本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回は「35mmレンズ 超マニアックス」という主旨で
実焦点距離が35mm(フルサイズ対応か否かは問わない)
のマニアックなレンズを9本紹介しよう。
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ではまず、最初のシステム

レンズは、中一光学 SPEEDMASTAR 35mm/f0.95 Ⅱ
(新品購入価格 63,000円)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
レンズ・マニアックス第19回、本シリーズ第25記事参照。
2016年発売の中国製の超大口径MF標準画角レンズ。
APS-C機(以下)専用レンズである。
従前の初期型(Ⅰ型/MITAKON銘)とは、銘柄が変わり、
かつⅡ型では小型軽量化を実現している。
(注:初期型は、殆ど日本国内流通はしていない)
特徴は勿論、F0.95という超大口径である。
ビギナー層では、「開放F値の明るい(小さい)レンズの
方が高性能で良く写る、だから高価なのだ」という
極めて大きな誤解をしている状態なので、本レンズも
どれだけ高性能なのか?と期待してしまうかも知れない。
「大誤解」と書いた理由だが、レンズという物は、基本的に
開放F値が明るければ明るい程、収差が大きくなり、その
補正が大変やっかいになる。だから、原則的には開放F値の
明るいレンズは画質が悪くなる。これが真実である。

もし、開放F値の明るい大口径レンズで、(諸)収差を
良好に補正しようとすると、非球面レンズや異常分散ガラスを
多数用いた、複雑で大きく重くコスト高な設計にならざるを
得ない。そして少しでもコスト高になると製品価格が上がり、
高価だと売れなくなるので、その開発や製造に係わる経費の
償却を、販売本数の少ないレンズで負担しなくてはならなく
なり、つまり、ますますコスパが悪化する悪循環だ。
ビギナー層では「高価な製品は、高級な材料(や部品)を
使っているから高いのだ」と、ここも大誤解しているのだが、
そんな事は、まるっきり無い。
例えば、同じ50mm/F1.4級のMF標準レンズであっても、
新品価格で最も安価なものは1万円台中ほど、対して最も
高価なものは、約45万円である、すなわち同等な仕様の
製品でも価格が30倍(!)も異なるのだ。
だが、同様の製品であり、いずれもガラスと金属の塊だ、
原材料費が30倍も違う筈が無い事は、誰にでも理解できる
話である。
何故、子供でもわかる事が、大人にはわからないのか?
その理由は「思い込み」だ。これが一番怖い。
「値段が高い商品は良いものだ」と思いこんでしまい、
また、その高価な商品を買う事(買った事)への、自分自身
への「言い訳」を無意識に考え始める。
「これは性能が高いものなのだ」「品質が良いのだ」
「高級な原材料を使っているのだ」「プレミアムなのだ」・・
つまり、そう考えないと、自分自身が高価な商品を買った事を
正当化出来なくて、その行動の論理が崩壊してしまうからだ。
これが「思い込み」の怖さだ。これはレンズに限らずあらゆる
商品分野で起こりうる。そしてたいていの場合、この事は、
その商品の自分にとっての価値を冷静に判断(評価)できない
その市場分野のビギナー層に重点的に起こる事である。
さて本レンズSPEEDMASTAR 35mm/F0.95Ⅱは、超大口径
ではあるが、「描写力的」には、正直言って標準以下である。
ただ、超大口径ならではの特徴的な描写特性を持つ為、
本ブログでのレンズ評価項目「描写表現力」(すなわち
描写力+表現力)得点は、決して悪く無い。
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さて、次のシステム

