海外製のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回は、ロシア(旧ソ連)製レンズを5本紹介する。
なお、ロシア製レンズは所有数が多い為、数回の記事に
分けて紹介する。
【注意】
ロシアンレンズの記事では毎回記載している事だが
今回もまた最初に重要な注意点を述べておく。
1:ロシアン(又は東欧)レンズの入手は現代では難しい。
コスパ的にはいずれも数千円までの相場が妥当な所で
あるが、数万円など、プレミアム価格化している物は
(近年では特にその傾向が強い)買う必然性は少ない。
2:ロシアンレンズには製造規格と個体差の問題がある。
ニコンF風やM42風のマウントであっても、レンズに
よっては、カメラに装着できない、装着したら外れない
撮影したらカメラが壊れる等の危険が常につきまとう。
この対策としてはミラーレス機でマウントアダプター
を介して使うのが望ましい。万が一外れなくなっても
アダプターが1個、犠牲(専用)になるだけで済む。
3:上記と関連し、M42マウント自動絞りレンズでは、
一部のマウントアダプターでは、絞りが開放のままで
動かない場合がある。これはシステム全体の組み合わせ
で回避するしかないが、ミラーレス機用M42アダプター
では、たいていの場合、この問題は起こらない。
4:ロシアンレンズの基本設計は独ツァイス等のものを
参考にした機種も多いが、その基本設計は80年以上も
昔のものが殆どで、現代においては性能的な優位性は
全く無く、描写力をあまり期待してはならない。
注意点は以上。勿論、一般層や初級中級マニア層などには
一切推奨できず、上級マニア専用(御用達)である。
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ではまず、今回最初のロシアンレンズ

レンズは、KMZ Industar 50-2 50mm/f3.5
(新品購入価格 7,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
出自不明。推測だが、1970年代位からモスクワの
国営工場「KMZ」にて生産されていたレンズであろう。
M42マウント。3群4枚のテッサー構成であり、小型かつ
薄型のパンケーキ風の外観である。
ただ、縦横比が小さい(全体に四角い)ので、実寸程の
「薄さ」のイメージは、あまり感じられない。

本レンズの特徴であるが・・
まず、前面から見たデザインがなかなか格好良いところだ。
絞り環やその数値、距離指標などが立体的に見えて、
メカメカしい(=機械らしさ)ところがある。
上手くカメラボディを選ぶと、お洒落なイメージもあり、
現代のカメラシステムと比べ「一周廻って格好良い」という
雰囲気を出す事が出来るだろう。
描写力的な長所は殆ど無い。しかし中身はテッサーなので
基本的には普通に良く写る。
言うまでも無いが「テッサー」とは、ライト兄弟が空を
初めて飛んだ時代の1900年代初頭(百数十年も前)に、
カール・ツァイス社で開発された当時の高性能レンズである。
(注:現代ではツァイス社はカメラ用交換レンズを作って
おらず、ツァイス銘のレンズは、ほぼ全て日本製である。
この傾向は45年程前の1970年代の京セラ・CONTAX時代
から後で、ずっと続いている。
ツァイスの名前が入っていて、しかも値段が高いからと、
それだけで「高性能なレンズだ」と思い込むのは早計であろう、
値段が高いのは、ブランド料が乗せられているからである。
まあでも、値段に恥じない性能を持たせないと、ブランド
イメージが下がってしまうので、その分に関しては、低い
性能のレンズは多くは無い、しかしそこはレンズ種類の個別に
コスパを判断する必要があり、マニア層以外には難しい事だ)
第二次大戦後(1945年~)は、テッサーの特許が切れて
いた事と、シンプルな構成で安価に作りやすい長所もあり、
世の中のレンズ固定型カメラの大半はテッサー型となった。
また、テッサーの名前が付いていない場合でも、基本的
にはテッサーと同等の「3群4枚構成」の事も多々ある。
たとえば、ライツ社製「エルマー」(50mm/2.8等)
や、旧フォクトレンダー社製「カラースコパー」等も、
テッサー型であり、極めてポピュラーかつ普遍的である。

