今回は補足編として、「CANON New FD開放F値固定望遠
ズーム」(の分析)という主旨とする。
その名の通りの仕様(注:MFである)のレンズを5本と、
比較用のAFレンズを1本、計6本を紹介しよう。
この時代(1980年前後)、CANONからは多数の、
仕様の極めて類似した望遠ズームが発売されている。
本記事では、その理由について、独自に分析を進める
内容とする。
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まず、今回最初のレンズ

レンズは、CANON (New) FD70-210mm/f4.0
(中古購入価格 2,000円)(以下、NFD70-210/4)
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6(μ4/3機)
1980年に発売された開放F値固定式MF望遠ズーム。
本NFD70-210/4であるが、この(古い)時代の
ズームレンズとしては大変優秀な描写性能と、
ワンハンド式での操作性上のメリットを持つ。
おまけに、このクラスのズームは現代においては
ほぼジャンク品扱いで、恐ろしく安価だ。
(入手価格2000円は、まだ高価すぎるくらいで
近年に見る中古は、ほとんどが500円程度である)
この結果、過去シリーズのハイコスパ名玉編(BEST40)
記事では、古今東西の高性能単焦点レンズ等に
混じって、オールドズームながら唯一、総合第7位に
ランクインした強者(つわもの)レンズである。

本レンズの特徴等については多数の記事で紹介して
いるので詳細は割愛するが、全般的にとても優れた
レンズだと個人的には評価している。
本レンズの個人レンズ評価DB(データベース)の
総合評価は3.9点(5点満点)にも達している。
このデータベースでの総合評価点が4点を超えると
私は「名玉」と呼んでいるが、僅かにそれには届かず。
まあ「準名玉」という感じではあるが、それにしても、
発売から40年を超えたオールドレンズで、しかもズーム
(注:その当時のズームレンズは、どこをどう取っても
単焦点レンズに対しての勝ち目は全く無かった)なのに
この高評価点は、ちょっと信じられない次第である。
で、本記事を執筆する理由として、この優秀な
NFD70-210/4と、同時代の姉妹ズームとの比較がある。
そのあたりを研究・分析する事で、NFD70-210/4の、
何か秘密が見えてくるのではなかろうか?という観点だ。
では、まずは、今回の記事で取り上げている「CANON
(New)FD開放F値固定望遠ズーム」や、それを取り巻く
歴史から紹介していくとしよう。
1960年代、CANONの一眼レフでは「FLマウント」の
時代から、CANONはズームレンズを何本か発売していたが
勿論、この時代では実用的な性能水準に達してはいない。
この為、私もFL時代のズームは未所有である。
だが、所有している後年のFDマウント100-200/5.6
と同じ仕様のFL100-200/5.6は最初期から存在していた。
なお、この時代では、標準画角(50mm)を下回る
広角端を持つ、いわゆる標準ズームの開発は技術的に
困難であり、CANON FLマウントのズームは、全てが
望遠ズームであった。
1970年代になると各社のズームレンズの開発も盛んに
なっていく。
このFDレンズの時代のCANON開放F値固定ズームには、
FD24-35/3.5、FD28-50/3.5、FD80-200/4、
FD85-300/4、FD100-200/5.6等があったと思うが、
この時代は、まだズームレンズの発展途上期であり、
加えて、コーティング技術が未成熟な状況もあった為、
個人的には、この時代のFDズームは、まだ実用的とは
見なしていない。
よって所有本数も少なく、FD100-200/5.6の1本に
留まる。だが、このレンズは旧来のFLマウント版の
置き換えかも知れず、大柄であるし描写力も良く無い。
(下写真、ミラーレス・マニアックス第61回記事参照)

