実焦点距離または換算焦点距離が35mmとなるレンズ
群の中から、最強のレンズを決定するという主旨の
シリーズ記事。
「B決勝戦」の2つの記事を経て、今回は、最強の
35mmレンズを決める「決勝戦」となる。
今回記事では、決勝戦にノミネートされた、35mm
(級)レンズを6本紹介(対戦)しよう。
いよいよ、35mmレンズの最高峰が決まる事になる。
なお、「投機対象」等となっていて、単に値段が高い
だけの「ブランドレンズ」等は、本シリーズ記事には
一切出てこない。
あくまでコスパや性能優先でレンズを選んでいる。
そもそも、本決勝戦に進出できるクラスの35mmレンズ
であれば、まぎれもなくトップクラスの描写性能だ、
値段が高いとか有名であるというだけで、そのレベル
までの高性能が得られる訳では決して無い。
それほどまでに本決勝戦はハイレベルであるし、しかも
中には1万円程度の低価格35mmレンズまで含まれている。
レンズの価値とは? 価格とは? ブランドとは?
そういう事を考え直すきっかけとなるかも知れない。
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では、まずは最初の35mm決勝進出レンズ。

レンズ名:SONY DT 35mm/f1.8 SAM (SAL35F18)
レンズ購入価格:11,000円(中古)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ(APS-C機)
2010年に発売されたAPS-C機専用準広角(標準画角)
単焦点エントリーレンズ。
(注:本「最強(35mm)レンズ選手権」シリーズ
では、レンズの「実焦点距離」又は「換算焦点距離」
で、「カテゴリー分け」を行なっている。
よって、レンズ自体の対応フォーマット(例えば、
フルサイズ対応とか、APS-C機用、μ4/3機専用等)
・・については無関係としている)
本DT35/1.8は、過去シリーズ「ハイコスパレンズ
BEST40」編で、第2位となった名レンズである。
まあ、当該記事は、コスパを重視した評価なので、
価格が安価で性能が優れた本レンズは、高順位と
なるのは当然とも言えた。
本「決勝戦」では総合評価なので、本レンズが優勝
できるかどうかは、記事のラストで評価点を計算して
みないとわからないが、かなりの上位となるであろう。

ただまあ、厳密に言えば、本レンズは35mmという
カテゴリーでは、確かに実焦点距離はその通りだが、
APS-C型センサーに対応したイメージサークルしか
持たない為、小型化やら低価格化、あるいは高性能化
という面で、フルサイズ対応レンズよりも若干の有利は
あると思う。
本レンズの高性能とは具体的に何か?と言えば、
最大の特徴は最短撮影距離の短さであり、最短
23cmは、全35mmレンズ中、TOP5に入る。
(注:その上位の内、2本は、オールドレンズと
非一般的なレンズで入手困難、さらに1本は新鋭の
高額な高性能レンズであり、それらを除くと、
長らく一般的35mmレンズの中では本DT35/1.8が、
最強の近接性能を誇る時代が続いていた)
で、レンズ構成は、5群6枚の変形ダブルガウス
構成で、これは銀塩MF時代の50mm/F1.8級の
構成と類似であり、そのレンズ構成は、各社で
1970年代~1980年代にかけ、ほぼ完成の域に
到達していた状況であった。
その事実は、その後、数十年間に渡り、その構成の
レンズが発売継続されていた事でわかる。
(つまり、完成度が低かったならば、その数十年間の
間に、いくらでも改善のメスが入れられていた筈だ)
さらに言うならば、初級中級層や初級マニア層等が
「神レンズだ」と神格化してしまう、安価で写りが
良いSMCT55/1.8、EF50/1.8Ⅱ・・・等の
小口径標準は、全て、ほぼ同じレンズ構成である。
つまり、どのメーカーの小口径標準レンズを買った
としても、いずれも良好な描写力を誇り、かつ安価だ。
初級層等では、PENTAXやCANONと言った特定のメーカー
の機材(レンズ)しか使っていなかった為、他社の
レンズが同等の性能を持つ事を知らなかっただけである。
で、その銀塩MF時代の50mm/F1.8を、2/3のサイズに
縮小して設計したとする、そうすると、だいたい、
33mm/F1.8というAPS-C型センサー対応のレンズが
出来上がる。そして、そうした設計技法においては、
性能や特徴は、縮小元となったレンズの状態を、ほぼ
引き継ぐ事になる。まあつまり、銀塩時代の完成度が
高かった高性能レンズのミニチュア版が出来る訳だ。
本レンズは、恐らくだが、その設計手法であろう。
なお、近年、大量に出回っている海外(中国製等)
新鋭レンズの多くは、同様の設計手法により古今東西
の名レンズを1/2~2/3程度にスケールダウンして、
ミラーレス機用等に再設計されている製品だ。
この手法を私は「ジェネリックレンズ」と呼んでいる。
医薬品の「ジェネリック」と同様に、過去の製品を
コピーして製造する事で低価格化が実現するからだ。
この手法が使えるようになったのは、近年において
コンピューター光学設計ソフトが進歩した事も大きな
理由の1つである。
ただし、元となるレンズに弱点がある場合は、その弱点
も、縮小レンズに引き継がれてしまう。
具体例としては、銀塩MF時代の55mm/F1.2級大口径
標準レンズは、開放F値こそ明るいが、描写力には様々な
弱点が目立ち、まあいわば、たいした事が無い写りだ。
それを2/3縮小設計した35mm/F1.2というジェネリック
レンズは、モロに元レンズの欠点を引き継いでしまって
いて、やはりたいした写りでは無い。

