本シリーズは、所有している、やや特殊な交換レンズを、
カテゴリー別に紹介する記事群だ。
今回は「135mmオールド単焦点」(後編)という主旨で
やや古い時代の一眼レフ用の焦点距離135mmのMFレンズ
を13本準備し、これらを前後編に分けて紹介している。
今回の後編記事では、残りの6本を取り上げよう。
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まず、最初のシステム

レンズは、CANON (New) FD135mm/f2.8
(中古購入価格 13,000円)(以下、NFD135/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
1980年頃に発売と思われるMF単焦点望遠レンズ。
後述の(New)FD135/2の姉妹レンズだが、こちらの方が
僅かに発売が早かったか?(1979年だったかも知れない)
(New) FDレンズは旗艦(New)F-1の発売(1981年、銀塩一眼
第9回記事)に合わせてのラインナップという訳では無く、
むしろ少し前に発売の両優先機A-1(1978年、現在未所有)
の頃からのリニューアルだ。
(New) FDレンズは、旧来のFDレンズ(スピゴット式)に
対して、脱着方式が簡略化されている。この正式な呼び名は
無い模様だが、「ワンタッチ方式」と呼ばれる事が多い。
そして旧来のFDレンズでも最初から両優先AE(シャッター優先
AEおよび絞り優先AE)に対応している複雑な構造であった。
A-1が出るまで、CANONには絞り優先AE機は殆ど無かったか
皆無だったと思うので(たいていシャッター優先であった)
ずいぶんと先進的な(先を見た)設計思想である。
(注:シャッター優先AEで「自動絞り」を実現する方が、
「絞り優先」よりも技術的に困難なので、CANONは、他社
よりも両優先機能の実現への敷居は低かったとは思われる。
ただ、この複雑な構造からか、恐らく、小型レンズは作り
難かったと思われ、銀塩時代では、CANONには「パンケーキ」
(薄型)レンズは存在していなかった)
なお、ここまで記事上で(New)と括弧書きとしているのは、
(New)FDレンズも、(New)F-1も、全てメーカーの公式名称
ではNewは付かないからだ。(これの理由は長くなるので
後述する) ただ、この状態ではユーザーや流通市場では
新旧の区別が付かない為、そちらでは適宜Newと記載する
事が一般的だ。(例:NF-1、NFDレンズ、New FDレンズ等)

さて、本レンズNFD135/2.8だが・・
まず、本ブログで記事で良く書いている、以下の話がある。
「同じメーカーの同時代(特に銀塩時代)の同じ焦点距離の
単焦点レンズで開放F値に差異のある物が併売されていた
場合、たいてい小口径版の方が良く写る。
何故ならば、大口径版は収差の補正上、設計に無理を
せざるを得ないからだ。
あるいは、もし大口径版の性能が全ての面で小口径版を
上回るならば、わざわざ小口径版を併売する必要は無く、
大口径版だけを売れば良い(近年のレンズメーカーでの例)
そう出来ないのは、実は小口径版の方が良く写るからだ」
という説明(注:これは事実だ)があるのだが・・
ただ、本NFD135/2.8と、後述のNFD135/2のケースでは
この原則論は、あてはまらなく、どちらも、ほぼ同じ描写
性能に思える。
けど、「両者が同じ」という事実に気づいたのは、実は
私では無く、知人の上級マニア氏だ。
彼は、私が「CANON New FDの135mmは良い」と言って
いた事を聞いてはいたが、F値の仕様は失念したらしい。
なので、NFD135/2.8とNFD135/2を両方買ってみて(汗)
比較したそうだ、その結果として、彼は
マ「どっちも悪く無いが、そっくり同じ写りに思える」
と言う感想を私に言った。
私も両レンズを所有していたが、そこまで気にする事も
なかったので、「本当にそうか?」と、厳密に撮り比べを
してみたが、やはりマニア氏の言う通り、両者の写りは
極めて類似している。
慌てて、さらに詳細を調べると、どちらも5群6枚と同じ
レンズ構成であり、最短撮影距離も同じ。
違うのは全体のサイズ感だけで、フィルター径において
φ52mmとφ72mmの差異がある。
まあ、同等の性能のレンズを口径比が違うだけで併売した、
という稀な例なのであろう。ただ、幸いにして、これら
NFD135mm姉妹の写りは悪く無い(だから知人のマニアに
勧めた)
大口径F2版はセミレア品で高価であるが、こちらのF2.8版
ならば中古相場は安価だ(注:上記購入価格は銀塩時代
の相場なので若干高目だ、現代では遥かに安価である)
まあ、こちら(F2.8版)の購入も十分に有りだ。
それと、あまりに厳密な評価は無理だが、大口径化で
大幅に増大する諸収差を、どのようにF2版が課題解決
しているのか?そのあたりも良くわからない(=検証
しきれていない)まあ、小口径F2.8版の方が、設計上
の優位点は、僅かに存在しているのだろうとも思う。
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では、次のシステム

