本シリーズでは写真用交換レンズ(稀に例外あり)を
価格帯別に数本づつ紹介し、記事の最後にBest Buy
(=最も購入に値するレンズ)を決めている。
今回は、1万円級編(その1。後日その2あり)とする。
1万円台は安価なカテゴリーではあるが、コスパの
良い優秀なレンズが目白押しだ。紹介(対戦)本数は
多くなるが、これでもかなり絞り込んで選出している。
まあ、趣味・実用撮影においては、主力級の価格帯に
なるという事であり、必ずしも「値段が高いレンズが
良いレンズだ」という訳でも無い事を実感できると思う。
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では、早速1万円級レンズの対戦を開始する。
まず、最初のエントリー(対戦)。

レンズは、SIGMA 60mm/f2.8 DN | Art
(中古購入価格 14,000円)(実用価値 約16,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2013年発売のミラーレス(μ4/3、SONY E(APS-C))
専用小型単焦点中望遠(相当)レンズ。
SIGMA DNシリーズおよびDC DNシリーズ単焦点は
6本が発売されている。うち4本を、別シリーズ記事
「特殊レンズ第5回SIGMA DNレンズ」編で紹介して
いるが、いずれも高コスパのレンズ群である事は
間違い無く、これも別シリーズ記事の「ハイコスパ
レンズ名玉編」では、SIGMA DNシリーズの3本
(A19/2.8、A30/2.8、A60/2.8)が、いずれも
上位にランクイン(8位、10位、5位)している。
その3本の中でも本A60/2.8が、ハイコスパの最高
順位である点でもわかるように、ともかく本レンズは
安価で良く写る。

市場では、あまり好評価が見られないようだが、
何故だろうか? 安価すぎて「入門用レンズ」の
ように思われてしまい、マニア層は興味が持てないかも
知れないし、初級層では、買ったものの、その評価をする
術を持たないからか? あるいは流通側での専門評価者
は、「もっと高いレンズを売りたい」と意図するだろう
から、わざわざ安価なレンズを褒めたり推奨したりする
記事を書こうとはしない。これを購入してユーザーが
満足してしまったら、より高価で利益も出る「大三元」
レンズ等が売れなくなってしまうだろうからだ。
まあ、つまらない話だ。市場の評価等をあてにしたり
信用してレンズを買うのではなく、全ての購入者層は
あくまで自分自身の価値感覚に基づいて、機材の購入を
行わなければならない、そこが大原則であり、これが
守られていなければ、それは、自身に物品購入主導権が
無い状態であるから、「消費者の負け」である。
カメラやレンズに限らず、全ての「モノ」の購入に
おいては、「ユーザー(消費者、購入者)の勝ち」を
目指すのが当然であり、さもないとメーカーや流通市場
の仕組みや仕掛けに踊らされてしまっている事となる。
そういう「モノ」の買い方は、買い物のプロである主婦層
等から見れば、「下手な買い物」に見えてしまうから、
男性層が何かモノを買って来た際に、すぐに奥様や恋人
等からの「また、しょうも無いモノを買って・・」という
批判に直結してしまう訳だ。
それは、モノ自体の価値の話をされているのでは無い。
「購入側が主導権を持たない状態での買い物は推奨できない」
という意味に他ならない訳だ。つまり「買い物が下手である」
という批判が、この場合の指摘内容の主眼であろう。

さて、余談が長くなったが、余談とも言い切れず、とても
重要な事である。消費者は全て、自身の価値感覚を持って
機材(カメラやレンズ)を買わなくてはならない。
他人の評価など、基本的には無関係だ。その評価者とは
写真を撮る目的も、被写体ジャンルも、評価スキルも、
何もかも自分とはまるで違う、そんな他者の意見など、
どう考えても、自分自身には参考になる筈は無い。
だから、評価というものをしたいならば、「どんな人に
対しては推奨できるか」という部分を、必ず沿えて評価
するべきであろう。しかし、それはとても難しい事だ、
評価者が、あらゆる撮影スタイルや、様々なユーザー毎の
ニーズに精通している訳でも無いからだ。
結局のところ、あくまでユーザー毎の自身の価値感覚を
「固めて」いくしか無いのだと思う・・
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では、次のシステム。