色々と余談が長くなったが、本DT35/1.8は、
スケールダウン型レンズながら、優秀なコピー元の
特徴を引き継ぎ、特に大きな描写力上の弱点を持たない。
低価格で、コスパが非常に良いレンズである。
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では、次の35mmレンズ。

レンズ名:TAMRON SP 35mm/f1.8 Di VC USD
(Model F012)
レンズ購入価格:41,000円(中古)
使用カメラ:NIKON Df (フルサイズ機)
2015年に発売された高描写力単焦点準広角レンズ。
最大の特徴は最短撮影距離が20cmと極めて優秀であり、
それまでトップクラスであった前述のSONY DT35/1.8
の23cmを、久々に上回る性能となった。

最短撮影距離に限らず、描写力も35mm級レンズ中、
間違いなくトップクラスである。これを使用する上で、
何ひとつ不満は無い事であろう。
では、本レンズが優勝(35mm最強)なのか?と
言えば、それはそう単純な話でも無い。
まあ、姉妹レンズSP45mm/F1.8は50mm選手権で優勝
しているものの、今回も予定調和だと面白く無い(笑)
さて、TAMRONは、本レンズ以前の時代の60年間程、
あえてカメラメーカーの一般的な仕様のレンズとは
被らない(バッティングしない)スペックのレンズを
販売し続けていた。その結果として、特にマクロレンズ
と高倍率ズームの製品分野ではTAMRON製品は高く評価
された。まあ「そういうブランドイメージが付いた」
という次第である。
で、本レンズは、TAMRONとしては初の、当たり前の
スペック(カメラメーカー等と被る)のレンズだ。
そういう分野で勝負する以上、性能には妥協していない。
コンピューター設計の9群10枚、異常低分散ガラスや
非球面レンズを贅沢に使った近代的なレンズ構成だ。
その分高価(定価9万円)となったが、それはまあ
高価な高付加価値レンズを発売しないと、縮退した
交換レンズ市場を支えられないので「やむをえない
製品企画だ」とも言える。
ただ、本レンズは商業的には失敗してしまった。
殆ど売れず、発売数年後には、在庫処分の新古品が
中古市場に大量に流通したのだ。本レンズは、その
安くなったタイミングで入手した次第だ。
最大の課題は、マーケティング(企画)ミスであろう、
初めて35mmレンズを発売するのだから、もっとユーザー
層の実態を探っておくべきであったと思う。
まず、35mmというのは極めて普遍的なレンズであり、
中上級者クラスでも2~3本、上級マニア層ともなれば、
20~30本の35mmレンズを持っていてもおかしく無い。
そこに高価な新鋭レンズを発売したとしても、
「35mmは、もう持っているからいらんよ、高いし・・」
となってしまう。
結局、初級層にしか売る対象が無いのであるが、
現代のその層は、残念ながら銀塩時代よりも勉強不足だ、
そこに開放F1.8のレンズをぶつけたとしても、
「F1.4の方が良く写るに決まっているじゃん、F1.8は
廉価版だよ、それなのに9万円とは、高いなあ」
となってしまう(これは後述のように誤まった判断だ)
まあ、昔の時代とかで、そんな事を言っていたのは、
1970年代頃のユーザー層であり、その時代では、
銀塩MF一眼レフに50mm/F1.4か50mm/F1.8を
付けて販売していたが、F1.4セットの方が1万円以上
も高価であったので、当時の殆どの消費者層は、
「F1.4レンズの方が、高価で高級品で良く写る」
と大誤解をしていたのだ。(実際には正反対である。
もしF1.4版が全ての面で優れていたのならば、
わざわざ、性能の低いF1.8セットを別途販売する
筈が無い。F1.4版に一本化してしまえば済む話だ。
実際には当時の50mmレンズはF1.8版の方が完成度が
