本シリーズ「μ4/3(マイクロフォーサーズ)用レンズ
・マニアックス」は、μ4/3機用のAF/MF/トイレンズ
等を順次焦点距離毎(広角、標準、中望遠、望遠)に
紹介する全4回の短期シリーズ記事だ。
今回の記事は「中望遠編」として、フルサイズ換算画角
が60~90mm前後となるレンズ、すなわちμ4/3用では、
実焦点距離が30~45mm程度のレンズを6本紹介する。
では、まず最初のμ4/3レンズ

レンズは、SIGMA 30mm/f2.8 EX DN
(新古品購入価格 7,000円)(以下、EX30/2.8)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2012年に、μ4/3機用およびSONY NEX用として
発売された小型軽量高描写力AF単焦点レンズ。
同年、2012年に発売されたSIGMA DP2 Merrill
(固定レンズ搭載型、高級デジタルコンパクト機)
の搭載30mmレンズを、単体発売した形となる。
(注:旧来のSIGMA DP2(2009年)の搭載レンズ
とは、仕様が異なっている)

本レンズは、EX DN型の型番であり、定価も
24,000円(+税)と安価である。
当時、「飛ぶ鳥を落とす勢い」で普及していた
ミラーレス機の市場に向け、安価に大量に販売
する市場戦略であっただろう。(注:SIGMAは
主にレンズメーカーであるから、本レンズを
「囲い込み戦略」の為の「エントリーレンズ」だと
見なす事は難しい。次に繋げる商品が少ないからだ)
だがSIGMAでは、その同年末又は翌年の2013年に、
レンズのラインナップを整備し、Art/Sports/
Contemporaryの3Lineとした。
その際、本レンズはSIGMAの誇る高性能コンパクト機
DPシリーズの搭載レンズであるから、低価格帯の
Contemporaryのラインに含ませてしまう事は難しい。
高性能レンズらしく、最高性能を誇るArt Lineに
属させる必要性があった訳だ。
その為、本レンズは外観変更を施し、30mm/F2.8
DN | Art にリニューアルされる事となった。
(注:定価は従前のEX DN型と同じ)
新型のArt型が発売されてしまったら、旧型の
EX DN型は売れなくなってしまう。そこで、旧型の
在庫処分品が、まさしく「大量に」中古流通市場に
「新古品」(中古扱いの新品。保証書などを抜く
ケースが多い) として放出される事となった。
前記事、Panasonic G25/1.7でも(後年だが)
同様な事があった、と説明した。こんな場合は、
消費者側では適正と思われる購入価格を想定し
その値段になったら買えば良い。
売り切れてしまう事は、あまり心配する必要は無い、
こういう売り方をするレンズは、そう簡単には、
大量に売れる事も無いからだ。
私が想定した購入価格は、これもG25/1.7と同じく
定価の約1/3の「税込み8,000円以内」である。
例によって、こういうケースでの新古流通の開始
販売価格は定価の50%~40%である事が通例だ。
当初、1万円程度での販売商品を全て見送った。
すると販売後数ヶ月で価格が下落、8,000円程度
までになったが、これまでの売れ行きが芳しく無い
様子で、”相場はまだ下がる”と見て待機した。
結局、税込み7,000円強の、下げ止まり価格
(恐らくは、仕入価格が定価の25%の6,000円と
見れば、これでぎりぎり)で、入手した次第だ。
安価に購入した事は良かったのであるが・・
描写力は、そこそこ高いけどスペックはかなり平凡だ。
最短撮影距離は30cmと30mmレンズとしては標準的。
(焦点距離10倍則どおり) そして開放F値も2.8と、
総合的に、地味なスペックである。
高級コンパクトカメラに搭載し、中遠距離撮影に
特化するのならば、このスペックでも問題無いが、
ミラーレス機で使用するには、もう少し被写界深度
のコントローラビリティが欲しい。まあ、つまり、
”寄れないし絞りも開けれない”という不満がある。
その後の本レンズの「用途開発」は、難航を極め
購入後何年たっても、なかなか本レンズの独自の
特徴を活用した有益な用途が1つも思いつかない。
まあ、SIGMA DP2(やDP2 Merrill)が新発売
された時には、その標準画角(換算45mm程度)
を、「気軽に持ち出して、スナップ撮影をする
のに良いかな?」と考えて、それらの購入を画策
していた事もあったのだが、本EX30/2.8 を
入手し、いざ、それが実現すると、前述のように
用途が少ない為、「(高価な)DP2を買わないで
良かった」と、捻くれた感想を持つようにも
なっていた。まあでも、実際にDP2系カメラを
買っていれば、それはそれで、所有満足感とか
元を取る義務感もあるし、スナップ用途にも適正
であろうから、それを頻繁に使う事になっては
いただろう。

