本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。
今回は「超高描写力レンズ(後編)」という主旨で
私の個人的な「レンズ評価データベース」において
「描写・表現力」の項目が「5点満点」となった優秀な
レンズを5本紹介しよう。
既に本シリーズ第56回記事で「前編」を掲載済みだが、
上記の条件に当てはまる高性能レンズは、所有レンズ
約400本中、10数本が存在する。
その中から「表現力」よりも「描写力」に重きを置いて、
11本を選別し、それらを前編、後編に分けて紹介して
いる次第だ。
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ではまず、最初の高描写力システム

レンズは、COSINA Carl Zeiss Milvus 50mm/f1.4 ZF2
(中古購入価格 85,000円)(以下、Milvus50/1.4)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
レンズ・マニアックス第17回記事等で紹介の、
2016年発売の高解像力仕様MF大口径標準レンズ。
例によって、今回紹介の高描写力レンズ群も、様々な過去
記事で何度も紹介済みのものばかりである。
なので、個々のレンズの長所短所等の話は大幅に省略する。
また、前編記事では「描写力とはなんぞや?」という定義の
話が主体となった、今回は、その手の「哲学的」な話は最小限
として、「技術開発」や、マーケット(市場)や、ユーザー層
での感覚とか、そういう「取り巻く環境」の話を主体としよう。
こういった話は、個々のレンズの出自・変遷などの歴史、
あるいは評価などの情報とは異なり、所有者の実体験から
くるものであり、完全なる「一次情報」である。すなわち
他には無い情報であり、本ブログでは、他を探せば見つかる類の
「二次情報」の記載は好まず、一次情報の提供を主眼としている。