レンズは、アルセナール MIR-24N (35mm/f2)
(中古購入価格 8,000円)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
本シリーズ第4回「ロシアンレンズ編」等、多数で紹介。
製造年は不明、恐らくは1980年代前後に、ウクライナの
KIEVにある旧ソ連の国営工場で製造されたMFレンズだ。
型番末尾のキリル文字「H」は「N」を示し、すなわち
NIKON Fマウント互換という事だが、普通、ロシアンレンズ
では、そう書いてあったとしても、NIKON製の一眼レフに
直接装着する事は極めて危険である。
幸い、本レンズの個体の場合は、銀塩時代から現代機に至る
様々なNIKON製一眼レフに装着を繰り返し、互換性の
安全が確認できているので、他記事においてはNIKON機に
直接装着しての実写紹介が多かった。
だが、ロシアンレンズには製造固体差が多い。製造精度の
問題に加え、旧ソ連では複数の国営工場が存在していて、
レンズ製品はそのどこで作られていたかは不定であった事も
影響していたのかも知れない。しかしその中でも、こちらの
アルセナール(アーセナル)は、ソ連崩壊後の現代では
ウクライナの光学機器メーカーとして独立し、旧ソ連時代
から品質の高い製品を製造していたと思う。
(参考:第二次大戦後、東独Carl Zeiss Jenaが旧ソ連に
接収された際、最初に、その資材等が移送された工場が
アルセナールであったと思われる)
まあ、それでも危険性はあるので、NIKON機に直接装着したい
場合は、多数のNIKONジャンク機などで脱着の実験を繰り返し
安全を確認する必要がある。そうした機材実験環境を持たない
初級中級層あるいは初級マニア層の場合は、ロシアンレンズは
決して一眼レフへ直接装着せず、今回の利用例のように、
マウントアダプターを経由してミラーレス機で使うのが良い。
そうすれば、万が一、レンズが外れなくなったとしても、
アダプターが1個、それ専用になるだけで済む。
そして、そうまでして使いたいと思う程には、現代においては
ロシアンレンズ全般での魅力は乏しい。
それらのレンズの多くは、戦前のカール・ツァイス等の
名レンズの設計をコピーあるいは改変したものが多いのだが、
これは銀塩時代の、1980年代~1990年代くらいまでは、
ギリギリ性能的にも許容範囲ではあったが、現代の視点から
すると、さすが80年以上も前の設計のレンズの性能は古すぎる
ように思える。非球面レンズも使っていなければ、異常低分散
ガラスも無い、コーティング技術も未発達だ。そして勿論、
AFも無ければ超音波モーターも手ブレ補正も入っていない。
また、大抵の場合、実絞り(絞り込み)測光でしか使えない。
(注:絞り込み測光は、むしろメリットとなる場合も多い)

ロシアンレンズが話題となったのは、1990年代初頭のソビエト
崩壊後に、これらのレンズが国外(日本へも)流通した事に
よる。そして、その後、日本では中古カメラブームが起こり、
そこで一部のマニア層が、これらのロシアンレンズに注目し
「値段が安いわりに、そこそこ良く写る」であるとか
「カール・ツァイスの設計のコピーだから、凄いレンズだ」
などと言う評判がマニア層全体に広まった事による。
だけど、その実態は「とても古い時代のレンズ」であるから
現代においては「比較的安価な価格で、オールドの名レンズ
の写りの雰囲気を味わえる」という評価が最も正解に近い。
ただ、古い設計のレンズは当然様々な弱点を持つ。それらを
理解し、短所を回避して用いる、あるいは短所を弱点と見せない
ような表現を狙う、等、極めて高度な撮影スキルが要求される
レンズ群でもある。勿論、初級中級層の手に負えるものでは無い。
まあ、そうは言うものの、本MIR-24に関しては、そうした
オールドレンズのコピー品ではなく、私が調べた限りでは
独自設計のように思える(?)希少なロシアンレンズである。
そして描写力の不満は少なく、使いこなしもさほど困難では無い。
特徴としては、35mmレンズ中、トップクラスの最短撮影距離
を誇る事であり、それは24cmと極めて短い。
近接撮影を主体とするならば、フルサイズ機ではなくμ4/3機
等で見かけ上の撮影倍率を高める措置も有効だ。
個人的には好評価であり、過去記事「ミラーレス・マニアックス
名玉編」では、ロシアンレンズとして唯一、第17位にランクイン
している名玉だ。
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では、3本目のシステム

レンズは、KONICA HEXANON AR 35mm/f2.8
(中古購入価格 10,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
本シリーズ第34回「KONICA HEXANON AR編」等、
多数の記事で紹介のMFレンズ。
製造年は不明、恐らくは1970年前後であろう。
HEXANON ARとは「KONICA ARシリーズ一眼レフ」用の
交換レンズ群であり、1960年代後半より、だいたい
1980年代くらいまで長期間販売されていたMFレンズ群だ。
初級マニア層等の間では、「HEXANON(ヘキサノン)は、
良く写る」という通説が良く流れてはいるが、HEXANONは
長期に渡り、固定レンズ、レンジ機用レンズ、一眼レフ用
レンズ等で多数のバリエーションが存在し、恐らくは
その数は優に百種類を超えるだろうから、単にHEXANONと
言うだけではレンズを特定したり評価をする事は出来ない。
まあ、中には同時代の他社レンズよりも描写力が優れた
ものも存在していただろうし、当然ながら、そうではない
HEXANONも存在する。