本レンズは、あまりに安価に買ってしまった事が
むしろ仇(あだ)になってしまい、あまりこれを
ちゃんと使う気になれないのだ(汗)
後年では、本当の消耗用途、つまり雨天や過酷な
撮影環境において「いつ壊しても惜しく無い、
しかし、ちゃんとまともに写るレンズ」としての
利用を行うようにはなるが、これはあまり正当な
「用途」とも言えず、なんとも中途半端な状態だ。
弱点は、フードが付属していなかった事(欠品か?
それ故の安価だろうか? または最初から付属品
ではなかったか? 詳細不明)
それと、本レンズ(や、他のDN系レンズ)では、
電源OFF時に、レンズから「カタコト」と部品の
動く音がしてしまう。(注:これは正常との事)
よって「故障しているのか?」と心配になる事だ。
ただまあ、全般にコスパは良く、本EX30/2.8は、
ハイコスパレンズBEST40記事で、堂々の第10位に
ランクインしている。
他の、同シリーズのレンズ(19mm、60mm)を
含めた詳細については・・
特殊レンズ第5回「SIGMA DN レンズ」編記事を
参照されたし。
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さて、次のμ4/3レンズはマクロである。

レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/f3.5
Macro
(中古購入価格 22,000円)(以下、MZ30/3.5)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
2016年発売のμ4/3専用AF単焦点標準画角マクロレンズ。
レンズ単体で、等倍を越える1.25倍の撮影倍率を得る
事ができる。「フルサイズ換算では2.5倍となる」
というのが、メーカー側の売り文句ではあるが、
ミラーレス機では、デジタル拡大機能を備える場合も
多いので、見かけ上の撮影範囲からなる撮影倍率は
必要に応じて、さらに高める事は可能であるので
最大撮影倍率のスペックは、あまり重要では無い。
だが、「実用限界」というものもあって、あまりに
高倍率でのマクロ撮影は、用途も少ないし、場合に
よっては、撮影も非常に高難易度になってしまう。

