンズはダメだ」と評価すれば良い
訳だから、とても簡単な話だ。(注:オールドレンズ
でもこれは容易だから、それを理由として初級マニア層
等がオールドレンズを好むケースもある。何故ならば、
仮に撮影技能が低くても「これはオールドレンズだから、
こういう写りなのだ」と主張すれば、それで済むからだ)

対して、安価なレンズを良く見せる事は、やや難しい
が、時間が無制限に取れる趣味分野であるならば、
1万枚でも3万枚でも頑張って撮影し、その中から
「奇跡の1枚を選ぶ」と言うならば、ビギナー層でも
出来ない話では無い。
まあ、そういう事実から、他人の評価内容等は、
あまり参考にはならない事が理解できるだろう。
話が長くなってきたので、レンズを交換する。
個々のレンズの仕様や長所短所等は、いずれも
過去記事で紹介済みだ。
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次は、上記1本目に対抗するロー(Lo)85mmレンズ

レンズは、YONGNUO YN 85mm/f1.8
(中古購入価格 14,000円)(以下、YN85/1.8)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)
2017~2018年頃(?)に発売された、単焦点AF小口径
中望遠レンズ。

これは1992年発売の、CANON EF85mm/f1.8 USM
のUSM無し(一般的な直流AFモーター使用)版での、
コピー製品である。
アナログな「モノ」とは異なり、デジタル技術を含む
近代写真用レンズのコピー等は、そう簡単に出来る筈も
無いのだが、YONGNUOの場合、恐らくだが、何らかの
裏事情により、その「完全コピー」を実現している。
よって、この場合はYN85/1.8という格安レンズで
ありながらも、同時にCANON EF85/1.8と同等である。
すなわち、冒頭のHiレンズのEF85/1.2Lとは同時代に
併売されていた2本のレンズとしての、Hi-Lo比較が
実現する訳だ。
余談だが、
「USM(超音波モーター)が入っていないで、
ピントが合わない(から怖い)」というのは、
完全なビギナー的視点(評価)であろう。
元々、趣味撮影専用レンズであるならば、試行錯誤の
時間はいくらでも取れる状況なので、ピントが怪しい
ならばMFで撮ればいい訳だし、母艦のファインダー・
スクリーン性能が低いならば「連写MFブラケット」
のような技法を用いても良い。
なお、「ピント位置を変化させながら撮影し、後で
適正なカットを選ぶ」という概念は、既に色々とある。
具体的には、CONTAX N1(2000年、銀塩一眼第24回)
に搭載されていた「フォーカスABC」(=自動ピント
ずらし方式3枚ブラケット)機能があった。
これは、この「Nシステム」での主力レンズである
「N Planar 85mm/F1.4」では、まずピント精度が
出ない為に搭載されたサポート機能であろう。
「この機能を使うと、フィルムが3倍無駄になる」
という、否定的な評価(レビュー)も当時はあったの
だが、当該システムを普通に使ったら、ピントが合う
確率は、私の経験上では1割以下なので、その方が、
もっとフィルムが無駄になってしまう(汗)
「世の中には、機器の数値スペックからだけでは
判断できない事実がいくらでもある」
という事を如実に示す実話だ。
(追記:ごく最近、気まぐれで、このCONTAX N1と
N Planar 85mm/F1.4で、フィルム撮影をしている。
案の定、ピントの歩留まりには大苦戦をした。
ずいぶん先になるとは思うが、フィルム写真作例を
含む紹介記事を、いずれ掲載しようと思う)
で、2010年代のミラーレス時代においてはOLYMPUS
やPANASONICのμ4/3機に、「フォーカスセレクト」
機能が搭載されている。これは4K動画エンジン等を
用いて、レンズをAF駆動させながら、ピント位置が
微妙に異なる画像群を連続取得する。
撮影後に、ユーザーが任意のピント位置のカットを
選んで、それを保存する、という仕組みであり、
まあ普通は、作品の作画意図を選択する為の機能だが、
これも広義においては、「ピント精度を高める」
という用途にも利用可能である。
(参考:これを手動で行う撮影技法を、本ブログでは
「連写MFブラケット」と呼んでいる)
USMや、カメラ側の高性能AF(合焦)機能を用いて、
「絶対に、その瞬間を確実に撮影しなければならない」
という、業務撮影や重要な依頼撮影であれば、まあ、
それはそれで、そういう用途に適したシステムは色々と
世の中に存在しているのだから、それらを持ち出して
撮影する事が適正な訳だ。
そういう厳しい撮影条件が無い「趣味撮影」においては、
基本的に、AF性能とか超音波モーターの有無などは、
どうでも良い話だとも思う。様々な方法論や技法等で、
ピント精度を高める手段は色々と存在する訳だからだ。

