本シリーズは、所有しているミラーレス機の本体の詳細を
世代別に紹介して行く記事だ。
今回はミラーレス第三世代=発展期(注:世代の定義は第一回
記事参照)の PENTAX Q7(2013年)について紹介しよう。
装着レンズは2種類用意しているが、まず最初は、
PENTAX 04 TOY LENS WIDE 6.3mm/f7.1 を使用する。
(ミラーレス・マニアックス第31回、第55回記事参照)
以降、本システムで撮影した写真を交えながら記事を進める。
なお、毎回そうだが、記事内容と(本体説明写真以外の)写真
の内容の関係は無い事と、写真は本体機能のみの設定範囲での
撮影で、PC等でのレタッチ(画像加工等)は施していない。
が、今回は、本機PENTAX Q7の優秀なエフェクト機能を使用
した写真を中心とする。
さて、本機Q7の話の前に・・
まず、PENTAXのミラーレス機には2系統が存在する。
1つは銀塩時代の1975年から続くPENTAX Kマウントを採用した
もので、これはK-01(2012年)の1機種しか存在しない。
(デジタル一眼第14回、本シリーズ第9回記事参照)
K-01については「孤高のKマウントミラーレス機」で、極めて
個性的ではあるが、残念ながら後継機の可能性は無いであろう。
そして、もう1つのミラーレス系列が、本機Q7を含む
「Qシリーズ」である。
Qシリーズの出自であるが、ちょっと歴史を振り返ろう。
銀塩時代、PENTAXはフィルムメーカーでこそ無いが、
各種のフィルム・フォーマットに対応した様々なカメラを
発売していた、著名な製品は中判(ブローニー)フィルムを
使用するPENTAX 67シリーズとPENTAX 645シリーズであろう。
大面積のフィルム(6x7cm、6x4.5cm)を用いた圧倒的な
描写力は、大きく、重く、高価で、しかも撮影枚数も少なく
現像コストも高い、という五重苦(?)を乗り越えて、なおファン層
は多く、銀塩時代の末期まで愛用者が多かったシステムである。
この大型化志向は、その後のデジタル時代になっても続き、
超大型のイメージセンサーを搭載したPENTAX 645D(2010年)や
645Z(2014年)が発売され、固定的なファン層を掴んでいる。
一方、小型化の方だが、
1979年に、110(ワンテン)フィルムを使用する、唯一の
レンズ交換式一眼レフPENTAX auto 110(ワンテン)が
発売された。
全ての交換レンズ(6種類)がF2.8固定絞り値である等の
仕様的な制限はあるが、極めてマニアックなカメラの為
これもファンが付いていた。
このカメラは1990年代に一度入手したが、扱い難い110フィルム
であった為、殆ど撮らずに譲渡してしまっていた。
なお、1983年に後継機auto 110 SUPERが発売されたが、
こちらは販売数が少なく、セミレアとなっている。
その後、しばらくはauto 110の事は、皆、忘れていただろうと
思うのだが、例えばオリンパスに名機PENやOMがあるように、
PENTAX党のマニアやPENTAX自身でも、このカメラの事は
「伝説」となっていた事であろう。
2010年、突然、PENTAXより「Optio I-10(アイテン)」が
発売された。このカメラはコンパクト・デジタル機であるが、
その外観形状は昔のauto 110にそっくりだった。
良く見ると、製品名のI-10も110を彷彿させるネーミングで
面白い。私もかなり興味を持ったのだが、勿論残念ながら
レンズ交換ができるカメラではなく、「いつか中古が出たら
買っても良いか」位に思って放置する事にした。
そうこうしているうちに、
2011年、レンズ交換が可能な超小型ミラーレス機、
「PENTAX Q」が発売された。
匠「なんだ、こちらが本命だったのか! すると去年の
I-10は、小型機戦略を盛り上げる為の前哨戦みたいな
ものだったのかな?
