所有している銀塩一眼レフの名機を紹介するシリーズ記事。
今回は第三世代(AFの時代、世代定義は第1回記事参照)の
NIKON F4(1988年)を紹介する。

装着レンズは、NIKON Ai NIKKOR 135mm/f2
(ハイ・コスパレンズ・マニアックス第18回記事等参照)
本シリーズでは紹介銀塩機でのフィルム撮影は行わずに、
デジタル実写シミュレーター機を使用する。
今回は、フルサイズ機NIKON Df(2013年)を使ってみよう。
(このDfは、F4の代替用途として購入した機体だ)

以降はシミュレーターでの撮影写真と、本機F4の機能紹介
写真を交えて記事を進める。
なお、AFカメラであるのに、MFレンズを装着している事は
F4においては、それなりの意味があるが、詳しくは後述する。

さて本機F4はニコン初のAFフラッグシップ機だ。
ニコンは従来「およそ10年毎にフラッグシップ機を更新する」
と言われていて、F(1959)→F2(1971)→F3(1980)と、
実際にもそんなサイクルであった。
「では、次のF4は、1990年頃の発売か?」とも思われていた
かも知れないが、時代は、そんなのんびりした状況でもない。
前記事、EOS-1HSの項でも述べたが、1985年の「αショック」
以降、カメラ界には激震が走り、全社いっせいにAF化を行い
αに追従しようとしていたのだ。
なお、F4よりも1年遅いEOS-1HS(1989)の記事を先にしたのは
シリーズの順番上、同一メーカーの機種の記事が続く事を
避けた為で、深い意味は無い。

さて、まずは、ニコンの銀塩AF一眼機の歴史を振り返ってみよう。
<1983年>
NIKON F3AF
ニコン初のAF一眼だが、F3をベースに改造した試作機的な
要素があり、AF精度は高くなく、専用交換レンズも少なく、
まだ実用的なレベルには到達していなかった。
<1985年>
MINOLTA α-7000
史上初の実用的AF一眼レフ、いわゆる「αショック」
<1986年>
NIKON F-501
「αショック」を受け、急遽市場に投入された、ニコン初の
AF機だが、注目されず、商業的には成功したとは言い難い。
ミノルタやキヤノンのように、マウントを変更する事はなく、
「伝統のFマウント」を踏襲した。
<1987年>
NIKON F-401
AF機、ニコン初のフラッシュ(スピードライト)搭載機。
自社製のAFセンサーを用い、発売時定価が6万円台と、
AF機の低価格化競争の先駆けとなった。そこそこの人気機種で
商業的には成功していたと言えよう。
<1988年>
NIKON F-801
F4の発売に半年ほど先行したスーパーサブ機。
1/8000秒シャッター等、高性能であり、F4との同時使用を
前提としたサブ機であるが、アマチュア層でのメイン機と
しても十分な性能の隠れた名機。
なお、こうしたメイン機とサブ機のコンビネーションは、
後年のニコン機でも、銀塩のF5とF100 (1996~1998),
デジタルの D3とD300(2007), D5とD500(2016)
等の組合わせが発生しているが、ハイエンド機と高級サブ機を
同時に入手する事は、業務用途以外ではコスト面で困難であり
アマチュア層での「憧れのセット」となっている。
まあしかし、F5は銀塩末期で、すぐにデジタル時代に入って
しまったし、D3やD5は、デジタル時代でモデルチェンジが早く
新鋭機との相対的な仕様的老朽化が進んでしまう為、あくまで
初級中級層における「憧れ」のみのセット所有であろう、
そういう点に拘っている上級マニア等は、多分居ないと思う。

さて、ここまでが本機NIKON F4が発売されるまでの
ニコン銀塩AF一眼の主要な歴史だ。
最初期のF-501こそ「急ごしらえ」の印象が強く商業的にも
成功を収めたとは言い難いが、他機は概ねオッケーだ。
だが、ミノルタαの牙城を崩すには、普及機のF-401等では
役不足である。
やはりここは、ニコン伝統の「フラッグシップ機」で
巻き返しを図るしか無いではないか・・
恐らくは、F4の開発はAF化以前から行っていただろう、
当時のカメラ開発は、3年から5年を要する事が普通だからだ。
F4は最初からAF機だったかも知れないし、ニコンは新機能を
旗艦機に搭載する事に慎重なので(例:NIKON F3 本シリーズ
第8回)もしかすると当初はMF機で開発されていたかも知れない、
その真実は知りようも無いが(注:世にある開発秘話等の資料を
転記したりする事は一次情報とは言えず、個人的に大嫌いなので、
そういった資料は一切読んでいない)
もしMF機での開発を途中からAF機に転換したとしたら、まるで
第二次大戦末期に戦艦「信濃」を途中から「空母」に設計変更
したようなもので、だいぶ大変な事であっただろう。
まあともかく、満を持して銀塩AFフラッグ機F4は、無事
1988年に発売された。従来予想されていた10年サイクルよりも
2年も早く、一刻も早くこのAF機市場分野で、ニコンがトップを
奪回する為の「突貫工事」であっただろう。
幸いにして、F4はCANON EOS-1/HS(本シリーズ第14回)にも
1年だけ先行する事ができた。
ちなみに、従来の旗艦「F3」は、F4発売後も2000年頃まで
発売が継続され、20年にもおよぶロングセラーとなる。