高く描写力も高かった為、併売せざるを得なかった)
まあ、その後、何度かの中古カメラブーム等を経て
ユーザー層のカメラ・レンズ知識は格段に向上していった、
・・しかし、2010年代よりカメラ・レンズ市場が縮退
してしまい、結果、事業を維持する為にカメラやレンズが
どんどんと高価格化(値上げ)していくと、もう中上級層
は新鋭機材に興味をなくしてしまった。まずは高価すぎる
し、あるいは現在所有している多少古い時代の機材でも、
腕前さえあれば、ちゃんと写真を撮る事ができるからだ。
そういう状態であるので、本質がわかっていない初級者層
だけが、新製品に興味を持ち、結果的に50年も前の時代に
遡るほどに、ユーザー層のレベルが低下してしまった。
そしてネット文化の普及も功罪がある。そこに流れている
情報が常に正しいものである保証は全く無く、例えば
より高価なF1.4級を売った方が、メーカーも流通市場も
皆が儲かるならば、評論家等にも、その旨を書かせて、
新製品を過剰な迄に高く評価する訳だし、高価なそれらを
買ったビギナー層等も、玩具を自慢したい子供のように、
それを褒めちぎる。
結局、TAMRONとしては大誤算だ。
現代の初級ユーザーにとって、そのレンズの描写力等は
まるっきりわからない状態に等しかった訳だ。
いくらなんでも、ここまで急激にユーザー層がレベル
ダウンしている事は、老舗のTAMRONでも、想像しようが
無かった事であろう・・
残念すぎる事実であるが、結局、超高描写力の本SP35/1.8
は市場から全く注目されず、TAMRONはやむなく2019年に
新製品SP35/1.4(ただし、寄れない)に、開放F値を
明るくリニューアルせざるを得なくなった状況だ。

せっかくの超高性能レンズが評価されないのは、TAMRONに
とって屈辱的かも知れないが、まあ、その問題点の大半は
著しくレベルダウンしたユーザー側にあり、残る課題は、
その酷さが見抜けなかったTAMRONの企画側と、こうした
低迷市場にしてしまったカメラ界全体にあると思う。
つまり、スマホ等の台頭に対し、何ら有効な対策を打てず、
減少した機材販売数を、不要な迄の性能による付加価値で
値上げをする事しか行ってこなかった市場戦略であろう・・
そんな、高いだけの機材は、少しわかっている人ならば
誰も欲しいとは思わない、買うのはビギナーだけである。
ネット情報からマーケティング(市場調査)する風潮も
また問題なのであろう、今時のネット上の書き込みは、
信憑性の無いものか、あるいは意図的な情報操作か、
はたまた超初級者による思い込みの情報ばかりだ。
本当に真面目に、メーカー側が市場調査をするならば、
自分の足で、あらゆる場所に出向いて、カメラを持って
いる人から、かたっぱしからヒアリングしてみたら良い。
そこからは生の声やユーザーの実態が良くわかるであろう、
メーカーの企画部門とかでは無いし、業界とは無関係の
私ですら、そうした情報収集は日常的に行っている事だ。
それは興味があるからやっている訳であり、メーカー等が
ネット調査しかしないのであれば、それは、真の市場調査
では無いのではなかろうか?と思えてしまう。
そして、ネットで調べる事は「効率的」でもなんでもない、
価値の無い情報を、いくらインプットしても、何も答えは
出て来ないのだ。
こうした状態を、「Garbage In Garbage Out」と言う、
「ゴミを入れても、ゴミしか出て来ない」という意味だ。
これは、もう60年も前のコンピューター(情報技術)の
黎明期に生まれた名言(しかし、真実だ)であり、
情報技術者であれば、誰でも知っている(勉強をして
きている)話である。
ともかく、本SP35/1.8が全く評価されない現状は
全くもって、残念な話であろう。
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さて、3本目の35mmレンズ。

