さて、「最強レンズ選手権」の最終(?)リーグの、
85mm級レンズのカテゴリーの対戦記事を始めよう。
85mm(級)レンズの所有本数は多いので、例によって、
上位ランカーとしてノミネートされたレンズ群で
「B決勝戦」(=下位決勝戦)および「決勝戦」を行う
事としよう。
(このリーグ戦に進出出来なかった85mm級レンズも、
機会あれば、いずれ他の記事でまとめて紹介する)
今回の記事では、「B決勝戦」にエントリーされる
7本の85mm級レンズを紹介(対戦)して行こう。
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まずは最初の85mmレンズ。

レンズ名:NIKON Ai AF NIKKOR 85mm/f1.8D
レンズ購入価格:23,000円(中古)(以下、AiAF85/1.8)
使用カメラ:NIKON D2H (APS-C機)
1994年発売のAF(小口径)中望遠レンズ。
D型(距離エンコーダー)対応品である。

開放F1.8で、「小口径」かどうか? は定義が難しい。
この焦点距離(85mm)のレンズには、開放F1.2~F1.4
級のレンズが極めて多く存在し、それらを「大口径」と
呼ぶならば、F1.8~F2.8級は、間違いなく「小口径」に
分類されるのだが、あくまでこれは相対的な話である。
世間一般に、「開放F値がいくつ以下ならば大口径だ」
という定義は存在せず、上記のような、その類似仕様の
中での口径比(開放F値)を元に、大口径か小口径かを
語っているに過ぎない。
良く用いられる用語として、「開放F2.8通しズーム」
(いわゆる大三元ズーム)を「大口径ズーム」と
呼ぶケースは多いのだが・・
それは、2000年代頃まではズームレンズでF2.8未満の
ものは存在しなかったので、当時の最大の口径という
意味から「大口径ズーム」と呼ばれていたのだろうが、
2010年代頃からは、開放F2、あるいは、開放F1.8
通しのズーム(ただし、APS-C機以下用)が発売されて
いる事、あるいはコンパクト機では、ズーム全域では
無いものの、F1.4から始まるズームレンズを搭載している
機種もある為、開放F2.8(通し)ズームを「大口径」と
呼ぶ事は実情にそぐわなくなってしまっていた。
しかし、「大三元ズーム」は、初級中級層にとって
憧れの高級レンズである、よって、それらを欲しい人達や
所有している人は、それを「大口径」と呼び、他のレンズ
(例えば、F4通しの「小三元ズーム」)とは差別化
しようとした、という状況であった。
まあ、この話の根幹には、初級中級層の「思い込み」で、
「開放F値の小さい(明るい)レンズの方が写りが良い」
「値段の高いレンズの方が、必ず安価なものより良く写る」
という理由(思想)があるのだが・・
これは、必ずしもそうとは言い切れない事は、本ブログの
読者であれば、とても良くわかっている事であろう。
レンズの価値は「コスパ」で決まる。
高価であっても、あるいは開放F値が明るくても、たいした
写りでは無いレンズは、世の中にいくらでもあるし、逆に
開放F値を暗く抑えて、「諸収差」の補正を完璧に近い程に
行ったコンセプトによる設計の優秀なレンズも存在する。
また、エントリーレンズ等(=低価格の「お試し版」
レンズの事。近年、一部では「シンデレラレンズ」と
呼ばれる事もある。「お試し版」戦略を、化粧品等の
事例で良く知っている女性ユーザー層に対して、高額
商品の購入へ誘導される懸念を払拭する為の呼称か?
だが、他にある「撒き餌レンズ」では、失礼な表現な
為、本ブログでは、非推奨の呼称としている)・・は、
価格を抑えても性能等には妥協せず、ユーザー層から
の好感を得て、より高額な機材の購入に誘導する、
(あるいは、メーカー党への「囲い込み」を実施する)
といった市場戦略の商品も存在する。
まあつまり、だからレンズの価格と性能は比例しない。
あるいは、銀塩時代から現代に至るまで、同一メーカーの
同一時代の同焦点距離のラインナップにおいて、開放F値
明るい(大口径)版と、開放F値が暗い(小口径)版が
併売されている場合、小口径版は、廉価版、というケース
も勿論あるのだが、実際には、小口径版の方が描写力が
優れているので、それの生産を辞められない(例:銀塩
MF時代の50mm標準レンズ)や、あるいは、大口径と小口径
は、そもそも描写傾向がまるで異なり、ユーザー個々での
レンズの用途・使用目的、とか単に志向性(趣向)に
より、レンズの設計コンセプトに差異を持たせていた
ケースも存在する(例:OLYMPUS銀塩OM ZUIKOレンズ群)
結局の所、大口径や価格の高いレンズが「優秀なレンズ」
という思い込みは、銀塩時代から現代に至るまで、それらを
入手したオーナーが、それを「ステータス」とする、つまり
誇りに思う、自慢する、はたまた安価なレンズを購入した
人達を下に見る、という理由(=人間的な本能でもあろう)
からの思い込みであって、その事(高価なものが高性能)は
常に事実であるとは言えない訳だ。
まあ、メーカーとしても、大口径版と小口径版を並行して
ラインナップしているのだから、そこになんらかの理由や
思惑は存在している。大口径版の方が全ての点で優れて
いるならば、小口径版をわざわざお金をかけて開発して
併売する訳が無いではないか。(参考:近代における、
SIGMA Art Lineでは、高性能な大口径版に統一されていて
そこに小口径版は併売されていない)
さて、余談が長くなったが、ここは非常に重要な事だ。
全てのユーザー層は、このレンズ市場の仕組みを理解する
必要がある。

