本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。
今回は「85mmレンズ 超マニアックス」という主旨で
マニアックな、焦点距離85mmのレンズを9本紹介しよう。
(注:全てフルサイズ対応レンズである。
実焦点距離が85mmのレンズで、APS-C機以下対応の
物は極めて少なく、史上2~3機種位しか存在しない。
まあ、85mm=人物撮影用という概念からであろう。
ただしミラーレス機用の新鋭海外製レンズ等で、今後
85mmのAPS-C以下用レンズは増えるかも知れない)
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ではまず、最初のシステム

レンズは、中一光学 CREATOR 85mm/f2
(新品購入価格 22,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
ハイ・コスパレンズ・マニアックス第23回記事等で
紹介の、2014年発売の中国製MF中望遠レンズ。
NIKON Fマウント製品だが、「実絞り型非Ai仕様」の為、
Df以外のNIKON機で使うのはかなり苦しく、実用上では
マウントアダプターを介してミラーレス機で使うのが良い。

85mm/F2と言うと、ゾナー系(あるいはJupiter-9系)の
レンズ構成を想像するかも知れないが、本レンズの構成は
ゾナー型ではなく、独自設計であると思われる。
現在、本レンズは「半故障」状態である。F22まで絞り
込むと、絞りの形が半月状に乱れてしまうのだ。
だが、これは実用上では全く問題無いので修理に出しては
いないし、絞り込む途中でも絞り形状がやや乱れる事が
あるので、元々こういう類の仕様なのかも知れない。
「中国製レンズ」というと、製造品質に懸念を感じる人も
多いかも知れないが、近年においては全く問題は無い。
現在、私は30数本の中国製レンズを所有し、実際にも良く
使用しているが、上記のような実用上では問題が無い程度の
半故障品が、本レンズと他に1本あるだけで他はオッケーだ。
まあ特に、この「中一光学」は30年以上の老舗メーカーで
ある。そうちょくちょく不良を出していたら、市場での評判
を落として、とっくに撤退してしまっている事だろう(汗)
「店が汚いラーメン屋は常に美味い」という理屈と同じ事
であり、長く生き残っている、という事は、それなりに
ちゃんと仕事をしている、という意味とイコールだ。
本レンズは安価で比較的高描写力である為、コスパが良い。
ただまあ、2018年頃からは、さらに安価な1万円台等の
価格帯で多数の中国製新鋭レンズが市場参入してきている
ので、現代の視点からすると、国内市場へ初期参入した
中一光学は若干値段が高いようにも思えてしまっている。
(注:この為、量販店等では新品価格が下落している)
まあでも、レンズの作りも良く、国産のローコストな
入門用レンズ等とは一線を画する高品位なレンズだ。
中国製レンズの入門用としても、同シリーズのCREATOR
35mm/f2(前記事で紹介)と合わせておすすめである。
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さて、次のシステム

レンズは、MINOLTA (TELE) ROKKOR MC 85mm/f1.7
(中古購入価格 16,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
1970年代頃と思われるMF中望遠レンズ。
TELEの表記は、出典によっては書かれている事もあるが、
レンズ上にはTELEの文字は書かれていない為、TELE無し
の名称が正解だと思われる。
非常に希少なレンズであり、そう簡単に手に取る事は
できない。すなわち間違った情報においては、実物を見た
事も無い状態で情報提供をしているのであろう。
こういう事態が世の中には、あまりに多いので、個人的
には「所有もしていないレンズの事を語るなかれ」という
戒め(ルール)としている。