さて、F4は、旧来の旗艦機と同様にファインダー交換可能だが、
それよりも、モータードライブの仕様により区分される所が
大きく、以下の基本形態が存在する。
F4 (1988) 基本モデル、単三電池4本使用、連写は秒4コマ
F4S(1988) 単三6本を使うバッテリーパックを装備、秒5.7コマ
(これは、翌年のEOS-1HSの秒5.5コマよりも高速)
F4E(1991) 単三6本またはニッカド電池が使用可能。秒5.7コマ
今回の紹介機は、ノーマルなF4だ。
基本的に重量級のカメラであり、さらに本体重量(および電池)
が増加するF4S/E形態を避けた、というのが本音の所だ。

私の印象では、F4はF3迄の旗艦と全くの別物だと感じる。
性能の差異、機能の多様さ、デザインから受けるイメージ等
これまでとは別次元である。
このイメージの差異が(職業写真家はともかく)アマチュア層
での、これまでのニコン党ユーザーの感覚とはだいぶ異なって
いた事だろうと思う。それ故、後年1990年代の第一次中古カメラ
ブームの際にも、NIKON F4は不人気であった。
もしかすると不人気な理由は、ユーザー層が「新機能」を
理解できなかった可能性もある。
というのも、F4にはダイヤル、ボタン、レバーの類が十数個も
あり、ビギナー層では、どこをどう動かして撮るのか、さっぱり
わからなかっただろうからだ。

もっとも、実用的な用途を狙うマニア層や上級層においては、
このF4の従来の旗艦とは異次元の超絶性能は、非常に魅力的で
あり、実際にフィルムを入れて撮る場合は、重量以外の欠点は
ほぼ見当たらず、極めて実用的なカメラであったので、
そこそこ実用派マニア受けはしていたと思う。
F4を嫌ったのは「投機層」「ブルジョア層」「初級マニア層」
といった特定ユーザーであり、中古市場では、そうした層において
「ニコンのヒトケタ機は、奇数番号が優秀で、偶数番号がダメだ、
買うならば、FやF3,F5を買え」等と言われていた。
ただ、それは「カメラを実際に使わないユーザー層」での
あまり正当な評価とも言えないレベルの話でしかなく、要は
「後年に高く売れるか否か?」という投機的なノウハウの話で
あった事だろう。
その主張の真の意味がわからない一般ユーザー層は、
それを信じて、NIKON F4を買い控えした為、F4は、その超絶性能
からは比較的中古相場が安価な機種となり、コスパが良かったし、
後年、デジタル時代に入ると投機層が予想した通り、中古相場は
急落、およそ二束三文の数千円というレベルにまで落ち込んだ。
その相場は、F4の実際の実用性能を知らない購入側と販売側の
決めたバランス点での価格であるから、もしデジタル時代に
入ってからF4を購入して銀塩実用機として使ったのであれば
「史上最強のコストパフォーマンス」が得られるカメラに
なっていた事であろう。
まあ、私は格安相場になっても「ナンピン買い」(注:株式
等で株価が下がった際に、あえて買い増しして平均取得価格を
下げる事。日用品などでそれをする消費者は多いとは思うが、
カメラでそれをする人は珍しい・笑)は行わなかった。