しかし、1970年代は、まだズームレンズ発展期で
あったにも係わらず、CANONの各焦点距離の殆どの
ズームレンズが開放F値固定型であった事は、特筆
すべきポイントであろう。
そう、ズームレンズは、開放F値固定型が、開放F値
変動型より、はるかに実用的だ。
その理由だが、
1)ズーミング操作で、シャッター速度が(ほとんど)
変動しない。
2)被写界深度がズーミングと連動して一定に変化
していく為、作画がやりやすい。
3)手ブレ限界シャッター速度が、ズーミング焦点距離
と連動して比例していく為、限界点を意識しやすい。
となるのだが・・
これらの長所の恩恵を理解できるのは、一部の中級者
や上級者層だけだとは思うが、いったん上記のメリット
を意識すると、もう、開放F値変動型ズームは、どう
制御して撮ったら良いか?わからず、怖くて使う気が
しなくなる。
そう、現代で初級中級層が憧れる「大三元、小三元」
の高性能ズームは、値段が高くて良く写る事がメリット
なのではなく、「開放F値固定型ズームにより、高度な
作画技法に対応できる」事が最大のメリットなのだ。
ここを理解せずに、ただ単純に、それらに憧れても
意味は無い。

まあ、CANONは(一部の他社もそうだが)、ズーム
レンズでの、この課題や得失を、企画開発に際して
良くわかっていた模様だ。
なので、ズームレンズの発展期の1970年代から、
普及期の1980年代にかけ、多くの「開放F値固定型
(MF)ズーム」をラインナップしたのだと思う。
(注:別の理由もある。ズーム内部光学系での「群」
と、その役割の関係性からだ。ただ、とても難解な
技術的な話となるので、本記事では割愛する。
いずれ他の記事で詳しく説明しよう)
これは、当時のCANON(あるいは他社)が、撮影技法
という物を良く理解しながら製品を設計していた
事を示す。(注:近代においては、企画開発側が
実際の撮影技法等を、あまり良く理解していないで、
非合理的な仕様のままで、カメラやレンズを発売
してしまう事が大変多い、という残念な世情だ)
でも、まあ、それもそうであり、1970年代当時は
まだ単焦点レンズ全盛だ。描写力が高く、おまけに
値段も安価な単焦点レンズにズームが対抗する為には
よほど「使い易い」もので無いとならない。
つまり、性能ではズームは単焦点に勝ち目は無かった
から、「操作系」とか「汎用性」等で勝負する事は
妥当な企画方針であろう。
なお、ここでいう「操作系」とは、単にズームリング
等の位置や回しやすさ、といった「操作性」の話を
しているのでは無い。
撮影者が実際に撮影をする際に効率的に撮影が出来る
方法論を意図する事が「操作系」の意味だ。
具体的に例を挙げれば、
ワンハンド(直進式+ピントリングが連動する)
MFズームの構造であれば、例えば、近距離の花などを
広角気味で撮影していて、そこで、遠距離に飛ぶ
野鳥を見つけたとしたら、即時ズーミングを望遠端に
変えながら、同時に連動するピントリングを廻して、
カメラを構えた時点では、もう無限遠の野鳥にぴったりと
ピントが合っている状態となり、あとはフレーミングを
整えて、そのままゼロタイムで撮影すれば良い。
という効率的な撮影が可能だ。(まあ、ここまでは
「操作性」と大差は無い話だが・・)
おまけに開放F値固定型ズームであれば、望遠端に
ズーミングした際にも、シャッター速度が殆ど変化
しない(まあ、構図が変われば露出も変わる場合もある)
で、そのシャッター速度で、手ブレするかどうかは、
撮影者のスキル次第だが、例えば望遠端200mmのズームで
1/250秒以上のシャッター速度がキープできているので
あれば中級者以上であれば、まず手ブレは起こさない。
これらの「撮影状況の変化に対応できる一連の流れ」
が可能な事が重要であり、実は、こうした効率的な
操作系による撮影を実践する事は現代のAFズームでは、
たとえ超音波モーターや手ブレ補正を内蔵していたと
しても、少々無理であろう。そこまで急激な撮影
状況の変化には、現代の機材を使っても間に合わない。
(注:最高性能のシステムを使用して、かつ撮影者の
技能も高ければ、かろうじて可能)
まあつまり、銀塩時代のMFズームの方が、実際の様々な
撮影シーンに速やかに対応する為の、ノウハウが詰まった
商品であったようにも思う。

