過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介の
マニアックなレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は、未紹介レンズ4本を取り上げる。
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まず、今回最初のレンズ

レンズは、NIKON AF-S DX (Zoom-)NIKKOR 18-70mm/
f3.5-4.5G (IF-)ED (中古購入価格 7,400円)
(注:()内はレンズ上の表記無し)(以下、DX18-70)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)
2004年発売と古く、デジタル時代初期の標準ズームである。
発売翌年には、NIKON D200(2005年、その当時のNIKON
の主力の中級機、未所有)のキット(付属)レンズにも
採用された。まあつまり「中堅レンズ」という位置づけ
だろう。

何故、今にして、こうした古い標準ズームを必要とするか?
の購入理由だが、以下の条件でレンズを探していたからだ。
1)NIKON DXマウント、イベント撮影用の「消耗レンズ」
(すなわち、安価(中古相場1万円程度)で、そこそこ
高性能、過酷な使用環境でいつ壊しても良いレンズ)
2)小型軽量で、母艦D5300との組み合わせで付属品込み
1kg以下。(当然、AFモーター内蔵である事)
3)広角端28mm以下相当、歪曲収差が少ない事。
望遠端の仕様は任意だが、あまり高ズーム比で無い事。
手ブレ補正機能内蔵は任意だが、基本的には不用。
だいたいこのあたりか?
ちなみに、根幹の目的としては、先年に購入したD5300
(デジタル一眼第25回記事)が、思ったよりも撮影枚数
が伸びていない点がある。同機は悪い機体では無いが、
趣味撮影においては中途半端なスペックである事が原因だ。
で、今後、D5300はイベント撮影用に転用し、酷使して
減価償却を推進する目論見がある(追記:既に償却済み)
・・で、上記の条件に当てはまるレンズは
2000年代発売の、DX18-55,DX18-70,DX18-105,
DX16-85あたりが存在する。広角端を考えればDX16-85
が候補となるが、生憎、手ブレ補正(VR)内蔵と、余計な
機能が入っていて、中古相場は2万円以上と高目だ。
また、2010年代ではDX18-140やDX18-300等、望遠域
を拡張し、ズーム比を高める戦略を取っているが、当然
「高く売りたい」が為の措置であり、高ズーム比(高倍率)
とした事での画質低下(=収差増加)、大型化、重量級化、
高価格化、用途不明になる事(望遠域を使いたいならば、
専門の望遠レンズを持ち出せば良いだけだ)等、短所が
山のように出て来る為、それらは完全に無視である。
結局、2000年代の候補機種の中から、価格と性能の比が
適正と思われるDX18-70を選択した次第であった。

