コストパフォーマンスに優れ、かつマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第22回目は、広角レンズ編の第2回目とする。
まずは、最初のシステム、

カメラは、SONY NEX-3(APS-C機)
レンズは、Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm/f4.5
(中古購入価格 35,000円)
ミラーレス・マニアックス第16回、第56回記事で紹介の、
1990年代末のMF単焦点超広角レンズ(以下SWH15/4.5)
(注:Lマウント・アダプターは、レンズのねじ込みの止まり
位置が不定な為、上写真のように装着時にレンズが傾いて
しまう場合がある。APS-C機では問題無いが、フルサイズ機
だと斜めのフードでケラれてしまう為、この後アダプターの
ネジを全て緩めて調整し、正立位置で止まるようにした)
本レンズは、コシナ社が「フォクトレンダー」のブランド
商標を取得し、同ブランドで最初のカメラである「BESSA-L」
(1999年)を発売した際のキットレンズ(Lマウント互換)だ。
勿論銀塩時代なので、フルサイズ対応である。

一般的には、銀塩一眼レフのキット(付属)レンズは、
焦点距離が50mm前後の、いわゆる「標準レンズ」であり、
銀塩レンジファインダー機のキットレンズや、銀塩単焦点
コンパクトの搭載レンズの場合は、35mm前後の「準広角」で
ある事が多かった。
それが何故15mmという超広角がキットレンズとなったのか?
と言えば、BESSA(ベッサ)-Lは距離計を持たない「目測カメラ」
であったのだ。距離計を持つタイプは後継機のBESSA-Rや
BESSA-Tが存在したので、別に技術的に困難であったから
距離計を積まなかった訳では無く、あくまで製品のコンセプト
(設計思想)である。
実際にどう使うか?と言えば、本レンズを開放から少し絞れば
ほぼパンフォーカスレンズとして使用できる。
フルサイズでの計算例を上げると、15mmレンズをF5.6に絞って、
ピントリングの距離指標を1.5mに合わせると、ピントの合致
範囲(被写界深度)は、およそ0.7m~∞(無限遠)となる。
つまり、近接領域を除き、殆どの被写体にピントが合う。
これくらい深い被写界深度があれば、AFはおろかMFの操作も
不要だ、構えただけで何処でもピントが合っている。
これは、最強・最速の「スナップカメラ」となり得る。
ちなみに、ライカを始めとする殆どのレンジファインダー機
においては、レンズの最短撮影距離は0.7m程度である。
これは、レンジ機の距離計がレンズから光を取り込む映像の
範囲とは異なる為(これをパララックスと呼ぶ)近接撮影を
行うとファインダーで見てる映像と実際に写る範囲や距離が
異なり、写真が撮れなくなってしまうからだ。
現代の撮影技法では、広角レンズであれば最短撮影距離は、
できるだけ短い方が望ましい。だがレンジ機では28mmや
21mmという広角レンズであっても最短が70cmとかになって
しまうので、実質的に中遠距離スナップを行うしか撮影技法
の選択肢が無かった訳だ(これは、大きなストレスになる)
銀塩コンパクト機でもパララックスが発生する為、MF時代の
物は最短が長いものが多かった。しかし、だんだん近接撮影
のニーズが増えてくると、AF時代のコンパクト機では、
自動パララックス補正という機構が搭載されるようになる。
これは、AFが近距離撮影である事を測ると、ファインダー枠が、
近接撮影用のものに自動的にずれるという機能であった。
そして「BESSA-L」だが、距離計もファインダーも持たない、
(まあ一応ファインダーに関しては、外付け用の物が付属して
いたのだが、ノーファインダー撮影も十分に有りだ)
よって、ファインダーを使わなければ、原理的には前述の
パララックスも起こらない。
なので、ライカ等での「最短70cmの呪縛」から逃れる事が
「BESSA-L」では可能になった訳だ。
本レンズSWH15/4.5も同様だ、ファインダーさえ見なければ、
近接撮影の制限は無い、よってレンジ機用のレンズとしては
異例の最短撮影距離30cmを実現している。

