本シリーズでは写真用交換レンズ(稀に例外あり)を
価格帯別に数本づつ紹介し、記事の最後にBest Buy
(=最も購入に値するレンズ)を決めている。
今回は、「6万円級編」とする。
では、早速6万円級レンズ7本の対戦を開始しよう。
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まず、最初のエントリー(参戦)

レンズは、TAMRON SP 85mm/f1.8 Di VC USD
(Model F016)
中古購入価格 70,000円 (実用価値 約60,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された、高描写力単焦点AF中望遠レンズ。
手ブレ補正、超音波モーター、電磁絞りで武装している
現代的レンズである。
わざわざ、「高描写力」という称号を、独自につけた
のだが、実に良く写るレンズだ。
開放F値をF1.4まで欲張らない事で、諸収差の補正も
大変良く行き届いている印象であり、実用上での
描写表現力における不満点は殆ど無い。

本ブログでは銀塩時代から現代に至るまでの、各社の
多数の85mm/F1.4級レンズを紹介している。それは
私は銀塩時代は「85mmレンズマニア」であったから
であり、85mmと名がつけば、かたっぱしから入手して
いた状態だ。
しかし、85mm/F1.4級については、それらを実用的に
使ってみると、どうにも様々な課題があった。
具体的には、ピント歩留まりが悪く、描写力的にも
なんだか満足できない。稀に条件が合えば、とてつも
ない高い描写力が得られるが、そんな写真はフィルム
数本に1枚くらいの頻度でしか得られず、大半の写真は
ボケ質破綻が発生しているか、あるいはピンボケだ。
そうした状況もあり、2000年代あたりから、私は
85mm/F1.4級レンズを殆ど買わなくなってしまった。
基本的に、写り(描写傾向)も、あまり好きでは無いし
使いこなしも難しい。そして、それらの基本設計は
1970年代~1980年代あたりの「プラナー系構成」で
各社横並びであり、「もう、どれを買っても同じ」
という印象が強くあったからだ。
では、実際に85mm前後(注:2000年代デジタル機では
APS-C機で使う場合が大半なので、換算130mm程度の
望遠画角となる)の画角が必要な場合は、どうして
いたのか?と言えば、もっぱらF1.8級、すなわち
NIKON AiAF85/1.8やPENTAX FA77/1.8で、それを
代替していた。これらの小口径(F1.8級)85mm前後
レンズは、常に安定した描写力が得られ、依頼撮影や
重要な撮影でも(85mm/F1.4級に比べて)歩留まり
(成功率)が向上するからである。
しばらくの期間、それら85mm/F1.8級レンズを主力
としていたが、AiAF85/1.8D(1994年)もFA77/1.8
(2001年)も古い時代のレンズだ。2010年代後半にも
なると「仕様的老朽化」が目立つ。つまり、古いレンズ
でも、まだ使えない訳では無いが、周囲の最新レンズに
比べると古さが目立ち、使いたく無くなってくる状態だ。