レンズ名:Carl Zeiss Touit 32mm/f1.8
レンズ購入価格:55,000円(中古)
使用カメラ:FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
2013年発売のAPS-C型ミラーレス機(FUJI X,SONY E)
専用、AF準広角(標準画角)レンズ。
これを購入したのは、「ちょっと失敗」であった。
まあ、ぶっちゃけ言えば、コスパが悪いのである。

冒頭紹介のSONY DT35/1.8と、同等のスペックで、
同等の描写力、しかし、最短撮影距離仕様は平凡、
となったら、いくらなんでも、ツァイスの名前が
ついているだけの国産レンズに、5倍も6倍もの金額
を投資する方が、どうかしている・・(汗)
まあつまり、ツァイスのブランド使用料を鑑みると
あまり安価なレンズを作る事は無理であり、少なくとも
定価20万円以上の高価な価格帯にしない限り、
贅沢で高性能な設計のレンズは作れないのであろう・・
ただまあ、そういう状況がわかったのは、本レンズを
購入し、研究を続けた結果でもある。
まあ、「授業料」という事にしておこう。
ちなみに、DT35/1.8と同等(まあ、逆光耐性が劣るが)
であれば、さほど悪い描写力では無い。
弱点は、ただ価格が高いだけである、それをブランド
の付加価値と見なせるかどうかで、本レンズの評価は
大きく変わるであろう。

・・で、勿論、本レンズは日本製である。
カール・ツァイスは、もう50年位も前から写真用交換
レンズを生産していない。それはマニアの間では常識の
話ではあるが、世間一般層では「カール・ツァイスと
言えば世界最高峰の光学機器メーカーである」と単純に
思い込んでしまう訳だ・・・
これで入手価格が1万円ならば、本レンズが間違い無く
35mm編では優勝なのだが・・・
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では、4本目の35mmレンズ。

レンズ名:アルセナール MIR-24N 35mm/f2
レンズ購入価格: 8,000円(中古)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)
旧ソ連製レンズである、ただし、ウクライナ製なので
「ロシアン」と言ってしまうと、微妙に定義が異なる
かもしれない。

本レンズは、過去記事「ミラーレス・マニアックス
名玉編」において、ロシアン系レンズの中から、
ただ1本、ランクインした高性能レンズである。
普通「ロシアン」と言えば、「80年程前のツァイスの
設計をコピーした(注:正確には、第二次大戦の敗戦
により、東側ツァイスの技術や資産が、旧ソ連に接収
されてしまい、ツァイスの設計や資材を継承して生産
されたレンズ)物であり、安価なのでオールド名レンズ
の描写を格安で楽しめる」・・という感じなのだが、
アルセナール社は旧ソ連時代では国営工場であったもの
の、現代では、光学機器メーカーとして独立している。
つまり技術力が高いという次第である。
そこで作られたオリジナル設計の本レンズであるから、
そこそこ描写力が高く、さらに最短撮影距離は24cmと、
冒頭のDT35/1.8に迫る性能であり、フルサイズ対応
35mmレンズとしては、恐らく史上第3位(フレクトゴン、
SP35/1.8、本MIR-24)という高性能だ。
(注:フレクトゴンの設計をコピーしたのか?とも
思って調べたが、それはMIR-1であり、本MIR-24は
元になる設計の情報が見当たらない。よって本記事
においては、本レンズを独自設計だと仮定している)

