過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介のマニアックな
レンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は、未紹介レンズ4本を取り上げる。
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まず、今回最初のレンズ

レンズは、(FED/KMZ) INDUSTAR-61 L/D 53mm/f2.8
(中古購入価格 9,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
詳細不明、旧ソビエト連邦時代に、恐らくは
KMZ(S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場)
またはFED(フェリックス・ジェルジンスキー記念工場)
にて製造された、L39マウント版小口径標準レンズ。
レンジ機「FED-5c」のキットレンズとなっていたと聞く。

生産時期は不明、恐らくは戦後からソビエト崩壊時期
あたりまで、長期に渡って製造されていたものでは
なかろうか?その為、バージョン(製造工場、製造時期
やマウント)による細かい仕様上の差異も色々とある。
焦点距離であるが、50mm/52mm/53mm/55mmの
表記の物が混在生産されていて、良くわからない状況だ。
内、特に53mmと55mmは、同一の物として中古市場
では扱われている。
なお、マニア層に著名な、「星型ボケ」が発生する
INDUSTAR-61 L/Z(M42マウント)とは、絞り形状が
異なり、本レンズ(や同等品)では星型ボケは出ない。
そして、どのINDUSTAR-61系レンズも、テッサー型
3群4枚構成という事だが、上記絞り形状が異なったり、
本レンズでは、ガラス材質が異なる(低分散)という
差異もある模様である。(但し、その事が画質向上に
貢献しているとは言い難い)

レンジ機用L39マウントである事のデメリットとして、
最短撮影距離が1mと、非常に長い点がある。
まあすなわち、距離計連動の機構上の制限として
あらゆるレンジファインダー機用交換レンズの最短
撮影距離は、70cm~1m程度と極めて長い状態である。
(注:近代のレンジ用レンズでは、距離計連動を無視
して近接撮影を可能とするものがあり、そのまま又は
ヘリコイド内蔵アダプターを介して、他マウント機に
装着した際に便利である)
本記事においては、撮影倍率上の不満を解消する為と、
周辺収差の低減を狙ってAPS-C機を使用しているが、
APS-Cやμ4/3機を使ったとしても、やはり最短撮影距離
は長すぎるし、描写性能は、お世辞にも良いとは言えない。
さらには、ロシアン故での技術的な未成熟もある。
(例:多層コーティングでは無い等)
ただまあ、絞り開放近くから、テッサー型構成の特徴
とも言える「輪郭の強さ」は表れ、これは長所とも短所
とも言えるが、上手くこれを「表現」に使う手はある。
ボケ質は良くは無いが、最短が長い事とあいまって
被写界深度が浅く取れない為、この弱点は相殺される。
色味やコントラストが薄い、という課題は、今回は
発色の良いFUJI機で彩度を上げる設定で解決しようと
している。逆光耐性の低さは、曇天や雨天等のフラット
光環境で用いれば良いであろう。
まあ、あくまで古い(オールド)レンズであるので、
様々な弱点は存在する。ユーザー側で、それをどう回避
していくかによって、画質評価はまちまちとなるであろう。
(すなわち、ビギナー層等が「レンズの言うがまま」に
撮って評価した情報は、あまり信用はできない)
でも基本的には、実用的な画質レベルを満たしていない
ので、あくまで趣味的、研究用、弱点回避練習用の
レンズだとも言える。
また、他の問題点としては、購入価格がある。
確か、本レンズは銀塩時代には4,000円程度の安価な
新品価格だった筈だ。
そして2010年代後半、GIZMO社によりKMZ工場からの
デッドストック品の輸入販売が行われた際であっても
マウントアダプター付属で7,000円程度の新品通販
価格であったと記憶している。
で、その在庫品輸入販売は、すぐに売り切れてしまい、
その後の時代では、入手困難となってしまっていた。
(注:海外オークション等では”指名買い”が可能だと
思われるが、特に、こうした古い時代のレンズでは、
マニア層の多くでは”目利き”が出来ない状態での、
ネット販売は好まず、あくまで実機を見て購入する事が
原則となっている。そして、別に”どうしてもその
レンズが必要だ”という訳でも無い点も、指名買い
の必要性が少ない理由の1つだ)
で、数年後に珍しく中古市場に出てきた際には、今回
購入価格の約9,000円と、若干のプレミアム相場だ。
ロシアン系レンズの記事で毎回書いている事だが
「高価なロシアンを買う意味は無い」というポイントが
ある。しかし、近年においては、ロシアンレンズの入手
がかなり困難であり、たまに中古市場に出てくるものは
本来の、そのロシアンの価値(や価格)から、2~8倍
も高価であり、コスパが壊滅的に悪く、好ましく無い。
・・ただまあ、そうだとしても、近年においては国産
レンズは、コスパ的観点からは我慢の限界を超える程に
高価すぎる。(注:交換レンズが殆ど売れないから、
”好事家”や”初級層”に高く売る為の販売戦略である)
また、頼みの綱である「新鋭海外製レンズ」も、どの
海外メーカーも国内市場参入時には、安価で高コスパの
レンズを販売していたのに、数年も経つと、新製品は
いずれも高価格化してしまい、コスパが悪いのと、
「なんだ、最初の安価な製品は”呼び水”だったのか?」
となって、心情的に、なんだか面白く無い。
だからまあ、ちょっと高目の「ロシアン」であっても、
(あまり納得は行かないが)、他に「知的好奇心」と
「コスパ」の両者を満たしてくれるマニアックなレンズが
皆無である以上、選択肢が無い。多少高価でも買わざるを
得なくなってしまう状況だ。
前回記事で紹介の「MIR-1」(購入価格 14,000円)も
そうだが、それもロシアンにしては異常に高価すぎる。
まあでも、こういう世情(一般層の誰もが、カメラや
レンズを購入しない)では、(カメラ/レンズ)流通事業
が崩壊しない為にも、価格の高騰は、やむを得ない節も
あるか・・ (まあ、その逆に、不人気のAPS-C機専用
レンズや、ジャンク系レンズは、相場低下が大きい)
なお、ロシアンレンズを「指名買い」する必要性は
皆無である。いずれも設計や製造が古すぎて、現代的な
視点からは「実用レベルを下回る性能」でしか無いからだ、
こういうものに興味を持つのは、あくまで中上級マニア層
しかいない。