レンズは、MINOLTA MC TELE ROKKOR 135mm/f2.8
(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
レンズ・マニアックス第14回記事等で紹介の、
1970年頃のMF単焦点望遠レンズ。
こちらは、まったく同一のレンズを2本所有している。
とは言え、間違えて重複購入したのでは無く、1本は
常連のカメラ中古店で買い物をした際に、「おまけ」
として付けてくれたものだ。
でも、所有レンズ数が何百本ともなると、そろそろ全て
のレンズ型番を覚えていられなくなる(汗) 今はまだ
大丈夫だが、そのうち間違って同じレンズを重複購入して
しまいそうだ・・
で、前述の「開放F値の差で、小口径の方が良く写る」
という件は、昔でも現代でも、殆ど知られていないと思う。
何故ならば、そういう風に大口径と小口径版を同時に買う
ケースは極めて稀であるからだ。
上級マニア層でしか行わない行為だと思うので、一般層は
皆が「大口径版の方が高価なので性能が高いに違い無い」
と思い込んでしまう。
まあ、レンズ市場においては「安い商品の方が高性能だ」
という事実が知れ渡ると、皆がそれらを買い、高額商品が
売れなくなって、市場における「倫理」が壊れてしまう。
だから、そうならないように、メーカー、流通、評論家等の
「市場関係者」は、皆が、口をそろえて「大口径の方が
高性能ですよ」と言い張る訳だ。
(なお、これはレンズに限らず、他の商品市場でも同様だ。
例えば、高額なイヤホンと廉価版イヤホンでの比較で、
「高い方が良い音だ」という専門家の評価記事を見かけたが、
実はその両者は所有していて(私はイヤホンマニアでもある)
私の評価では、高価な方は、箸にも棒にも掛らない音質で
あったのだ。ちなみに、私は元音響エンジニアであるから
絶対的音質評価は、評論家等には負けない自信がある。
・・というか、その専門家も音質の差異は、きっとわかって
いたのであろう。でも、「安い方が良い」という事は市場の
論理的には、口が裂けても言えなかった訳だ。その事実を
皆がわかってしまえば、誰も高額な商品を買わなくなり
市場倫理が崩壊するし、評論家も仕事を失う事であろう・・)
また、酷いケースを挙げれば、標準レンズの小口径版には、
あえて性能制限をかけたメーカーも多い。具体的には
最短撮影距離を60cm程度と、わざと長くする。
こうしておけば、大口径版での最短45cmとの差異により、
最大のケースで約2倍も被写界深度が異なる訳だから、
「ほら、こちらのF1.4版の方が背景が良くボケるでしょう?
だから、こちらは高性能で、値段が高いのですよ」
と、何もわかっていない消費者層を、高額商品の購入に
誘導できる訳だ。
でも、こうした「併売」は、近代においては減っては
きている、レンズメーカーでは、殆ど見かけないが、
カメラメーカーにおいては、レンズにもカメラにも、
まだ色々と、こういった「仕掛け」(仕様的差別化)が
存在する。
現代において、高価な大口径版レンズと小口径版が並存
している場合、たいてい、より高額な商品を売りたいが
為の仕掛けが色々とある。
また、ユーザー側においても高額な大口径版を買えば、
小口径版のユーザーに対して優越感を持つ事もあるだろうし、
逆に小口径版ユーザーは、それをコンプレックスとする事も
多いと聞く。
けど、そんな事は気にする必要は無い。
本ブログにおいては「大きく重く高価な三重苦レンズ」は、
レンズの価値評価上で、大きく減点対象となる。
だから開放F値等は気にせず、自分の機材利用目的に合って
いてコスパが良いと思うレンズを買えば良い、ただそれだけだ。