で、2010年代末よりDX(APS-C専用)レンズは、NIKONに
おいても、フルサイズ化へ移行、つまり高付加価値レンズ
へ集約する為、新品価格も中古相場も下落している。
まあつまり、カメラ市場縮退の状況においては、DX用の
安価なレンズをいつまでも売っていてもメーカーや流通は
儲からないからであって、「APS-C型のカメラもレンズも、
さっさと市場から消し去ってしまいたい」訳だろう。
そうすれば、今後は高価なFX(フルサイズ)のカメラと
レンズしか残ら無いから、販売数が少なくても、利益率の
上昇で、メーカーも流通も、なんとかビジネスを維持できる
という目論見であろう。
2000年代末ごろから、メーカーや流通市場は、ずっと
「フルサイズ機は良いものだ」と、ユーザー層を洗脳し
続けた。そこから約10年、その「信仰」は多くの初級中級層
に定着して、同時にフルサイズ機も若干の低価格化が起こり、
初級中級層でも、なんとか買えるようになった訳だ。
この「刷り込み」は、”思想コントロール”として恐ろしい
ものがあった。例えば、2010年代末、某社のフルサイズ
ミラーレス機が展示会で新規に発表された際、40万円以上も
する高額すぎる機種なのに、それを見て触る為に、来場者は、
初来日のパンダでも見るような長蛇の列。これを異常事態と
見たTV局は取材を敢行。「なんでこんなに並んでいるの
ですか?」という、インタビューワーの問いかけに対し、
明らかな新規エントリー層と思われる来場者の1人は、
「やっぱ、フルサイズはいいですよね」とのコメント。
・・・正直、このTVニュースを見ていて「ぞっと」した。
同社の、つい先代の、非フルサイズの高性能機であれば、
4万円程の相場で中古市場にゴロゴロしている。
「フルサイズ」というキーワードだけで、10倍もの価格差を
入門層は受け入れてしまうのか?
本当にフルサイズの得失を理解した上でのコメントなのか?
フルサイズ以外のスペックや機能はどうでも良いのか?
そもそも、そのユーザーは、何をどう撮りたいのか?
まあ、TV局が「これは異常だ」と判断するくらいの状況だ、
結局「フルサイズは良いものだ」と思い込ませられた
「信者」達の、良く分からない行動にしか、外(一般層)
からは見る事が出来ない。
・・結果、なんやかんやで、ますますカメラ機材の単価は
高くなって行くが、メーカーとしては、そうしないと
生き残れない訳であり、「旧機種からの値上げ幅が酷い」
と思う既存ユーザー層の不満等は、知ったこっちゃ無い。
高価すぎる機材を「値段が高いから良い物に違い無い」と
信じ込んで、ありがたがって買う、全くの新規のエントリー
層を主要ターゲットにしてビジネスを継続するしか無い。
・・で、あれば、既存ユーザー側として賢く考えれば、
常にフルサイズのシステムが必要という訳では無いし、
絶滅寸前で、こうして相場低下が発生したDX(APS-C)対応
システムを安価に入手すれば、大変コスパが良くなる訳だ。

さて、本レンズの性能だが、ボケ質破綻が発生する。
これはD5300との組み合わせでは回避する術が無い為、
できるだけ平面被写体に特化するしか無いであろう。
解像感はそこそこ高いが、上記「ボケ質破綻」との
トレードオフでの設計思想であろう。
まあ「記念(記録)撮影専用レンズ」だと思うべき
であり、元々、この手の普及・中堅ズームは、様々な
表現意図を持った本格的な趣味撮影用途には向かない。
そういう状況もあり、「標準ズーム」(=標準画角、
つまり換算50mmを含む、ズーム比が2~5程度のレンズ)
は個人的には用途が少なく、数本しか所有しておらず
レンズ全所有数の内の2%程度の数だ、しかもそれらは
殆どが「消耗用途の記録(実用)撮影専用」である。
ただ、本レンズでは、広角端で若干の歪曲収差が
発生する傾向があるので、記録用途では、会場の
全景や参加者集合写真を良く撮るので、そのあたりは
注意して使う必要がある。(レタッチ補正をするか、
あるいは広角端を使わない)
で、エントリー層やビギナー層が、標準ズームを必要と
するのは、1990年頃より、標準ズームがカメラ本体と
セット(キット)で販売され始めたからであり、
そこから30年も経てば、それが「常識」となって
刷り込まれてしまう。だが、良く良く考えてみれば、
1980年代までは、カメラのキットレンズは単焦点
(大/小口径)の標準レンズであったのだ。
単焦点標準レンズでビギナー層が学ぶ事は非常に多い、
例えば、絞り値による被写界深度の調整であっても、
そうした大口径標準ならば顕著かつ容易に理解できる。
だが、現代の標準ズームでは、その効果はあまり良く
わからないので、初級層の中には、絞りの効能について、
初「絞りを色々変えて撮ってみたが、差がわからない」
と言う人達が大半である。
これは、学び方としては間違っている訳では無い、問題は
付属レンズである標準ズームの仕様上の課題である。
そして1980年代頃迄は、標準ズームの描写力は、お世辞
にも良好とは言えず、マニア層や中上級層では、ビギナー
層に対し(被写界深度のコントローラビリティと画質の
視点から)「ズームを使うな、単焦点レンズを買え」と
アドバイスし続けていた訳だ。
しかし、2000年代、デジタル時代に突入し、同時に
標準ズームの画質(収差の補正等)も、ずいぶんと改善
され、大口径の標準ズームも少しづつ普及が始まると
相対的な進歩が数十年間も止まっていた「単焦点標準」
よりも、高性能標準ズームの優位性が高まっていく。
もうそうであれば、わざわざ「単焦点を使え」と諭す
先輩ユーザーも誰も居なくなった訳だ。
余談が長くなったが、まあ標準ズームの位置づけは
そんな感じである。
参考関連記事としては、特殊レンズ第49回
「AF標準ズーム・ヒストリー編」がある。
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さて、次のシステム、

