高いコストパフォーマンスと付随する性能を持った優秀な
写真用交換レンズを、コスパ面からの評価点でのBEST40を
ランキング形式で紹介するシリーズ記事。
本記事においては、BEST40にランクインしたレンズを下位から
順に紹介して行こう。
(ランキングの決め方は第1回記事を参照、なお、評価得点
が同点の場合は、適宜、順位を決定している)
すでに40位から37位までは紹介済みだ、今回は36位からの
順位となる。
さて、今回記事も比較的マニアックなレンズが続いてしまう。
本シリーズ記事を始める際のコンセプトで決めた通りに、
「入手性が良く実用的な高コスパレンズ」を紹介したいのは
やまやまだが、ランキング下位のレンズは、なかなか全ての
条件が揃った名玉は登場しない。
ランキングが上位になるまでしばらくは、こういう傾向が
続くと思われる。
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それから、一般的に「名玉」と言うと、非常に高価な新鋭高性能
レンズであるとか、古いブランドレンズで有名なものを想像する
かと思うが、本ランキングは「コスパBest40」である。
プレミアム相場等がついて、本来そのレンズが持つ性能よりも
割高になっているような物は本ランキングに入る事は絶対に無い。
そして、最初からコスパが悪いと私が判断するレンズは購入する
事も無い、初級中級者又は初級マニアが期待(想像)するような
古い有名ブランドレンズ等は、本シリーズでは今後も一切出て
来ないので念の為。
では、今回のランキングレンズ。
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第36位
評価得点 3.50 (内、コスパ点 2,5)
レンズ名:フォクトレンダー NOKTON 42.5mm/f0.95
レンズ購入価格:90,000円(新品)
使用カメラ:PANASONIC LUMIX DMC-G5(μ4/3機)
ハイコスパ第16回「やや高価」編等、多数の記事で紹介した
超大口径MF単焦点レンズ、μ4/3マウント専用である。
また、本レンズは過去シリーズ記事「ミラーレス・マニアックス
名玉編第4回記事」において当時所有の300本以上のレンズの
中から、総合第二位として取り上げられた名レンズである。
ただ、第二位ではあったが、高価なレンズ故に、コスパ点のみが
弱点であり、コスパを主眼として評価する本シリーズ記事では
ここ36位までランキング順位を落としてしまった。
Voightrander(フォクトレンダー 注:変母音は省略)とは、
元々はオーストリア/ドイツの光学機器の超老舗メーカーの
ブランド名だが、1999年頃に日本のコシナ社が、当時、
宙に浮いていたその商標権を取得し、その後のコシナの製品
群(カメラやレンズ)のブランドとして、現在に至るまで
約20年間継続して展開されている。
1990年代までのコシナ社は、製造・設計の技術力が高かったが
自社ブランドのネームバリューが無かった為、様々な他社の
(有名カメラメーカー含む)カメラやレンズの多くをOEM生産
する(=他社から依頼されて製造する)メーカーであった。
自社(コシナ)ブランドのカメラやレンズは、市場では全く
無名な故に、定価の7割引きといった新品販売を行っていた。
(そこまで安価に見せないと、誰も買ってくれない)
その後、フォクトレンンダーやツァイスの商標を取得し
2000年代には、多くのレンジファインダー機や交換レンズ
群を販売し、2010年代の現在では、それらのブランド名の
高級レンズメーカーとして良く知られている。
さて、では本レンズNOKTON(ノクトン)42.5mm/f0.95
の特徴だ。
既に多数の記事で紹介しているので詳細は割愛するが、
最も大きな特徴は、開放F値が、F0.95という「超大口径」
レンズであるという点だ。
過去に発売された、一眼レフ用交換レンズの中で、ここまで
明るい開放F値を持つものは他に無かった。
たとえば、CANONには EF50mm/f1.0L USMというレンズが
1990年代に存在していたが、これが一眼レフ用では
それまでの最大口径であろう。当該レンズは、1990年代末
頃に中古が出た際に購入を検討し、高価であった為
一度借りて試写して決める事にしたが、結果、描写傾向や
AF性能が不満だった為、購入は見送っていた。
(注:現在のCANON 50mmの最大口径は、EF50mm/f1.2L
USMである、F1.0版が製造中止になったのは、やはり色々と