・・さて、本レンズMC135/2.8であるが、この135mm記事
の前編でMINOLTA MC TELE ROKKOR(-QD) 135mm/f3.5
を紹介しているので、その姉妹レンズである。
この時
「じゃあ、開放F値2.8版より、F3.5版の方が良く写るのか?」
という疑問が出て来るだろう。
しかしながら、このケースについては要注意である。
MC ROKKORの135mmにおいて、F2.8版は5群6枚構成であり
F3.5版は4群4枚構成である。
これらの構成からして、平面被写体をストレートに撮るならば、
画面中央部の解像力に関しては、4群4枚であっても十分だ。
だが、画面周辺での解像力維持、およびボケ質、すなわち
像面湾曲等に起因する収差の部分、等を総合的に意識する
ならば、5群6枚構成に若干のアドバンテージがある。
つまり、両者、得意な被写体と苦手な被写体が存在する訳だ。
よって、「どちらが良く写る」とは単純に言う事は出来ず、
選ぶ被写体、撮影技法、および現代においては、これらを
装着するカメラの仕様にも応じて、描写力は変化する。
結局の所、これが理由で、同じ時代に、開放F値が僅かに
半段だけ異なるレンズが併売されていたのだろう。
どちらが良い、とはあくまでユーザー側での使い方次第
なので、メーカー側でも決めれ無い事だからだ。
両者の個性は「別物」であり、本ブログで良く挙げる例では
「カレーとラーメン、どっちが美味しいか?は決めれ無い」
という事である。
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さて、3本目のシステム

レンズは、RICOH RIKENON XR 135mm/f2.8
(中古購入価格 8,000円)(以下、XR135/2.8)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
本シリーズ第36回記事等で紹介の、発売年不明、恐らくは
1970年代末頃と思われるMF単焦点望遠レンズ。
こちらは4群4枚のシンプルな構成だ。
少し前述したが、この構成には長所と短所がある。

長所としては、画面中央部での解像感が高く、かつ安価に
製造できるところだ。
現代においては、APS-C機やμ4/3機で換算画角を伸ばしつつ
周辺収差をカットして使う事で、遠距離の被写体を平面的に
撮る上では、描写力上の大きな不満は出ない事であろう。
弱点としては、ボケ質の破綻がある。特に中近距離の撮影で
背景を意識するような構図(例:主要被写体は花や人物で、
背景に意味がある=状景を入れる場合等)では、ボケ質
破綻に留意し、ボケ質破綻回避技法(匠の写真用語辞典
第13回記事参照)を用いる必要がある。
また、このレンズは大型だ、鏡筒長(レンズの全長)と
焦点距離が大差無い、これを厳密に表す光学用語は
無いと思うが、「望遠比が低い」と呼ばれる場合がある。
ただ、「望遠比」には、バックフォーカス長と焦点距離の
比を表す解釈もあって、ややこしい。
このあたり、光学の分野は技術用語が完全に統一されては
おらず、個々の専門家毎に異なる用語を用いる事が普通だ。
この事が、光学の専門的な勉強をしようとする際に、とても
問題になる。それぞれの資料や書籍などで、書いてある事や
用語の意味が全く異なるからだ・・・
まあ用語の不満の話は良い。つまり本レンズや他の4群4枚
構成の望遠レンズは、どうやら全長を短く出来ない模様だ。
なお、前編記事で登場のOM135/3.5は、とても小型化
された望遠レンズであるが、そちらは4群5枚構成と
なっている、小型化の為にレンズ構成を少しだけ複雑化
したのだろうと推察される。
長所短所は、そんなものだ。ボケ質破綻回避が出来るので
あれば、シンプルで安価な廉価版135mmでも、たいてい
の被写体に対応できる筈だ。
こういう事もまた、あまり高価なレンズを買っても意味が
無いとか、コスパが悪い、とか、繰り返して述べている
事に繋がっていく。
つまり、レンズの特性を理解し、その弱点を回避しながら
使うのであれば、究極的には、どのレンズでも使える事に
なる。これを「弘法、筆を選ばず方式」と、私は呼んでは
いるが、勿論、そう簡単な事では無いとは思う。
だけど、それを目指しながら、安価なレンズで日々スキル
アップに精進し続ける事と・・
はたまた、誰が撮っても普通に良く写ってしまう高額な
高性能レンズで撮り続ける事と比べれば、長い目で見れば、
撮影スキルの向上については、必ず大差が付く事であろう。
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さて、4本目の135mmシステム