ただ、「マニア道」をさらに極めたいならば、こうした
古い時代のレンズの長所短所を良く理解し、さらには
弱点を上手に回避して高描写力を得たり、あるいは逆に
欠点を助長し、それを自身の「写真表現」に加えていく
ようにして行けば良いと思う。
それをせず、または出来ずに、「レンズの言うがまま」に
撮って、その性能の長所や短所を、どうのこうのと評価
しているだけでは、初級中級マニアの域を出ていない。
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以下、参考であるが、L(39)マウントのINDUSTARの
50mm台の焦点距離のものは、バージョンが沢山あり、
区分がとてもややこしい。

上写真のレンズは、INDUSTAR-26M 52mm/F2.8
本レンズに極めて近いスペックであるが、異バージョン
である。なお、焦点距離表記は、前述のように、あまり
あてにならず、これは50mm(5cm)なのかも知れない。
(注:オールドレンズで、cm表記の焦点距離である場合、
製造精度としては、mm単位の厳密性は保証されていない)
こちらのレンズは、5年程前のミラーレス・マニアックス
第32回記事で紹介していたが、半故障品であり、その後は
使用せずに死蔵していた状況だ。こちらは元々、銀塩時代
にFED(型番不明)を購入した際に付属していた物だ。
しかし、レンジ機FEDは実用性が低く、すぐに知人に譲渡
してしまっていたが、半故障(アタリあり、ヘリコイドの
動きが悪い)のINDUSTAR-26Mは、譲渡せず、そのまま
残した次第であった。
INDUSTAR-61 L/Dとの比較の為、実写紹介を1枚だけ
行っておこう。(母艦は、X-T1で同じ)