本SP85/1.8(2016年)は、そうした昔の85mm/F1.8級
実用的レンズの代替である。機材環境も2000年代とは
変化し、これを、状況に応じて、フルサイズ機でも
APS-C機でも利用できる。
描写力も、かなり向上しているが、とは言え、旧世代の
レンズと大差は無い。旧世代のレンズ群も、高性能な名玉
のみを使い続けていた状況であり、そう見劣りするもの
では無かった訳だ。
で、本SP85/1.8の購入により、良かった点がある、
1つは、
「これで、後20年間くらいは、トップクラスの
描写力を持つ85mmを使い続ける事ができる」
という点、そしてもう1つは、
「最新技術で作られた新製品であっても圧倒的な
性能アドバンテージがあるものでは無い。
(=旧製品も、まだまだ捨てたものでは無い)」
という、2つの「安心感」を得る事が出来た訳だ。
本SP85/1.8の総括だが、残念ながら、開放F値が
F1.8と控えめなスペックにより、初級中級層からは
不人気となってしまったレンズである。
まあつまり、現代の新製品購入層の大半はビギナー層
であるから、「F1.4がF1.8より良く写るに決まって
いる、だから高価なのだろう?」という、とんでも無い
誤解、または思い込みを持ってしまっている訳であり、
あるいは、「85mmと言えばF1.4版だ、それが憧れ
なので、F1.8版で妥協(?)したくは無い」と言う。
まあ、だからF1.8級レンズは売れない訳だ。
企画側であるTAMRONとしても、これは誤算であろう、
まさか2010年代の、ここ数年間の間で、ここまで
急激にユーザー層の知識・経験値レベルが極端に
低下していた、とは思わなかった事だろう。
(→これは、市場縮退による事を起因としている)
「描写力の高いレンズであれば、ユーザー層の好評価に
より、その製品は売れる」という、これまでの市場の
常識が覆ってしまった。
TAMRONの、その企画意図は通用せず、ビギナー層は、
そもそも開放F1.8というスペックを見た瞬間、誰も
本レンズに興味を持たず、買わず、評価も出来ず、
そして描写力の差異等も何もわからない。
下手をすれば、本レンズを買った他者に向けて
初「何? おまえの85mmは、F1.8かよ、フン
オレの85mmはF1.4だぜ、どうだ!まいったか!」
と、まるで小学生のような論理で馬鹿にする訳だから、
タチが悪い。結局、何も真理がわかっていない訳だ。
馬鹿馬鹿しい話である、本レンズは、わかる人だけが
買えば良い。値段に見合う満足感や、実用性は十分
すぎるほどある、2010年代の超名玉である。
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では、次のシステム。

レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
(注:スペル上の変母音の記載は便宜上省略している)
新品購入価格 79,000円 (実用価値 約35,000円)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2001年頃に発売された、フルサイズ対応MF等倍望遠
マクロレンズ。

