2018年7月22日(日)、滋賀県高島市にて行われた、
「第27回びわ湖高島ペーロン大会」の模様より。
(以下、「高島ペーロン」と略す)
前編では予選の状況を説明したが、敗復から準決勝に
進めるのは、上位のたった2チームだ。
敗者復活戦では、いくつかのドラマがあったので
ここで紹介しておこう。
まず、準専業の「メタルスタイリスト福田」が頑張った。
本大会には昨年(2017)より参戦、ただし昨年は予選の間の
酷い強風に各チームはアクシデント連発の中、「メタル」は
良く完走したが、タイムオーバーで残念ながら敗退であった。
今年は、滋賀県の専業チーム「GPO」より舵手を手配して
万全を期す。「メタル」は京都府南部のチームだが、その
地域は「宇治大会」を擁すものの、日常的にドラゴンの
活動をしているチームは他に「すいすい丸」しか無い。
強豪の「すいすい丸」とのコラボチームは組み難いだろう
から、「メタル」としては、同胞もライバルもおらず、
色々とやりにくい所はあるだろう。
私も、宇治大会をベースに市内チームをピックアップして
声をかけている状態ではあるが、なかなか日常的な活動が
出きるチームは他には無さそうだ。
ちなみに、今年の宇治大会は、9月9日の開催を予定して
いたのだが、会場工事(宇治川の洪水対策)の都合により
本年度の大会は「中止」となっている。
お間違えの無いように・・
で、その「メタルスタイリスト福田」(上写真)だが、
予選は4分26秒で完走するものの、これでは1位の
タイムに及ばない。
敗者復活戦では、「とりあえず4分を切る事」が目標と
なった。例年の本大会のように敗復からの準決勝進出
チームが多い場合は、4分を切れば、なんとかなるのだ。
「メタル」の敗復タイムは4分ジャスト、一応暫定上位
にはなったか、すぐに他のチームに取って変わられた。
「メタル」はこの時点で敗退、しかし初出場から全レース
完走を続けているのは、立派な戦績であり、さすがに
準専業であり、ビギナーチームとは一味違う。
そろそろ何処かの大会での上位入賞を期待したい所だ。
以降、敗者復活戦での上位タイムは
3分46秒「松陽台 伝説(レジェンド)」
3分47秒「吹田龍舟倶楽部」
であり、ここまでが暫定上位だ。
残る敗者復活戦レースは2つだけ、残るは地元強豪の
「松陽台 守(もり)のシルバニアファミリー」
さらには敗復最終戦で、準専業の「ドリーマーズ」と
地元強豪「VICTORY南浜」が居る。
第16レース、「シルバニア」が快調で3分31秒をマーク。
これで「吹龍」が残念ながら敗退となった。
残るは敗復最終戦第17レース、ここでは「松陽台 伝説]の
3分46秒を上回る事が準決勝進出条件だ。
このレースに出る準専業「ドリーマーズ」だが、今年初参戦
で、予選ではスピンを繰り返してタイムアウトで失格。
舵手の方は、「ドラゴン艇とはあまりに勝手が違う」と
言って、続くレースでの舵手の辞退を申し出る。
匠「まあ、どの強豪チームも最初の年は皆そうですよ、
経験を積めば安定しますので、責任を感じる必要は
ありません。それと、前の日から現地入りして
”事前練習会”に参加するべきでしたね」
と伝えた。
で、本大会には「派遣舵」制度は無いのだが、状況を
見かねた「松陽台 伝説」のO氏(大会実行委員長)が
敗復での「ドリーマーズ」の舵を務める事となった。
ドリーマーズは「舵は本部の人がやってくれます」と
言っていたので、私は気にも留めていなかったが、
実際のレースではO氏が乗っていたのでびっくり!
だって、O氏は本大会トップクラスの経験値を持つ舵手
だし、ドリーマーズはビギナーチームではなく、多数の
地方大会優勝経験を持つベテラン準専業なのだ。
それを組み合わせたら、どうなってしまうのか?
この強力なコラボにより、敗復最終戦でのドリーマーズは
真っ直ぐ進み、しかも速い!
タイムは初完走としては驚異の3分36秒!
これでは、O氏の所属チーム「松陽台 伝説」を蹴落して
しまっての隼決勝進出ではないか!