レンズは、smc PENTAX-M 50mm/f1.7
(中古購入価格 2,000円)(以下、M50/1.7)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
1970年代後半頃と思われるMF小口径標準レンズ。

本レンズの時代の直前、PENTAX(旭光学工業)は、旧来
ユニバーサル(=各社で共通の仕様)であったM42マウント
を諦め、独自のKマウントに移行している(1975年)
M42を止めた理由は、マルチモードAE化への対応が困難
であったからで、すでに実現していた絞り優先AE等も、
その対応の為、本来汎用的であったM42規格の互換性を
損ねてしまっていた。つまり、もう既にM42は、共通規格
としての意味が無くなってきており、おまけに国内での
「M42の旗手」とも言えるPENTAXが「降りて」しまえば、
もうM42の時代は残念ながら終焉だ。
ただまあM42規格自体に致命的な弱点があった訳では無く、
後年においても、その汎用性の高さは長所と見なされ、
(→およそ殆どの一眼レフやミラーレス機で使用可能)
1990年代の中古カメラブーム時には、国内外の様々な
M42マウントレンズがマニア層等で良く流通、そして
2000年代に入っても、コシナ(フォクトレンダー)等
の趣味的要素の強いレンズでは、依然M42マウント版が
新発売されるケースもあった。
1970年代の話に戻ると、1972~1973年、OLYMPUS
よりOM-1(M-1)が発売された(現在未所有)
これは当時、世界最小・最軽量の一眼レフであり、
この「小型化思想」は、市場やカメラ界にインパクト
を与え、他社の多くも、ここから1980年代頃に至り、
一眼レフの小型化を推進した。
PENTAXでも同様で、OM-1の縦横高さの寸法を全て
意識的に下回る設計の、世界最小一眼レフ「MX」を
1976年に発売する。(現在未所有)
前述のように、PENTAXは1975年にM42からKマウント
に移行したばかりなのだが、新規Kマウントレンズの
多くは、M42時代のSMC-Takumar型をKマウントに変更
したものであった。この時代のレンズは識別する為の
型番が無い為、K/P/無印型と中古市場では呼ばれて
いる。
しかしながら小型化の世情においては、新たなMXや
さらに続くMシリーズ小型一眼レフ(ME,MV-1等)
に向けて、レンズも小型化した方が勿論望ましい。
恐らく、PENTAXでは、この時代(1973~1976年)に
旧来のM42マウント(SMC-T)レンズのKマウント化と、
新型の小型化Mシリーズレンズの同時開発を行ったと
推察され、忙しいともに、時間もそれなりにかかって
しまったのだと思われる。さもなければ、OM-1に対抗
するMXは4年もかからずに、もっと早く発売されていても
おかしくなかったのだろうが、レンズも小型化しないと、
システム全体としての特徴は得られなかった訳だ。