レンズは、NIKON AF-S DX NIKKOR 35mm/f1.8G
(中古購入価格 18,000円)(実用価値 約12,000円)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)
2009年に発売された、APS-C機(DXフォーマット)用
準広角(標準画角)エントリーレンズ。

同時代のスマホやミラーレス機の台頭と、2000年代を
通じて行われた(デジタル)一眼レフの画素数向上等
の技術的改良が頭打ちしてしまい、”このままでは一眼
レフの販売が伸び悩む”という危機感溢れる予想を元に、
戦略的に投入された商品が「エントリーレンズ」である。
この時期の他社でも、同じ戦略思想で「エントリーレンズ」
を展開している。
まあつまり、安価で高性能な交換レンズを、ビギナー層
等に販売し、その高性能に驚き、その「メーカー党」に
なって、より高価なレンズやカメラを買って貰ったり、
あるいは「もう何本かのレンズを持っているから、今更
他社ミラーレス機等には乗り換えたく無い」といった
「ユーザー囲い込み効果」を意図した商品群である。
他の市場分野でも良く行われている市場戦略であるから
これ以上の詳細の説明は不要であろう。ただ、こうした
初歩的な市場戦略の真意もわからずに、好き勝手または
的外れな評価を行っている人達も、ビギナーからマニア、
果ては専門評論家層に至るまで、満遍なく存在している
という残念な状況だ。
まあこれは、レンズの性能がわかるか否か?という問題
では無く、市場の仕組みがわかるか否か?という別次元
での話なので、カメラやレンズに係わる知識や経験とは
無関係な内容だ。そして「そっちの分野」に疎ければ、
理解は難しいと思う。
そして、こうした「お試し版」戦略に簡単に乗ってしまう
一般ユーザーが非常に多いのも事実であり、だから化粧品
や、健康食品、美容商品、携帯電話、ソフトウェア等で、
それらの「エントリー戦略」に皆が飛びついてしまう。
そして、その後は、ずっと、その戦略どおりに、その
メーカーや商品ジャンルに「囲い込まれてしまう」訳だ。
前述の「ユーザー(消費者)の勝ち」の状態とは程遠く、
完全に市場の仕組みに振り回されてしまっている。
だからまあ、「現代においても有効な市場戦略だ」とは
言えるであろう。
さて、この「囲い込み戦略」から逃れる術は簡単だ、
ユーザーが得をする、その「エントリー」の部分だけに
乗っかり、その後の、ユーザーに主導権が無い筋書きに
ついては、強固たる意志で、それを無視すれば良い。
カメラ市場で言えば、具体的には「エントリーレンズ」
と見られる商品は全て購入するが、その後に「高額商品
は絶対に買わない」という意識である。
こうすれば「ユーザーの勝ち」の部分だけが得られる。