本レンズの描写力は悪くは無い。オリンパスの
レンズは、銀塩時代から医療用途での評価が高く
(世界初の内視鏡を実用化したメーカーだからだ)
マクロレンズの性能にも定評があった。
(参考:特殊レンズ超マニアックス第2回
「新旧オリンパスマクロレンズ編」記事)
そうしたメーカーとしてのブランドイメージもあり
かつ、本MZ30/3.5は、比較的後発のマクロレンズ
でもあるから、描写性能的には、手を抜いた様子は
一切見受けられず、高い描写力を特徴としている。
そして価格や中古相場もあまり高額では無いので
描写性能面でのコスパに優れるレンズではあるが・・
課題は、無限回転式ピントリング仕様である為、
MF操作に全く向かず、実用的近接撮影が困難で
ある事が、重欠点に近い問題点となっている。
まあ、母艦であるOM-D E-M5Ⅱに備わる新鋭機能の、
「フォーカスブラケット」や「被写界深度合成」も
試しては見たが、それらの機能は操作系的には
簡単には呼び出せず、また求める結果(効能)も、
「MFで精密なピント合わせを行う」という用途とは
勿論、乖離して(かけ離れて)しまっている。
「ピーキングを使えば良いのでは?」とは言う
なかれ、オリンパス機のピーキング性能は、
その精度が、私が求めるレベルに達していない。
勿論、ピーキング強度を自在に変更できる事や、
背景の輝度をピーキング向けに調整できる機能が
ある事は知っているが・・ それらを行っても
差異は微々たるものだし、多種多様に変化する
実際の被写体毎の撮影シーンにおいて、頻繁に
それらの機能を設定変更する事は煩雑すぎる。
他社機では、設定に係わる機能をショートカット
できる事も普通であるが、オリンパス機の場合では、
各種ショートカットボタンにアサインできるのは、
ピーキングのON/OFFだけであり、ピーキングに
係わる設定は無理だ。
だから、一々その機能をメニューの奥深くから
呼び出して設定する事になり、その「操作系」は
当然ながら、全く効率的では無い。
で、そもそも課題は、MFでピントが合うか合わないか?
なのではなく「MF操作を効率的にする事が、出来るか
出来ないのか?」である。ここは、なかなかややこしい
話なので、詳細は冗長になるので割愛する。
結局、本MZ30/3.5で、本格的なマクロ撮影を行う
には無理がある。描写力やスペック的には高い性能を
持つ魅力的なレンズであるのに、惜しい限りだ。
このあたりのアンバランスは、近年のオリンパス
μ4/3機の製品ラインナップと、実際のユーザー層
が、マッチしていない事も原因だと考えられる。
近年のカメラ市場の縮退により、オリンパスとしても
高付加価値型商品(すなわち高性能で高価なカメラ
やレンズ)を作って売りたい訳だ。そういう製品で
あれば、販売数が減少しても利益率が高いので事業
構造を維持できる。
実際に、他のカメラメーカーでは、殆どがその
方向性に(2010年代後半より)転換済みである。
だが、オリンパス機では、一応E-M1/Ⅱ/Ⅲ/X
をハイエンド機として「プロユース市場」を推進
してはいるが、「小型軽量の望遠システムが構築
可能」という他には、それらは、あまり他社高級機
システムと比較しての実用・業務撮影上における
優位点は存在せず、結局、マニア層向けの製品群と
なってしまっている。
その証拠として、E-M1シリーズは、新機種が出ると
旧機種の新品販売価格が大きく下落し、同時に一斉に
旧機種が中古市場に溢れ、かつその中古相場も下落が
極めて速い。
で、業務用途機として普及している機材の場合では、
あまりこういう事は起こらない(旧機種でも実用的に
あまり問題無いからだ。だからオーナーは売らないし、
消費者も買うから、相場は下がらない)
加えて、それらの中古機体を見ても、業務用途で
ボロボロになるまで酷使した機体は流通しておらず、
殆ど全てが、あまり撮影した様子が無い、程度の良い
個体ばかりだ。
まあつまり、この状況は、最新機種を追い求める
一定数の熱心なファン層(オリンパス党)が、それら
高級機を順次ローテーション使用(買い換え)して
いるのだと思われる。
そして実際に世の中(観光地や撮影スポット、街中等)
で目にするオリンパス機は、その殆どが中級機以下で
あり、オーナーもビギナー層に見える。いや、むしろ
その分野(初級層向け)においては、オリンパス機の
シェアはそこそこ高く、健闘しているようにも見える。
すなわち、オリンパス製品(カメラ・レンズ)において
メーカーが期待する市場戦略(高付加価値型機を
プロユースとして使ってもらう)と、実際の市場状況
(入門層は初級機を買い、ファン層が高級機を買う)
とが乖離してしまっているように思える。
この状況だと、交換レンズの製品企画は必然的に、
ビギナーでも扱える非常に簡便な仕様のレンズ群と
マニア層やハイアマチュア層が志向する高級(高価)
レンズ群に、見事に、二分化されてしまう事になって
来るだろう。
しかし、オリンパスでは、元々、通称「松竹梅」と
呼ばれる3つのレンズ製品カテゴリー、すなわち、
M.ZUIKO PRO/M.ZUIKO PREMIUM/M.ZUIKO で
ユーザーニーズに対応する枠組みが出来上がっていた。
だから、この「松竹梅」に沿って交換レンズ群の
仕様・性能や価格帯を決めれば良い話なのだが・・
前述の、実際のユーザー層の状況(二分化)と
3カテゴリーはマッチしておらず、例えば中間層の
M.ZUIKO PREMIUMでは、個々のレンズ毎に企画
(つまりターゲットとするユーザーは誰か?)の
コンセプトが大きく異なる様相が見られる。