さて、本レンズM50/1.7であるが・・
まず、旧来のM42時代の定番高性能小口径標準レンズは、
55mm/F1.8版(シリーズ)である。
後年の初級マニア層には「銀のタクマー」と呼ばれて
愛用されたレンズであり、長期に渡って販売されて
いた為、外観等にいくつかのバージョンがあるが、
レンズ光学系は殆ど同じだと思われる。
(ハイコスパ名玉編第8回、第17位にランクイン)
Kマウント移行後にも、このレンズはK(P)55/1.8
として販売されたが、Kマウントでは、簡素なマウント
アダプターでM42レンズを利用できたので、55mm/F1.8は
M42版を流用するユーザーが殆どであっただ事ろう、
こちらのKマウント版55/1.8は、殆ど見かけた事は無い。
Mシリーズになった際、小型化を目論んだのか、これまでの
55mm/F1.8版と、レンズ枚数は同じ(5群6枚)なままで
レンズ構成を微妙に変化させ、仕様を50mm/F1.7とし、
小型化されたものが、本レンズである。
レンズ名称は、Kマウントになってからは、型番冒頭の
SMC(スーパー・マルチ・コート)の文字が、旧来の大文字
から小文字のsmcとなった(ただし、大き目のフォントで
書かれている) よって、この時代からのsmcレンズは、
本ブログでは、smc PENTAX-(?) という風に記載している。
(大文字SMC PENTAX-(?)表記は誤りと見なすべきだろう)

レンズ性能だが、残念ながらM42時代の名玉SMC-Takumar
55mm/f1.8よりも、若干だが低性能化されてしまった。
具体的には、解像感の低下、ボケ質破綻、逆光耐性又は
コントラストの低さ、があるが、逆光耐性系については、
本レンズは経年劣化(僅かなクモり)があるジャンク品
なので不問としよう。
ポピュラー(人気のある)標準レンズであり、昔から
中古市場でよく見かける本レンズではあったのだが、
個人的に本レンズを、ずっと購入していなかった理由は、
「名玉のSMC-T55/1.8があれば不用」という判断で
あった。まあつまり「55/1.8には勝てないだろう」という
理由だったのだが、今回、本M50/1.7をあえて購入した
のは、その推測を実際に確かめる(検証する)意図も
大きかった。
ただまあ、いきなり低性能が目についてしまい、あまり
(SMC-T55/1.8とは)ちゃんと比較検証はしていない、
いずれ時間があれば、両者をちゃんと厳密に比較してみる
事としよう。
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では、次のシステム。

レンズは、YASHICA LENS ML300mm/f5.6 C
(中古購入価格 1,000円)(以下、ML300/5.6)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
詳細不明、恐らくは1980年前後に発売と思われる
MF単焦点望遠レンズ。
型番の「C」は、多層コーティング仕様と思われ、
前機種に「C」ナシのバージョンが存在した模様だ。

