本シリーズは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介する記事群だ。
今回は「ジェネリック・レンズ」という主旨で、主に
中国製の、近年の一眼レフ&ミラーレス機用の交換レンズ
を7本を取り上げよう。いずれも発売年(国内市場参入年)
は、2017年頃から2019年と、比較的近年である。
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まず、最初のシステム

レンズは、7artisans(七工匠) 55mm/f1.4
(新品購入価格 16,000円)(以下、七工匠55/1.4)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)
「ジェネリック・レンズ」とは、本ブログ独自用語だ。
その定義は
「数十年前の旧来からある、優れたレンズ構成を参考にし、
ほぼそのまま用いるか、あるいは、ミラーレス機用の
レンズでは、全体の寸法をスケール・ダウンしたり、
フランジバック長の調整等の措置を行い、開発費等の
費用を大幅に削減して安価な販売を可能としたレンズ群」
である。まあ、医療分野における「ジェネリック薬品」と
同様であり、昔の薬剤成分を、ほぼそのまま使用する事で
新薬開発や臨床試験、認可等にかかる莫大な経費を削減でき、
安価に販売する事ができる訳だ。
(ただし、最新の薬効成分などは入っていない)
「ジェネリック・レンズ」も古い設計なので、最新の技術、
例えば、非球面レンズや、新ガラス(異常低分散等)素材
は使われていない。 ・・というか、そこで区分している
訳であり、新技術を使っている安価なレンズも存在は
するが、それらはジェネリックとは見なしていない。