さて、ここまでわかった上で、本DX35/1.8を評価する。
NIKONとしては極めて珍しいエントリーレンズだ。
その理由は、基本的には高付加価値型戦略を実施する
NIKONであるから、安価な商品を売って、ユーザーが
それで、「NIKONを買ったぞ!」と満足してしまうと、
本来儲けを出すべき高額(高付加価値)商品が売れなく
なってしまうリスクもあるし、はたまた、低価格帯商品
の販売は、せっかくここまで何十年もかけて築いてきた
「高級品のNIKON」というブランドイメージを、低下
させてしまう危険性もある。(よって、銀塩コンパクト、
銀塩AF一眼レフ普及機、APS(IX240)フィルム一眼レフ、
1型ミラーレス機等でのNIKONの製品展開は消極的であり、
かつ仕様的差別化が大きく、ユーザー側から見て
魅力的な製品が殆ど存在しない/しなかった)
だから、本DX35/1.8は、エントリーレンズながらも、
その品質や性能にはいっさい妥協していない。
超音波モーター搭載、シームレスMF機構搭載、
無限回転式+有限指標のハイブリッド構成ピントリング、
高描写力、高品質な作り(仕上げ)・・等である。
もし、「安かろう、悪かろう」といった商品を出して
しまうのでは、中途半端なエントリー戦略となるし、
NIKONでは、消極的戦略が成功した事例は無いのだ。
一般ユーザー側から見た弱点はただ1つ、本レンズが
APS-C機専用レンズである点だ。勿論、フルサイズの
NIKON機に装着しても、自動的にクロップされ、DXの
フォーマットで利用できるが、ビギナー層がとても多い
NIKONユーザーでは、その程度の技術的内容ですらも
理解できない人達が非常に多く、「フルサイズ機では
フルサイズ用のレンズを買わなくてはならない」とか
あるいは、ちょっとわかっているユーザーであっても、
「クロップされると、画素数が減って画質が落ちる。
汚い写真を撮ると、周囲から「下手だ」と非難される
ので、そういう風にはしたくない」と、なんだか訳の
わからない理由で、頑なにAPS-C機(DX)用レンズを
使おうとはしない。
この傾向は、特に銀塩時代から写真を続けているベテラン
のシニア層に多い模様であり、現代においてNIKON機を
志向するのも、たいていがその層だ。
だが、写真経験の長さとデジタルの知識は比例しない。
むしろ、残念ながら、銀塩写真をやっていればいる程
デジタルの世界との差異は理解が進まない模様であり、
様々な「迷信」や「間違った概念」から、いつまでも
抜け出せない模様である。よって、それらの層は、
例え経験値のあるベテランであっても「ビギナー層」と
定義するしか無いであろう。
さて、そうであっても、本レンズ発売時点の2009年
から、2010年代前半くらいまでは、本DX35/1.8は
「ビギナー層」に対しての訴求力はあったと思われる。
しかし、2012年の「フルサイズ元年」を過ぎて、
数年が経過した2010年代後半では、NIKONフルサイズ
機も、ビギナー層にまで十分に行き渡った。
よって、本レンズも「DX(APS-C)専用」という事から
急速に人気を失い、新品/中古相場も下落した。
ちなみに、本レンズの中古相場の変遷は、2009年から
2015年あたりまでは高値安定、2017年前後に急激に
アップした傾向が見られたが、メーカー側の在庫処分や
ネット上での情報拡散等と連動した相場変動であり、
その後は急激に相場が下落し、現代では、1万円強で
入手が可能という感じである。
他社の2010年前後のエントリーレンズの相場動向も
ほぼ同様、特にAPS-C機専用型は、近年においては
相場の下落が大きい。
・・であれば、ちゃんと物事の本質がわかっている
中級者以上のユーザー層であれば、異常なまでに
中古相場が下落している2010年前後エントリーレンズ
は、コスパが極めて良く、「全て買い」という判断に
なるのが妥当な選択だ。これらは全て、性能や機能に
優れて、しかも安価であるから、APS-C機を母艦と
するならば、何ら不満が出て来ない。中級者以上で
あれば「フルサイズ機でなくちゃ嫌だ、さもないと
周囲に馬鹿にされる」などという被害妄想を持つ事は
まず無いであろうから、なんら問題は無い。
ちなみに、別シリーズ記事「ハイコスパ名玉編」では、
多数のエントリーレンズが、そこにランクインしている。
まあ、ある意味、当然の結果とも言えるだろう。
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では、3本目のシステム。