なお、こちらの絞り羽根も、ロシアンによくある多枚
(10枚)型であって、星型絞り形状にはならない。
総論だが、どちらのINDUSTAR(61L/D,26M)も、実用
性能を満たさず、実用的な撮影に使えるレンズでは無い。
あくまで知的好奇心を満たすだけの存在であろう。
なお、「銀塩っぽい写りをする」とも、良く評価される
これらのオールドやロシアンであるが、それはちょっと
誤解を招く表現であろう。ちゃんとした銀塩システム
(レンズ、フィルム、撮影技法、DPE手法、デジタイズ)
を用いれば、現代のデジタルシステムに勝るとも劣らない
高い描写力を魅せてくれるケースも多々ある。
単に、良質な銀塩システムを組んでいない、撮影プロセスの
何処かに課題がある、撮影技法が適正では無い、そもそも
銀塩の写りを良く知らない、の、いずれかの理由により、
銀塩撮影が低画質化してしまっているだけだと思われる。
よって、デジタルにおけるLo-Fi描写を、「銀塩っぽい」
と言っている評価は、あまりあてにならない、と思って
おくのが賢明であろう。
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では、次のシステム

レンズは、RMC TOKINA (χ) 70-210mm/f3.5
(中古購入価格 500円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
詳細不明。恐らくは1970年代後半頃~1980年代初頭
頃と思われる、開放F値固定型MF望遠ズーム。

正式名称不明、上記はレンズ上に記載されている型番を
元に書いている。まず「TOKINA」については、本ブログ
では便宜上、各メーカー名を全て大文字で記載しているが、
レンズ・ロゴデザイン上、およびメーカーWeb等では、
「Tokina」と先頭のみ大文字となっている(いた)。
(注:厳密には、2011年にTokina社は、Kenko社と
合併していて、それ以降の時代においての企業名は
「株式会社KenkoTokina」(途中の空白なし)である)
「RMC」型番は、恐らくは多層コーティングの意味。
「レインボー・マルチ・コーティング」の略という説も
聞くが、詳細は不明。
型番「χ」は、Xではなく、χ(カイ)だと思われるが、
その意味は不明。レンズ上にアクセント的に、ちょこんと
書かれているだけで、正式名称であるかどうかも不明。
TOKINAは、その後の時代、高性能レンズに「AT-X」の
称号を与えた。そちらは「ADVANCED TECHNOLOGY-X」
の略であるが、そのXの意味も不明。多分だが「X」や「χ」
という型番名が好きなメーカーだったのかも知れない。
さて、開放F値3.5固定は、当時のMF望遠ズームとしては、
最大口径と思われ、やや大柄なレンズである。
レンズ構成は、恐らくだが10群14枚、フィルター径は
φ62mm。重量約714g(注:OMマウント品)である。
前記事で紹介のNIKON SERIES E 70-210mm/f4と
同等の大柄なサイズ感だが、こちらは開放F値が半段明るい。
ただし、マクロ機構は持たず、最短撮影距離は1.4mだ。
この時代、あるいはやや後の1980年代頃のTOKINA製
レンズは、個別に描写力の高いものも、そうで無いものも
混在している。つまり、設計の良否により、あるいは製品
の企画コンセプト上により、当りハズレがある感じだ。
そんな状況の中、本レンズはどうであろうか?

・・意外にも、あまり悪く無い。
描写を上手くコントロールするのは少々難しいが、弱点を
回避しながら使えば、解像感、ボケ質もなんとか及第点。
まあ、この時代、まだF2.8通しの(望遠)ズームが
存在していないので、開放F値固定型ズームであっても、
F4.5ないしF4の小口径版が殆どだ。
そんな中、F3.5(通し)ズームは、当時の最大口径で、
すなわち高級品であるから、看板商品であったとも言え、
ある程度、高性能を意図した設計がなされていたので
あろう。まあつまり、フラッグシップがショボイ性能で
あったら、メーカー全体のブランドイメージに傷がつく
から、”手を抜いた設計は許されない”という事だ。