さて、本Milvus50/1.4であるが、1960年代頃から現代まで
続いている一眼レフ用標準レンズの一般的な構成・・
つまり、変形ダブルガウス型とか、プラナー型等と呼ばれる
一般的なものとは大幅に異なる構成のレンズであり、これは
いわゆる「ディスタゴン」系列の構成である模様だ。
その意味は前述の紹介記事等でも述べているので割愛するが、
標準レンズとして珍しい構成である事に歴史的価値がある。
これはまあ、手動計算では、まず設計不可能な程の複雑な
構成であり、レンズ(光学)設計ソフトを用いて開発された
ものであろう。
現代のレンズ設計ソフトは、簡便なものではパソコン上で
動く物も多いが、殆どは業務専用であり、価格の面からも
用途からも、一般ユーザー層が使える類のものでは無い。
よって、どのような内容(処理)がレンズ設計ソフトで
行われているかは、マニア層や職業写真家層であっても
まず知られていない事であろう。
レンズ設計ソフトの仕組みだが、まず基本となるレンズ構成を
入力するが、その際、使用可能なガラス材質のデータベースを
持っている。ガラス材質が異なると屈折率や色分散(アッベ数)
も異なる為、このデータが無いと光路の計算が出来ないのだ。
新しいガラス材質が開発されたら、このデータベースも更新する。
次いで、必要な仕様要件を入力しなければならない。
ここは多数の項目があって、また専門的要素も多々含まれる。
一般層に容易にわかる範囲で言えば、レンズのカタログ仕様を
想像してもらえれば良い、例えば開放F値、焦点距離、寸法
等である。勿論これら以外にも様々な専門的評価値、例えば
収差の度合い(許せる範囲)とかも入力する必要がある。
ただ、ここは、要求仕様を先に入力するのか、計算をした結果で
仕様が決まってくるのかはトレードオフ(どちらかを優先すれば、
どちらかが立たない)関係になる事も多々あるだろうから、
それぞれの仕様項目に優先度は付ける必要がある。
簡単な例を挙げれば、開放F1.4にしようとすると、他の性能
例えば、球面収差を低減しようとした場合、「非球面レンズが
沢山必要だ、異常低分散ガラスも必要だ・・」等とソフトから
提案されてしまうと、そんな複雑で高額なレンズを作っても
営業的には売れないだろうから、じゃあ、目的とする仕様を
変えて対応(再計算)する。具体的には、例えば開放をF1.8
に抑えるならば高性能で低コストなレンズが作れるのであれば、
それでも良い、という事にもなるだろう。
しかし、このあたりも、営業・企画上での製品コンセプトの
都合があるし、設計開発側でもまた、どの項目を優先するかの
考え方、コンセプト、ノウハウ、バランス感覚、センス等が
必要になるだろうから、なんとも複雑で、最後には結局、
人間的な感覚の部分に委ねられる訳である。
もし、そのあたりの感覚が欠如したまま、レンズ設計ソフト
の「言うがまま」に高性能標準レンズを作らせてしまうと、
十数群十数枚で、非球面レンズや異常低分散ガラスを多数
使った非常に贅沢、かつ、大きく重く高価な三重苦レンズが
出来上がってしまう。まあ、高額なそれを販売しても何とか
売れるブランド力を持つメーカーであれば、それも許される
かも知れないが、そうでなければ、そんな高額なレンズは
多数売れる筈も無い。ここもまた営業・企画的なセンスが
関係はしてくるが、基本的には、設計側でのシーズ提案の
要素(ここまでなら出来る)の比率が大きい話になると思う。
どの程度、要望している仕様に近づいているかは、設計ソフト
に都度表示される「メリット関数」(評価関数)の、1つ
(または複数もあるか?)の数値を見ればだいたいわかる。
例えばだが、100%と表示されれば、目的(要求)通りの
完璧なレンズとなるが、まあそうでなくても、どこまでで
妥協するか?を考察する場合の方が、むしろ多い事であろう。
メリット関数以外にも、様々な計算結果が数値やグラフで
表示される、それらは主に収差の発生度合等を示す情報で
あるが、収差が無ければ完璧なレンズか?というと、
必ずしもそうではなく、ボケ質の差異や、ボケの遷移等の
感覚的な評価判断も必要となる。
レンズ設計ソフト側においては、サンプル画像を入力すると、
それが実際にそのレンズでどう写るかという「シミュレーション」
を行う事も可能ではあるが、これは、どちらかと言うと平面的な
画像の要素が大きいと思う。(撮影距離を変えてボケの状態を
確認する等は、市販の範囲での設計ソフトでは困難だと思う)
私は、ここまでの設計手法は、とあるレンズメーカーで実際の
市販ソフトを見学させていただいて理解しているのだが・・
一部のカメラ・レンズメーカーでは、こうした市販レンズ設計
ソフトでは限界があると思い、自社専用のレンズ設計ソフト
そのものを開発している事であろう。そういう独自ソフトでは
ボケの遷移などを数値化、グラフ化して表示できるだろうとは
推察できるが、さすがに、それらの独自ソフトは「企業秘密」
であろうから、見た事もなければ詳しい話も聞いた事は無い。
でも、いずれにしても、技術に詳しくない一般の人達が思う
ように、例えば「今時のコンピュターでは人工知能(AI)が
搭載されているだろうから、レンズ設計などは全部自動的に
勝手にやってくれる」と誤解してしまうかも知れないが・・
実際のところは、そんな訳にはいかない。
まず、そんなAIなどは存在しないし・・
そして、コンピュター自体が、完璧な性能を求める為の
計算をして、その結果100万円もの高額レンズになって
しまったら、そんなものは実際には売れないから、結局
コンピューターに任せる事は出来ず、必ず人間が、あれこれ
と決めて、コンピューターに適正な仕事(結果を出す)を
するように指示しないとならない訳だ。
でもまあ、近年においては、レンズ市場も縮退していて
昔からあるオーソドックスな設計のレンズを安価に売って
いても、もう儲からないから・・(注:近年の中国製等の
「ジェネリック・レンズ」は、こちらのビジネスモデルだ)
こういうコンピューター設計の、贅沢な(しかし過剰な)
仕様のレンズを売りたい、と言うのもメーカー側の理由と
してあるだろう。

だが、やはり少し過剰だ。本Milvus50/1.4も旧来の標準
レンズの何倍も重く、何倍も高価なブルジョアレンズである。
カール・ツァイスの名前がついていようがいまいが、レンズ
設計ソフトから生まれてくる贅沢レンズである事は間違いなく、
おまけにツァイス銘がついて高価になりすぎて、コスパが
良く無い。
そう、ある意味、コスパが悪い事実を確認し、それを言いたい
が為に、本レンズを購入している、という捻くれた購入動機
すら存在している。すなわち「そんなの名前で高価なだけだ!」
と、捻くれた見方をつぶやいていても何の意味も無い訳で、
実際に所有してみないと、その性能など、わかる筈も無い。
で、もし、いくら高価であっても、コンピューター設計の効能
が絶大であり、とてつもなくパフォーマンス(性能)が優れて
いるならば、価格の高さは、コスパの悪さには影響しない。
つまり「高いだけあって、さすがに凄いレンズだ!」という
評価にもなりえる訳だ。
まあでも、私の感覚値では、本Milvus50/1.4は、高描写力
ではあるものの、値段が数倍になっている事に見合うまでの、
旧来の標準レンズからの数倍までの性能向上は見られない。
すなわち、コスパ的には減点せざるを得ない状況である。