レンズは、TAMRON SP 70-300mm/f4-5.6 Di
USD (A005)
(中古購入価格 19,000円)(実用価値 約18,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2010年発売のフルサイズ対応高画質仕様AF望遠ズーム
レンズ。
本レンズの逸話は、なかなか他では得られない話が
あるのだが、毎回の本レンズの紹介時に、同じ話を
書いているので、本記事では重複する為に割愛する。

簡単に長所を述べれば、このクラス、つまり70-300mm
の常用望遠ズームにおいては、本レンズの描写力は
トップクラスである事だ。
弱点は軽微であり、望遠端+遠距離撮影の条件での
解像感の低下、それからAF精度がやや劣る(注:母艦
との組み合わせにもよる)、マクロモードが無く
最短撮影距離が長く撮影倍率が低い(注:SONY機
であればデジタルテレコンが、一部のNIKON機で
あればクロップモードが使える)といった程度だ。
この程度の弱点であれば、中古相場1万円台は
恐ろしくコスパが良い。なお、ハイコスパ名玉編
記事では、下位ながら第20位にランクインしている。
(まあ、対象レンズ範囲が300本以上の中から
なので、20位であれば、十分に高順位だろう)
300mmの望遠端さえ使わなければ、ほとんどの状況で、
最良の描写力が発揮できる。現代では、高倍率(高
ズーム比)のズームレンズの望遠端は伸び、300mm
や400mmとなっている場合もあるのだが、さらに
望遠側での収差補正が設計上困難となる。そうした
高ズーム比(高倍率)ズームに比較すると、本レンズ
のような「望遠専門」のズームは、描写力的には
1日の長が存在する。

別の視点での弱点は、もうこうした70-300mm
というオーソドックスな仕様の望遠ズームレンズは、
レンズメーカーからのものは、本レンズが殆ど
最終製品となってしまっている事だ。まあ、レンズ
市場が縮退している現代においては、こうした地味な
スペックのレンズを発売しても、もう売れないからで
あろう、よって、本レンズの後継機種は存在して
いないし、また、後継機が出る可能性も限りなく低い。
しかし、それ故の低価格相場(=人気が無い)とも
言える。本レンズは、少なくとも中古相場に相応か、
利用法によっては、それ以上の実用的価値が存在
している優秀なレンズである。
購入を躊躇う必要性は無く、初級中級層での「実用
(常用)」望遠ズームとして、あるいは上級者以上の
層における「消耗用(業務用)」高性能望遠ズーム
としての利用価値が大きい。
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では、4本目のシステム。

レンズは、安原製作所 MOMO 100 28mm/f6.4 Soft
(新品購入価格 21,800円)(実用価値 約14,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)
2016年に発売された、MF広角ソフトレンズ。
現代では希少な「ソフトフォーカス(軟焦点)レンズ」
である。(以下、「ソフトレンズ」と略す)
現代において、カメラメーカーからの純正品は存在せず、
この安原製作所、LENSBABY、LOMOGRAPHYあたりから、
数機種が現行品として販売されているだけの状態だ。

何故ソフトレンズの販売数が少ないのか?の理由の
分析は難しい。基本はMFレンズではあるが、銀塩時代に、
MINOLTAとCANONからAFのソフトレンズが販売された
歴史もある。また、ソフトフィルターや、現代では
カメラ内部のエフェクトや、PCでのレタッチ編集に
よりソフト効果が得られる事も理由なのかもしれない。
(通常写真に後付けでソフト効果は追加可能であるが、
ソフト写真を編集でソフト無しに戻す事は、ほぼ不可能)
ただまあ、いつもソフトレンズの紹介記事で書く事だが
ソフトフィルター、エフェクト、画像編集のいずれの
措置での軟焦点効果も、実際の専用ソフトレンズの
描写とは大きく異なってしまう。
「ホンモノ」の写りを知りたければ、こうした希少な
ソフトレンズを買うしか無い状態だ。
(参考記事:「特殊レンズ第7回SOFT LENS編」)