さて、本レンズは、およそ20年前のセミオールドレンズと
なっているが、その後Ⅱ型,Ⅲ型と生産が継続されており、
現在のⅢ型では、従来のレンジ機用マウントの他、Eマウント
用でも販売されている(ただし最短撮影距離は、50cmと
長くなっている)
しかし、発売から約20年が経過して、現在の最新型Ⅲ型は、
価格(新品定価)も十数万円まで跳ね上がっている
(Ⅰ型は、確か5万円程度の定価だったと思う)
旧型の中古を入手するならまだしも、最新型の場合は、
このコストの高さをどう判断するか?で、このレンズの
価値は変わってくる事であろう。
そして、初期型といえども基本的には高性能なレンズであり、
本レンズの発売時には、"超広角の「幻のレンズ」である
「ツァイス・ホロゴン」と同等の写りをする"と、マニアの
間で話題になったレンズである。
フルサイズで使うと超広角レンズ特有の「周辺光量落ち」が
発生し、それはそれで味があるが、今回使用のNEX-3はAPS-C
機なので周辺はカットされ、その傾向は見られなくなる。
しかしながら、レンズ中央部の収差等が殆ど無い部分を
使うので全体的な描写力は向上する。
APS-C機で、およそ22mm相当の超広角画角でありながら、
高描写力が得られるレンズとして「本レンズがレンジ機用で
あるから、どうのこうの」といった要素とは根本的に異なる
視点において、優秀な超広角レンズとしてミラーレス機等で
使用ができる。
(注:フランジバックの短いレンズである為、一眼レフでは
アダプターを使っても基本的には装着できない)
特に面白いのは、NEX-3でのパノラマモードを使用するとか、
より新しいNEX/αでのエフェクトを用いるなど、レンジ機の
時代では有りえなかった撮影技法を組み合わせる事である。

(注:上写真は掲載の為の縮小率が極めて大きい為、画質劣化が
激しいが、オリジナルの画素数ではちゃんと写っている)
レンジ機用レンズと言えども銀塩レンジ機の時代の撮影技法で
風景やスナップを撮ったりする事に拘る必要は無い。
デジタルにおいては付いている新機能を何でも自由に使えば
良い訳だ。そもそも「BESSA-L」自体、旧来のそうした撮影技法
から脱却する新たな撮影技法を用いる事をコンセプトとして、
銀塩時代末期に開発されたカメラなのだ。

本レンズの総括だが、購入価格35000円は、高コスパとは
言い難いレンズではあるが、まあ、本シリーズで紹介できる
レンジ機用のレンズを選ぶとすれば、この1本に限る事であろう。
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さて、次のシステム、

カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)
レンズは、SIGMA 19mm/f2.8 EX DN
(新古品購入価格 7,000円)
ミラーレス・マニアックス第22回、補足編第3回記事で紹介の、
2010年代のミラーレス機用AF単焦点広角レンズ。
本レンズの19mmという焦点距離は、中途半端なイメージが
あるが、これは元々、本レンズはSIGMA製の高級コンパクト
DP1(メリル以降)シリーズの搭載レンズを、単体発売した
ものであるからだ。
DP1(メリル)は、APS-C機であったので、19mmの焦点距離は、
フルサイズ換算約28mmの慣れ親しんだ広角画角となる。
本レンズ19/2.8も同様に、APS-C機のNEX-7で用いると
28mm相当の画角となる。

なお、NEX-7ではプレシジョン・デジタルズームが簡便に
使用できるので、実際には(単焦点である事による)画角
の制約は、あまり感じる事は無い。
ちなみに、NEX初期の3や5では、デジタルズームの使用が
著しく制限されていて、SONY純正単焦点レンズくらいしか
基本は使えないのであるが、本19/2.8はNEX-3に装着時にも、
デジタルズーム機能を利用する事ができる。
ちなみに、本19/2.8やその他のDNシリーズは、APS-Cの
Eマウント機(NEX/α)や、μ4/3の専用レンズであり、
フルサイズ機で使用する場合は、APS-Cモードとして
使用する(α7系の場合、自動又は手動切り替え)
そして、本レンズは2012年に発売された初期型である。
これは外観がちょっと地味な低価格エントリーレンズであり、
定価が24,000円程、実売価格は1万円台後半であった。
しかし、この直後、SIGMAではレンズラインナップの
戦略的な変革があり、Art/Contemporary/Sportsの
3ラインで整備される事となった。
本19/2.8DNは、そのARTラインに適合させるレンズとする為
外観を金属として、ブラックの他にシルバーも用意された。
名称も新たに19mm/f2.8 DN | Artとして、発売間もない
2013年にマイナーチェンジが行われた。
その際、旧タイプは在庫処分の為、中古チェーン店を通じて
新古品(新品だが保証無しの中古扱い)として、最安値が
7,000円台で販売された。本レンズは、その底値で購入した
初期型である。
初期型と現行品ARTライン(A型)の差は、外観の差異の他は
無く、地味な外観を気にしないのであれば、初期型で十分だ。
そして、2018年現在、初期型とA型での中古価格の差異は
殆ど無く、いずれも1万円前後の安価な相場で取引されている。