で、今回紹介のレンズ群は、すべて「ジェネリック」
である、他にも新鋭海外製レンズは色々とあるが・・
(本シリーズ第17回、第41回、第54回記事、又は
別シリーズ「海外レンズ・マニアックス」記事参照)
中国製等レンズの全てがジェネリックという訳ではなく、
新設計や新技術を採用したものも多い。
ただ、新技術を採用しているから写りが良い、とかは、
そう単純なものでは無い。新設計であっても、元々
これらの新鋭海外レンズ群は、日本製レンズが市場縮退
による高付加価値化により、値段が上がってしまった
事に対応する、低価格帯市場を狙った製品群である為、
コストダウンによる性能上の弊害が出ているものもある。
また、今回紹介のジェネリックレンズ群は、昔の名玉の
コピー(又は小変更)製品ではあるが、とは言え、
必ずしも全てが極めて高い描写力を持つ訳では無い。
名レンズとは言え、さすがに設計の時代が古いものが
多いし、それらは非球面レンズも新硝材も、使っては
いない為、ザイデルの5収差や色収差を完璧に補正する
事は出来ない訳だ。
だから、それらの弱点を回避しながらレンズ性能を
最大限に発揮しようとすると、相当に高いスキルが
要求される。すなわち評価はユーザー側が、これらを
使いこなせるかどうかで決まる為、ビギナー層等では
名レンズコピー品でも高いパフォーマンスを引き出す
事は難しいであろう。
さて、ここから本題であるが、本、七工匠55/1.4は
1970年代~1980年代頃に、各社から発売されていた
「MFプラナー系85mm/F1.4」に対するジェネリックだ。
プラナー85mmと言うと、ヤシカ(京セラ)CONTAXの
Planar T* 85mm/f1.4(1975年)が著名であろう。
(本シリーズ第48回「CONTAX プラナー編」等参照)
ただ、ツァイスでは、これを「プラナー」と呼んだが
これは同社の「商標」である為、他社ではこの名前を
使う事が出来ない。しかし、他社同等仕様品においても、
プラナー85mmと極めて類似のレンズ構成とする場合が
多かった。なので、細かいレンズ構成の差はさておき
本ブログでは、これら同時代のMF85mm/F1.4級を
総称し「(MF)プラナー系85mm」と呼んでいる。
で、このレンズ構成における寸法を、およそ2/3位に
スケールダウンすると、だいたい55mm/F1.4という
スペックの「ミニ・プラナー」が出来上がる。
イメージサークル(=フィルムやセンサーに、映像が
写る範囲)が狭くなるだろうが、その点はフルサイズ機
用とはせず、APS-C型(対角線長がフルサイズのおよそ
1/1.5(=2/3)倍)以下のミラーレス機専用とすれば
良い。
同様な手法で設計された日本製レンズとしては、
smc PENTAX-FA ★85mm/f1.4[IF]
(1992年、7群8枚、本シリーズ第60回記事等)
の銀塩(フルサイズ)用レンズに対する、
smc PENTAX-DA ★55mm/f1.4 SDM
(2009年、8群9枚、ハイコスパ名玉編第9位等)
のAPS-C機専用レンズ、の例があると思う。
(ただし、これらはAFレンズである)
なお、こうしたスケールダウン(縮小)に際しては、
1)銀塩用レンズからデジタル機用への転用に対する
テレセントリック特性の改善。
(=センサー面に垂直に光が当たるようにする)
2)一眼レフとミラーレス機のフランジバック長の
差に対応する為の、バックフォーカス(長)の変更。
といった理由により、レンズ構成の「後群」の設計を
若干変更し、この為に、オリジナルのレンズ構成に
対して、±1枚(最大で±2枚)程度のレンズ枚数が
ジェネリックでは増減されている様子も見受けられる。
(注:こうした小変更は、近年の「レンズ設計ソフト」
を用いれば比較的容易にシミュレーションできるだろう)
後、「勝手にコピーして良いものなのか?」という疑問が
あると思うが、元製品が仮に特許を取得していたとしても、
もう数十年前であれば、とうに特許は切れている。
・・で、レンズ枚数を多少増減した場合でも、私の感覚的
には「オリジナルのレンズ構成にあった特徴は、ある程度
(or かなり)残る模様だ」という認識だ。
ここで「特徴」とは、長所も短所も含まれる。よって、
ジェネリックレンズの基本的な使いこなしとしては、
旧来の(名)レンズの特徴を良く理解し、長所を活かし、
短所を回避しながら用いるのが最善であろう。
では、MFプラナー系85mmの弱点であるが、
1)開放測光では、被写界深度が浅く、また、諸収差も
残っている為、ピント合わせが極めて困難
2)焦点移動が出る為、ピンボケを誘発する
3)ボケ質破綻が頻発する
銀潮時代の一眼レフでは、プラナー系85mmに対応できる
レベルの高性能なファインダーを持つ機種は稀であり、
しかも、その優秀なファインダーの機体は、プラナー系
85mmを擁しないメーカーのMF一眼レフであったので、
上記1)2)のピント問題は、実用上でのピント歩留まり
(成功率)を10%程度以下にまで引き下げ、さらに
銀塩一眼レフでは回避が不可能に近い、3)のボケ質破綻
の問題により、総合成功率は3%以下という感じであった。
(=36枚撮りフィルム中、気にいった写真は1枚あるか
無いか、という確率)

で、本七工匠55/1.4も、上記、プラナー系85mmと
同等の弱点を根源的に抱えている。
しかし、現代のミラーレス機で使う上では、上記の
1)~3)の課題は全て回避可能だ。
具体的には、1)ピント合わせは、高精細なEVF+各種MF
アシスト機能で。2)焦点移動は、絞り込み(実絞り)
測光では発生しない。また、3)のボケ質破綻は、EVFで
かろうじて回避が可能だ。
そうやって弱点が回避できるのであれば、結果、本
七工匠55/1.4は悪く無い。なにせ「ミニ・プラナー」
である、撮影条件が合った時の爆発的な高描写表現力は、
捨てがたいものがある。おまけに恐ろしく安価である。
コスパが大変良いので、ハイコスパ名玉編記事にも
ランクイン出来る可能性があったが、残念ながら
当該記事執筆時点では購入と評価が間に合っていなかった。
全マニア層にオススメのレンズである。
(追記:気にいったので、後日、異マウント版の中古を、
もう1本買ってしまった。レンズマニアの私ではあるが、
同じレンズを意図的に重複購入した事は、4例しか無い)
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では、次のシステム