課題があったのだろうと推察される)
なお、レンジファインダー機用のF0.95レンズは、CANONが
かなり昔の時代(1961年)に発売していたし、近年(2010年代)
のライカ社製のMマウント用レンズにも存在する。
だだしこれらは、超レア品または超高価であり、一般的に入手
できるレンズとは言えない。またNIKONもフルサイズミラーレス
Zシリーズ用のF0.95レンズの発売を予告しているが、恐らく
それも「高付加価値化」で超高額な製品となるだろう。
(=高く売りたいが為に、そうしたレンズを開発する)
また、CCTV(監視カメラ)又は、シネ(映画)用のCマウント
レンズでは、旧来よりF0.95は一般的だし、それ以下のさらに
明るい開放F値を持つレンズも稀に存在していた。
しかし、こうしたCマウントレンズは、イメージサークルが
小さすぎて、(デジタル)一眼レフ等では使用できない。
(F0.95版では無いが、いくつかのCCTV用Cマウントレンズを
撮像素子の小さいPENTAX Q7等に装着して実写した例は、
過去記事ミラーレス・マニアックス等で複数回紹介済み。
近年では、特殊レンズ超マニアックス第1回記事にも詳しい)
また、近年(2010年代)では、中国の「中一光学」から、
Speed Masterシリーズとして、25mm,35mmと50mmの
F0.95レンズが発売されている。
また、流通量は少ないがミラーレス機用では最大口径の
HandeVision IBELUX 40mm/F0.85も存在する。
これらであれば色々なマウントでも販売されているので、
NOKTONのようにμ4/3機に限定される事なく、他マウント機
のユーザーでも超大口径5の世界を味わう事が出来る。
(一部は後日紹介)
なお、「大口径はどこまで可能なのか?」という話になると、
光学原理上は、レンズの最大口径は 1÷√2の計算式で
表され、これは約F0.707に相当する。また非球面等の特殊な
設計を行えば、さらに明るく出来、その限界値はF0.5との事だ。
(注:設計ができても、実際に作れるかどうかは不明)
ちなみに、カール・ツァイス社では、1960年代に
この実質的最大口径のPlanar(プラナー) 50mm/F0.7の
開発に成功し、これをNASAに納品したと聞いている。
加えて、同時代に同じくカール・ツァイス社から試作品として
「Super Q-Gigantar」40mm/F0.33レンズが存在していた
そうだが、これは光学的原理での性能限界を超えている模様で、
いったい、どのようにして作られたのか、良く分からない。
恐らくだが、現代にある「レデュサー」(一般的な写真用レンズ
の前後に付属品を装着し、焦点距離を短くする=より広角にする、
この時、開口率(有効瞳径)が増えて、光が多く取り込まれる為、
見かけ上の開放F値(焦点距離÷瞳径)が、より明るくなる)の
原理を応用した、トリッキーな設計の物だと想像される。
こうした光学的限界いっぱいの超大口径レンズは、水晶玉を
半分に切ったような半球状の前玉の構造になる事であろう。
さて、余談が長くなった、本NOKTON42.5/0.95の話だ。
本レンズの長所は、その「超大口径」である事だ。
42.5mmは実焦点距離としては準標準レンズであるが、
μ4/3機専用なので(フルサイズ)換算画角は85mm相当
となり、人物撮影の分野にも使える画角となる。
(ただし、その目的に使うには、仕様上、困難だ)
μ4/3機専用なので、レンズ設計上、イメージサークルを小さく
する事ができ、あまり大型化しない状態で、このF0.95を
実現している点も長所である。他のフルサイズ対応超大口径
レンズは、もっと大きく重くなってしまう。
また、前玉も半球状になる事もなく、見かけは普通のレンズと
同じであり、フィルター類も普通に装着できる。
なお、F0.95は明るすぎてシャッター速度オーバーになる為、
ND8級の減光フィルターの装着は日中は必須である。
最短撮影距離は約23cmと恐ろしく短い、そして通常距離撮影に
比較して、近接撮影では当然、被写界深度は浅くなる。
で、実は、換算85mm/f0.95といっても、センサーサイズが
小さいμ4/3用という課題があって、フルサイズ用の85mm/f1.4
よりも大きなボケ量が得られる訳では無いのだ。
ただ、一般的な85/1.4級レンズの最短撮影距離は、85cm~1m
程度であり、本NOKTON42.5/0.95は、それらよりも遥かに
寄る事が出来るため、被写界深度は相当に浅くする事が可能だ。
この特徴を活かすため、本レンズはできるだけ近接撮影で