残念ながら「投機対象」となってしまったレンズである。
つまり販売時点では、殆ど誰も購入しなかった希少品で
あるから、後年に「欲しい」と言った人に向けて高額
(プレミアム価格)で販売(転売)する事が出来る。
高価に販売するには、現代の「ネット事情」であるから、
初級マニア層や金満家層に向けて、「幻のレンズ」とか
「とんても無い高描写力」とか、「神レンズ」とかの
美辞麗句を並べ立てれば良い。現物を誰も見ていないの
だから、そういう風に誰かが言えば(ネットに書けば)、
一般層は、それを信じるしか無いのだ。
上級マニア層等であれば、そういう他人の評判に躍らせる
事態は、まず発生しないが、経験値も知識も無いビギナー
ユーザーばかりになってしまった現代のカメラ市場では
そういう「流言」や「情報操作」が簡単に通用してしまう。
で、その「欲しい」と言った人も、そのレンズを実用的
目的で買う場合よりも、「後年にさらに高価に売れる
のでは?」という、ここでも「投機目的」が発生して
しまっている。
結果、取引価格(中古相場)は際限なく上昇し、
本レンズの新品定価(95,000円)
2000年代実勢新品販売価格(48,000円)
想定実用的価値(35,000円程度)
の、いずれも上回り、15~20万円の中古相場となった。
これも馬鹿馬鹿しいまでの話であるが、仕方が無い。
本レンズが販売されている時に、買わなかった方に
問題があるとも言えるし、本レンズを取引対象の
「商品」としか見なせず、本レンズの重大な欠点
(極めて使いこなしが困難な「修行レンズ」である)
を無視して、商談が進んでしまう事にも問題がある。
余談だが、そもそも、近年の「プレミアム」という
用語の使い方自体に問題がある、と私は思っている。
「プレミアム」の本来の意味は、「入手しずらい商品を
他者に売りつける際に、利益を乗せて高額に販売する」
という意味が強い。(プレミア、と呼ばれる場合もある)
つまり、これは「無駄に高価である」という要素を強く
含む、ネガティブな(悪い事)の表現用語だ。
私も、ずっと「プレミアム」=「不条理な迄に高価」
という意味で認識し、そのように用語も使ってきている。
ところが、ここ10年程、各市場分野でモノやサービス
が売れなくなる(欲しいものは、既に全て身の回りに
ある事からの消費の縮退)状態になると、いままでの
商品に若干の付加価値(=値上げの理由)をつけて、
そうした商品を「プレミアム」と呼ぶ場合が多くなって
しまった。
つまり、本来は「無駄に高価」という否定的な意味を、
「豪華」「差別感」「優越感」などの肯定的な要素に
各市場・流通分野では、言葉の意味を置き換えて
しまった訳だ。
元々の「プレミアム」を、否定的な意味で使っていた
分野は商品取引とか株取引とかの専門的な市場分野で
あったから、一般層は、あまりその用語は知らない。
で、そういう用語を新商品につけた人達も、その真意は
「これは無駄に豪華な商品だけど・・」と、そういう
「良心」を持って、「それでも欲しい人達は買えば良い」
という「倫理」を持っていたと思われる。
しかし「プレミアム商品」が林立する2020年代では、
一般消費者層には「豪華な高級品・高級サービスだ」
という認識が広まっていく。
ちなみに、私は「プレミアム」と名前がついた商品が
大嫌いである。元々の意味が「不条理に豪華」である
事を知っているし、まさしく、その手の「無駄」な商品
であるようにも思っている。
ただ、知らないままで評価しても「思い込み」になって
しまうから、ごく稀に、「プレミアム」と名前が
ついた商品やサービスを購入・体験して、それを評価
する事もしている。
その結果は、たとえば食品であれば、
「この具材が追加されただけで、100円高い」とか、
「普通の急行の指定席に座れるだけで500円高い」とか、
そんな風に、ちゃんと記憶またはメモしておき、
総合的に「プレミアム商品」の「コスパ」を判断する
ようにしている。
ちなみに、私の評価基準で「プレミアム商品」のコスパ
が優れていたケースは、ただの1つも無い。
それから「コスパ」も現代では、曲解されやすい用語と
なりつつある、これは本来は、コストとパフォーマンス
の比であるから、「値段の安さ」と等価では決して無い。
つまり、値段が安くても性能や品質が悪ければ、
コスパは悪い。さらには、値段が高くて品質がたいした
事が無い「プレミアム」も、やはりコスパは極めて悪い。
値段が高くても、性能や品質がそれに見合えば、コスパ
はそこそこであり、値段が安くて性能や品質が高ければ
それは「コスパが良い」事となる。
でも、現代においては、ただ単に、価格が安価なだけで
実際には性能や品質が低い商品やサービスの事を
(それを擁護する意味もあるのか?)「コスパが良い」
と言う人達が大半である。
では、何故、そういう正しい意味での「コスパ」の用語が
あいまいになってしまったのか?は、現代のユーザー層が
「性能や品質を、自分自身では判断できなくなっている」
事が最大の課題であろう。
だから、単に安いだけで品質の悪いモノを「コスパが良い」
と言ってしまうのだ。さらに言えば、自分で判断できない
から、ネットで調べたりするのだが、そこには「情報操作」
の落とし穴があり、意図的にフェイク(偽の)情報を流す
事で間接的に利益を得たりする人達が沢山居たりする。
だからネットで調べる事で、場合により自分には不要な
商品やサービスを購入し、無駄な出費をしてしまう。
これでは完全に「ユーザー(消費者)の負け」の状態だ。
「ユーザーの負け」とは、モノやサービスを購入する
消費者側が選択主導権を失い、結果的に損をしている
状態を示し、本ブログでは最も戒めている状況だ。
余談が長くなったが、現代人の消費行動・消費論理は
混迷してしまっているので、このあたりは重要な事だ。

話は戻って、本MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5
を「プレミアム価格」で買う必要は、まるで無い。
万が一、実用目的で購入したとしても、超上級者層以外
では絶対に使いこなせない超難関レンズであるから、
高額な出費は完全に無駄となり、「ユーザーの負け」
状態に陥る事は必至だ。
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では、3本目のシステム。

レンズは、中一光学 SPEEDMASTER 35mm/f0.95 Ⅱ
(新品購入価格 63,000円)(実用価値 約45,000円)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
2016年に発売された中国製の超大口径MF標準画角レンズ。

