今回は第35回記事にちなみに、実焦点距離が35mm
(前後)のAFレンズを7本取り上げる。
内、1本が未紹介レンズで、他の6本は過去記事で
紹介済みだが、描写力等の比較の参考とする。
なお、今回紹介の35mm級レンズは、フルサイズ対応、
APS-C機専用、ミラーレス機用等の区別は問わないが、
35mm級のマクロレンズは除外する。
ではまず、最初の35mmレンズ

レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN35mm/f2N
(中古購入価格 8,000円)(以下、YN35/2)
カメラは、NIKON D5300(APS-C機)
2018年頃(?)に発売された、中国製のフルサイズ対応
AF準広角レンズ。
このレンズは、CANONが1990年頃~2012年頃に販売
していたEF35mm/f2 の完全(デッド)コピー品である。
(EF35/2については、次の項目のレンズとして紹介する)
同様な出自のレンズで、YN50/1.8(本シリーズ第20回)
を既に紹介しているが、本YN35/2はオリジナルのCANON
EFマウント版では無く、NIKON Fマウント版だ。

で、銀塩時代のMFレンズの場合では、マウントの形状を
変えれば、他社マウント品への変換が容易であったのだが、
(例:TAMRONの銀塩MF時代の「アダプトール2」型交換式
マウント)AF(/デジタル)レンズでは、そう簡単では無い。
カメラ側との情報伝達プロトコルとか、様々なAF駆動方式
や、付加機能等にも対応しなければならないからである。
本レンズの場合は、マウント形状を差し替えたのみならず、
NIKONのレンズプロトコルやAF方式に対応している為、
本YN35/2(N)はNIKON機でAFが効き、レンズ情報手動入力
の必要も無く、また、元々CANON EF用レンズであった故に、
AFモーターを内蔵しているので、今回使用のD5300でも、
AFがちゃんと駆動する(参考:NIKON D5000シリーズおよび
D3000シリーズにおいてはレンズ内モーター非搭載の場合は、
MFでしか撮影が出来ない。また、NIKON通信プロトコルに対応
していない各社MFレンズや、マウントアダプター使用時には、
「レンズ未装着エラー」となって、撮影が出来ない。
・・これは「仕様的差別化」であるが、まあやむを得ない。
これらが問題となる場合は、NIKON上位機種を使うしか無い)
でもまあ、初級機D5300でも動作する格安レンズとして、
本YN35/2(N)は、なかなかコスパが良く感じる。
ニコンFマウントである他は、CANON EF35/2と全く同じ
性能である。レンズ構成はもとより、最短撮影距離も同じだ。
(注:最短25cmと、かなり優秀だ。このスペックは、
全35mmレンズ中、(マクロを覗き、通常レンズの中では)
TOP 5の位置に相当する。)
コーティング性能のオリジナルとの差は良くわからないが、
逆光耐性等において特に問題となる様子は無い。
弱点は特に見当たらないが、MF時のピントリングの回転
方向が、距離指標と逆になっている事が少々気になる。
(CANON EFレンズをNIKON用に転用したが故か・・?)

結局の所、YONGNUO YN50/1.8とCANON EF50/1.8Ⅱの
関係のように、本YN35/2(N)と、CANON EF35/2の関係も
「中身は殆ど同一のレンズ」という事となる。
(追記:その後の、さらなる検証で、SIGMA MC-11や
CANON EF-EOS M等の電子マウントアダプターを使用
した際、これらYONGNUO製レンズと、CANON純正レンズ
では、プロトコル上での差異、つまり動作の差異が確認
された。まあつまり電子部品や、そのファームウェアは
純正オリジナル品とは若干の差異がある、という話だ。
→しかし、通常の利用法では、その差異は表面化しない)
「何故、こんな”完全コピーレンズ”が作れるのか?」
という件だが、その理由は、あまり表立って言えないような
何らかの裏事情が存在するのだろうと推察している。
ここでその詳細を書くのはやめておくが、一般に公開されて
いる情報として・・
1)25年間も続いたEF50/1.8Ⅱが生産中止となり、
EF50/1.8STMが新発売された(2015年)
2)EF50/1.8Ⅱの偽物が市場に出回った事件(2016年頃)
3)YN50/1.8の発売の時期(2014年頃~)
・・といった情報から、だいたい推理は出来ると思う。
まあ、「いわく付き」のレンズではあるが、そのあたりの
裏事情は、基本的には消費者側には関係の無い話である。
「お金を出して、どのレンズを買おうが、本人の自由だ」
という訳であるから、YONGNUO(ヨンヌオ)を買っては
ならない理由は無い。