そんな中、本AR35/2.8であるが、過去記事ミラーレス・
マニアックス第60回「35mmレンズ対決編」において、
数十本の各種35mmレンズの代表をエントリーさせる際に、
MF国産レンズとして唯一、その対決にノミネート(選抜)
された優秀なレンズである。
まあ、とは言うものの、現代においては入手性も極めて悪い、
生産数が少ないのだ。 下手に褒めて、投機対象となって
しまったら皆が困るだろうから、程ほどにして置くが・・
そもそも「良い(優秀な)レンズ」という定義が世の中に
おいては決まっていない。だから、個々のユーザーが自身の
価値感や評価基準において、好き勝手を言う訳であるから、
なんとも複雑だ。元々、個々のユーザーでは、それぞれ
レンズの用途も目的も撮影技能も異なる訳だから、他人の
言う事が自分にも当てはまる訳では決して無い。
特に、近年においてはネットによる情報伝達の普及から、
中には投機的観点において、意図的に好評価を流し、それに
より相場の吊り上げを狙って、転売利益を得ようとする個人
や組織もある為、ネット上の情報には慎重な対応が必要だ。
本ブログにおいての名玉の条件だが、
「描写表現力」「マニアック度」「コスパ」「エンジョイ度」
「必要度」の5項目の平均点が、5点満点で4点以上のもの。
と定義している。
ただ、これも利用者個人の目的やスキルに依存するもので
あって、とても使いこなし難しいレンズの場合とかでは、
そもそもビギナー層ではパフォーマンスを発揮出来ない。
そしてこの評価項目には微妙に嵌らない要素としては
「入手性」がある、ただ、これは個人的には「マニアック度」
の中に含めてしまっている要素だ。
でも、私はそのレンズを入手して使っている訳だから、
希少なレンズであればマニアック度が高まって良いのだが、
それを新たに欲しいと思った消費者層ではどうなるか?
私の評価点が高くても、欲しくても入手できないのだから
どうしようも無い。下手に投機的プレミアム相場で高価に
入手してしまったならば、例えば私の購入時点でのコスパ
評価は良かったとしても、高価に買ったユーザーでは、
コスパ点は限りなく低くなってしまう訳だ。
こういう矛盾もあるから、結局、「評価は必ず自分自身が
行うもの、決して他人の評価は参考にしてはならない」
という大原則が出てくると思う。
では何故、たまに本ブログで私個人の評価点を公開して
いるのか? という事であるが、基本的には個人評価データ
ベースは大多数のレンズ紹介記事には全く掲載していない。
稀にそれを掲載する場合は、「対決記事」などのケース
だけであり、その際、それらのレンズをどのように評価して
いるのか、という事の参考の為に、その点数を記載する程度
に留めている。
そして、そもそも近年の本ブログの記事は、自身における
カメラ機材研究の為のメモとしている理由が殆どだ・・
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さて、次のシステム

レンズは、7artisans(七工匠) 35mm/f1.2
(新品購入価格 20,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)
レンズ・マニアックス第30回、本シリーズ第41回記事で
紹介の、2018年に発売された中国製のAPS-C型対応
ミラーレス機用MF大口径単焦点レンズ。
新鋭の七工匠(しちこうしょう)のレンズは、現在順次
入手してテストと評価を行っている最中である。
(海外レンズマニアックス第1回記事参照)
現時点でわかっている事だが、七工匠製レンズの多くは、
30年~50年ほど前の、銀塩MF一眼レフ時代の名レンズ
の設計をAPS-C機対応に「スケールダウン(縮小)」して、
ほぼそのまま、または多少設計変更して製造されている
という事だ。
この設計手法により生産されたレンズを、本ブログでは
「ジェネリック・レンズ」と呼んでいる。
つまりジェネリック薬品と同様に、過去において開発
された内容を流用し、新規開発や試験評価にかかる費用を
大幅に削減する手法である。
勿論、過去の時代に一般的に用いられていた物であるから、
薬品の効能とか、レンズの基本性能には何も問題が無く、
それでいて開発費等の削減から安価な商品になる理屈だ。
かなり賢い商売のやり方であるが、まあ、それがわかった
ならば、ユーザー側としても「これは中華レンズだから、
安かろう、悪かろう」などの変な先入観を持たずに
「少し前の時代の名レンズの描写が、ミラーレス機で
安価に味わえる」と、観点を変更すれば良い訳だ。
そして、その修正された価値感においては、これらの
「ジェネリック・レンズ」は、とてつもなくコスパの高い
レンズになりうる。
すなわち、銀塩オールド名レンズ等は、下手をすればその
希少価値から投機対象になってしまい、とんでもない高額
相場になってしまう場合もあるからだ。
ところが、これら「ジェネリック・レンズ」ならば、
1~2万円台で、それらが買えてしまう訳だ。