わかった、じゃあ、こちらのQをデジタル版の110と
見なす事にするか・・」
しかし、PETANX Qの仕様を良く見ると、1/2.3型の超小型の
CMOSセンサーだ、まあ、本体の小型化の為には、やむを得な
かったのだとは思うが、これでは、それこそ前年のコンパクト
Optio I-10と同じサイズだ。であれば、むしろI-10はCCD型
だし、そっちの方が、やっぱり面白いかな?と迷い始めた。
2011年と言うと、他社のミラーレス機のセンサーサイズは、
既に普及しているμ4/3型か、新鋭SONY NEXのAPS-C型だ
(注:ニコン1シリーズはPENTAX Qよりも数ヶ月ほど後に
発売された)そんな状況の中、1/2.3型はあまりにも小さい。
で、1/2.3型センサーは、既に発売から2年を経過していた
GXRのP型ユニットでも使われていたが、GXRにおいても、
APS-C型のA12ユニットが優秀で、P型は「コンパクト機と同じ」
と不人気であった(本シリーズ第2回記事参照)
レンズ交換式ミラーレス機としては、ちょっとがっかりする
仕様である。私はQもI-10も買う気がしなくなっていた。
(注:PENTAX Qは後年にCCTVレンズ母艦として購入済み。後述)
ただ、この時は、私は、PENTAX Qに搭載されていた
エフェクトの事は完全に見落としていたのである(汗)
世間もまた、エフェクト(デジタルフィルター)については
殆ど注目しておらず、皆は、超小型機である事と、焦点距離
の換算倍率が 5.5倍にもなる事から、アダプター使用時に
ほとんどのレンズを超望遠にしてしまう、という点に、
気を取られていたと思う。
が、むしろ私の興味は、Qシステムの純正レンズ群にあった。
Qシステムには「ユニークレンズ」シリーズと呼ばれる、
以下の純正トイレンズが存在する。
03 FISH-EYE 3.2mm/f5.6
(ミラーレス第2回,第10回,ハイコスパ第7回)
04 TOY LENS WIDE 6.3mm/f7.1
(ミラーレス第31回,第55回,本記事)
05 TOY LENS TELE 18mm/f8
(ミラーレス第41回,第65回)
07 MOUNT SHIELD LENS 11.5mm/f9 (注:2013年発売)
(ミラーレス第4回,第14回,第34回,ハイコスパ第24回)
これらは価格も高くなく、いったいどんな「酷い」(笑)
写りをするのか?とても気になる。
なにせ、国内のカメラメーカー純正のトイレンズなど、
今まで殆ど無かったのだ(あるとすれば、「ニコンおもしろ
レンズ工房」くらいか? まあでも、そのレンズ群は写りは
かなり良く、トイレンズとは言い難い)
2012年、続くPENTAX Q10では、その少し前からPENTAX機で
採用していた「オーダーカラーシステム」が可能となる。
しかし、この時代既に「色つきボディ」は、当たり前であり、
オーダーカラー本家のPENTAXと言えども目新しさは無かった。
そして、依然センサーサイズが1/2.3型のままであったし、
外装が金属からプラスチックスにダウングレードされた。
(注:オーダーカラー塗装の自由度を高める為だと聞く)
私は、この機種も見送る事にした。
(注:後年、PENTAX Q10 エヴァンゲリオンモデル という
限定塗装品が出て、「綾波レイ」バージョンが欲しかった
が、中古でも高価であった)
2013年、本機 PETANX Q7の登場である、
センサーサイズは1/1.7型と大型化。これでやっと2000年代
の高級コンパクト機(例:GR DigitalⅢ等)と同等になった。
Qの発売当初から「Qシステムのマウント径は余裕がある」
と世間では言われてはいたが、やっとここで、センサーの
大型化が実現した。ちなみに換算焦点距離倍率は4.6倍だ。
私も、ようやく重い腰を上げ、Qシステムのマウントアダプター
で何が発売されているのか?をチェックした。
その中に「Cマウント→Qマウント」が存在するのを確認すると、
そこで「PENTAX Q7」を「購入予定リスト」に追加した。
ちなみに「購入予定リスト」とは、私が優秀と認めたカメラを
ノート(実際にはPC上のデータだが)に書きとめておき、
「いずれ安価な中古が出たら買う」という予定を記載する
一覧表の事である。
この時点で私が想定したシステム構成は、
Q7本体+純正トイレンズ群数本+CCTV(監視カメラ等)用
Cマウントレンズ群数本、である。
(注:カメラとレンズの金額構成比を1対4とする持論がある)
大型化したとは言え、コンパクト機なみのセンサーサイズだ、
まともな写りを期待するレンズは1本も要らない。アダプターも
Cマウント用が1個で十分だ、遊び専用機にしてしまえ・・