なお、なぜ他社では「テッサー」と呼ばないか、と言えば
テッサーはカール・ツァイス社が保有する「商標」であり
その名前を使いたかったら、ツァイス社に使用料を
払わなければならない。実際に、ローライ社であるとか
京セラ・CONTAXやSONYのビデオカメラ/コンパクトカメラ
では、お金を払って「テッサー」の名前を使っていたが、
そういう風にツァイス社に媚びる必要は無い、と思っていた
だろうライカ(エルンスト・ライツ)社や旧フォクトレンダー
社においては、自社でブランド銘を新たに作っていた訳だ。
こんな状況だから、エルマーだとかスコパーとか、テッサー
という名前が付いているから「良く写る」等と考えるのは
まるっきり的外れだ。それらのレンズの中身は、全てほぼ
同じであるし、ちなみに「大衆機」として非常に多数の
(800万台とも1700万台とも言われる)販売数があった
銀塩ハーフサイズカメラ、OLYMPUS-PEN(ペン)の一部の
搭載レンズ「D.Zuiko(ズイコー)」もテッサー型である。
(参考:OLYMPUSでの「D」とは、A,B,C,Dと4番目なので
「4枚構成」レンズの意味。まあ、3群4枚構成である)
各メーカーのファン層(党)は、自分が贔屓としている
メーカーのレンズは「どこにでもあるテッサーとは違う設計
なのだ、だからXX社のレンズは良く写るのだ」などと
技術的根拠の全く無い「思い込み」をしてしまうのだが・・
基本的にテッサーの構成は、ほぼ完成されたものであるから
銀塩時代を通じて、それ以上の改良はもう困難であった。
まあ、一つはコーティング技術のメーカー毎の差異はあった
であろうが、それにおいても、他社が採用すれば、それに
対抗する技術が出てきて、しばらくすれば、各社同等となる。
それが遅れていたのは、むしろ一部のロシアンレンズである。
西側圏では、T*(スター)やsmcなど、様々なコーティング
技術が開発され、後年においては、もうどれも性能差は無い。
まあ、ガラス素材(屈折率や色分散)を変えて、若干の描写
特性を変える事は可能であろうが(実際にそうした例として
NIKON Ai45mm/f2.8P、2001年等がある)、そうやっても
あまり劇的な改善や差異があるものではなかった。
なお、さらに特殊な素材としては「異常低分散ガラス」
などもあるが、これもまあガラス素材変更の一種である。
また1990年代頃からは「非球面レンズ」の技術が普及して
おり、それを使えば改良は可能であったが、その場合、何も
わざわざ古いテッサー型の構成をベースにする必要は無い。
非球面を使って自由に新規設計すれば、10群12枚などの
非常に複雑だが超高性能の標準レンズを作る事が出来る。
2010年代からの各社(SIGMA、コシナ・ツァイス、NIKON、
TAMRON、TOKINA、PENTAX等)の新世代一眼レフ用標準
レンズは、皆、そうした複雑な構成だ(ただし、大きく
重く、高価な「三重苦レンズ」になる)
よって、テッサー型の利点は現代的視点からすると
「薄型のレンズ」(パンケーキ型)を作れる、などの
デザイン的な側面しか残っていない。
描写性能の不満として、最短撮影距離が伸びる、ボケ質が
破綻しやすい、焦点移動が出る、などの課題を持ち、
また、小型化、薄型化された場合には、「操作性」上の
課題(MF操作や絞り環の操作がやりにくい)が出てくる。

なお、AF化されたテッサー型交換レンズは存在していない。
近代のAFパンケーキレンズは、もはやテッサー型では無いし
AFコンパクト機のレンズ等で、そういう名前が付いている
場合も、オリジナルの構成では無い事も良くあったし、
焦点移動などの課題を無視している場合もあった。
まあ、基本、テッサーは旧世代の技術だと言えるであろう。
本レンズも、テッサーほぼそのものであり、レンズ固有の
価値などは殆ど無いのだが、近年に至るまでロシアからの
直輸入のデッドストッック品が良く流通していた為
入手性はあまり悪くなかった。(現在では、やや入手が
困難となっている)まあ、ロシアンレンズ入門編としては
適しているかもしれない。
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では、次のロシアン。

レンズは、KMZ ZENITAR 16mm/f2.8 Fish Eye
(新品購入価格20,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
恐らくは、1980年代前後に、ロシア(旧ソ連)の
KMZ(クラスノゴルスク機械工場)で生産されていたと
思われる対角線魚眼レンズ。
上に紹介した、Industar 50-2と同じ工場製である。
この工場では、本レンズ名とも関連する銀塩カメラの
「ZENIT」も生産されていた。