用いるのが良いであろう。
なお、近接撮影での紙のように薄い被写界深度では、
μ4/3機のコントラストAF方式では精度不足で、ピントが
合うとはとうてい思えず、本レンズはMF仕様である。
しかしMFで使うにしても、ピントは依然難しい。
MFアシストとして「ピーキング機能」があったとしても、
ピーキングも原理的には、AF機構と類似のコントラスト差分検出
であるから、これも限界状態においては、あてにはならない。
この為、本レンズの専用ボディとして、PANASONIC DMC-G5
を別途購入し、ずっとこの組み合わせで使用していた。
DMC-G5は、Gシリーズの中ではピーキングを持たない最終機種
であり、PANASONICでは、この機種まで、ピントの山が掴み易い
旧型の144万ドットカラー液晶をEVFに採用している。
(これ以降の機種での有機EL仕様のEVFでは、映像は明るく、
解像度も高いものもあるが、ピントの山が若干掴み難くなった)
なお、144万ドットでは、解像度的に本レンズでのピント精度は
出ないので、ほぼ毎回(1枚撮影毎に)、EVF内での拡大表示を
行い、それでピント合わせを行う必要がある。
ちなみに、μ4/3機では他にも144万ドットカラー液晶をEVFに
採用する機種は少なく無いが、このDMC-G5(または類似操作系
の機種)であれば、MF時の「ピント拡大操作系」が優秀なので
使いやすい。他機は拡大開始、拡大枠移動、拡大解除における
指の動線への配慮の設計が練れておらず、使い難いのだ。
それから、近接撮影の場合はDMC-G5のバリアングル背面モニター
を使う場合もあるのだが、その際、背面モニターは、TFT液晶
92万ドット(640x480)と、ピント合わせの目的には、やや解像度
が低いが、こちらもDMC-G5では、EVFと同じ拡大操作系が使え
背面モニターを開いて、覗き込んだライブビュー状態でも、
拡大関連の手指の動線には問題が無いので、かろうじて使える。
このあたりも他機(他社機)では、バリアングルモニターでは
無かったり、ライブビュー時の拡大操作系が不十分であったり
するので、本NOKTON 42.5/0.95の使用には適さないと思う。
このあたりの話は、たとえ最新のμ4/3機を使ったところで、
問題点が解決する訳では無いので、レンズとカメラの
ピンポイントでの組み合わせで、最良のパフォーマンスを
発揮できるように考慮してG5を購入している。
ミラーレス時代においてアダプターの自由度が高くなったから
と言って、ただ単に、カメラとレンズを任意に組み合わせて
使えば良いと言う物では無いのだ。カメラとレンズの両者の特性
を発揮できず、性能を落としてしまうような組み合わせでは、
外から見ていて、カメラの事も、レンズの事も、何もわかって
いないようで、マニアとしては格好悪い。
余談が色々長くなったが、本レンズNOKTON42.5/0.95の
事は他の様々な記事でも紹介済みだ、そこには長所も短所も
毎回詳しく書いてある。
また、毎回、同じ結論になるのだが、本レンズはは初級中級者
には決して薦める事が出来ないレンズである、という事だ。
あくまで上級者/上級マニア専用のレンズである。
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第35位
評価得点 3.50 (内、コスパ点 3,0)
レンズ名:MINOLTA APO HI-SPEED AF200mm/f2.8
レンズ購入価格:44,000円(中古)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ(APS-C機)
ハイコスパ第23回や、ミラーレス・マニアックス第67回記事で
紹介の1990年代のAF単焦点望遠レンズ。
なお「HI-SPEED」とは、大口径(シャッター速度が速い)を
間接的に意味する英語表現であり、AFが速いという意味では無い。
レンズ名の「AF」とは、ミノルタのAFレンズの型番である。
ミノルタはα-7000(1985年)で他社に先駆けて一眼レフでの
実用AFシステムを発売した、その際に「AF」と言うレンズ型番を
他社よりも「早い者勝ち」で使ったのであろう。
(注:AFの二文字では商標は取得出来ず、その後のSIGMAや
TAMRON等のレンズも、同様なAF型番となっている)
で、本レンズには、HI-SPEED AFと続けて書いてある為、日本人
ユーザーに、そう(AFが速い)勘違いさせる為の、ロゴ・デザイン
上の工夫があると思う。これはある程度、確信犯だろうか・・?
