2018年7月22日(日)、滋賀県高島市にて行われた
正式名「第27回びわ湖高島ペーロン大会」の模様より。
(以下、「高島ペーロン」)
なお、「琵琶湖」は当用(常用)漢字外の為、近年の
滋賀県での公式に近い文章では、「びわこ」や「びわ湖」
と書かれる場合が殆どだ。(イベント名等も同様である)
本大会の会場は、滋賀県高島市今津町南浜である。
毎年の本大会の観戦記事で会場への詳しいアクセス方法を
述べているので、今回は割愛する。
まあ、ごく簡単に書いておけば、
「JR湖西線、近江今津駅下車、琵琶湖方面に徒歩10分強」
となる。
公共交通機関からのアクセスは、各ドラゴン系大会の中では
かなり良好な部類である(注:たいていは駅から遠い)
今年の参加チーム数は38と例年並みの中規模大会である。
ただし自衛隊関連の1チームが災害支援活動の為、
出場辞退となった。
そう、ここ1ヶ月程の西日本地域は、いくつもの災害に
連続的に見舞われている。
まずは6月18日の大阪北部地震、そして7月上旬の
西日本豪雨、さらには7月中旬からの連続の猛暑日だ。
猛暑については、本大会の当日の、ここ高島市の最高気温
は35℃となっている。ただし、琵琶湖の北西部であるこの
地域は近隣の都会などに比べて2~3℃低い事が常だ。
ここから比較的近い京都市では、7月14日から大会前日
の7月21日まで8日連続の38℃越え、1日おいてさらに
38℃越えが続くという異常事態だ。
また、本大会の翌日の7月23日には、埼玉県熊谷市で
41.1℃の日本最高記録、そして東京都でも初の40℃越え
であった(この猛暑も「災害」との認識となった)
本ブログでは、ドラゴンボートやペーロンの大会が
頻繁に行われるシーズンを、「熱闘」という意味から
【熱い季節】と呼んでいるのだが、この状況では、
「暑い季節」と呼び変えた方が良いかも知れない。
まあでも私は15年以上、ドラゴン関連大会の撮影を
行っているが、その内、単発的に38℃越えになった大会も
ある事はあるのだが、ここまで暑さが続く年は無かったと
記憶している。ともかく、これはもう「酷暑」である。
例年、本大会で多数見かけるアマチュアカメラマンの
来場数も今年は皆無に近い。加えて報道系のカメラマン
も殆ど見かけない。まあ暑すぎて、皆、外に出られない
状況なのだろうと思うが、それは大正解だ。
ボート系の選手やスタッフはともかく、暑さに慣れて
おらず、その対策等のノウハウの無いカメラマンでは、
この酷暑の中での、例えば三脚を立てて等の長時間の
撮影は熱中症リスクが高すぎて危険きわまりない。
(注:勿論、ドラゴンやペーロンの撮影に三脚は不要だ)
さて、前編では、本大会の特徴および、各チームの様子
を伝えていこう。
まず本大会は地元高島市のお祭り的な要素が強いイベント
であり、歴史が長い。
伝統行事的な長崎、相生の各ペーロンを除いては、前記事の
「日本選手権(旧天神大会)」が1988年からで、それがまあ
最古参のドラゴン・ペーロン系のローカル・ボートレース
だとすれば、本大会も、さほど負けていない歴史がある。
他に、このクラスの長寿大会としては「堅田湖族船競争」と
「びわこペーロン大会」がある。
(いずれも滋賀県の大会。
これは滋賀県と、ペーロンの本場の中国の湖南省が
1980年代に友好都市(県省)の協定を締結し、ペーロン艇
が寄贈された事も、この時代から滋賀県でボート系競争が
始まった理由であろう)
本「びわ湖高島ペーロン」は、「相生ペーロン競漕」の
方式を大幅に参考にしている。艇の形状も相生ペーロン艇
を元にしているが、漕手の数は半分くらいにサイズダウン
しており、木製ではなくFRP製の独自艇だ。この為、軽量で
ある事は良いのだが、非常に操船が不安定となる。
結果、蛇行・スピン・衝突・転覆・沈没・落水・故障等の
ありとあらゆるアクシデントが、高い確率(他の一般的な
ドラゴン系ボート大会の200倍程度!の頻度)で起こり、
私は「日本一デンジャラスな大会」と呼んでいる。