希少なレンズ群であるから、後年にはだんだんと入手が
難しくなって来る事であろう。中古市場には皆無という
訳では無いが、玉数は少なく、年に1~2本程度の出現
に留まる。
むしろまだレンズサードパーティから現行品が販売
されている状況はラッキーであり、マニア層であれば、
それらを新品入手しておくのも良いかも知れない。
ちなみに本MOMO 100に関して言えば、新発売の時点
よりも新品相場が下落していて、1万円台後半で購入
できる恵まれた状態だ。
(追記:安原製作所の製品は、諸事情により、今後は
入手困難になってくるかも知れない)
中古の場合は、レア品を除き、各社旧製品のソフト
レンズは、だいたい1万円前後を目処にしておくのが良い
であろう。それ以上に高価であれば、あまり無理をして
まで入手すべき理由や価値は無い。
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では、次のシステム。

レンズは、CANON EF40mm/f2.8 STM
(中古購入価格 12,000円)(実用価値 約10,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2012年発売の、フルサイズ対応パンケーキ(薄型)
AF準標準レンズ。

パンケーキレンズは、銀塩時代の初出の頃には不人気で
その為、発売中止後レア化してしまったので、1990年代
後半に、希少なものを求めるマニア層と、それを高価に
売りたい投機層により、パンケーキブーム(フィーバー)
が起こってしまった、という不条理な歴史がある。
まあでも、ブームとして加熱したのがすぐ醒めたのも、
パンケーキの実用性能があまり高くなかったからだ。
そして、パンケーキが短期間で生産中止になったのは
AE化、AF化といった銀塩時代の技術革新において、
小型(薄型)のレンズには、当初、そうした複雑な
機構を入れる事が困難であった事が、大きな理由だ。
CANONも同様な理由により、銀塩時代においては、
「両優先」(絞り優先AEと、シャッター優先AEの
両者を同時に実現できる機構を持つレンズやシステム)
という複雑な仕様が要求されるFD/New FDレンズでは
パンケーキ型を作る事ができなかった。
結局、CANONにおいては、銀塩時代を通じてパンケーキ
を1本も発売していない。ここまで徹底されると、むしろ
「CANONにおける商品企画ポリシーであったのだろうか?」
という分析すらも出来るのであるが・・
超遅れ馳せながら、2012年になって、CANONとしては
初めて発売されたパンケーキが、本EF40/2.8STMである。
だが、STM型のレンズは個人的には嫌いだ。それはその
性能の話ではなく、「他社機へアダプターで装着時に
使用困難である」という使用制限上の問題である。
まあ、実際にSTMレンズを他社機で使う用途がある訳では
なく、CANON EOS一眼レフは多数所有しているので、
それらに装着して使えば良いのだが、設計上の思想の
問題であり「自社のEOS機で無いと、使わせない」
という「排他的仕様」が、現代的な「オープン思想」
では無くて嫌いなのだ。
だから、ずっとSTM系のレンズの購入を控えていた。
「気に入らなければ買わない」というのが、消費者側
からメーカーや市場に向けての唯一の対抗策である。
これを買ってしまったら、メーカーの戦略に振り回されて
いる事になり、それは「ユーザーの負け」の状態だからだ。
本記事でも色々と書いているが、「買い物はユーザー側が
主導権を持つ、ユーザー(消費者)の勝ちを目指す」事が
基本中の基本だからである。
「では何故、本レンズを購入したのだ?」という点は
本レンズがCANON初のパンケーキである事の歴史的な
重要性を鑑みての話である。
別シリーズ「特殊レンズ第14回パンケーキ編」記事では
現有の7本のパンケーキレンズを紹介しているが、
そういう風な、特定ジャンル製品の比較や研究という
用途においては、本レンズを無視する事は出来なかった、
という点が購入理由としては最大の要素だ。
だからまあ、本レンズの描写力とか性能とかは、ある意味
どうでも良い話である(汗)そして、そもそもパンケーキ
は、どれも低性能なのだ。あくまでファッショナブルな
要素での製品であり、その写りをどうのこうのと言うべき
対象では無い。
まあでも、さすがに本EF40/2.8STMは、最新の一眼レフ
用パンケーキであり、他の(オールドが多い)パンケーキ
とは一線を画す高性能である。

