本シリーズは、所有しているミラーレス機の本体の
詳細を世代別に紹介して行く記事群であり、今回は
ミラーレス第五世代(2018年~ 「高付加価値化と
フルサイズ化の時代」)の「PANASONIC DC-G9」
(2018年発売)について紹介する。

ちなみに型番は、正式には上記の通り「DC-G9」だ。
(注:メーカー名は、正規には「Panasonic」だが
本ブログでは各社とも全て大文字表記に統一している。
本記事では、適宜「Panasonic」表記も用いる)
が、本機は旧来のGシリーズの約3倍もの高額商品
となってしまった為、他の(サブ)名称として
「LUMIX G9 PRO」とメーカーでは呼んでいる。
(注:カメラ本体上では、底部銘板のDC-G9表記
以外の見える範囲には機種名は何も記載されていない。
又、ストラップには「LUMIX G9」の記載がある)
だが「PRO」という名称を付けて値上げをする事は、
あまり納得が行かない措置だ。プロ(?)が使う(?)
から高価で良いものなのか?勿論、そんな筈も無い。
そもそも、この機体は、業務用途機としてはあまり
適正では無いであろう。(例:業務用で活用できる
交換レンズの種類の少なさ等)
また、公式的な型番には「PRO」はつかず、あくまで
「DC-G9」である。(海外等でも同様だ)
何故高価なのか? そして、その価格(名前では
無い)に見合うパフォーマンスが存在するのか?
そのあたりの分析を中心に記事を進めていこう。
で、本シリーズ記事では、紹介ミラーレス機の
特性に合致したレンズを装着し、試写を重ね、
実写写真を掲載しながら、使用感や長所短所を
見極めていく。
今回の装着レンズは2本準備している。
1)他社製 μ4/3マウントMF超大口径レンズ
2)同社純正μ4/3マウントAF超望遠ズーム
では始めよう、まずは最初のレンズだ。

レンズは、Voigtlander NOKTON 60mm/f0.95
(注:フォクトレンダー原語綴りの変母音は省略)
(新品購入価格 113,000円)(以下、NOKTON60)
カメラは、PANASONIC DC-G9 (μ4/3機)
2020年発売のμ4/3機専用超大口径MF望遠レンズ。
本レンズの詳細については、他記事に譲る。
そう簡単に、一言で書ける内容のレンズでは無い
状況だし、あくまでマニア層御用達のレンズだ。

だが実は、このレンズが、本機DC-G9の購入の
直接的な目的(動機)となっている。すなわち、
「このNOKTON60を使う為の母艦は何が適切か?」
と検討した上で、DC-G9をアサイン(あてがった)
した次第だ。
「1本のレンズの為に、カメラを買ってしまうのか?」
と聞かれれば、そう、その通りだ。
使いたいレンズの為に、最適なカメラを買うのは、
マニア層や上級層にとっては正常な論理である。
むしろ、カメラを買ってしまう迄、それに装着する
レンズの事を何も考えていない状態は好ましくない。
また、私の昔からの持論で、レンズの価値は、
カメラの4倍もあると考えている。
(「1対4の法則」 匠の写真用語辞典第16回記事)
だから、レンズの為にカメラを買う事は、けっして
不自然な話ではない。
・・が、本来、その持論では、システムにおける
カメラとレンズの価格比を1対4にする、という
要素が大きかった。デジタルカメラは一種の消耗品
である為、アンバランスな価格比とはしない為だ。
で、そのルールにおいては、11万円台のレンズの
母艦とすべきカメラは、ざっと3万円以下である。
だが、近年におけるカメラの大幅な値上げにより
カメラの価格は、従前(2010年代前半迄)の
およそ3倍位まで、酷く高騰してしまっている。
2020年代において、3万円以下で買える実用的な
中古カメラなど、もはや殆ど存在していない状態だ。
でも、本記事「ミラーレス・クラッシックス」や、
別シリーズ「デジタル一眼レフ・クラッシックス」
では、その各記事において、2010年代前半頃
までのカメラは、3万円でも十分に(中古等で)
買えていた訳だ。まあ、それらの旧機種を使えば、
「1対4」の法則には適正である。
事実、本機を購入前には、NOKTON60の母艦として
DMC-G5/G6(2012年/2013年:中古1~2万円台)
を使っていた状況もある。
(注:本機DC-G9は中古購入品だが、これらの
DMC-G5/G6の4~5倍もの高額中古相場だ)
だが、さすがに古いカメラは「仕様老朽化寿命」
が来てしまっている。これは、そのカメラが、
壊れずに使い続けれたとしても、周囲の新型機の
性能・機能に対して見劣りし、もう使いたくなく
なってしまう状態だ。デジタルカメラの場合での
その限界は、持論では「カメラ発売後10年」だ。
つまり、「DMC-G5/G6では、もう古くて実用に
厳しい」という訳なのだが、生憎、それ以降の
時代のPanasonic機には、殆ど興味を持てて
いなかった。何故ならば、ミラーレス初号機の
DMC-G1(2008年、本シリーズ第1回記事)
以降、DMC(DC)-Gシリーズは、新機種が出る度に、
私がカメラに望む仕様・機能等とは、少しづつ
離れてしまっていて、好みに合わなかったからだ。
「好みに合わない」というのは、私の視点では、
Gシリーズの操作系が悪化していったように感じた
からだ。