しかし、運営面での安全対策は十分であり、大きな事故と
なった事は、かつて一度も無い。そして「地元のお祭り」
的なもので、これより遥かに危険な祭りは世の中にいくら
でもある。
さらには近年においては、この「難しい操船」が、逆に
評判となり、腕自慢のドラゴン専業チーム等が、こぞって
これに「挑戦しに来る」という不思議な状況にもなりつつ
あるのだ。
よって、近年では「お祭り的要素」が年々減っていき、
どんどん競技志向が強くなって来ているが、反面、地元の
ビギナーチームが入賞できる可能性は皆無となってしまった。
大会環境は非常に風光明媚、水が綺麗で、選手の家族の
子供達や、選手すらもが湖水浴をしながら大会観戦が
出来るという贅沢な環境だ。まあ、あまりにレースの艇に
近づいてしまうと危険だが、琵琶湖の子供達は慣れている
のか、そのあたりは良くわかって行動している。
さて、本大会のレギュレーションであるが、
クルー(乗艇者)数は18名、内、漕手が15名で、他に
舵手、指揮者(船長、アカトリ)、ドラ打ち(ペース指示)
そして陸上待機の監督(クルーの安否確認等)による
全19名が1チームだ。
漕手の減員に対しては肝要なルールであるが、数名程度
少ない場合は、当然、漕力が不足してペースダウンする。
ただ、他のドラゴン系の艇よりもペースダンの割合は
少なく、「全体の漕ぎおよび舵のバランス」がより重要だ。
距離は600m。300m進んでターンしてゴールに戻って来る。
これは「相生ペーロン」での予選の距離と同じだ。
ただし6分以内にゴールできないとタイムアウト失格だ。
カテゴリーは現時点では単一(オープンのみ)である。
しかし過去には様々なカテゴリー分けが試されていて
運営側の話では「毎年の参加チームの状況を見ながら、
柔軟に変えていく」そうである。
レースの基本は4艘建てで、決勝戦のみ5艘建てである。
レースフローだが、4艘建て各予選の1位のみ無条件で
準決勝進出。参加チーム数によっては、割り切れずに
準決勝枠が余るので、敗者復活戦を行い、タイム上位の
数チームが準決勝に進める(今年は2チームのみ)
次いで準決勝の各レースの第1位は決勝進出確定。
決勝枠の5艇に満たない場合は、準決勝のタイム上位が
決勝進出だ(今年はこれも2チーム)
レースの見所だが、非常に多数ある。
本ブログでは例年の末、私が観戦した各地の各大会から
優良であったものを集め「ベスト大会編」として紹介
している。その為の評価の項目はいくつかあるのだが、
「観戦の楽しさ」という項目において、本大会は毎年
それがほぼ満点、よって「ベスト大会」の上位に、
毎年ランクインしているのだ。
ただ、この大会の参加チームは、近年においては、
地元古参チームと市外ドラゴン専業チームのハイブリッド
状態になりつつある。
地元系チームや運営側ではドラゴン専業チームの情報を
持たず、逆に専業チームでは地元系チームの情報が無い。
が、これを両方知っていれば、本大会は、非常に興味深い
大会となりうるのだ。
現状では残念ながら、殆ど全ての大会関係者、観戦者は
もとより、報道系記者等でも本大会に係わる参加チームの
詳細情報を知らない。
よって、本大会の魅力を理解あるいは、外部に伝える事が
難しい状況になっている訳だが、まあ、本ブログにおいて
できるだけその「観戦の面白さ」を伝えていく事にしよう。
なお、私の場合は本大会は2014年から観戦しているが
今日の観戦前に、2014年からの殆どのレース内容を復習
してきて、順位や優勝タイム等も全て暗記してきている。
今日もいくつかのチームの選手と雑談していて、数年前の
レースのタイムを次々と私が暗唱して、正解(注:大会の
パンフレットには歴代の記録が載っている)していたので、
皆、驚いていたのだが、これはクイズ(?)に答えたいから
という訳ではなく、実は、観戦の面白さを増強し、撮影位置
の決定を効率的にする為に自主的にやっている事だ。
ちなみに、本大会のみならず、他の大会の結果も合わせて