M42マウントである。ここで注意しなければならない事は
冒頭に記載したように、一眼レフへ装着する場合に、
「付かない、外れない」あるいは「絞りが開放のまま」
といった様々な問題点が生じる危険性がある事だ。
ロシアンレンズには個体差(作っている国営工場も、
時代や国策により異なっているかも知れない)もあり、
どのレンズと、どのカメラの組み合わせならば、安全だ、
危険だ、などの安直な判断は出来ない。
ではどうするのか? というと、このレンズの場合は
銀塩時代から、銀塩EOS、初期デジタルEOSなどへの
各時代のカメラとの装着と取り外しテストを繰り返し、
「安全な組み合わせである」事が自身で確認できている
ので、やっと使える訳だ。
つまり、事前確認作業が必須である、という事になる。
(注:同じレンズでも、他者の保有物ではその保証は無い、
あくまで、自身の保有するシステム内での検証が必須だ)
まあ、中上級マニアであれば、古い機体等も沢山持って
いるだろうから、こういう検証作業は出来ると思う。
初級マニア等において、古い時代からの長期に渡っての
カメラを持っていない場合、基本的には最新カメラ等に
いきなり装着する事は極めて危険なので全く推奨できないが、
どうしても、という場合は、ジャンクの銀塩機やデジタル機
を買って来てのテストが必要であろう。
なお、カメラは同一マウントでも時代により仕様が異なる為、
そういう基礎知識を持っていないと、銀塩NIKON機には装着
できたからと言って、最新のNIKONデジタル一眼レフに装着
できるとは限らない。(マウント仕様が微妙に変化し続けて
いるからである)
やはり、ロシアンレンズは、そのあたりの詳細な知識を持つ
上級マニア専用(御用達)という事にしておきたい。

本魚眼レンズの購入は1990年代後半で、この頃は中古
カメラブームであった事、そしてソビエト崩壊後で輸入が
しやすくなったのか? 様々なロシアンレンズが新品でも
販売されていた。本レンズも、そうした中の1本である。
一般に対角線魚眼レンズは、カメラメーカー純正品は
高価である。これは勿論、部品代が高いとか、性能が良い
とかが理由ではなく、「あまり売れないから」が高価な
原因となっている。つまり、レンズの開発や製造にかかる
費用を販売本数で割って「償却」する必要があるからだ。
ちなみに、そうやって価格を決めるのは、まだ20世紀型
での良心的な手法であり、現代ではもっとえげつなく、
「いくらだったら売れるか?」という観点から商品の
価格が決められている。だから、消費者が欲しがるような
豪華なスペック、または「見栄え」や、過剰なサービス等
により、多くの商品がプレミアム価格化してしまう訳だ。
(注:本ブログでの「プレミアム」とは、語源の本来
の意味での「過剰に高価」という観点である。ただし
近年の市場では「プレミアム」を、「贅沢な高級品」と
いう意味で使うケースも多く、要注意だ)
まあ、とは言え、コスパを判断するユーザー層も勿論
多い訳であるから、そういう事は「言わずもがな」の
常識かも知れないが・・
そして、本魚眼レンズは安価である。おまけに対角線
魚眼レンズは、トイレンズ等を覗き、基本的な描写力は
どれもあまり変わらないような気がしている。
つまり、どれも普通に良く写るように感じるが、まあ
魚眼レンズの特殊な写りで、描写力うんぬんを言う方が
おかしいであろう。つまり、単に魚眼っぽく写っていれば
それで良い訳だ。
・・であれば、前述のように一般的な魚眼レンズは割高
でありコスパが悪い、という課題を、本レンズのような
ロシア製魚眼レンズで解消できる。つまり、これで十分
であり、これ以上高価な魚眼レンズを買っても殆ど意味が
無いという事になる。
それに、魚眼レンズなど、実際の実用撮影では、まず
滅多に使う事は無いし、使ったとしても、構図を整える
のがかなり難しくて、すぐにメゲて嫌になる事だろう。

私は、近年では、その魚眼での「構図の難しさ」を逆用
して、構図調整のトレーニングを行う為に、魚眼レンズ
を活用する事も非常に多い。
これについては、毎回の各種魚眼レンズの紹介記事でも
書いているが、撮ろうとする画面内の、どの部分の
直線性を維持し、どの部分を歪ませるか、という練習は
恐ろしく高度であり、優に上級者以上のスキルが必要と
される訳だ。その練習の為、魚眼レンズを使うというの
であれば、まあ、そういう方向性もあるとは思っている。
幸いにして、近年より、中国製等の安価な魚眼レンズが
色々と新発売されている、それらを購入し、練習してみる
のも悪く無いであろう。
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さて、3本目のロシアン。