レンズは、YASHICA ML 135mm/f2.8
(中古購入価格 12,000円)(以下、ML135/2.8)
カメラは、CANON EOS 7D (APS-C機)
同スペックのレンズで、「M42版」も所有しているが、
今回は、こちら(Y/C、ヤシコンマウント版)を紹介する。
恐らくは1970年代末頃発売のMF単焦点望遠レンズ。
ここで「ヤシカ」の歴史を説明しだすと、際限なく文字数を
消費してしまう、それにカメラファン層が知っても、あまり
気持ちの良い歴史では無い部分もある。
まあ簡単には、銀塩一眼レフ第18回記事「YASHICA FX-3
Super 2000」や、カメラの変遷第10回CONTAX/YASHICA
編を参考にして貰えれば、だいたいはわかると思う。

本ML135/2.8だが、前期型、後期型が存在する模様だが、
どこで区別するのかは良くわからない(汗)
まあ、そういう事には、あまりこだわらず、手元にある
レンズを上手く使いこなそうとする事が最優先では
なかろうか? カメラやレンズは写真を撮る為の道具であり
投機や収集や資料では無い。そして発売後40年以上も
経っても、そのレンズを使いたいと言うユーザーも、ここに
居る訳だ。私にとっては、本レンズは「現役撮影機材」で
あって、決して研究室や博物館行きのシロモノでは無い。
さて、本レンズは、さほど悪く無い望遠レンズだ。
とは言え、あくまで同時代の他社レンズと比較しての
相対的な話である。まあ、そういう意味でも、今回の
135mmオールド単焦点前後編記事では、同時代のレンズが
ズラリと並んでいるので、比較による相対評価はやりやすい
面があり、こういう事を繰り返していけば、直接的な比較の
対象が無い場合でも、性能または価値判断が出来るように
なっていく、それを本ブログでは「絶対的価値判断」とか
「価値判断スケールが出来てくる」とか呼んでいる訳だ。
これと全く逆なケースとして、怖いのは「思い込み」である。
例えば、本レンズや初期のYASHICAレンズは「富岡光学」
というメーカーで作られていた。ところが、このメーカー、
マニア層に大変「ウケ」が良く、「富岡光学」と聞くだけで
どのレンズでも大変良く写る、と思い込んでしまうほどの
信頼度があったのだ。ある意味「神格化」されたメーカー
でもあろう。
まあ、この時代、1970年代後半には、YASHICAが
「CONTAX」のブランドを入手し、カール・ツァイス銘の
国産レンズの製造が始まった事も理由の1つである。
つまり「国産ツァイスは富岡光学製」という話がマニア層に、
またたくまに広まってしまい、富岡光学に対するマニア層の
ブランドイメージは、「カール・ツァイス」と同等にまで
急上昇した訳だ。
この事は、そこから何十年たっても、続くマニア層にも
伝えられ、そして、もはや富岡光学がレンズを作っては
いなくなってからも・・ である。
でも、かく言う私も、その噂には乗ってしまった口であり、
銀塩中古カメラブームの際には、富岡光学製と思われる
ヤシカ銘レンズを多数買ってしまっている(汗)
けど、中古入手性が低いので、50mm標準レンズばかりが、
微妙なF値違いで、5本も6本も揃ってしまった次第だ。
(いずれ撮り比べ記事でも書いてみようか・・)
ともかく、たとえ富岡光学製であっても、ごく普通のレンズ
である事は良くわかった。けど、その理解の為には、例えば、
標準レンズだけでも何十本も買わないと分からなかった。
だから、1本や2本の珍しい、又は高価なレンズを買った
だけで「このレンズは凄いのだ」などと「思い込む」事は
一番危険性の高い評価手法だ。何が危険か?、と言えば、
もうその思い込みからは、簡単には抜け出せず、ずっと
偏った価値感覚のままで、その後のカメラライフを過ごす
羽目になってしまうからだ。
まあ、そのまま一生、思い込みを続けていられるならば
それはそれで幸せな事かも知れないが、どこかで真実を
知ってしまうと、きっと大きな落胆と、時間を無駄にして
来た事への後悔の念が起きるであろう。
そうならないようにするには、日々、知的好奇心を持って
研究を続ける事である。
思い込みを消す等は簡単な話であり、「メーカー党」で
あったならば、逆に多社のレンズやカメラを一通り揃えて
厳密に比較してみればよい、自分が「このメーカーの
カメラやレンズは最高だ」と思い込んでいる状態が、
簡単に崩れていく事が良くわかると思う。
(ただし、撮影スキルが低いと、使い慣れた機材で無いと
撮れずに「他社製の機材は使い難い」等の、偏った
評価になってしまう事も、非常によくある話だ)
前述の「大口径vs小口径」の話も同様である、お金を貯めて
両方買ってしまい、厳密に比較してみればよい、そうすれば
値段の差が必ずしも性能の差に繋がらない事は、容易に
理解できる筈である。まあ結局、誰も、そういう事をしない
から、思い込みは、そう簡単には消えない訳だ・・
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では、5本目の135mmシステム、ここからは大口径だ。