さて、余談が長くなった。
本YN85/1.8であるが、USMの有無を除いて、
EF85/1.8のコピー品であり、それは冒頭の
EF85/1.2Lと同時代の製品であった、と前述した。
比較においては、まあ、案の定、大口径(F1.2)版は
設計上の諸収差の低減に苦戦している様相が見られる。
EF85/1.2Lは「バブル期」の発売商品であったから、
当時の世情として「ともかく凄いもの」「高価なもの」
の企画が求められていた訳だ。
確かに、85mmレンズとして、過去あまり類を見ない
F1.2級の開放F値、そして初期の超音波モーター搭載、
大型で1kgを超える重量級、高価な価格・・
まあ後の時代で言えば、典型的な「三重苦レンズ」で
あるが、当時のバブル期では、こういう超絶的な商品を
発売や所有する事がステータスであった。
つまり、売る側も買う側も「どうだ、凄いだろう!」と、
周囲に対して喧伝する事ができた時代であった訳だ。
対して、EF85/1.8の発売年は1992年とバブル経済の
崩壊の頃である。バブルが弾けそうな世情において、
冷静に考えてみれば、EF85/1.2Lの実用性は低い訳で
あり、より小型軽量で絞り開放から十分な実用的描写力
を持つEF85/1.8は、ある意味、仕様的には地味では
あるが、実用性が高いレンズであったと思う。
でも、現在の私の感覚からすると、ちょっと設計の
古さを感じてしまう。古いEF85/1.8のコピー品の
本YN85/1.8の事を、「新製品だ」と思ってしまうので
なおさらそういう点はあるかと思うが、まあ、中身は
セミ・オールドレンズであるが故に、近代レンズと
比較する視点は、あまりフェアでは無い事であろう。
参考まで、個人DB総合評価点(詳細後述)を挙げる
EF85/1.2L=2.8点(5点満点)
YN85/1.8 =3.4点(5点満点)
この評価点だけならば、Loレンズの勝利ではあるが
例によって、レンズの評価基準は利用者に応じて様々
であるから、こうした数値だけを判断材料にする事は
出来ず、基本的には必ず利用者毎の価値観に応じて
評価を行う必要がある。
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では、3本目は今回2番目のペアのHi 85mmレンズ

レンズは、MINOLTA AF 85mm/f1.4 G (D) Limited
(新品購入価格 145,000円)(以下、AF85/1.4Ltd)
カメラは、SONY α99 (フルサイズ機)
2002年に限定700本で販売された希少レンズ。
ただし、「希少で高価だから」と言って、良く写る、
という状態とは決してイコールでは無い。

本レンズは、発売時点よりおよそ20年も前にMINOLTA
において「お蔵入り」(→製品開発コンペでの、敗北
レンズ)となった設計のものを、MINOLTAがカメラ
事業形態を変遷させていく(注:この時点では、
KONICAとの合併の直前である。そして数年後には
KONICA MINOLTAはカメラ事業から撤退してしまう)
状況において、何らかの「記念碑」的な意図で
少数限定販売された特殊な事情のレンズである。
このレンズを、たった700本作る為だけに、恐らくは
専用の金型を起こし、専用の部材を準備し、そして
生産ラインを稼動させる訳だから、そりゃあもう、
レンズ1本あたりの製造原価は、それらの経費が
たっぷりと上乗せされて、恐ろしく高価なものに
なってしまった。
まあ、その状況でも本レンズを買う意味(意義)は、
メーカー側の意図と全く同じく「MINOLTAにおける
カメラ事業の最後となった記念碑」である。
(参考:他分野での例を挙げれば、例えば、歌手の
安室奈美恵のベストアルバム「Finally」(2017年)
と同様の立場であろうか? 翌年に引退した彼女の
足跡を纏めた最後の3枚組ベストアルバムであった。
ファン層や「アムラー」であれば、必ず所有しておく
べき、記念碑的なアルバムであった事であろう。
→2017/2018、2年連続年間アルバムランキング1位。
2010年代アルバム販売総数第1位)
で、本レンズは、その、メーカー側とユーザー側との
ファン意識の共有により成り立っている特異なレンズで
あるから、例えば、本レンズを一般的な視点・観点による
「性能評価」などは、あまりするべき作業では無いかも
知れないし、ましてや、投機(転売)目的等で、これを
「商品」として高額に取引する物でも無いだろうと思う。
が、この歴史的価値を鑑み、個人評価の上では「必要度」
の項目が非常に高く評価されているレンズだ。