う~ん、なんと言うか、これもちょっといわくつきの
レンズである。
そもそも、F0.95級の超大口径レンズは、用途開発と
使いこなしが、とても困難である。
(特殊レンズ超マニアックス第25回超大口径編参照)
ここも、ビギナー層が主体の現代市場であれば、
初「開放F0.95ならば、どんなに良くボケて、
凄い写りなのだろうか?」
と誤解してしまうのだろうが・・
現代の設計技術では開放F0.95という超大口径に
おいて、諸収差を補正する為の方法論が追いついて
いない。
つまり簡単に言えば、超大口径レンズは開放近くでは
「甘々の描写」にしかならず、ビギナー層が考える
「シャープに写るレンズは良いレンズ」という定義とは、
真逆の状態に陥ってしまう。
(注:ごく近年の超大口径、例えば2020年発売の
NOKTON 60mm/F0.95では、旧来の超大口径レンズ
の常識を覆してくれるくらいの性能改善が見られる)
この「技術が追いついていない」という状況は
今から50~70年も昔の、1950年代~1970年代に
各社のレンズ(特に標準レンズ)で起こった
「大口径化競争」を彷彿させる。この時代には、
F1.2やF1.1、果てはF0.95という大口径レンズを
設計して発売する事で、メーカーの高い技術力を
アピールし、他社からの優位性を築こうとした状態
であったのだ。(丁度、当時のアメリカと旧ソ連の
宇宙開発競争の時代だ。ここでも同じ事が起きていた)
また、商売的にも、そういう(超)大口径レンズは、
高価に売る事ができる、すなわち、悪い意味での
「プレミアム」レンズだ。
だが、その結果は惨々たるものであり、当時の
(超)大口径(標準)レンズの描写力は、お世辞
にも褒められたものでは無かった。
実例としては、別シリーズ「最強50mm選手権」の
第7回MF50/1.2編記事で、当時のF1.2級大口径標準
レンズを5本実写紹介している、サンプル数としては
これで十分であろう。
そして、どれも酷い描写力であり、記事を書いていて
嫌気が差してしまったくらいであった。
・・ただまあ、現代的な視点からすれば、それらの
オールド50mm/F1.2級レンズや、近代のミラーレス機
用F0.95級レンズは、現代の他のレンズでは得られない
独特の「表現力」(世界観)を持っている。
よって、私の個人評価データベース上では、レンズは
「描写表現力」という評価項目があり、これは仮に
「描写力」が低くても、「表現力」が高ければ、
その項目は減点されないルールだ。
むしろ近代の「F0.95超大口径レンズ」群については、
「表現力が高い」と見なし、その項目が満点に近く
なる好評価も多々ある状態だ。
でも、これは超大口径レンズの「世界観」を実際の
撮影に反映できる実践派上級マニア層以上で無いと
わかりにくい、または使いこなせない状況であろう。
一般ユーザー層においては、
ユ「F0.95と言うし、高価だから、どんなに凄いレンズ
だろうかと思って買ったが、なんじゃいこれは?
ボケボケに写る酷いレンズでは無いか!(怒)」
となってしまい、事の本質がわからないままであろう。
本レンズや他の超大口径レンズは、ここまで述べて
来た事の真意が理解でき、それを許容し、課題回避し
用途開発を行える人達のみに推奨できるレンズである。
決してビギナー層には推奨しないので、念のため。
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では、4本目のシステム。

レンズは、SIGMA 100-400mm/f5-6.3 DG OS HSM |
Contemporary
(新古品購入価格 68,000円)(実用価値 約58,000円)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ(APS-C機)
2017年に発売されたAF超望遠ズーム。
フルサイズ対応であるが、この手の400mm級ズームは
APS-C機で使い、換算600mm級の画角として用いる
のが、「絶対」とも言えるセオリーである。