さて、で、本七工匠35/1.2であるが、銀塩時代、1960年
前後の、各社大口径標準レンズ、つまり、55mm/F1.2等の
およそ3分の2のスケールダウン設計であろう。
ただまあ、この時代の各社(超)大口径標準レンズの
性能は極めて良く無い。これは時代の未成熟によるものだ。
(参考:最強50mm選手権第7回、MF50mm/f1.2編)
まあ、非球面レンズや異常低分散ガラスも、まだ殆ど
使用できなかった時代の設計である。(超)大口径化で
「鬼のように増大する諸収差」を抑え込む設計等は出来る筈
も無かったのだ。では、何故そうした(超)大口径標準が
各社から発売されたのか?というと、これはこの時代が
「大口径化競争」であったからだ。他社がやれば、自社も
作る、そうしないと、そのメーカーは「技術力が無い」と
思われてしまい、市場戦略上では不利になってしまう。
おまけに、面倒な設計や、生産数の少なさから、これらの
レンズは高価であった。しかし性能は悪いので、コスパは
酷いものだ。実際にこれらF1.2級高額レンズを購入した
ユーザー層でも、一部の目利きが出来るマニア層や上級層
からは、好評価は決して得られなかった事であろう。
ほどなくして、1970年代くらいには、こうした大口径化
競争も沈静化した、メーカー側としても、高価で性能が
低いレンズを売っていたら、それこそ評判を落としてしまう。
まあ、そんな事情があった訳であり、よって、それら大口径
標準レンズをスケールダンした本レンズにも、そうした
オールド大口径の様々な欠点がモロに出てきてしまう(汗)
この弱点を回避しながら使うのは容易な事では無い。
前述の「最強50mm選手権第7回、MF50mm/f1.2編」は、
計5本の各社F1.2級MF大口径標準の対決記事であったが、
途中でもう「どれも性能が低くて、やっていられない!」と、
投げ出してしまったグダグダの対決記事となっていた(汗)
まあ、そういう事情である、本七工匠35/1.2は、元と
なったオールド大口径の性能上の欠点を回避するのが、
ほほ不可能なほどに困難な異端のジェネリックレンズだ。
・・であれば、本レンズの使い道だが、オールドの弱点を
あえて強調した「クラッシックな写真表現」を狙うしか
無いであろう、でも、それも、とても難しい技能だ。
上級者でも困難だと思われるが、せっかく買ったレンズだ、
それを目指すしか無い。
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さて、5本目のシステム

レンズは、中一光学 CREATOR 35mm/f2
(新品購入価格 20,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
レンズ・マニアックス第5回、本シリーズ第17回記事で
紹介の、2014年発売の中国製MFレンズ(フルサイズ対応)
非Ai方式のFマウント実絞りレンズであり、NIKON Dfでは
かろうじて使用が可能だが、他のNIKONデジタル一眼レフ
だと使用困難(まず不可能)となるので、ミラーレス機で
マウントアダプターで使用するのが簡便であろう。