2000年代中頃、コニカミノルタや京セラといった
関西の老舗のカメラメーカーが相次いでカメラ事業
から撤退すると、それらの企業のカメラ技術者は、
PANASONIC(関西にある)や、SONYに流れたと
推測できる。
・・なので、それらのベテラン技術者が関わったと
思われる、2010年前後に発売されたPANASONICや
SONY製の各種カメラは、「写真を撮る為の道具」
としてのカメラの操作系に大変優れているものが
多かった。
だが、同時期から、カメラ市場は縮退していき、
写真を撮る為の専門的で複雑な操作系は、むしろ、
「難しいから使い難い」と、入門層や初級層への
カメラの普及を阻害してしまう。
あるいは、技術者も代替わりしたのだろうか?
もう銀塩末期における「写真を撮る」という時代
からは、15年も20年もが経過してしまっている。
・・こうして、カメラの操作系は2010年代を
通じて、年々、退化してしまい、もう近代では
一種の「家電製品化」してしまっている様相だ。
(=どんなユーザーでも使えるが、専門的な事を
やろうとすると、物凄く非効率的な操作となる)
個人的には、この「退化」が凄く気になっていた。
確か、従前の本シリーズ第12回「DMC-GX7」
の記事で「Panasonic機は、もう買わない」と
書いた記憶がある。事実、DMC-GX7は2013年製
だが、そこから8年後の2021年に至るまで
Panasonic機は1台も購入しなかった。
「気に入らなければ、買わない」これは消費者が
出来る唯一の、市場やメーカーに対する対抗手段
ではあるが、そうは言うものの、古いμ4/3機を
代替する新鋭カメラは必要だ。
そこで、以降の時代ではOLYMPUS製のμ4/3機を
数台買って、それを使っていたのだが、どうも、
一部の仕様が好みでは無く、おまけに2020年には
OLYMPUSは、カメラ事業からの撤退と分社化を
表明してしまった。
まあ結局は「OMデジタルソリューションズ」が、
OLYMPUS機の製造販売を引き継ぎ、ブランド銘も
「OM SYSTEM」となったのだが、どうも「安心して
使い続ける事ができる」という状況では無い。
(参考:2022年3月発売予定のOM-1には、依然
OLYMPUSのロゴ銘が入っている。これは何故??
1972年発売の銀塩M-1(OM-1)から、丁度50年。
むしろ「OM SYSTEM」銘の機体にしてくれた方が、
歴史的価値が高そうなのだが・・・)
2020年夏より、中古市場ではOLYMPUS μ4/3機
の相場下落が始まっていた。従前の2000年代末頃
における「4/3縮退」の状況と同じ「既視感」
がある。
相場が下落したOLYMPUS機を買い足せば良いが、
OM-D E-M1およびE-M1Ⅱを既に所有していて、
これらを超えるコスト・性能のバランスの実用機が、
他に1機種も存在しないので、その時点では、
もう買うべきOLYMPUS機が何も無い。
やむなく、「これで、最後のμ4/3機の購入と
なるかも・・」という理由から、その時点で最も
高性能、すなわち「最も仕様老朽化寿命が長い」
と思われた本機DC-G9の購入に至った次第だ。
当然、価格は高価であったが、もう、それはやむを
得ない、世の中でカメラが全く売れていないから、
他(社)のカメラを買ったところで高価なのだ。

では、本機DC-G9をNOKTON60/0.95(注:勿論
MFレンズである為、AF性能は全て無駄になる)の
母艦とした際の本機の特徴(長所)を挙げておく。
*メカシャッターで1/8000秒、および
電子シャッターで1/32000秒が使える事。
このスペックであれば、開放F0.95のレンズ
を十分に活用できる。
ちなみに、屋外晴天(EV=15)における、
本機の最低感度ISO100の場合、F0.95を
使うには、1/32000秒をちょっと超える
シャッター速度が必要だ。(注:本機における
ISO AUTO時でのベース感度はISO200なので、
さらなる超高速シャッターが本来は必要となる)
だが、電子(撮像素子)シャッターの使用は、
「ローリングシャッター歪み」の発生があり、
動体撮影時、または手ブレ時には好ましくない。
加えて、ディスプレイやプロジェクター表示等の
撮影時には、走査線の縞が写真に入ってしまう。
以下、電子シャッターによるローリングシャッター
歪みにより、直線が曲がって写る現象と同時に
PCモニター撮影時の走査線が写る例を示す。
(注:走査線の縞は、もっと顕著に出る事も多い)

まあだから、最低でもND4(減光2段)の
フィルターを装着し、最高1/8000秒のメカ
(機械式)シャッターを活用するのが望ましい。
だが、Panasonicのμ4/3機で1/8000秒を搭載
している機種は、本機を含め、上位機種群で
数える程の少数しか存在しないのだ。
それと、FUJIFILM機のような「M+E」モード
(メカシャッターが限界に達すると自動的に電子
シャッターに切り替わる)機能は、本機DC-G9
にも存在する(シャッター方式自動切換) が、
電子シャッターには課題もある為、普通はFnボタン
のいずれかにシャッター方式をアサインしておき、
必要に応じて切り替える事が望ましい。
(注1:自動切換え時は機械式1/8000秒が使えず、
そこから勝手に電子シャッターとなってしまう)
(注2:FUJIFILM機では(機種によるが)ローリング
シャッター歪みの発生は、本機DC-G9より遥かに
顕著であり、自動で電子シャッターに切り替わった
とたんに課題が頻発するので、余り有益では無い)
*常時ピーキングが出せる事。
OLYMPUSのμ4/3機では、電子接点の無いMFレンズ
(又はマウントアダプター)使用時では、ピーキング
を出そうとすると、どこかのFnキーを1個犠牲にし、
そこにピーキング機能を割り振り、かつ、電源ON時
あるいは撮影モードの変更時に、毎回毎回、それを
押す必要がある、これは劣悪な操作系だ。
また、他社ミラーレス機では、シャッター半押し
でピーキングが消えてしまう機種が多い。
こちらの仕様では「連写中のMF操作」が出来ず、
これも、あまり使えない操作系だ。
ただし、本機であっても、中速連写までならば
連写中でも常時ピーキングが出せるが、高速連写
モードの場合は、連写中のピーキングが出ない。
この場合、適宜「間欠連写」として半押し状態に
戻せば、間欠的にピーキングの表示が可能だ。
*ピーキングの検出アルゴリズムに優れる事。
旧来の機体(2013年:DMC-G6以降)から、既に
他社機と比べても検出精度が高い方であったが、
本機では、ピーキング色が検出レベルに応じて、
例えば「水色/青色」のように変化する。
これは、確かに、わかりやすい表示であるが、
欲を言えば、検出されたピントの合致度により、
連続的に色が変化するならば、もっと良かった
事であろう。
なお、他社機では、検出レベル(閾値)を
高めると、「沢山ピーキングが出る」という
設定手法となっている場合が多いが、本機では
逆に、検出レベルを高くすると、あまり出なくなり、
要は、精密ピント合わせに向く設定となる。
*EVFが、368万ドット(1280x960x3)で、
視野率100%、35mm判換算0.83倍と
高性能である事。
まあ、これくらいの高レベルで無いと、精密ピント
合わせ型レンズ(超大口径、マクロ、超望遠等)
においては使い難い。
ちなみに、EVF倍率は3段階で変更ができる。
(ただし、それの効能は良くわからない。眼鏡使用時
等でのアイポイントの確保の為だろうか?)
*MF時の画面拡大操作系に優れる事。
背面十字キー周囲のFnボタンに拡大機能をアサイン
しておけば、最小限の指動線で、画面拡大と拡大枠
の移動が任意であり、シャッター半押しですぐに
全画面表示に復帰でき、MF撮影時に有益である。
他社機では、画面拡大の操作系が繁雑であり、
MF撮影が効率的には行えない。
(注:これは、旧来からのGシリーズでも同様の
機能があり、長所であった。
ただし、本機DC-G9では、デフォルトでは、そう
なっていないので、多少のカスタマイズが必要だ)