覚えておくと、「人間ドラマ」への理解が倍増する。
勿論、写真を撮る上で、これは重要であり、どこのチームが
強いのかがわからない状況では、レースの写真を撮る場所も
決めれないし、過去や当日の戦績がわからなければ、
各チームの選手達に話しかける事も容易にはできない。
それらが出来なければ写真など撮れる筈も無い訳だ。
他に、この事を実践するカメラマン(アマ、プロ共)は皆無に
近い状況だが、極めて有効な措置である事を伝えておく。
さて、順次、本大会における、その見所を紹介していこう。
*パワーアップした「松陽台」軍団
地元最強チームの「松陽台」は、10年程前の本大会では
多数の入賞および優勝経験を持ち、サブチームも複数
編成する程の大勢力であった。
2012年には、ドラゴン専業チーム「小寺製作所」と
「池の里Lakers!」が、高島市外の大津市から参戦開始、
彼らは初参戦の年は、いずれも真っ直ぐ進めず戦績なし。
(この年、松陽台は隼優勝)
翌2013年は「松陽台」が優勝したが、両専業チームが2位
3位に入賞、さらに翌年2014年には「小寺」が初優勝、
池の里が2位、ここで松陽台は3位に甘んじている。
以降ずっと専業チームの優位が続き、おまけに専業チーム
の数は年々増えていき、「松陽台」は、入賞も出来なく
なってしまっていた。
地元の本大会では最強と言われていたのだが、ドラゴン界の
実力値を初めて知った「松陽台」は、その頃から各地の
ドラゴン大会に参戦するようになる。2年ほどまったく
勝てない時期が続いたが、その間「松陽台」も無策だった
訳では無い。まずチームを若手とベテラン層に分割し、
これまでの地元ペーロン寄りの練習から、若手チームは
ドラゴン寄りの練習を開始したと思われる(注:フォーム
やペース等を見ていると、だいたいわかる)
成果が出たのが2017年の「堅田湖族船競争」であった。
ここでは「松陽台」はダブルエントリーであったが、
前年優勝の強豪「小寺製作所」を、松陽台の若手チームの
「松陽台 守(もり)のシルバニアファミリー」が、
ついに破って優勝をもぎとったのだ。
松「初めて小寺さんのチームに勝つ事が出来ました!」
と非常に喜ぶ松陽台。ドラゴン系大会でも初優勝だ。
さて、それから約1年、私は、今年初めて「松陽台」を
レースで見たのだが、彼らは恐ろしく変貌していた。
まず、「レート(ピッチ)配分」という概念が加わった。
これまで各大会で彼らは、ある意味「適当」なペースで
漕いでいたにすぎない。
しかし、今年から、「スタートピッチ」、「巡航レート」
「ラストスパートピッチ」を明確に意識し、漕手はそれを
遵守しているのだ。
これは若手(シルバニア)も、ベテラン(伝説・レジェンド)
チームもいずれも同様だ。
特にスタートピッチは恐ろしく速く、見た目では
90(回/分)以上にも到達している。
これは、ドラゴン専業の中でも(超)強豪チーム並みの
ピッチであり、いわゆる「ロケットスタート」が実現
されている。ただ、勿論そのハイペースでは、いつまでも
は持たない、だから、適宜、所定の回数を漕いだ後は、
ピッチを落とし、いわゆる「巡航レート」となる。
そのまま巡航レートでレースの大半をこなし、終盤戦で
他チームの様子を見ながら、ラストスパートのピッチを
決定して勝負をかけてくるわけだ。
極めて合理的な戦術であり、強豪ドラゴン専業チームで
あれば、たいていこれをやっている。
「松陽台」は、ここ数年間の各ドラゴン大会への参戦から
強豪チームを見てきて、この方法論をマスターしたので
あろう。
匠「う~む、今年の「松陽台」は手ごわそうだ」
そして、この「松陽台」の成長が、他の専業チームをも
慌てさせ、準決勝から決勝にかけての「ドラマ」に繋がる。
その話はまた後述しよう。
*新規参入チーム
本大会では、地元系ビギナーチームも毎年少しづつだが
入れ替わりがある、市外からの新規参戦には「ようこそ賞」
という表彰があるので、仮に予選敗退しても表彰式までは
残っておくのが望ましい。
それと「南新保プリプリティーズ」は、恐らく10数年ぶりの