弱点であるが、前述のように、やや大柄である事。
最短撮影距離にも不満が出るので、撮影倍率のみ解消
する目的でμ4/3機を使うのが望ましい。
この措置は周辺収差の低減も副次的効果としてある。
ボケ質破綻の発生は注意して回避する。また、開放では
解像感が若干甘いので、必要に応じ、ボケ質とバランス
させながら、少し絞って使用する。
・・まあ、こんな感じで使えば、そこそこの高描写力が
得られるので、格安ジャンクレンズとしては「当たり」
の部類に属するであろう。
ただまあ、あまり中古流通は豊富では無いと思われる
ので「指名買い」は、やや困難だ。入手性に劣るのも
弱点として挙げておこう。
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さて、次のシステム

レンズは、NIKON LENS SERIES E (ZOOM) 75-150mm
/f3.5 (中古入手価格 1,000円相当)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
1981年に発売された、廉価版仕様MF望遠ズーム。

前記事、第41回記事で、同じくSERIES Eの70-210/4
レンズを紹介したが、私がそれを使っているのを見た
近所の顔見知りのオジサンが、「ウチにも古いニコンの
レンズがある、ちょっと待っておけ」と言ってきた。
10分程して、オジサンが持って来た本レンズを見ると、
これもやはりシリーズEだ、少々カビがはえている。
オジサン曰く、「使うなら持って帰るか?」との事で
ありがたく頂戴する事とした。
入手価格は0円だが、後日お礼の品物を持っていった
ので、便宜上1,000円相当としておこう。
オジサンは、若い頃、青年海外協力隊(?)に参加して
いた模様で、このレンズは、実際に南米とかの奥地で
使って重宝したらしい。
当時のカメラは、NIKON (New)FM2であったとの事で、
そのシステムであれば、機械式カメラにつき、電池が
無くても写真が撮れるので、厳しい環境にも適応できた
のであろう。
だが、40年近くも前のシステムであり、もはやFM2は
全く動作せず(カメラも一応引き取って来た)、レンズ
は動作には問題なさそうだが、カビがかなり酷い。
まあでも、「歴戦の勇士」だ、休眠させるのは勿体無い、
なんとかこれを使ってあげよう。

さて、前記事でのE70-210/4は、「SERIES E」の中
では最も大型のレンズであり、「NIKON機で小型軽量の
システムを組みたい」というニーズには、やや適さない。
ただE70-210/4にはマクロモードが存在し、70mm広角
端で56cmまで寄れる機構がある。実際のこれの効能は、
実のところ210mm望遠端での撮影倍率と、計算上では
大差無いが、寄れてWD(ワーキング・ディスタンス)
が短くなる事がメリット(=様々なアングルからの
撮影を可能とする)であった。
本E75-150/3.5には、マクロモードが無い。しかし、
最短撮影距離は(望遠端であっても)1mと、そこそこ
短い。この仕様差による、近接撮影能力の差は、どれ位
になるのだろうか? 以下、計算してみよう。
(注:ズームレンズの場合、撮影距離によっては見掛け
上の画角が変わる仕様となっている場合もあり、正確な
撮影倍率は計算では求まらない。あくまで実測するしか
無いのだが、今はとりあえず、計算だけで求めてみる)
<撮影範囲計算>(注:フルサイズ換算での計算値)
1)SERIES E 70-210mm/F4(前記事紹介レンズ)
・70mm端マクロモード 最短56cmでの撮影
撮影範囲 約28cm x 約19cm (撮影倍率 約1/8倍)
・210mm端 最短1.5mでの撮影
撮影範囲 約26cm x 約17cm (撮影倍率 約1/7.1倍)
2)SERIES E 75-150mm/F3.5(本レンズ)
・150mm端 最短1mでの撮影
撮影範囲 約24cm x 約16cm (撮影倍率 約1/6.6倍)
・・という事で、上記はあくまで計算上ではあるが、
意外にマクロモードの無い本レンズでも、マクロ付きの
E70-210/4と、ほぼ同等の撮影倍率が得られる事となる。
(注:最短は1mなので、E70-210/4のマクロモード
での56cmに比べ、撮影アングル等の自由度は減る)
他のメリットとしては、大柄のE70-210/4に比べ、
およそ三割減の、重量・サイズ感に収まっている事だ。
まあ、このサイズ感であれば、30年以上前の南米等の
海外でも活躍できたと想像力できる。青年海外協力隊には
他の色々な過酷な仕事があるだろうから、あまり大げさな
カメラシステムを持ち運ぶ訳にはいかなかった事だろう。