何度も紹介しているので説明は最小限とするが、本レンズは
ライブ撮影やイベント撮影で良く使用したレンズである。
(注:上写真のみ SONY α700との組み合わせで撮影)
現代の70-200mm/f2.8望遠ズームと被る焦点距離と開放F値で
あるが、本レンズは、そうしたズームと比べて、軽量、安価、
高画質、良好なボケ質、という利点を持つ。
ただ、旧来、この用途(長距離人物撮影)には非常に良く
使ったレンズだが、近年は、200/2.8では無く、135/1.8に、
その用途での主軸レンズが変わってきている。
その大きな理由は、一眼レフへのデジタルテレコン機能の
搭載である。今回使用のα77Ⅱ(他のAマウントαフタケタ機
でも同様)には、「スマートテレコンバーター機能」が内蔵
されていて、専用ボタンのワンプッシュで、ノーマル、
1.4倍、2倍の画角に瞬時に切り替える事ができる。
すなわち、αのAPS-C機でのフルサイズ換算画角は、
本AF200/2.8で旧型α機の場合は、300mm/f2.8固定となるが、
135/1.8と新型αのテレコンの併用では200mm,300mm,400mm
の3種類の画角が得られ、しかも開放F値は1段強明るいF1.8だ。
ではAF200/2.8を新型αに装着したケースだが、
これは300mm,450mm,600mmの画角が得られるが、屋内
イベント(ライブハウス等)では、ちょっと過剰に長すぎる。
屋外ライブとか、若干のスポーツ撮影も含む場合は、本レンズの
方が役に立つであろうが、その際、昼間であれば、
100-400mmや200-500mm等の長距離被写体用超望遠ズームを
用いる方が簡便だ。
なお、初級者層は、このようにデジタルテレコンで画角を
伸ばす事には不安があるだろう。
まず心配事項の1点目は、手ブレだが、一応α(A)マウント機
は、α用レンズであれば内蔵手ブレ補正が効く。
そしてαフタケタ機のデジタルテレコン使用時の手ブレ補正は
変化した画角に対応している模様であり、問題はない。
基本的には、自身のスキルに応じた低速手ブレ限界シャッター
速度をしっかりと意識すれば、手ブレの不安は少なくなる筈だ。
第二の不安点、画素数や画質の低下だが、αフタケタ機の
画素補完型テレコンでは、原理的に画質の低下は起こらない、
下がるのは画素数であり、2倍の拡大モードとすると
自動的に最大画素数の1/4の記録画素数に制限される。
APS-C型αフタケタ機の記録最大画素数は、2400万画素機で
ある場合が多い、この時、1/4の画素数は約600万画素となり
2000年代前半の初期デジタル一眼レフと同程度だ、で、この
画素数があれば、ワイド四つ切やA3版程度の印刷には十分に
耐えられるし、WEBやSNS用途には、むしろ大きすぎる。
画質の低下が心配なのは、この解像度の原理やDPI(LPI)の
意味がわかっていない初級者のみであり、現代では中級者以上
であれば、写真の用途や目的に応じ、印刷サイズあたりで、
どれ位の画素数が必要なのかは良く知っている。
(デジタル時代初期の2000年代前半では、皆が良くわかって
いなかった、だからその頃は「画素数至上主義」が蔓延したし、
トリミングをする事を皆が嫌った、といった世情があった)
さて、また余談が長くなったが、本AF200/2.8について。
過去記事でも書いたが、このレンズは、MTF等のカタログ
スペック上は非常に高性能だ。一般的な撮影においては
文句は無いであろう。ボケ質や逆光耐性も問題なく、極めて
優秀なレンズである。
本レンズはMINOLTA銘のものしかなく、2006年にαが
コニカミノルタよりSONYに引き継がれた際、レンズの多くは
SONY銘で再生産されたが、本レンズは生産中止となった。
SONYでは、恐らく「70-200/2.8があれば仕様が被るので不要」
と、経営(営業)判断をしたのであろう。
しかし、では何故MINOLTAは、大口径望遠ズームと被るのに
本レンズを併売していたのか? そこをわかっていないと
ならない。そう、簡単に言えば、本レンズの方がズームより
性能面でのメリットが多いからだ。
(注;SONYは、αを引き継いだ時点では、一眼レフの製造や
販売経験を持っておらず、「焦点距離が被るレンズは不要」と、
まるで現代の初級中級層のような判断となったのであろう)