マウントは、CONTAX RTS系と同一。この為、この時代
のマウントは、Y/C(ヤシカ・コンタックス)と記載
するが、これの正確な意味は「ヤシカ製のコンタックス
マウント」(注:当初、CONTAXの商標使用権を獲得
したのは、京セラでは無く、ヤシカであった)という
意味と、「ヤシカおよびコンタックスの共通マウント」
と、2つの意味が混在していて、どちらが本来の
「Y/C」の意味なのかは、現在となっては、もはや不明だ。
(参考:だから、近年の中古市場では、マウントの名称
は、その初代機にちなみ「RTS」マウントとも呼ばれる)
さて、本レンズは専門店での準ジャンクとしての購入だが、
特に大きな瑕疵(かし。欠陥や欠点の事)は無く、単に
古い、不人気、現代では使い難い、といった理由での
格安相場であろう。
望遠をさらに望遠にする、という意味でμ4/3機を
母艦として使用するが、換算600mmともなると、手ブレ
補正機能が入っていた方が望ましく、そういう意味で
手ブレ補正内蔵のDMC-GX7を使用する。
しかしながら、手動焦点距離設定を300mmに正しく
セットしたとしても、超望遠域では内蔵手ブレ補正は
精度不足となる。そしてDMC-GX7にはAUTO ISO時での
低速限界設定機能が無い為、シャッター速度が例えば
1/125秒以下ともなると、手ブレ限界の2段以上落ちと
なるので、手ブレの危険性が出る。
よって、ISO感度設定を手動とし、1/500程度以上の
シャッター速度が得られるように留意して設定する。
重く、開放F値も暗いレンズの為、この状態で、なんとか
手ブレが防げる、という感じだ。
自身の手ブレ限界速度を把握していない、あるいは何故
手ブレするのか?がわかっておらず、常に手ブレ補正機能
を使っていないと不安だ、と思っているビギナー層などが
ラフに使うと、間違いなく手ブレは免れない。
で、手ブレよりも大きな課題があり、それは最短撮影
距離の長さである。
基本的に最短撮影距離は焦点距離の10倍以下が望ましい、
つまり300mmレンズであれば、3mという事だ。
だが、本レンズの最短撮影距離は、何と4.5m
これは、「トイ望遠レンズ」を除き、一般的な単焦点
望遠レンズでは、恐らく最悪のスペックであろう。
(他社でも、300mmで4.5mは、もう1例位あったか・・)
さらには最短に近い近接撮影では、解像感の低下が
著しいので、ここもまた大きな課題となる。
ちなみに、「トイ望遠(レンズ)」は独自用語である。
基本的には、2群4枚、4群4枚等の単純な構成であり、
大元は、2群4枚のペッツヴァール(ペッツバール)
型構成(1840年発明)である。
これらを用いた望遠レンズは、簡素な構造で、安価な製造
コストとなり、主にレンズメーカー以外で「簡易望遠レンズ」
として販売される事が(銀塩時代を通じて)多かったので、
これらを「トイ望遠」と呼ぶ事にしている。
この構成は、画面中央部の解像力に優れる、明るい開放F値
が可能、安価、といういくつものメリットがあり、
発明から180年もたった現代でも、簡易望遠鏡等に使われる
場合がある。
トイ望遠の弱点は、画面周辺での解像感の低下、像面湾曲と
非点収差によるボケ質の汚さ、望遠比の低さ(焦点距離に
応じてレンズ鏡筒が長くなる、時に、それは長くなりすぎて
ハンドリングに重大な制約が出る場合も)、そして最短撮影
距離の長さ、このあたりだ。
本レンズは3群6枚と、ペッツヴァール型では無いが、
恐らく、それを拡張した構成であろう、よって弱点として
「最短撮影距離の長さ」がモロに出てしまった。
(加えて、本来あるべき「解像感の高さ」も失われた)
4.5mという最短は、実際に被写体に対峙すると、とてつも無く
遠く、目の前に目立つ(見える)全ての被写体は撮れない。
結果的に遠距離の被写体しか撮れず、大きなストレスとなる。

描写力だが、ペッツヴァール型の根源的な弱点である
ボケ質の劣化を、(拡張した?)このタイプでも上手く
補正しきれていない、つまりボケ質破綻が頻発する。
これを防ぐには平面遠距離被写体に特化し、ボケを作らない
事である、まあ元々、最短撮影距離が長すぎるという性能
制限がある為、遠距離の平面的被写体しか撮れないので、
そういう風に用途制限をかけて、弱点が課題になりにくい
ように、レンズ構成を決定したのであれば、なかなか
手慣れた「コストダウン」設計なのかも知れない。
つまり、寄れて、ボケ質も良く、開放F値も明るい等と
要求仕様ばかり欲張ってしまえば、大きく重く高価な
「三重苦レンズ」が出来てしまうからだ。
ちなみに同じ焦点距離のCONTAX版のテレテッサー
300mm/F4は、所有の機会が無く詳細の言及は避けるが、
そちらとのラインナップ上の差別化(すなわち
開放F値4→F5.6、最短3.5m→最短4.5m等)もあった
のであろう、YASHICA MLは、CONTAX(ツァイス)から
見れば、あくまで、格下・廉価版の扱いなのだ。
現代の視点からは、あまり気分の良い話では無いが、
ここまではっきりと「仕様的差別化」を行ったのは、
「CONTAX」というビッグブランドを持っているからであり、
そのブランドを購入した事で(間接的に)ヤシカは経営
破綻を起こし倒産、京セラの援助(資本投下)を受けて
かろうじて「CONTAX」のカメラ事業を継続できた、
という歴史だ。(1975年~1977年頃の話)
「CONTAX」を、より”良いもの”としてユーザー層に
「神格化」してもらう為には、ヤシカブランドのレンズの
性能を低めて差別化を強くしないと、ハイブランドの魅力
が目立たないし、CONTAXを高価に売る事も出来ない訳だ。
勿論、ブランド銘に拘らない上級マニア等のユーザー層
から見れば、馬鹿馬鹿しい話である、「名前が違うだけで
そんなに高くなるのか?」と。
1990年代の中古カメラブームの際にも、そう思うマニア層は
とても多く、むしろ「YASHICAのレンズはCONTAX(ツァイス)
と同じ工場(富岡光学等)で作られている」という、極めて
信憑性の高い噂話が広まり、YASHICA LENSを求めるマニア
層が急増した、という経緯がある訳だ。