*電源スイッチが右手だけで操作できる事。
OLYMPUS機やCANON機のように、カメラの左側に
電源スイッチがあると、必ずカメラを両手で
持たないと、電源を入れられない。
ましてや、μ4/3機では、カメラが完全に起動後
で無いと、ピントリングや絞り値の電子的操作が
出来ず速写性を欠く事となる(注:MFレンズ等で
あれば、機械的操作は勿論可能)
右手のみで電源を入れながら、カメラを構える事で、
コンマ何秒でも早く、撮影体制に入る事が出来る。
あるいは、非常時には片手(右手)のみでも
AFレンズであれば撮影を可能とする。
(注:とは言え、旧来からのPanasonic機でも
電源スイッチは、撮影モードダイヤル下部での
右肩部に存在していた。本機DC-G9では、それが
他社の一部の一眼レフ等と同様に、シャッター
ボタンと同軸となり、最小限での指動線移動で
電源のON/OFFと撮影を可能とする、というだけだ。
ただ、新規採用のこのスイッチは、ややガタツキが
あり、構造も柔で、耐久性に若干の不安がある)
これらは、細かい事ではなく、非常に重要な
条件である。速写性に欠けるカメラは、業務/実用
撮影には使えないし、趣味撮影でも苦しい。

*ISO AUTO時の低速限界設定が出来る事。
(注:Panasonic社での表記では、「ISO AUTO」
時における「下限シャッター速度」となっている)
これは絶対に必要な機能であるが(理由の詳細は、
他の様々な記事で何度も説明している)
Panasonic機で、これが可能な機種は希少だ。
(参考:2017年発売のDC-GH5以降の高級機のみ。
また、OLYMPUS機でも2016年より前では皆無。
SONY αミラーレス機ではⅡ型以降での搭載だ。
ただし、NIKONやCANON製の一眼レフでは、
10数年も前から、この機能は搭載されている)
以上が長所だ。
「たったそれだけか? 連写速度とか、手ブレ
補正の段数の性能とか、瞳AF、4K動画とかは、
どうでも良いのか?」という質問が来そうだが。
・・・そう、そんなスペックは、MF撮影に
おいては、どうでも良い。
あるいは、AF実用撮影で、そういう機能や性能が
必要であれば、そうした特徴を持っているカメラは、
他にも色々存在するし、色々と所有もしているので、
それらを持ち出せば済む話だ。
「万能のカメラ」などは世の中に無いのだから、
最高級機を1台持っていれば、それで良いなどと
いう事は、あり得ない。
ましてや、ユーザー(カメラマン)は、個々に
撮影の目的も、写真の用途も、スキル(技能や
経験、知識等)も、映像表現における意図も、
皆、まちまちである。だから、結局のところ、
個人個人に応じて、あるいは同じ個人であっても、
その時の用途や用法に応じて、カメラに求める
性能は変わってくる。
そして勿論、レンズとの組み合わせの要件もある。
上記の「特徴」があれば「NOKTON60/0.95」の
母艦としては十分である。
それに、いくら「様々な機能が現代のカメラには
搭載されているから」と言っても、それらの
多機能を使いこなしているユーザーなど皆無では
なかろうか? 様々なWeb上等でのレビュー記事
(ビギナー層から、マニア層、職業評論家層迄)を
見ていても、そうした高度な機能を(試してはみても)
「使いこなしている事例」は、まず見かける事は無い。
だから、そうした高機能や超絶性能は、下手をすれば
オーナーの単なる自慢か自己満足にしかなっていない
のかも知れない。
「こんな機能がついているんだぜ」と言った
ところで、1回も使った事もなければ、メニュー
からの呼び出し方すら知らないケースが殆どだ。
情けない事態だが、これもまた、2010年代
からの「カメラ市場の大きな縮退」により、
結果的に消費者/ユーザー層の大半がビギナー層
ばかりになってしまった事が最大の要因だと思う。

さて、「カメラが売れていない」というのは、
いったい、どれくらい売れていないのだろうか?
こういう事は、ネガティブな情報なので、あまり
公式的な発表が存在しない。
仮に、「カメラが売れていないんだってさ・・」
という、口コミとかネット拡散が起こったら、
消費者層は、ますますカメラを買わなくなるから、
あまり正確な情報を発表したがらないのであろう。
(仮に、公式的な情報があったとしても、それは、
市場縮退を目だ立たせない為の書き方(例:前月比)
等があるから、「公式情報だから」という理由だけ
では、あまり参考にはならない)
で、Panasonic社では、新製品のカメラが発売
される毎に、プレスリリースで、その月産台数を
記載している。それをちょっと探してみよう・・
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ここで、Panasonic社の公式プレスリリースから
過去に発売された、μ4/3機とLマウント機の
初期(発売時)の月産台数を引用する。
(注:全機種は冗長につき、代表機のみだ)
*μ4/3マウント機(G/GF/GX/GH等)公式月産台数
2008年:DMC-G1 月産 6000台(第1回記事)
2009年:DMC-GF1 月産15000台(第3回記事)
2010年:DMC-G2 月産15000台
2010年:DMC-GF2 月産20000台
2011年:DMC-GF3 月産20000台
2012年:DMC-G5 月産15000台(第7回記事)
2013年:DMC-G6 月産10000台(第10回記事)
2013年:DMC-GF6 月産20000台
2013年:DMC-GX7 月産 5000台(第12回記事)
2014年:DMC-GH4 月産 1000台
2015年:DMC-G7 月産 2000台
2016年:DMC-G8 月産 2000台
2017年:DC-GH5 月産 1500台
2017年:DC-GF9 月産 7000台
2018年:DC-G9 月産 1500台(本記事)
2018年:DC-GF10 月産 7000台
2019年:DC-G99 月産 1000台
なお、記載している(第N回記事)表記は本シリーズ
ミラーレス・クラッシックスでの紹介記事番号であり、
それが無記載の機種は、未所有(未購入)である。
それと、途中から「DMC」型番が「DC」型番に
変更されているが、この理由は「商標類似の回避」
だと想像できる。3文字型番だと、国内外の他社が
同一の「役務」(≒商品の種別)で商標を所有して
いると、抵触するリスクがあるが、2文字型番では、
(それが十分に市場に浸透していないケースでは)
「識別力」が無い為、商標侵害(→つまり、他社
に、お金を払う)に至る危険性が低いからだ。
で、中堅機のDMC(DC)-Gヒト桁シリーズは、
この約10年間の間に、入門機→中級機→高級機
と企画コンセプトが変遷している理由もあるが、
それにしても、ミラーレス機が伸び盛りであった
最盛期(2011年前後)の、10分の1以下の月産台数
に落ち込んでいる機種もある。
ただし、最初期の月産台数なので、売れなければ
すぐに生産台数を下げた事も、あったであろう。
(注:逆に、売れすぎて、月産台数を増やした、
という状況は、DMC-G1を除き、あまり考え難い)
最上位機のGHシリーズは、企画コンセプトが途中で
変遷しているものの、やはり生産台数が少な目だ。
また、入門機のGFシリーズは、そこそこ月産台数が
多いが、それでも2010年代末には最盛期の1/3程度
まで落ち込んでいるし、ボディ単体発売も無くなり、
(ダブル)レンズキットのみの販売となっているし
さらには、2010年代末からの新製品の発売も無い。
上記の数表をグラフ化してみよう(各年代代表機のみ)