で、やっと本レンズAiAF85/1.8の話となるが、
これは小口径版である。これの発売時期においては、
AiAF85/1.4の大口径版が併売されていた。
私は銀塩時代にAiAF85/1.4を先に入手して使っていたが、
「ピント歩留まり(成功率)が悪い」「なんだか描写傾向
が気に入らない」という理由で、それを譲渡し、小口径
AiAF85/1.8にダウングレード購入をしていた。
だが、こちらの小口径版は、ピント歩留まりも、描写傾向
もピタリと個人的なニーズに嵌り、そこから20年以上
もの間、趣味撮影はもとより、業務上での人物撮影等にも
大いに活躍したレンズとなっている。
まあ、その期間(本レンズの発売頃の1990年代~
デジタル時代に入った2000年代)を通じて、85mm単焦点
レンズの設計が技術的にあまり改善されていなかった事も
重要な理由であり、つまり、各社新設計の85mmレンズが
殆ど世の中に出て来なかった訳だ。そうであれば発売時点
は古くとも、ずっと最新設計の85mmでありつづけた事と
なる。まあ後年の製品には超音波モーターや手ブレ補正は
搭載されたかも知れないが、そういうのは光学系や描写力
の改善とは無縁な話であり、個人的にはまったく付加価値
(魅力)とは感じられなかった。
現代においては、2010年代以降に各社からコンピューター
設計で、新技術(非球面レンズや異常低分散ガラス等)を
利用した全くの新設計の85mm単焦点レンズが、やっと
何本か発売されてきている。
そこで私も、ようやく20数年ぶりに、85mm単焦点を
リニューアルした次第だ。勿論完全新設計の85mm単焦点
は、旧世代のレンズより確実に描写力は向上している為、
本レンズは「オールド85mm」として、現在は趣味撮影等で、
ノスタルジックな気分に浸る為のレンズとなった。
(だから、今回も、2003年発売と古い機体のNIKON D2H
で本レンズを使用している)
総括だが、もはやオールドレンズと言える本AiAF85/1.8
ではあるが、その分、中古相場もかなり安価となっている。
2010年代からの新鋭85mmは、まだいずれも高価な為、
実用趣味的、または消耗用途で本レンズを使う、という
選択肢は十分に「有り」だ。
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では、次の85mm(級)レンズ。