本レンズの長所であるが、現行レンズとしては圧倒的に安価な
相場という点がある、そして、描写力はかなり高く、さすがに
同社製の高級コンパクトに搭載されたレンズである。
つまり、コスパは極めて高く、最強レベルと言えよう。
では何故、本レンズがミラーレス・マニアックスの名玉編に
ノミネートされなかったのか?と言えば、本レンズは、
コスパと描写力以外は、あまり特徴(長所)が無いからだ。
弱点は、まず作りの安っぽさ、そしてモーター内蔵レンズで
あるのだが、電源を投入しないと中で部品がカタカタ言う。
これは正常なのだが、カメラを持って歩きながら、カタカタ
言うのは実に気持ち悪い、レンズでは無く他の何かが故障して
いるのか?それすらわからなくなる。
かつて、こんな異音のするレンズは1本もなかった、これは
SIGMAのDNシリーズの3本だけの重欠点である。
なお「音くらい気にしない」という意見もあるかも知れないが
カメラ(レンズ)は趣味の要素がある。様々な要素を五感で
捕らえて使うものであり、シャッター音質が悪いとか、うるさい
とかもカメラの重欠点になりうる。レンズで言えば、一部の
メーカーの超音波モーターの高周波音がうるさく感じる。
こうした事は、けっして「どうでも良い事」では無い。
なお、カメラの電源を入れると、電磁モーダーが正しい位置に
セットされるのか、音はしなくなる。
ピントリングは無限回転式で、MFでは使い難い。
もっとも、今時のミラーレス機用の普及版AFレンズは、ほぼ
全てが無限回転式で、どれもMFで使い難く、大いに不満だ。
MF撮影というものは、有限回転式のヘリコイドを、いっぱいに
廻し、最短撮影距離と無限遠撮影を手指の感覚で把握する。
そして、無限から少し手前とか、最短から少し遠くとか、
中間距離とか、熟練すれば、そのあたりのピント距離も手指の
感覚だけでわかるようになる。これにより、カメラを構える
動作をしながら、並行してヘリコイドを感覚で廻し、カメラを
構え終えた時には、ほとんどピント距離が合っていて、あとは
微調整を行うだけ、という状態がMFの上級テクニックだ。
しかし、無限回転式ヘリコイドのレンズでは、最短も、∞も
いずれも手指の感触だけでは把握できない。まさか、開発者は
「MFでは、カメラを構えてAFで合わない場合にのみピントリング
を廻すもの」だと思い込んで設計しているのではなかろうか?
そんな使い方であればMFの意味が無い、よって、この手の
ミラーレス機用AFレンズは、ぼぼ全てMFでは使い物にならない
のだ。
そして、MFの問題のみならず、コントラストAFのみで低性能な
初期ミラーレス機では、合わないAFに我慢しながら忍耐の撮影
(当然、楽しく無い)を強いられてしまう。
まあこの重欠点は、本レンズだけの問題ではなく、ほぼ全ての
ミラーレス機用普及版AFレンズで共通だ。
マニアがミラーレス機をオールドMFレンズの母艦として使う
事が多く、純正AFレンズなど殆ど買わないのは、そういった
理由もあるかもしれない、つまり、使っていて楽しく無いのだ。
けどまあ、MFで使えないと言っても、そもそも本レンズは、
AF広角レンズだ、19mmの実焦点距離であれば、F5.6程度まで
絞っておけば、ほとんどパンフォーカスレンズとなり、
初期コントラストAF機等でのAFの精度不足も、あまり大きな
問題にはならない。
本レンズの最短20cmは、19mmレンズだから当たり前、と
言う事は出来るが、とは言え、他の多くの広角レンズは、
そこまでのレベルに達していない事も多く、本レンズの
この性能は悪い方ではない。
逆光耐性も不満は無く、描写力という点においては、殆ど
欠点が無い。

