2018年7月15日に行われた日本国際ドラゴンボート選手権
大会(以下「日本選手権」又は「天神大会」)の模様より。
今回の後編では「オープンの部」の結果について紹介して
いこう。
さて、本「オープンの部」の見所であるが、ズバリ
「磯風漕友会」VS「bp」の一騎打ちである。
2016年のみ、「bp」は本大会(および高石大会)で
「磯風」を破っているが、他は全て「磯風」の勝利だ。
「bp」としては、今後海外等で活躍するにあたっても
まずは国内で、この「横綱」を倒してからでないと、
安心して(笑)海外には行けない事であろう。
「磯風」としても、近年はドラゴン界にあまり注力する
事はなく、主眼としているのは、地元ホーム大会の
「相生ペーロン競漕」だと思う。「あまりドラゴンの
各大会に出て”荒す”ような事はしたくない」と、
以前から何度が聞いた事もある。
ただ、日本選手権は別だ。「bp」が正々堂々と勝ち上がる
までは、まだ「磯風」は王者の貫禄を持って、全力でそれを
叩き潰さなければならない。それは別に意地悪ではなく、
そうしたフェアな対応がスポーツにおける本筋であろう。
本大会は混合の決勝も興味深いが、このオープン決勝も
参加選手や関係者からも非常に注目されている。
選「匠さん、どっちが勝つと思います?」
と固有名詞無しで何度か聞かれても、これは「磯風」と
「bp」の事を示しているのだと、すぐわかるのだ。
さて、予選からいきなり「磯風」と「bp」が当たる事と
なった。オープンの部の参戦チームは14であり、レース
フロー上では予選は「1位抜け」であるから、負けた方は
敗者復活戦に行き、1レース余分に漕ぐ事となる。
普段であればこの差はどうという事は無い、しかし今日は
36℃越えの猛暑日だ。この1レースの分が、選手達の
持久力にどのような影響があるかは、なんとも言えない。
5年程前だが、「bp」の夏合宿を見学しに行った事があった、
(上写真)
そこでは、選手達が汗だくとなって練習している姿が
印象的であり、暑さに対しては良く鍛えられているチーム
だとは思うが、まあ、その時代からはメンバーは微妙に
変わってきている事であろう。
それに、現代においてはスポーツの練習は科学的な要素が
とても強くなってきていて、昔のように精神面を鍛える
だけのような過酷すぎるトレーニングはまず行わない。
あるスポーツ科学者の一説によると、「試合前に円陣を組んで
大声を出して気合を入れる」という行為も逆効果らしい。
その理由だが、その行為で興奮状態になり、様々なつまらない
ミスをやってしまうリスクがとても高いからだそうだ。
だから、その理論を実践する、ある競技のプロチーム等では、
円陣は組むのだが、大声を上げず、そこで細かい戦略や戦術の
情報伝達のみを行うらしい。こちらがむしろ重要で、目的意識
を共有して気持ちを1つにしないと、チーム戦では上手く
行かないそうだ。
さて、「bp」は予選を戦術的にどう判断するのだろうか?