描写力だが、残念ながらカビの発生によりコントラスト
の低下が甚だしい。また、解像感も弱めであり、絞りを
開けたり、ズーム焦点距離が望遠側になると、かなり
甘い描写となってしまう。
でも、そのあたりの弱点は承知の上で使うのであれば
そこそこしっかりと写るケースもある。
30数年前の「歴戦の勇士」に敬意を払う事としようか・・
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では、今回ラストのシステム

レンズは、TAMRON SP AF 180mm/f3.5 Di LD [IF]
MACRO 1:1 (Model B01)(中古購入価格 30,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2003年に発売された単焦点AF望遠等倍マクロレンズ。
2016年に生産終了となっていて、その後、中古市場に
新品在庫品が多く流通し、その影響として、通常の
中古品の相場も下落したのを狙っての購入である。

SONY α(A)版を購入したのは、特にこのマウントが
不人気(現状、αはEマウントが主流だから)で相場が
安価であった事。加えて、α(A)機にはデジタル拡大
機能があり、近接撮影での撮影倍率を仮想的に3倍にまで
高める事が可能な事、さらには機械式絞り制御アダプター
を用いれば、ミラーレス機でも使用でき、μ4/3機等
では、さらに撮影倍率を高める(最大16倍!)事が
原理上可能だからだ(注:画質劣化や手ブレ被写体ブレ
等で、そこまでの高倍率撮影は実用上では困難)
なお、NIKON (F)版の選択肢もあった。これを例えば
D500等で用いれば、x1.3倍クロップ機能で2倍マクロ
として使える。ただ、AFはともかく、NIKON一眼レフ
でのMF撮影は精度が足りず、ライブビュー拡大は劣悪な
操作系なので、実用性に乏しい、という判断である。
まあ、汎用性の高いNIKON F版なら、他のミラーレス機等
でも利用可能ではあるが、その点、α(A)用ならば、
対応一眼レフで、そのまま使用した際にも、ピーキング
等のMFアシスト機能の利用が出来る利点が大きい。
そして、当然であるが、望遠系レンズは、APS-C機や
μ4/3機で利用するのが基本であり、これをフルサイズ機
で使ってしまうと、そもそもの利用目的である「望遠画角
を得る」と要素と相反してしまう。
さて、「望遠マクロ」というカテゴリーの製品は、個人的
には殆ど購入していない。あまり実用的な用途が無い上に、
大きく重く高価な、「三重苦」レンズであるからだ。
だが、近年、私は良く「自然観察」撮影を行う。これは
現状、あくまで趣味的撮影ではあるが、何かの分野での
「資料写真」として必要になるケースも無きにしもあらず
なので、「100%遊び」という感じでも無い。
で、この自然観察分野で有益なレンズは、大口径135mm
レンズであった。具体的には、SONY ZA135/1.8、
SIGMA Art135/1.8、MINOLTA STF135/2.8である。
(SAMYANG 135/2も良さそうなのだが、未所有だ)
これらの135mmは、最短撮影距離が70~80cm台と短く、
APS-C機あるいはμ4/3機で、デジタル拡大機能を
組み合わせて使用すると等倍程度の撮影倍率が得られ、
かつ、極めて優秀なボケ質を誇り、描写が綺麗だからだ。
遠距離に居るトンボ等の撮影ではこれで十分であるが、
しかし、50cm程度と、近接した距離の昆虫等では
最短が足らずに撮影できない。この為、サブ機としてもっと
近接撮影が可能な標準/中望遠マクロを付けて持ち出す事も
あったのだが、複数の機材一式は大掛かりだ。業務撮影