このレンズを撮影を主眼として推奨する要素は何も無いが
”カメラライフ”は、写真を撮る事だけが全てでは無い。
ファッショナブルな要素としての所有者の個性の主張とか、
マニアックな視点での収集とか、あるいは研究の為の
資料であるとか、ユーザーには個々の目的があるだろう。
そうした、ある目的において、ぴったりハマるのであれば、
本レンズは安価でもあるので、十分に推奨できる商品と
なりうると思う。
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では、今回ラストのシステム。

レンズは、7artisans(七工匠) 55mm/f1.4
(新品購入価格 16,000円)(実用価値 約19,000円)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)
2018年頃発売の中国製ミラーレス機(APS-C機以下)
専用、MF大口径標準(中望遠画角)レンズ。
本レンズは、1980年前後の各社プラナー系85mm/F1.4
レンズの2/3スケールダウン「ジェネリック」レンズ
だと思われる。

本レンズは優秀につき、異マウントで2本所有している。
それらの紹介記事での毎回の説明と重複してしまうが、
簡単に特徴を述べると・・
プラナー系85mm/F1.4級レンズは、上手くキマれば
圧倒的な描写力を得る事ができる名レンズだが、
そうなる確率は低い。それは、プラナー系85/1.4
には、ピント精度、ボケ質破綻、焦点移動、といった
複数の課題があり、それらを上手くバランスさせるには
技能や技術だけでは足りない。当時の撮影機材の環境の
課題もあるからだ(例:殆どの一眼レフが開放測光だ)
よって、「条件が揃う」という、「確率的な要素」も
伴う状況であった。
だから、たまたま(偶然)でないと上手く撮れない。
その歩留まり(成功率)は、銀塩時代においては、
約3%(36枚撮りフィルムあたり1枚程度)あるいは
それ以下の1%程度でしか無い。
ところが、その問題児のプラナー系85mm/F1.4を
スケールダウンした本レンズでは、現代の機材環境で
APS-C型以下のミラーレス機での使用において・・
1)ピント精度の課題は、現代のミラーレス機の
優秀なMFアシスト機能により、ほぼクリア。
2)ボケ質破綻の課題は、ミラーレス機等の高精細
なEVFと、ボケ質破綻回避技法の併用により、
完璧では無いが、その頻度を減らす事が可能。
3)焦点移動の課題は、ミラーレス機での絞り込み
(実絞り)測光での用法で、完全にクリア。
と、ことごとく、その弱点が消えている。
他には、逆光耐性が低いという課題があるが、それは
光線状況に留意して回避すればよい。
まあ、これであれば、何も問題は無い。銀塩MF時代
には少なくとも10万円から、それ以上もしていた
高額なプラナー系大口径中望遠の描写が、物価水準が
上がった現代においても、1万円台後半で新品が、
1万円強程度で中古品が買えてしまう事は、まさしく
ハイコスパの申し子のようなレンズである。
なお、私の近年の研究で、もう1本、プラナー系
85mmのジェネリックレンズが存在する事がわかった。
それは、丁度本シリーズの前回記事で紹介したが、
1992年:smc PENTAX-FA ★ 85mm/F1.4 (IF)
に対する
2009年:smc PENTAX-DA ★ 55mm/F1.4 (SDM)
である。
DA55/1.4も、まさしく、プラナー系FA85/1.4の
ジェネリックであろう。噂によれば両レンズは
同一設計者の手によるものだ、との事である。
ただ、このケースでは、両レンズはミラーレス機用
レンズでは無いので、開放測光一眼レフによる、
AF(ピント)精度、ボケ質破綻、焦点移動、の
3つの問題は、そのまま残ってしまう。
それらが回避できる程の恵まれた機材環境では無い。
ただ、FA85/1.4もDA55/1.4も、それらの3課題が
少ない事が特徴のレンズであり、それらの課題が
重欠点にはなっていない事がラッキーなのだ。
その結果DA55/1.4は、過去記事での、ミラーレス・
マニアックス名玉編で第3位、ハイコスパ名玉編で
第10位、最強50mm選手権で決勝進出第2位、と
ランキング系記事で上位を総なめの状態であった。
本レンズ七工匠55/1.4は、DA55/1.4よりも
さらにコスパが良いので、それらの過去記事での
DA55/1.4の順位をさらに上回る事は可能だ。
ただ、残念ながら近年の発売なので、それらの
過去記事掲載時点では無かった、あるいは記事執筆
後の購入となって、ランキングでの精密評価が
間に合っていなかった、という状況である。
よって、最新のランキング系記事である本シリーズ
で、あらためて本レンズの順位を問う、と、こんな
感じになった訳である。