ただまあ、アルセナールのMIRならば、どれも高性能
なのか?と言えば、そういう訳でも無いであろう。
沢山のMIR銘レンズを所有してはいないので、明言は
避けるが、個々のレンズ設計次第だと思われる。
もはや現代での入手性は低い本レンズではあるが、
たまたまめぐり合い、8000円程度まであれば絶対に
「買い」のレンズだ。迷う事は何も無い・・
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さて、5本目の35mmレンズ。

レンズ名:smc PENTAX-FA 31mm/f1.8 AL Limited
レンズ購入価格:90,000円(新品)
使用カメラ:PENTAX KP(APS-C機)
2001年発売の、変則焦点距離AF準広角レンズ。
これも若干失敗レンズだ(汗)かなりコスパが悪い。
本レンズ以前、FA43/1.9と、FA77/1.8を入手し、
それらの描写表現力に心酔して、本レンズも発売
直後に新品購入してしまったのだが、本レンズは
FA-Limitedの3本の中では、最も平凡な描写力で
あったので、たいそうがっかりした。

購入後10年程は、メゲていて、ほとんど持ち出す事も
無かったのだが(注:その間の、デジタル転換期に
本レンズが「APS-C機で標準画角相当となる」という
単純すぎる理由から、相場高騰を招いてしまい、それを
「ケチがついた」と思って、余計に持ち出さなかった)
2010年代、ミラーレス時代になって、本レンズを真面目
に使ってみると、「さほど悪いレンズでは無いな・・」
という事がわかり、以降の時代では結構愛用している。
最大の長所は、逆光耐性の高さであり、これは
直射日光を直接入れる等の、かなり無茶な使い方を
した際でも、ちょこんと点像のゴーストが出る程度
であり、一般的な逆光条件なら、まず問題は無い。
そして、そもそもLimited仕様のレンズである、作り
や高級感は問題なく、所有満足度も高い。

確かに、もう一声描写力を高めてもらわないと、
超名玉FA77/1.8と比べると、見劣りしてしまうが、
もう、そこは不問にしよう。
誰にでも薦める訳にはいかないが、上級マニア層
とか「PENTAX党」であれば、FA-Limited の3本を
コンプリートする事は、決して悪い選択肢では無い。
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次は本記事ラストの35mm級レンズだ。

レンズ名:SIGMA 40mm/f1.4 DG HSM | Art
レンズ購入価格:100,000円(新古)
使用カメラ:CANON EOS 6D (フルサイズ機)
丁度35mmにはならないが、本カテゴリーで
取り上げる事としよう。
2018年発売の高描写力AF単焦点大口径準標準レンズ。
大きく重く高価であり、典型的な「三重苦」レンズ
である。特に重さはいけない、1.2kgを超えて、
ハンドリング性能が極めて悪い。
もう、スタジオ撮影とか動画撮影等で、三脚使用必須、
という設計コンセプトなのかも知れないのだが、
ぎりぎり手持ち撮影ができる重量でもあるから、
この(超)高性能レンズを、屋内等の限られた状況
だけでしか使わない事は、極めて勿体無いと思える。
どこへでも持ち出し、何でも撮ってみるべきレンズだ。