なお、YASHICAは、国内よりも、むしろ海外で有名であり、
京セラがYASHICAを吸収合併した後も、YASHICAのブランド
名を捨てなかったのは、海外輸出モデルに「YASHICA」の
名前を付けたかったからだと思われる。
なぜYASHICAが海外でウケが良いのかは、海外ユーザーは
国内ユーザーよりも、相対的に「合理的」な考えを持つ。
よって、「カール・ツァイスは、日本のYASHICAの技術力
を認め、YASHICAにライセンス供与をした、だからYASHICA
のカメラやレンズは優れているのだ」という論理を持つ
からである、ちなみに国内でも上級マニア層は全く同じ
考え方を持っていたが、初級マニア層とか金満家等は
「世界的に有名なCONTAXやカール・ツァイスだ、
これは良いものに違い無い」と、ちょっと的はずれな
”神格化”をしてしまった訳だ・・・
まあ良い、いずれも「今は昔」であり、今から40年も
前の話である、一眼レフや交換レンズさえ、初めて買う
ユーザーが多かった時代に、「歴史的経緯」や「市場背景」
といった、「事の本質」が理解できる筈も無い。
ともかく「YASHICAが廉価版だ」という事については、
その事実は無く、あるとすれば「CONTAX(ツァイス)との
差別化により、やむなく一部に性能制限がかけられている」
という解釈が正しい。
その性能制限の内容を完全に理解し、そんな事は、どうにか
回避してしまえるような上級者層であれば、YASHICAの
レンズは、この上なくコストパフォーマンスが良いものに
なる訳だ。
(参考:2005年での京セラCONTAXのカメラ事業撤退に
より、以降「YASHICA」は「流浪のブランド」となった。
海外の商社等が、転々と、その商標の使用権を入手売却を
する事が繰り返されていて、ある時代に、YASHICA銘の
カメラが新発売されたとしても、もはや本来のYASHICAとは
完全に無関係である。その事が微妙な問題点にも繋がり、
現代の新規マニア層等が、新製品のYASHICA銘カメラを見て、
「あの有名なヤシカか!」と、買ったものの、その実は、
トイカメラだったりするので、がっかりしてしまう模様だ。
まあでも、どういう出自で、どういうカメラなのか?が
わかっていて買うのであれば、単に価値観の問題でもある)
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次は、今回ラストのレンズ

レンズは、SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8
EX DG OS HSM
(中古購入価格 58,000円)(以下、APO150/2.8)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)
2011年に発売されたフルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。
ただし、この発売年は、新型の手ブレ補正(OS)内蔵
モデルであり、OS無しの旧型は2004年発売であった。
大きく重く高価な三重苦レンズであり、発売時の定価は
136,000円+税。重量は1150gの仕様記載があるが、
三脚座を外す事ができ、その際、NIKON用では1kgを
少し超える(実測1022g)程度である。
手ブレ補正内蔵は個人的には必須の要件では無かった
が、旧型、2000年代のEX DG型のSIGMA製MACROは、
何故か中古入手が難しく、姉妹品70mm/f2.8(EX DG)
も、長期間ずいぶんと探したが見つからず、やっと
新型のART 70mm/f2.8(2018年)の発売後に、
下取り品と思われる中古を入手した次第である。
本APO150/2.8系列も、元々販売数が少ないのか?
OS内蔵の新型が、かろうじて中古市場に稀に流通して
いるに過ぎない。