さて、本レンズは故障品だ。絞りが粘ってしまっていて
ほぼ開放のままとなり、自在にコントロールする事が
出来ない。
ただ、これの原因は「経年劣化」である。私が所有する
MINOLTA製のMFレンズは、かなり数が多いが、いずれも
銀塩時代(製造後20年程度の1990年代)では、まだ
ちゃんと動作していたのが、ミラーレス時代(2010年代、
製造後40年程度)ともなると、ほぼ、古いものから順に
絞りの粘りが発生し、今では1970年代以前のROKKORの
数本が同様な故障(劣化)状態となってしまっている。
前述の「中国製レンズ」の品質の話では無いが、国産の
高品質なレンズであっても、さすがに歳月には勝てない。
こういう状況もあって、近年においては「カメラやレンズ
の寿命はおよそ50年」と考えている。それより古い時代の
物を持っていたとしても、もういつ壊れてもおかしく無く、
実用価値は極めて低いと判断せざるを得ない。
事実、そうやって製造50年を過ぎたカメラやレンズは
廃棄あるいは死蔵させるようになってきているので、
本ブログでも、あまりに古い機材は登場する事は無い。
(例:銀塩一眼レフ・クラッシックスのシリーズ記事では
1970年代の機種からスタートしていて、それ以前の
カメラは一切登場しない。何故ならば、古すぎて既に
殆ど全てを処分してしまっていたからである)
本MC85/1.7であるが、球面収差等の解像感に係わる要素を
優先的に設計した模様であり、諸収差の内、像面湾曲や
非点収差の補正に手が廻っていない。従って、ボケ質の
破綻が頻発し、かつ、基本的に常にボケ質の悪いレンズだ。
ただまあ、この弱点は回避可能な要素とは言えるのだが、
その為には絞り値のコントロールを主に行わなければ
ならない、しかし絞りが故障しているので、そこの制御が
ほぼ不可能だ。
まあ、もうさすがに実用価値ゼロという感じになるだろうか、
希少なレンズ故に、少々もったいない気もするのだが・・
(追記:常々勿体無いと思っていたので、後日、用途開発を
行っている。本レンズに「補正レンズ内蔵マウントアダプター」
を装着すると、軽い「ぐるぐるボケ」が発生する事から・・
「ぐるぐるボケ」の研究用、および正規の「ぐるぐるボケ」
仕様のレンズとの比較検証(リファレンス)用途において、
本レンズを活用するようにしている)
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では、3本目の85mmレンズ

レンズは、smc PENTAX-FA ★ 85mm/f1.4
(中古購入価格 43,000円)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)
1992年頃に発売のAF大口径中望遠レンズ。
2000年頃に、傑作レンズFA77/1.8と置き換わるように
生産中止となってしまい、その後、PENTAXからは、
85mm/F1.4レンズが(2020年になるまで)発売
されなかった為、後年には投機対象となってしまい、
プレミアム価格となった。
発売期間での定価は、確か98,000円程度であり、
AFの85/1.4としては安価な類のレンズであったのだが、
後年のプレミアム相場時は、12万円か、それ以上の、
定価を超える高値相場となっていた事もある。
本ブログの初期の記事では、名玉FA77/1.8との比較
の為に本レンズの紹介を良くしていたのだが、後年には
このプレミアム相場を見て、意識的に、あまり記事には
登場させないようにしていた。
まあつまり、希少価値とかの理由で、レンズが投機対象と
なってしまう事には賛同できない為だ。

本レンズは悪い描写性能では無いが、まあ、比較的
普通の(一般的な)85mm/F1.4である。
あえて弱点を言うならば、デザイン(注:ここでは外観の
「意匠」(見かけ)の事を示す)が壊滅的に悪い事だ。
このバブル期に企画されたPENTAXのカメラもレンズも
いずれもデザインについては、現代的視点からは違和感が
大きすぎる。極めつけは金魚鉢のような無骨なフードで
あり、これを付けて撮影したいと思った事は一度も無い。
本レンズと置き替わったFA77/1.8の、高品位で優美な
デザインとは対照的であるし、描写力も当然ながら、
超傑作レンズのFA77/1.8には一歩譲ってしまう状態だ。
もし本FA★85/1.4の方がFA77/1.8よりも優れていたら
本レンズも後年まで併売されていたと思うが、残念ながら
そうでは無かったので、要は「FA77/1.8が全ての点で
上回っていた」という判断であったのだろう。
ただまあ、発売時ではさほど描写力が低いレンズでは無い。
ごく近年の新設計・新鋭の85/1.4を除き、銀塩AF時代での
85/1.4の対決をするならば、間違いなく決勝戦には進む
レンズであろう。
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さて、次のシステム