個人的な感覚値においては、コシナ製品は技術力が高く
結果として高描写力のレンズ製品は多いのだが、ツァイス
のブランドとなると、少々「やりすぎ感」が感じられる。
まあ、旧来、フォクトレンダーブランドとは、そのあたり
で若干差別化していた(=フォクトレンダー銘の方が
ブランド使用料が少ないのか? コスパに優れている)
と思われたのだが、近年のフォクトレンダー銘レンズも
レンズ設計ソフトによる贅沢な仕様となって来ていて、
コスパ的要素が段々低くなってきている事が気がかりだ。
(本シリーズ第56回前編記事での、マクロアポランター
等を参照)
最後に、(本レンズに限らず)ディスタゴン構成のレンズは
ピントの山のピークが目視で探し難く、一眼レフでの光学
ファインダーではMFでの使用がやや難しい弱点を挙げておく。
その対策については、高精細EVF搭載のミラーレス機で
ピーキングや画面拡大等の、MFアシスト機能を頼りにする
のが良いと思う。
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さて、次のシステム

レンズは、NIKON Ai AF DC-NIKKOR 105mm/f2D
(中古購入価格 70,000円)(以下、DC105/2)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)
ハイコスパレンズ・マニアックス第16回記事等で紹介の
1993年発売の「デ・フォーカス・コントロール機構」
内蔵AF中望遠レンズ。

このDC機構の説明は、そう難しくは無いが、原理の理解が
困難であろう。
簡単に言えば、「ボケ質を良くする事が可能なレンズ」
である。
ただし、この調整を行うには、まず前ボケを綺麗にするのか
後ろボケを綺麗にするのか?を選ぶ必要がある。
例えば、後ろボケを綺麗にしたいならば、「DC環」を
R(リア、後ろ)側に、自身が設定した絞り値と同じ値に
まで手動で廻す。
こうすると後ろボケが綺麗になるが、反面、前ボケは汚く
なる為、構図上で前ボケを入れるのは得策では無い。
前ボケを綺麗にしたいならば、DC環をF(フロント、前)
の方向に、絞り値と同じ値にまで廻せば良い。
この時、一眼レフの光学ファインダーによるボケ質の変化は
わからない。一眼レフは開放測光である事が1つと、光学
ファインダー(スクリーン)は、基本的にボケ質の再現能力
は殆ど無いからだ。
だから「効果が良くわからん」とか言って、DC環をいっぱい
にまで廻してしまうと、元々このDC環は、球面収差を僅かに
コントロールするものであるから、これが過剰補正となって
球面収差が発生し、ソフトフォーカス(軟焦点)レンズの
ような描写となる(下写真)

(注:軟焦点効果を確認しながら撮影する為、上写真のみ
SONY α7を使用。NDフィルター使用で、絞りをF2開放とし、
DC環をRのF8(目盛り外)いっぱいまで廻すと、軟焦点化し、
ピーキングは動作しなくなる。まずアウトフォーカス部の
軟焦点化がEVFでもはっきりわかり、そして、合焦させたい
主要被写体部には、何をやってもピントの山が来なくなる。
すなわちアンコントローラブルなピンボケレンズとなる)
そもそも、こうしたソフト効果を得たいのであれば、
ソフト描写専門のレンズが他に色々と存在する。
(本シリーズ第7回「SOFT LENS編」を参照)
それらの専門のソフトフォーカスレンズの方が、軟焦点効果の
コントローラビリティ(制御の自由度)が高いのは勿論だし、
ソフト効果も上品であるし、レンズの価格も比較的安価だ。
何も本レンズのような高価で高描写力のレンズを、そうした
目的に使う必要は無い。これは、レンズのパフォーマンスを
最大に発揮する、という意味でも、基本中の基本の話だ。
「普通のレンズにも、ソフトレンズにも使える」といった
欲張った考えも持たない方が賢明であろう、「二兎を追うもの
一兎を得ず」という故事は、あながち的外れではない。