直接太陽光を入射させる等、無理をした使い方をすると、
さすがにヘロヘロのフレアっぽい写りとなる。まあ
レンズ構成が多く(故に重い)レンズ間で、内面反射
が多数起こっているのだと思われる。
ただまあ、そういう無茶な使用法をしない限りは、
極めて良く写る超高性能(高描写力)レンズである。
しかし、かなり高価である事は、やはりコスパ点を
押し下げるレンズであるので、総合評価はさほど
上がらず、本レンズが優勝、という事態にはならない
と思われる。
そして、ここまで完璧にやらなくても良いから、
もう少しだけコストダウンし、もう少し軽くした、
Art40mm/F1.6等のレンズがあれば、私の用途には
ぴったりマッチするとは思うのだが・・
まあ要は、オーバースペックである、と、ただそれだけ
である。大きさ、重さ、価格を容認できるのであれば、
最大のオススメの35mm級レンズとなる。
なお、SIGMAには、Art Line初期の時代から、
Art35mm/F1.4という類似スペックのレンズが存在
している。それとの比較はわからない、A35/1.4
は未所有だからだ(というか、A35/1.4を探して
いたのだが、たまたま本レンズの新古品を見かけ
たので、こちらを先に購入した次第である)
ほとんど業務撮影専用レンズとも言え、一般層には
全く推奨できないレンズである。
しかしまあ、超高性能のレンズの描写力が、いったい
どれくらいのレベルにあるか? という事を知りたい
(研究したい)のであれば、本レンズの購入は
さほど悪く無いとは思う、なにせ私の所有する約400本
のレンズ中、個人評価点の「描写表現力」が5点満点の
レンズは、約20本しか存在しない。
つまり、全所有レンズ中、およそ5%しか存在しない
高描写力上位ランカーとして、本レンズはトップクラス
に属している訳である。なお、私は高価格な高性能
ズームレンズは購入しないルールとしているが、
単焦点は、かなり高額であっても買ってしまう。
基本的に単焦点レンズの描写力は、必ずズームレンズ
を上回るわけだから、私の所有範囲のレンズは、ほぼ
世の中に存在する高性能写真用交換レンズの範囲と
だいたい等価になる。その中でトップ(ハイ)ランカー
なのだから、事実上では、「描写表現力」5点満点の
レンズは、史上最強クラスに相当する訳だ。

まあでも、コスパの悪さがあるから、本レンズでも
優勝は出来ないであろう・・ 評価については後述する。
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さて、ここまでで「決勝戦」は終了だ。
個人用レンズ評価データベースを参照し、一応だが、この
6本のレンズに順位をつけておこう。評価基準は色々あるが
今回はあくまで総合(平均)評価点のみでのランキングだ。
(注:「特別加点」を行うべきか微妙な判断だが、
元々汎用性の高い35mmレンズなので、今回は「特別加点」
は無しとする)
1位:4.1点:SONY DT35/1.8
2位:4.0点:MIR-24
3位:3.9点:TAMRON SP35/1.8
4位:3.8点:Touit 32/1.8
5位:3.5点:SIGMA ART 40/1.4
6位:3.1点:PENTAX FA31/1.8
1位の、DT35/1.8は高性能なエントリーレンズなので
コスパを含めた総合点は良かった、ただし、かなり古い
時代のレンズ設計である事も確かだし、作りも安っぽい。
α(A)マウント機の販売が縮退している世情もあり、
ビギナー層が嫌がる「非フルサイズ対応レンズ」だから、
必ずしも推奨できるレンズとは言い難いかも知れない。
2位、MIR-24は、ロシアンレンズでマニア向けだ、
現代では入手性も悪く、完全非推奨である。
3位、SP35/1.8は、近年にSP35/1.4にリニューアルされて
いる、つまり小口径(F1.8)レンズは市場で受け入れられず
失敗作となってしまっている。SP35/1.4は未所有につき
比較は避けておこう。だが、新製品の発売で、旧製品の
相場が下がっているならば、抑えておいて損は無いレンズだ。
50mm選手権で、姉妹レンズSP45/1.8が優勝しているので、
今回の35mm編も、特別加点を行うと、このレンズが優勝に
なりそうだったので、同じ部類のレンズばかりが好評価に
ならないように、と、若干、忖度した状況もある。
4位、Touit32/1.8は、ツァイス銘のブランド力があるが、
あまり特徴は無いレンズだ、初級マニア層向けという感じか。
5位、Art40/1.4は、描写力的には何も問題なく、そこだけ
を見れば、本カテゴリーで優勝もできたと思うが、大きく
重く高価な「三重苦」レンズである事が最大の課題だ。
業務撮影専用レンズで、アマチュア層には非推奨である。
6位、FA31/1.8も、もはやオールドレンズと言えよう。
所有者が少なく、かつ高価なレンズなので、市場では
好評価も多いかも知れないが、個人的な感覚では、
そこまでの特筆すべき性能は持っていないレンズである。
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さて、ここまでで「最強35mmレンズ選手権」における
「決勝戦」の記事は終了だ。
次回の最強シリーズ記事は「100mm選手権」となる予定。