こんな状況(カメラが急速に売れなくなった)を鑑み、
Panasonicは2019年から、「高付加価値型」の
フルサイズ機(Leica L-Mount)のLUMIX DC-Sシリーズ
に転換したのだが・・ そちらの生産台数はどうか?
*L-Mountフルサイズ機(DC-S)公式月産台数
2019年:DC-S1 月産 600台
2019年:DC-S1H 月産 200台
2019年:DC-S1R 月産 150台
これらの初期生産台数は、μ4/3機の1/10程度と
極めて少ないし、最盛期から見れば1/100の台数だ。
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では、これらの機種の発売時の実勢価格(注:いずれも
オープン価格となっているが、初期店頭実勢価格だ)
を見ていこう。機種数は絞って、まずGヒトケタ機だ。
*Gヒトケタ機、発売時実勢価格(ボディのみ税別)
2008年:DMC-G1 80,000円
2010年:DMC-G2 80,000円
2011年:DMC-G3 70,000円
2012年:DMC-G5 68,000円
2013年:DMC-G6 67,000円
2015年:DMC-G7 75,000円
2016年:DMC-G8 110,000円
2018年:DC-G9 210,000円
初代のDMC-G1は、μ4/3機普及の市場戦略により
価格の値下がりが早かったので、実質の実勢価格
は、平均6~7万円程度であろう。
そうすると、10年後のDC-G9(本機)と比べると、
本機は、およそ3倍という酷い値上がり率だ。
(注1:正確にはDMC-G8以降で値上がりが始まった)
(注2:本機も、発売後では各種キャンペーン等で
実質的な値下がりが発生していた)
1970年代の「狂乱物価」では、その10年間で約3倍
ものインフレとなって社会的にも大問題となったが、
近代においては、他の市場の商品(例:生活用品等)
では、コロナ禍でのマスクの例の他は、そこまでの
酷い値上げは無いので、これはいくら「カメラが
売れていない」とは言え、異常な状況に感じる。
でも、Gヒトケタ機の初期月産台数は、最盛期の
1/10程度にまで落ち込んでいるので、3倍位の値上げ
では、メーカーや流通は、商売が追いつかない。
よって、DMC-G8以降の機種では、利益率を高める
(つまり販売価格と原価との差分が大きい)為の
様々な措置が行われていると思われる。
(参考:本機DC-9では、海外生産としている)
それを、メーカー側から見た「付加価値」と呼ぶ訳だ。
(つまり、「付加価値」とは、利益そのものである)

では、さらなる「高付加価値型商品」を目指した、
2019年以降のフルサイズ機ではどうだろうか?
*L-Mount機、発売時実勢価格(ボディのみ税別)
2019年:DC-S1 314,000円
2019年:DC-S1R 464,000円
2019年:DC-S1H 500,000円
2020年:DC-S5 240,000円
当然、価格が、ぐんと跳ね上げるが、実際のところ、
「μ4/3がフルサイズになった」だけで、ここまでの
値上げは、消費者側から見れば「コスパ」がとても
悪く感じてしまう。
「カメラの売り上げ台数が、1/6程度になったから
と言って、6倍の値上げは無いだろう!?」
と思ったから、これらの機種は、私は未購入だ。
しかし思っていたよりも、ずっと深刻そうな状況だ。
(上に「1/6」と書いたが、それよりも酷そうだ)
メーカー側のビジネスは、これでやっていけるのか?
ここで、「高付加価値化」による「利益率の向上」を
考えずに、初期月産台数に初期実勢価格を掛け算して、
それらが全て新品で売れた際の、流通市場における
「売り上げ高(金額)」を計算してみよう。
全ての機種を計算するのは冗長なので、代表機のみだ。
*初期月産台数x実勢価格金額(代表機のみ)
2008年:DMC-G1 約 4.8億円
2010年:DMC-G2 約12.0億円
2012年:DMC-G5 約10.2億円
2013年:DMC-G6 約 6.7億円
2015年:DMC-G7 約 1.5億円
2016年:DMC-G8 約 2.2億円
2018年:DC-G9 約 3.1億円
2019年:DC-S1 約 1.8億円(フルサイズ)
2019年:DC-S1R 約 0.7億円(フルサイズ)
やはり、売り上げ高を見ると、とても厳しい・・
その年の全販売機種の合計は計算していないが、
機種単体では、全盛期の1/6~1/10以下程度の
売り上げ高にしかなっていない。
これはもう、なんとしでも「高付加価値化」して、
1台販売あたりの利益を稼がないと、メーカーも
流通も、ビジネスがやっていかれない。
ちなみに、カメラ界全体の売上高(金額)の減少は
「この10年間で約1/4程度になった」という統計もある。
(注:コロナ禍時代を含まない情報だと思うので、
最新でまとめれば、もっと酷い状況であろう)
また、レンズの売り上げは、この一覧には含めて
いないが、フルサイズ機DC-Sシリーズ用の交換レンズ
では、月産本数20~50本という情報も存在し、
これはもう「売れない」という事に他ならない。