レンズは、CONTAX Sonnar T* 85mm/f2.8 (AE)
(中古購入価格 25,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
1975年、CONTAX RTS(銀塩一眼第5回記事)の発売時点
からラインナップされていた小口径MF中望遠レンズだ。
(レンズ上表記は「Carl Zeiss Sonnar 2.8/85 T*」
となっている。上記の型番表記は独自の記載法だ)
しかし、まったくの不人気であり、後年にはセミレア
レンズとなってしまっていた。
何故ならば、ヤシカ/京セラCONTAXには、同じ85mmで
超有名かつ人気レンズである(RTS)Planar 85mm/f1.4
が存在していたからだ。金満家であろうが、なかろうが、
どのCONTAXユーザーでも、必ずPlanar 85/1.4の方を
志向して購入する。(注:そちらの購入に誘導する
為に、低カタログスペックの本レンズを併売したの
ではなかろうか?という想像をする事もできる)
だけど、世の中にはあまり知られていない事ではあるが、
RTS Planar 85/1.4は「使いこなしが困難なレンズ」の
ベスト(ワースト)10に確実に入る最難関レンズである。
(レンズ・マニアックス第12回記事参照)
だから、上級者であろうがマニアであろうが誰であろうが、
(RTS)Planar 85mm/f1.4の最大性能を発揮する事など
誰も出来ない。何故ならば、使いこなしが困難な理由の
大半は銀塩時代の機材/撮影環境に依存するものであり、
そこは銀塩写真である以上、誰にも回避出来ない故である。
で、使いこなせようがなかろうが全CONTAXユーザーが
Planar 85/1.4を志向する訳だから、本Sonnar 85/2.8
を高く評価する人は、殆ど存在しない。(そもそも売れて
いなかっただろう)

そして、実際のところの描写力も、そんな感じであり、
本Sonnar 85/2.8に好評価を与える要素も殆ど無い。
オーソドックスな設計である事も合わせて、純粋な
描写性能も、さほど優れたところは無いのだ。
けど、1970年代の技術水準と機材環境(状況)からすれば、
他社においても、特筆すべき高描写力を持つ85mmレンズは
ほぼ存在していない状況であったので、その当時においては
もっと高く評価されるべきレンズであっただろうとも思う。
まあ、様々な状況があって、あまり注目されなかった悲運の
レンズであると思う。
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では、5本目のシステム

レンズは、KENKO MC SOFT 85mm/f2.5
(中古購入価格 16,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)
恐らくは1980年代~1990年代位のMFソフトレンズ。
本レンズも、レンズ・マニアックス第11回記事
「使いこなしが難しいレンズ特集」で、ワースト6位
にランクインしてしまった難関レンズである。
一般的な、1群2枚構成(ベス単フード外し)型の
ソフト(軟焦点)レンズに比べ、さらにピントの山が
判別不能であり、そもそもMFでピントを合わせる事が
極めて困難である。

一眼レフの光学ファインダーでは困難な事は元より、
ミラーレス機のMFアシスト機能(ピーキングや画面拡大等)
を用いても、ピーキングすら反応せず、お手上げである。
なお、自作(独自開発)超高精度ピーキング・アルゴリズム
であれば、本レンズにおいてもピーキングが作用するのだが、
(下写真。プログラミングシリーズ第3回記事参照)

残念ながら、現代のミラーレス機では、ここまで高精度な
ピーキングは搭載されていない。・・と言うのも演算速度を
要求されるからであって、カメラ用では毎秒30~60コマ
でピーキング計算処理が出来ないとならないが、自作の
本アルゴリズムは計算が複雑で、1枚の画像あたり、PCでも
数秒も処理時間かかってしまう、これでは、カメラへの
搭載は不可能であろう。
ソフトレンズのピント問題はさておき、本レンズは
現代の中古市場では、なかなか流通していない。
で、実用的には、ソフトレンズのカテゴリーにおいては、
トップクラスの「表現力」を持つのは確かではあるが、
同時にトップクラスの使いこなしの難しさを合わせ持つ。
そして、さらには、入手性の低いレンズでもあるので、
これを無理して探す必要も殆ど無いであろう。
現代においては、新製品のソフトレンズも僅かな機種数で
あるが、LENSBABYや安原製作所から販売されている。
(追記:安原製作所の製品は、諸事情により、今後は
新品の入手が困難だ)
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では、6本目のシステム