レンズは、mEiKE 12mm/f2.8
(新品購入価格 27,000円)(以下、Meike12/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
逆望遠型広角、これは1980年代前後でのCONTAXの
名称で言うところの「ディスタゴン」型の構成の
ジェネリックであろう。
レンズ構成が複雑なのが特色だ。で、どの元レンズの
構成をベースにしているかは不明であるが、例えば、
CONTAX Distagon T* 21mm/f2.8(1980年代後半)
あたりが近い構成であろう、それをだいたい半分位に
スケールダウンし、フランジバックを調整すると、
本レンズのような感じ(仕様)となると思われる。
歪曲収差が少なく、解像力が高い事で高く評価された
ディスタゴン系レンズであるが、若干の弱点もある。
具体的には、
1)大きく重く高価な「三重苦」レンズとなる。
2)ファインダーでピントの山が掴み難い
そして、これらの欠点は、ミラーレス機用に転用した
場合でも残ってしまっている模様だ。
他のジェネリックレンズは安価である事が長所だが、
本Meike12/2.8は3万円近くの定価と、高価である。
(注:近年では、新品価格は結構下落している)

また、本レンズはFUJI Xマウントで購入している、
Xマウント・システムでの純正レンズを揃えるのは、
ラインナップ機種数が少なく、かつ高価であるから、
こうしたジェネリックを用いて、抜けている焦点距離を
揃えていくのは、悪く無い選択だ。
しかし、Xマウント機は、こうしたMFレンズを使う際、
ピーキング精度が怪しい事が課題だ。
で、そのカメラ側の課題に加えて、ディスタゴン系の
レンズはピントの山が良くわからない。だから、実際に
本レンズをXマウント機で用いると、ピントが多少
外れていてもピーキングが反応しっぱなしになる。
勿論、EVFで目視をしても同様だ、ピントのピークが
良くわからない。
この課題を回避するには、絞り込んで被写界深度を稼ぐ、
近接撮影を行わない等の、古い時代の広角撮影技法を
用いるか、または、被写界深度が浅い状況で撮る場合は
手動MFブラケット(ピントずらし)で、事後選択する
しか無いであろう。
まあでも、ピント問題を回避して使うスキルがある
中級層以上に向けてならば、悪く無いレンズである。
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さて、3本目のシステム

レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN35mm/f2N
(中古購入価格 8,000円)(以下、YN35/2)
カメラは、NIKON D5300(APS-C機)
2018年頃に発売された新鋭レンズであるが、中身は、
CANONより1990年~2012年まで発売されていた
CANON EF35mm/f2のジェネリック(完全コピー製品)
である。(関連記事:レンズマニアックス第36回、
海外レンズマニアックス第2回YONGNUO編)