前述の「七工匠」等の新鋭海外製レンズよりは、少し早い
時代から国内市場に参入していて、概ね2010年代中頃
からである、同時期、あるいは、その前後の時代に参入した
海外ブランドとしては、他に、SAMYANG(サムヤン、韓国)
や、YONGNUO(ヨンヌオ、中国)、LAOWA(ラオワ、中国)
HOLGA(ホルガ、中国)等があるし、アジア圏以外でも、
LENSBABY(米国)やLOMOGRAPHY(ロモ/ロモグラフィー、
オーストリア/ロシア)も著名であろう。
これら海外製新鋭レンズは、いずれのメーカーの製品も
保有しているが、どれも安価であり、かつ品質・性能に問題が
あるケースは少なく、いずれもコスパに優れたレンズである
場合が殆どだ。
何故、こうした海外製廉価版レンズの市場参入が始まったか?
という点は明白であり、すなわち2010年代において、国内の
カメラ・レンズの市場の縮退が顕著である事が所以だ。
で、縮退した市場を支える為には、値上げをしなければ
メーカーや流通はやっていかれないが、ただ単に値上げした
のではユーザーから文句が出る。そこで「高付加価値化」
という戦略により、実際には実用上必要としない性能、
たとえば超高画素、超高速連写、超高感度、等の超絶性能を
搭載し、それを値上げの理由とし、販売数の減少を利益率で
カバーする戦略を各社は選んだ。カメラ本体のみならず
レンズも同様であり、超音波モーター、手ブレ補正、超高解像力
等の、これも実用上あまり必要とされないスペックを盛り込んだ
高付加価値戦略が、レンズメーカーを含めた各社で行われた。
また、その究極は、2018年からの各社一斉のフルサイズ・
ミラーレス機への転換であり、これでさらに高付加価値の
新型機体と、その新鋭交換レンズ群の販売をもって、縮退
いたカメラ市場を活性化(というより、ビジネスの維持)
を行おうとしている。
で、この結果、2010年代後半においては、カメラおよび
レンズの実際の入手価格(新品、新古、中古)の平均金額は
それまでの時代の、平均しておよそ3倍程に高価格化された。
これは、私の購入機材は、必ず記事中で購入金額を記載して
いるから、それを見れば一目瞭然であろう。
過去の本ブログ記事でのカメラの入手価格は3万円ほど、
レンズは色々あるが、それの平均は、およそ2万円ほどで
あろう。ところが、カメラでもレンズでも、2010年代後半
の機材は、その入手価格平均が10万円弱まで跳ね上がって
しまっている(汗)
私個人のみならず、市場全体を見渡しても同様であろう、
安価な価格帯のカメラやレンズが殆ど存在しない。
まあ、日本のメーカーが「独占市場」であれば、これは、
ユーザーは受け入れるか、あるいは「もう買わない」という
選択肢しかないが、まあ、幸いにして市場は「オープン」で
ある。であれば、価格が安い日本製品が1つも無くなって
しまった現代の日本市場に、価格の安いレンズを投入すれば
安いもの(コスパの良いもの)を求めるユーザー層は、
悪い言葉で言えば「釣り放題」となる。
で、現にここに、その「釣り放題」に、引っかかってしまった
ユーザーが居る。私も、高価になりすぎた現在の日本製品には
コスパの悪さから全く興味が持てず、こうした新鋭海外レンズ
に夢中になっている。だって、圧倒的にコスパが良いからだ。
そして品質的にも、国内製造コストが高騰して、低価格品は
物凄く手を抜いたローコスト設計・製造を強いられてしまう
日本製品に対して、恐るべき事に、こうした海外製品の方が、
もはや品質も高い。
これでは日本製品に勝ち目は無いではないか・・ とも
思うのだが、まあ幸いにして、日本製品にはブランド力が
まだ残っている。現状では多くのユーザー層においては、
「海外(中国)製のわけのわからないレンズを買うくらい
ならば、国内有名メーカーのレンズを買った方が安心だし、
所有満足度も高い」と思っているだろう。
だから、あまりそう簡単には、日本製品の市場が喰われて
しまうようにはならない、と予想はしているのだが、けど
すでに私個人では、新鋭海外レンズに軍配を上げている
状態なのだ・・
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では、6本目のシステム

レンズは、smc PENTAX-DA 35mm/f2.4 AL
(中古購入価格 12,000円)(以下、DA35/2.4)
カメラは、PENTAX K-01 (APS-C機)
ハイ・コスパレンズ・マニアックス第10回記事等で
紹介の、2010年発売のAPS-C機専用準広角(標準画角)
AF単焦点レンズ。
PENTAXとしては珍しい「エントリーレンズ」である。
正式にメーカー側がそう定義しているものでは無いが、
本レンズの他には、DA50/1.8(レンズ・マニアックス
第7回記事)くらいしかエントリーレンズは無いのでは
なかろうか?
PENTAXがHOYAの傘下だった時代での「エントリーユーザー
主体戦略」の一環であると思われる。このHOYA時代の
PENTAXでは、初級またはエントリー(入門)ユーザーに
向けて、低価格帯機種の充実、オーダーカラー制による
ユーザーニーズ多様化への対応と喚起、新規小型ミラーレス
機(Qシステム)の開発発売、アニメ等とのコラボ戦略など、
様々な措置が行われ、その結果HOYA/PENTAXのカメラ事業は、
この時代には黒字化している。
ただまあ、旧来からのPENTAXの歴史をずっと見てきた
私や、他の「PENTAX党」のマニア層からすれば、この時代の
PENTAXの市場戦略には違和感がある。なんと言うか、過去の
PENTAXにはマニア層にうったえかける何かがあったのだ。
まあ下手をすれば外から見ているのみならず、社内においても、
その違和感はあったかも知れない。そして、この時代の直後に、
HOYAはPENTAXの事業を切り離し、それをRICOHに移管譲渡
してしまったのだ。