レンズは、CONTAX N Planar T* 85mm/f1.4 (Nマウント版)
(新品購入価格 115,000円)(以下、NP85/1.4)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
2002年に発売された、京セラCONTAX「最後のプラナー」
本シリーズ第48回記事等、多数の過去記事で紹介している。
マニアック度の非常に高いレンズではあるが、超希少な
レンズであり、かつ「CONTAX」というブランド力があるが
故に、残念ながら「投機対象」となってしまっている。
これ以上、あれこれと本レンズの露出度が高くなると、
相場吊り上げの片棒を担いでいるようで、好ましく無い。
(注:本レンズは、個人的には売却する気は毛頭無い)
だけど、本レンズに限らず、投機対象レンズが、ここの所
何度も本ブログに登場するのは、別の意味もある。
それは「希少レンズは手に入らないし、情報も無いが故に、
ユーザー層は過度な期待や幻想を持ってしまう」という
中古市場における問題点を鑑みての話だ。
つまり、見た事もないし、たまたま誰かが「これは凄い!」
などと言ったら、「どうしても欲しくなってしまう」という
人間の心理がある、という事だ。そして購入層の中には、
値段を吊り上げて転売して稼ぎたいと言う心理もあるだろう。
(まあ、それがすなわち「投機」という意味だ)
よって、近年の本ブログでは、それらの希少レンズの
長所短所を述べているし、実際にそのレンズで撮った写真
も掲載している。まあ「公正な情報」を提供している訳だ。
その上で、本当に欲しいものかどうか?を、ユーザー個々に
判断すれば良いと思う。
ちなみに、コレクターとか投機層は、対象レンズにおいて
写真を撮る事はまずしない。何故ならば「使用感」が増して
「程度」が悪くなると。それを売却する際に値段が下がって
しまうからだ。
だが、私の場合は「カメラやレンズは写真を撮る為の道具だ」
と思っているから、希少レンズであろうがガンガンと使う。
実際に何本かの投機対象レンズは、20年間以上もの使用経験
があり、数万枚を撮影したレンズもある。
そこまで撮らないと、わかって来ない事も多々ある為、
写真を撮らずに、ただ保管しているだけの状態とは、情報量
の差は歴然としているであろう。