レンズ名:smc PENTAX-FA 77mm/f1.8 Limited
レンズ購入価格:74,000円(新品)(以下、FA77/1.8)
使用カメラ:PENTAX KP (APS-C機)
2000年発売の変則焦点距離AF中望遠レンズ。
本ブログでの通称は「ナナナナ」だ。
2000年代~2010年代前半までの、「最強・最高傑作
レンズ」であり、本ブログ過去のレンズランキング記事
「ミラーレス・マニアックス名玉編」では、第1位の
栄冠に輝いている。
本レンズの凄さは、本ブログ開設当初の15年以上も
前から、何度も何度も様々な記事中で解説していて、
「ナナナナを買わずして、どのレンズを買うのだ?」
という問いかけは、本レンズの紹介時の「定番」であった。

ただまあ、すでに発売後20年を超えたセミ・オールド
レンズでもある。近年においては、前述の85mm級の
新設計レンズも色々と発売されている為、さしもの
2000年代名玉も、純粋な描写力的な観点では、それらの
新鋭85mm級レンズには、残念ながら敵わない。
本レンズの描写傾向は、他のレンズではあまり見られない
独特のものがあり、発売時点のPENTAXのレンズ・カタログ
では、「空気感」と、それを表現していた。
しかし、「空気感」では、あまりに曖昧な用語で意味不明
である為、その後の時代、私は、その「空気感」とは、
何を示すのかを、ずっと探っている。(注:まだ回答には
辿りついていない)
近年、独自の写真用語だが「ボケ遷移」という概念を良く
考えるようになってきている。これはレンズの描写が
被写体におけるピント面から、ボケ(アウトフォーカス)
に至るまでの変化の度合い、という概念であるのだが、
「本FA77/1.8は、ボケ遷移に優れているのでは?」
という要素(仮説)を、昔から本ブログでは良く述べて
いたと思う。
ごく近年、「ボケ遷移」を解析するソフトウェアを
趣味的に完全自力(独自)開発する事を行った。

上画面が、ボケ遷移解析ソフト「Trans Focus」である。
これを用いて、様々なレンズで撮った写真を解析すると、
現状では、「アポダイゼーション光学エレメント搭載」
型のレンス(STF/APD)や、NIKON の「3次元的Hi-Fi」
レンズ(例:AF-S NIKKOR 58mm/F1.4G)とか、
本FA77/1.8は、この「ボケ遷移」に優れ、他のレンズ
は、そうでも無い事がわかってきている。
「現状では」と、書いたのは、デジタルにおける「画像処理
工学」は、まだ発展途上の技術分野であるし、上のソフトも
「画面が出来たから、それで完成」という訳では決して無い。
このソフトは最初期バージョンであり、今後、長い時間を
掛けて画像処理(認識)アルゴリズムの改良を続けていき、
より解析精度を高く、あるいは別の解析機能を追加して、
ソフトの完成度を高めていかなくてはならないだろう。
恐らくは、10年後くらいには、AI(人工知能)等を搭載
した解析ソフトになっている可能性も高いが、現状では
そこまでのレベルには至っていない。
ただ、ユーザー側から出来るレンズ評価も、このあたりが
一応は最先端であろう。例えば、四角い被写体を撮って、
「ああ、歪曲収差が出ていますね、ダメなレンズです」
などという表面的な評価手法では、メーカー側の設計技術の
進歩(コンピューター光学設計はもとより、たとえばNIKON
の3次元Hi-Fi設計技術等)とは、レベルが違いすぎて
ユーザー側(評価側)が、ついていけていない状況なのだ。
だから、新鋭レンズの評価では、「絞り開放での解像感」
等の古典的なユーザー評価は、もう通用しない。
それでは、例えば、本FA77/1.8や、NIKON AF-S58/1.4
等の「ボケ遷移」に配慮したようなレンズの性能は、
まったく計り知る(評価する)事が出来ない訳だ。