繰り返すが、そうまでして「単焦点よりも使い易い」
事をユーザーにアピールできなければ、ズームはもう
その時点で「F値が暗い、寄れない、画質が悪い
値段が高い」と、ネガティブな要素ばかりが目立ち、
ボロボロな評価で市場から敬遠されて、全てが生産中止
となってしまっていただろう。
そうならなかったのは、こうした初期のMFズームが
相当に「操作系的な使い易さ」に配慮していたので、
中上級層等にも受け入れられたから、だったと思う。
事実、私は銀塩時代ではズームレンズ嫌い(前述の
通り、性能が低くてコスパが悪いから)で通していた
のだったが、開放F値固定型のワンハンド(直進式)
ズームは例外で、それらは「使い易い」というメリット
が存在するので、当時でも数本は所有していた。
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さて、歴史の話が長くなってきているので、まだ
話の途中だが、このあたりでレンズを交換する。

レンズは、CANON (New) FD80-200mm/f4.0
(中古購入価格 2,500円)(以下、NFD80-200)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)
1979年に発売された、開放F値固定式MF望遠ズーム。
レンズ・マニアックス第62回記事で紹介済みである。

前年(1979年)に発売されたNFD70-210/4(前述)
と、極めて類似したスペックである。
だが、正直言ってこちらのレンズはNGだ。
NFD70-210/4に比べて、描写力がだいぶ劣る他、
操作性もワンハンド(直進)式ではなく、ピントリング
とズームリングが独立二重回転方式なので、使い難い。
なお、現代のAFズームであっても、ピントリングは
あまり触らないという企画観点(注:正しいとは言えない)
と、ズーミングによりレンズ全長が変化した際、初級中級
層では、変動したシステム全体の重心を正確にホールド
しながら撮る、という高度なカメラ操作ができないから、
結果的にズーミングで手ブレを誘発してしまう為、
現代レンズでも、この不便な操作性となっているケースも
多々あるのだが、どうも私は好きでは無い。
あくまで対処療法的であるからだ。
それだったら、例えば新鋭SIGMA C100-400/5-6.3等は
直進式ズームのように使えるので、ずっと好みである。
で、本レンズNFD80-200/4は、操作性も悪いし、
レンズの描写力もさほど高くない。
なので、何故、本レンズが優秀なNFD70-210/4と併売
されているのか? これまで、その理由が全く理解
できなかった。設計チームが違って、その優劣が
あったのか?とか色々と想像しながら調べていたの
だが、最近になって、やっと理由が見えてきた。
まあ、本レンズは、FD時代の1976年から発売されて
いたバージョン(FD80-200/4 S.S.C)の、New FD
への焼き直し販売版であった訳だ。だから発売こそ
新しい(1980年)が、中身は1世代古いものであり、
よって、新設計のNFD70-210/4(1979年)に、
様々な面で負けてしまっている訳だ。
なお、1点だけ、本レンズが優位な点があり、
組み込み型フードが内蔵されていて便利な事だ。
だが、これもまた、古い時代のレンズであるが故の
仕様なのかも知れない。(→関連後述)

で、CANONも、さすがにこのままでは本レンズの存在
意義が無いと思ったのであろう。数年後の1985年に、
レンズ構成や外観を刷新し、蛍石レンズを採用した全くの
モデルチェンジ版と言えるNew FD80-200mm/F4 L
に、大幅なバージョンアップをした。
だが、そのL版(高級仕様)は、実は私は1990年代
の中古カメラブーム時に、結構な高額(4万円位)で
一度入手した事があったのだが・・
ワンハンド(直進式)ズームに先祖がえりした事は
良かったが、描写力が、なんだか気に入らなかった。
もう詳しくは記憶に無いが、恐らくはボケ質破綻とか
そんな類の弱点であろう。そして高価でもあったので
「このレンズはコスパが悪い!」と一刀両断してしまい、
短期間で譲渡処分してしまっていた。
それはともかく、まあ、どうもFD80-200/4系列は、
個人的には好みでは無い。別の言い方をすれば
「相性が悪い」とでも言っておく事にしようか。
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CANONズームの歴史の話が途中で止まってしまって
いるが、ここでまたレンズを交換する。

レンズは、CANON (New) FD70-150mm/f4.5
(ジャンク購入価格 1,500円)(以下、NFD75-150/4.5)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
1979年に発売された開放F値固定型MF中望遠ズーム。
レンズ・マニアックス第71回記事で紹介済みだ。
近年において、このNew FD時代の類似スペックの
ズームを何本か集中的に購入している理由は、
旧来から所有しているNew FD 70-210/4(冒頭紹介)
が極めて高性能な為、他にも同時代の姉妹レンズで
同様な高性能ズームがあるかも知れない(?)
という期待がひとつ、で、仮に他には、そういう
ズームが無かったとしても、この時代のCANONの
設計思想や描写特徴など、そうした要素を研究する
為の資料になるのでは? と思った次第である。