本AF85/1.4Ltdは、さほど酷い(写りの)レンズでは
無いのだが・・ なにせ、入手不能に近い事。あったと
しても高価すぎる事。この2点の大きな課題があるので、
全く推奨できないレンズとなってしまっている。
ちなみに、美術品や骨董品等では、「投機」の目的で
それらを収集するという風潮は当たり前である。
しかし「カメラやレンズは全て実用品である」という、
強い持論を私は持っている為、これらを他の市場分野
と同じ目線で「投機商品」と扱う事には賛同出来ない。
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さて、次は上記3本目に対抗するLo 85mmレンズ

レンズは、SONY 85mm/f2.8 SAM (SAL85F28)
(中古購入価格 16,000円)(以下、SAM85/2.8)
カメラは、SONY α99 (フルサイズ機)
2010年に発売されたAF単焦点中望遠レンズ。
同時代に発売されたSONY α(A)マウントのエントリー
レンズ群(DT30/2.8Macro、DT50/1.8、DT35/1.8)
と同等の位置づけのレンズに見えるが、本レンズのみ
フルサイズ対応であり、一般的な85mmレンズの用途
(例:ポートレート)にも適する。

ただし、大口径(F1.4級等)では無いので、多大な
ボケ量を得る事はできない。しかし、最短撮影距離が
一般的な85mm級(大口径)での85cm~1mに対し、
本SAM85/2.8は最短60cmと寄れ、フルサイズ機での
最大撮影倍率は1/5倍。そしてAPS-C機+2倍テレコン
では最大0.6倍と、準マクロレンズ並みのスペックと
なる事から、人物撮影よりも、むしろ近接撮影用途
の方が適するレンズであるかも知れない。
まあ、このように、同じ85mmの焦点距離を持つ
レンズであっても「全て人物撮影用途だ」とか
十把ひとからげ的な考え方を持つ事は無く、それぞれ
のレンズの特徴に合わせた「用途開発」を行う必要が
あると思う。その場合、本来であれば本SAM85/2.8は
フルサイズ機で使うのではなく、APS-C機で使用した
方が、本レンズの近接撮影能力の高さを活用できる。
ただまあ、実際に近接撮影のみに特化するならば、
例えば、TAMRON SP90/2.8 MACRO(系)のレンズ
の方が、勿論、近接撮影用途には向く訳であるから、
個々のレンズを、どのように活用するか?は、
それなりに難しい判断となる。
基本的には本レンズは安価で小型軽量である事を
活かした、ハンドリング性能の高さに注目するべき
であろう。
例えば、今回の対戦相手のAF85/1.4Limitedは、
非常に希少なレンズであるが故に、そう安易に
あちこちと持ち出し、ラフに使う事は躊躇してしまう。
なにせ、両者の購入価格は、およそ10倍も異なるし
AF85/1.4Limitedは、後年にはプレミアム価格化
していて「時価で35万円以上」の高額相場であり、
本SAM85/2.8は、後年のSONY α(A)マウントの
市場縮退を受け、1万円程度の中古相場に下落して
いるから、両者の価格差は30倍以上にも及ぶ。
だが、価格が30倍違うから、といって、レンズの
性能とか価値も30倍も違うのか? しかしそれは、
そういう「計算式」にはならない事は、誰が見ても
明らかであろう。
「じゃあ、レンズの価格って何なんだ?」
そう、そういう疑問が出て来る事が望ましい訳だ。
その疑問が出ないようならば、「値段が高ければ、
良いレンズなのだ」というビギナー的発想からは
永久に脱出する事は出来ない。
しかし、そうしたレンズの価格とか価値については、
一概に定義する事は難しい。それぞれのユーザーには、
それぞれ異なる、レンズを買う(使う)上での目的や
価値観が異なるからだ。
私の場合には、レンズの評価において、
「描写表現力」「マニアック度」「コスパ」
「エンジョイ度」「必要度」の5項目を挙げて、
それぞれ5点満点で点数をつけ、その平均点を
当該レンズの総合的な価値と見なしている。
これは全ての所有レンズについて行っている評価で
その結果は、エクセルの表に纏めていて、これを
「個人レンズ評価データベース(DB)」と称している。
それのデータベースを引用すると、
AF85/1.4Ltd=総合点3.8点(5点満点)
SAM85/2.8 =総合点3.6点(5点満点)
となり、得点に大差があるという訳では無い状況で、
どちらもまあ、「中の上」という感じの評価結果だ。
(注:AF85/1.4Ltdは、必要度やマニアック度が
高く評価されていて、実力値よりも高目の点数だ)
なお、これには、価格の要素は、コスパ点として評価
してある訳だから、もう総合点となっている段階では
レンズが高価か安価か?という点は意識する必要は無い。