完全コピーと言うより、同じ生産設備を用いて製造された
レンズである可能性が高いが、そのあたりの理由は、
色々と裏事情があると推測でき、詳細の言及は避ける。
また、YONGNUO側も、当初は単にコピー品を作るだけで
あったが、少しづつ独自性が出てきている。
例えば本レンズは、当初、CANON EF版であったのが、
NIKON Fマウント版に改造している。
・・で、嬉しい事に、EFマウント用AFレンズは、
USM(超音波モーター)や、STM(ステッピングモーター)
という名前が付いていない場合でも、レンズ内モーター
が搭載されているので、今回使用しているような
NIKON D5000番台やD3000番台の低価格機種でも、
本YN35/2レンズでAFが作動する。
(例えば、同スペックで同時代(1990年代)のNIKON純正
AiAF 35mm/f2Sでは、D5300ではAFが動作しない)
ただし、NIKON機は、1930年代のドイツでの、ライカ/
コンタックス戦争(ライバル関係を強く意識し、様々な
カメラの仕様を逆にして設計された)の状況を踏襲して
作られた為、現代に至るまでカメラの動作が他社機とは
逆になっている部分がとても多い、これにより、本レンズ
では、ピントリングの動く向きと、レンズ内の距離指標が
動く向きが逆(CANON用レンズをNIKON用に改造した為)
とても気持ち悪い仕様となっている。
これは、AFで使用している場合には意識する必要は無いが、
MFで使うと、相当に気になる(=感覚的に合わない)
なお、本レンズは機械式絞り羽根連動爪を持つタイプ
である(つまり電磁絞り式では無い)、NIKONで言う
G型レンズ相当であるのて、G型対応(手動機械式絞り込み)
マウントアダプターを用いれば、任意のミラーレス機でも
使用可能だ。
まあ、つまり、CANON用の旧型35mm/f2を、NIKON機でも
使えるようにしたレンズである。
なお、旧来、NIKON機にEFレンズの装着は不可能であった
何故ならば、フランジバック長とマウント口径の関係で
そうなってしまうのであるが、本レンズは(CANON純正では
無いが)、初めてEFレンズのNIKON機への装着を実現した
レンズである。
CANON EF35mm/f2を所有していれば不要とも言える
レンズではあるが、価格が安価なのでコスパは良い。
(参考:私のEF35/2の中古購入価格は、約17,000円)
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さて、4本目のジェネリック

レンズは、7artisans(七工匠) 35mm/f1.2
(新品購入価格 20,000円)(以下、七工匠35/1.2)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)
2018年頃の発売。
こちらは、1660年代~1970年代の一眼レフ用大口径
MF標準レンズのジェネリックだ。
この時代には標準レンズの大口径化(F1.2化)競争が
起こり、各社から、55mm(前後)/F1.2というスペックの
MF標準レンズが発売されていた。
しかし、諸収差が極めて大きく、すなわち解像感が甘く
なったり、ボケ質が悪くなる等、描写力的には褒められた
ものではなかった(最強50mm選手権第7回MF50/1.2編)
また、焦点距離を50mmに収める設計も難しく、55mm~
58mmとなってしまう事も多かった。
これらの課題から、続く1970年代~1980年代にかけては、
MF銀塩一眼レフの大口径標準レンズは、各社とも50mm/F1.4
級に、ほぼ統一されている(=デファクト化された)

さて、本七工匠35/1.2は、その50年以上前に”絶滅して
しまった未完成の設計”の大口径標準の、ジェネリック
である、どのメーカーのF1.2レンズがベースとなったかは
知らないが、どれを取っても似たようなものであろう。
55mm/F1.2を2/3程度にダウンサイジングすると、およそ
35mm/F1.2というスペックのレンズが出来上がる。
前述のようにフランジバック調整はあるだろうし、加えて
これも前述のように、イメージサークルが小さくなるので
APS-C機以下専用レンズとなる(=フルサイズ化は出来ない)
そして描写力は、各社が見放した55mm/F1.2の弱点を
モロに引き継いでしまった(汗)
開放近くでの解像感は無いに等しい、これは球面収差とコマ
収差、さらには色収差の影響であろう。かなり絞り込んでも
解像感の向上は難しい、ミラーレス機のピーキングですら
ほとんどまともに追従していない状況である。(つまり、
コントラストが殆ど無いほどに、ボケボケの状態)
そして、そこまで絞るならば、せっかくの大口径F1.2は
意味を持たない。
中間絞りで使おうにも、像面湾曲と非点収差の影響により、
ボケ質の破綻が多発、これらはほとんど「ぐるぐるボケ」の
直前の状況である。
(ちなみに、1960年代には、さらに明るいF1.1級標準も
レンジ機用等で発売されていた事があるが、それらには
「ぐるぐるボケ」が見られたものもあると聞く)
まあつまり、現代の感覚では、当時の55mm/F1.2級標準や
そのジェネリックである本七工匠35/1.2は、「使い物に
ならない描写力」と判断せざるを得ない。
ただまあ、逆に言えば、現代での、諸収差が良く補正された
高性能レンズから見れば、極めてユニークな特性とも言える。
これらの(銀塩時代からの)F1.2級レンズは、個人的には、
ずっと嫌いなレンズであった。描写力が(メーカーも
見放すくらいの)最低レベルで、かつ高価であったから、
コスパがとんでもなく低いからだ、それは私の好みでは無い。
しかし、近年では、そうした酷いレンズでも、なんらかの
使い道を考える(=用途開発する)事も、必要であろうと
考えるようになった。まあ、それが本来の「使いこなし」で
あろうからだ、それは簡単な話では無いが、本レンズの
購入を機に、オールド大口径レンズの用途開発や見直しを
図っていきたいと考えている。
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では、5本目のシステム