さて、これまで本記事や、様々な他記事では、
近年のPanasonicの市場戦略について、
「カメラが売れなければ、値上げをすれば良い、
というものでは無いだろう!?」と、批判的な
意見を述べる事が多かったのだが、今回、分析を
行ってみると、さすがに事業が非常に厳しい状況な
事がわかったので、なんだか可哀想になってきた。
月に何億円もの売り上げ高がある、と言っても、
それは利益では無いし、そもそも大企業で沢山の
社員が居れば、その金額は微々たるものだ・・
給料だけで、それくらいの金額は吹っ飛んでしまう。
もう、あまりネガティブな事は言わず、ビギナー層
等には高価な高級機を買って貰うようにしてもらおう。
そうすれば、Panasonicも、あるいは同様な状態で
困っている各カメラ/レンズメーカーも、なんとか
カメラ事業が維持できるのかも知れない。
仮に「売れないから、もうμ4/3機は発売しません」
では、私としても困ってしまう。これまで揃えた
様々なμ4/3機用のレンズもあるし、それらを
死蔵とか廃棄処分をする訳にはいかないのだ。
でも、良く良く考えてみれば、私もPanasonic社
の製品を、あまり所有していない。
まあ一応、カメラは、ミラーレス機が本機を
含め7台と、コンパクト機が1~2台という感じだが、
レンズがダメだ、たった3本しか所有していなかった。
(いずれも単焦点の低価格中堅レンズだ)
まあそれは、基本的には、魅力のあるレンズが
存在していないし、ちょっと良さげなレンズは
「LEICA」のブランド銘を付加価値(値上げの理由)
として高額だからだ。
「名前だけで高価になっている商品」は、個人的
には好みでは無く、もとより「コスパ至上主義」
であるから「有名無実」な商品などは買わない。
ただ、「LEICA」の名前が付いているか否かは
ともかくとして、「本機DC-G9の特性に合致した
(AF)レンズも、1本位持っておくべきであろう」
という考え方も出てきた。
そういう理由で購入したレンズを次に紹介する。

レンズは、LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm/
f4.0-6.3 ASPH./POWER O.I.S.(H-RS100400)
(中古購入価格 87,000円)
カメラは、引き続きPANSONIC DC-G9(μ4/3機)
2016年にμ4/3マウント初の400mm級超望遠
AFズームとして発売されたレンズであり、
歴史的価値が高い。
非球面レンズや特殊低分散ガラスレンズも何枚か
使用している現代的コンピュ-ター光学設計であり、
本ブログで言う「2016年断層」以降に属する
高描写力レンズである。

課題は価格が高価な事で、定価は23万円+税。
当然、多数売れるレンズではなく、初期月産台数
は、僅かに200本という公式発表だ。
レンズを生産する場合、少なくとも、もう1ケタ
多いレベルでないと「量産効果」が出て来ないと
思われる。また、生産・販売本数が少なければ、
開発・製造等に掛かった費用も、少ないレンズの
本数に割り振って償却せざるを得ない為、ますます
割高となってしまう、という悪循環だ。
そりゃあ、「LEICA」の名前を借りて来て付けて、
「良いレンズですよ」と、アピールしなければ
この高価格は受け入れがたいであろう。
Panasonic銘では一般消費者は誰も欲しがらない。
まあ、悪い描写力のレンズでは無い。しかし、
同等スペックの一眼レフ用(SIGMA/TAMRON製
の100-400mm)と比較した場合、ほぼ同等の
描写力なのに(中古)価格が約2倍も高額だ。
(参考:2020年発売のOLYMPUS製μ4/3用の
100-400mmと比較しても定価で5万円程度高額だ)
また、空間認識AFが外してしまう確率が高い、
無限回転式ピントリングでMF回転角が大きい、
組み込みフードが短くて使い難く別売フードが高価。
(この為、延長型金属フードを装着している)
等、細かい課題を色々と持つレンズだ。
レンズ自身の話はともかくとし、このレンズを
使った際での、本機DC-G9に備わる有益な機能
として「空間認識AF」がある。
(注:この機能の搭載は2014年のDMC-GH4より)
これにより、「コントラストAF」よりも高速な
AF駆動・合焦が実現できる。(とは言え、外す
確率が高い事が、大きな課題となっている)