レンズは、Jupiter-9 85mm/f2
(新品購入価格 5,000円)
カメラは、CANON EOS 8000D(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第26回記事等で紹介の、
1960年代~1990年頃のロシア製MF中望遠レンズ。
マウントは色々と存在するが、本レンズはM42マウント
版の製品である。
注:上記システムの組み合わせは、第一に「危険」である。
ちゃんとレンズが安全に脱着が出来るかどうかを、事前に
十分に検証する必要がある。
第二に、このシステムでは母艦のMF性能が低すぎて、
ちゃんとしたピント精度が出ない。まあ、たまたまピントが
合っている写真を選ぶしか無い、という事だ。
(今回は、あえて「限界性能テスト」の為に、初級機で
あるEOS 8000Dを使用している次第だ。また、万が一外れなく
なったとしても被害が少ない、という「負の理由」もある)

さて、Jupiterは、あまりにも有名なロシアンレンズである。
銀塩時代(中古カメラブーム時代)からの中級マニア以上
であれば、本レンズを所有していない人を探す方が難しい
状態であろう。
単に「ジュピター」または「ユピテル(ロシア語読み)」と
言えば、基本は本85mm/F2仕様のものをマニア間では指す。
(注:実際には、他にも様々な焦点距離や仕様のJupiter
レンズが存在している)
カール・ツァイス製のゾナーのデッドコピー品と言われ
(注:実際にはSonnar 85mm/F2とJupier-9はレンズ構成
が異なる)安価で良く写るレンズとして、ロシアンレンズの
代名詞(筆頭格)ともなっている。
しかしながら、そのベースとなったゾナー85mm/F2とは、
第二次大戦前(ドイツ東西分断前)の、1930年代位の製品
の事であり、第一次中古カメラブームの時点で既に60年
以上も前のオールドレンズであり、現代の時代からは、
80年以上も、下手をすれば90年近くも前の古い設計の
超オールドレンズである。
戦後のドイツ東西分断により、ツァイスの技術はそこで
凍結されてしまい、その設計が東欧やロシア(旧ソ連)に
流れたとしても、そこからは技術的に大きく改良される事は
無く、ひたすら20年も30年も、Jupier-9(や、他のレンズ)
をロシアでは作り続けていた訳だ。
だから、現代の感覚からすれば、Jupiter-9は、とてつも
無く古い時代のレンズであり、その後の国産レンズで
行われた、いくつかの技術革新、すなわち多層コーティング、
異常低分散レンズ、非球面レンズ、コンピューター光学設計
などによる高性能化や進化と比較すると、もう明らかに
冷凍睡眠(コールドスリープ)で、時が止まってしまった
ような感覚を持たされるレンズとなっている。

まあ、もし本Jupiter-9が、中古カメラブームの時代の
ように新品でも5000円~6000円で入手できるのであれば
現代の感覚においても「コスパが良い」と見なす事は出来る。
でも、仮に1万円台後半(あるいは、近年では3万円台)
以上もの高額中古相場になっていたら、もうその時点で
本レンズ入手の必然性は無い。
その値段を出すならば、Jupiter-9の85mm/F2という
スペックと類似の高性能な近代レンズは、中古市場で
よりどりみどりで選べるからである。
例えば、TAMRON 90/2.8 Macroの旧世代のバージョン、
同60/2 Macro(APS-C専用)、NIKON AiAF85/1.8、
中一光学Creator 85/2、SONY SAM85/2.8等は、
同じような1万円台後半の中古(又は新品)価格で
入手が可能であるし、Jupiter-9よりも性能的にも
用途的にも優位性がある。
あるいは、6万円程度の購入予算があるならば、中古で
TAMRON SP85/1.8、PENTAX-FA77/1.8あたりが買え、
これらは、Jupiter-9など足元にも及ばぬ高描写力であり、
全一眼レフ用交換レンズを通して見ても、これらは
トップクラスの「超名玉」の単焦点中望遠レンズだ。
ちょっと頑張って予算を貯めて、中古市場に多数ある
これらを購入した方が、現代では入手しずらいJupiter-9
を必死に探すより、ずっと合理的な選択となるだろう。
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さて、次のロシアン