カムバックである、こういう場合にも特別表彰がある
ケースが多い。
ドラゴン専業、準専業チームの新規参加も毎年少しづつ
増えている。
今年は、大阪から強豪の「吹田龍舟倶楽部」(上写真)
が参戦。
大津市からは「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」も初参戦。
さらに、大阪府堺市から「ドリーマーズ」(下写真)も
初参戦だ。
ただし、「吹田龍舟倶楽部」は初参戦ではなく、7年程前、
当時あった「女子の部」に参戦して優勝しているそうだ。
専業&準専業チームの総数だが、非常に増えてきている。
まず、「琵琶湖の三国志」と呼ばれている3チームがある。
「池の里Lakers!」「小寺製作所」「龍人」(どらんちゅ)
である。
この3チームは、例えば毎年の「びわこペーロン大会」や
「ドラゴンキッズ」、そして本「高島ペーロン」で毎回
激戦を繰り広げ、たいていこれら3チームが上位に入賞
するという強豪、かつ良きライバル関係だ。
特に、近年での本大会の優勝チームは、2014年より、
小寺、池の里、龍人、池の里、と日替わり状態となっていて
毎年どこが優勝してもおかしくない。
ここに、今年はさらに「琵琶湖の雄」と呼ばれていれる、
「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」が参戦している(下写真)
これで「琵琶湖四天王」(または琵琶湖オールスター)と
呼ばれる、滋賀県の強豪専業チームが全て集結した。
大阪チームも戦力アップだ。
「からしれんこん」は2016年の結成初参戦が本大会となった
2016年4位(注:アクシデントあり)、2017年3位、と
順位を上げてきている。「今年は初の滋賀県外優勝を狙う」
と意気込みは強いが、実はかなり昔の本大会初期の頃に
長崎と相生の強豪ペーロンチームが各1回優勝しているし、
近年では女子の部ながら、前述の「吹龍」の優勝がある。
そして、その「吹田龍舟倶楽部」も満を持して参戦、
さらには、高石(堺泉北)大会で優勝多数で、他地区の
大会へも参戦している大阪府堺市の「ドリーマーズ」も
今回本大会に初参戦である(前述)
準専業としては、京都府の「メタルスタイリスト福田」
も昨年(タイムアウト敗退)に続き参戦している(下写真)
「メタル」は数年前の結成で、京都宇治大会をホームとし、
そこでは最高位4位が3度ある、他地区大会にも積極的に
参戦していて、どこかで入賞(3位以上)を狙いたいところだ。
地元強豪チームの様子だが、前述の「松陽台」は、
若手(シルバニア)、ベテラン(伝説)の他、女子チーム
「トマホープ555」を編成して大勢力だ。
女子チームは、現状まだ男子に比べて漕力不足があるが、
他にも女子だけのチームが存在してるので、またいずれ
女子の部のカテゴリーが出来た際には優勝候補となりうる。
地元古豪としては「VICTORY南浜」や「SPIRITS」が居る。
各地からの専業チーム参戦前(~2012)では、各々入賞
や優勝経験があるが、専業チームが増えてきてからは
入賞困難となってしまった。それでも、各々決勝戦進出
まではあるので(SPIRITSは昨2017年決勝5位)、ともかく
決勝戦に進み、一発勝負をかけていきたいところであろう。
他には、ENT(上写真)、中野ガンバルズ、北深会
ヴォーリズあたりも、長年参戦を続けているチームだ。
「フレンドシップ」という、地元チーム専用のカテゴリー
があった際には上位入賞もあったチーム達だが、近年の
単一カテゴリーでは、残念ながら専業チームは歯が立ち
そうにない。
それから、地元チームはメンバーの世代交代も意外に
多い模様であり、例えば数年前の「北深会」は、極めて
フォームが美しく、ターンも地元チームの中では1,2を
争う見事なもので、私が撮った写真が本大会のパンフの
表紙写真にもなっているくらいだったが、昨年は何故か
迷走して失格となってしまった、今年はどうであろうか?