レンズは、CANON (New) FD135mm/f2
(中古購入価格 43,000円)(以下、NFD135/2)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
本シリーズ第46回記事等で紹介の、
1980年発売のMF単焦点大口径望遠レンズ。
前述の「(New)FD135/2.8と同じような写り、同様の特徴」
とうのは、知人の上級マニア氏の意見ではあるが、私も
そこは同意しよう。
これは世には知られていない事かもしれないが、この両方の
レンズを同時に所有し、かつ、両者をガンガンに撮り巻くって
いる人など、そう沢山は居ないはずだ、だから「世の中には
知られにくい真実」というのも確かに存在はする。

さて、本NFD135/2は、NFD135/2.8と違う点は、
「単に開放F値が1段明るいだけ、その分、大きく重く高価
になった」・・と言ってしまうと、身も蓋も無い(汗)
幸いな事に、個人的には、このNFD135/2(F2.8版も)の
描写傾向は嫌いでは無い。
いやむしろ、本シリーズ第46回記事は「CANON New FD F2
レンズ」編であったが、そこで紹介した5本のF2級大口径
レンズの内では、本NFD135/2が最も個人評価点が高い
レンズであったのだ。
CANON同士で比べても意味は無いが、全所有レンズ全体で
見た場合でも、割と上位に入るレンズだとは思う。
ただしコスパの悪さが災いし、ミラーレス・マニアックス
およびハイ・コスパレンズの「名玉編」では、どちらにも
ノミネートやランクインする事は無かった。