で、そういう意味においては、本DA35/2.4は、歴史的に
希少なレンズだ、この時代特有の背景が、製品の仕様に
良く出ている。
ビギナー層向けのエントリーレンズとは言うものの、
デザインには手を抜いておらず、質感が良く格好良い。
おまけに、例のオーダーカラー制により、本レンズには、
11色~12色とも言われるカラーバリエーションが存在
したのだ。本レンズの「銀色」も、実はバリエーション色
であり、K-01の黄色のボディに似合う(標準)レンズと
して、他の色の中古を見送り続けて、やっと入手した銀色だ。
まあでも、描写性能は、はっきり言ってたいした事が無い、
他の付加性能も同様、ごく普通の35mmレンズである。
しかしながら、この時代のPENTAXの様相や戦略を、
如実に表す「生き証人」として、本レンズの存在意義は高く、
その歴史的価値による必要度も高いと思っている。
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さて、7本目のシステム

レンズは、HANIMAR 35mm/f2.8
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第42回記事で紹介の、
M42マウントMFレンズ。
このレンズの出自は全く不明、マニア間においては、
「ハニマーやハニメックスは、日本のコシナ製だ」とも
昔は言われていたが、その真偽は良くわからない。
なにせ現存する情報があまり無いどころか、このレンズ
の流通も極めて少なく、マニアにおいても、ある程度は
憶測で語るしか無い状況であったのだ。
本レンズは1990年代から所有しているが、当時でも
これは「ジャンク品」扱いであり、まあ当初はなんとか
使えたが、その後、経年劣化でヘリコイドもグタグタに
なってしまい、現在では半故障品である。

また、写りも全くたいした事が無い。性能が低くて入手性も
悪いならば、紹介する価値の殆ど無いレンズである事も
確かではあるが、少し前述したように、近年の本ブログは
自身の「研究メモ」のような意図もある為、こうした
ジャンク・オールドも、たまには使ってみる必然性がある。
何故ならば、常に性能が良いレンズばかりを使うとか、
あるいは逆に、オールドレンズや低性能なレンズばかりを
使っていると「スケール感覚」が鈍くなってしまうからだ。
「スケール感覚」とは、たとえばレンズの性能を10段階で
評価するとしよう、その際に、このレンズは何点である、
とかを決める為の絶対評価感覚の事だ。
これは、多分に感覚を研ぎ澄ます必要があると同時に、
常に多数の性能の異なるレンズ群に接する事で、それらの
相対的評価、または比較的評価を繰り返し、それでやっと
「スケール感覚」が整ってくる。
他の市場分野の例をあげれば、一番わかりやすいのは、
「ウイスキー」のランクとかであろうか。
同一メーカーのウイスキーであれば、一般的に価格が高い物は
美味しい。だけど、レンズと同様に、ウイスキーにおいても
厳密には価格と味(性能)は比例しない。それから、ユーザー
毎の好み(志向)もあるし、それを飲む環境や気分(心理)
にも味の評価は影響される事であろう。
そしてメーカーが異なる場合は、その傾向はさらに複雑化し、
ウイスキーのランク(評価)を価格やメーカー名だけでは
決める事は、まず出来なくなる。
そこで必要なのは「絶対的スケール感覚」である、様々な
価格やメーカーの異なるウイスキーを「ティスティング」
(試飲)してみて、それが何点であるかを評価する訳だ。
まあ、ウイスキーの世界には専門の評価者も居るけど・・
(参考:最も著名な人は、ビールとウイスキーの評論家の
「マイケル・ジャクソン」氏(英国、故人)であろうか。
あのスーパースターと同じ名前だが、単なる偶然で、本名だ。
自身を「ホップ(Hop)の帝王」(ポップ(Pop)の帝王のパロディ)
と称してした模様であるが、ビールのみならず各国の多種多様の
ウイスキーにも各々厳密な評価点をつけていて、国際的に信頼の
おける評価情報となっていた)
でも、こうした評価の話は、そこまで専門性が高くなくても
個人の範疇でも十分である。
自分で、そのマイケル・ジャクソン氏と同じ事をやって
みれば良い訳だ。勿論、それはとても大変な事であり、
多種多様の様々なウイスキーを飲んで、点数の良いものと
低いものをちゃんと見分けなければならない。
その為には、いつも良いものばかりを飲んでいる訳にも
いかないであろう、たまには安価なものも、そして必ず
最高級のものも飲まないと、その評価点の幅が決めれ無い。
まあ、レンズも同様であろう、性能の高いものも使うし
低いものも使う、そうやって「スケール感覚」を研ぎ澄ます。
その結果、初めて「コスパ」の評価が出来るようになる。
それをやらずして、このレンズはコスパが良いとか悪いとか
言っていても、ではいったいどれくらいレンズの事を知って
いるのか? となって、信用の置けない情報となる訳だ。
ただ単に、値段が安いレンズ(や安価な商品)が「コスパ」
が良くなる訳では無い、その商品の絶対的な価値が理解
できない限り、「コスパ」は絶対に評価が出来ない訳だ。
世間一般では、単に安価な商品を「コスパが良い」と言って
いるが、同等の価格で、他の商品に比べ、性能、機能、味、
サービス等が優れていない限り、「コスパが良い」と
言う事は出来ない事は当然であろう。
そして性能や味を正しく判断するには、物凄く高いレベルの
知識や経験や感覚値が要求される事となる。
レンズで言えば、最低でも、1000本のレンズによる
100万枚以上の撮影経験、位となるのではなかろうか?
まあ、そういう理由(目標)もあって、私の場合は、
定期的に性能の高いレンズも、そうで無いレンズも使う
ようにしている状況である。
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さて、8本目のシステム