コスパの観点からは、なかなか素晴らしいレンズであるが、
マニアック度、エンジョイ度、所有必要性のいずれも低評価
となってしまい、マニア的にはちょっと微妙なレンズである。
まあ、安価であるので、実用一辺倒の目的で使うのであれば、
ラフに使ったり、過酷な撮影環境においても、壊しても良い
高性能レンズとして、極めて重宝する事であろう。
NEXユーザー(またはα-EマウントAPS-C機ユーザー)
であれば、本記事で後述のE16/2.8か、本レンズのどちらかは、
単焦点広角として、持っていて損は無い。
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さて、次のシステム、

カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G5(μ4/3機)
レンズは、PANASONIC G14mm/f2.5 (H-H014)
(中古購入価格 13,000円)
ミラーレス・マニアックス第66回記事で紹介の、
2010年発売のμ4/3機用AF単焦点広角レンズ。
本レンズは、LUMIX DMC-GF2(2010年)のキットレンズ
としての発売となった。
それ以前の機種、DMC-GF1のキットレンズは、やや贅沢な設計の
G20mm/f1.7(ミラーレス第45回、補足編7回)であったが、
本レンズにおいては、コストダウンを図った事や、あるいは、
DMC-GF2と同年2010年に発売された SONY NEX-3/5の
キットレンズE16mm/f2.8と同様に、フルサイズ換算で
24mm(NEX)ないし28mm(GF2)程度の広角単焦点レンズを
搭載し「光学ズームの代わりにデジタルズームを使う」事を
基本とする、という商品コンセプトが流行していた時代であり
(注:これは初期ミラーレス機のコントラストAFの精度不足を
解消する意味もある)そういう観点からキットレンズも広角化
したのかも知れない。

本レンズG14/2.5の特徴だが、実は、ほとんど見当たらない。
あえて言えば、その仕様に係わる価格帯の優位性か?
・・というのも、μ4/3のAF広角単焦点を探そうと思うと、
同じパナソニック製では、超高価な12mm/f1.4と、高価な
15mm/f1.7があるだけで、他にμ4/3を扱うオリンパスでも
高価な12mm/f2.0があるだけだ。
まあ、つまり、μ4/3においては、中古で気軽な値段で買える
AF広角単焦点は、本レンズしか無いと言えよう。
さて、今回使用のDMC-G5は、デジタル拡大系の操作系に優れた
カメラである。テレコン無しの状態では、フルサイズ換算で
28~56mm/f2.5の広角系デジタルズーム機となる。
これは、往年の銀塩高級コンパクト CONTAX Tvs(1993年)
28~56mm/f3.5~6.5 の画角感覚に近い。
同機は1990年代に私が最初に購入した高級コンパクトであり、
現在でも保有している(下写真)

Tvsは超高価(定価17万円)なカメラであったのだが、
ほぼ唯一のズームレンズ搭載銀塩高級コンパクトであり、
描写力に不満は無かった。(ちなみに型番vsは小文字で
書くのが正しく、その意味は「バリオゾナー」である)
そして作りが極めて良く、まるで工芸品であった。
まあ、ズーム比が2倍と低いのと望遠側でF6.5と急に暗くなる
のが欠点だろう。
でも、私は気に入っていて2000年代中頃の銀塩時代末期まで、
長らく愛用したカメラだ。
本システムでの「Tvsもどき」では、28~56mm/f2.5と明るい。
一般撮影ではこれで十分な画角範囲だ、現代の標準ズームは
どんどんズーム比が大きくなっていく傾向があるが、それは
本当に「進化」なのだろうか?とも思ってしまう。
そして、DMC-G5ではデジタルズームに加えて、ここからさらに
デジタル・テレコンバーターを2倍または4倍でかける事が
できるので、56~112mm/f2.5 または112~224mm/f2.5
の、ちょっと不思議な焦点距離感覚のズーム機として使える。
まあでも、デジタルテレコンは画質劣化を伴うため、無劣化の
28~56mm/f2.5の、広角(デジタル)ズーム機として使うのが
無難であろう。