手の内を見せないまま磯風に先行させ、敗復と準決勝で
最終調整をして、決勝でガチンコ勝負、まあこれが妥当な
戦略であろうと思う。
対する「磯風」だが、まず彼らは、どのレースでも「全力
投球」である。これはまあ、潔い戦術ではあるが、今日の
ように猛暑だと必ずしもそれが得策だとも言い切れない。
「磯風」が予選レースをコンマ秒の僅差で「bp」を抑えた後、
そのあたり、どう考えているのかを「磯風」に聞いてみたが、
その答えは・・
磯「90%とか85%とか、そういう細かい調整が苦手
なんですよ。レートを下げると揃わなくなるし、
常に全開で行くほうが、むしろ楽なので・・」
なるほど、まあ、そういう考えも十分にありだろう、
そして、そこには別の理由もある模様だ。
磯「なにせ、20人艇に乗ったのは、今年これが初めてです」
匠「ふうむ、毎年その話をしていますね・・ 地元の練習艇、
確か”ポセイドン号”でしたっけ? あれは20人艇では
なくて10人艇でしたか?」
磯「あはは、ポセイドンの名前とか、良くご存知ですねえ・・
そうです、チャンピオン社製の10人艇ですよ」
(参考:2013年の第1回スモールドラゴン選手権で、「磯風」が
参戦した際のサブチーム名に使った「キングポセイドン」と
「アリオンローズ」が、所有艇の名前だ、と聞いて覚えていた)
匠「まあつまり、全員練習が出来ないし、20人漕ぎは勝手も
ずいぶんと違う、ということですね、わかりました。
それならばもう毎レース全開で行くのがよさそうですね。
まあ「bp」は1レース余分に漕ぐから、この暑さで
それがどう影響するか、凶と出るか吉と出るか・・」
磯「あれ? bpは1レース多いのですか?我々は?」
匠「予選1位抜けで準決勝進出だから、磯風さんは1レース
少ないのですよ・・笑」
昨日今日に本大会に出場している訳でも無いのに、ずいぶんと
呑気な印象だが、まあ、その分、リラックスしているという
事なのだろう。
その他、「長崎ペーロン」の話とかも色々と出てきていて、
本大会において精神面で追い詰められている様子は無いので、
余裕を感じる。
余裕ついでに、余談もしておこう、昔からの疑問がある。
匠「磯風さんの、あの大量の飲み物ですけどね・・」
磯「ああ、多すぎますよね(汗) ”大阪だったらコンビニ
等でどこででも買えるからいらない”と良く言うのですが
皆でバスで来るので、ついつい、積みこんでしまうのです。
飲みきれずにいつも残るし、積み下ろしも大変だし・・」
そういえば、何年か前に磯風の練習拠点を訪問した事が
あったのだが、そこでは、倉庫にいっぱい、飲み物などが
積み上げられていたのだ、どうやら寄付などで色々と集まって
くる模様であった。
匠「まあ、磯風さんだけではないですよ、"IHI相生”さんも、
いつも大量の飲み物を持ってきて、通りかかるとジュースや
ビールを毎回のように下さるのです。
”相生のチームは、皆、そういう風習があるのかな?”
とも思っていたら、"ヤンググリーン"さんとかは
飲み物を大量に持ってきている訳でも無いみたいですね」
磯「ヤンググリーンは、どう見ますか?」
匠「2015年位から見ています、最初のころは「ペーロン漕ぎ」
が抜け切れなかったけど、最近はだいぶドラゴン漕ぎにも
慣れてきていますね、昨年のKIXでも決勝進出しているし
なかなか良くなってきているのではないですか?」
磯「磯風メンバーの一人が彼らと同じ病院なので、最近は
ドラゴンを指導する事もあるのですよ」
匠「ほほう、魚橋病院ですか?」
磯「よくご存知ですねぇ・・ 相生の事情に詳しすぎる・汗」
匠「女子も強いですよね、”キュリアス魚橋”、彼女達は
ドラゴンには来てくれないのですか?」
磯「どうも、ペーロン大好きみたいで・・汗 まあ、地方
大会には良く行っているみたいですけどね」
匠「磯風さんも、ドルフィンさんと組んで混合参戦とか?」
磯「それ面白そうですよね、いずれ実現したら楽しいかも」
・・という感じで、何度かに分けて何人かの選手たちと
話をした感じでも、さほどの気負いは感じられない。
対する「bp」だが、ちょっとピリピリとした緊張感があった
ので、直接は話しづらい雰囲気だ。で、こういう場合だが、
選手たちがレースで居ないうちに、「bpマダム」(?)と
呼ばれている、選手の奥様方から話を聞くようにしよう