現状、未購入なのだが本MZ30/3.5の姉妹レンズの
MZ60/2.8 Macroであれば、特殊な距離指標を持ち、
実用的なマクロ(近接)撮影に耐えられる仕様に
なっているように見て取れる。(いずれ、これを
入手して検証してみようと思う)
まあつまり、本MZ30/3.5は、ビギナー層向けの
マクロレンズとして企画・設計されてしまって
いる事が明白であり、「MFでの撮影などは生涯で
一度も行った事が無い」ようなユーザー層向けだ。
本格的な近接撮影用途には向かない事は、結果的
に明らかであり、中上級層にとっては実用的に
かなりストレスとなるレンズである。
なので、近年では本レンズは近接撮影用途ではなく、
その高い描写力を活かして、標準レンズ代わりに
(換算60mm相当)使うケースも多くなっている。
(追記:本記事執筆直後の2020年6月に、オリンパス
はカメラ事業からの撤退(実際には分社化と移譲)を
表明、やはり厳しい市場状況であった、という訳だ)
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では、3本目のシステム。

レンズは、七工匠 35mm/f1.2
(新品購入価格 20,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
2018年頃に発売された各社ミラーレス機マウント用
APS-C機以下対応MF標準(相当画角)レンズ。
2020年頃には銀色外装版が追加発売されている。

正直言えば、本レンズの購入は失敗であった。
これは、元はと言えば、銀塩時代のF1.2級MF標準
レンズの縮小コピー版ジェネリックレンズであろう。
ただ、元になった設計が、1960年代~1970年代
に各社が一眼レフ用の標準レンズの「大口径化に
凌ぎを削った」時代のものであり、その時代では
技術的に大口径レンズを作れるまでのレベルには
達していなかった。
(例:非球面レンズは、まだ実用的な段階では無い。
最初に(標準レンズに)それが使われたのは、
恐らくはCANON FD 55mm/F1.2 AL(1971年)で、
次が、NIKON Ai Noct-NIKKOR 58mm/F1.2
だと思われる、こちらは1977年の発売だ。
いずれも職人芸的製造工程で非常に高価であった)
つまり、その時代での各社は、開放F値を他社より
0.1でも下げる為の競争をしていて、「描写力は
二の次」という状況であったのだろう。
(参考:最強50mm選手権第7回「MF50mm/F1.2編」
記事。そこでは当時の大口径MF標準レンズを5本
紹介している→が、どれも低性能だ)
で、その未成熟な時代のF1.2級レンズの構成を
参照して、それを2/3にスケールダウンして、
七工匠35/1.2が作られた訳だから、これはまあ、
描写性能的には、正直言って使い物にならない。
その理由は「50年前の古い設計だから」とかでは
無い。たとえ50年前であっても、現代でも通用する
描写力を持つレンズは稀に存在している。
これは、「開発競争をしていた時代のレンズ」で
ある事が問題なのであって、その事は、時代の古さ
とは、あまり関連していない。
では何故、こうしたF1.2級のレンズを作るのか?
と言えば、まず、初級中級層が「開放F値が少し
でも明るいレンズを欲しがる」そして「そういう
商品は高価でも売れる」からである。
よって、前述の1970年代のMF50mm/F1.2級標準
も中古相場が高価で、現代に至っても3万円や
5万円もしてしまう事すらあるのだ。
実際のところは、僅か2000円程度で買える
50mm/F1.8級MF小口径標準に対して、描写力的
には手も足も出ない性能であるにも係わらずだ。
(参照:最強50mm選手権シリーズの各記事)
また、各社が大口径レンズの開発競争に走って
しまった結果、もうユーザー利便性等はあまり関係
が無くなり、「他社がより大口径のレンズを出せば、
自社も、それと同等かそれ以上の大口径を開発
しないと、自社のブランドイメージが損なわれる」
という方向性に走ってしまったのであろう・・
ある意味、性能の低いレンズを高価に売った事で
ユーザーの事をないがしろにした、とも言えるし、
ちょっと残念な時代であった。
七工匠が、本レンズを企画した際に、これらの
歴史的事情や、あるいはF1.2級標準レンズの
実際の描写性能をどこまで理解していたのか?は
良くわからない。わかった上で本レンズを作った
のか? あるいは全く知らずに、F1.2級レンズが
現代でも市場訴求力や付加価値があると見たのか?