本レンズは、ベースとなったEF35/2譲りの高性能が
安価で得られる事が魅力のレンズである。
一般的撮影においては性能不足を感じる事は無いであろう
が、若干のボケ質破綻が発生するケースがある。
また、コストが安価なので、厳しい撮影環境等での消耗用
レンズとして使い潰ししてしまう事にも向いている。
ちなみに、今回使用のD5300との組み合わせにおいては、
計3万円そこそこの中古価格でシステムが構築できてしまい、
おまけに、小型軽量でありながらも、かなり本格的なデジタル
での「標準画角」システムであるから、汎用性はとても高い。
例えば、このまま旅行等に持っていっても十分であり、
おまけにシステム全体が安価であるから、仮に旅先で注意力が
散漫となって、何らかの過失により機材にダメージ等を与えて
しまっても、さして気に病む必要も無いであろう。
そうした目的には最適のシステムではなかろうか・・?
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では引き続き、関連するレンズを紹介する。

レンズは、CANON EF35mm/f2 (以下、EF35/2)
(中古購入価格 17万ウオン=約17,000円)
カメラは、CANON EOS 8000D(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第68回記事等で紹介の、
1990年発売のフルサイズ対応AF準広角レンズ。
前項のYONGNUO YN35/2(N)のコピー元となったレンズ
である。

本EF35/2は既に生産完了していて、後継機の現行レンズは、
2013年発売の、EF 35mm/f2 IS USM(未所有)であり、
そちらは手ブレ補正及び、超音波モーター内蔵の現代的な
スペックとなっており、光学系も変化している。
(最短撮影距離もさらに1cm縮まり、近代35mmレンズ
中ではTOP3のレベルとなった)
本レンズの購入は、2000年頃の韓国/ソウルの中古店での
入手であり、その当時、本レンズの国内相場は25,000円
以上していたと思うので、まあ安価に買えたと思う。
(注:韓国へは旅行と言うより、上級マニア数名での
「買出しツアー」であった。当然、各カメラやレンズの
中古相場を熟知しているメンバーばかりであるので、
国内市場よりも高価に買う等という事態は有り得ない)

本レンズは旧型とは言え、完成度は低くなく、特に
実用上の不満は感じられない。超音波モーター(USM)搭載
仕様では無いので、AFの精度や速度に不安を感じる向きも
あるかも知れないが、小型レンズであるし、さほどの精密
なピント精度が必要なレンズでも無いので、そのあたりは
さほど気にする必要は無いであろう。
解像感はあるが、大口径を生かした、被写界深度を浅く
した撮影では、ボケ質破綻が発生するケースもある。
それから、後継型はレンズ構成が変化している。
当然ながら本レンズよりも、より高描写力を得る為の
改良であろう。まあ、このあたりは、CANONの良い所で
あり、ちゃんと後継機種では、それなりの性能改善を
行っている訳だ。他社の一部では、何十年もの間、
レンズ光学系を全く変化させず(注:新規光学系開発は
とても費用がかかる理由もあるだろう)、そのままの
光学系に「手ブレ補正が入りました、超音波モーターが
入りました」と言って、価格が大幅にアップされた例も
多々ある状態だ。
まあ、その事を逆に好意的に捉えれば、新機種において
「光学系を改善させる必要が無いほど、旧来からの設計の
完成度が高かった」と見なす事もできるのだが・・ 全てが
そうしたケースばかりでもなく、中には単なる「値上げの
為の理由」として手ブレ補正等を追加しただけのレンズも
存在している。どのレンズがそうで、どれがそうで無いかは
そのレンズだけを見ていてもわからず、旧機種や後継機、
あるいはその時代の状況等を綿密に分析していけば、大体は
わかってくるのだが、それは上級マニア層位しか出来ない
分析であろうから、結局、初級中級層では、コスパの悪い
モノを掴まされてしまう事もあるかも知れない。
もう少し具体的に言えば、手ブレ補正や超音波モーターが
入っていなくても撮影用途(目的)的に問題無い場合も
多々ある。そんな場合は、安価に相場が低下した旧型の
中古でも、光学系が同じであれば、描写力は同一であり、
圧倒的にコスパが良くなる訳である。