レンズは、Cマウント版 Jupiter-9 85mm/f2
(中古購入価格 15,000円)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

発売年不明、ソ連製KIEV(キエフ)や独製の旧CONTAX
レンジファインダー機用の、通称「Cマウント」のレンズ
であるので、1950年代くらいの製品であろうか?
中身のレンズ構成も不明、前述のM42版のJupiter-9と
同じかどうかも、良く分からない(汗)
本ブログでは、およそ4~5年ぶりの登場になるが、
「滅多に使わない」というその理由は、ともかく使い難い
レンズであるからだ。
現代においては、このCマウントのレンズは、NIKON S用
アダプターを用いてミラーレス機に装着する事になるが、
およそ60年以上も前の古いレンズであり、マウント仕様
又は工作精度の違いにより、きっちりと装着できない。
ピントリング(ヘリコイド)も経年劣化で重くなっていて
ピントを廻す際、レンズマウント部まで一緒に廻ってしまい
気を抜くと、レンズが脱落してしまう危険性がある。
(その為、従前の本レンズの紹介記事では、ピント距離を
固定で使用していた位であるが、今回は無理をしてピント
リングを廻して使っている)
描写力もスペシャルという訳でも無く逆光耐性も非常に低い。
最短撮影距離も前述のM42版Jupiter-9が、80cmであった
のに対し、本レンズは1.15mと長い。

まあ、とても実用撮影に向くとは言えないレンズであるので、
早々に紹介は終了しよう。勿論、現代において必死になって
探すような類の希少価値とかも、まるで無い。
購入時の価格が15000円と、性能に比べて極めて高価であり
コスパが非常に悪くなってしまったのも個人的な反省点だ、
まあ、中古カメラブームの時に「珍しいから」という理由や
「Cマウントのシステムを組みたい」という、興味本位だけで
買ってしまったのだ(汗)
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さて、では今回ラストのロシアンレンズ

レンズは、Телеар-Н 200mm/f3.5
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ Limited(μ4/3機)
出自不明のレンズ、キリル文字を英字アルファベットに
直すと「TELEAR-N」となる。「TELE」の部分は望遠レンズ
という意味で、最後のNはニコン(風)マウントの意味だ。
ただし、例によって、ニコン機に直接装着するのは大変
危険であるので、必ずマウントアダプターを介して
ミラーレス機で使う必要がある。(これは重要な注意点だ)

本レンズも4~5年ぶりの登場であるが、まず、絞りが粘って
いて故障している事がある。だから開放固定での撮影となるが、
意外にも描写力は、さほど悪いものでもない。
メーカー名も不明。・・と言うかロシア(旧ソ連)において
はメーカーという概念は無く、前述のKMZ(工場)とか、
ベラルーシ、レニングラードなどの、いくつかの国営レンズ
工場で、時代等に応じて、分散して作っていたそうである。
(まあ、だから個体差もあるのだろう)
ソビエト崩壊後は、例えばウクライナのキエフにある
「アルセナール」工場(又は「アーセナル」とも読む。
KIEVやMIRを作っていた)等は後年は国営工場と言うよりは、
西側で言う所の「光学機器および電子部品メーカー」の
ように変遷していった模様である。
本レンズのレンズ構成などは知らない(調べていない・汗)
まあ、たいてい200mm級の望遠は、4群6枚、5群5枚とか
そんな感じのシンプルな設計であろう。
レンズ構成自体よりも、例えば屈折率の異なる凹凸レンズの
張り合わせによる「ダブレット」を使って、色消し
(アクロマート)構成になっているかどうかとか、そういう
点が重要なのかも知れないが、まあ、今となってはそれも
どうでも良い話だとも言える位、古い時代のレンズである。
なお、他に200mm/F3.5級レンズは、1970年代頃の、
ミノルタのものやコニカ製の同スペックのレンズを所有して
いて、過去記事(ミラーレス・マニアックス等)ても何度か
紹介しているが、不思議な事に、いずれも比較的良く写る。
まあ、1970年代当時は、200mm望遠と言えば、開放F4又は
F4.5~F5.6といった、暗い(小口径)の製品が主流であり
F2.8級は、当時はまだ技術的に作れなかったという事情も
あったからか、F3.5版は、各社での「高級レンズ」として
しっかりと設計されていたのかも知れない。
ただし、200mmのF4級に比べ、F3.5級は開放F値がほんの
半段ほど明るいだけなのに、急に「大きく重く高価」
という「三重苦レンズ」に変貌してしまう。
だから、多少若干良く写ったとしても、基本的には
あまり外に持ち出したく無いレンズになってしまう訳だ。
(注:高価なのは発売当時の定価であって、現代においては
このクラスの単焦点MF望遠レンズは、古くて不人気なので
いずれも中古で数千円程度で入手可能である為、むしろ
コスパは良いとも言えるであろう)