「実用的超望遠ズーム」としては、現代において最も
推奨できるレンズである。
業務撮影用途においては、長時間の手持ち撮影を可能
とする限界重量のレンズとして、これは有益である。
趣味撮影用途においては、ユーザーの用途次第だが
屋外スポーツ、屋外イベント、鉄道写真、航空機、
カーレース、海上スポーツ、運動会、動物園、等に
最適ではある。
だが・・
野鳥撮影には、焦点距離(望遠画角)が足りず、
自然観察撮影には、最短撮影距離(撮影倍率)が不足、
屋内舞台撮影には、開放F値が暗くて撮り難い、等と、
微妙に撮影ジャンル毎において、向き不向きがある。
ビギナー層にも推奨できるレンズではあるが、上記の
ように、細かい点で用途を限定するレンズであるから、
「レンズには個々の仕様にぴったり嵌る用途がある」
という大原則を理解していないユーザーには推奨しない。
そう、初級中級層では、この大原則を理解していないから
「大は小を兼ねる」と誤解してしまい、例えば本レンズの
5割増しから3倍近くもの重量に達する、600mm級の
超望遠ズームレンズを欲しがってしまうのだ。
つまり、「600mmを買えば400mmは不要でしょう?」
とう論理である。当然ながら、そんな重たいレンズは
手持ちで振り回すのは体力的にもビギナーの技量的にも
不可能であり、結果、三脚を使おうとするが、今度は、
さらに三脚の重さで、可搬性(機動力)が低下するし、
三脚を立てて、撮影位置や被写体撮影範囲を固定して
しまったら、あらゆる動体(動きもの)の撮影が非常に
困難または不可能となる。
前述のように、アマチュア層での超望遠(ズーム)の
用途は、その大半が動体撮影であるから、三脚撮影では
対応できない。そもそも三脚を立てたら、その場からは
動き難いので、余計に困った事になる。
よって、何をどうしても使いこなせないから、哀れ
600mm級超望遠ズームは、2010年代後半には、
中古市場に溢れかえってしまったのだ。
その600mm級超望遠が発売されていた時代(2010年代
中頃)には、レンズメーカーからは、400mm級望遠
ズームの販売が1本も無かったも原因の1つであろう。
メーカー側も、スペック競争により無闇に望遠端焦点
距離を伸ばしてきた(400mm→500mm→600mm)
という風潮から、やっと脱却して、2017年にようやく、
SIGMAとTAMRONから100-400mm級の、実用撮影が
可能なレンズが発売された訳だ。
まあ、という事で、本C100-400は、趣味撮影から
業務撮影まで、広範囲に使えるレンズではある。
ただし、上記に挙げたような、ぴったりの用途では
無い場合、さすがに用途適正の広い本レンズでも
対応は無理だ、例えば中距離の小さい被写体(昆虫等)
を撮影するのは、本レンズでは無理であり、その場合
は、例えば「望遠マクロレンズ」が必要となる。
そうやって、撮影用途毎に、ぴったりの適正を持つ
レンズ群をそろえていく事が、レンズ交換式システム
である一眼レフやミラーレス機を使う理由の根源だ。
だから、用途に合った交換レンズを買わず(使わず)
には、一眼レフやミラーレス機を使う意味が無い。
では、何故、多くの初級中級層は、交換レンズを
あまり持っていないのか? その理由はいつも書いて
いる事だが、基本的には2つ、
「レンズが高価だから」
「どのレンズを買って良いかわからないから」
である。
後者の理由は、まあ、交換レンズに係わる知識不足と
言い換えても良い、これは主にビギナー層での理由だ。
そして、中級クラスとなると、ここまで述べてきた事に
類似する理由も、ここに追加する事ができる。
「何をどう撮ったら良いか? それがわからないから
適正な交換レンズを選べない」
これは中級層によくある悩みだ。カメラを始めたころは
楽しいので何でも撮っていたが、それが一段落すると
「自分が撮りたい写真は何か?」という悩みが出てくる。
ここから抜け出すのは結構大変だが、そこは本記事では
深堀しない。(「匠の写真用語辞典」シリーズ記事で、
その件は良く述べている)

注意点を1点だけ、「何を撮ったら良いかわからない」
場合に、「何でも撮れそうなレンズを買う、大は小を兼ねる
からそれで良い筈だ」となってしまい、一番高価なレンズ
とか、一番よさげな(評判の良い)レンズとか、
そういうものを、初級中級層は志向してしまうのだ。
勿論、それでは「ユーザーの負け」の購買論理となって
しまう事は、本ブログでは毎回のように説明している事だ。
くれぐれも、消費者(ユーザー)側での購買行動において
自身の主導権を失ってはならない、そこは鉄則だ。
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では、次のエントリー(対戦)。

レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO 90mm/f2 Macro
(中古購入価格 50,000円)(実用価値 約45,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)
1980年代後半頃に発売と思われる、1/2倍中望遠マクロ
レンズ。開放F2級マクロは、発売当時では珍しい。