本レンズの総括であるが、セミ・オールドレンズであり、
そして、それを理由として、本85mm選手権では、他の
新鋭85mmレンズに道を譲る為に、あえて「B決勝進出」
としてはいるのだが・・・
このFA77/1.8は、2000年代の最高傑作レンズである
事は確かだと思う。
マニア層であれば、必携のレンズとも言えよう。
(追記:2021年に、およそ21年ぶりの後継レンズ
が発売される。smc→HDコーティングへの変更と
円形絞り機構の組み込みが改善点だが、どうやら
光学系の変更は無い模様だ。まあつまり、発売後
20年を超えても、光学系の改良の必要が無い位の
高い完成度を持っている、という事なのだろう・・)
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では、3本目の(換算)85mm級レンズ。

レンズ名:FUJIFILM FUJINON XF 56mm/f1.2 R APD
レンズ購入価格:112,000円(中古)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1(APS-C機)
2014年に発売された史上2本目となるアポダイゼーション
光学エレメント搭載型、そして史上初のAF搭載APDでもある
単焦点AF標準(中望遠画角)レンズ。
MINOLTA STF135/2.8[T4.5](1998年)より、実に
16年の時を隔てて2本目が発売された、アポダイゼーション
(以下、APD(またはSTF))レンズである。

過去記事で何度も紹介しているので、今回は詳細は、
ばっさりと割愛する。
APD/STFについては、例えば特殊レンズ超マニアックス
第0回記事「アポダイゼーション・グランドスラム」
に詳しい。
本レンズは、APS-C型センサー機(しか無い)FUJIFILM
Xマウントの機専用レンズである為、換算画角は、56mm
x1.5倍で、84mm/F1.2[T1.7]相当のレンズとなるので
本85mm選手権にノミネートされているのだが・・
最強50mm選手権にも出場している為、今回はゲスト
として「B決勝」への参戦となった。
長所としては、さすがにAPD(STF)である、ボケ質が
大変優れていて、他のAPD/STFと並んで全レンズ中、
最強クラス(TOP10には間違いなく入る)である。
弱点としては、まず、これは母艦となるXマウント機
の問題でもあるが、AF速度・AF精度・MF性能に劣る事、
この為、本レンズは85mm相当の換算画角でありながら、
業務上等での重要な人物撮影には、歩留まりの点で使用
できず、趣味撮影オンリーのレンズとなってしまう事だ。
さらには、APD搭載でありながら、絞り開放でやや甘く、
ボケ質破綻の僅かな発生と、「完璧な描写力である」
とは言い難い点がある。まあ、それでも個人評価DBでの
「描写表現力」は5点満点で4.5点と超優秀ではあるが、
APDであれば、5点満点を期待してしまう。
この結果、高価なレンズである事とあいまって、
「コスパ評価」が、かなり落ちてしまう事が課題だ。
「FUJIFILM X機ユーザーであれば必携のレンズだ」、とも
ちょっと言い難い状況であり、まあ個人評価点は高いとは
言えるが、なんとも微妙な立ち位置のレンズである。
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では、4本目の85mm(級)レンズ。

レンズ名:OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm/f1.8
レンズ購入価格:59,000円(中古)(以下、ED75/1.8)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)
2012年に発売されたμ4/3機専用中望遠AF単焦点レンズ。