レンズは、中一光学 FREEWALKER 20mm/f2 SUPER MACRO
(新品購入価格 23,000円)(以下、FW20/2)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2017年発売の超マクロ(近接専用)レンズである。
ベースとなった設計は、1970年代のOLYMPUS OM用の
医療または学術向け特殊レンズである。
そして、本レンズもジェネリックと言うよりは、完全なる
コピー品だ。ただし、マウントはOM用では無く、NIKON F
等の現代マウント版が色々発売されている。
元々がOM用で、そのままのスペックなのでフルサイズ対応。
ミラーレス機で使う場合には、さらに撮影倍率が上がり、
今回使用のμ4/3機では、換算9倍程度の超マクロとなる。

課題は、ここまでの高い撮影倍率では、フィールド(屋外)
での自然分野手持ち撮影は不可能に近い、という事である。
その成功率は、1%以下、数千枚を撮っても十数枚程度しか
ピントが合っていない。
本レンズをちゃんと使う場合には、室内で顕微鏡のように
台座や機構に固定して使うしか無い、まあ、元々学術や
医療向けなので、そういう用途である。
あまりに特殊な用途なので誰にでも推奨できるレンズ
とは言い難いが、まあ、参考まで。
本レンズは、本シリーズ第2回、第41回記事等、多数
紹介しているので、詳細は重複するため割愛する。
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では、6本目のジェネリック

レンズは、7artisans(七工匠) 25mm/f1.8
(新品購入価格 12,000円)(以下、七工匠25/1.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
2018年頃(?)に発売の、中国製MFレンズ、
50mm/F1.8級標準の1/2スケールダウンと思われるが、
イメージサークルに余裕がある模様で、APS-C機でも
殆どケラれずに使用できる。

元々の銀塩(MF/AF)時代での50mm/F1.8級小口径標準は
非常に完成度が高い設計であり、描写力的な不満は無い。
まあ、1960年代くらいから、2000年代に至るまで、
各社では50mm標準レンズをF1.4版とF1.8(前後)版を
並行してラインナップしていた。全ての点でF1.4版の
性能が優れるのであれば、F1.8版は生産終了になって
いてもおかしく無いが、それがずっと並存していたという
事は、すなわち、F1.8版の方が完成度が高いという事実を
間接的に立証している事となる。
この話はマニア層には良く知られていて、例えば
PENTAX SMCT55/1.8や、CANON EF50/1.8Ⅱ等の
小口径標準レンズは、安価で良く写るレンズとして、
ファン層が極めて多い。
本七工匠25/1.8も、安価な上に、上記の完成度の高い
小口径標準レンズの設計や特性を継承していて、非常に
コスパが良い。ビギナー層以外の全てのユーザー層に
推奨できるレンズである。
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では、今回ラストのシステム

レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN 50mm/f1.8
(中古購入価格 4,000円)(以下、YN50/1.8)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)
2014年頃? に発売された、中国製(格安)小口径AF標準
レンズ、フルサイズ対応である。
発売時期は今回紹介の他のジェネリックレンズより少し
早いのだが、国内流通が活発になったのは2017~2018年
位と、他の新鋭海外製レンズと同様のタイミングだ。

本レンズは、CANON EF50mm/f1.8Ⅱの完全コピー品
である、前述のYN35/2と同じ出自と思われ、なんらかの
裏事情があると推測される。
CANON EF50/1.8の歴史に関しては、
1987年(銀塩EOSの登場年)~1990年までが初期型。
(Ⅰ型、ハイコスパ名玉編第8回記事参照、第19位)
1990年~2014年までが、Ⅱ型の時代である。
(このⅡ型は、初の「エントリーレンズ」と言える)
2015年~現在までが、STM(ステッピングモーター)型
となっている。
本YN50/1.8は、Ⅱ型に対しての完全コピー品と言っても
差し支えなく、殆ど同等の仕様と描写力を持つ。
ただ、電子部品等を含めた完全コピーは困難と思われる
ので、生産中止になったⅡ型の余剰部品を同じ生産設備で
製造された可能性が高いが、そのあたりは裏事情がある
とも思われるので、これ以上の詮索はやめて置こう。
(注:本レンズは「通信プロトコル」が異なる模様で、
電子マウントアダプターを介して、他社機等で使う場合、
CANON純正レンズとは動作の振る舞いが変わってくる)
ちなみに、Ⅰ型とⅡ型、及び本YN50/1.8のレンズ構成、
(5群6枚)は同じ、また仕様、描写力もほぼ同等である。
STM型以降は、仕様が変更されている(特に最短撮影
距離が45cm→35cmに短縮)、レンズ構成は同じ5群6枚
だが、若干の設計変更があった可能性が高い。
なお、STM型はEOSボディに装着して通電しないと、
MFが効かない。これはSTMの仕様(弱点)であり、他の
STM型レンズも同様。この為、EFマウントアダプターを
介して他社ミラーレス機等で用いるのは、電子アダプター
を使わない限り、STM型では困難(無理)である。
この「汎用性」の弱点がある為、個人的には出来るだけ
STM型レンズを購入しない方針であるが、例外的に
EF40/2.8 STMのみ、CANON初の「パンケーキ」レンズ
という歴史的価値を鑑みて購入している。
(本シリーズ第14回「パンケーキ」編等参照)
さて、本YN50/1.8だが、悪く無いレンズである。
前述のように、完成度の高い、EF50/1.8(Ⅰ、Ⅱ)の
コピー品であるから、悪い筈も無いという訳だ。
初のエントリーレンズEF50/1.8Ⅱは、1990年代において
初級者層がこれを購入し、以下ような感想を持つ人が
大半であった。
初「安いので試しに買ってみたら写りが良いのでびっくり、
CANONさんはなんと太っ腹なのだ。CANON万歳!
で、1万円のレンズで、こんなに写りが良いならば
20万円の高級Lレンズは、どんなに写りが良いのだろう?
いつかお金を貯めてLレンズを買うぞ!」
・・・と、「神格化」してしまっていた。つまり、モロに
典型的な「お試し版戦略」に、引っかかってしまったのだ。
まあ、それ以前、MF時代からの各社50mm/F1.8級小口径
標準レンズ(概ね各社とも5群6枚構成)の完成度と描写力
の高さを知っていれば、このように単純な感想は持たなかった
に違い無いが、1990年代は(AF)ズームレンズ普及の時代で
あったので、初級中級者は、単焦点レンズの写りを知らな
かったのが最大の理由であろう。
さらに、それ以前、1980年代の銀塩MF時代では標準レンズ
は各社の顔であった(カメラボディに、大口径または小口径
の50mm標準レンズをセットして発売したから)のであるが、
大口径(F1.4級)の方が当然小口径(F1.8級)よりも高価
である、しかし実態は小口径版の方が完成度が高い(つまり
高描写力)であった為、各社はこの矛盾を解消する為に、
小口径版に性能制限をかけていた。具体的には、大口径版
50mm標準レンズの最短撮影距離は、各社同等の45cmで
あったのが、小口径版は、50~60cmと長くする事だ。
この「仕様的差別化」により、大口径版の最短撮影距離
での被写界深度が約6.8mmに対し、小口径(F1.8)版で
最短60cmの場合の被写界深度は約15.6mmと、2倍以上も
深くなる、つまり「F1.4版の方が良く背景がボケる」訳だ。
だから「F1.4版は高性能で、故に高価なのだ」という風に
ユーザー層に思わす事が出来、これでラインナップ上の
矛盾も起きない。(=つまり、高価なレンズの方が性能が
悪いという状況は、市場倫理的には許されない)
このあたりの仕掛けが全てわかっている上級層や上級
マニアであれば、EF50/1.8(Ⅱ)を神格化する事も
無かったであろう。ただし、EF50/1.8(Ⅰ/Ⅱ)では
絶妙な戦略が施してあって、それらのレンズの最短撮影
距離は、大口径版と同等の45cmまで短縮されていた。
つまり、性能制限をとっぱらった訳であり、これにより
極めてコスパの良いレンズが出来上がった訳だ。
ちなみに、この当時(1990年前後)、EF 50mmにF1.4の
大口径版は存在せず、非常に高価なEF 50mm/F1.0
(1989年)があっただけだ。
で、EF 50mm/F1.4 USMが発売されたのは、1993年に
なってからである、つまり、EF50/1.8Ⅱは完璧に
お試し版(エントリーレンズ)としてのコンセプトを
持たせた事となる、もしお試し版が不満足な性能であれば
ユーザーは高級レンズを買ってくれなくなってしまう。
すなわち「損して得とれ」的な発想は、このEF50/1.8Ⅱ
からスタートした訳だ。