これはちょっとまずい(汗)
よって、準決勝ではもうO氏はドリーマーズの舵を務めず、
他の地元チームの舵手に代わってもらう事になった。
匠「えらいこっちゃ、皆が、よかれと思ってやっている
事が仇になっている。それぞれが事情を知っていれば
こういう事にはならなかったのに・・」
と思ったし、裏の実態を知っていたのは私だけだったので、
事前に舵の派遣の状況を察知して「そうするのは試合への
影響が強すぎる」と、両者を止めておけばよかった(汗)
だが、後日、よくよく状況を調べてみると、仮に
ドリーマーズが準決勝に進まなくても、そのレースでは
地元強豪「VICTORY 南浜」が3分40秒を出していたのだ。
よって、3分46秒の「松陽台 伝説」の敗退は、いずれに
しても、やむを得なかった訳だ。
それにまあ、ドラゴンにおいても、派遣舵では、こういう
事は有り得る、相手チームに手助けして自身の所属チーム
を負かせてしまうわけだ。
これはビジネスで言うところの「利益相反」(の逆)の
状態だが、運営システム上、やむをえない。
だから本来は「舵手はチーム自前で」が原則である。
さもないと、こうした不幸な状況が何度も出てくる。
でも「舵手は足らない、成り手も居ない」という状況も
また、ドラゴン界全体での課題だ。
なんとかならないものか?と最近良く考えてはいるが、
舵手の育成は、そう簡単な話では無い・・
さて、ここから<激戦の準決勝>の模様に移る。
まず準決勝第1レース、ここの専業チームは2つだ、
「びわにゃん」(琵琶湖ドラゴンボートクラブ)と
「松陽台 守のシルバニアファミリー」(上写真)である。
他は地元チーム「高木家揉めてます」と「Team G」が居る。
しかし、ここから先の準決勝全てだが、地元ビギナー
チームが専業チームに勝てる可能性は、アクシデントが
起こらない限り絶対に有り得ない。
専業チームの数が、もう数チーム増えると、準決勝以降の
全てが専業チームになってしまう。それでは地元チームが
興味を失ってしまうので、以前のように実力別カテゴリー
分け(チャンピオンシップ、フレンドシップ)を復活
させた方が良いかも知れない。
さて、課題はさておき、ここは興味深いレースだ。
ドラゴンの経験値からは当然「びわにゃん」が有利だが、
高島ペーロンは初参戦。
「シルバニア」は、この高島ペーロンでは地元最強だ、
そして、今年は本格的なドラゴン戦術までも身につけて、
なかなかあなどれない。
レースの展開は、ロケットスタートが炸裂して序盤は
「シルバニア」が有利。予選での「小寺」は、ここで
慌てて、ペースを無理に上げて大激戦となった訳だ。
「小寺」は一応「シルバニア」に僅差で勝ったが、
体力の消耗は大きく、加えて「超激戦区」の準決勝枠に
放り込まれてしまった(汗)
たが、「びわにゃん」(琵琶ドラ)はレース戦術に極めて
長けた「試合巧者」である。この上手さは、ドラゴン界
全体を見渡しても、確実に3本の指に入るチームだ。
決して慌てずに「シルバニア」をじわじわと追い詰める。
このまま無事ターンを過ぎれば、「びわにゃん」有利と
私は思っていたが、慣れない(まだ2回目)のターンの
難しさが「びわにゃん」を襲う、ここでタイムロスして
「シルバニア」に大差を付けられてしまう。
「シルバニア」のターンスキルは本大会ではダントツなのだ。
後半、「びわにゃん」はペースアップして「シルバニア」
を追うが、もう1位にはなれそうもない。
であれば、決勝進出の為には、1位以外のチーム全体の
上位の2チームに入らなければならない。
ここでの「シルバニア」の予想タイムは3分31秒±2秒。
過去「松陽台」時代から、最速が3分28秒だったと思う。
・・が、今回、2位以下での決勝進出条件予想タイムは
「3分30秒を切っている事」だ。
つまり、「びわにゃん」は「シルバニア」と、ほぼ同着に