で、ここでの評価手法とか評価項目とかは、前述の
ように、ユーザー個々に価値を感じる要素が異なる
訳だから、他人の評価結果を参考にする必要は無い。
(・・というか、参考にはならないはずだ)
必ず、自身の持つ、交換レンズに期待する要素に
おいて、ユーザー自身で、それらを評価しなければ
ならない。それは、例えば「描写力」であっても
「所有満足度」であっても「小型軽量な事」でも
「超音波モーターと手ブレ補正が入ってる事」でも
何でもアリで、そこはユーザー個々の価値観である。
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では、5本目は今回3組目のペアのHi 85mmレンズ

レンズは、SIGMA 85mm/f1.4 DG HSM | ART
(中古購入価格 94,000円)(以下、A85/1.4)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)
2016年発売の大口径AF中望遠レンズ。
大型で重量級のレンズである。
そして、このシステムはレンズがカメラ本体の2倍の
重量にも及ぶアンバランスな組み合わせではあるが、
近年の他記事でも良く書いているように、デジタル
時代では、銀塩(MF)時代のようなレンズのピントや
絞りの操作は必要なく、特に単焦点レンズの場合は
カメラを構える左手は、ただ単にシステムの総合重心
位置を支えておくだけで良いので、アンバランスで
ある事の弊害は、あまり起こらない。
事実、近年では、例えばSONY α7/9系機体や
OLYMPUS OM-D E-M1系の小型軽量な機体に、
大型で重量級の高性能レンズを装着し、それを業務/
実用撮影用途に用いるケースも一般的になりつつある。
そこでは、システム(カメラ+レンズ)でのトータル
の重量軽減効果が大きいからである。まあ、それも
その筈で、手持ち撮影を長時間行う必要がある
現代の業務/実用撮影では、重すぎるシステムは
デメリットが大きすぎるからだ。
カメラ+レンズの合計重量を2kg程度までに収めて
おけば、一般的な体力の持ち主であれば、長時間
の撮影も、あまり苦にはならない事であろう。

さて、本A85/1.4だが、上記ような軽量化の対策を
行ったところで、依然、重厚長大なレンズだ。
描写力は、全くもって及第点(最上級)であるが、
このハンドリング性能の低さをどう捉えるか?
そこが最大の課題であろう。
撮影条件に応じて、「大きくても重くても問題無い」
という環境を整えないと、なかなか使い勝手が悪い
レンズである。
前記事のハイローマクロのところで、「ロー(Lo)
マクロは、適切な被写体の制限が掛る場合がある」
と書いたが、それが値段が安価な事での代償なので
あれば納得はいきやすい。
だが、高価なハイ(Hi)レンズで、被写体や撮影環境
の制限が出てくるのは、ちょっといただけない。
高価なレンズ製品であれば、様々な被写体適合性を持ち、
その汎用性が高い事がメリットなのであれば良いが、
本A85/1.4の場合は、高性能を得る為の設計を
多少やりすぎてしまっている感もある。まあその結果
として「三重苦」(大きく、重く、高価)になって
いる状態は、ユーザーから見て、あまり得では無い。
どちらかと言えば、交換レンズ市場縮退に対応する為の
メーカー側の戦略(それ故のArt Line)であるようにも
思えてしまう、まあ簡単に言えば「高額レンズを売りたい」
という企画コンセプトだ。