余談が長くなった。本EF35/2は、比較的コスパが良い
レンズではある。ただし、本EF35/2も冒頭のYN35/2も、
いずれも約30年も前のセミ・オールドレンズではある。
だから、細かい問題点は存在しているので、それをちゃんと
回避して使わなければならない、そして撮影者自身に安定した
撮影技法が身についていなければ、写真の描写力もまた
バラつきが起こってしまう。EF35/2とYN35/2とは元々同じ
レンズであるから、条件を整えて使うならば両者全く同等の
描写力となる。それが出来ない初級中級層等においては、
「やはり国産のCANONの方が良く写る、中華レンズはダメだ」
等と言っている評価があるならば、それは撮影者自身が
安定した撮影技能を持っていない、という事と等価であるから、
そんな事を言っている時点で、自身のスキル不足を公言して
いる、という状態にもなり得る話だ。
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さて、次からは、各種35mmレンズを、比較用として
順次紹介する。

レンズは、NIKON AF-S DX NIKKOR 35mm/f1.8G
(中古購入価格 18,000円)(以下、DX35/1.8)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)
2009年発売のDXフォーマット(APS-C型)専用AF準広角
(標準画角)レンズ。
少々割高に買ってしまったレンズであるが、2016年頃の
購入時点、及び、その後の中古相場は、もっと高価であった。
だが、2018年頃より急速に中古相場が下落、現在では
1万円台前半で入手が可能であろう。

相場下落の要因だが、2010年代後半よりNIKONの上位機種が
殆どフルサイズ機となってしまった事がある。勿論、それ以前
からもNIKONにはフルサイズ一眼レフがあったが、高価なので
あまり一般的には普及していなかった。
で、2010年代からのカメラ市場の縮退を受けて、ビギナー層が
NIKON上位機種の主力ユーザーになってしまった。(すなわち
中上級者は、市場縮退の影響での高付加価値化戦略により、
高価になりすぎた新鋭機には、あまり興味が持てない為だ)
その結果、ビギナー層では単純に「フルサイズ機が優れている
今時、APS-C機を使っていたら格好悪い」という偏った概念で
機材選びを行うようになり、本DX35/1.8のようなAPS-C機
専用レンズが急速に不人気になった訳だ。
なので、本レンズの新品価格は大幅に下落、それに連動して
中古相場も安価になった次第だ。
NIKONフルサイズ一眼レフのオーナーのビギナー層の中には、
「DXと書いてあるレンズはフルサイズ機では使えない」
という大きな誤解をしている人もかなり多く、それもまた、
本レンズの相場下落の要因となったのであろう。
ちなみに、NIKONフルサイズ一眼レフに本DX35/1.8を装着
すると、自動的にクロップされるが、何も問題なく使用できる。
ただ、こうした動作をする事がわかっているユーザーであっても、
1)ファインダーの視野が狭くなって気持ち悪い
2)記録画素数が小さくなるので画質が低下する(と思い込む)
の、2つの理由から、DX用レンズは嫌われる場合も多いと聞く。
ただまあ、画素数の件は、用途によりけりで、どうても良い話
ではあるし、逆にクロップする事で、テレコン代わりとして
撮影倍率を高めたり、測距点選択を有効に使えたり、露出輝度
分布が変化してより精度が高まるなど、メリットも多いのだが
残念ながらビギナー層(まれに中級層も)では、そうした
用法は理解できず、それよりもむしろ、「カメラやレンズに
弱点がある事を非常に嫌う」訳だ。
何故ならば、ビギナー層は、常に自身の撮影スキルに不安を
持っているからであり、だから、高性能のカメラやレンズを
購入して、その不安を払拭しようとするのだろう。
クロップ時の課題など、どうても良い話であり、むしろ利点を
良く認識して、撮影シーンでの必要度に応じて、その機能を
活用したり、あるいはもう最初から母艦を安価なAPS-C機として
持ち出せば、ビギナー層が嫌がる画素数低下は起こらない。
(この場合、「オフサイド状態」にもならず、好ましい)
また、一部のAPS-C機では、DXレンズをさらにクロップして
μ4/3機相当の2倍の画角(換算焦点距離)で用いる事も
可能である。その場合、本レンズは「準標準マクロ」と
しての用途も出てくる。(最短撮影距離30cmでの撮影で、
フルサイズ換算撮影倍率は約1/4倍となる。勿論専用マクロ
レンズよりも最大撮影倍率はずっと低いが、開放F1.8は、
F2.8級マクロの2倍以上も明るいので、それを活かせば良い。
さらに言えば、露光(露出)倍数の掛り方も、専用マクロ
よりも緩和され、より速いシャッター速度で撮影が可能だ)
本レンズ自体は、NIKON初の「エントリーレンズ」であり、
コスパが極めて高い他、歴史的価値も高いレンズだ。
ビギナー層がフルサイズ機を買った事で処分してしまう類の
レンズには成り得ない筈なのだが・・
ちなみに、冒頭のYONGNUO YN35/2(N)を用いるよりも、
AF性能(速度、精度)が優れていて、フルサイズ機でも
APS-C機でも気持ちよく使える。描写力もエントリーレンズ
であるが故にあまり手を抜いておらず(すなわち「お試し版」
レンズとしての責務がある。これを買ったビギナー層が色々と
不満を持ってしまったら、二度とNIKONの高級(高額)レンズ
は買ってくれなくなってしまう)・・なので、まあ、総合的
には何も問題の無いレンズだ。
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さて、次の比較用35mmレンズ。