「空間認識AF」の原理は、専門家(画像処理系技術者)
で無いと理解困難な為、世間では、一般ユーザー層、
専門的評価者層、職業写真家層、店舗販売員・・等の
誰もが、これを上手く説明できていない。
「何だか凄そうなハイテク技術で、AFが速い!」
くらいの印象しか無いと思う。
私は技術屋なので、空間認識AFの原理は理解できるし、
これに関する同社の特許も閲覧し、内容は把握している。
AF駆動部の自作は無理だが、画像処理部だけであれば
類似のものを個人でPC上で作る事もできるかも知れない。
(別途「プログラミングシリーズ」記事のような感じ)
しかし、作れても用途が無い訳だし、これの原理説明は
冗長になるので、ばっさりと割愛する。
重要なポイントだけ述べておけば、
「空間認識AFの初動において、レンズの駆動方向と
レンズのAF駆動距離を決定する為には、カメラに
装着したレンズ毎のボケ量データが必要となる」
という点だ。
これはつまり、「Panasonic社純正レンズでは無いと、
空間認識AFは効かない」という意味に他ならない。
これは、本ブログで言う「排他的仕様」である。
「自社純正製品によるシステム(カメラ+レンズ)を
組まない限り、最高の性能が発揮できない」という
設計思想は、個人的には賛同し難い。
好みのレンズと好みのカメラを組み合わせる、という
実用的または心理的な「汎用性」を欠いてしまうからだ。
ただ、Panasonicに限らず、2010年代からの各社の
カメラ製品は「排他的仕様」ばかりになってしまった。
これは、ユーザーにとっては正直キツい。すなわち
高性能を求めようとしたら、強制的に同じメーカーの
(高額な、あるいは欲しいとも思えない)機材ばかりを
買わされてしまうからだ。
もう1つの課題としては、こうした「排他的仕様」は
メーカーとしても「後ろめたい」ところがあるからか?
あまりちゃんと、これを消費者層に公表していない。
だから、例えば「空間認識AFに対応しているレンズは?」
と調べようとしても、その一覧表などは出て来ない。
原理的に、そのDB(データベース)はカメラ本体側に
入っているかも知れず、対応レンズとしては纏められ
ないのかも知れないが、それではやはり、最良の性能
を発揮できるシステムは、消費者側にはわからない。
実際に買ってみて「ああ、AFが速いですね」あるいは、
「ん? 上手く機能していないみたいですね」と言う
しか無い状態だ。
なんだか、消費者側に寄り添っていない設計思想だ。
この件だけに限らず、各社のカメラシステムにおいて、
消費者側から見て不透明な仕様が多すぎる。
別にメーカーが「嘘」をついている訳では無いのだが、
「わからないままで商品を買わされる」という点では
誤って、効能の無いシステムを買わされてしまい、
「期待した性能が発揮できない」というケースは頻発
する事であろう。
ごく簡単な例を挙げれば、OLYMPUSの高性能で高価な
μ4/3用レンズを買って、本機DC-G9に装着しても、
それは空間認識AFは動作せず、通常のコントラストAF
のみでの動作となると思われる。
では、逆に、OLYMPUS上級機に他社μ4/3用レンズを
組み合わせようとしても「DUAL FAST AF」(≒像面
位相差AF)とか「インテリジェント被写体認識AF」が、
どこまで有効に働くのか?は、良くわからない。
なんだか消費者側を、ある意味「騙して」いるようにも
感じてしまい、そうした新技術の開発費の償却の為に、
カメラやレンズが高額となったならば、もうこれは
旧来からのマニア層やハイアマチュア層の購買論理
からは違和感が生じるから、新鋭のカメラやレンズを
買い控えするかもしれない。
また、彼らの保有システム(カメラやレンズ)との
互換性も良くわからないならば、新鋭機材を買った
ところで、その(世間で言われているような)超絶的
高性能が発揮できる保証も無い。
こうして、市場からマニア層やハイアマチュア層が
激減してしまい、彼らからの精緻な情報提供も無くなり、
さらなる市場縮退を招いたのではあるまいか?
結果、良くわかっていないビギナー層等が現代での
主力のユーザー層になってしまい、たまたま上手く
「排他的仕様」をクリアするシステムが構築できて、
ビ「この爆速AF、すげ~っ!」などの
全くの超初級者的評価をするのではなかろうか?

ここからは、本機DC-G9の一般的な長所を挙げる。
*非常に高機能で、高カスタマイズ性がある事。
機能の多さは、近代の他社機でも色々と例が
あるが、カスタマイズ性が非常に高い事は、
PENTAX機等の他では、あまり他に類を見ない。
例えば、本機ではFnボタンが19個(注:
モニター上での仮想Fnボタン含む)もあり、
各々にアサイン(割り振る)可能な機能は、
撮影時設定では70種類以上にも及んでいる。
(注:設定時に選択肢を選ぶだけでも大変だし、
どのように設定したら効率的な操作系になるのか?
も、この時点では、良くわからない)
また、ジョイスティック操作子が新設されたのは
良い事ではあるが、そこにもFnボタンとして機能を
割り振れる。(もう、何処に何をアサインしたか
分からなくなる・汗)
しかし、カスタマイズ性が非常に高いカメラは、
購入時に、一発で、自身が使い易い設定を事前に
行う事は無理であり、カメラを使いながら、
長期間(数ヶ月とか、1年以上とか)をかけて、
それの調整を繰り返さないとならない事が普通だ。
そもそも、購入時点では、理解不能な機能
(注:説明書に、各々の機能の細かい効能等までは
書かれていない為、使いながらでないとわからない)
もあるだろうから、ますます、使いながらの調整が
必須となる。(だから、短期だけ借りて使っただけ
では、操作系やカスタマイズへの評価は出来ない。
市場・流通側に属する「宣伝レビュー記事」は、
残念ながら、皆、そのような状況だ)
また、装着するレンズの特性の差異や、それに伴う
撮影技法の差異まで考慮すると、正直言って、
個々に異なるカスタマイズを行う事は、たとえ
「カスタムセット登録」の機能があったとしても、
ちょっと困難だと思う。
具体的には「Re-Load問題」というものがあり、
カスタム(C1~C3)には、一切合財のカメラ設定が
登録される訳だから、たとえばC1に登録/呼び出し
の際には、レンズの絞り値が開放であったのが、
使用中に絞り値を変更したとしても、一旦電源を
OFFし、再度電源をONすると、そのC1に登録された
ままの「絞り開放」状態に戻ってしまう。
勿論、絞り値以外に、全てのカメラ設定の変更に
おいても同様である。
(これを「Re-Load問題」と、本ブログでは呼ぶ)
本機、および大多数の他機では同様の課題を持つ。
なお、2020年に発売された、OLYMPUS OM-D
E-M1 MarkⅢでは「Re-Load問題」に対応する為、
「カスタム保持設定」のメニューを [保持する] に
設定しておくと、撮影中に変更した設定を自動的に
カスタム設定に再保存してくれる模様だが、同機は
所有していないので、その使い勝手は不明だ。
(例:再保存して欲しくない一時的な設定もあるだろう)

*シャッター音が静粛である事。
本機のメカシャッター時の連写速度は、AFS/MF時
で秒12コマと十分だ。(注:電子シャッターでは
最大秒60コマが得られるが、電子シャッターには
色々と課題があるので、個人的には無視している
スペックだ)
で、こうした高速連写機では、一眼レフはもとより
ミラーレス機でも、連写音がうるさかったり、
その振動が大きいカメラも多いが、本機DC-G9は
そのあたりは及第点である。
また、連続撮影可能枚数(バースト枚数)は、
カメラ設定やSDカードの伝送速度によりけりだが、
私の基本設定では数百枚以上(400枚までは試験
済み)が得られていて、個人的に必要とする
仕様要件「高速連写で8秒間、70枚以上」を軽く
クリアしている。
なお、シャッターボタンのストローク(遊び)は
旧来のGシリーズよりも短め(つまり、軽く触れる
だけで撮影ができる。通称「フェザータッチ」)
であり、上級層好みの仕様となってはいるが、
「暴発」(勝手に撮れてしまう)も十分ありえるので、
特にMF撮影時や画面拡大からの復帰時では要注意だ。