描写力的には何も問題が無い、そして小型軽量である、
だから本レンズは十分に入手するのに値するレンズだ、
ただし、単焦点望遠が使いこなせれば、という条件付きだから
中上級者向けのレンズとなる事は間違いない。
なお、SONY時代には販売されなかった為、本レンズの中古は
レア感からか、コレクター向けの若干高目のプレミアム相場と
なり、6~8万円位はするであろう。
それであればちょっと高価すぎる気がする、私の購入価格の
44,000円は、逆に、ちょっと安いが、まあ5万円台を目処と
して探すべきであり、それより高価ならばコスパ的には購入に
値しない。
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第34位
評価得点 3.55 (内、コスパ点 3,5)
レンズ名:中一光学 CREATOR 35mm/f2
レンズ購入価格:20,000円(新品)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)、α7(フルサイズ機)
レンズマニアックス第5回記事で紹介した、2014年発売の
中国製MF単焦点準広角レンズ。
本記事の前半で、中一光学製のSpeed Mastar シリーズの
レンズの話が少し出たが、本レンズは超大口径では無い。
ごく普通のスペックのレンズであり、MFでシンプルな
構造故に、付加価値要素(=ユーザーの購買欲を喚起する
為の、欲しくなるような仕掛け)も少なく、製造コストも
下がっている為、安価なレンズである。
まあつまり、AF、手ブレ補正、超音波モーター等の付加価値
機能を入れなければ、本来、レンズはここまで安く出来る
という事である。
ただ、日本のメーカーがそんな風に格安レンズを売っていたら
ただでさえ一眼レフやミラーレス機の市場は縮退しているので
カメラ事業が成り立たなくなってしまう。
だから現代での国産品は、ともかく高く売る為(利益が大きく
出る為の)仕掛けや魅力的仕様を色々と入れなくてはならない
のだ。
結局、ユーザーの立場では、何が、本当に自分にとって必要で、
何がいらないのか、そして、その必要な機能にいくらまでなら、
お金を払う事が出来るのか? そうした絶対的な価値感覚や
コスパ感覚を身につけなくてはならないのだろう。
まあ、それが故に、こうしたハイコスパのシリーズ記事を
色々と書いているのだ。
つまり、現代の初級中級者層は、何もわからずに高い製品を
買わされてしまっている、という課題があるが故だ。
ただ、申し訳ないが、そういった奇特なユーザー層が居て
くれないかぎり、カメラ市場は崩壊してしまう。
だから正直言えば、こうしたシリーズ記事は初級者層には読んで
貰いたくない、変に色々と知ってしまうのも世の中の仕組み的に
良く無い事も色々あるからだ・・
さて、余談はともかく、中国製の中一光学のレンズの話だ。
私は中一光学のレンズは、本Creator 35mm/f2と、
Creator 85mm/f2(ハイコスパ第23回),FreeWalker 20mm/f2
(レンズマニアックス第2回)と、未紹介レンズの計4本を
所有しているが、中国製だからと言って、品質や性能に
不安を感じる事は無い。
むしろ金属製で作りが良くて、デザイン的にも国産の
安価なエントリーレンズよりも、遥かに格好良い位だ。
本レンズはレンズマニアックスで比較的最近に紹介した
レンズであるので、詳細は大幅に割愛していこう。
特徴は新品でも極めて安価な高性能レンズ、という点だ。
ただし勿論MFで、かつ絞り込み測光であるから、そのあたり
の長所短所が良くわかっている中上級者向けだ。
あるいは、ニコン用等の一眼用マウント製品であっても、
ミラーレス機でアダプターで使う方が、初級中級者にとっては
使いやすい事であろう。
ここでミラーレス機α7で使ったケースも紹介しておく。
写りだが、正直言えば、可も無く不可もなし、という感じで
感動的な要素は何も無いのだが、逆に、ここがNGだという
弱点も、若干だが逆光耐性が弱い事がある程度だ。
初級中級者層にも、かろうじて薦められるレンズではあるだが、
その場合、初級中級者層は一眼レフに本レンズを装着するのは
禁物だ。必ずミラーレス機にアダプターを介してで使うか、
またはミラーレス機用マウント版を買うのが良い。