ならない限り、まず決勝に進めない。
終盤、「シルバニア」を必死に追う「びわにゃん」、
ここは順位よりもタイムが重要だ、もっとも彼らは
「試合巧者」なので、そこは良くわかっている筈だ。
匠「う~ん、差は縮まらなかったか」
「びわにゃん」のタイムは3分38秒、残念ながらここまで
であろう。でも初参戦では大健闘だ、初出場でここまでの
レベルのタイムを出した前例は、2016年の「龍人」しか無い。
(注:2016年の「からしれんこん」の準決勝は3分39秒、
また2018年の「ドリーマーズ」は前述の派遣舵だ)
「びわにゃん」(琵琶ドラ)も、来年以降は確実に決勝に
上がってくるだろう、大激戦区となる事必至だ、
次いで準決勝第2レース
ここでの専業チームは「からしれんこん」が居る。
(2016年4位、2017年3位)
また、準専業の「ドリーマーズ」そして、地元強豪の
「SPIRITS」(昨年は決勝進出し5位)が居る。
さらに地元チームからは「小町と無限」が残った、
「龍舟小町」という名で初期から中期の、本大会の
「女子の部」で何度も優勝した強豪チームと、
「無限軌道」という名で(注:キャタピラの意味で、
陸上自衛隊チームとの事)本大会初期から参戦していた
コラボチームだそうだ。
大会実行委員長のO氏は、「昔の常連チームが今回
久しぶりに参戦してくれて嬉しい」と語っていた。
レースの展開だが、往路で「小町と無限」および
「ドリーマーズ」がスピン、ここで「からしれんこん」
と「SPIRITS」の一騎打ちとなった。
ちなみにレース前に「からしれんこん」の選手の数人が
か「SPIRITSってどんなチームでしたっけ?」と聞いてきた。
匠「航空自衛隊です、強いですよ。昨年「からし」さんと
決勝で戦っているでしょう? 覚えていませんか?」
か「あ・・(汗) そうでしたかね(?)」
う~ん、専業チームは、もうちょっと地元チームの研究と
対策が必要な模様だ。
その逆に「専業チーム」は、地元チームから見ても目立つ。
まあ、速いからだ。専業チームが入りだしてから、本大会の
優勝タイムは5年間で15秒以上も短縮されているのだ。
「SPIRITS」は昨年決勝進出なるものの、他の専業チーム
に歯が立たず、悔しい5位(最下位)となっていた。
今年のSPIRITSは気合が違う、以下は彼らからの話だ、
S「例年、若手の”ペトちゃんず”とダブルエントリー
していましたが、今年はSPIRITSの1本に集中です。
それから、毎年、昼休みに若手が(琵琶湖で)
泳いで遊んでましたが、今年はそれは禁止です、
体力を消耗するからです!」
まるで自衛隊のように(その通りだ・笑)規律が整って
いるのは良いのだが、なんだ・・「ペトちゃんず」が、
例年琵琶湖にメンバーを投げ入れる瞬間を撮影していた
のに、今年はそれが撮れないのか、とがっかり(笑)
さて、ターン後の一騎打ち、「SPIRITS」は気合を入れて
昨年決勝で負けた「からしれんこん」を必死に追う。
しかし、なんという事か、何もない直線で「SPIRITS」が
スピン!
第1レーンの水深の浅い場所だったので水流の影響か?
「からし」は先にどんどん進む。
立て直しても間に合わない、残念ながらここで敗退だ。
悔しがる「SPIRITS」のクルー達(=写真手前で反転。
写真奥は「からしれんこん」)
----
さて、準決勝のラストは、最も注目の第3レースだ。
専業チームは「池の里Lakers!」「龍人」「小寺製作所」
である。これはいわゆる「三国志」だ。
地元チームとして「わたぶ~ The Final」が残っている、
こちらは高島市役所チームだが、6回目の出場という事で、
もう、そこそこペーロンのレースに慣れたチームだ。
「The Final」の意味は、今年でもう出場をやめるの
だろうか? そこは聞きそびれた。
さて、このレースを「三国志」はどう戦うべきか?