さて、しかしながら本YN50/1.8は、エントリーレンズでは
無い。全く同じレンズとも言えるのに、何故エントリー
では無いのか?は、その営業戦略が異なるからである。
YN50/1.8を買ったユーザーが、その性能を見て気にいった
としても、YONGNUO(ヨンヌオ)には、次に繋げるべき
高額(高級)レンズが存在しない。
だから、YN50/1.8の市場戦略は、お試し版では無く、
2010年代になって、一眼レフ市場の縮退を受けて、国内製
のレンズが高価になりすぎた状態において、「ガラ空きに
なった低価格帯レンズ市場へ参入した」という話である。
この点は、YONGNUOのみならず、他の新鋭海外製レンズ
も全て同様な市場戦略だ。国内メーカーが、もう低価格帯
レンズを作れない訳だから(それを作って売っても儲からず、
メーカーはカメラ・レンズ事業を維持できない為)
その弱点を突いて、新鋭海外製レンズが怒涛のように国内
市場に参入した訳である。
おまけに、その多くは、過去において定評のある名レンズ
の設計のコピーまたは小改良である、安くて写りが良ければ
ユーザーとしては何も文句は無い。ただし、いずれも古い
時代の設計(や仕様、構造)であるが故に、それらの弱点
を理解して、それを回避できるスキルを持つ中上級層で
無いと、その恩恵(コスパの良さ)は得る事が出来ない。
すなわち、「MFは苦手だ」とか「フルサイズ対応でないと
嫌だ」と言っているようなビギナー層では、こうした
ジェネリックレンズの使いこなしは難しい訳だ。
ビギナー層が、何も工夫をせずに、レンズの言うがままに
撮っていたら、最大のパフォーマンスを発揮する事は出来ず、
「やはり中華レンズ(中国製)だ、安かろう、悪かろう」
という評価となってしまう。
まあ、それが、今回紹介のジェネリックレンズ群の
実態である。
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では、今回の「ジェネリック・レンズ編」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。