かつて本レンズは、LUMIX GF1やOLYMPUS E-PL2といった
非EVF&非デジタルズーム機で、気軽な広角コンパクト機、
つまり、「GR Digital」のような感覚で使う事をメインとして
いたのだが、今回「Tvsもどき」として使うと、意外なほど
使い易い事が発見できた。

まあそれにしても、特徴も、あまり目立った欠点も無い
レンズではある。けど、コスパが良い為にμ4/3機ユーザー
であれば、ほぼ必携のレンズであると言えるかも知れない。
そして、あくまで実用レベルで使うレンズである、マニアック
さは欠片も無い・・
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次は今回ラストのシステム、

カメラは、SONY NEX-3(APS-C機)
レンズは、SONY E16mm/f2.8 (SEL16F28)
(中古購入価格 8,000円)
ミラーレス・マニアックス第51回記事で紹介した
2010年発売のEマウントAPS-C機用AF単焦点広角レンズ。
NEX-3とE16/2.8だが、ライブや舞台の撮影で良く使用した
システムである。
それらは暗所であるから、ほぼ絞り開放で使うのであるが、
F2.8で撮影距離2mであっても、およそ1.2m~6mの距離の
範囲にピントが合う(被写界深度が5m程度ある)計算だ。
なので、ステージ等を広く撮るのに適したシステムとなる。
その際の感度だが、初期のNEX-3/5でも最高ISO12800
と、まあ十分な性能であり、後年のα(NEX)では、さらに
高感度化されているので暗所の撮影でも問題は無い。
なお、現在はこの目的のレンズは後年のSIGMA C16mm/f1.4
を充てている(後日紹介予定)
本記事では、舞台やライブでの本レンズE16mm/f2.8を
用いて撮った写真を主に紹介していく。