実際のところは暫定上位の「びわにゃん」のタイムが
3分38秒であるから、単に、これを上回れば良い。
「三国志」の準決勝タイムは3分20秒台が予想される、
よって、普通に考えれば3チームは全て決勝進出が可能だ。
だが、中途半端に手を抜くのも危ない、アクシデントに
より大きくタイムロスする危険性がつきまとっている。
ならばもう、ここは「ガチンコモード」で真剣勝負しか
無いではないか。そもそも、ライバルの後塵を拝する
訳にはいかない、そこは意地がある。
続く決勝は出たとこ勝負だ、ともかく決勝に上がる事だ。
3チーム全てが、そう考えたのであろう。
ここから史上稀にみる激闘の準決勝戦が繰り広げられる。
さて、前半は3チームほぼ同等、すでにガチンコ勝負だ。
直線が速いのは「龍人」だ。「池の里」も普段は速いが
今日はメンバーが1名足りていない、池の里のレコード
タイムは昨年優勝時の3分18秒だが、そこから3秒程度の
タイム低下は避けられないかも知れない。
「小寺」は、長距離戦を苦手とする(注:実際には
そうでも無いが、メンバー達はそう思いこんでいる)
チームであり、直線は巡航レートを落として対応している。
(予選での「シルバニア」戦のように巡航レートを上げると、
体力消耗が甚だしい。ここではそれは出来ないであろう)
が、「小寺」はターンが抜群に上手く、3強の中では1番だ。
「龍人」が、いち早くターンに突入、次いで「池の里」
が、「龍人」は大きくオーバラン、そして「池の里」も
ややオーバーラン気味だ。
何故こんなライン取りになるか?というと、恐らくは
過去の苦い経験が原因としてあるのではなかろうか?
「池の里」は、2016年の予選で、「龍人」は2017年の
準決勝で、それぞれ艇をターンブイに当ててしまい
結果的にブイの前を回る事となり、これは勿論認められない
ので、もう一度戻ってブイを廻りなおしだ(汗)
このタイムロスは、「競技」としては致命的であり、
もう、それをやってしまった瞬間に「負け」である。
チームや陀手にとっては、これは怖いであろう、なにせ
ほんの数十cmの差で失敗したら「即時負け」なのだ。
予選では失敗しても敗復で取り繕えるが、敗復以降は
1発勝負、そこで負けたら「お疲れ様、さようなら」だ。
よって、安全策として、ややブイの外を通過し、オーバー
ランさせてターンするのだ。これはタイムロスになるが、
ブイにぶつけるよりマシだ。
だが、こうして先行する2チームが消極的戦術に出たのに
対し「小寺」は得意のターン技術を活かしてぎりぎりで回る。
これでターン出口で、見事に3艇が揃った。
後半戦、実況放送は「大興奮」である、もの凄い熱戦!
もうこのまま決勝戦と言っても過言では無い、
いや、下手な決勝戦以上の大迫力の激闘だ。
地元の人達等では、三国志チームの、これまでの経緯は
良く知らないまでも、全て近年の優勝チームである事は
実況放送やパンフレットの記載でわかっている。
レースを見ていた観客の全てが、この激闘の模様を
興奮しながら見つめていた事であろう。
終盤は「池の里」が、やや先行したまま3艇は譲らず。
最後まで接戦のままゴールイン。
「池の里」は3分23秒のゴールタイム、1人欠員の状態
なので、このタイムは、ほぼせいいっぱいであろう。
2位「小寺」は、3分25秒、これは「小寺」の過去のベスト
タイムと同等であり、優勝した2014年よりも10秒も速い。
3位「龍人」も、3分25秒、2016年の自身の優勝タイム
3分21秒には及ばないが、「龍人」のチームとしては
歴代2番目の好タイムだ。
匠「あ~あ、3チームとも全力でぶつかってしまったよ。
こうなるのじゃあないかと思っていた。
が、これでは、もう(20分後の)決勝戦で漕ぐ体力も
気力も残っていないではないか!」
でもまあ、私のその考えはレース全体の戦略的な話であり、
各チームとしては、そこまでして優勝したいという訳でも
無いのであろう、なにせ彼らは過去、いずれも優勝経験を
持っているのだ。
決勝戦で優勝する事よりも、この「夢の準決勝レース」を
全力で戦えた事が、最高に楽しかった事であろう、
まあ、それがアスリートの心理だと思う。
そして、この準決勝の「三国志の大熱戦」は、
「記憶に残る戦い」として、本「高島ペーロン」の歴史に、
さらには、ドラゴン界での「伝説」として、何年たっても
語り継がれる事であろう。
それと「記録の重要性」も再認識した。もし、誰もこれを
記録していなければ(写真も無く、文章も無ければ)
このレースは「無かった事」として、いずれ、忘れ去られ
てしまう・・・
まあ、しかしながら、予想屋(笑)の私の心境としては、
「これで3強の優勝は消えたな」という事であった(汗)
さて、ここから<波乱の決勝戦>の模様だ。
まず、決勝戦進出チームをおさらいしてみよう。
以下レーン順で、参考に本日の最速タイムもあげておく。
1:3分30秒:松陽台 守のシルバニアファミリ-
2:3分31秒:からしれんこん
3:3分23秒:池の里Lakers!