本、七工匠55/1.4は、「MFが出来ない」とか言う
ビギナー層以外の全てのユーザー層に推奨できる
レンズである。ただ、ボケ質破綻回避は少々難しい
技法になるから、それの練習の意味もある、という
点は覚悟しておく必要がある。
そして、特にマニア層においては、歴史的に非常に
重要な立場となるプラナー系85mm/F1.4のミニチュア版
という本レンズの立ち位置を十分に理解の上、実用なり、
比較なり、練習なり、研究なりと様々な用途が存在する
だろうから、必携のレンズだとも言える。
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では、最後に各選出レンズの評価点を記載する。
(型番は省略表記)
1)SIGMA A60/2.8 =3.7点
2)NIKON DX35/1.8=3.1点
3)TAMRON SP70-300=3.7点
4)安原製作所 MOMO100 =3.7点
5)CANON EF40/2.8=3.1点
6)七工匠 55/1.4=4.1点
今回の1万円級対戦においては、「Best Buy」は
「七工匠55mm/F1.4」で決まりであろう。
高品質、高描写力で低価格、コスパは最強クラスで
あるが、使いこなしはやや難しい。主には中上級マニア
層向けだが、他の層にも推奨したいレンズである。
他の高評価レンズも3.7点で3本が存在する。
SIGMA ART 60mm/F2.8は、高描写力でコスパが良い
レンズだ、使いこなしも難しく無いのでビギナー層
を含む、全ての層に推奨できる。
TAMRON SP70-300は常用高画質望遠レンズとして
有益だ。実用のみならず、中古相場が安価なので
厳しい環境(雨天、酷暑、厳寒、潮風、土埃等)
における「消耗用レンズ」としても適する。
(注:これは上級者以上向けの用法)
MOMO100は、現代では希少なソフトフォーカスレンズ
としての推奨だ。おまけに現行ソフトレンズの中では
最も新品価格が安価である。(追記:現在入手困難)
いずれにしても、1万円級レンズは、ここに紹介した
あるいは、後日掲載予定の「1万円級 Part 2」で
紹介するレンズ群は、コスパに優れるものばかりで、
かつ、コスト自体も安価である。
1万円級レンズを10本買っても、新鋭の高付加価値
(高価格)型レンズよりも、むしろトータルのコスト
は安いくらいである。そういう選択肢も十分に有りだ、
・・という事は、マニア層や上級者層では「常識だ」
とも言えるが、高額商品ばかりを欲しがる(・・と
いうか、それらしか知らない)初級中級者層には、
是非理解していただきたい方向性である。
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さて、今回の「1万円級レンズ編(Part1)」記事は、
このあたり迄で、次回記事に続く。