で、本レンズであるが、μ4/3機で使用する場合、
400mm単焦点相当、あるいはデジタル・テレコン2倍で、
800mm単焦点相当の画角となり、被写体選びが大変難しい。
勿論、なかなか、この画角に合う被写体が無い事や
前述の「大きく重い」事もあいまって、ますますこうした
200mm準大口径レンズの出動機会は減ってしまう。
すなわち、「エンジョイ度」も「必要性」も評価が低い
レンズとなる事は、どうしても否めない。
なお、一応オリンパス機では内蔵手ブレ補正が効くのだが、
800mm相当ともなると完全に精度不足となるので、手ブレ
補正機能に頼りすぎる事も禁物だ。また、E-M5Ⅱには、
AUTO-ISOでの低速限界設定機能が存在していない。
よって、AUTO-ISOのまま使用すると、シャッター速度が
1/100秒や1/125秒あたりをウロウロとしている事となり、
初級層の手ブレ限界シャッター速度(=焦点距離分の1秒)
を大きく下回る為、内蔵手ブレ補正があっても、安心は
できない状態だ。
(後年のPEN-FやE-M1Ⅱ等のように)ISO低速限界設定が
あれば、それを1/500秒とか1/1000秒に設定しておけば
安心なのだが、無いものは無い訳であり、この場合は、
手動ISO設定変更を頻繁に行い上記の手ブレ限界シャッター
速度を常に上回るように注意しないとならない。
操作性が煩雑になるが、やむを得ない。こうしたオールド
レンズを使う場合は、画質面、技法面などに様々な細かい
配慮が必須となり、その対策法がわからない初級中級層では、
ちゃんと使いこなせる類のものでは無い訳だ。

ロシアンレンズの総論であるが、まあともかく、さほど
使いこなしが簡単なものでは無いし、各レンズの入手性も
現代では極めて悪い。そして仮に無事入手できたとしても、
システムを成り立たせる為の、ボディ装着の要件などが
色々とあって、知識、保有機材、リスクなどへの条件が
とても厳しい。
そうやって、なんとか苦労してシステムを成立させたと
しても、現代新鋭レンズに比べての描写力はイマイチである。
決して、先輩マニア等が言うような「ロシアンレンズは
良く写る」などの感想は得られないであろう。
まあ「必要性」はゼロに近いロシアンレンズ群ではあるが、
幸いにして「マニアック度」は、満点に近いものばかりだ。
そういう方向性を志向する、すなわち「好事家」向けの
機材であり、上級マニア層の中でも、ごく一部の志向性に
限定されるであろう。
あまり初級中級マニア層が安易に手を出して良いような
機材ジャンルでは無い事は、重ね重ね、述べておく。
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それと、最後に余談だが、こうした「ロシアンレンズ」
等の「ハードウェア」ばかりに注目しすぎてしまうと、
肝心の「写真」において、「何をどう撮りたいのか?」
という意識を見失ってしまいかねない。
ごく最近の話だが、京都の公園にアマチュアカメラマン
達約10人が、無許可で照明機材を持ち込んで無断で
柵の中に設置して「夜桜のライトアップ」を撮っていた
事が社会問題となり、その旨が新聞にも載っていた。
「カメラマンのモラルやマナー意識が低い」との事だ。
(=勿論、環境保全や、植物や生物の生態系の保護の
観点からも、そういった行為は一切禁止されている)
まあ、公共マナー問題等も、勿論とても重要なのだが、
「自分なりに何をどう撮りたいか?」という観点が弱いと、
「夜桜ライトアップを撮れば、SNS映えする」等の
単純すぎる発想になってしまうのであろう・・
昔から、本ブログでは、俗称「三脚族」等による、
こうしたマナー違反は、よく問題として挙げているが、
近年では減ってきたか?と思いきや、まだまだ残って
いる事は、なんだか残念な話である。
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さて、今回の記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。