レンズは、TAMRON SP 35mm/f1.8 Di VC USD (F012)
(中古購入価格 41,000円)(以下、SP35/1.8)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
レンズ・マニアックス第13回記事等で紹介の
2016年発売のフルサイズ対応AF準広角レンズ。
同じようなスペックのレンズばかりが続くが、その比較が
本記事における主眼だ。

本レンズは、極めて描写力の高い新鋭高付加価値型レンズ
である。
しかし、手ブレ補正(VC)や、超音波モーター(USD)の
搭載は、個人的には(このクラスの準広角レンズでは)
どうでも良い話であり、それらを入れた事で高価になって
いるのであれば(発売時定価は、90,000円+税と、やや
高価すぎると思う)・・
「そんな付加機能はいらないから、その分安くしてくれ」
というニーズすら出てくるし、そもそも私の場合、その手の
高付加価値型レンズは「コスパが悪いから買わない」という
選択になるケースが大半であるのだが、本SP35/1.8の場合
は特例であり、それは、本レンズの開放F1.8というスペック
を見て(特にライバルのSIGMAがART35/1.4をラインナップ
していた為に、比較するとF1.8は見劣りしてしまう)・・
レンズ市場縮退状態での主要購買層のビギナー層においては、
「開放F1.8のレンズは、F1.4に比べて、低性能の安物だ」
という酷い誤解を持っているので、残念ながら本SP35/1.8は
市場では不人気レンズとなってしまった。
つい先年までは、レンズ購買層(ユーザー層)は、ちゃんと
レンズの描写力や特徴的性能を評価して、そのレンズを
購入するかどうかを決めていたのだが、レンズ購買層が皆
ビギナーばかりになってしまった為、カタログスペックだけを
見て「F1.8の方が劣る」といった事を言い出してしまう。
これはTAMRONとしても企画上の大誤算であろう。なにせ、
そんなに急速に、市場での購買層のレベル(知識、経験値、
評価スキル等)が大きく低下しているとは、さすがに思いも
よらなかっただろうからだ。これまでの時代であれば、優れた
レンズを発売すれば、必ずユーザー層は高く評価してくれて
いた訳だ。(すなわち、中上級層やマニア層が、新鋭機材を
殆ど買わなくなり、新規購買層が、ビギナー層ばかりに
なってしまっているからだ)
TAMRONでは、あわてて2019年に後継レンズである
SP35/1.4 Di USDを発売するのだが、手ブレ補正機能は
非搭載となり、最短撮影距離は伸び、重量級レンズとなり、
価格も、さらに跳ね上がってしまった。(未所有)
さて、本SP35/1.8の最大の特徴は、最短撮影距離20cm
というスペックである。これはマクロを除く35mmレンズ
の中ではトップクラスの性能だ。
この長所および、本レンズの歴史的価値は、とても大きい。
(参考:本レンズをNIKON APS-C機で1.3倍クロップ
モードで使った場合、仕様上からは0.8倍マクロとなる。
なお、かなり古い旧ソ連製レンズ、および近代の中国製
レンズで最短18cmの35mmレンズが存在するが、それらは
あまり一般的に入手が容易なレンズと言う訳では無い。
また、同じTAMRONから、ミラーレス機用の35mm/F2.8
(Model F053)が、最短15cmという驚異的な性能で
2019年末に発売されたが、これは準マクロであり、
かつ、所有している姉妹レンズ(F050)での近接撮影時
のAF/MF性能の低さを鑑みて、F053型は購入していない。
「使えない性能」では残念ながら好評価は出来ない訳だ)
本SP35/1.8の描写力は、何一つ不満は無い。
おまけに不人気で中古相場の下落がとても早かったので、
発売1年ちょっとの時点で、定価の半額以下という価格で
中古購入する事が出来た。
まあ、それでも他の廉価版の35mmレンズの2~3倍も高価
な取得価格ではあるが、最短20cmの超絶性能と高い描写力
を判断すれば、多少のコスト高は容認できるであろう。
(コストが高価であっても、パフォーマンスが高ければ
コスパ的には及第点だ。本当にダメなレンズ、というのは
値段だけ高くて、性能はイマイチ、といった類のレンズだ。
まあ、ブランドレンズの中には、そういうものがいくらでも
存在する。高価なものが常に良いレンズでは無い訳だ)
本記事の主眼である、YONGNUO YN35mm/f2Nとの比較に
おいては、似たようなスペックであるのに購入価格が5倍も
高いという点では、初級層の容認できるものでは無いかも
知れない、確かに5倍までの性能差は無いと言えるので、
難しい判断にはなるとは思うが「35mmレンズ最強クラス
の近接性能と高い描写力」を評価するのであれば、多少の
値段の高さは問題にはならないと思う。
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では、次の比較用35mmレンズ。