F4は重厚長大な機種であるから、あまり外に持ち出そうとも
思えす、実質的にはより軽量なニコンAF機や、MFサブ機等の方が
フットワークが軽快だ。F4が2台も必要な状況では無い。
しかしニコンの銀塩旗艦の中では、私は、このF4が最も使用頻度
が高い機体であった。後年での感覚では、F4はAFでは性能不足が
感じられるものの、ニコンMFレンズの使用互換性が最も高い
カメラである他、MFレンズでもマルチパターン(多分割)測光が
使え、露出精度は他社機と比べてもピカイチだ。
さらには勿論フォーカスエイドも効き、ファインダー内情報
表示機能も充実、そしてニコン機にしては、そこそこ優秀な
スクリーンのピント性能、連写も速く、さらには大口径レンズ
が比較的多いMFレンズを使う際の1/8000秒シャッター等、
F4は実のところ、「MFで使うならば最強のニコン銀塩機」
であったのだ。
よって、AFレンズのみならず、MFレンズを併用する上では、
本機F4は非常に重宝する機体であり、一度これを使ってしまうと
F2やF3などの、旧フラッグシップ機を使うと、もう、
「とてつもなく古く、実用性能に満たない」とも感じてしまう。

結局、1900年代に「奇数番号機が良い」とか言っていたユーザー
層は、実際にフィルムを入れて撮影して実用評価をする事等は、
殆ど無かったのだろう。が、投機的な感覚は高かった模様であり、
実際の中古相場の推移も、その通りになった。
(注:F5(1996)は新鋭機だったので、当時の相場は高価では
あったが、後のデジタル時代では、F4と同様に中古相場の下落が
はなはだしい)
なお私は、Fヒトケタ機の所有範囲は、F2~F5までであり、
初代のFは実用範囲外の古さと見なして未購入、最終機のF6は
既にデジタル時代に突入していたので見送った。
よって「Fヒトケタ機のランキング」などの野暮な評価は
行わない(行えない)、そもそも、Fヒトケタ機を全部所有して
いるユーザーなんて、そう多くは居ないと思うし、仮に居たと
してもコレクションか投機目的であろう。
1950年代から2000年代という、非常に広い範囲の時代に及ぶ
全てのFヒトケタ機にフィルムを入れて実用的に使っていたユーザー
等は、まず数える程の少数しか居ないはずだ(または皆無か?)
勿論、短期間だけ借りたりしても実用性能等は、わかる筈も無い。
なのでニコン旗艦の実用性能ランキング等は絶対に評価不可能だ。

まあ、今時でこそ、銀塩機が前述のように二束三文となった為、
銀塩時代に憧れの高級機であったが、高価すぎて購入できなかった
カメラを、特定のメーカーにおけるマニア層(例:ニコン党)が、
かたっぱしから入手し、コレクションしているケースも、確かに
稀に見受けられる。
それらの「収集型マニア」を否定するつもりは全く無いし、
どんな趣味ジャンルでも「コンプリートする」(すべての商品
等を集める)という行為は、その趣味を続ける上での、非常に
重要なモチベーションとなっているから、当然の事だと思う。
しかし「コレクター」は残念ながら写真を撮ることは少ない、
まあ、それだけ沢山の機種に実際にフィルムを入れて撮る事は、
コスト的にも時間的にも、不可能に近い話である。
(コレクター層のSNS記事等を見ても、カメラ本体の写真
ばかりで、実際のその機体で撮った写真の掲載は皆無に近い)
で、本シリーズ記事で紹介している銀塩機は、私が銀塩時代に、
実際に全て実用として撮影していたカメラ群ではあるが、流石に
現代において、本シリーズ記事を掲載するにあたっては、銀塩機
そのもので写真撮影を行うのは到底無理だ。
紹介カメラは今のところ全て完動しているのだが、フィルムを
入れて撮ったら、経年劣化などで、どうなるか分からない。
基本的には、銀塩撮影はコスト面、時間面、編集面で困難だし、
紹介カメラの中には、歴史的に貴重な機種もある為、不用意に
持ち出してフィールドで撮影し、耐久性やら、不注意の落下や
天候の急変等で壊してしまったら、えらい事になる。
だから、やむなく現代の「シミュレーター機」を使って、当時の
レンズで実写し、当時の雰囲気だけを味わっている次第だ。
まあ、本NIKON F4であれば、万が一壊しても安価な代替機は
中古市場に、いくらでもあるので何ら問題は無いのだが、
カメラの世界は、そういう「恵まれた」カメラばかりでも無い・・