でもまあ、個人的には、描写性能に妥協しないレンズを
作る事は(市場状況とかは考えずに)悪くは無い、とは
思っていて、結果的にArt Lineは好みの製品群ではある。
だから、「重いなぁ」と、ブツブツ文句を言いながらも
割と機嫌よくArt Lineレンズを使っている次第だ。
(参考:2020年に発売された、ミラーレス機用の
SIGMA 85mm/F1.4 DG DN | Artは、本レンズと
同等スペックながら、約500gも軽量化されている。
欲しいのだが、次々に似たようなスペックのレンズを
買う訳にもいかず、まあ、いずれ、という感じだ)
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さて、次は上記5本目に対抗するLo 85mmレンズ

レンズは、mEiKE (MK85F18EFAF) MK-85mm/f1.8
(Canon EOS AF)
(新品購入価格 23,000円)(以下、MK85/1.8)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)
2018年後半(?)~2019年初頭(?)頃に発売された、
CANON EFマウント専用のAF中望遠レンズ。
中国、Meike製のレンズは、他は全てMFレンズだと
思われるが、何故か本MK85/1.8のみAFレンズであり
かつ、CANON EFマウント版のみの発売で、他の
マウント、例えばNIKON F版等は発売されていない。

もしかして、(前述の)EF85/1.8のコピー品の
YONGNUO YN85/1.8の、さらなる再コピー品か?
とも疑ってもみたのだが、感覚的には両者はずいぶん
と異なる(外観も描写傾向も、そしてレンズ構成も)
レンズであり、個人的にはYONGNUO YN85/1.8よりも、
本Meike MK85/1.8の方が好みである。
両者、超音波モーターを持たない為、AFとMFの切換に
課題を持つが、仕様外の用法の「強制フルタイムMF」
は使える。(ただし、その際、フォーカスエイド機能は、
最初のAF合焦点でのみ有効で、つきっぱなしになる等、
正規の(効果的な)使い方にはならない。
又、無理をした使い方は、機材の耐久性にも影響がある
かも知れない。最近、本レンズのAFは、どうも不調だ)
でも本MK85/1.8については、あまり弱点を感じない。
何といってもA85/1.4と比べて圧倒的に小型軽量で、
描写力もそこそこ優れ(評価4点)、それでいて
安価である事がメリットで、コスパ評価が高い。
両者、簡単に数値スペック、個人評価点をあげておく
SIGMA 85/1.4 Art 定価16万円+税
フィルター径φ86mm、重量1130g(SIGMA版公称値)
個人DB総合評価点=3.7点(5点満点)
Meike MK85/1.8 実売価格約24,000円+税
フィルター径φ67mm、重量約371g(実測値)
個人DB総合評価点=3.7点(5点満点)
奇しくも、個人総合評価点は両者同点となっている。
かつ、両者とも点数的にも悪く無い。
だが、値段が違う、両者は6~7倍も価格差がある。
そして重量の差もおよそ3倍だ。
これを牛肉のように例え、100gあたりの単価(笑)
は、約15500円 vs 約7100円と、およそ2倍だ。
・・というか、超高級牛肉ですら、こんな単価には
まずならない、つまり、レンズ製品というのは
ものすごく贅沢品である、という試算結果だ。
余談だが、20数年程前のカメラ専門誌の記事で
様々な交換レンズの100g単価を計算していた。
これは、チクリと高値のレンズを批判する意図が
あり、優れた企画の記事であったと記憶している。
それによると、当時最高値は「CONTAX G Hologon
T* 16mm/F8」 (1994年)であったそうな。
まあ、定価約28万円で125gだから、100g単価は
何と22万円以上にも及ぶ!
勿論、私は未所有だ、「くわばら、くわばら」
(→恐ろしい災難を避ける為に唱える、おまじない)

結局、私の場合の、この2本の使い分けとしては、
単に、ハンドリング性だけで考えていて、少しでも
高い描写力を得たくて、かつ、重厚長大なレンズを
持ち出せる状況であれば、SIGMA A85/1.4を選択し、
そうではなくて、小型軽量なシステムである事が
望ましかったり、あるいは過酷な撮影環境等の場合は、
MEIKE MK85/1.8を持ち出すようにしている。
描写力とか、AFの性能とか、勿論価格等は、あまり
重要な着目点だとは思っていない訳である。
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さて、今回の補足編「ハイロー(Hi-Lo)85mm編」記事は、
このあたり迄で。まだまだ実例としては不十分なので、
次回ハイロー記事に続く。