(本丸を攻めない「からめ手作戦」だ・笑)
すると「ちょっと気合が入りすぎですねぇ」と、さすがに
冷静に旦那様方を観察している御様子だ。
「bpマダム」は、何年も何年も、旦那様はもとより、ドラゴン
のレースもずっと身近で観戦している。話をすると、びっくり
する程ドラゴンに詳しく、戦況などの分析力も非常に高いので、
情報収集には、なかなか頼りになる存在なのだ。
まあ、結局のところ両者の実力は同等、最後の決勝は
出たところ勝負になるだろうが、精神面や暑さ、そして
水流の運、このあたりが勝敗を分ける鍵になるかも知れない。
さて、「磯風」と「bp」の話ばかりなってもいけない、
適宜、他チームの紹介もしていこう。
こちらは「好きやねん大阪」
30年間の本大会を毎回出場で、開会式の際に「金龍賞」を
受賞している。
「好きやねん」には、現役専業チーム「Rスポーツマン
クラブ」のメンバーが7~8人参加しているが、「R」よりも
こちらのチームの歴史が古い為、「好きやねん」を優先し
「R」としては毎回本大会には不参加だ。
決勝戦のあたりで「R」の監督が見学しているのを
見かけた。「R」は、ほとんどの大会に皆勤賞なので、
大会に出ずに見学しているのは、どうも違和感がある。
匠「Rはあと何人余っているのですか? スモールの部
ならば出られるのでは?」
R「大会によっては、ベテランチームは出られないです」
匠「ああ、まあ、東京、KIX、高石とかであれば、そういう
風に実力別できっちり分けているので無理ですけど、
天神の場合は大丈夫みたいですよ。
だって”関ドラ”さんとかも皆出ているし・・」
R「そうみたいですね、なるほど、それだったら来年は
Rでスモールに出る事も検討してみますよ」
との事である。
こちらは「Drahaaan! うみひ☆龍人」
最近では異地区コラボは珍しくないが、それでも「静岡+滋賀」
という組み合わせは、かつて無かったかも知れない。
たぶん、「龍人」が昨年静岡の「ツナカップ」に初参戦して
そこでチャレンジの部で優勝してから、「海猿火組」と
仲良くなったのであろう。あるいは「琵琶湖ペーロン」等で
元々面識はあったのかも知れないが、まあ悪い傾向では無い。
滋賀の強豪の「龍人」だが、日本選手権への出場は珍しく、
私が覚えている限りでは、今回が初だったか?
対する「うみひ」は、全国各地で優勝経験多数、そして
日本選手権でも決勝進出多数で、かつでは「磯風」に次ぐ
準優勝もあった。
遠距離参戦であるから、あまり潤沢なメンバーを集める訳にも
いかないだろうが、まあでも強力な助っ人を加えた事で、
今回も決勝進出の可能性が高く、上手く「磯風」と「bp」に
ついていければ3位入賞の可能性もある。
匠「もう、”うみひ”さんは勝たなくても良いのでは?」
海「何を言っているのですか!? これからですよ・笑
この龍人とのコラボチームで、今年の横浜大会でも
優勝しているし・・」
匠「いやまあ、後進の指導とか新大会の企画とか、そういう
方面の事です、そちらに注力するのも良いかと」
海「ええ、色々とやっていますよ。でも、最近思うけど、
つくづく「キーマン」の存在は重要だと・・」
どうやら聞く所によると、チームとか大会の企画運営とか、
様々な面で「キーマン」がいると上手くいくが、それが
様々な事情で居なくなると、とたんに課題が色々と
出るそうだ。
まあ、それはわからない話では無い、確かにキーマンの
行動力やリーダーシップが成果を左右するケースはとても
多い。そして、キーマンが居る時は、皆、その人に頼って
ついていけば良いので、次世代のキーマンが育つという事も
あまり無いのではなかろうか?
なかなか難しい話ではあるが、まあ、ドラゴン界の将来を
考えていくと、とても重要なポイントになるのだろう。
個人的には、「海火」は、そうしたキーマンになるとともに、
さらに複数のキーマンを育てる事ができる立場だと認識して
いるのだが・・
こちらは「香里丘高校5期生」チームである。
大阪府枚方市を拠点とするチーム。
6~7年前から活動していて、様々な大会に積極的に
参戦しているが、各大会でまだ入賞経験は無いと思う。
メンバーは、まあ同窓会のようなものなので、楽しんで
ドラゴン競技が出来れば良いのかも知れないが、そろそろ
どこかの地方大会などで入賞ができれば、ぐっとメンバーも
盛り上がるのではなかろうか?