本NP85/1.4であるが、旧来のRTS Planar85/1.4から実に
27年ぶりのリニューアルである、旧製品にあった弱点の
1)ピント精度が得られない
2)ボケ質の頻繁な破綻
3)焦点移動
・・については、本NP85/1.4では良く改善されている。
ピント精度の課題は、本NP85/1.4と組み合わせる事を
前提に発売されたCONTAX N1(2000年、銀塩一眼第24回
記事参照)に搭載された「フォーカス・ブラケット」機能
で、これへの対策を図った。
ボケ質破綻と焦点移動については、レンズ構成および
フォーカシングにおける内部レンズ(群)移動方式の改善
により、これも向上。まあ、27年も時を隔てているので、
様々な技術的な改良は当然であろう。
総合的な描写力は高いレンズである。個人的な感覚では
名玉である旧製品RTS Planar 85/1.4に勝るとも劣らないし
RST版では、歩留まり(成功確率)が僅かに3%以下で
あった「使いこなしの難しさ」(すなわち、36枚撮りの
フィルム中、平均1枚程度しか、気にいった写真が
得られない。→ピンボケとボケ質破綻がその主因である)
・・に関しても、本レンズでは相当に改善されていて、
ミラーレス機使用の前提では、歩留まりは、恐らく15%
以上にまで向上している事であろう。
一見何も文句はなさそうではあるが、では弱点は何か?
以下にあげよう。
1)極めて希少であり、入手が大変困難である事。
2)本来の実力値としては、6万円程の相場であろうが、
それ以上のプレミアム相場となっていて高額すぎる。
(注:6万円以上も出すのであれば、近代の超高性能85mm
レンズが中古で買える。具体的にはSIGMA Art85/1.4と
TAMRON SP85/1.8(それぞれ本シリーズで紹介済み)
であり、それらの描写力は、本NP85/1.4を上回る)
3)無理して入手したとしても、現代で使える機材環境が無い。
A)希少なCONTAX N1を母艦として入手すれば使えるが、
今更フィルム撮影も、しんどいであろう。
(注:デジタル機「N Digital」は、技術的な未成熟が
あって極めて不人気、かつ高額だった故に、超レア機だ)
B)かつては「N→EFマウント改造」と「Nマウント用
電子アダプター」が存在したが、ユーザー数が少ない
為に(商売にならず)現在ではそれらは行われていない。
C)残る方法論は「絞り羽根内蔵Nマウントアダプター」の
利用である。この方法ならばミラーレス機等で使用可能
であるが、この機構は、本来の絞りの「開口絞り」では
なく、レンズの後玉からの光束を遮る「視野絞り」で
あるので、露出値調整は可能ではあるが、被写界深度の
調整やボケ質のコントロールには殆ど効能が無い。
すなわち殆ど常に開放で撮っている事になり、NP85/1.4
レンズ本来の特性を発揮・制御する事が出来ない。
・・という事で、これらの弱点は深刻であり、現代では
実用的に本NP85/1.4を使用する事は、まず出来ない。
「(国産)CONTAX最後のプラナー」という歴史的価値および
「鎮魂」の意味からの所有価値は高いが、それ以外には何も
残っていない状態とも言えるので、推奨は全くできない。
前述のように、2010年代後半からは、やっと本レンズを
超える描写力を持つ新鋭85mmレンズも発売されているので、
単に最高の85mmが欲しければ、それらを買えば良い。
また、「プラナー」や「ツァイス」の「名前」に拘るならば、
COSINAやSONYから、その名前を冠したレンズが販売されて
いるし、さらにプラナー(1897年の設計)から100年以上も
進化した(プラナーをベースに大改良した)最新の設計名称
(OtusやMilvus)の新型レンズも色々発売されているので、
(高価ではあるが)それらを入手した方が簡便であろう。
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さて、7本目のシステム

レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO 85mm/f2
(中古購入価格 39,000円)(以下、OM85/2)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
発売年不明、恐らくは1970年代のレンズだ。
「オリンパス中望遠F2 三兄弟」(85mm,90mm,100mm)
の末弟である。(本シリーズ第33回記事参照)
だが、優秀な兄達に良い所を取られてしまったのか(汗)
本OM85/2には、これと言った特徴が無い。

課題としては、オーソドックスすぎるレンズ構成に由来
するものであろうか? 4群5枚(注:4群6枚の情報あり)
の設計は、シンプルであり、あまり描写性能上の利点や
特色を持たせる事が難しい。まあ他社の1970年代85mm
小口径にも同様な特色(長所とも短所とも)があるが、
他社においては85mm/F1.4級の大口径を併売するケース
も多かったが、オリンパスではそれが行われていない。
小型軽量を目指したOMシステムでは、標準レンズを除き、
F2が最大口径であったから、ラインナップ戦略上の都合
だとは思う。
で、多社においても1970年代の85/1.4は、技術的な
成熟度が低く、あまり優秀なレンズは存在していない。
前述のRTS Planar85/1.4は、当時としては例外的に
高描写力は得られるが、弱点が多い事も前述の通りだ。
そして、大口径F1.4版と小口径F1.7~F2.8版を
併売する際、ラインナップの価格戦略上、小口径版に
あまり凝った設計を施す事が難しいのだろう。
それでも50mm標準レンズでは1970年代には設計完成度
が高まっていて、50mmでは小口径版の方が大口径版より
描写力が高い事が通例ではあったが、85mmレンズでは、
そうとは限らない。
まあ、本レンズの場合においても、特に特徴が無いレンズ
と言えるであろう。上手く使いこなせば、当時のゾナー
タイプの85mm/F2級と同等のパフォーマンスを発揮できる
事は確かだが、それはすなわち、本レンズでなくても、
代替できるレンズは複数存在する、という意味でもある。
当時のOMシステムにおける、小型軽量で実用的な中望遠。
それ以上でもそれ以下でも無いので、現代のアダプター
時代においては、あまり利用価値がある訳でもない。
まあそれでも、OM当時の雰囲気の「ノスタルジー」から、
今回は「OM-3Ti」の意匠を引き継いだE-M5ⅡLimitedを
母艦として、エンジョイ度を高めて使用している次第だ。
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さて、8本目のシステム