余談だが、家電製品等でも、2つの機能が入っている物が
良くある。そうした家電を「便利だから」と買うと、後で
困った事になるケースもある。まず、片方の機能が壊れて
しまうと修理もちょっと面倒に思え、「片肺飛行」で使って
いると、なんだかシステム全体が「無駄になった感」が強い。
この例としては、アナログ時代の、「テレビデオ」や
「ラジカセ」があるだろうか・・ テープ回転動作のある
機構は、いずれ必ず消耗して壊れてしまうのだ。
それと、2つの機能のいずれかが最新技術分野である場合も、
少々困った事になる、技術の進歩が速いから、仕様的に古く
感じる(=カメラの話でも良く言う「仕様老朽化寿命)
ペースが速いが、もう1つの機能は何も問題なかったりする。
この典型例としては、初期のDVD+ハードディスクレコーダー
であろうか? この場合、DVDの様々な形式が出てきて変遷が
速かったし、ハードディスクレコーダーは年々その容量が
増えていった。どちらかの機能が使用目的に耐えられて
いたとしても、他の機能がすぐに古く感じてしまう訳だ。
余談はここまでだが、私の信条としては、「常に単機能の
機器を買うべし」である、レンズでも家電でも、何でも
そうしている。「結局、それが最善である」という考え方だ。
本DC105/2は、被写体状況に応じて、DC環を最良の状態に
セットし、最高の描写表現力を発揮させる事が必須だ、
それだけのパフォーマンスを持つレンズなのだから、
決して「軟焦点レンズにも使える」などと、中途半端な
用法を考えるなかれ。
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では、3本目の高描写力レンズ

レンズは、smc PENTAX-FA 77mm/f1.8 Limited
(新品購入価格74,000円)(以下、FA77/1.8)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)
本シリーズ第23回「PENTAX LIMITED編」等、多数の記事で
紹介済みの、2000年発売の変則焦点距離AF中望遠レンズ。
本ブログでの通称は「ナナナナ」であり、名玉編記事で
第一位となった事もある傑作レンズである。

発売直後に新品購入し、以来、長期間愛用しているのだが、
しかし、このレンズ、どこが優れているのか? ずっと
良くわからなかった(汗) 勿論、感覚的な面では
「ボケ質が良い」とか「失敗が少ない」とか、いろいろと
わかってはいたが、これを上手く言葉や理屈で説明できない。
本レンズの発売時、PENTAXのカタログには「空気感」
というキーワードが載っていた、なんとなく意味はわかるが
依然、曖昧な用語だと思う。
私は、「きっと、このレンズは”ボケ遷移”が良いのだ」
と判断していた。
「ボケ遷移」とは、画面上で、ピント面からOut Focus面に
至る変化を表す本ブログ独自用語。恐らくFA77/1.8は、
これが滑らかなのだろう・・ という解釈だ。
ただ、これは私が「そう思っている」だけであり、真実か
どうかは、良くわからない(汗)
発売後20年間も愛用していて今更だが、近年、なんだか
この特徴を”何らかの手段”て確認したくなってきた。
で、この為に「解析ツール」を研究開発する事とした。