さて、ここで本機DC-G9の弱点を挙げておこう。
*非常に高価である事。
高価なのは、市場縮退により、やむを得ないとする
ならば、その価格に見合うパフォーマンス、つまり
「コスパ」が得られているかどうか?がポイントだが、
残念ながらそれは少し厳しい。
例えば、「ローリングシャッター歪み」が発生して
実用的では無い超高速連写性能のスペックだけを
主張されても、それは付加価値にはならない。
実用的な付加価値は、記事中にあげた、主に特定の
レンズとの組み合わせの際での、特定の機能の有効性
である。
まあ、「万能母艦」には、なり得ない性質のものだ。
*高機能である事は良いが、少々過剰な所もある。
例えば、AF関連と連写関連は機能が多すぎる。
このレベルだと「どんな事が出来るのか?」という
まず最初に理解すべき状態にも、なかなか至り難いし、
個々の機能の呼び出し方(操作系)も、とても繁雑だ。
あと、画像編集系の過剰機能を挙げると、例えば
「クリアレタッチ」機能は、カメラの内蔵機能で
静止画再生時に不要な背景等を消去する機能では
あるが、少々使い難く、これはPC上での画像編集
ソフトで行った方が、はるかに容易である。
また、「クリエイティブコントロールモード」
(すなわち、絵画パレットのアイコン)では、
ポップ、レトロ、セピア・・等の多数の画像効果
を選ぶ事ができるが、さらにここから「WB」
ボタンで、個々の効果量(質)を調整できる。
まあこれは、旧来から他社機(例:OLYMPUS機)
でも搭載されている機能だが、ちょっと操作的に
繁雑であり、事後のPC上での処理の方が容易だ。
(注:この解決策としては、OLYMPUS機に備わる
「アートフィルター・ブラケット」機能は有益だ。
これは、1回の撮影で多種のエフェクトを掛けた
画像を保存できる。→本機には、その機能は無い)
また、画像編集機能に限らず、多数の機能設定の
カスタマイズ性が、若干過剰に感じ、それらの
特殊機能の呼び出しも、あまり簡便では無い。

*操作系が練れていない。
本機に限らず、他社機も含めて2010年代を通じて、
どんどんと「操作系」が退化している。
理由の1つは、前述の「多機能化」と関連して
「あれもできます、これもできます・・」と際限なく
増え過ぎた機能を、撮影時に効率的に呼び出せる
ように上手く整理できていない事がある。
また、第二の理由として、2010年前後に各社が
トライした「操作系の改善」に対して、市場での
実際のユーザー層や評論家層等が、その改善を
理解できずに無視した事も原因であろう。
そういう改善は、むしろ「ややこしい、複雑だ、
使い難い」という話になってしまっていた。
そして、実際にも、その時代頃から、カメラの
ユーザー層は、ビギナー層が主流になってしまい、
「写真を撮る為の効率的な操作系」を推進する事が、
必ずしも良好な市場戦略では無くなった事も原因だ。
つまり、家電製品の、TVやエアコン等であれば、
一々説明書を読まないでも、誰にでも簡単に操作が
できなければならない訳なのだが、カメラも、残念
ながら、家電製品化してしまったという事であろう。
具体例としては「タッチパネルで操作設定をする」等は
「カメラを構えている姿勢を一々解く」必要があるから、
やってはならない(特に望遠系、マクロ系、大口径等の
精密ピント合わせ型レンズや、重量級レンズを使用時)
措置なのだが、ビギナー層では「タッチパネルでないと
カメラ操作が出来ない」という。
であれば、タッチパネル「でも」操作できるようにして
おけば、上級層はそれを使わない事で回避できるのだが、
Panasonic機では、タッチパネル上に「しか」存在しない
操作子やGUIもあり、これでは全体の操作系が不合理だ。
(注:「タッチパッドAF」という新機能と撮影技法が、
近年では流行しているのだが、あまり効率的とは思えない
何故ならば動体被写体等では、いずれにしても測距点を
変更している暇が無いからだ。そこをUIで効率化する
のではなく、動体の場合はピンポイントの測距点での
AFスキャンレートを高める改善が必要だろう。
そうすれば、後は撮影技能でカバーが可能となる)
なお、タッチパネル操作系は、操作上の「第一階層」、
つまり、一番上位階層の、あるいは、単一の機能しか
表示できない為、「そのボタンの下の階層に、どんな
メニュー構造が隠れているか?」が、判断できない。
よって、ただ1つの設定だけを行うならばタッチパネル
でも良いのだが、メニュー階層を深堀していき、より
詳細なカメラ設定を行うような操作系には向いていない。
個人的には、これは好みでは無い設計思想だ。
*デジタルズーム機能をダイレクトに起動できる操作子
が存在しない。
DMC-G5/G6のみに存在した旧型のファンクション
レバーでは、「デジタルズーム」機能・・
(注:Panasonicで言う「EXテレコンのZOOM」の事。
Panasonicでは、ミラーレス機発売時から、テレコン
とデジタルズームの意味と定義を、一般常識とは
反対に捉えてしまっている。その誤りが変えれずに
以降もずっと続いているが、本ブログでは一般的な
慣習に基づき、テレコン=不連続な拡大機能。
ズーム=連続的な拡大機能。と定義している)
・・そのデジタルズーム機能がアサインできたが、
本機DC-G9(正確にはDMC-GX7以降)では、それが
廃止され、ダイレクトに操作する事ができなく
なってしまった。(何らかのボタンを押してから、
他の操作子で拡大率の制御を行う)
(注:本機DC-G9にも、ファンクション(Fn)レバー
が存在するが、旧来の同名の操作子とは機能が
まるで異なる)
この為、「光学ズームとデジタルズームを自在に
組み合わせる」という撮影技法が実践できない。
実は、この点が、DMC-G7以降のPanasonic機を
買おうとしなかった、最大の問題点であった。
かつて、量販店の店頭でPanasonic社の営業マンに、
この弱点を伝え、担当者もその課題を認識して、
恐らくは社内にも報告しただろうが、些細な点だ
と判断されて無視されてしまったと思われる。
あるいは、中級層位が良く言うように「デジタル
ズームなどは、トリミングと同じだよ」という
認識が開発側にもあるのだろうか?
しかし、撮影技法としては、被写体に対峙しながら
トリミング処理を連続的に行い、後編集のコストを
削減したり、あるいは、より高度な用法としては、
「被写界深度を維持しながら画角を変動させる」
「ボケ質破綻を回避しながら画角を変動させる」
等の、新しい撮影技法が生まれていたのに残念だ。
恐らくは、市場縮退により、ビギナー層ばかりが
主力ユーザーとなったから、このような用法などは
想像の範疇にも無いのだろうが、そうであれば、
ハイアマチュア層、実践派上級マニア層、評論家層
等が、そういう新しい技法を市場に伝えていかないと
ならないのではなかろうか? まあ、例えば
「EVFを覗きながらのタッチAF測距点選択」といった
新技法は提案できているが、メーカー側の押し付け
の要素もあり、ユーザー側での技法開発は、常に
不足気味だ。
*カタログ数値スペックが「盛り」気味。
例えば、電子シャッターでの毎秒60コマ連写や、
ハイレゾショットでの8000万画素相当の解像度、
とかの、あまり実用的とは言えないスペックを
前面に押し出しているような売り方や、流通側
の評価が多い。
本当に、それらの「超絶性能」が必要かどうかは、
ユーザー次第、あるいはその用途次第であるから
通常の撮影では不要とも思われる機能を付加価値
として、値上げの理由にされるのは、ちょっと
好ましくないと思う。
それに、高機能を盛り込んだ為、述べてきたように
操作系全般が繁雑になりすぎている。それらの高機能
を効率的に使えるようには設計されていない訳だ。
そんな感じだからか? 本機には、購入時での
ワクワク感(期待感)が、あまり感じられなかった。
何と言うか、実用的な性能は従来機からの格段の進歩
は無い事が、わかっていたし、特別な新機能が搭載
されている訳でも無い。・・であれば、単に旧来機
の代替でしかなく、本機もいずれ「使い捨て」に
なるのか、と思えば、愛着も湧き難い訳だ。
それと、ちょっと別の話だが・・
本機は2000万画素級センサーを搭載しているが、
画素(ピクセル)ピッチは、約3.3μmと狭い。
これは2020年前後の各社デジタル一眼レフでの、
最小ピクセルピッチ約4μmより、さらに狭い。
(つまり、フルサイズ機の1/4しかセンサー面積が
無いμ4/3機なので、このスペックはフルサイズ
で換算すると8000万画素機となる。
そうしたフルサイズ機は、2020年前後では存在
しないから、比較がわかりやすいと思う)
この狭さに対応できるレンズは、画面全域で
150LP/mm以上の解像力が必須要件となる。
近代(2016年断層以降)の、各社の高解像力型
レンズであれば、この性能を備えていると思われる
が、少し前の時代のレンズであると、ちょっと
苦しく、センサー側が過剰スペックとなり、画質
低下等を招く恐れもある。
なお、これはちょっと前の時代からのOLYMPUS機
(例:OM-D E-M1Ⅱ、2016年~)でも同様だ。
画像処理エンジンの仕様や性能にもよりけりだが、
基本的には、近代での「狭ピクセルピッチ機」を
使うならば、レンズの性能にも十分に配慮しないと、
なかなかバランスが取れない状況である。
*撮影1000枚毎に、カード上の記録フォルダーが
自動更新(生成)されてしまう。
これは特に必要の無い機能だ。
*グリップの形状が最適とは言い難く、1kg程度の
大型レンズを使用すると手が痛くなる。
あるいは、NOKTON60/0.95等の太いレンズでは、
グリップとレンズの隙間が殆ど無く、構え難い。
まあ、ここは装着レンズによりけりだし、
手指の個人差もあるかも知れない・・
*若干だが大きく重い。
旧来のGシリーズと比較し、一回りも二回りも
大きく感じる。重量も、本体579g、装備658g
と、これらは一眼レフ並みであり、μ4/3機の
小型軽量の利点が若干減ってしまっている。