まあ、中堅チームが活躍できそうな、ちょうど良いレベルや
カテゴリーや全体規模の大会が関西圏にはなかなか少ない
のも課題なのかも知れない。
(横浜大会とか、九頭竜大会とか、ツナカップが、そうかも
知れないが、いずれも関西圏からは、やや遠いかも)
すなわち実力別カテゴリー分けをやったとしても、専業チーム
をビギナーの部に入れてしまうのは失礼だし、かと言って、
本格派の競技志向カテゴリーで、強豪達に混じって漕いでも
なかなか勝ち目が無い。まあ「香里丘」の場合には、ずっと
出場を続けてくださっているので良いのだが、たとえば
本日本選手権にフラリと初参戦したビギナーチームが、
「全くレベルが違う」と言って、翌年から2度と来ないように
なったケースは、いくつも見てきているのだ。
これではドラゴン競技の普及にはならないので、カテゴリー
やレギュレーションのさらなる見直しは引き続き必須と
なるように思える。
先ほど話に出た「ヤンググリーン」チーム。
相生出身で「相生ペーロン」でも、そこそこの強豪だ。
本日本選手権では決勝進出が過去2回、そして昨年の
KIX大会でも決勝に進出しているが、まだ3位までの
入賞は無い(注:KIX大会は5位でも表彰されるので、
一応入賞とは言える)
昨年のスモール選手権は「B優勝」であるが、これはまあ
彼らとしては納得いく結果では無いであろう。
なんとか正規の入賞を果たしたいのだが、まずその前に
決勝戦に進出しなければならない。
その点については後述するが、今回は無事決勝進出だ。
さて、前述の「磯風直伝」の技を持って、ヤンググリーン
旋風が吹き荒れるか? 決勝戦が楽しみである。
こちらは「池の里Lakers!」、ご存知、滋賀の強豪だ。
匠「池の里さんは、日本選手権では過去決勝進出が2回、
戦績は、5位と4位でしたね?」
(参考:各大会の観戦前には、過去3年間程度の同大会の
戦績を全て暗記しておく事が各チームと話をする上で必要だ。
だが日本選手権クラスのメジャー大会となると、過去10年位の、
少なくとも決勝の戦績位は全て覚えておかなくてはならない。
結構、復習が大変なのだが、幸いにして毎年ブログで観戦記事
を書いているので記憶を定着させるのは不可能な話では無い)
池「3位入賞の前に、まずは今年も決勝進出が目標です、
すると準決勝で、どこと当たるか?がポイントですね」
(注:この会話の時点では、敗者復活戦の最中)
匠「磯風とbpは、準決勝(2レース)は、分かれますよ」
池「知っています、その下です」
匠「ん? ・・ああつまり、準決勝は2位抜け+3位タイム順
なので強いチームが2チーム迄であれば良い訳ですね。
すると「坊勢」「海火+龍人」「ヤンググリーン」
「IHI相生」あたりが、どういう配置になるか?ですね」
池「その通りです、それら強い所が3つ固まってしまうと、
もう抜けられない」
(さすがにベテランチームだ、こういうレースフロー上での
戦略をちゃんと考えている。ここは褒めるべきであろう)
結局、準決勝の第1組は以下の組み合わせとなった。
(レーン順)
1:IHI瑞龍丸
2:磯風漕友会
3:坊勢酔龍会
4:池の里Lakers!
5:ヤンググリーン
結局、このレースで「池の里」は僅差で4位となって、
残念ながら準決勝敗退だ、まあでも、全体の6位のタイム
であったので、組み合わせが変わっていたとしても苦戦は
避けられなかった事であろう。
準決勝の組み合わの運で決勝進出が決まるのは、「池の里」
にとっては、歯がゆい思いかも知れないが、まあ、
翌週7月22日から、約1ヶ月間の間に計4回、地元滋賀で
行われる各大会に注力していただきたいと思う。
ちなみに「池の里」を僅差で破って、代わりに決勝に
進出となったのは、前述の「ヤンググリーン」である。
「池の里」とは毎年決勝進出を争う形となっていて、
2年程前では、ヤンググリーンは池の里を「なんとかの里」
とか言っていたが、ライバルのチーム名なので、さすがに
もう覚えたであろう(笑)
それから、オープンの部隼決勝第2組の結果も
ここで述べておく(順位順)
1位:bp(決勝進出)
2位:Drahaaan! うみひ☆龍人(決勝進出)
3位:TAITAM X DRAGONS
4位:関空飛龍
5位:IHI相生(コースアウト)