という考え方だ。
なお、Cマウントには拘りがあった、それ以前からCCTV用レンズ
を所有していて、既にμ4/3機にそれを装着していたのだが、
CCTV用レンズは1/3型~2/3型のセンサーに対応するイメージ
サークルであったので、比較的センサーが小型のμ4/3機と
言えども、勿論ケラれてしまって快適には使えなかったのだ。
(注:Q7購入後、CCTV用レンズの所有数は7本にもなった、
いずれ他の記事で、まとめて紹介する)
確か2010年頃にKENKOからCマウントのレンズ交換式カメラ
の試作品が発表されていた。それにはかなり期待したのだが、
そのカメラは試作のみで終わり、実際には発売される事は
無かった。恐らく展示会などでのユーザーの反応が鈍かった
のであろう。まあCCTV(監視カメラやマシンビジョン)の
世界は、巨大マーケットではあるのだが、一眼レフ等の
カメラユーザーは、その世界の事を全く知らない。
同じ光学機器で、しかも同じ交換レンズであるのに、両者は
まったく接点が無いのだ、どんなカメラマニアであっても、
CCTV用レンズの話をスラスラと言える人は皆無であった。
CCTV用レンズは、世の中にはいくらでもあるとは言え、
カメラ店でそれが売られているのは見た事が無い。
そんな状況で、それの知識を持っているカメラマニアの方が
むしろ不思議な位だ。
まあ、だから結局KENKOのCマウントのカメラ(ミラーレス?)
は発売されなかったのであろう。
「Cマウントの交換レンズは、世の中に多数ある」という
コンセプトだったのかも知れないが、一般的なユーザー層が
誰もその存在を知らないならば、そんなカメラを出した所で
売れる筈も無いので、発売見送りはビジネス的な判断からは、
正解であったと思う。
2014年、後継機、PENTAX Q-S1が発売された。
このカメラの仕様がQ7から殆ど変更が無い事実を確認すると、
私は「型遅れ」となった、Q7の中古を探し始めた。
しばらくすると、Q7の中古を発見できた。
価格は02標準ズーム付きで税込み17000円代と安価であった。
同時に「Cマウント→Qマウント」のアダプターも購入、
まずはCCTV用レンズが快適に使えるか否かの実験だ、
ところが、これの結果が、あまり芳しく無い(後述する)
私は、Q7をアダプター母艦(どんなレンズでも望遠になる)
として使う事を諦め、それ以上のマウントアダプター購入を
中止した。
「ならば、トイレンズでしょう」とばかり、それらの中古も
探し始めたが・・ 集まるまではしばらく時間がかかる。
その間、付属していた02標準ズームを使っていたが、
標準ズームほどマニア的には面白味のないレンズは無い、
すぐ飽きそうだと思って、カメラの機能を色々と探ってみると、
エフェクトに係わる部分が機能および操作系とも、極めて充実
している事を発見した。
「やった! これならば”エフェクト母艦”に使えるぞ!」
そう言えば、Q7以前に中古購入した、PENTAX K-01も、
エフェクト機能が優れていたのだった、Qシリーズにも
同等な機能があって、それが使えるであろう事は、事前に
気づいてもよかったのだが、実のところ、まったく気にも
留めていなかったのだ(汗)
「エフェクト母艦」としての本機Q7の使い勝手は快適だ。
各種デジタルフィルターとカスタムイメージの選択肢や、
その詳細な設定範囲が広い事に加え、両者を組み合わせて
使う事もできる。
加えて、一般的な写真設定(絞りや露出補正、WB等)の
設定も、エフェクト使用時にも有効である。
(これができるカメラは、さほど多くない)
WBには、CTEモード(デジタル一眼第12回K-5記事参照)
もあり、これら一切合財をひっくるめて、自分オリジナルの
エフェクトを作る事ができ、それを最大3種類まで記憶できる。
カメラ前部の「クイックダイヤル」には、USERエフェクトを
含め、最大4種類のエフェクト(または、他の機能も可)を
登録し、撮影中に瞬時に呼び出す事が可能だ。
惜しむらくは、「クイックダイヤル」に登録可能な
エフェクト(デジタルフィルター)は、種類が限られている
事だ。しかし、他のデジタルフィルターを掛けた状態を
仮のUSER設定として登録すれば、それをクイックダイヤルから
呼び出す事は可能だ(注:この設定は複雑なので上級者向け)
それと、クイックダイヤル登録時にしか呼び出せない
エフェクト(例:さくらほのか、AUTO 110モード等)も
あり、メニュー構造は、ちょっと整理されていない雰囲気だ。
で、ともかく、本機Q7の使いこなしの最大のポイントは、
エフェクトにある、優秀なこの機能を使わない事は勿体無い。
ここでQ7の弱点をいくつかあげておくが、まずはピント問題