レンズは、NIKON Ai NIKKOR 85mm/f1.4 S
(中古購入価格 60,000円)(以下、Ai85/1.4)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)
1981年頃(NIKON F3の時代、銀塩一眼第8回記事参照)
に発売されたMF大口径中望遠レンズ。
前記事では、いつ紹介したか忘れたくらいの(汗)
久しぶりの登場のレンズであるが、別に嫌いなレンズ
だった訳ではなく、むしろ好みのレンズである。
単に、たまたま出番が少なかっただけの状況だ。
これ以前、1970年代のNIKKORレンズは、描写傾向
(=設計コンセプト)において、「解像力の向上」を
主体としたレンズが殆どであった。
その理由だが、当時のNIKKORは「報道」および「学術」
の分野で高く評価され、主要ユーザーと用途もそれで
あった為、まずは「被写体がくっきり、はっきり」と
写っている事が最優先とされたのだ、と容易に類推できる。
反面、解像力を優先すると、どうしても像面湾曲や非点
収差などの収差補正がやりにくく、すなわちこれらは
ボケ質の破綻(あるいは描写が固い)等の弊害を生じる。
よって、NIKKORレンズは、アート系やファッション系、
広告宣伝系、一般撮影等の用途に向かない、という課題に
繋がった事となり、ライバル他社のレンズでは、それら
別市場や別用途に向けての市場開拓を意識した、ボケ質に
優れた、または描写傾向の柔らかい大口径レンズの設計
コンセプトを実践し始めていた時代であった。
NIKONでもこの問題に対処する為か、この1980年代
くらいから、ボケ質に優れた描写傾向を持つレンズ群を
いくつか開発している。どのレンズがそういうコンセプト
であるかは断言できないが、事実、私の所有している
この時代から1990年代にかけての大口径中望遠レンズの
数本は、そういう特性である。
(いずれ、特集記事で、まとめて検証する予定だ)

本Ai85/1.4は、そうしたコンセプトのレンズ群の
走り(先鋒)となったレンズであるように思えてならない。
それまでのNIKKORレンズとは全く異なる描写傾向を持ち、
ある意味「NIKKORらしく無い」というイメージすらある。
特に中近距離撮影でボケ量を大きくした際でのボケ質
破綻の頻度が他のNIKKORよりも少ない。これには近接
補正方式で内部のレンズ群が可動する構造も起因して
いるのかも知れないが、そういう技術的な内容は
どうでも良く、結果として良好なユーザー利便性が
得られるかどうか?が重要だ。
まあつまり、新技術の採用は、その利便性をもたらす為に
行うべきであり、新技術そのものに価値がある訳では無い。
「結果に価値があるかどうか?」なのである。
多くのユーザー層は「なんとか、という新技術が搭載
されたから凄い!」と、大きな誤解をしているので、
そこは注意が必要だ。あくまで「技術」とは、目的を達成
する為の手段の1つに過ぎない。
さて、本Ai85/1.4であるが、そういう特徴により
描写傾向としては個人的に好みのレンズである。
ただ、勿論用途を選ぶレンズである。従来のNIKKORと
同様に高い解像感を期待して、単に50mmより長い画角の
85mmという感覚でレンズ交換をしてしまうと、描写傾向
がガラリと変わってしまうので、とまどうであろう。
でもまあ、現代では、そういうレンズ交換の使い方を
する訳では無いので、そこは問題は無い。
それと、現代においては本レンズのような特性を持つ
代替レンズもありそうな気もするのだが・・
実のところ、これが意外に無い。
まあ、近年の中国製の「ジェネリック・レンズ」の一部に、
この特性に近い、APS-C機用にスケールダウンしたレンズ
が一応あるのだが、また検証の途中だ。いずれ良い結果が
得られれば、特集記事でも書いてみる事としよう。
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では、今回ラストの85mmシステム