総括だが、「ジェネリックレンズ」といっても、
その全てが、良く写ってコスパが良い、という訳
でも無く、「設計の元になったレンズの特徴が、
良くも悪くも出てきてしまう」という事だ。
本、七工匠35/1.2は、基本的には非推奨である。
ただし、その50年前の大口径開発競争のテイストが
少し味わえる(当時の様相が再現、理解できる)
レンズでもある。歴史的な価値を鑑みて研究用途
としての目的で本レンズを買うのは、無きにしも
あらずだと思う。
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では、4本目のシステム。

レンズは、Docooler 35mm/f1.6
(中古購入価格 9,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
発売年不明、正確なメーカー名も不明。
中国製と思われる単焦点MFレンズ。

通販での限定数販売と思われ、上記中古購入価格は
販売期間中の価格と同等か、やや高価な位だ。
近年では、海外製のレンズの一部で、中古相場の
初出価格が、そのような状態になる事が良くある。
まあつまり「もう入手不能であるから、多少高目
の相場でも買う人は居るだろう」という販売側の
思惑だ。その考え方は、個人的には好まないのだが
いつも言うように「コスパ感覚」があるので、
現代の市場においては、中国製等の海外製MF単焦点
レンズの価値感覚は、「およそ1万円」と個人的には
解釈している。だから「9,000円程度ならば買い」
の判断になった訳だ。
でも、本レンズは正解だ。出自も何もわからないが
だからと言って、性能も低いレンズでは無かった。
意外なまでに良く写り、これならば購入価格に対して
コスパが良い、と見なす事が出来る。

弱点は、短期間だけで販売されていたレンズだと
思われ、入手性が極めて悪い事だ。中古品を偶然
見つけたとしても、どのあたりの相場感覚となる
かは不明だ(売る方も買う方も、値段がわからない)
私の感覚値を述べておけば、本Docooler 35/1.6の
性能(描写力、品質等の全般)からなる絶対的な
価値は1万円以下程度、というところだと思う。
その値段以下で見かけたら、購入の選択も悪く無い。
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さて、5本目は超大口径レンズだ。

レンズは、Voigtlander NOKTON 42.5mm/f0.95
(新品購入価格 90,000円)(以下、NOKTON42.5)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G5 (μ4/3機)
2013年発売のμ4/3機専用超大口径MF中望遠画角レンズ。
中途半端な焦点距離ではあるが、μ4/3で2倍して85mm
になる事から、意味の無い焦点距離では無い。