高い描写力を誇るレンズであるが、ピントリングが
「無限回転式」であり、精密・迅速なMF撮影に向かない、
という弱点を持つ。この為、像面位相差AF等の高性能
母艦(例:E-M1系)を用いるのがベターなのであるが、
今回は「限界性能テスト」の意味も兼ねて、像面位相差
AF非搭載のE-M5Ⅱ(Limited)で使用する。
「限界性能テスト」とは、あえて仕様的に無理のある
システム(カメラとレンズの組み合わせ)を選んでみて、
それが実用的か否か? を判断するテスト(試用)だ。
まあ、できることならば、仕様的に無理のあるシステム
でも使えるならば、それに越した事は無い、汎用性が
高まるからだ。
そして、勿論、たった1度きりの試用で、その良否が
判定できる筈も無い、何度も何度も異なる被写体状況
で、何年も何千枚も何万枚も撮影しながら、試用を
重ねて、やっとそれが少しづつわかってくる。
だから今回の記事では、「E-M5ⅡとED75/1.8の
組み合わせが実用範囲か否か?」という結論は出さずに
おこう、まだこのシステムでは、数千枚という少ない
レベルでしか撮影していない。
本レンズの最大の課題は「用途解発の難しさ」であろう。
つまり「何に使うか? 何を撮るレンズなのか?」という
事である。
高い描写力、明るい開放F値、150mm換算の焦点距離、
という要素から考えると、主たる使用目的は2つ、
1)ライブ等、暗所のステージ系の中距離人物撮影。
2)植物園等、やや離れた草花、昆虫等の自然観察撮影。
・・のいずれかであろう。オリンパスでは本レンズを
「ポートレートレンズ」と称してはいるが、換算150mm
のレンズでは、人物撮影には正直使い難い。
その目的であれば、M.ZUIKO 45mm/F1.8といった、
小型・高性能レンズ(換算90mm)の方がずっと向いて
いると個人的には思う。
事実、オリンパスWEBでの本レンズの実写サンプル
(作例)は、中距離での乳児の写真の他は、自然観察
写真ばかりであり、その乳児の写真も、以前では載って
いなかったように記憶しており、「ポートレート用と
称するからには、人物写真も必要」とった理由で、
後から追加されたものかも知れない。
それと、自然観察撮影だが、最短撮影距離が、84cm
と「焦点距離10倍則」に満たない弱点を持ち、おまけに
MF操作が無限回転式ピントリング仕様で壊滅的に劣る為、
あまり精密な自然観察撮影には向いていない。

まあよって、本レンズの弱点は「用途解発の難しさ」
である。ここがユーザーにとって、最大のネックと
なるであろう。ただし、もしピッタリの用途、例えば
「子供の学芸会での舞台の撮影」とか、そういうもの
があるならば、本レンズの「描写表現力」は、ただもの
では無い(評価点5点満点中、4.5点)ので、
見事にハマる、バッチリのシステムとなるであろう。
ちなみに、クラシカルなデザインも個人的には好みだ、
まあだから、あえて今回は像面位相差AF非搭載の
クラシカルな、OM-D E-M5 MarkⅡ Limited
(注:銀塩機「OM-3Ti」に極めて類似したデザイン)
を母艦としている理由もある。「限界性能テスト」
と理由(弁明)は言いつつも、システム構築は個人的な
「好み」の趣味的な要素も、実はある訳だ・・
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さて、次の85mm(級)レンズ。

レンズ名:Voigtlander APO-LANTHAR 90mm/f3.5 SL
Close Focus(注:変母音記載省略)
レンズ購入価格:47,000円(新品)
使用カメラ:FUJIFILM X-T10(APS-C機)
2000年代初頭に発売された、フルサイズ対応MF単焦点
小口径中望遠レンズ。
前述したが「小口径(開放F3.5)である事は、必ずしも
廉価版・低描写力という事には繋がらない」という
事実を地で行く、超高性能(高描写力)レンズである。

なにせ、個人DBでの本レンズの描写表現力評価点は、
5点満点だ。この点数に到達するレンズは、所有全レンズ
約400本中、20本に満たず、「上位5%」の最優秀
レベルであるし、その「描写表現力」の評価点は、
実は「描写力」と「表現力」の複合評価であるから、
例えば、描写力が劣る「超大口径レンズ」(例:開放
F0.95)であっても、その「表現力」は非常に高いから、
これも5点満点にしているケースもある。
だが、本レンズの場合では、「描写力」も「表現力」も
高レベルであって、こういう類のレンズは、所有レンズ
中、十数本しか存在しない。
ただまあ、本レンズも発売20年のオールドレンズである。
初期ロットだけで生産を辞めてしまう事が多いコシナ
(フォクトレンダー)製品の中では、珍しく後継型
まで発売されていたレンズではあるが、それももう10年
以上も前の話だ。
元々、販売数がさほど多く無いマニアックなレンズの為、
中古市場に流れてくる数も少なく、セミレアレンズと
なってしまっている。仮にプレミアム価格化している
場合は、無理をしてまで購入をする必要は無いレンズだ。
まあ、その為に、本ブログのレンズ紹介記事では、必ず
私の購入時点での価格を記載している、これは別に、
高く買ったり安く買ったりする事を自慢している訳では
無く、この入手価格は、私が個人的に「この値段で
あれば購入しても良い(=コスパが許容範囲である)」
と考えた価格である。
だから、記載されている入手価格よりも高価すぎる相場
となっている場合には、ユーザー個々において、
「その価格でも、入手する価値(意味)があるか否か?」
を必ず考察して、検討する必要性があるという話だ。