さて、「三重苦」に負けない程の、パフォーマンスが
得られるレンズであろうか?
”望遠マクロならば非常に高い描写力がある”という
事前の予想である。本シリーズ第44回記事で紹介の、
TAMRON SP180/3.5も、私のデータベースにおいて、
描写表現力評価が5点満点の名レンズであったからだ。
実際の描写力であるが、予想どおり悪く無い。
ただ、「感動的」と呼べる程のものでも無く、
TAMRON SP180/3.5と比較すると、僅かに物足りない
程度の感覚で、本レンズには4~4.5点の仮評価を
与えている。(今後実写を繰り返した上で、最終
的に4点とするか4.5点とするか?を決める予定)

弱点としては、
まず、HSM仕様レンズでありながら、NIKON D5300で
AF(OSも)が動作しない事だ。これは機種間の特定の
組み合わせで起こる課題であり、今回使用機の
NIKON D500とでは問題が無い、まあつまり、SIGMA側の
瑕疵ではなく、D5300側の課題(特殊プロトコル?または
排他的仕様?)である。
SIGMAのサービスに本レンズを送れば、無償アップデート
してくれる(くれた)ようだが、面倒なので行っていない。
まあ、軽量なD5300と組み合わせる方がシステムのトータル
重量を軽減できるので望ましいのだが、やむを得ない。
当面、D500や他のNIKON機で使う事としよう。
AF性能が優れるD500と、HSMの組み合わせで使用したと
しても、AFの速度はやや厳しい。特に、近接側と無限遠
側とを、いったり来たりするような撮影スタイルでは、
AF移動と合焦に、とてつもなく時間がかかる。
だが、これはまあ、やむを得ない、レンズの駆動量が
半端無いからだ。
コンティニュアスAF使用時等でAFの駆動変化量が小さい
場合であれば、まあHSMと合わせてなんとか実用範囲。
しかし、高速で飛び回る小さい昆虫等にAFが追従し続ける
のはさすがに無理であり、昆虫等がホバリング(空中静止)
しているような状況で無いと、AF合焦は無理だ。

他の課題だが、やはり重量が重く感じる。
近年のSIGMAの高性能単焦点(ART LINE)や、(超)望遠
ズーム等は、1kgを超える重量のレンズがザラという
状況であり、手持ちでの長時間撮影では、かなりの
疲労を誘発する、まるで「筋トレ」用のレンズか? と
思えてしまう程だ。
まあ、大口径化や高性能化の為には、レンズの構成枚数や
サイズを大きくせざるを得ないのだろうが、元々、それら
は、手持ち用撮影時にパフォーマンスを発揮できるレンズ
であるから、1kgを切る程度に収まってもらえると助かる。

総評であるが、望遠マクロとしての用途において、
150mmの焦点距離は、やや中途半端に感じる事も多い。
長いWDを活用したい意味においては、180mm級望遠マクロ
の方が向くかも知れない訳であり、つまり「用途開発」が
難しいレンズだと思われる。
重量級で、あまり安価なレンズでも無い為、安易に
買ってしまうのは禁物だ。自身の用途において、本当に
このレンズを使う、あるいは本レンズでなくてはならない
強い理由や目的が無い限り、「必要度」評価の低い
レンズとなってしまう恐れがある。
描写力等は悪く無いが、よく事前に用途を検討してから
購入の選択をするのが良いであろう。
(追記:以降、使用2年程で、結構、このレンズの使用
頻度は高い。まあ、個人的には、必要度の低いレンズでは
無かった次第である)
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さて、今回の第46回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。