それから高島市役所チームも複数参戦している、
いずれもビギナーチームで、数年前では、迷走などが
頻発していたのだが、それでも、数年間出場を続けると
そこそこ慣れてきて速くなってきた。
今年も「わたぶ~」(参戦6年目)や「チーム うさぎさん」
(参戦4年目)あたりは、そこそこ良い所までは行くかも
知れない。まあ、「いつまでもビギナーでは無い」という
事であり、なんとなく頼もしい。
*予選の見所
さて、予選の状況であるが、10レースある、
殆どのレースは4艘建てで、一部3艘建てだ。
この予選は「1位抜け」である、つまり1位になれば
黙って準決勝進出、2位以下は敗者復活戦だが・・
今年の敗復は、チーム数の関係で、2チームしか残れない、
という結構シビアな状況だし、アクシデントの確率も高く、
おまけに極めて暑い、できれば「勝てる時に勝っておいて」
1位抜けしておきたい状況だ。
すると注目点は2つ、まず、同じ予選レースに、複数の
強豪チームが固まっているか否か?
それから、アクシデントの発生可能性をどう意識するか?
である。
かつて、準決勝に上がったビギナーチームはいくつもある。
例えば、予選レースで最後尾から必死に漕いでいたが
前を走る他のチームが次々に、スピンや衝突で大きな遅延や
失格となってしまい、その隙に後ろからのんびり漕いで
来たチームが勝つという、まるで「ウサギとカメ」の
ような状況である。
まあただし、そうして運よく準決勝に進めたとしても
ビギナーチームでは、残念ながら、まずそこから上には
勝ち上がれない。
ただ、強豪チーム同士であれば、相手のアクシデントに
僅かながらも期待する要素もあるだろう、でもその点は
相手も同様だ、だから、結局のところ「ミスが少ない
チームが勝つ」という事となり、まあ単年では、ミス
しない為にペースダウンして慎重になりすぎ勝てない、
という事もあるかも知れないが、数年という単位で見た
場合、必ずミスの少ないチームの方がトータルで入賞
回数や順位などの優位性が出てきている訳だ。
ちなみに、本大会でのアクシデント数だが、
レースコンディションが比較的良かった為もあり、
「衝突」「転覆」といった重度のアクシデントは2件のみ
である(毎年平均4~5件、多い年で10件程度)
が、蛇行、スピン、落水などの中度のアクシデントの
数は例年にも増して多かったような気がする。
7月上旬の西日本豪雨の影響で琵琶湖の湖水面は基準値
よりも約1mも上昇した。そこから約2週間の瀬田川全開放流
により、本大会の前日あたりには、水位はほぼ基準値まで
戻り、ダム等の放流もストップしたばかりであった。
(注:こういう事も大会観戦の前に調べてきている)
だが、琵琶湖は巨大な湖だ、水位が下がったから、それで
水流等も安定したか、というと、恐らくそんな単純な話
ではなく、大きな水流のうねりは続いていたかも知れない。
ほぼ水平位置からで湖面を見ると、岸から離れた第4レーン
や第5レーン(決勝のみ使用)のあたりでは、水面の
感じや水流が異なるように見える(注:ヨットレース等で
言う「潮目を読む」) だから明らかに水流は違うのだが
それ以上の、あまり詳しい事(それがレースにどう影響
するか等)はわからない。こういう「潮目を読む」事は
地元の漁師さん等を含むチームは出来るかも知れないし
事実、以前にそういう話も聞いたが、仮にその「潮目」が
わかったとしても、クルー全員が、それにどう対処するべき
かは、そう間単にはわからないであろう。
そして事実、今日は予選の段階から最も沖の第4レーンで
蛇行やスピンが多発している。実況解説の方もそれに
気づかれた模様で「魔の第4レーンですねえ」という風に
言われていた。まあでも、慣れたチームでは、それも関係
無い模様であり、そこもまた操船技術のスキルによって
決まるのであろう。
では逆に、岸に近い第1レーンはどうか?というと、
こちらも見たところ、余り良くない。
琵琶湖の水位が下がったのは良いが、恐らく下がり
過ぎているのだ。その為、ターン地点あたりでは、
かなり水深が浅くなっているのではなかろうか?