4:3分25秒:小寺製作所
5:3分25秒:龍人(どらんちゅ)
匠「やった、これで非常に面白くなるぞ!」
1~2レーンのチームは、3~5レーンの三国志よりも
6~7秒程度遅いのだが、まず、3~5レーンは、
つい30分前(注:あまりにレース間隔が短かかったので
大会本部の配慮があったのだろうか?、遅めのスタートだ)
に、大激戦の準決勝レースを行ったばかりだ。
しかも、4~5レーンは水流が安定していないようにも
思える。
1レーン「シルバニア」は、レーン的に不利なようにも
思えるが、そこは地元最強だ、あまり問題はなさそうだ。
しかし、私が気になっているのは、今日の「シルバニア」
のレースタイムが、全て3分31秒±1秒という非常に
高い精度でまとまっている事だ。
それと、旧「松陽台」の時代を含めて、ベストタイムは、
3分28秒くらいだったが、そこに到達していない。
「ロケットスタート」「巡航レート」「ラストスパート」
という高度なレース展開戦術をせっかくマスターしたのに
何故、これまでのベストタイムに到達できていないのか?
匠「これはもしかして、もう1段上のギアがあるな!?」
すなわち上記レース戦術では、「巡航レート」を調整
する事で、(まあ、しんどいが)タイムをさらに上げる
事が可能なのだ。
もう1つの要素がある。「松陽台」は、本大会において
2014年以降では入賞に恵まれていない。
「高島ペーロン」を代表する地元最強チームが、
何年も勝てない状況は、ちょっとまずい。
このあたりで、是非入賞してもらいたい訳だ。
さて、第2レーンの「からしれんこん」は、強豪チーム
のOBが声をかけて結成したチームであるが、2016年の
本大会がチーム初参戦であり、まあ、本大会は「ホーム
大会」である。
で、それぞれの「ホーム大会」への思い入れが、各チームに
おいて非常に強い事は、選手以外には、殆ど理解しずらい
事ではあるが、まあ、それは確かな事実である。
気持ちの上で「ホーム大会」では絶対に勝ちたいのだ。
(余談だが、恋人同士とか夫婦とかで「初デートの場所」等
を、男性が忘れていると、えらく怒られる事と同様か?汗)
「からし」には、本大会に参戦する為の十分な固定的
メンバー数が居ない、今回は大阪地区のドラゴンチームを
中心に、少しメンバーを増強しての参戦だ。
まあつまり、ベテランのメンバーを揃えている訳で、
これまでの予選~準決勝のタイムは、戦術的な意味で
「逆ブラフ」(=実力を出さない)かも知れない。
つまり、全力を出さなくても一位抜けが出来たからだ。
であれば、「からし」は、あと数秒程度は、タイムを
縮める事ができそうではないか。(昨年は3分25秒)
それから、3~5レーンの三国志チームには、
激戦の準決勝の後である事と、沖のレーンでの水流の
悪さを鑑みて、数秒のプラスハンデを考察してみよう。
これらを頭の中で考え計算すると、意外な結果となった。
つまり「全チーム3分27秒前後で横並び状態」である!