レンズは、SONY DT 35mm/f1.8 (SAL35F18)
(中古購入価格 12,000円)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
ハイコスパ名玉編第2位、ミラーレス・マニアックス
名玉編第14位にランクインした、2010年発売のAPS-C機
専用「エントリーレンズ」の名玉である。
何度も紹介している名玉なので、本記事においては、
ごく簡単な解説とし、詳細は大幅に割愛する。

まず長所としては、最短撮影距離が23cmと極めて短い事
であり、これは一眼レフ用の実焦点距離が35mmのレンズ
中ではマクロレンズを除き第2位の性能だ。
(1位は、前項目のSP35/1.8。→いくつか例外はある。
ただし、本レンズはAPS-C機専用であるので、公平な比較
とは言えないかも知れない)
短所としては、コストダウン要素が厳しくて、非常に
安っぽい作りとなっている事だ。ただ、そのあたりは
個人的には重欠点とは思えず、まあ、故に、様々な名玉編
系記事で、好評価となっている次第である。
現代では、私の購入時よりさらに安価な中古相場となって
おり、1万円以下で楽々買えるであろう。
SONY α、Aマウント一眼レフユーザーならば必携のレンズ
であると思う。
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では、次の比較用35mmレンズ。

レンズは、Carl Zeiss Touit 32mm/f1.8
(中古購入価格 54,000円)(以下、Touit32/1.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス名玉編第2回記事等で紹介の、
2013年発売のAPS-C型専用AF準広角(標準画角)レンズ。
ツァイスとしては珍しいAFレンズ、しかも、これも珍しい
ミラーレス機専用であり、一眼レフ用には、このスペックの
レンズは発売されていない。
・・言うまでも無いが、現在、カール・ツァイスブランドの
写真用レンズは全て日本製である。他のツァイス・レンズ群は
製造企業名が公開されている場合も多いが、本Touit32/1.8
に関しては、製造メーカー名は非公開である。