強豪チームですらも、第1レーンでのターン直後で、
ガクンと失速してしまうケースを何度か見た、
これもまた、やりにくいレーンであろう。
では、4レーンと1レーンが不利で、2、3レーンが
有利なのか? 実は、そこもなんとも言えない。
ドラゴンやペーロンは、「自然」を相手にする競技だ、
レーンコンディションは生き物のように時間や状況によって
変化する、さっきまで良かったレーンが次のレースでは
「魔のレーン」となる事も多々あるのだ。
ではどうするか? 「運を天にまかせる」のか?
いや、そうでも無いであろう、実のところ、スキルが高い
チ-ムであればある程、そうした細かいコンディションの
変化に敏感であり、かつ、それに対処する経験値を持って
いる。だから超強豪チームともなれば、コンディションの
変化は苦にならないどころか、むしろ歓迎なのだ。
他のチームが水流やら風やらの変化で四苦八苦する中、
自分達のチームは、それの影響を受け難い状況なので、
結果的に有利となる。そして、そうして勝った経験を
積めば積むほど、さらに、その「対コンディションの
克服能力」は磨かれていく。
結局は「運を味方につけるのも実力の内」という事だ。
予選レースでの注目は、以下である。
第3レース「びわにゃん」(琵琶湖ドラゴンボートクラブ)
対「吹田龍舟倶楽部」
第5レース「松陽台伝説(レジェンド)」対「からしれんこん」
第10レース「松陽台 守のシルバニアファミリ-」対
「小寺製作所」
他のレースは、専業または強豪チームが含まれる場合、
もう1位は、ほぼ確定している。
「レースはやってみるまでわからない」と言う、ごもっとも
な意見もあるだろうが、それは楽観的すぎる見解だ。
私が過去5000回以上ものレースを見てきた経験から言えば、
「強いチームが勝つ」のは確定的であり、これはもう
100%の事実だ。
まあ、高校野球等であれば、精神面の要素も強く、強豪チーム
ですらもちょっとしたきっかけで脆く崩れてしまうケースも
多々あるが、ドラゴンやペーロンでは、そういう精神面の
影響はあまり多くは無い。
あるとすれば「アクシデント」の要素であろう。
でも、前述のように強いチームほど「アクシデント」は
起こり難い。
本大会においては、ここ数年間での専業チーム数平均を4とし、
その平均レース数を3.5、年数が4年だと、およそ計60レース。
内、専業チームが重度のアクシデントに見舞われた数は、
およそ3回であるから、その(失敗)確率は、約5%だ。
これは、ドラゴン界全般でのアクシデント率が約0.1%なので、
50倍ほど高いのだが、それでも、本大会ではビギナー層を
含めたアクシデント率(約20%、ドラゴンの200倍)よりも
ずっと低い。
それから、上記は順位戦などへの影響が出る「重度」の
アクシデント(スピン、転覆、落水等)率だ。
そこまでいかない「ヒヤリ」としたケースは、いくらでも
あるだろうが、その場合でもスキルが高いチームは立て直す
ことができ、そうでなければ、そのまま転覆などの最悪の
ケースに繋がる。
まあ、やはり「強いチームはアクシデントに見舞われ難い」
という事は確かであろう。
で、上記の予選レースの結末だ。
第3レースは、「びわにゃん」の勝利。
第5レースは、「からしれんこん」の勝利であった。
が、この場合、勝ったチームのタイムは、もうほぼ無関係
であり、ここで2位となったチーム、すなわち、
「吹田龍舟倶楽部」「松陽台伝説」のタイムがとても重要
になる。何故ならば、彼らは敗者復活戦に進み、そこでは
ほぼ予選そのままのタイムとなるだろう。今年の敗復は
タイム上位の、たった2チームしか準決勝に進めない。
であれば、これらのチームが恐らく敗復でもタイム上位
となり、準決勝へ進む為の参考基準値となる。
さて、第10レース「松陽台 守のシルバニアファミリ-」
対「小寺製作所」だが、ここはちょっと特殊なケースだ。