さて、ここで本機NIKON F4の仕様について述べておく、
NIKON F4(1988年)
オートフォーカス、35mm判フィルム使用AEカメラ
最高シャッター速度:1/8000秒(電子式) 縦走り
フラッシュ:非内蔵、シンクロ速度1/250秒 X接点
ホットシュー:ペンタプリズム部に固定
ファインダー:交換式、スクリーンも多種交換可能。
倍率0.75倍 視野率100%
ファインダー内照明:シャッターダイヤル下のスイッチで可
使用可能レンズ:ニコンFマウント系、AiAF,Ai,非Ai
絞り込みプビュー:有り
AF測距点数:1点、MF時にフォーカスエイド可
AFモード:シングル(S)、コンティニュアス(C)、マニュアル(M)
AF/MF切り替え:基本的に本体側レバーによる、
後年にはレンズ側にも切り替えスイッチあり
露出制御:PSAM方式+高速プログラム、プログムシフト不可
測光方式:マルチパターン(多分割)測光、中央重点、スポット
露出補正:専用ダイヤル±2EV,1/3段ステップ)ロック有り
AEロック:前部ボタンで可、露出差分表示無し
AFロック:前部ボタンで可
ファインダー内表示:絞り値(直読式)、シャッター速度、
露出モード、測光モード、露出補正警告
マニュアル露出時は露出メーターが表示される。
フォーカスエイド(>○<式)
露出ブラケット:本体のみでは無し(マルチコントロールバック
MF-23装着時には可能)
ドライブ:単写、高速、低速、超低速、セルフタイマー
連写速度:F4の場合、CH高速時、秒4コマ、CL低速時秒3.3コマ
Cs超低速(静音)時、秒0.8コマ
多重露光:多重露出レバーにより可
電源:単三型乾電池4~6本使用 (機種による)
電池チェック:シャッター半押しによる
カスタムファンクション:本体のみでは無し
フィルム感度調整:手動ISO6~6400、DXコード読取での自動
フィルム巻き戻し:R1,R2レバーの連続操作による
本体重量:1090g(F4の場合、電池除く)
発売時定価:225,000円(F4の場合)

本機NIKN F4の長所だが、
第一に、かなりの高性能機である事だ、基本性能や機能は
当時としては最上級である。
殆どの高機能は、全てアナログ的なレバーやダイヤルで
制御され、電源OFF時にもその設定が明確にわかる。
それ以上の特殊な機能(ブラケットやインターバル撮影)が
必要な場合は、別売のマルチコントロールバック(MF-23)を
装着して実現する(本機では装着済み)MF-23には液晶画面が
あるが、F4本体は液晶を持たず、すなわち全ての操作は
アナログ系操作子で実現される事となる。
これは「操作性」という意味からは大きな長所であろう。
(注:「操作系」の概念は、まだこの時代では無いと思う)
ただし、まず全ての操作子の意味を理解できる事が必須で
あるし、操作子が使い易い事も重要な条件だ。
これらが意外に難しい事は、弱点のところで後述する。

ファインダー内表示もかなり充実していて、F3での不満は
完全に解消されている。スクリーンは、この時代では
高明度型に変更されているが、MFでのピント合わせは
ギリギリセーフという感じであろうか、なお、私の場合は、
方眼式全面マットに換装してある。
ファインダー性能は良いのだが、視線の角度をほんの僅か
上下に動かすと、すぐに内部表示が見えなくなってしまう。
(なお、今回使用のシミュレーター機NIKON Dfでも、
ファインダーを覗く角度で、内部表示が見え難くなるという
F4と同様の欠点を持つ。時代が四半世紀も異なるのに、同じ
弱点が解消されていない事実は、どうにも納得しずらい)
でもまあ、この時代のカメラでは稀にある事で、下手をすると
視線を上下にずらすと、ペンタプリズムの外の視野が反射して
見えてしまう質の悪いカメラも多々あるが、本機F4では流石に、
そういう事は無い。

それから、旧レンズ互換性が極めて高く、AiAFやAiレンズは
勿論の事、マウント部の可倒式連動爪の操作で、非Aiレンズも
使用可、おまけに、試作品的なF3AF用レンズですら使用可だ、
およそF4以前の全ての時代のニコンレンズが使用可能であろう。
(Ai露出連動爪を倒せるのは、F4の他は数機種しか存在して
いない、また近年のデジタル機ではNIKON Dfのみだ、下写真)