描写力は、個人的には、あまり好みの感じでは無い。
特に、逆光耐性に劣りフレアっぽくなり易い為、本レンズに
関しては、日中は必ずフードを装着する事にしている。
ちなみに、現代の新鋭レンズの多くは逆光耐性に優れる為、
殆どフードを装着する必要性が無いにも係わらずだ・・
別に、カール・ツァイスのブランド銘が付いているから
と言って、「優秀なボケ味」だとか「深みのある描写力」
などの、単なる直感的な「思い込み評価」をするのは、
ちょっとそれは違うだろう。
本レンズの製造元も、他に一般的な自社ブランドのレンズ
を作っているに過ぎず、特にツァイス銘だからと言って、
物凄く特別な設計や製造を行える筈も無いであろう・・
でも、悪い描写力のレンズでは無い事は確かである。
ツァイス銘をせっかく使っているのに、もし酷い写りの
レンズを出してしまったら、ツァイスのブランドイメージ
に傷がついてしまう、だから、そういう事は許されない訳
である。
ただ、「ブランド料」が加味されているから、相当に割高
なレンズである印象は強い。例えば、NIKON DX35/1.8と
同等のスペックで、同等の描写力だ、と評価するならば、
中古相場は、4倍程も高価な訳だ。
そう考えると、ツァイスのブランド料は、相当に高額なので
あろうとも推察できる。まあ、10万円や20万円もする高額
レンズであれば、ツァイスのブランド料の比率は、高値に
紛れて、わからなく(気にならなく)なってしまうのかも
知れないが、中古5万円クラスのレンズでは、どうしても
高価な製造コスト(や高額な開発費の償却)は掛けれない
だろうから、ブランド料の比率が大きくなって、結果的に
コスパが低下してしまう。
あと、それと、専門評価者等のレビューにおいても、
ツァイスの商品を悪く言う事が出来ない、という不自然な
状況が、もうおよそ45年間も続いている。
それはつまり、ヤシカ(京セラ)CONTAX RTSの発売年
(1975年)からの話だ。その時代以降、ツァイスは、
写真用交換レンズを自社では製造しておらず、ほぼ全て
が日本製になっている。だが、戦前から続く、「カール・
ツァイス神話」は、全世界で絶対的なブランド力を持つ
為に、誰であっても「ツァイスはたいした事が無い」と
でも言おうものなら、熱狂的なツァイス信者等を全て敵に
廻してしまう。また、せっかくツァイスを国産化するの
だから、日本の技術を低く言う事も、許されない話だ。
だから、公開されるレビュー記事等では、その全てが
「さすがツァイス、とても良く写る」という評価になる
事が、ある意味「お約束」な訳だ。
ただ、その事実をどう思うかは、結局のところ、ユーザー
次第である。高級ブランド商品の「所有満足度」は高いで
あろうし、高価な商品を買った事で、ちゃんと使いこなして
やろう、という真摯なスタンスと向上心があるならば、きっと
ツァイスレンズは、その期待には応えてくれる事であろう。
(まあ、収集した事だけで満足してはいけない、という意味だ)
それから、1つ程度のブランドのレンズを所有した事で、
たとえそれが高性能なレンズであると個人的に判断しても
「このメーカーのレンズは最高だ!」といった感覚を持って
はならないと思う。
当然の事だが、レンズは個々に設計に優劣、または個々に
許されるコストというものがあり、メーカー毎にざっくりと
良し悪しを語る事はできない筈だ。
それから、もし市場において圧倒的に他社より優れる機材
(レンズやカメラ)が存在するのであれば、皆がその機材しか
買わなくなってしまう。それでは他社は皆、潰れてしまう訳
だから、先行した高性能機材に対抗する為に、さらに高性能
な機材を目標として、他社においては開発が進む訳である。
この事を理解するのは簡単だ、少なくとも類似のスペックの
他社製品をいくつか買ってみて、自身で比較してみたら良い。
その際には、「高級ブランド品だから」とか「有名だから」
といった先入観は捨ててかかるのが良いであろう。
(まあ、本記事でやっている事と同等だ、本記事は元々
中国製の格安レンズの紹介から始まり、その事において
「安かろう、悪かろう」という「思い込み」が生じない
ように、他社の安価な同等品から、同等スペックの超高性能
レンズまで、振り幅を広げた比較評価を行っている訳だ、
こういう事を繰り返すと、絶対的スケール(評価の物差し)
感覚が身に付き、新たなレンズを購入した際に、先入観に
囚われずに、「このレンズの描写力は、何点」という評価が
出来るようになっていく)
なお、別シリーズ「特殊レンズ・超マニアックス第19回
記事」でも(国産)ツァイスレンズ特集を掲載している。
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さて、次は今回ラストの比較用35mmレンズ。