本レンズの発売当時では、F0.95のレンズとしては
往年のCANON 50mm/F0.95(レンジ機用)の特殊
レンズを除き、近代レンズの中では最も長い焦点距離
であったかも知れず、レンズの焦点距離が長ければ
被写界深度も浅くなる道理で、本レンズの企画意図は
そのあたりにあったのかも知れない。
しかし、その後、他社でも、中一光学、ライカ、
SLR Magic、NIKON等より、50~58mmの焦点距離
を持つF0.95レンズが発売されると、本NOKTON
での42.5mmは、最長の焦点距離とはもう言え無い。
そこで、コシナは2020年に本レンズより7年ぶりに
NOKTON F0.95の新製品 60mm/F0.95を発売し、
世界最長焦点距離のF0.95レンズの座を奪回し、
話題性を得ようとしたのであろう。
(追記:当該レンズは、本記事執筆後に入手済み
だが、本シリーズ記事には間に合っていなかった)
さて、本NOKTON42.5/0.95だが、過去記事で多数
紹介済みなので、詳細は、ばっさりと割愛する。
最大の注意点は「使いこなしが極めて困難」な
レンズである事で、レンズ・マニアックス第11回、
第12回の「使いこなしが難しいレンズ」特集
記事において、ワースト2位となったのが、
本レンズNOKTON42.5/0.95である。

2015年頃であったか? 知人の初級マニア氏が
本レンズに興味を持ち、私のシステムで試写も
行った上で「このレンズがどうしても欲しい」と
言い出した。私は
「やめておけ、とは言わないよ。
面白いレンズだけど、使いこなしがとても難しい。
多分、すぐには思いどおりには撮れないだろうから、
買ってから2~3年はメゲずに我慢して使いこなす
練習をする覚悟が必要だよ・・」
と伝えた。
結局、知人は「それでも本レンズを買うと」言って、
私は大阪のカメラ専門店巡りに同行し、何軒目かで、
最も安かった店舗で新品購入した次第だ。
その際、ND8(減光3段)のフィルターも同時に
探して、それを買うようにアドバイスもした。
さもないと、開放F0.95は日中撮影では、シャッター
速度オーバーになって使えない。絞って使うならば
本レンズの超大口径の意味が無いからだ。
知人には「これはサングラスだ。このレンズを
昼間使う時には、これを掛ける。室内や夜では、
サングラスを外して使うようにすれば良いよ」
と伝え、NDフィルターを使う概念をわかりやすく
説明しておいた。
まあ、ここまで述べてきたように、本レンズ
NOKTON42.5/0.95を他者に推奨する際の感覚は
まさにこれと同じである。初級中級層や初級マニア
層に対しては「買ってから2~3年は修行が必要。
最初は全くちゃんと撮れないと思うが、メゲずに
練習を続けるのが必須」というアドバイスだ。
そして、そのユーザーが、どれくらいの頻度で、
どれくらいの真剣度で写真を撮っているか?にも
依存するであろう。月に何度か程度の外出の際に
カメラを持っていき、100枚やそこらを撮る程度
のビギナー層では、本レンズは一生かかっても
使いこなす事は出来ない。少なくとも数万枚を
本レンズで撮る(撮ろうとする)ようなユーザー
でないと、全く推奨できないレンズである。
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では、次は今回ラストのμ4/3システム

レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL 45mm/f1.8
(中古購入価格 16,000円)(以下、MZ45/1.8)
カメラは、OLYMPUS PEN-F (μ4/3機)
2011年に発売された中望遠画角AF単焦点レンズ。
OLYMPUSのWEBでは「ママのためのファミリーポート
レートレンズ」として紹介されている。