レンズは、MINOLTA AF 35mm/f1.4(G)
(中古購入価格 75,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機)
多分、ミラーレス・マニアックス第60回記事以来の
久々の登場である。自分でもいつ記事を書いたか
わからない位、本レンズは出番が少ない(汗)
1990年代に発売と思われるMINOLTA α用AF大口径レンズ
Gの型番は、高性能の称号であるが、まあこういう点は
メーカーから「高画質だ」と押し付けられる事は、
個人的には好まない。それを付加価値として高価にされて
しまうと、コスパが非常に悪化する場合が殆どだからだ。
本レンズはSONYにも引き継がれている(SEL35F14G)
ただ、MINOLTA版もSONY版も非常に高価である。
本AF35/1.4で確か発売時定価は15万円ほどしていた。
その価格が、個人的に「嫌いなレンズ」である理由と
なっている。とてもそこまでの高価格に見合う高性能は
得られていないからだ。
銀塩時代に多数の優秀なレンズを設計したMINOLTAでも、
35mmでのF1.4の大口径化は、諸収差の発生を抑えられ
なかったという事が実態であろうか・・
本レンズに限らず、35mmのF1.4級は、他に他社の2本を
銀塩時代に使ってはいたが、それらも描写力が気に入らず、
早々に処分してしまっていた。まあ、35mm/F1.4は
銀塩時代当時の技術では無理なスペックであるという事だ。