さて、本レンズはEマウント最初期の製品NEX-3/5(2010年)
のキットレンズである。
前述のG14/2.5の所でも述べたが、デジタルズーム使用を
前提としたキットレンズの為、広角単焦点だ。
APS-C機であるNEX-3に装着時の画角は24mm相当。
これをデジタルズームで、最大10倍、つまり24~240mm/f2.8
として使えるという訳だ。
ただし、プレシジョン・デジタルズームは画素数を切り詰めて
相対的に拡大する、いわゆる「スマート・ズーム」方式とは
異なり、「画像処理により補間拡大を行う方式」である。
つまり、拡大しすぎると画質がどんどん劣化していく。
またNEX-3の背面モニター(注:EVFは内蔵されていない)では
プレシジョン・デジタルズームを掛けている際の画像は極めて
汚く、ちゃんと写るのかどうか不安になる。
しかしシャッターを押すと、そこから画像処理が始まり
(注:時間はかからない)撮影された画像は、まあまあ見える
レベルとなる。
ちなみにデジタルズームが3倍を超えたあたりから画像の輪郭
が固くなり、全体的な画質の劣化が始まる、よって実用的には、
4倍程度までの拡大が限界と思われる。
最短撮影距離は24cmと、16mmレンズと考えるとやや不満だ。
(焦点距離の10倍の法則から本来は16cmまで寄れて欲しい)
おまけに、近接撮影では本システムにおいてはAFのピント精度
が怪しくなってくる。しかし、MFに切り替えても、例によって
無限回転式のヘリコイドであるから、どこが最短のピント位置
なのかが、わからない。
一応、NEXは比較的優秀なピーキング機能を持っている。
ただし、そのアルゴリズムは輪郭抽出系処理と思われ、これは、
広角レンズで被写界深度が深い場合は、画面内の多くの場所
(輪郭)にピーキングが反応し、どの距離に対してピントを
合わせているのかが、良くわからない。
まあ「全て被写界深度内だから良い」とは言えるが、例えそうで
あっても、前方被写界深度のぎりぎりの短距離にピントを
合わせると背景がボケるし、逆に後方被写界深度のぎりぎりの
奥にピントを合わせれば、前景にはピントが合わなくなる訳だ、
前後ともに有効な被写界深度を稼ぐ為には、銀塩時代で言う
ところの「空中ピント撮影」を行いたいのであるが、それが
ピーキング+無限回転ヘリコイド式AFレンズの、MFモードでは
良くわからない訳だ。
ちなみに「空中ピント」とは、撮影地点からの距離の異なる
2つの被写体の両者に同時にピントを合わせる場合、
どちらか1方の距離にピントを合わせて絞り込むのではなく、
そこまでは絞らずに、両者の被写体距離の中間の「空間」に
ピント距離を設定する撮影技法の事を言う。
で、被写界深度は、原理的にピント距離の後方の方が深い。
例えば、1mの距離の被写体と、2mの距離の被写体で
「空中ピント」を行う場合、中間距離の1.5mにピント位置を
合わせるのではなく、やや手前の1.35mあたりにピント位置を
決める。
これで前方被写界深度と後方被写界深度の比が適正になるが、
知識と技術と計算能力が要る上級撮影技法である。
これはそう簡単では無い為、キヤノンの銀塩AF一眼レフ(EOS)
では「DEPTH」というモードがあった。これは、2つの距離の
異なる被写体を、それぞれAFで測距し、両者を被写界深度内に
収めるように絞り値を決めてくれるという露出モードの一種だ。
(注1:この機能を使っても、「空中ピント」は原理的に出来ない。
注2:デジタル時代のEOSの一部には「A-DEP」というモードが
あるが、これは複数の測距点における距離差間での被写界深度
を満たすように絞り値を自動調整する機能であり、「DEPTH」
モードとは意味が異なる)
で、ピーキングとか、無限回転式ヘリコイドでは、
原理的にこうしたMFの上級テクニックが使い難い(使えない)
ミラーレス機の純正AFレンズが、いずれもこうした仕様と
なっているのは残念な話である。これでは、どんなカメラや
純正レンズを使ったところで、MFはできないではないか。
それにAF性能も原理的に一眼レフには及ばない。
(注:仮に像面位相差AF等での技術革新があっても、今度は
一眼レフにもその技術が搭載されていくので差が縮まらない)
なので、結局のところミラーレス機では純正AFレンズを
使わず、アダプターを介してMFレンズ(オールドレンズ)を
使うケースが多くなるのかも知れない。
まあ、他の人はいざしらず、少なくとも私はそうだ、
ミラーレス機の純正AFレンズも多数所有しているが、どうも
それらは使い難くて好きにはなれない。

さて、初期のミラーレス機では、μ4/3機を始めセンサー
サイズが小さいものが殆どであった、本機NEX-3もAPS-C機
なので例外ではない。
こうしたシステムの場合、明るい広角レンズが不足する場合が
殆どである。μ4/3の場合は、AF単焦点では12mmが下限であり、
その場合の換算画角は24mmだ。ズームの場合はもっと下の
焦点距離があるが、開放F値が暗くなる。
NEXでも同様だ、純正単焦点では、本レンズE16mm/f2.8が
最広角となる(サードパーティ製レンズでは、より広角の
単焦点も存在するが、MFであったり、あるいは高価だ。
また、近年SIGMAよりC16mm/f1.4 DC DNが発売されたが、
若干高価だと思う)
まあ、そんな状況なので、本E16/2.8は、NEXシステムの
ユーザーであれば、貴重な明るい広角レンズであり、しかも
価格も安価だ(中古は1万円前後で豊富に流通している)

総括だが、本E16/2.8は、写りは悪くは無いが、さして
感動的な写りという訳でもない。
まあ、描写力に関しては、オーソドックスなレンズである、
そういう意味では、コスパは良いレンズだと思う。
注意点としては、まず、フルサイズのα/Eマウント機
(α7等)に装着する場合は、APSモードで使う事。
(自動または手動で「APS-C撮影」をONとする、なお、
APSモードでは、記録画素数が大幅に減るので要注意)
あるいは、あくまでAPS-CのEマウント機専用とするかだ。
本記事で紹介した SIGMA (Art)19mm/f2.8DNか、本レンズ
E16mm/f2.8のいずれかは、NEX系ユーザー(α/Eマウントの
APS-C機)であれば必携とも言えるであろう。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、望遠編(その2)の記事とする。