私は、撮影場所をターン地点に設定した、だいたい毎年
決勝戦ではここだ、決勝でのアクシデントが起こる可能性
は低いと思われ、であれば、ここでターンを終えた時点の
順位で、ほぼレース結果も確定となるだろうからだ。
まあ、2年前2016年の決勝戦で、ターン時点でトップであった
「からしれんこん」が落水しているが、そういうケースは稀だ。
(注:この時点では、私はそう思っていた)
例年の本大会では、ターン地点には三脚を立てたアマチュア
カメラマンが何人か場所を占拠している状態だが、本日は
猛暑日である為(幸いにして)他のカメラマンの姿は無い。
三脚を立てているのは、たいてい望遠の手持ち撮影が出来ない
初級者のシニア層、かつ、初めて観戦に来た部外者だ
(が、こうしたレースはビギナーでは簡単には撮れないから、
翌年から撮影には二度と来ないのが通例だ)
で、こんな所で三脚を立てて動かずに、熱中症になって
倒れられたら、大会運営側にも迷惑をかける状況になる。
そもそも一箇所から動かずに撮るなんて、毎レースで状況が
変わるという点で、全く有り得ない話だ。
初「良い撮影場所は何処ですか?」と初級者から良く聞かれるが
匠「それはレース毎に変わります」と毎回答える事にしている。
そもそも撮りたいシーンを想定せずに撮っている状態では、
「良い撮影場所」などいう概念自体、有り得ない。
初級者が思っている「シャッターチャンス」も大誤解が殆どだ。
それは三脚を立てていて、ファインダー視野内にボートが入った
瞬間を指すのでは無い。撮影者が思い浮かべた「ストーリー」を
写真で具現化する瞬間が、真の意味の「シャッターチャンス」だ。
ビギナー層ゆえに、撮影のスキルや経験値が低いという点が
まず課題だが、それよりも、本大会等での各チーム等の情報を
何もわかっていない事が最大の問題点だ。
それを知らないと写真は撮る事が出来ない。撮れたとしても
「ストーリーが何も無い、綺麗に写っているだけの無意味な
写真」にしかならない訳だ。
そして、実際のところは、チーム等に全く関係がない部外者
でも、大会本部に行けばパンフレット位は貰う事が出来る。
そこには過去の全大会の上位の結果とタイムが書かれているし、
それと、現在、実況放送で流れているチーム名を聞いて、
加えて、本部前に張り出してある本日のレースのタイム表を
見れば、たとえ初めて本大会を観戦しても、だいたい、どこが
強くて、どんな順位になるのかは、予想は難しく無い筈だ。
選手達であれば、初参加でも、これは皆がやっている事だ。
で、そういう「情報収集」や「状況分析」を一切やらないて
何も考えずに三脚を立てて動かず、望遠レンズの狭い視野の
中で「何かが起こる事をずっと待っている」という風に、
受動的・傍観的に写真を撮っているだけでは、何十年写真を
やっていても、永久にビギナーのレベルから脱却できない。
写真を撮るには「被写体の世界に入り込む」事が必須なのだ。
決勝前の約30分間で、色々と考えていた事の余談が長く
なった。さあ、いよいよ決勝戦の火蓋が切られた!
序盤は約300mm先の距離だ。今日の撮影のメイン機材は
SONY α77ⅡにTAMRON SP200-500mmだ、デジタルテレコン
が最大2倍効くので、フルサイズ換算最大1500mmとなる。
総重量は2kg強と、超望遠システムにしては軽量だが、
手持ち撮影なので、もうこれは限界に近い値ではある。
で、300m先のペーロン艇では、たとえ1500mmの超望遠でも
撮影はできない。いや、勿論、画角的には撮れるが、
撮ってみれは容易に理解できるだろうが、「絵にならない」
訳である。つまりとても遠距離にある艇を単独で撮っても
殆ど意味が無い(=普通に近くで撮れば良いだけだ)
逆に焦点距離を下げて、複数の艇を入れても意味は無い、
300m先の、正対面積数平方mで、十数mづつも間隔が
開いている被写体なんて、撮りようが無いではないか。
撮ったとしても、広い構図の中に小さく艇が散漫に写る
だけで、これも写真として成り立たない。
ボート競技の写真では「構図内での艇の密度を上げる事」
が基本となる。
それから写真的に重要な点だが、この会場は晴天の場合
強い逆光となり、ほとんどまともに写真は撮れない。
私も、なんとか露出補正等で騙し騙し撮影している状況
だが、真夏の琵琶湖のドラゴン大会は、どの会場でも全て
超逆光になる為、そう簡単な撮影では無いのだ。
さて、スタート後約1分の200m地点、全艇ほぼ横並びだが
微妙に順位差が出ている。ただ、まだこの順位は暫定だ、
ターンを廻り終わった瞬間の順位で、ほぼ結果が決まる。
ターンに差し掛かる、この瞬間がレースを左右する。
先頭は5レーンの「龍人」と、2レーンの「からしれんこん」
しかし、この差は微妙なところ。
次いで、3レーン「池の里」がターンに突入。
4レーン「小寺」は、少しだけ遅れている。
予選と準決勝での全開走行と、沖のレーンでの水流悪化が
影響しているのだろうと思われる。
1レーン「シルバニア」とほぼ同時に他艇からワンテンポ
遅れてターン突入。しかしこの両者はターンが上手い。
・・と、ここで、地元強豪1レーンの「シルバニア」が
「スーパーターン」を繰り出す!