がある。特に純正トイレンズを使った際に、MFのピント合わせ
が怪しくなる。
これは操作系の問題という意味だけではなく、どうにも、
ピント合わせが正しく動作しないのだ。
具体的には、各トイレンズには、Near←→Farと書かれた、
手動ピントリングが存在するのだが、無限遠の被写体の際、
Far側いっぱいにピントリングを廻しても、ピントが合わない
場合が多々発生する。
この原因は不明だ。レンズの機構的な故障ではないと思う
と言うのも、03,04,05の全てのトイレンズで、これは発生するし、
ピントリングの無い07では、本来中距離にしかピントが合わない
固定フォーカスの筈なのに、それが合う場合と、合わない場合が
あるようだ。
考えられる他の原因としては、Qシステムは、本機Q7より
イメージセンサーサイズが、1/2.3型から1/1.7型に大型化
されている。この為、従来の1/2.3型対応の純正レンズの場合、
イメージサークルが足りない。
この問題を回避する為、Q7ではトリミングした小さい画素数で
いったんレンズからの光を受け、それを画像処理で全画素相当に
引き伸ばしているらしい。
この処理のソフトウェア部にバグがある可能性もある。
まあでも、そのあたりはあくまで想像だ、というのも、
02標準ズームを使った場合は、AFにおいてはピントが不安定
になる問題は発生せず、正常に動作するからだ。
(ただし、02標準ズームは十分なイメージサークルを持つ等、
装着レンズ毎に異なる画像処理をやっている可能性もある。
又、後年に入手したPENTAX Qを使って、上記処理が無い状態で
試しても、若干改善される気もするのだが似たりよったりだ)
が、トイレンズでは、さほど厳密なピント合わせを必要とは
しない。多少ピンボケになったユルい写りの方が面白い場合も
ある。特にエフェクトと組み合わせる場合は、写りに偶然性が
ある方が望ましい場合すらあるので、ピントがたまにしか
合わなくても、さほど大きな問題では無い。
(まさか、トイレンズの、そういう作画上の特徴を狙って
わざとピントボケ量をランダムに変更するような仕掛けが
入っている事はあるまい・・?)
さて、記事後半よりは、レンズを別のものに交換してみよう。
装着レンズは、TAMRON M118FM16 16mm/f1.4
(ミラーレス・マニアックス第4回、第21回、第62回
ハイコスパ第17回記事参照)
こちらはCCTV/マシンビジヨン用CマウントMF単焦点レンズ
である、これが何であるか?を説明すると非常に長くなる、
上記の各過去記事や写真用語辞典記事で、本レンズやCCTV
環境の説明をしているので、今回、そのあたりは割愛する。
本レンズは、Cマウントなので、アダプターが必要だ。
が、マウント・アダプターを使った場合、本機Q7の操作系は
決して快適なものではない。その理由を列記してみよう
1)内蔵手ブレ補正を使わない(OFFにした)場合においても、
電源投入時に、毎回焦点距離設定メニューが表示される。
(なお、十字キー等を誤って操作して、変な焦点距離の
数字が入ってしまった場合、それが記憶され、いつまでも
選択肢として残ってしまう。この選択肢は8個記憶される為
誤った数値を消したい、と思ったら、ダミーの数値を8個
入力し、古いものを順次消していかなくてはならない)
ちなみに、焦点距離を手動設定する事で、EXIFデータには、
それがちゃんと反映されている。
(オリンパス等、他社ミラーレス機ではそれが出来ない)
2)ピーキング機能の精度が低く、MFのピント合わせが
やりにくい(拡大操作系については後述する)
3)JPEG撮影時、自動レビュー(自動再生)の画像の解像度が
出ていない場合があり、ピントが合って撮れたかどうか
わからない。
(これは再生系部品の不良だと思われる。本機に限らず
PENTAX K-01(本シリーズ第9回)、FUJI X-E1(同第6回)等
でも全く同様の問題が発生するので、この時期2012年前後に
カメラに使われた共通部品における欠陥か、同一外注による
ファームウェアのバグかも知れない。当時は、これ以外にも
様々な共通不良があり、東日本大震災(2011)での部品供給
不足の問題かも知れない。しかし、仮にそうだとしても
それに気がつかないカメラメーカー側に責任の大半がある)
4)電子シャッターのみの動作となる
もともと、本機Q7におけるこのあたりの機構は複雑であり
純正AFレンズでは、レンズ内シャッターと電子シャッター
および(デジタル)NDフィルターの設定が複雑に絡んで
明所等でのレンズシャッター速度オーバー(最大1/2000秒)
を回避しているが、非純正またはレンズシャッター非搭載の