ならばいざしらず、趣味的な自然観察会とか散歩撮影では、
過剰なシステム構成は、「エンジョイ度」を低下させる
要因となってしまう。(=持ち出すのが嫌になる)
色々考えたあげく、例えばTOKINAの300mm/F6.3
ミラー(レンズ)であれば、μ4/3機専用で、小型軽量、
600mmの超望遠画角で、遠距離撮影はお手の物、かつ
80cmまで寄れるので、近接撮影にも強い。と、こちらも
自然観察の主力となりうるか?と思ったが、数年間これを
使っていると、やはり大口径135mm級の圧倒的なボケ質の
良さや、高い解像感と比べてしまえば、ミラー(レンズ)の
リングボケや低解像感は、作画上で不満となる場合も多々
あり、しかもそのリングボケは、アンコントローラブル
(制御不能)である事も、不満や課題となっていた。
(注:ミラーレンズには絞り機構が無いからだ。なお、
撮影距離を変えながらデジタルズームを連続的に併用し、
仮想的に被写界深度を調整する超高度な技法が存在するが、
普段から、その面倒な技法を常用する気には余りなれない)
「ならば、やっぱ、望遠マクロを買うか?」という判断に
至った次第だ。なお、それに該当するレンズは、SIGMA製
の古いものを持っているが、これはF2.8版でとても大きく
重く、普段使いには適さない。またフォクトレンダーの
180mm/F4もClose Focus仕様で準望遠マクロなのだが
こちらはどうも、中途半端な仕様および描写力だ。
結局、SIGMA/TAMRONでの180mm/F3.5版の選択と
なったのであるが、前述の理由でTAMRON版の中古流通が
盛ん、かつ安価であった。重量も1kgをやや切る程度であり、
これは依然重たいが、なんとかなるレベルであろう。
・・という判断で、本レンズの購入に至った次第だ。
(後にSIGMA版150/2.8を追加購入、後日紹介予定)
望遠マクロは、販売機種数が少なく、高価で流通も
あまりしていないし、個人的にも殆ど所有していないので
他レンズと比べての比較評価が難しい、すなわち望遠
マクロにおける「絶対的評価基準」を持っていないのだ。
この点は要注意だ。他のマニア層や評論家層等においても、
自身がこれまで殆ど使った事の無いジャンルの製品等は、
そう簡単には評価が出来る筈も無いのだ。
だから、他者は、そういう情報を信用して製品を買うなど
すると、えらい目に合う。そもそも利用者個々に機材の
利用目的や撮影技法が異なるのだから、他人の評価など
あてになる筈が無いでは無いか。
そして、望遠マクロともなれば、手持ちで撮影する人など
まず居なく、三脚必須であろうが、私の用法では100%
手持ち撮影だ、その点からして、使用法が全く異なる。
・・という事で、他のレビュー等は一切参考にせず、
勿論、そうした情報を全く読む事も無く購入した。
もし、何らかの弱点があっても、それは回避して使えば
良いし、長所を活かす用途開発も又、ユーザー側の責務だ。
「思っていたものと違う!」とかなって、すぐに機材を
手放してしまうのは、1つは購入検討時の「目利きが甘い」
という事であり、より重要なのは「弱点回避のスキル不足」
であろう。だから、いずれも自分自身の責任だ。
また、本ブログでレンズの購入の経緯や動機を良く書いて
いるのは、個々のユーザーには、それぞれの機材利用
目的があって、それに合致する機材を選択するプロセスを
紹介したいからだ。ここはとても重要であり、「誰かが
良いと言ったから買う」という他人まかせの購買論理は
有り得ない(あってはならない)
で、勿論、その要件は各ユーザーで様々である。よって、
私個人の購買論理をそのまま用いる意味も全く無いのだが、
要は、ユーザー個々に「ちゃんと用途を考えて機材を買う」
という、ただその1点につきる。