惜しかったのは「TAITAM X DRAGONS」だ、2位の
「うみひ☆龍人」に、コンマ差で追いつかず。
準決勝第1組3位の「ヤンググリーン」にもコンマ差で
結局、決勝進出ならずだ。
なお、「TAITAM X」は、今回スモールの部にも出場
していて1.5チームでのエントリーだ。
今年は海外(香港系)メンバーと混成ではなく、自前で
メンバーを揃えているそうだ、若手メンバーもかなり
増えてきているので、チーム再編期という事であろう。
この結果は非常に惜しいが、負けた悔しさが、また
モチベーションに繋がっていただければ良いかと思う。
ここでちょっと余談、ドラゴン競技の撮影機材の件だが、
今日も暑い中、多数のアマチュアカメラマンが来ていた。
熱中症が危険なので、選手村側に居るアマチュアには
ほとんど全員に注意勧告をして回っていたのだが、
本部側にまでは手が回っていない。
で、彼らの持つ機材が、どうにも中途半端なのだ、
まずフルサイズ機の使用、これはいけない。
フルサイズ機において一般的な200~300mmの望遠レンズ
では全然望遠が足りないのだ、それにフルサイズ機は
連写も遅く、本体重量も重く、おまけに高価であるから、
ドラゴンのような過酷な撮影環境には全く向いていない。
まあ、まずはAPS-C機以下でなくてはならないし、望遠も
400mm以上が必須である。
で、近年は、500mmや600mmの望遠も、昔とは違って
比較的容易に入手できるようになった。SIGMAやTAMRON等の
サードパーテイ製はニコンやキヤノンといった純正よりも
価格が安価になった事と、これらを買ったけど、重すぎて
使いこなせないビギナー層が多く、中古市場に大量に
それら超望遠ズームが流通しているからである。
500mmや600mmの超望遠ズームだと、だいたい重さが、
2kg前後となる、さすがにこれだと重すぎて手持ち撮影が
困難だ、そこでビギナー層は三脚を使うのだが・・
三脚には以下の課題がある。
1)一箇所から動かないので、熱中症リスクがある。
人間のみならず、電源をいれっぱなしにした場合
カメラの「熱暴走」やバッテリー消耗が良く起こる。
2)本来、レース毎で撮るべきポジションが変わる筈だ。
3)撮影アングルやレベル(高さ)の撮影自由度が制限される。
4)晴天時ではブレ無いので、そもそも三脚の必要性が無い。
5)マナーが悪くなる それは場所の占有と他の観客の
邪魔になる事等だ。
という事で、三脚を使っているアマチュア層のケースでは
上記の理由を言いくるめて使わせないように指導している。
すると、たいてい「撮り易くなりました」と言ってくるのだが
要は「写真は三脚で撮るものだ」という古い銀塩時代からの
固定観念による思い込み、又は周囲の先輩等からの間違った
指導であろう。
現代のデジタルカメラは、高感度やら手ブレ補正やらと、
色々と先進的な性能があるので、ドラゴンの撮影においては、
まるっきり三脚など不用なのだ。
ただ、三脚の件はともかく、重たい機材はよくない。
具体的には、カメラ+レンズで2.5kgを超えるシステムは
NGであり、レンズ単体でも1.5kgを超えないようにする
必要がある。さもないと重さにより長時間の手持ち撮影が
困難となってしまう。
よって、500~600mm級超望遠は、それらの条件には
満たないのでドラゴン撮影には使わない事がベターだ。
つまり、400mm級までのズームにとどめておくのが良い。
(総重量は、最も軽いケースで約2kgとなる)
ただし、特定のチームでの選手による応援撮影であれば、
そのチームのレース等だけを短時間だけ撮れば良いので、
500mmオーバーや1.5kgオーバーのレンズ使用も可能だ。
かつてそのケースは、専業チームの選手で、500mmが2件、
600mmの使用を2件見かけた、相生ペーロン、高島ペーロン
びわこペーロンと、いずれも被写体までが遠距離の会場
だったので、その機材選択は正しい。
ただし勿論、被写体の所属チームの選手達は色々と場所を
移動するので、手持ち撮影が必須になり、長時間は使えない。
今回は「東京龍舟」の、ロシア系女性の外国人選手が、
500mmを持ってきていた。彼女は、元「ゴリニチ」という
在日ロシア人チームのメンバーとして、いくつかの大会に
参戦していたので知った顔だ、そして日本語も通じる。