そして凄いのは、こうした旧MFレンズを使った際にも、
マルチパターン(多分割)測光が効くのだ。
おまけにF4の測光精度は、アルゴリズムの優秀さからか、
極めて精度が高く、およそそれまでの時代の機種の中では
ダントツの性能だ。
MFのフォーカスエイドは、前ピン、後ピンを判断できる方式で、
AF測距センサーからの前後ズレ(位相差)情報を元にしている
と思われるが、他社では、あまり類似した仕様のものは無く、
この方式の利便性を感じる。
惜しむらくはNIKON FAやFGにあった瞬間絞り込み測光が廃止
されてしまった事だが、実の所その機能は余りメリットも無い。
また、旗艦らしくシステム性は高く、豊富なオプションパーツ
が存在していて、それらの中古での入手性も高かった。
後、デジタル時代になって中古相場が急落し、非常に買いやすい
価格(1万円程度)になっている事も、ある意味長所であろう。

さて、本機F4の弱点であるが、
まずはその重さだ、でもまあ、これはある程度やむを得ない。
次いで「操作性」におけるロック機構の存在だ。
具体的には、電源スイッチ、露出補正ダイヤル、シャッター
ダイヤル(X位置)、手動巻上げレバー、フィルム巻き戻し用
R1/R2レバー、視度補正ダイヤル、可倒式露出計連動爪、
の操作子全てに機械式ロック機構があり、それを解除しないと、
どれも動かせない。

これは過剰なまでのロック機構である。
不用意に動かさない為の安全対策、というレベルを遥かに
超えていて、「意地悪をしている」ようにしか思えない。
しかし、実の所、この時代から現代のデジタル時代までを
総括して、ニコンのフラッグシップ機を、実際に業務用途の
撮影に使っている比率はさほど多くは無く、そのユーザー層の
大半がアマチュア、しかもシニア等のビギナー層だ!
そういう現実からすると、ニコン旗艦あるいは高級機での
多々ある機能は、初級者の中の、ほんの1割すら使いこなす
事が出来ない事が明白であり、そうした高度な設定機能には
全てロックをかけておかないと、初級者が不用意に露出補正
などをかけて「写真が真っ白に写る」等と、メーカー側に
クレームが来たら、たまったものではない。
そして、実際に、ユーザー層はそのレベルでしか無いのだ。

試しに、F2やF3を持っているベテラン層などに話を聞いて
見ると良い、彼らはカメラ本体の仕様の違いとか、Aiレンズ
か否かなど、そういうカタログ等に書いてあるような
ハードウェア面には詳しいが、露出とか撮影技法の事とかの
写真を撮る為に必要な知識は、まるで何も知らないに等しい
事が殆ど(8割以上)である。
同様に、近年のニコン・デジタル高級機を使っているシニア層
などにも話を聞いてみたら良い、特徴的機能などはすらすらと
説明できたとしても、写真撮影技法等はまるで知らないし、
下手をすればカメラの構え方すらもおぼつかない。
この状態では、過剰なロック機構の搭載はやむを得ない、
ビギナー層がフラッグシップ機の主力ユーザーなのだからだ。
この傾向はF3位からチラホラ現れていたが、F4で顕著となり、
その後、デジタル時代の高級機に至るまで同様だ。
ニコンデジタル高級機では、電子ダイヤル化等でハードウェア的
なロック機構は減ったが、ソフトウェア的な制限が増えている。
すなわち新機能等はデフォルトでは全てOFFになっている。
メニューを見て、その機能を理解し、設定を変えれる人だけが
使える機能となっているのだ。よって、ビギナー層ではニコン
高級機の超絶高機能を、ほとんど誰も使えていない。
購入時にカタログを見て「こんな機能が入っている」という
理由で買って、周囲の人に新機能を自慢したとしても、実際に、
その機能を、どうやったら使えるかはわからず、おまけに、
カメラが初期設定のままでは、そうした機能は、殆ど全て
使えないようになっている。
たとえば「ISOがものすごく高いのだぞ」と言ったところで、
拡張せずに、デフォルトのままでは、それは使えない。
しかし、ある意味、メーカー側が仮に「初心者が買うから
安全対策をしておこう」と思った上で、こういった仕様と
したのであれば、それはユーザーのレベルを「下に見ている」
と言う事にもなり、それらは、中上級者層にとってみれば
そうした安全機構は、全て「使い難さ」にも繋がってしまう。
だがまあ、メーカー側の問題よりも、ニコン高級機を欲しがる
ビギナー層側に、責任の大半がある話であろう・・
ちなみに、近年においては、ニコン高級機を上級層や職業
写真家層が使っているのを見るケースが、かなり減ってきて
いるようにも思われる。(もし実際のデータもそうであれば
それは勿論、使い難いからだろう)