この絶妙なターンで手前「シルバニア」は順位を3つも上げ
トップの「からしれんこん」と、立ち上がりでほぼ並んだ。
3レーン「池の里」は、やや遅れて3位相当。
5レーンの「龍人」は、またオーバランか?
望遠レンズの視界から見え難いが、順位を落とした模様だ。
ターン後の時点での暫定順位は、「からし」「シルバニア」
「池の里」、そして「龍人」?「小寺」?の順だ。
ここから後半の予想だが、予選タイムは「池の里」が
最も速いが、もう彼らはヘロヘロだ、そして1名欠員の
状態も解消されていない。
であれば、「からし」と「シルバニア」の一騎打ちだ。
どちらも予選タイムは3分30秒付近だが、彼らには
もう1段上のギアが隠されているはずだ、あとは
その秘密兵器が、どこまでのパワーを持っているか?だ。
・・と、ここでアクシデント発生!
4~5レーンの「小寺」「龍人」が止まってしまっている。
接触か? スピンか?
状況は良くわからないが、とりあえず、その付近を2~3枚
写真を撮っておき、トップ争いにまたカメラを向ける。
レース後に彼らに話を聞くと、ターンの際に「小寺」に
落水者が出て、そのままレースを進めると巻き込まれる等で
危険な為、2艇は停止し、落水者の救助を行っていたらしい。
(写真の1枚に写っていた。下写真右手に落水者。左ボートの
「龍人」が「あそこに居る」とパドルで指し示している状況)
さらに後日に話を聞くと、落水した選手(名前は伏せておく)
からは、「体幹をもっと鍛えなければ!」との事であった。
ターン時に艇は大きく傾く為、バランスが崩れて落ちたの
かも知れない。
しかし、超ベテラン選手でもある。もう十分すぎる程、
体幹は鍛えられているとは思うのだが・・(笑)
まあ、怪我などの大事には至らず、そこは幸いであった。
で、これで彼らは、残念ながら「優勝争い」から脱落だが、
あくまで救助優先だ。それに、ここで落水者を無視して
「他のチームだから関係ないよ」とばかりに、
先に進もうものならば、スポーツマン精神に欠ける。
まあやむを得ない、これもまた「ドラマ」なのだろう。
・・さて、後半戦、残り200m、「からし」(写真左)が
ジワリと差を広げる、さすがにベテラン専業チーム、
まだ1段上のギアが残っていた。
対する「シルバニア」(写真右)は、もうあまり速度を
上げれない模様だ、彼らのレコードタイムの3分28秒
あたりで打ち止めになるだろうか? だが上位入賞確実だ。
残り150m、やや遅れていた「池の里」が追いついてきた。
なんという執念!、あれやこれやで、もう「死んでいた」
ように思えたのが、ここでまだ優勝争いに絡んでくる!
この「ネチッこさ」は、まあ「池の里」の長所である。
彼らのホーム大会である「びわこペーロン」で4度の
優勝を遂げたのは、こんな風に、負けそうになっても、
諦めないで、ついて行こうとする強い気力があるからだ。
まあ、ホーム大会の「びわこペーロン」は、思い入れが
あるので当然だが、この「高島ペーロン」で、何ゆえに
そこまで頑張るのか? その理由は、良くわからない、
きっと漕いでいる彼らだけが到達できる、アスリートの
心理状態(ゾーン?)なのだろう。
「池の里」は「シルバニア」をかわして、ついにトップの
「からし」にまで、あと一歩に追いついてきた・・
奇跡の大逆転優勝はあるのか?