本レンズの存在意義であるが・・
恐らくだが、NFD70-210mm/F4では、やや大柄だし
当時の低感度フィルムの機材環境では、初級層では
手持ち撮影では、確実に手ブレしてしまう事への対応
として、望遠端を短くし、小型化もして、手ブレ限界を
低めた初級者用の中望遠ズームが、本NFD70-150/4.5
なのだろうと思う。
ただ、やはり本レンズの描写傾向も、ちょっと好みでは
無い。そして、レンズ構成は9群12枚と、NFD70-210/4
と同じではあるが、望遠端を切り詰めたにも係わらず
フィルター径をφ58mm→φ52mmに小径化した事から、
開放F値はF4→F4.5に低下。だが普通、こういうケース
では、開放F値同等あたりの仕様を目指しても良かった
のではあるまいか? 恐らくは低価格化の為に、
あえてスペックに差をつける「仕様的差別化」が
行われていたと推測できる。
だが、口径比(≒開放F値)を小さくするならば、
本来ならば設計上の収差補正の面では有利である、
しかしながら実写においては、本レンズに、その優位性
は認められない。
つまり、本レンズは、上位機種NFD70-210/4に対して
完全な「仕様的差別化」が行われた、廉価版レンズと
なってしまっている。
なんだか残念な設計思想だ、こういう仕様的差別化の
市場戦略を行ってしまうと、「開放F値が暗いレンズは、
廉価版で描写力も低いレンズだ」という間違った認識が
ユーザー層に広まってしまう。そして、結局、この時代
から40年以上がたっても、依然、現代の初級中級層でも、
そう思い込んでしまっている。
不自然な仕様的差別化が行われた事が、その原因では
あろうが、でも、それは本レンズだけの責任では無い。
(注:この件には歴史的な背景も若干関連している、
それについては後述しよう)
で、結局本レンズもNGなので、やはりNFD70-210/4
のみが、唯一の高性能レンズなのだろうか・・?

さて、ここでCANONズームの歴史の話に戻ろう。
1980年代での、CANONの開放F値固定型MF(望遠)
ズームは、全般的に中上級者層向けの、設計思想や
仕様が見られて、なかなか良いとは思うのだが・・・
ここからの時代は、別の世情があり、課題もあった。
ズームレンズが一般層に普及した1990年代位となると、
初級者層等においては「ズームでなくちゃ嫌だ」と
ダダをこねる人達が激増したのだ。
この場合のビギナーが言う「ズーム」とは、実は、
「望遠」という概念と、ごちゃごちゃになっていた
様相もある。
例えば、望遠端が90mm程度の銀塩コンパクト・
ズーム機をもっているビギナーが、
ビ「ワタシのカメラはズームが効かない!」
と言うので、「故障か?」と思って、良く良く話を
聞いてみると、その発言の真意は「もっと望遠端の
焦点距離が長いカメラ(やレンズ)が欲しい」と
いうニーズであったのだ。
昔から現代に至るまでの「望遠」に憧れるビギナー層
の心理が、「ズーム」という概念と、ごちゃごちゃに
なって定着してしまった。
で、そこまでズームレンズが市場で一般化すると、
もう黎明期のズームのように、開放F値固定型で
ワンハンド式(直進式)で、といった、中上級層を
ターゲットとした操作系を重視した設計をせずとも
良くなった。
丁度その時代は、AF全盛期に入ったところであるから、
より安価な、悪い言葉を使えば、スペックダウンして
手を抜いたズームレンズを市場に沢山投入しないと
ならない。すなわち、AE+AF+ズームは、コンパクト機
でも銀塩一眼レフであっても、それが必須の仕様だ。
ビギナー層が写真を撮る上では、ほとんどの操作が
自動化されていないと、写真を撮る事が出来ないからだ。
だから、この時代から、堅実な仕様である開放F値
固定式ズームは、高級品へその方向性をシフトさせ、
(注:後の時代の「大三元」「小三元」ズームである)
低価格帯の普及ズームレンズは、ほとんどがローコスト
で安直なビギナー向けの開放F値変動型になってしまった。
残念な話であるが、世情や市場の変化で、やむを得ない。
まあ、PENTAX等では、F4固定のズームを多数ラインナップ
して、ビギナー層に向けても、本来のズームレンズの
恩恵を得易いようにしていたのだが、そのような「配慮」
やメーカーの「良心」は、残念ながら、当時の(今もか)
ユーザー層に伝わる事は無いであろう。
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歴史の話が長くなっているが、まだもう少しだけ続く、
ここでレンズを交換しておこう。
では、次のシステム。