レンズは、smc PENTAX-FA 31mm/f1.8 AL Limited
(新品購入価格 90,000円)(以下、FA31/1.8)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第60回記事等で紹介の、
2001年発売のフルサイズ対応AF準広角レンズ。
「嫌いなレンズである」と毎回のように本レンズの紹介
の際には述べている(汗)
でも、「嫌い」という印象は、本レンズ購入時点の
約20年近くも前での話でもある。
その当時、私は、FA Limitedシリーズの高い描写性能に
ハマっていて、従前からのFA43/1.9、FA77/1.8に続いて、
本レンズも、調子に乗って発売直後に新品で高価に買って
しまったのだ。
しかし「ヨンサン」や「ナナナナ」ほどの感動的な描写力は、
本レンズでは得られず、「高いだけだ、失敗した!」と評価し、
その後、本レンズは活躍の機会を失ってしまったのだ。
で、たまに持ち出しても、愛着が持てないからか、ラフに扱い
いつのまにかレンズ外装もキズだらけとなっている(汗)
まあでも、近年になって、やっと本レンズも個人的には
「再評価」の機運が高まっている。
それは、いくつか理由があるが、根幹的な話をするならば
「コスパが悪い」という第一印象は、本レンズに過剰な
までの期待を持ってしまった事がある。
まあ、別の分野での話をすれば、例えば憧れの異性が居て、
なんとか口説き落として同棲や結婚をしたとしよう、だが、
いざ一緒に生活してみると、あれこれと細かい点が気になる。
でもそれは、ごく普通の状況でもあるのだが、その相手に
過剰なまでの期待を持って「美化」してしまっていたから、
そうした細かい欠点が許せない程になる訳だ。

で、近年の私の持論として「レンズの欠点を回避して使い
こなす事がユーザーの責務である」という風に思っている。
まあつまり「レンズやカメラの性能に文句ばかりを言って
いるようでは、永久に初級中級レベルから抜け出せない」
という厳しい意味でもある。だから、どんなに欠点がある
機材であっても、必ずそれを使いこなせなくてはならない
そうできないのは「ユーザーの負け」の状況であろう。
せっかくお金を払って入手した機材だ、その投資金額以上
の見返りは貰わないと意味が無い。
で、その練習の為に、近年私は性能が低いオールドレンズや
ジャンクレンズを良く購入する、中にはとても性能(描写力)
の低いものも多々存在するのだが、そういうレンズでこそ
欠点が明確な為に、その回避を行う練習にも役に立つ。
本FA31/1.8のような元々高性能(高描写力)なレンズでは
欠点は微々たるものであり、逆に言えば、その欠点を
ちゃんと理解したり、それを回避する事は結構難しい。
まあつまり、弱点回避を行うには、トップクラスの高難易度
のレンズである、という事だ。
で、レンズの言うがままに写して、たまたま良い感じの写真と
なれば「このレンズは良い(凄い)!」となり、逆にたまたま
条件が悪くて、気に入らない描写となれば「高いレンズの
くせに、イマイチだ!」という事にもなってしまう。
でも、そういう評価では初級中級レベル止まりという事だ。
レンズの隅から隅まで、長所も短所も完全に把握する必要が
ある。それが出来ない間は、ちゃんとした評価も出来ない。
本レンズFA31/1.8は、非常に高いレベルの評価スキルを
必要とされるレンズだ。まあ、20年やそこら、本レンズで
撮っていても、まだまだわからない事も多いような気も
している。ましてや、新製品の紹介記事のように、どこか
からか借りてきて1週間やそこら使った程度では、絶対に
評価不能の難解なレンズであるとも言えよう。
なお、細かい長所や短所は他の紹介記事でも書いてあるので
割愛する。

本記事の総括であるが、同じようなスペックの35mmレンズ
を6本紹介した。そこでの、安いものと高いものとの(購入)
価格差は10倍以上にもなる、だが、10倍もの値段の差に
相応するような描写力の開きは、勿論無い。
まあそれが、「レンズの価格」というものの本質である。
「値段の高いもの」や「有名なもの」、あるいは「誰かが
良いといったもの」が必ずしも良いレンズである保証は無い。
必ず、自分自身により、実際に所有し、撮影して様々な面を
比較する事が最も重要であろう。
その「評価」自体も、勿論難しい。でも、そこについては、
「評価スキル」をユーザーが自ら高めようとしなければ
ならないだろう、単なる思い込みで「これは良いレンズだ」と
言っているのは絶対にNGである。
評価の基準がわからなけらば、わからないなりに、何十年間も、
何十万枚も撮影するしか無い、そこまでやって、初めて理解
できる事も少なくはない訳だ・・
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さて、今回の補足編記事は、このあたり迄とする。
次回記事は、また未紹介レンズの記事に戻ろう。