上写真は、ボケ遷移評価専用ツール「Trance Focus」である。
ボケ遷移の様子が、青、緑、赤などに色分けして表示できる。
(サーモグラフのように、暖色になる程、ボケが急激に
変化している状態を示す)
完全自力開発。中身の仕組みは「高度な知的財産」である為、
残念ながら公開できない。また、このソフトは私個人専用で
ある為、有償無償に係わらず公開や販売は行わない。
これで、様々なレンズのボケ遷移やボケ質が目で見て確認
できるようになった。
まあ、これを作った他の理由には、「レンズ製品はメーカー
の言うがままであり、ユーザー側では高度な評価が出来ない」
という点が、ずっとなんだか「不公平」に思えていた状況が
ある。
すなわち、メーカーが「このレンズは高性能なのです」と
言って、あれこれ高品質を示すマークをつけて、それらを
高価に売る。しかし、それが事実かどうかはわからないし、
高性能と言っても、色々と要素はあるだろう(例:解像力が
高いとか、手ブレ補正が高性能とか、色収差が少ないとか)
で、ユーザー側の評価と言ったら、たとえ専門的評価者で
あっても、絞りを変えて解像感を見る、四角い物を撮って
歪曲収差を見る、空を撮って周辺減光を見る、夜景を撮って
ボケの変形(口径食)を見る・・ とか、そんな感じであって
特に、専門性の低い雑誌やWeb記事等では「解像感」だけを
見ていて、他のレンズ性能は、いっさい無視という状況だ。
(いずれも、判で押したように「開放からシャープに写り
良いレンズだ」といった、ありきたりの評価しかしない)
勿論、いずれも感覚的評価であり、かつ、それらだけでは、
レンズ性能の、ごくごく一部を見ているに過ぎない。
そして、「ボケ質」については、ユーザー側では撮影条件の
固定化が出来ない為、偶然かつ感覚的な評価しかできない。
(匠の写真用語辞典第13回記事参照)
まあ、恐らく近年の一部のメーカーの独自光学設計ソフトでは
ボケ質についての数値的評価が出来るようになってきている
だろうが、それをメーカーにおいて門外不出(企業秘密)に
している事が、どうにも気になった。つまり、ここも同じ事
であって、メーカーが「このレンズはボケ味が良いのです」
と言ったところで、ユーザー側は、それを確認する術(すべ)
が無いでは無いか・・ これでは、メーカーの言うがままに
高価なレンズを買わされてしまう。
まあ、ユーザー側でも、レンズの「絶対的性能」を確認する
為の武器(ツール)が欲しい、と、まあ、そういう訳である。
本ソフトだけに留まらず、今後もこういう解析ツールは
色々な性能要件に応じて個人で研究開発を続ける予定だ。
とても時間がかかる作業で、おそらく何年も十何年もかかる
とは思うが、まあ、やむを得ない。
まあ、かたや何百人も優秀な技術者が居るだろうメーカーの
開発組織に対し、たった一人で立ち向かう状況にはなるが、
ユーザー側にも骨のあるヤツが居る、という事を見せないと
いつまでも「売り手の言うがまま」の状況が続いてしまう。
つまり、いつまでも「解像感」とか「歪曲収差」といった、
ユーザーであれば誰にでもできる簡単な評価だけを行って、
それだけで「レンズの良し悪し」を語っているだけでは全然
足りないと思っているのだ。

このツールによる解析結果だが、まだ十分な解析対象が揃って
いる状態では無い。撮影条件によってもボケ質は変化する為、
恐らくは数千枚という写真の解析を行わないと、そのレンズの
評価はしにくいであろう、ここも時間のかかる作業ではあるが
自作ツール側もまた進化(バージョンアップ)が自在だ。
数千枚の写真を次々に自動連続解析し、それぞれにカラオケの
採点機のように100点満点の点数を付けるような処理も、
将来的には十分に可能となるかも知れない。
(まあ、私が飽きてしまわないか?が最大のリスクだ・汗)
FA77/1.8の「ボケ遷移が優れている」という解析結果が
得られるのであれば、自説の立証が出来る事となる。
実際には、そうはならないかも知れないが、その研究の中で
得られる事は非常に多いであろう。ただなんとなく「ボケ味が
良いなあ・・」とか言っているだけの状態とは雲泥の差だ。
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さて、次のシステム

レンズは、SIGMA 135mm/f1.8 DG HSM | ART
(中古購入価格 102,000円)(以下、A135/1.8)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ(APS-C機)
本シリーズ第12回記事等、多数で紹介の
2017年発売の高描写力AF大口径望遠レンズ。

描写力的には殆ど文句の付けような無い高性能レンズだが、
大きく重く高価な三重苦レンズである事が最大の欠点だ。
次いで、用途開発の難しさがある、この焦点距離と口径比を
いったいどんな被写体に向けるのが適切か? という点だ。
まあでも、だいたいの用途開発は済んでいる。
第一に、ステージ等暗所の中遠距離人物撮影
第二に、屋外中距離イベントの撮影
第三に、中近距離自然観察撮影
といった所だ。なお、私はあまり撮らないが、ユーザーに
よっては「鉄道写真」も適切な用途となるだろう。
中遠距離ポートレートという可能性も無い訳では無いが、
その目的であれば、やはり(換算)85mm~105mmあたり
のレンズが適正であり、それらのクラスのレンズは被写体との
距離感が適正になる事のみならず、ポートレートに向けた
描写特性(例:解像感が高いが、それが過剰にはならず、
ボケ質やボケ遷移が良い、等)となっている場合も多いので、
本レンズと比べると、ちょっと異なる特性だ。
本レンズの場合は、それらより、もっと解像感が高い特性で
あり、高忠実性(Hi-Fi)の映像記録用途が主体となるだろう、
人像写真向けには男性被写体にしか向かないかも知れない。