レンズは、CANON (New) FD100-300mm/f5.6
(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
1980年発売の開放F値固定型MF望遠ズームレンズ。
これは、後年に発売された同スペックのLタイプ
(高画質仕様)版とは異なる。
レンズ・マニアックス第34回記事で紹介済みだ。
なお、母艦E-M1は手ブレ補正機能を搭載しているが
MFズームレンズでは、焦点距離設定を入力する術が
無いので、手ブレ補正はOFFにして使っている。
μ4/3機で望遠端換算600mm、しかも機械式シャッター
の振動が大きいE-M1では、ビギナー層であれば大半が
手ブレしてしまうと思うが、三脚は使わない持論で
あるから、なんとか頑張って手持ちで撮影しよう。

ここで、過去記事で2度ほど掲載した表だが、
この時代1980年代頃のNew FD開放F値固定型望遠
ズームの機種名と発売年について再掲しておく。
1979年:NFD80-200/4 (本記事2本目で紹介)
1979年:NFD70-150/4.5 (本記事3本目で紹介)
1979年:NFD100-200/5.6(本記事5本目で紹介)
1980年:NFD70-210/4 (本記事1本目で紹介)
1980年:NFD100-300/5.6(本記事4本目で紹介)
1981年:NFD50-135/3.5 (未所有)
1981年:NFD85-300/4.5 (未所有)
1984年:NFD75-200/4.5 (未所有)
1985年:NFD80-200/4L (過去所有)
1985年:NFD100-300/5.6L(未所有)
1980年発売の本レンズNFD100-300/5.6以降は、
未所有または過去所有品であるが、いずれまた探して
みることとしよう。
ただし、Lレンズは既に懲りているので、もう買わない
と思う。

で、本NFD100-300/5.6も、描写力がイマイチである。
ただ、本レンズは、純然たるジャンク品の購入で、
若干だが、経年劣化によるクモリがあり、これによる
逆光耐性の低さや低コントラストについては、あまり
厳しくは評価しないようにする。
でも、総合的に言ってNFD70-210/4を上回るものは、
ここまでの望遠ズーム群の中では、残念ながら
見当たらない。
1981年製の未所有レンズ2本のいずれかを入手して、
それでも、NFD70-210/4に勝てない場合は・・
もうこの研究テーマは終了だ、そうなった場合の
結論は、「何故かNFD70-210/4だけが優れていた」
である。
ただ、まだ今の時点では、必ずしも上記の結論には
至らないと思う。そんな「突然変異」のような
レンズが存在していた、などという結論はあまりに
突飛すぎる。普通は、同じ時代の技術力は、その
時代の、どのレンズをとって見ても同等なのだ。
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では、次のNFD望遠ズーム。

レンズは、CANON (New) FD100-200mm/f5.6
(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
1979年発売の開放F値固定型MF望遠ズームレンズ。
この時代のNew FD望遠ズームを研究する目的で
近年に購入したものだが、同じスペックの(旧)FD
版(1971年発売)を既に所有している。
(ミラーレス・マニアックス第61回記事で紹介済み)
旧FD版の紹介記事では「ボケ質破綻の発生」「暗い
開放F値」「長い最短撮影距離(2.5m)」「大型鏡筒」
という弱点により「技術的に未成熟なオールドズーム
である」という、好ましく無い評価となっていた。
それもその筈、FD100-200/5.6は、それよりさらに
古いFL100-200/5.6(1966年)の設計をベースと
した極めて古い時代の望遠ズームであったからだ。