レンズの場合は、高速電子シャッターのみで動作する。
(そしてデジタルNDフィルターは、使用できない)
結局MFレンズでの最高電子シャッター速度は1/8000秒となり、
今回使用のCCTV用F1.4レンズ(注:NDフィルター装着不可)
においても、シャッター速度オーバーのリスクが減るが、
電子シャッターのみである為、動体撮影が歪む、手ブレする
と被写体が歪む、PC画面やプロジェクター等の画面を撮影すると
走査線の縞が出る、とった制限があるし、いつシャッターが
切れたかわからず、連写時に快適に使えない。
なお純正レンズにおけるレンズシャッターは、フラッシュ
使用時に全速同調が可能なので、最大1/2000秒まで内蔵
フラッシュであれば使える。これの使い道は多くは無いが
特殊な技法の「疑似夜景撮影」(デジタル・コンパクト・
クラッシックス第2回GR Digitalの項目参照)等には使える
かもしれない。
なお、電子シャッター使用時での内蔵フラッシュの同調
(シンクロ)速度は、1/13秒だが、何故そんな遅い速度に
なっているのかは、良く分からない。
(けど、この超小型機で、内蔵フラッシュがある点は良い)
いずれにしても、このシャッター関連の仕組みは、仕様が
複雑て、このあたりを新たな撮影技法の開発に適用する事
(=用途開発)が困難だ。
5)収差補正が効かない
まあ、これはやむを得ない、近年のデジタルカメラでは
自社の純正レンズを使った時のみ、こうした便利機能が
動作し、アダプターで他社レンズを使用時には、いくつもの
機能が無効になってしまう排他的仕様である場合が多い。
また、多くのPENTAX機では収差補正を使うと連写性能に
大きな制限が出る場合がある。
6)デジタルズーム機能が無い
これは、アダプター使用時のみならず、元々この機能が
本機には入っていない。
課題はこのあたりだが、以前の記事で本機Q7の話をする際、
アダプター使用時に画面拡大操作が出来ない事も重欠点として
あげていた。が、その後、アダプター使用時にも「OKボタン」
を押す事で画面拡大が可能な事を”偶然”発見した。
何故、この機能が無いと思い込んでいたのか?と言えば、
この事は、取扱説明書には書かれていなかったからである。
Q7の取説は、他社の高機能一眼レフのように300~500ページ
もある「本」のようなものではなく、96ページの簡易的な
物だ、これであれば一通り読む事は出来るのだが、簡素に
なりすぎてしまったのであろうか?アダプター使用時の
操作系や制限事項等は、ほとんど(全く)書かれていない。
通常、拡大操作については、MF時の自動拡大機能をONにして
おけば、純正レンズ使用時かつ、フォーカスリングを有効の
設定で、ピントリングに触れると画面が自動拡大される。
さらに、フォカースアシストをONにすると、AF/MFの両者で
ピーキングが有効になる。
・・という旨が、取扱説明書にあるが、まあこれは他機でも
同様である為、理解はし易い。
しかし、取説に書いてあるのは、ここ迄であり、アダプター
使用時の拡大の件は、どこにも書かれてかれていない
(勿論、メニュー上にも、MF時にOKボタンを拡大機能に
アサインする等の設定は何も無い)
なので、偶然、OKボタンに触れてしまうまでは、アダプター
使用時にも拡大機能が入っている事は、わかりようが無い。
「操作ミスをするまで、わからない機能がある」というのも
皮肉な話だと思う。(説明書が簡素すぎたのも問題か・・)
いずれにしても、上記に列記したような理由により
アダプター適性は高く無い、できれば純正トイレンズ系
および、Cマウントレンズの母艦の目的に徹しておき、
他の一眼用レンズにおいては「望遠になる」という見かけ上の
メリットを思い切って諦め、それは他のミラーレス機で使う方
が快適であろう(望遠画角が欲しければ、トリミングをすれば、
だいたいは等価になる、まあデジタルズームが入っていれば
話は若干変わってくるが、本機Q7にその機能は無い)
それから、ラストに、もう少しだけQ7の弱点を述べておく。
時計用のバックアップ電池を必要としない事は良いのだが、
恐らくは、スーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)で
時計を駆動していると思われる。が、これが壊れやすい模様だ。
壊れて(電荷が抜けて)しまった場合、内蔵のバッテリーを
抜いで充電を行うと、次に電源を入れた際、時計が2013年
(発売年)にリセットされてしまい、再調整の必要がある。
(ここも、2011~2013年頃のPENTAX機の多くで同様な欠陥
がある、私の所有機でも3台がこの状態だ、この件も震災での
部品供給不足であろうか・・?)