さて、本レンズSP180/3.5の話に進む。
使用してすぐ気づくところは、被写界深度が紙のように
薄いところだ。実質的には1mmにも満たない感覚だ。
(注:机上の計算では、概算で1.4mm程度だ)
・・そういえば、「使いこなしが難しいレンズ・
ワーストワン」(本シリーズ第12回)の記録(?)に
輝いた「MACRO APO-LANTHAR 125mm/2.5SL」も、
準望遠マクロとも言え、その1mm以下と浅い被写界深度
には(MFにおいて)とても難儀していたのだった。
「これはヤバい、また”修行レンズ”を買ってしまった」
と一瞬後悔。本レンズはAF搭載とは言え、AFで1mm以下
のピント精度など、出る筈も無いし、MFを基本としても、
被写体は、勿論平面では無く必ず「立体」であるから、
僅か1mm程度の被写界深度を、どのように作画的に
コントロールするか? を考えるだけでも頭が痛くなる。
被写界深度の浅さは、単に主要被写体にピントが合うか
合わないか? という問題では無く、構図上のごく一部
のピンポイントにしか焦点が来ていない状況において、
画面の殆どの部分が、アウトフォーカスでボケている
写真を、どのような作画意図で創り上げるのか?という
要素がずっと重要な課題になる訳だ。
写真の事を全く知らない一般スマホユーザー等においては
「何この写真! ほとんどピンボケじゃないの?」などと
言われてしまう事であろう(汗)まあ、そういう一般層では
全体にピントが合っていてブレておらず、明るく綺麗に撮れて
いれば、それイコール「良い写真」だと思ってしまうので
そういう文化とは、相容れない部分があるのはやむを得ない。
・・まあ良い、前述のように「機材を一旦購入した以上、
それを使いこなすのはユーザー側の責務」である。
「難しいから処分してしまえ」では、完全に「ユーザーの
負け」である、それは格好悪く、また色々考察して購入に
至った上では、納得の行く話では無い。
まあ、浅い被写界深度の課題を、なんとかAF/MFを駆使
して回避できたとすれば、本レンズは、なかなか高い
描写力を持っている。
いや、「なかなか」では無く、相当にハイレベルであり、
現時点で、本レンズの「描写表現力」評価は、5点満点で
4.5~5点の間で評価を迷っている状況だ。もう少し
試写を重ねてから、満点にするかどうかを決めよう。
でもまあ、それもその筈、「90マクロ」で一世を風靡した
TAMRONである、姉妹製品の180マクロが低性能であったら
メーカーのブランド力に傷がついてしまうから、これも
また「手を抜いた設計は許されない」状況であったの
だろう。

細かい弱点は色々ある。
例えば、有限回転式ピントリングは(無限回転式よりも)
好ましい仕様だが、AF時に幅広のピントリングが回転
する事で、重たいレンズの重心位置をホールディング
している際に、その回転動作が邪魔になる、この仕様だと
MFを中心に使うしか無い。
そして、そもそもAFは速度的に遅く、精度も低く、
無限遠から最短付近まで移行するのは、極めて遅い。
被写界深度がとても浅いので、AFでもMFでも、目の前
の被写体が全く見えず、近くの昆虫等に合わせたいのに
遠くの枝等にピントが行って「あれ、被写体は何処だ?」
と焦ってしまうケースが多発する。
他にも細かい弱点はあるが、もうそれらは問うまい。
こうした特殊用途とも言えるレンズは、一般的撮影には
まるで向いておらず、もう、買うか否か?の二択であって、
用途的に必要であれば、黙って買うしか無い。
そういう意識を持って購入するならば、もうその手の
ユーザーは、明白な目に見える弱点等は、なんとしても
回避して使うスキルやモチベーションを持っているだろう
から、問題点には至らないであろう。
まあそれでも「軟弱なレンズでは無い」事は、重要な
ポイントとして述べておく。全般的な使いこなしは
かなりの高難易度のレンズである事は間違い無い。
上級者層、職業写真家層、実践派上級マニア層あたりの
御用達レンズとなるだろうから、初級中級層には推奨しない。
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今回の第42回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。