だが、F4においては「ネガフィルムを用い、露出補正をしないし、
絞り優先でシャッターダイヤルも廻さない」といった条件では、
邪魔なロック機構は、電源スイッチおよび巻き戻しレバーのみ
になる、この程度であれば、まあ許せる範囲だろう。
つまり、これがF4を使う際の最も重要な問題点回避方法だ。
(注:こうした問題点回避を行わない限り、F4は極めて使い難い
カメラとなる、例えばAFレンズでポジフィルムを使った場合等だ、
この場合、F4の評価点は大きく低下し、まるでデジタル一眼記事
で最低評価点となった「NIKON Df」並にまで落ちるであろう。
カメラとしての基本性能は高いのに、操作性や操作系が劣悪なのは
設計チームが「写真を撮る」という行為に精通していないからだと
想像される。旗艦機級の開発業務に忙殺される状況は良くわかるが、
写真を撮らないでカメラを設計する、というのもおかしな話だ)

他の弱点だが、シャッター音がうるさい事だ、これは同時代の
EOS-1HSも同様にうるさいが、F4は高域の周波数分布が耳障りだ、
(私は元音響エンジニアなので、測定をしなくても音響特性が
類推できる)この対策として超低速巻上げCsモードが搭載されて
いるが、フィルム給送音量が減っても、シャッター音自体の
音量は減る事がなく、連写性能も失われるので、無意味だ。
(本機をイベント等の撮影シーンに持ち出して撮ってみれば、
主催側や観客からクレームが来る事は明白だ。そういう状況は
開発側では経験していないのだろうか?実験室でシャッターを
切っているだけでは、現場の事は永久に理解できないであろう)
まあでも、銀塩機なので、あまり連写等は使わないと思うが・・
また、AFは1点だが精度も速度も不足気味だ、
ここについては、いっそMF機として使う事で、問題点を無効化
する事ができる。前述のように、F4はMFレンズとの相性が
極めて良いカメラだ。(この点も前述のように、この問題回避を
意識的に行わないと、F4はダメカメラとなってしまう)
その他の弱点は特に無い、ユーザー側がちゃんと本機の弱点を
回避できるスキルを持つならば、概ね良く出来たカメラである。

さて、最後に本機NIKON F4の総合評価をしてみよう。
評価項目は10項目だ(項目の意味は本シリーズ第1回記事参照)
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NIKON F4(1988年)
【基本・付加性能】★★★★☆
【操作性・操作系】★★☆
【ファインダー 】★★★★
【感触性能全般 】★★★
【質感・高級感 】★★★☆
【マニアック度 】★★★★
【エンジョイ度 】★★★★☆
【購入時コスパ 】★☆ (中古購入価格:90,000円)
【完成度(当時)】★★★★☆
【歴史的価値 】★★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
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【総合点(平均)】3.6点
購入時期が比較的早く、価格が高くてコスパが悪かった点が
災いしたが、他には平均値より低い点数は殆ど無く、好評価だ。
MFレンズ使用時における極めて高い実用性能が、本機の根幹の
特徴になっていて、その事が、マニアック度もエンジョイ度も
押し上げている理由だ。
現在であれば、前述のように二束三文の中古相場だ。
「カメラらしくない。F3の方が格好良い」という初級マニアも
居るかも知れないが、実際にフィルムを入れて写真を撮った
ならば、その評価は一変する事であろう。
が、AFレンズでは、その恩恵はあまり味わえない。あくまで
MFレンズを装着する事だ、そしてフィルムはネガを使用し、
絞り優先モードでのみ撮影する。
これでF4のいくつかの重欠点が消え、限りなく究極に近い
銀塩ニコン機となる。
もしかるすと、それを体験した初級マニアも、
「カメラは、姿・形ではないよね、やっぱ中身だよね・・」
などと、まるで青年期を終えた頃の男性が、女性を見る眼が
変わったような事を言い出すかも知れない(笑)
「ニコンのヒトケタ機は奇数番号が優れている」と言っていた
ユーザー層には、特に一度は使ってもらいたい傑作機だ。
まあもっとも、高度なカメラ知識及び撮影技能を持って
いないと、ちゃんと使う事すら難しいカメラではあるが・・

現代、本気で購入する気があれば1万円位予算を用意しておけば
十分であろう、特に、銀塩時代からカメラをやっていたニコン機
ユーザーで、家にニコン用MFレンズが数本ころがっていて、
「また昔のようにフィルムで撮ってみたいなあ」と思う中級者
レベル以上のベテラン層には、最適のカメラである。
重い、という点を除いては、最強の銀塩MF用旗艦機だ。
次回記事では、引き続き第三世代の銀塩一眼レフを紹介する。