そうで無いと、一眼レフでは、絞り込みで光学ファインダーが
暗くなったり、構造上、露出が合わなかったり、MFをアシスト
する機能が(一眼レフでは)貧弱であるので使い難い。
なお、ミラーレス機でのMFアシストの意味や操作がわからない
超初級者の場合、本レンズを購入する必然性は全く無い。
・・と言うか、近年の本ブログでの、こうしたマニアック系
の記事は超初級者層はいっさい対象読者層として考えていない。
経験や知識や技術が殆ど無い状態で本ブログの記事を読んでも
チンプンカンプンであろうし、無理して読んでも意味が無い
事であろう(注:別途「用語辞典シリーズ」を展開している)
まあ、上級者レベルであれば、本レンズは、どう使おうと
好き好きで良いと思う、新品でいつでも購入可能であるし、
コスパに優れた、なかなか良いレンズだ。
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第33位
評価得点 3.55 (内、コスパ点 3,5)
レンズ名:安原製作所 MOMO 100 28mm/f6.4 Soft
レンズ購入価格:21,800円(新品)
使用カメラ:OLYMPUS E-PL2(μ4/3機)
ハイコスパ第5回記事で紹介の、2016年発売の
希少なMF広角ソフトフォーカス(軟焦点)レンズである。
なお、希少なのは「広角」のソフトレンズである事で、
ソフトレンズが「MF」である事は、むしろ当たり前だ。
AFのソフトレンズは希少で、1990年代のMINOLTA AF100/2.8
Soft(ミラーレス第38回),CANON EF135/2.8 Soft
(現在未所有)の2本しか記憶に無い。
(注:PENTAXにもあっただろうか? 詳細不明)
ソフトレンズが軟焦点化する原理や、その歴史背景等は
様々な過去記事に詳しいので今回は割愛する。
長所は、その個性的で、幻想的あるいはノスタルジックな
描写力であり、これはソフトレンズそのもので効果を出すのが
最も望ましく、ソフト効果物理フィルターや、カメラ内蔵
エフェクトのソフト効果、PCやアプリでの画像編集エフェクト
でのソフト効果のいずれでも、実際のソフトレンズの描写
とは異なる。
ソフトレンズの場合は、光源に対してハロ(光の滲み)の
発生により軟焦点化するが、中暗部の輪郭については比較的
残っていて、芯のある描写になる、すなわち光の明るさの分布
状態に、より強く影響されるという事であり、ソフトエフェクト
により輪郭そのものを全体的にボカしてしまう効果とは異なる。
弱点はピント合わせが困難な事だ。本ブログでは、多数の
ソフトレンズならびに、球面収差によりソフトレンズ級に
軟焦点化するオールドレンズで、いかにピントを合わせる
のが良いか?という様々な工夫とその検証を何度も行って
いるが成功例はまだ無い。つまり現状では、何をやっても
ソフトレンズのピント合わせが困難な事は回避しようが無い。
それと、本レンズは希少な広角ソフトであり、ソフト効果も
あまり強くなく、この点も弱点ではあるが、ピント合わせは
他のソフトレンズよりも若干だが容易だ。
それらの弱点だけ許容できるのであれば、そして、こうした
ソフトレンズの描写が必要であれば、エフェクト等に頼らず、
実製品を買うのも良いであろう。
ちなみに、ソフトレンズは1980年代~1990年代にかけて
流行したので、当時は何種類もの製品がカメラメーカーからも
発売されていたのだが、それ以降、ほとんど全てが生産中止と
なってしまった。恐らくはあまり売れない商品だからであろう。
現在2010年代では、メーカー純正のソフトレンズは存在せず、
安原製作所やKENKO LENSBABY等、サードパーティー製での
数本を数える程度だ。
昔のソフトレンズの中古がたまに出て来ても、レア感からか
プレミアム価格となってしまい高価だ。そうであれば、
本レンズあるいは他社製品の新品を買うのがてっとり早い。
当然、誰にでも薦められるレンズでは無いが、まあ描写表現に
おける効果は高いので、中上級者やマニア向けとしておく。
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では、今回はこのあたりまでで、次回記事でも引き続き
ランキングレンズを順次紹介していこう。