なお、生産中止になった物を後になって欲しがる側にも
多大な問題点がある。本レンズは後継型も含め、長期に
渡って販売されていたものだ、何故、それを販売期間中に
購入していなかっただろうか?
もしかすると「開放F3.5だから、廉価版レンズ、良く
写る筈が無い」という思い込みが、ユーザー側にあった
のではなかろうか? まあだから、「必ずしも、その
思い込みは正しく無い」と、本ブログでは何度も何度も
繰り返し説明している訳だ。
また「世間の評価が無い(ネット等でも見つからない)」
というのも、ビギナー層が本レンズのような製品に着目
しない(できない)原因となってしまっている。
まあ、それについては、本レンズのようなマニアックで
あまり高価でも無いレンズは、販売側、流通側、そうした
商売に係わる要素を持つ分野では、評価しないのだ。
このレンズの評価を、評論家を雇って、お金や時間を
かけて行うくらいならば、より利益が出て、しかも
ビギナー層に人気のある「大三元レンズ」の評価記事を
書いた方が効率的だ。記事のアクセス数や雑誌の販売数が
上がるし、販売店側でも、高価なレンズは、売り上げ高も
利益も大きいから助かる訳だ。
まあつまり、こういった市場の仕組みがわかっていない
ビギナー層においては、残念ながら真に優秀なレンズを
見逃してしまう訳である。ただまあ「マニア道」的に
見れば、それば残念な話ではあるが、レンズ(カメラ)
市場全体を見れば、初級中級層が、せっせと高価な機材を
買ってくれる事で、近代において縮退したレンズ市場を
支えてくれている訳だから、その点では何も問題は無い。
難しいテーマではあるが、あくまでこれはユーザー次第
であろう、だから個々のユーザーは、個別に確固たる
機材購入倫理(ポリシー)や、絶対的価値感覚を持つ
必要がある。他人の意見に左右される必要は無い訳だ。
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では、6本目のレンズ。

レンズ名:7artisans(七工匠) 55mm/f1.4
レンズ購入価格:16,000円(新品)
使用カメラ:SONY α6000(APS-C機)
2018年頃発売の中国製ミラーレス機(APS-C機以下)
専用、MF大口径標準(中望遠画角)レンズ。
本レンズは、近年での個人的な「お気に入り」レンズ
となっていて、FUJI Xマウント版も中古で購入し、
「ナンピン買い」(株取引等で、相場の下がった株を
買い増しして平均入手価格を下げる事。転じて、レンズ
やカメラにおいても同様に、優秀な機材を、後年に
中古品や下落した新品相場で重複購入して、平均取得
単価を下げる事)を、してしまったレンスである。