いやまあ、それは難しいだろう・・ でも実況放送では、
急速に「池の里」が迫っている事を告げている。
状況だが、既に私の居るターン地点から200m以上も
離れている為、チームの様子等は、もはやわからないが、
意地と意地のぶつかりあい状態となっている事は想像できる。
例年ならば、私はターン直後に撮影地点を放棄してペーロン
艇を追いかけてゴール地点に走るのだが、今日の酷暑だと
「もうそれは、勘弁してよ」という感じだ(汗)
落水アクシデンドも気になるし、ターン地点に居座ろう。
残り数十m、「からし」と「池の里」は、ほぼ横並び。
実況放送は、もう実況ではなく「絶叫」放送である(笑)
もはや、正確な順位は誰にもわからない。
そのまま、ほぼ同着でゴールイン!
・・数分後、ビデオ判定で順位が確定した、
実況放送では5位からの順次発表だ。
5位:4分43秒:小寺製作所(落水アクシデント)
4位:4分39秒:龍人(アクシデント救助)
3位:3分29秒:守のシルバニアファミリー(4年ぶりの入賞)
2位:3分22秒:池の里Lakers!(6年間連続入賞)
1位:3分22秒:からしれんこん(参戦3年目で初優勝)
まあ、とてつもない戦いであった!
事前に私が予想していた優勝タイム3分27秒を5秒も上回った
事からも、死力を尽くした大激戦であった事がうかがえる。
「からしれんこん」さん、参戦3年目にして、念願の本大会
初優勝おめでとう!
なお、これは「からしれんこん」チームとしても、恐らくは
初優勝である(注:ドラゴン系公式戦の範囲)
そして、3分22秒は、彼らのコースレコードでもある。
池の里とのタイム差は、僅かに0.3秒、ほぼ同着と言える。
「松陽台 守のシルバニアファミリー」の胴上げの様子。
今回はレース戦術の大幅な近代化が功を奏したと思う。
これでもう、一流の専業チームだ。
後は積極的に他地区の大会に出場し、そこで戦績を
重ねていけば良いと思う。今後の「松陽台」が楽しみだ。
(早速、次の大会と2つ後の大会で好成績を上げているが、
それらは後日紹介する)
レース後に水遊びをする「池の里」
ずいぶんと楽しそうだ、まあ結果は準優勝だが、これは
とても価値のある準優勝だ。
歴史に残る準決勝と決勝戦をやりきった、という感じが
十分に伝わってくる。
まあ負けても良い、「上手な負け方」というのがあるのだ。
後悔だけしか残らないような負け方をしなければ良い訳だ。
それに、
池「”からし”さんも初優勝できたし、”松陽台”さんも、
ひさしぶりの地元からの入賞だし、これでよかった!」
という発言も「池の里」メンバーから聞けた。
私も、まったくの同感だ、まあ私はチームに所属しては
いない為に、いつも大局的にレースを観戦しているのだが
「池の里」が、チーム自身の都合よりも、そうした全体的
な視点での話をしてくる事には、ちょっと驚いた。
結成十数年、優勝回数6回、ここにきて「琵琶湖の王者」
としての自覚と貫禄が出てきたという事か・・(?)
匠「はい、これでよかったです。後は「びわこペーロン」
を頑張ってもらうとともに、2021年のマスターズまで
なんとか現役継続、そこからは実子(注:かつての
ドラゴンキッズ大会のエリート部隊)メンバーを
補充して、若返りを図ってくださいね」
と「池の里」には伝えておいた。
時刻は午後3時すぎ、陽は高いが、これで本大会は終了だ、
この酷暑の大会の中で誰も倒れなかったのは幸いだ。
日焼けは酷く、汗だくだが、やむを得ない。
さて、ボチボチ帰るとするか、帰路は近江今津駅始発の
新快速姫路行き(特急料金は不用)に乗って帰ろう、
冷房の効いた車内で、楽々座って短時間で帰れる。
次回ドラゴン系観戦記事に続く、
簡単な予告編だが、次の大会も「守のシルバニアファミリー」
と「小寺製作所」との因縁の激戦が繰り広げられる!