でも、本レンズは残しているので、処分しなかっただけ、
まだマシである、という事にもなるだろう。
まあ、嫌いなレンズではあるが、その割に良く使った
レンズでもある。何故ならば、結局35mm/F1.4は、
本レンズ以外は残さなかったので、このスペックが
必要となる場合は、本レンズを使うしかなかったのだ。
特に大活躍したのは、2005年頃からであった。
この前年、KONICA MINOLTAから、世界初の手ブレ補正
内蔵デジタル一眼レフ「α-7 DIGITAL」(デジタル一眼
レフ・クラッシックス第3回記事)が発売された。
αのレンズには35mm,50mm,85mmの3本のF1.4レンズ
が存在していて、それらを所有していた為、その2005年
当時では、「最も暗所撮影に強いシステム」とは、
「α-7 DIGITAL+最大ISO3200+本AF35mm/F1.4」
であったのだ。何故ならば、まず本35mmがα最広角の
F1.4であり、当然手ブレがし難い。また、他社には既に
手ブレ補正内蔵レンズも存在していたのだが、その最大口径
はF2.8に留まっていたのだ。だから、このシステムが当時
史上最強であり、これを「夜間戦闘機」と呼んでいた。
(本ブログも既に開設されており、初期の記事での
「夜景イベント撮影」等では、このシステムを使用した)
まあでも、現代においては超高感度機も多々存在し、
より強力な手ブレ補正であるとか、あるいはF1.4を
遥かに超える超大口径レンズも存在している。
(本記事でも、35mm/F0.95と35mm/F1.2を紹介)
だから、本レンズでなくてはならない理由も、もう殆ど
無く、よって使用頻度も年々低下していく状態だ。
けど、これも前述のように、たまには様々な特性を持つ
レンズを使ってあげないと、評価(スケール)感覚が
鈍ってしまう事。それと、もっと重要な事があり、それは
「レンズの性能が低い場合でも、それを回避して使う事は
ユーザーの責務である」という新しいコンセプトが出来て
いる事だ。これについては、一般的な慣用句においては
「弘法筆を選ばず」を目標としている、という意味である。
レンズの性能に文句を言っているようではまだまだであり、
高い技量を持っていれば、個々の弱点は問題にならない、
という事を示す。勿論、簡単に到達できる領域では無いで
あろうが、そういう目標を持つ事も悪くは無い。
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では、今回ラストのシステム

レンズは、TAMRON SP 35mm/f1.8 Di VC USD (F012)
(中古購入価格 41,000円)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)
レンズマニアックス第13回、本シリーズ第8回記事等で
紹介の、2015年に発売された高性能AF単焦点準広角レンズ。
開放F値が、F1.4ではなくF1.8という、ただそれ一点
だけで不人気となってしまった不運のレンズである。
様々な記事や本記事でも述べている通り、F1.4が必ずしも
F1.8よりも高性能(高描写力)になるというのは誤解であり、
むしろ、大口径化により起こる「鬼のような諸収差」を
いかに補正するかが課題となる。
TAMRONとしても、このレンズは「超高描写力と、比類なき
近接性能」を目指して設計されたレンズであるだけに、
市場でここまで不人気なってしまった事は大誤算であろう。

少し前の時代であれば、ここまで高性能なレンズは
マニア層が必ず注目して、そこで好評価を行うから、
ビギナー層等も、その情報を聞きつけて、正当に売れる
筈のレンズである。
だが、誤算の原因は、現代のカメラ・レンズの購入層が
ビギナー層ばかりになってしまい、マニア層等では既に、
高価になりすぎた現代のカメラやレンズには興味を失って
いる、という状況だ。
(おまけにTAMRON初の35mm単焦点だ、中上級層ならば
既に、何らかの35mmレンズを持っていない筈は無い)
で、ビギナーには、残念ながら本レンズのメリットは
感じる事はできない、「F1.8だからF1.4より低性能だ」
それで評価は終わりである。
マクロを除き、トップの最短撮影距離(20cm)そして、
超高描写力、それらの長所があれば、F1.8である事など
どうでも良いであろう。
TAMRONも慌てて、本レンズの後継機のSP35/1.4を
2019年に発売したが、高価になってしまい、おまけに
最短撮影距離も伸びて近接性能が失われてしまった。
現代での主力ユーザー層がビギナー層ばかりになって、
交換レンズに関する知識レベルが、従前の時代よりも
急速に低下しているのは、褒められた状態では無いし、
ネット上でのレンズに関する評価情報の質も従前の時代に
比較して同様に低下している。もはや上級マニア層に
よる正当な評価情報など、まったくと言っていいほど
見かけない。だから基本的には、他者の情報は全く参考に
ならないのだが、それでも「レンズの発売年」等を調べる
状況においてのみは、ネット検索を頼らざるを得ない、
そういう作業中に、ビギナー層や初級マニア層の評価記事
を見つけると、本当に酷いものである。
まあ、中上級マニア層が興味を失ってしまう市場となって
しまったのも、様々な世情や状況から、やむをえない節も
あるのだが、このままでは結局市場はさらに縮退してしまう。
機材メーカー側が有効な対策を施せない点にも責任は大きいが、
単にそれだけを責める訳にもいかないであろう。
マニア層もまた、レベルが落ちた現代での主力ユーザー層に
対して、適切な情報提供や啓蒙活動を行っていく必要があるの
ではなかろうか? そんな事も良く考えてしまう。
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では、今回の「35mmレンズ 超マニアックス編」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。