APS-C機での使用時には、約82.5mm/F1.4の換算画角
となる為、換算85mmレンズである。
いや、これは正確に言えば、経緯と結果が逆であり、
正しくは、銀塩時代の85mm/F1.4級(プラナー等)
の名玉の設計を、3分の2程度に縮小(スケールダウン)
したら、APS-C機以下専用の55mm/F1.4となった。
・・という設計のレンズだ。
こういう手法で設計したレンズを、本ブログにおいては
「ジェネリック・レンズ」と呼んでいる。
まあつまり、医療分野での「ジェネリック薬品」と
類似であり、それは過去に開発された定評のある薬品を、
ほぼそのままコピーして生産する事で、新薬の研究開発
や臨床・認可に係わる膨大な経費を節約し、安価に薬品
をユーザーに提供できる仕組みの事である。
特許等が気になるかも知れないが、例えば本レンズ
の元設計は、およそ1970年代~1980年代なので、
特許があったとしても、優に期限切れ(失効)している。
ただまあ、たとえ名玉のプラナー級のミニチュア版だ、
と言っても、まったく同じ描写力では無いし、元の
レンズにあった弱点も(長所も)、ほぼ、そのまま
引き継いでしまっている。
そのあたりの詳細は、レンズマニアック第53回記事で、
本レンズと、Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4
を比較紹介している(注:掲載予定)為、本記事に
おいては割愛する。
まあともかく、この「ミニ・プラナー」は悪く無い。
細かい弱点はあるものの、価格も安価なので、
コスパ点も極めて高い。
中国製等の新鋭海外レンズを「安かろう、悪かろう」と
思い込んで、本レンズの購入を躊躇する初級マニア層
等にも、絶対に推奨できるレンズである。
できれば、同時に銀塩85mmプラナー級(注:CONTAX版
やツァイス版である必要は無い、そのレンズ構成は優秀
なので、他社の同時期以降の85mm/F1.4級レンズの
多くの構成や性能は、元祖プラナーと、ほぼ同等だ)
のレンズを入手し、比較してみるのも、研究としては
大変興味深いものがあるだろう。
そういう事からも「レンズの性能は価格とは比例しない」
という点が良く理解できるようになっていくと思われる。
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次は本記事ラストの85mmレンズとなる。

レンズ名:mEiKE (MK85F18EFAF) MK-85mm/f1.8
レンズ購入価格:23,000円(新品)(以下、MK85/1.8)
使用カメラ:CANON EOS 8000D (APS-C機)
2018年後半(?)~2019年初頭(?)頃に発売された、
中国製のCANON EFマウント専用のAF中望遠レンズ。
中国製としては、珍しいAF対応、かつフルサイズ対応だ。
異マウント版が発売されていないので、何かのレンズの
「完全コピー品」である可能性も捨てきれないが、
内部光学系の詳細が不明なので、「このレンズと同じだ」
等の明言は避けておく。
Meike(旧:Neewer??)は、あまりコピーレンズや
ジェネリックレンズは作らないメーカーである、という
認識もあったのだが、まあ例外はあるだろう。

それに、結局、安価に高性能なレンズが入手できるので
あれば、その出自は、ある意味どうでも良い。
本レンズと同等の性能の国産レンズは、1990年代の
AF85mm/F1.8級と考えるならば、それらの中古相場は
現在では2万円以下程度なので、本レンズの新品価格は
それらよりも、やや高価だ。まあつまり、本レンズを
中古で購入するならば最もコスパに優れる事にはなるが
生憎、この手のマニアックなレンズは、殆ど中古市場に
流れてくる事は無い。購入者も少ないであろうし、
偶々買ったとしても、「お、安い割りに意外に良く写る」
などの評価を下して、手放さないかも知れない訳だ。
まあそれもその筈、冒頭紹介の「AiAF85/1.8」と同等
性能であれば、本MK85/1.8も、描写力に不満は殆ど
無いであろう。
ちなみに、AiAF85/1.8系は6群6枚のレンズ構成であり
(未所有だが)CANON EF85/1.8は7群9枚の構成。
(注:YONGNUO版のYN85/1.8は、紹介済み)
いずれも、本MK85/1.8の6群9枚とは異なるので、
本レンズはコピーレンズでは無く、全くの新設計なの
かも知れないが、そこはまあ、どうでも良く、単純に
レンズの枚数が多ければ良く写る、という訳でも無い。
肝心なのは、結果として、本MK85/1.8の描写力や
AF性能が使い物になるか否か? という点であろう。
そういう意味では、総括として、本MK85/1.8の描写
表現力は悪くは無い(個人評価DBでは4点)
だが、AF精度には、やや問題有りだ。
そして、MFで使用時には、必ず、スイッチでMFモード
に切り替えて使用する必要がある(シームレスでは無い)
(注:裏技で強制MFが可能だが、フォーカスエイドが
無効となる)