本New FD版も、どうやら旧FD版と中身は同一な模様で
ある。鏡筒サイズは僅かに旧FD版より小型化されては
いるが、レンズ構成、最短撮影距離は同じであり、
描写傾向等の弱点も旧FD版と全く同じだ。解像感が
不足する、ボケが汚い、最短撮影距離が長すぎる等、
古い時代のズーム故の課題が、とても目立つ。
結局、単にNew FD化されただけのマイナーチェンジ版
であろう。
よって、本レンズも、発売時点よりも13年前の古い
技術水準で設計されたものであり、描写力等全般に
課題があって、実用価値がとても低い。
前述の本記事2本目のNFD80-200/4も、同様に
旧FD時代(1976年)に発売されていたものを、単に
New FD仕様としたマイナーチェンジ版であり、それも
旧世代の技術水準でイマイチだ、とは前述した通り。
では何故、新しい設計の望遠ズーム(例:冒頭紹介
のNFD70-210/4)と、これら旧世代の望遠ズームの
New FD焼き直し版が、この時代に併売されていた
のであろうか? 詳細な理由は良くわからないが、
恐らくは販売価格が異なるのであろう、価格差が
ある、多数の望遠ズームをラインナップする事で、
購買層から見た選択肢を増やしたのかも知れない。
勿論、旧世代品は安価に売られた事であろう。
(参考:時代はMF一眼レフ末期で、すでに市場が
飽和傾向であった事と、1970年代の物価上昇で、
高価な製品があまり売れず、消費者層は安価な
カメラシステムを求めていた。
そのような廉価版の機種では、RICOH X500(1978)
や、MINOLTA X-7(1980)があり、いずれも
大ヒットした、カメラ史上稀な歴史的機種である。
---
なお、この時代では「物品税」というものが存在し
4万円を超える価格の商品に掛けられた。
まあなので、上記のヒット一眼レフや、安価な
レンズ群は、物品税を回避する価格帯に集中して
いたと思われる)
だとすると、旧世代品を掴まされたユーザーは
不幸であった事だろう。1980年前後に新発売の
望遠ズームは、1970年代の旧世代望遠ズームとは
別物、という位に大きな性能差がある。
で、もしかすると、こういう事が本件あるいは他にも
あったから「価格の高いレンズは良く写る」という
常識がユーザー層に広まっていったのかも知れない。
そうであれば、それも不幸な事だ。
旧世代の設計で製造数も多く、開発製造原価の元が
取れている古い製品が安価に売られていて、
新開発で、まだ研究開発費や製造経費も元が取れて
いない新製品が高価なのは、まあその価格差の根拠は、
やむを得ない話だが、これは元々は「性能の差」では
無かった筈だ。単に開発や製造の仕組み、あるいは販売
戦略や、物品税等で値段の差がついているのに過ぎない・・

でも、当時の購買層は、今回紹介のNew FD望遠ズーム
群の中で、どれが旧世代品で、どれが新世代品で
あるのかは、区別がつかなかった事であろう。
なんだか、不幸な話にも思える、New FD新世代品の
発売時点で、旧世代品は潔く生産中止にしてしまった
方が、ユーザーにとっては、わかりやすかったかも
知れない。
また、「値段の高いレンズの方が良く写る」という、
現代でも初級中級層の多くが持つ「誤解」についても
「必ずしもそういう話でも無い、値段は、それを決定
する上での商売上の理由がある訳で、それは常に
性能の良し悪しと関係するとは限らない。」という
正しい解釈を伝えておく事とする。
それと、本レンズにも前述のNFD80-200/4と同様に
組み込み型フードが付いている。
もしかすると1970年代以前の古い設計のレンズは、
逆光耐性が低い、という点を鑑みて、このような
仕様になっているのであろうか?
---
補足だが、ここで少しだけ時代を進めてみよう。