レンズは、MINOLTA AF 85mm/f1.4 G (D) Limted
(新品購入価格145,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2002年に限定700本で販売された「幻のレンズ」とも
言える希少レンズである。本ブログでは何度か紹介済み
であり、最近では本シリーズ第39回記事でも解説して
いる為、今回の説明は最小限としよう。
で、こちらも残念ながら「投機対象」レンズである。
(参考:2020年代の中古相場は、およそ30万円台だ)
しかも、長所はあまり無い。あえて言えば「そこそこの
高描写力である」と言う点くらいであるが、後述のように
設計がとても古いレンズであるから、現代においては、
本レンズを代替できる高描写力85mm/f1.4レンズは
何本でも存在する。

では、弱点のみ挙げておこう。
1)大きく、重く、とても高価な三重苦レンズである。
2)描写力はたいしたい事が無い。「絞り開放での描写に
優位点がある」との発売時のメーカー談であるが、
さほどでもない。
3)そもそも絞り開放ではピントが合い難く、歩留まり
(成功率)が、かなり悪い。
4)描写力の問題は、設計の古さに関係がある。
このうち4)については、もう少し詳細を述べておこう。
本レンズの、そもそもの設計は、1980年代前半(今から
40年程前)であり、当時、新型AF機(=α)の開発に
合わせて新設計された85mm/F1.4であるが、当時の
ミノルタにおいては、過去に85/1.4レンズを1本も
作っていなかった。
安全を期す為か? 2つのチームが同時に85/1.4を設計し、
それらを社内コンペで戦わす事となったと聞く。
コンペに勝利したのは本レンズでは無く、小型の方であり、
そちらは後に、α用AF85mm/f1.4(現在未所有、そこそこ
写りが良かった)として発売され、それ以降、光学系を
大きく変更する事無く、2006年のαのSONYへの移管まで
販売が継続されていた。
社内コンペで敗北した方の本レンズは、大きさと重量に
難があったからだと思われるが、ミノルタの社内評価では
絞り開放での描写力は、本レンズが優れているという事で
結論づけていたのだろう。「敗北はしたが惜しいレンズだ」
という状況であったのかも知れない。
2000年代に入り、デジタル化の時代とともに、MINOLTA
のKONICAとの合併が見えてきた。MINOLTAのレンズ史を
総括する意味でも、本レンズの発売が企画されたのだと
思われる。限定数は僅か700本の完全予約販売であったが、
予約後、軽く半年くらいは待たされた。
定価は一応18万5000円程?であったと記憶しているが、
ある程度割引してもらって購入する事が出来た。
その後、20年近くずっと使ってはいるが、正直言って、
感動的という程の描写力は持たない。というか、開放での
描写を優先した撮影技法とすると、ピンボケをしていない
カットを探す方がむしろ大変なのだ。
そして、その自慢の開放描写力も、特に複雑な設計
(例:非球面や異常分散ガラス)を使っている気配が無い、
コンベンショナル(伝統的な、すなわち古い)設計故に
あまり驚くようなものでは無い。
まあつまり、「ミノルタの記念碑的なレンズ」であり、
実用性という点に関しては、他の85mm/F1.4レンズ
とは大差が無い訳である。
結局、「幻のレンズ」というものの実態はこういう感じ
なのである・・・
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では、今回の「85mmレンズ 超マニアックス編」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。