(私はロシア語は、あいにく挨拶くらいしか話せない)
匠「あれ?500mm買ったの? 重いでしょう?」と聞くと
ロ「重いデスが、腕のトレーニングには良いデス(笑)」
との事だ。
まあ、屈強な選手であれば、なんとか使えるであろう。
・・という事で、ドラゴン競技撮影には、
カメラは、APS-C型高速連写機(中古3万円~8万円程度)
レンズは、400mm級望遠ズーム(中古3万円~6万円程度)
という組み合わせでの手持ち撮影がベストとなる。
特定チームの応援撮影の場合のみ、レンズはかろうじて
500mmでもセーフだが、あまり遠距離で撮る必要が
なければ、400mmでも十分だし、撮った写真をトリミング
して使っても良い。
また、あまり高価すぎる機材は使わない事だ、酷暑や水気、
落下、紛失など、あらゆる故障等のリスクが存在する。
なお、一眼レフ以外でもミラーレス機やコンパクト機で
同様の望遠システムを構築可能だが、長くなるので割愛する。
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さて、余談が長くなった、「オープンの部」の決勝戦の
模様に移る。以下が決勝進出チームだ。
オープンの部決勝(レーン順)
1:Dorahaaan! うみひ☆龍人
2:bp
3:磯風漕友会
4:坊勢酔龍会
5:ヤンググリーン
ちなみに昨年の決勝だが「うみひ」と「ヤンググリーン」
の代わりに、「池の里」と「BON OYAGE」が入っていた。
で、昨年の順位は「磯風」「bp」「坊勢」の順だ。
今年も上位は同じ顔ぶれになる可能性が高いが、
例の水流の不規則さの件もあって、どういう最終順位に
なるのかは不明だ。
ちなみに最初に書いておくが、この決勝戦は酷い「逆潮」
となって、各チームは予選の時よりも、およそ10秒も
タイムを落としている。
さしもの「磯風」でも1分超えのタイムとなった事で
これは混合決勝の「東京龍舟」よりも遅かった。
後の表彰式で、「東京龍舟」の女子選手たちと「磯風」
のメンバーがちょうど近くに居たので。
匠「東ドラさん、オープンの部に出ていれば、
磯風さんに勝っていましたよ・笑」
東「あはは・・ 潮の関係でしょう?笑」
まあつまり、中編で書いたように、大潮に近いこの時間帯、
大阪湾の潮位は一時間あたりで20~30cmも上昇していた。
混合の部の決勝が終わった後、ウィニングラン等もあった
為、30分以上は時間が離れていたであろう、その間に
さらに潮流が厳しい状態になったという事だ。
だが、その件は、全ての決勝参戦チームに、ほとんど同じ
悪条件として降りかかる。加えて今日の「猛暑」である。
丸一日の大会で、もう実際のところ、選手たちもスタッフも
ヘロヘロの状態だ。
まあ、こうなってくると、こうした悪条件への対応力が強い
チームが有利であろう。
思えば、「磯風」は、その対応力が優れたチームだ。
かつて10年程前の関空大会で「決勝戦で、あわや全艇沈没?」
という、高波と強風による酷いコンディションも、なんとか
乗り切って優勝している(この時、2艇が沈没した)
ただ、それはもう10年も前の話だ・・
「bp」だが、ここ5年程は全国各地の大会にほぼ皆勤賞と言える
程参戦しているし、海外の大会にまで出ている、すると様々な
「修羅場」の経験回数は「bp」も「磯風」に劣る事はあるまい。
余談だが「磯風」のドラマー氏は「ゲンかつぎ」タイプで
あるように思える。決まった行動パターンを繰り返す事で
精神的な落ち着きを得るスタイルで、これは「イチロー」等の
一流アスリートの所作(ルーチーン)とも類似があると思う。
で、「磯風」のドラマー氏、8年程前までは、レース前に
「ドラゴンの頭に水をかける」所作を行っていたのだが、
ある時、誤って落水してしまった(汗) それ以降、
その所作はやっていない模様だが、まあ今ではそれに
代わる「ルーチーン」を何かやっているのかも知れない。
目につくのは「勝利を確信した時、相手チームをチラリと見る」
という所作だろうか・・(上写真)
この決勝戦でも、それが見れるのだろうか?
磯風ドラマー氏がbpを見たら、もう磯風の勝ちだ。
見なければ、その余裕が無い、という事で勝敗はわからない。
さて、オープンの部の決勝戦のスタートだ!