ここでは「レースフロー」を読み込まないとならない。
つまり「ここで勝ったら、次にどのチームと当たるか?」
である。これが予選最終戦なので、準決勝の組み合わせは
大半が既に確定している。
で、ここで1位となったら、準決勝第3レースで
「池の里Lakers!」と「龍人」と当たるのだ(汗)
どちらも、ごく近年の本大会優勝チームだから、それらを
両方かわして準決勝1位抜けでの決勝進出は困難である。
まあ一応、2位以下でもタイム順で決勝に進めるが、できれば
彼らと当たらずに、他の、強豪が少ない準決勝戦に入って
そこで1位を取って決勝に進んだ方が、はるかに楽だ。
が、残念ながら、レースに出ている2チームには、その
「組み合わせが大半確定」の情報は届いていない。
さて、レースが始まると、「松陽台」(シルバニア)が、
前述の「ハイピッチ」による「ロケットスタート」を
繰り出す。これは「小寺」がかつて得意としていた戦法だ。
その「小寺」をも上回る「松陽台」の速さである。
「小寺」は衝撃を受けた事であろう。
加えて昨年2017年の「堅田船競争」で、小寺は松陽台に
破れている・・ それからは初の直接対決、昨年の敗北が
脳裏に浮かんだのか?小寺は激しく動揺したかも知れない。
まだ予選なのに、ここから「ガチンコモード」(真剣勝負)
に突入してしまった。
で、予定どおり「巡航レート」に入ってペースダウンした
「松陽台」を「小寺」が激しく追う。
ここは「小寺」に無理なペース負担がかかっているが、
もう「意地」があるのでしかたが無い。
競り合ったまま、両者同時にターンに突入。
そして、実は、私が見るかぎり本大会で最もターンが上手な
2チームが彼らなのだ、ここもまた「ターン勝負」を絶対に
譲れない、上手く回った方が勝ちだ。
思えば、昨年2017年の「堅田湖族船競争」で、「小寺」は
決勝戦のターン勝負で「シルバニア」に負け、約3秒差を
ひっくり返されて準優勝に甘んじていたのだ。
意地でもここは負けたく無い。
・・さて、両者見事なターンで帰路へ、差は殆ど無い。
残り150mと、早い段階から両者ラストスパート、
相手には絶対に負けたく無い、完全な意地の張り合いだ。
しかし、陸上から見ている一部の選手たちは知っている。
このレースで勝った方が、最も厳しい準決勝に出る事に
なるのだ。そうであれば、勝つ必要は無いではないか(汗)
いや、むしろ2位になった方が準決勝を有利に戦えるのだ。
だが、今、現実に競っている彼らは、そんな事は知らない。
最後までギリギリの勝負を繰り広げ、コンマ差で「小寺」が
1位となった。
匠「あ~あ、小寺さん、やっちまったよ(汗)」
私のみならず、状況がわかっている「池の里」や「龍人」
の選手達からも「ザワザワ」と、様々な声が聞こえる。
これでもう、準決勝は「三国志」の大激戦必至だ。
そこから決勝戦に上がるのは、その3チームが揃って
好タイムを出すしか無い。まあ、実際にもそうなるだろう
とは予想できるが、多分、そこでは「全力投球」になる。
決勝戦は、その準決勝の僅かに20分後の開催だ、
この酷暑の中で激戦をやった後での、続けての決勝戦は、
いくら3強チームと言えど、恐らく体力も気力も残っては
いない事だろう。
例年どおり「優勝チーム予想投票」があるならば、ここで
あえて「池の里」「小寺」「龍人」の3強を外して投票
すれば良さそうだ。しかし今年は何故かその「予想投票」が
無くて、代わりに「ジャンケン大会」による賞品争奪戦と
なっている。
まあ、予想投票は色々と予備知識が必要なので、観戦客には
困難な話だ。よって「ジャンケン大会」の方が公平性が
強いのだろうが・・ 参加は子供達ばかりだ(汗)
ここに混じるのも大人気ない、まあ今年はそれには
不参加としよう。
さて、昼休みが終わればいよいよ準決勝だ、その模様は
続く後編で紹介しよう。