では、最後に本機DC-G9の総合評価を行ってみよう。
評価項目は10項目である(項目の定義は第一回記事参照)
【基本・付加性能】★★★★☆
【描写力・表現力】★★★
【操作性・操作系】★★☆
【アダプター適性】★★☆
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★★
【購入時コスパ 】★☆ (中古購入価格:88,000円)
【完成度(当時)】★★★
【仕様老朽化寿命】★★★☆
【歴史的価値 】★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】3.00点
総合評価は、丁度、標準的な3.0点となった。
(近代の機種では、OLYMPUS OM-D E-M1Ⅱと、
ほぼ同点の評価。なお、全所有機の総合評価
の平均値は、現状、丁度3.0点となっている)
まあ特にコスパ点の減点が大きく響いている。
「やはり」というのが妥当な判断であろう。
ある意味、「その高価格の不条理さ」を自身で
認識する為に、本機を購入した、という捻くれた
理由も否定できない。
つまり、もしかすると、価格に見合う素晴らしい
機体なのかもしれない訳なのだが、それは実際に
機材を買って長期間、使ってみない限りは、判断
する事が出来ない。
そして、その(素晴らしいという)可能性は事前
にも、そうならない事は予想できていた次第だ。
前述のように「期待感」が少ないカメラである。
ただまあ、機能や性能は、全般的に十分、そこは
さすがに最上位機である。
評価点が伸びていないのは、「カメラは数値性能
だけで良し悪しが決まる訳では無い」という理由
からであり、全般的な複合評価においての結果だ。
(例えば、最初期のDMC-G1は、現代の視点からは
低性能機ではあるが、総合評価は3.9点と高い)
本機DC-G9の私の購入時点(発売後、丁度3年程度、
後継の上位機なしの状態)での、量販店における
ボディのみ新品価格は、税込み14万円台と、
発売時実勢価格の6割程度にまで低下していた。
しかし量販店でのミラーレス機売り上げランキング
では、上位150位にも入っていない状態であった。
まあつまり、現代の市場においてμ4/3機を志向する
ユーザー層には、ここまでの高付加価値型カメラは、
なかなか受け入れ難いのではなかろうか・・
----
さて、本記事はこのあたりまでで。
毎回の苦言だが、2015年以降発売のミラーレス機
は(注:一眼レフも同様)いずれも高価すぎて、
コスパが極めて悪く感じる事と、魅力的な仕様や
コンセプトを持つ機種が皆無な為、私の、新鋭機の
購入ペースは著しく鈍化している。
多分もう、所有する旧機種の仕様老朽化寿命による
代替購入の理由以外で、ミラーレス機(や一眼レフ)
を購入する事は無いと思う・・
多くのマニア層やハイアマチュア層も、同様な理由で、
カメラ全般への興味を無くしてしまっている状況が
容易に想像できる。
本シリーズや「デジタル一眼レフ・クラッシックス」
のシリーズ記事は、何か新規にカメラを購入した際
での「不定期連載」としておくが、必ずしも
新機種だとは限らず、旧製品となる比率が高まる事
であろう。