さて、ここで、(New)FDの、「NEW」は公式名称では無い、
という話の理由だが・・
1971年、CANON初の旗艦「F-1」(銀塩一眼レフ第1回
記事参照)の新製品発表時の話だ。
同時期に発表された、NIKONの二代目の旗艦「F2」(銀塩
一眼第2回記事参照)が、F→F2と型番が変わった事に対し、
当時のCANONは、有名な2つの宣言を行った。
1)今後10年間は、F-1のモデルチェンジをしない。
2)この機種が存在する限り、機種名はF-1で通す。
まあ、NIKONへの強い対抗意識があった事だろう。
想像だが、もしかすると、記者会見で記者から
「CANONさんの次の機種は「F-2」になるのですか?」
という質問があって、それにムッとして、上記の宣言が
あったのかもしれない、まあ記者会見の場ではなかったと
しても、当時の誰もがCANONに同じ質問をした事だろうから、
上記の「宣言」も、わからない話では無い。
しかし上記の「宣言」は、同時に以下の2つの問題点を
抱えてしまった。
A)10年間、モデルチェンジをする事が出来ない。
1976年に”フィルム巻上げ角”を変更するなどの
小改良を施した「F-1」が発売されている。
ただ、これも公式名称ではF-1なので、市場やマニア層
では、F-1改、F-1後期、F-1N、等と呼んで区別している。
B)新機種と旧機種の型番が同じになってしまう。
宣言1)通りに10年後の1981年に発売された 後継機の
公式名称は「F-1」である(銀塩一眼第9回記事参照)
ただ、これもまた新旧機種の区別が付かない。
よって市場・流通・ユーザー等の間では、この機種を
New F-1、NF-1、等と呼んで旧機種と明確に区分した。
それと、この宣言2)があったから、1970年代末の
FD→(New)FDレンズへのモデルチェンジの際にも、
新型レンズをNewと書く事が出来なくなってしまった。
でも勿論、市場ではNew FDやNFDと呼んで区別しているし
恐らくは取扱説明書や梱包箱、伝票等にもNewの文字は
書かれていたか、あるいはハンコ等が押されていたで
あろう、さもないと新旧商品の区別が出来ず「現場」の
作業に多大な支障を来たしてしまう。
まあ、結局、多社への対抗心で、現場や消費者の事を
考えない宣言をしてしまった、という事となる。
さて、余談が長くなった、「New」の名称が非公式である、
というのは、上記の理由である。勿論、現代においては、
どうでも良い事だ。市場やユーザー層は、その宣言から
約50年間も、ちゃんと新旧の区別をつけて個々の機種を
識別している訳だし、近年でのCANONの公式Webでも
「New」の文字が記載されている。(注:やはり「New」
とは書きにくい点もあるのか?「ニュー」と、カタカナ
表記を付け足したような雰囲気の記載もある)

では、本レンズNFD135/2の話に戻る。
まあ、やはり弱点は「コスパ」と「三重苦」であろう。
比較的良く写る大口径望遠である事はわかってはいても
やや大きい(とは言え、後述のNIKON Ai135/2よりも
だいぶ小さく軽い)故に、なかなか、常時「外に持ち出し
たい」とも思い難いレンズとなってしまう。
描写表現力やマニアック度の評価点は高いレンズだが、
コスパ、エンジョイ度、必要度の評価が、いずれも
少しづつ減点。結果、じわじわと全体評価点も下がって
しまう訳である。
まあそれでも、世が世なら、すなわち、銀塩時代に、
(New)F-1と組み合わせて使うならば非常に格好良いし
マニアック度も高いし、写りも良いし、それなりに
実用的で楽しめるシステムとはなったのだが・・
現代において、小型のミラーレス機に装着するのは、
いかんせんアンバランスだ(注:一眼レフには装着不可)
現代において、用途上の理由で、大口径135mmを持ち出す
必要があるのならばSONY ZA135/1.8やSIGMA Art135/1.8
といった業務用超高性能レンズを、一眼レフで使う事が
本筋となるだろう。本レンズは現代では、あくまで趣味用途
にしか使えない、そして、趣味で使うには重厚長大なのだ。
まあ、なんとも中途半端ではある、実用上では、写りが
似たり寄ったりの(New)FD135/2.8で十分だ、その方が
コスパとハンドリング性能が断然良い訳である。
けど、趣味は、あくまで個人的な感覚値での好みもある
事だろう、特に本NFD135/2は、マニアック度満載なので
個人的には嫌いなレンズでは無い。
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では、今回ラストのシステム

レンズは、NIKON Ai NIKKOR 135mm/f2
(中古購入価格 47,000円)(以下、Ai135/2)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
ハイコスパ名玉編第3回記事等で紹介の、
1970年代~1980年代のMF単焦点大口径望遠レンズ。
4群6枚構成、この時代のNIKONレンズ(Ai NIKKOR)と
しては珍しく、ボケ質に配慮したレンズである。
珍しく、とは、この時代以前のNIKKORは、解像力優先の
設計で、ボケ質が固い、またはボケ質破綻が起こりやすい
レンズが殆ど、という状況であった(=報道や学術の分野
をターゲットとしていたからだ)のが、本レンズや
Ai85/1.4(S) 、Ai(ED)180/2.8等は、ちょっとそれとは
異なる設計コンセプトであり、解像感とボケ質を上手く
バランスさせた設計となっている、これは個人的には
好みであり、そのAi85/1.4,ED180/2.8も愛用している。
恐らく、Ai105/1.8というレンズも同様のコンセプトと
類推できるのだが、そのレンズはセミレア品で中古相場
も高額であり、入手の機会に恵まれなかった。
まあ、Ai105/2.5という、これも好みのレンズを所有
していたからF1.8版が買いにくかった、という理由も
ある。(追記:Ai105/2.5は、譲渡により未所有
であったが、近年に再購入している。
また、Ai105/1.8も、本記事執筆後に購入済みだ。
別途「NIKKOR 105mm特集」等の記事で紹介しよう)