上写真は、CANON EF100-200mm/f4.5A
1988年、AF時代に入ってからの製品だ。
このレンズは完動品だが、ジャンク扱いで、僅かに
300円(+税)で入手したものである。
A型番であり、AFを重視してMFが殆ど出来ない仕様
なので実用性に劣るが、写りはさほど悪く無い。
(現代でも通用する写りであって、旧世代の
NFD 100-200/5.6とは、天と地程の性能差がある)
まあ、New FD100-200/5.6(1979年)が、
旧FD100-200/5.6(1971年)やFL100-200/5.6
(1966年)からの非常に古い光学系を踏襲した事で、
完全な時代遅れとなっていたものを、1980年代後半
にレンズのAF化と同時に、全面リニューアルした
もの(開放F値もF4.5に変化)なのであろう。
すなわち、1987年にCANONは、従来の(New)FD
マウントを完全に切り捨て、AF機EOSのEFマウントに
移行した訳であり、この時代にズームレンズを、
それまでの単焦点レンズに代わる地位を与えんが為に、
開発にも本腰を入れた、という歴史だ。
さもなければ新規のEOSは失敗してしまう、それは
許されない話であるから、この時代からズームレンズ
の性能は急速に進化して行く・・
冗長になるので、本記事ではこれ以上の説明は
割愛する(本レンズEF100-200/4.5Aの詳細は、
本シリーズ第17回記事を参照)
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もう1本だけ紹介する、これが本記事のラストだ。

レンズは、CANON EF70-210mm/f4 (最初期型)
(中古購入価格 2,500円)
カメラは、CANON EOS 7D (APS-C機)
1987年発売の開放F値固定型AF望遠ズームレンズ。

このレンズこそが、優秀なNFD70-210/4の後継機種
で、AF置き換え版? と思いきや、外観からは区別が
できないが、レンズ構成がNFD版の9群12枚から
EF版が8群11枚、と、僅かに変更されていた。
でも、他のスペック(最短撮影距離とかフィルター
径等)も、全てNFD版と同等である。
写りは、なんとなく似ているようにも思うが、
詳細な比較を行った訳では無いので、良くわからない。
ただ、本レンズも悪い写りでは無い事は確かだ。
「AF化したから良い」というものでも無く、NFD版の
ワンハンド(直進)式の操作性は秀逸であった。
本レンズも直進式ズームなので、同等かと思いきや、
AF化した事で、ピントリングが細くなったり、MFでは
トルク感が不足したりと、AF/MF切換の操作性および
動作(操作系や結果としての振る舞い)が、なんだか
不自然であったり・・ と、やはりNFD版の操作性の
方が全般に優れている。
今回はAF性能に優れるEOS 7Dを母艦として、何とか
本EF70-210/4を、NFD70-210/4と同等の実用性に
したいと思った検証ではあったが・・

まあ、やはりちょっと厳しいかも知れない。
描写力的な差異は少ないのだが、AF/MFでの
操作性と実用性が良く無い。
また、ボケ質破綻が、僅かにNFD70-210/4より
出易いのだが、その理由は、本レンズはEFマウント版
であるから、EOS機(一眼レフ)で使うのが最も
オーソドックスな使用法であるのだが、この用法だと
New FDレンズをマウントアダプターを介してミラーレス
機で使う(注:FD系レンズを一眼レフで使うのは困難だ)
場合と比べて、光学ファインダーとEVFとの差異が
あるので・・ EVFであればボケ質破綻回避技法が
かろうじて使えるが、一眼レフの光学ファインダー
では、それが不可能に近いからである。
・・この差により、NFD版の方が厳密に撮影条件を
調整できる為、たとえ同等の性能であっても、EF版
レンズの方がボケ質破綻の頻度が高くなる訳だ。
(注:説明が複雑だが、難しい事は言ってはいない。
つまり、「光学ファインダーではボケの調整が困難」
という事実である)
結局、本レンズEF70-210/4も、NFD70-210/4には
様々な多面的評価において、僅かに及んでいない。
やはり、NFD70-210/4だけが、突然変異的に現れた
高性能レンズであり、僅かな期間でAF化の荒波に
さらわれてしまって歴史の表舞台から消えてしまった
悲運のレンズなのかも知れない(?)
でも、それは現時点では、すっきりしない結論だ、
また機会があれば、抜けているCANON望遠ズーム等を
購入し、さらに研究を続けていく事にしよう。
関連参考記事:
レンズマニアックス・プラス第19回「ワンハンド
ズーム編」
(こちらの記事では、ワンハンドズームの光学的な
意味、効能等も含めて検証している、やや専門的な
記事である)
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さて、今回の第88回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。