ただ、発売時点から高価なレンズであったし、その時代
にオリンパスは、一眼レフのAF化に事実上失敗し、
その後1990年代を通じMFのOM-SYSTEMの販売を継続、
新製品も出ないし、レンズも何度か値上げされた為、
マニア(オリンパス党)以外のユーザーが注目した
レンズとは言えない。
だから本レンズは現代ではレアものである。中古相場も
存在せず、稀に見かけるものは「時価」であろうし、
下手に褒めると、ほんの僅かな情報が過大に伝播して
「投機対象」となってしまう、という恐ろしい時代が
現代の(悪い意味での)「情報化社会」である。
よって、本レンズの詳細や評価は、ばっさりと割愛する。
いまさら入手できるものでは無いからだ。
それと、こうした希少なレンズを保有しているユーザー
は、それを褒める(=自慢する事の変形)事しかしない。
だから、他者のレビューも基本的には参考にならない。
そして、場合により、そのレビューはユーザー側では
無く、販売者(業者)によるものである可能性も高い。
そこでユーザーのような雰囲気で、褒めるレビューを
行えば、それを読んだ一般層が「高価でも欲しい」と
なったり、「さらに高価に売れるかも知れない」とも
思うからだ。高く売れれば、販売者は喜ぶ。
つまらない負の連鎖である、マニア道に外れる行為には
まったく賛同できない、このあたりまでにしておこう
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では、6本目のシステム。

レンズは、MINOLTA AF 35mm/f1.4 G (New)
(中古購入価格 75,000円)(実用価値 約50,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
1998年頃に発売の大口径AF準広角レンズ。
勿論、フルサイズ対応である。
旧バージョンもあり、そちらは1987年頃の発売
だと思う。

昔から、ユーザー層には評判の悪いレンズである。
ミノルタ時代で15万円、後にSONYにも引き継がれたが、
定価税込み20万円を超える高額商品となってしまった。
この高価格と、開放F1.4というスペック、そして
高画質を示す称号である「G」の文字を見れば、
多くのマニア層等は、「どんなに良く写るレンズで
あろうか?」と期待が膨らんでしまう訳だ。
しかし、この高額レンズを無理をして、または運よく
入手できたユーザーはこう思う。
ユ「なんだ、値段の割りにたいした写りでは無いな」
高性能や高品質を期待して投資を行う消費者において
こういう一種の「裏切り」はキツい。その反感から
必要以上に低評価としてしまう事は良くある話だ。
まあ、それは別に「商品」や「製品」だけの話では無い。
下世話な例だが、憧れの美女が居たとする。苦労して
くどいて、無事、お付き合いや結婚をする、という
状態となって、その頃から相手の欠点が沢山見えてくる。
いや、それは元々欠点とは言えない程度の内容や資質で
あったとしても、憧れて「美化」してしまっている
心理状況からは、些細な欠点が、どうしようも無い
重欠点に見えてきてしまうのだ。そこで本人はこう思う
「がっかりした、裏切られた、とんでも無い悪女だ!」
・・だが、これは場合により、酷い誤解も十分ありうる。
「美化しすぎる方にも問題がある」と言い換えても良い
であろう。

本AF35/1.4は、そのように美化されやすい不遇なレンズ
であると言える。そんなに酷評するほどの悪い性能の
レンズでは無いし、個人的には長期にわたって機嫌
良く使ってはいる、個人評価点も、さほど悪くは無い。
ただし、そもそも基本設計が1980年代後半と古い。
当時のオーソドックスな設計技法で、大口径化を実現
したら、諸収差の補正が行き届かず、描写性能に様々な
課題が出て来る事は、ある意味当然では無いか。
(注:一応、当時としては希少な「非球面レンズ」を
1枚採用している。しかし、その程度では、諸収差の
低減に効果的では無かったし、その加工の為に原価や
価格が高額化してしまった事は否めない)
MINOLTAの当時での「高仕様(ハイスペック)レンズ」
の実力や、その歴史的価値を知りたい、という研究的な
要素を除き、本レンズを現代において所有する必然性は、
残念ながら低い。
単に、準広角で、高描写力だけを得たいのであれば、
TAMRON SP35/1.8(2016年)や、SIGMA ART40/1.4
(2018年)といった近代レンズを購入した方が
無難であろう(いずれも過去記事で紹介済み)
なお、他にも、35mmレンズは各社から高描写力な
ものが多数発売されている。近代(2010年代以降)
であれば、たいていハズレは無いと思うので、それらを
志向する方が賢明であろう。
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では、今回ラストのシステム。