観戦位置は混合の決勝戦と同じくテラスの上、
このオープン決勝戦は、磯風対bpの一騎打ちであるから、
全体を撮れるこの場所が適正という訳では無い。
撮影場所を移動しても良かった、・・というか絶対に変える
べきだったのだが、テラスには何人かの知り合いの選手達が
居て話し込んでしまった為、撮影ポジションを変える時間が
無かったのだ(汗)
さて、終盤戦の200m地点、もう既にここでは「磯風」と
「bp」のタイマン勝負となっている。他チームに対して軽く
1艇身以上のリード、これは6~8秒もの差になるであろう。
あとは一騎打ちの最終結末だ。
ドンドンドン・・という太鼓の音を、かき消すくらいの
多数の観客の「ウワァーッ!」という歓声が会場に響く。
誰もが待ち望んでいた最終決着まで、あとほんの数秒だ。
両者ほぼ同等・・ いや、磯風が速いか?
残り10m、磯風が出る、磯風が出る! bpが追う・・
テラス位置は、ほぼゴール地点と正対しているので、
これはどうみても、磯風の勝ちだ。
ただ写真的にはちょっと失敗だ(汗)若干露出オーバー
となってしまっている。
何故露出オーバーになったかの理由は明白で、レース
中盤で背景等が暗い段階で連写を開始し、その1枚目で
自動で露出値が固定されてしまったからだ(絞り値F6.3
シャッター速度1/640秒、ISO640) で、そのままの
露出値で連写を続けたので、ゴール地点はずっと明るく、
光が大きく増えて当たったので露出オーバーとなる。
まあこれが本来「間欠連写」を必要とする理由なのだが、
レースに夢中になるがあまり(汗)連続連写のままで
最後まで撮り続けてしまった、失敗、失敗・・
なお、連写中でも露出が変化するような機能や設定が
カメラ側にあれば良いのだが、生憎、今回使用機の
CANON EOS 7D MarkⅡでは、そうした機能は無い。
それと、ピントの方だが、AIサーボやAIフォーカスに
すれば動体にもAFが追従する。しかし、その設定では、
レンズ側のAF駆動が遅いと連写が遅くなる場合が
あるので、より高性能なレンズを買わないと威力が発揮
できない。そうやっていると、どんどんと機材システムの
価格が高価になってしまう。
そういう風にカメラ側の性能に頼らず、マニュアルフォーカス
にすれば関係無いのだし、まだデジカメの性能が未発達な
十数年前では、ドラゴンでもずっとMFで撮っていたのだ。
下手にカメラが進歩してしまうと、「カメラの性能に頼って
しまう」という事にもなる、これでは今時のビギナー層と
全く同じ状況であり、ここは重大な反省点だ。
さて、余談はともかくレースの方だが、結果は以下だ
1位:1分00秒16 磯風漕友会
2位:1分00秒69 bp
3位:1分06秒40 坊勢酔龍会
4位:うみひ☆龍人
5位:ヤンググリーン
「うみひ☆龍人」(上写真)は約1秒差で入賞ならず。
なお、「ヤンググリーン」は、かなり遅れていた模様だが、
何かのトラブルであろうか? 先頭争いにばかり注目していて
ちょっと見逃してしまった。
1位から3位までは昨年と全く同じ結果である。
(下写真は「坊勢酔龍会」)
決勝戦の感想だが、予想どおりの頂上決戦、タイム差から
みれば僅差であったが、これは前述の通り予選タイムから
8~9秒も遅くなっているので、だいぶコンディションが悪化
したいたのだろうと思う。そうした環境の中では、どちらが
勝ってもおかしく無い状況であった。
勝利への執念とか、気持ちの余裕とか、そういう精神論は
言うまい、この条件であれば、本当にどちらのチームが
勝ってもおかしくなかったし、もうこれは運命としか
言いようが無い。
ただ観戦側の楽しみとしては、これでは「bp」は、あっさりと
「海外大会に注力する」などとは言い出せない状況であり
ともかく磯風を完膚なきまでに叩きのめさないと、まだ
世代交代とは言えない訳だ。つまり、来年もまた引き続き
この熱戦が見られるということで、それを楽しみにする
事としようか。
「bp」は、今夜は悔しくて眠れないかも知れないが、それも
また次へのモチベーションに繋がると思う。
さて、今回の「日本選手権」記事は、これにて終了。
次回ドラゴン関連記事は「高島ペーロン」になる予定だ。