また、前部露出モード変更ダイヤルは、慣れないと少々廻し
難い構造だ。
それと、PENTAX伝統の「グリーンボタン」は、アサインできる
機能が少ない、ここはエフェクト系が可能であれば良かった。
まあでも、これが再生時の画像消去ボタンを兼ねているので、
ボタンを1つ省略できた事は良いと思う。
さて、今回の記事では、本機Q7の数値性能(カタログスペック)
については思い切って割愛した、そういう数字を気にするべき
類のカメラでは無い事は言うまでもなく、使っていて楽しめるか
どうか?であろう。
それと、本記事ではQ7の弱点についての話題が多くなってし
まったが、従来最大のネックだと思っていたアダプター使用時
の拡大の問題が解決したので、重欠点という物は他に殆ど無く、
総合的には、あまり悪いカメラだとは思わない。
それから、初代機種PENTAX Qに関しては、だいぶ後年になって
から安価に購入している、その用途はCCTVレンズが増えてきて、
イメージサークルが小さいCCTVレンズを使用する為だ。
PENATX Qの仕様は、センサーサイズと最大ISO感度の他は、
あまりQ7と変わらないので詳細は割愛する。
なお、Qシリーズ中、Qのみは金属ボディであり、若干だが
高級感がある。
ただし、操作子やボタン類はQ7よりだいぶ小さく、奥まった
位置にある為、操作性という面では、やや課題がある。
---
・・という事で、最後にPENTAX Q7の総合評価を行ってみよう。、
評価項目は10項目である(第一回記事参照)
【基本・付加性能】★☆
【描写力・表現力】★★★★☆
【操作性・操作系】★★★
【アダプター適性】★☆
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★★★☆
【購入時コスパ 】★★★☆ (中古購入価格:10,000円)
【完成度(当時)】★★☆
【仕様老朽化寿命】★★★☆
【歴史的価値 】★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】2.9点
総合評価点は、ほぼ平均点であるが、かなりデコボコのある
点数だ。
使いこなしがやや難しいカメラであるから、マニアック度は
高いと思う。
そして、優秀なエフェクト機能により、描写力・表現力が高く、
また、エンジョイ度もかなり高い。
まあ、基本的には使っていて楽しいカメラである。
後継機が全く出て来ない状況であるので、システムとしては
もう終焉しているのかも知れないが、その分、まだしばらくは
使用する事ができ、仕様老朽化し難いであろう。
本体は安価でコスパは良い。
しかし、交換レンズ群は比較的安価だが種類に乏しく、
アダプター適性も高く無いので、今から購入する際には、
どのようにレンズを組み合わせてシステムを構築するべきか、
良く考えてから買う必要があるだろう。
それと、意外なまでに仕様的な奥が深いので、決してビギナー
用の玩具デジカメだとは思わない方が良い。そういう意味では
中上級者でも十分に使えると思うし、むしろ、マニア向けだ。
なお、2018年現在、Qシリーズには新機種の発売が無く、
事実上終焉しているシステムである(注:HOYA時代の製品戦略
からRICOH時代の戦略の転換の為か?)よって、本体の中古も
流通数が少ない状態で、入手はしにくいと思う。
次回記事は、引き続き第三世代のミラーレス機を紹介する、