これも前述のように、オリンパスにおける企画と
実際の特性が、あまりマッチしていないレンズである。
描写力は極めて高い、これはM.ZUIKO PREMIUMの
ラインナップにされているから、あまり手を抜いた
設計にはしていないのだと思われる。
しかし価格が安価だ、こういう状況は、すなわち
「エントリーレンズ」である。
前述のように、2010年代におけるオリンパス機の
ユーザー層は、エントリー(入門)および初級層と、
マニア層(オリンパス党)に、大きく二分されて
いた。そこで、エントリー層に向けて高性能な
交換レンズを「お試し価格」で安価に売れば、
それを買ったユーザーは「なんと良く写るレンズだ、
オリンパスは凄い! これであれば、もっと高価な
レンズやカメラを買えば、どれだけ凄い写りに
なるのだろう?」と思ってくれるので、これでもう
「オリンパス党」に囲い込む戦略が完遂できる。
だが、これも前述のMZ30/3.5と同じ弱点を持って
いて、無限回転式・距離指標無しのピントリング
では、MF技法がいっさい使えず、大いに不満だ。
知人の上級マニア氏(MF技法がちゃんと使える)が、
本レンズを所有していて、同様の不満を持っていた
ので、私は、
「まあそうだよね。でも、考え方を変えれば、
本レンズを買わずとしても、銀塩MF50mm/F1.8
をμ4/3機で使えば、はるかに使い易いよ」
と答えたのだが・・
では、銀塩MF標準(50mm/F1.8級)レンズと、
銀塩AF標準(50mm/F1.8級)および本MZ45/1.8は、
スペック的にどの程度異なるのであろうか?
*焦点距離と開放F値は全て同等。
*レンズ構成
MF50/1.8:5群6枚、変形ダブルガウス型が一般的
AF50/1.8:5群6枚、変形ダブルガウス型が一般的
MZ45/1.8:8群9枚、低分散(E-HR)レンズ2枚使用
*最短撮影距離
MF50/1.8:50cm~60cmが一般的
AF50/1.8:45cmが一般的、稀にそれより長い
MZ45/1.8:50cm
*MF操作性
MF50/1.8:良好
AF50/1.8:悪い、たいていトルク感が不足する
MZ45/1.8:劣悪な為、ほぼAF使用専用
・・という感じだ。
簡単に言ってしまえば、銀塩用MF(AF)小口径
標準はMF性能に優れ、本MZ45/1.8は、AF専用での
使用となるが描写力に優れる、という差異になる。
ただし、銀塩時代の小口径標準レンズは、
NIKON Ai(AF)50/1.8、PENTAX SMC-T55/1.8、
RICOH XR50/2、MINOLTA MC50/1.7、
KONICA AR40/1.8、CONTAX P50/1.7、
CANON EF50/1.8(Ⅱ)等は、いずれも描写力に
優れ、それぞれ、初級マニア層等において
「安くて写りが良い、神レンズだ」と
「神格化」されたレンズも極めて多い。
(というか、CONTAX P50/1.7(未所有)を除き、
他の銀塩用小口径標準(全て所有)は、いずれも
5群6枚の酷似したレンズ構成であり、いずれも
同様に良く写る。つまり、全メーカーの銀塩用
小口径標準は、描写力的に及第点であり、かつ、
どのレンズを買っても同じくらいの描写性能だ。
→最強50mm選手権シリーズ第2回、第4回記事
を参照の事)

まあ、という事で、本レンズMZ45/1.8の総括
であるが、AFでの人物撮影用および汎用中望遠
レンズとして、高い描写力を誇り、かつ比較的
安価である事がメリットである。
これは入門層、および初級層には向く特性だ。
しかし中上級層に向けては、AF精度が不足した
場合での精密ピント合わせ用途には向かずに、
被写体条件の制限が厳しく、せっかくの高描写力
レンズの汎用性が低く、ストレスになるであろう。
マニア層に向けては、銀塩時代のMF小口径標準を
マウントアダプターを介して装着した方が、
実用性が高いし、描写力も悪く無いので、総合的に
「エンジョイ度」が高くなると思う。
おまけに、それらの中古相場は恐ろしく安価
(1000円~5000円程度)であるから、「コスパ」
の評価が極めて高くなる。
結局、ユーザー側でのレンズの利用目的および
スキル(技能全般)に応じて、本レンズMZ45/1.8
が推奨できるか否かが決まる次第となる。
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今回の「μ4/3用レンズ・マニアックス中望遠編」は、
このあたり迄で、次回最終回記事は、「望遠編」
となる予定だ。