レンズは、SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG
OS HSM
(中古購入価格 58,000円)(実用価値 約48,000円)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)
2011年に発売されたフルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。
これは手ブレ補正(OS)内蔵の改良型モデルである。

だが、重いレンズ(1150g)である、手ブレ補正が
入っているか否か? とか言う前に、この重量級
レンズで、近接等倍撮影(最短撮影距離38cm)を
行う場合、手持ちではプルプルとカメラが微小に震え、
距離ブレ(=手ブレ補正機能では防げない)が頻発し、
まともに被写体を捉える事が出来ない。
三脚を立てようとしても無駄であり、本レンズが
活躍するフィールド(屋外)自然観察分野においては
昆虫等は、一箇所にじっとしている事はまず無いので
三脚を立てる暇もなく、立てれたとしても、例えば
てんとう虫や小昆虫等は、チョロチョロと動き回る。
静止している草花なら大丈夫か?と言うと、それらは
屋外では(温室等でも)風や空調等で、細かく揺れて
いる次第であり、本レンズでの等倍開放撮影での
極薄の被写界深度、約1.08mm(!!)という値の範囲で、
微動だにしない被写体や撮影者など、どこにも有り得ない。
それでも、連写MFブラケット等の高度な技能で、
課題の回避はできるとは思うが、超上級技能でもある。
まあ、一般層では、このクラス(125~200mm程度の
等倍望遠マクロ)は、まず使いこなせない、と思って
おくのが無難であろう。
ただ、「では完全非推奨なのか?」というと、そういう
話でも無く、まずは、望遠マクロでは、それに特化
した撮影分野(前述の、中距離での昆虫撮影等)が
存在する。そういう被写体を撮りたければ、ほぼ
望遠マクロでしか撮れない。
(参考:私の場合は、使いこなしがシビアな望遠
マクロを使いたく無い場合、135mm級大口径レンズ
で最短撮影距離が80cm前後と短いもの、具体的には
SONY ZA135/1.8、SIGMA Art135/1.8、または
MINOLTA/SONY STF135/2.8等をAPS-C機に装着し、
さらに機体側のデジタルテレコンやクロップ機能を
併用する事で、1/2倍~3/4倍程度の最大撮影倍率
を得て、望遠マクロの代用とするケースも多い)

また、使いこなしが困難なレンズは、ユーザー側の
考え方次第では「練習用(スキルアップ用)」の
レンズと捉える事ができる。
昔のスポ根漫画で言えば「大リーグボール養成ギプス」
である。負荷のかかる困難な状態で、日常的に練習を
重ねれば、その負荷を取り払えば、高度なスキルが解放
される訳だ。
まあ、そういう「古風で奇特な練習方法」をしたい
ユーザーであれば、その目的における望遠マクロは、
悪い機材では無い。
そして、上手く撮れるようになればTAMRONの宣伝文句
(キャッチコピー)では無いが、「望遠マクロで無いと
撮れない被写体がある」と、まさに、その通りの状態が
実現できる。
よって、困難にチャレンジする価値は十分にある訳だ。
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では、最後に各選出レンズの評価点を記載する。
1)SP85/1.8 =4.1点
2)MAP125/2.5=3.5点→非推奨
3)SM35/0.95=3.8点
4)C100-400 =3.5点
5)OM90/2 =4.2点→非推奨
6)AF35/1.4 =3.6点
7)EX150/2.8=3.6点
今回の6万円級対戦においては、評価点数的には
OM用90/2Macroが勝利しているのだが、このレンズは
レアもの、かつ投機対象商品で高値相場となっている
ので、完全非推奨である。
結局「Best Buy」は、次点の「TAMRON SP85mm/F1.8」
で決まりであろう。
極めて高い描写力を持つ、優秀なレンズである。
マニア層以外にも、全てのユーザー層に推奨できる。
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さて、今回の「6万円級レンズ編」記事は、
このあたり迄で、次回記事に続く。