今回はシステムの軽量化と、レンズとカメラとのバランス
を意識して、初級機EOS 8000Dで使用しているが、
本レンズをAFでちゃんと使うならば、EOS 7D系を母艦とし、
MFまで含めてしっかり使うならば、EOS 5D系や6D系の
機体で、MF用スクリーンに換装した機体を母艦とするのが
良いであろう、それらの機体であれば、本レンズの性能を
十分に発揮できると思う。
ただし、安価なレンズでもあるから、カメラの方の性能が
良すぎてアンバランスとなる事を戒める、という持論の
「オフサイドの法則」には抵触してしまう、そのあたりは、
ユーザー個々の機材使用ポリシーや価値感に委ねるしか無い。
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さて、ここまでで「最強85mmレンズ選手権」における
「B決勝戦」の記事は終了だ。
個人用レンズ評価データベースを参照し、この7本の
レンズに順位をつけておこう。ここでは例によって、
あくまで総合(平均)評価点のみでのランキングだ。
汎用性の高いレンズ群の為、「特別加点」の適用は、
今回は無しとする。
1位:4.5点:PENTAX FA77/1.8
1位:4.5点:COSINA APO90/3.5
3位:4.2点:FUJIFILM XF56/1.2APD
4位:4.0点:七工匠 55/1.4
5位:3.9点:NIKON AiAF85/1.8
6位:3.7点:MEIKE 85/1.8
7位:3.5点:OLYMPUS ED75/1.8
1位から5位あたりまで、ズラりと高得点のレンズが
並ぶ結果となった、このまま「決勝戦だ」と言っても
差し支え無いようにも思えるし、続く決勝戦では
新鋭レンズが多いので、「コスパ」評価や「必要度」の
評価点が低くなり、正直言えば、この「B決勝」の得点を
超える85mm級レンズは少ないかも知れない。
ただまあ、こちらの「B決勝」の方は、マニアック過ぎる
状態であったり、入手が困難であったりするレンズが多く
あまり一般的では無いレンズ群ばかりだ。
だからまあ、現代での入手性が良いレンズ群を中心に
別途「決勝戦」を構成する事としよう。
以下、個々のレンズの寸評を述べておく。
1位、FA77/1.8は、もうまぎれも無い名玉だ、
全マニア層必携のレンズと言っても過言では無い。
ただまあ、もうセミオールドのレンズの為、あえて
決勝戦へのノミネートは外している。
(買うならば、最新のHD版(2021年)が良いかも知れない)
同率1位、アポランター90/3.5は、現代において入手性が
低い事が最大の課題である、もし中古市場でたまたま
見かける事があれば、購入しておくのが賢明であろう。
(注:既に手遅れかも知れない。2020年後半頃から、
本レンズも、哀れ「投機対象」となってしまっている。
恐らくだが、2019年に発売されたアポランター
50mm/F2が高性能なので、「昔のアポランターも
きっと良く写るに違いない」と、今更ながら思った
初級層が多いのが原因なのであろう。
ちなみにだが、その新鋭APO50/2の描写力に対して
は、本APO95/3.5は、残念ながら勝ち目は無い)
3位、XF66/1.2APDは、特殊レンズでかつ高価である。
一般層には推奨できず、上級マニア御用達だ。
4位、七工匠 55/1.4は、これは文句無く推奨できる。
こちらも全マニア層必携のレンズと言えよう。
上の3本が、やや特殊な状況である為、もしかすると
本レンズが「B優勝」だと言えるかも知れない。
5位、AiAF85/1.8は、まあ個人的に本レンズは、長期に
渡って活躍した、という事に敬意を表した評価だ。
今となっては、やや古く、あまり必要性は無いであろう。
6位、Meike85/1.8は、描写力的には悪く無い。
だが、AF/MFの弱点がある為、中上級マニア向けだ。
7位、ED75/1.8は、描写力に優れるが、中途半端な焦点
距離により用途開発が難しい。暗所の舞台の中距離
撮影等、スバリの用途がある場合のみ推奨できる。
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次回の本シリーズ記事は、
「85mm選手権、決勝戦」となる予定だ。