解像感については、解像力チャートを撮影して実測する手段
はあるが、その作業は面倒なので・・
別途、超高精度ピーキングツール「Twin Peaks」(上写真)
を開発済みであり、それである程度は解析できるのだが
こちらのツールもまだ具体的な数値化(例:解像感=満点)と
いった機能は搭載できていない。(あれこれ研究のテーマが
あって忙しい(笑)まあ、あくまでこれらは「趣味」の範疇
であるから、仕事のように”やらなければならない”という
義務や責任は存在しないのだ・・)

本A135/1.8は、とても優れた描写表現力を持つレンズだが
大きく重く高価な「三重苦」に加えて、内蔵手ブレ補正
すらも入っていない為、使い手を選ぶレンズである。
もっとも、その設計コンセプトは、とても「硬派」である為
個人的には好みのレンズでもある。
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では、今回ラストの高描写力レンズ

レンズは、SONY FE 100mm/f2.8 STF GM OSS
(SEL100F28GM)
(中古購入価格 129,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)
本シリーズ第0回「アポダイゼーション・グランドスラム」
記事等で紹介の2017年発売の史上4本目のアポダイゼーション
レンズ。これはAF仕様である。

最大の特徴はアポダイゼーション光学エレメントによる
優れたボケ質である、上記グランドスラム記事では、
4本の中では最も新しい本レンズが最強である、という風に
述べてはいたが、1998年のMINOLTA初代STFも捨てがたく、
レンズマニアックス第31回記事では「新旧STF対決」の
特集記事を組んでいる。
他、マクロ切換モードを持つ事が特徴であり、最短撮影距離
は57cm、これはMINOLTA版の初代STFと同じ、1/4倍の最大
撮影倍率となるが、現代のミラーレス機用レンズである為、
画素補完型デジタルズーム機能の併用や、センサーサイズ
のクロップ機能により、見かけ上の撮影倍率は、実用画素数
の範囲内であれば、いくらでも上げれる。
この特徴から、ポートレートの他、自然観察(フィールド)
用レンズとしても適正である。
「高価なレンズで花や虫を撮ってたら勿体無い、美男美女を
撮るのが良いのでは?」という意見もあるだろう、まあ
それもまた正解であろう、勿論そういう被写体にも最適な
レンズであるが、被写体の価値の優劣はつけれないので、
基本的には何を撮っても良い。そして、たいていの場合に
おいて満足いく写りをするレンズである。

ただ、天邪鬼的な意見を言わせてもらえれば、新旧STFは
レンズの描写力が高すぎる。どんな被写体を撮っても
まともに写ってしまうので、撮り手が色々と工夫をして
「なんとか上手く撮れた」という喜びや楽しみが少ない、
つまり「テクニカル的なエンジョイ度の低い」レンズだ。
上級層、上級マニア層、職業写真家層、ともなれば、
自身が長い年月をかけてつちかってきた、経験、技術、知識
そして時間や、投資した金額、などにおいて、そのスキルを
最大限に発揮して、写真を撮りたいと思う事であろう。
それが他者との「差別化」であり「個性の発揮」にも繋がる
からである。
なのに、ビギナー層であっても、本レンズを使えば、簡単に
高描写力、高表現力の写真が撮れてしまう。
「エンジョ度が低い」とか言う以前に、これでは上級者等は、
他者との差別化が出来ないで、困ってしまう状態だ。
だからまあ、本レンズ(や、他のアポダイゼーション)は
「掟破りの禁断のウェポン(武器)」と言う事も出来ると
思う、ぶっちゃけ言えば、あまり普段においては積極的に
使いたいとも思えないレンズ(群)であり、「ここぞ」又は
「どうしても」という場合に持ち出すレンズ(群)が、
アポダイゼーションであるとも思う。

正直言えば、ビギナー層には使ってもらいたくない(笑)
まあ、アポダイゼーションレンズは、どれも高価なので、
そう簡単にビギナー層が購入対象とはしないレンズで
あろう事は、わずかな救いだ。
ただまあ、MINOLTAの初代STFの発売時、写真仲間の若い
女性が「清水の舞台から飛び降りるつもりで」初代STF
を購入した事は、関連記事で何度か述べている。
まあ、そのように「清水レンズ」を買うならば、それは
止めはしない。「レンズに撮らされている」という気に
なってしまうかも知れないが、「描写表現力」という
パフォーマンスにおいては、他の通常レンズを超越する
破壊力を持つ「最終兵器」であるからだ。それについては
各自のカメラライフの上で、知っておいた方が良い事で
あろう・・
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では、今回の「超高描写力レンズ(後編)」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。