と言う事で、このあたりの「NIKKORらしくない」(笑)
レンズ群は、基本的には収集・実用の対象とするべき
レンズ群なのだが、残念ながら、中古相場が高額すぎる。
「団塊の世代」(1940年代後半生まれ)が、丁度30歳
前後の時代に発売されたレンズ群であり、家庭を築いたり
高度成長期で、興味があっただろうレンズ群だが、当時に
おいても販売数が少なく、結果的に高価すぎるレンズで
あったと思う。
若い時に憧れたレンズ(または他の商品)においては、
後年に生活に余裕が出来てくると、まあ誰でも欲しくなる
事であろう。銀塩時代が終わり、デジタル時代となった
2000年代で、団塊世代は60歳前後。2010年代では
定年して悠々自適だ、だから現代においても、この手の
「高級NIKKOR」(注:開放F値が明るいから、ビギナー層
では、高性能レンズだと勘違いしている)は、人気となる。
人気があって、かつ流通数が少ないから、これらのレンズ
群は、高額な中古相場となってしまう訳だ。
下手をすると、この時代の、さらにレアなレンズでは、
投機対象のプレミアム相場となり、数十万円という
超高額相場となる。それでも買うユーザーが居るのは、
実用上で欲しいからではなく、殆どのケースで、
「後年にもっと高く売れるかも知れない」という投機的な
観点である。
まあ、そこ(投機)まで行かずとしても、本レンズを始め、
上記のNIKKORレンズ群を、他のカメラマンが屋外で実用的に
使用しているケースは、殆ど(全く)見た事が無い。
運よく買えたとしても、勿体無いから実用にしてしまう事
は無く、家の中に飾って磨いているだけなのであろう。
でも、それこそ勿体無い話だ。本Ai135/2は描写力上で
解像感とボケ質をバランスさせた優秀な設計のレンズだ、
オールドのNIKKORにも、現代のNIKKORにも無い個性が
存在する。

最大の課題としては、860gと非常に重いレンズである事だ、
MFである事もあいまって、使用する母艦は、ピントリング
位置が構えの重心と一致するもの、かつ自身の手指において
使い易いバランスのものを選ばないとならない。
そうしても、長時間の手持ち撮影では左右の手指の疲労の
誘発が激しく、私が言うところの「修行レンズ」である。
「レンズ・マニアックス第11回、第12回記事」では
「使いこなしが難しいレンズ」のワーストランキングを
行ったが、本Ai135/2は、そのランキングには入っては
いなかったものの、多分、そのちょっと下位の十何位に
入ってくる難関レンズであろう事は間違いない。
なお、前述の(New)FD135/2は、本Ai135/2と同じ
スペックでありながらも、およそ200gも軽い。

個人的には好みのレンズではあるが、大きく重く高価な
三重苦レンズであるが故に、「エンジョイ度」が低下して
しまうのが難点のレンズとなっている。
現代の中古相場は高目であり、私の購入時点(1990年代)
の47,000円よりも、はるかに高価ではあろう。
だけど、コスパの面から考えると、これ以上の価格で
購入する必然性は低い。もし10万円近くも出すので
あれば、例えばSIGMA Art 135/1.8等であれば、描写力
という観点では、はるかに優れる近代レンズが買える訳だ。
ただまあ、Art135/1.8は、本レンズよりさらに重量級の
三重苦レンズではあるが・・
まあでも、いろいろと悩んでレンズを買うのも、きっと
楽しい事であろう。
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では、今回の「135mmオールド単焦点(後編)」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。