コストパフォーマンスに優れたマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回は、特殊レンズ編のPart 2とする。
まずは、最初のシステム、

カメラは、NIKON D300(APS-C機)
レンズは、清原光学 VK70R 70mm/f5
(中古購入価格 14,000円)
ミラーレス・マニアックス第5回、補足編4回記事で紹介の、
1980年代のMF単焦点ソフト(軟焦点)レンズ。
本レンズの出自に関しては、当該記事や他のソフトレンズの
記事にも詳しいので割愛するが、簡単に言えば、本レンズは、
ヴェスト・ポケット・コダック(VPK)という約100年前のカメラ
のレンズ構成が元になっている。その1群2枚構成レンズは
ユーザーがフード状の絞りを外す改造でソフト効果を得る事が
できたのだ。
補足だが、1群2枚構成(メニスカス型)レンズは、一般に
「単玉」と呼ばれている。この為、VPK等の事を「ヴェス単」
(ベス単)と言い、この、ソフト効果を狙った改造を
「ベス単フード外し」と呼ぶ。
さらに補足、コダックの「ヴェスト」とは、ヴェスト判
(127判、ベスト判)フィルムを使用する、という意味であり、
広義においては、ベスト判フィルム使用の単玉レンズ搭載
カメラの総称として、「ベス単」と俗称されていた模様だ。
よって、厳密には「VPK」だけが「ベス単」では無い訳だ。
仮に、オリジナルの「VPK」が入手できなかった場合でも、
他社の「ベス単」カメラを入手して、同様な改造を行う事で、
やはりソフト効果を得る事が出来るケースもあった様子だが、
本記事では、便宜上「VPK」を「ベス単」と呼ぶ事とする。
で、このVPKのレンズ構成を蘇らせた物は、まず本VK70Rがある、
このVKは「ヴェスト・キヨハラ」という意味である。
他には、同じく清原光学製のVK50R(未所有)、そして
安原製作所 MOMO100(ミラーレス補足編第7回、ハイコスパ
第5回)等がある。

さて、ソフトレンズの描写についてはミラーレス・マニアックス
等の記事で多数紹介しているので、今回は少し変わった使い方を
してみよう。
・・と言うか、ソフトレンズは一眼レフでもミラーレス機でも、
ピントが合っているのかどうかわからず、使っていてイライラと
してくるのだ、つまりエンジョイ度が低いレンズと評価されて
しまい、ミラーレス名玉編には1本もランクインしていない。
(ただし、どうやらピント位置の微妙な差異(ズレ)により、
描写傾向も多少変わる模様なので、いずれまた検証してみよう、
テクニカルな要素なので、エンジョイ度が高まるかも知れない)
で、今回の変わった使い方とは「ソフトレンズを絞って使う」
と言う事である。
他のソフトレンズの記事でも述べている通り「軟焦点化」は
レンズの「球面収差」によるものだが、これは絞り込む事で
解消される。
100年前のVPKにおいても、上記の「フード状の絞り」がある事で、
軟焦点化せずに普通の写りを得ていた訳だ。
VPKの絞り値は約F11相当であったと聞く、この情報から、
今回のVK70Rにおいても、同等のF11程度まで絞って使ってみる。
実は、この使い方はミラーレス補足編第4回記事で試した
事がある。この時の「パキッパキに固い写り」が、ずっと気に
なっていたので、今回、またそれを再現しようと思ったわけだ。

さて、絞り込むと、案の定、輪郭が極めて強くなる。
しかし、これはこれで面白い。
現代のレンズでも、例えばSONY E30mm/f3.5 MACRO
(SEL30M35)が同様に輪郭線が極めて強い描写をするが、
まあでも、珍しい描写傾向だ。
個性的な描写力を持つという事は、たとえそれが一般的な
意味でのレンズの欠点であっても、逆に価値のある事だと思う、
すなわち、性能的な弱点を「個性という名の長所」に変える
という意味だ。
このような考え方は、初級中級者には困難だと思う、
レンズの欠点がわかると、まるで「鬼の首を取ったかのように」
それで大騒ぎをする。
しかし、その欠点を理解した上で、それを逆用する事の方が、
むしろ、スキルアップの要点となるだろう。

本レンズ VK70Rだが、絞りを開けて派手なソフトレンズ、
中間絞りで上品なソフト効果、絞り込んで輪郭を強調した写り、
と、複数の撮り方が楽しめるレンズである。
銀塩時代は、あまり絞り込むとシャッター速度が低下したり
して使い難くなったが、現代の高感度デジタル機では
絞り込んでも特に問題はない。

今回の母艦D300だが、本来、デジタル一眼の光学ファインダーは、
レンズを絞り込むと暗くなるので、ミラーレス機の方が使い易い。
が、今回はD300での、そうした絞込み状態におけるファインダー
の見えやMF操作感をチェックする、という「限界性能テスト」の
意味もある。
その結果としては、D300では、本VK70Rの使用時には、
そもそも正しい露出値が得られない。
電子接点も、Ai型露出機構(爪)も無いレンズだからだろう。
(一応、レンズ情報の手動設定は行っている。また、他の
非Ai型かつ独立絞り機構を持つ特殊レンズであっても、様々な
ニコン機では、同様に全て露出値が不安定になってしまう)
そして、ピントの山も、やはりわかり難いし、絞るとだいぶ
暗くなる。ともかく、まともには動作せず、極めて使い難い
システムである事は確かだ。
本レンズはニコンマウント版であっても、ミラーレス機で
使う事を推奨する。

さて、VK70Rであるが流通本数が少ない為、現在では極めて
レア品となっている。
ただ、どうしても本レンズでないとならない、という理由は
無く、他にもソフトレンズは何種類か存在しているし、
現行製品も、前述のMOMOやLENSBABYから市販されているので
興味があれば、それらを選択する方が簡便であろう。
なお、ソフトレンズの描写はソフトフィルターやエフェクト
やレタッチで得られる効果とは異なる。という事は過去記事
でも何度も述べた通りだ、つまり独特のソフト効果を得る為
には、実際のソフトレンズを使用するしか無い。
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さて、次のシステム、

カメラは、SONY α65(APS-C機)
レンズは、SONY DT30mm/f2.8Macro SAM(SAL30M28)
(中古購入価格 10,000円)
ミラーレス・マニアックス補足編第6回、ハイコスパ第14回
で紹介の2009年発売のAF単焦点準広角マクロレンズ。
これをマスターレンズとして、さらに加えて
ZENJIX soratama 72(宙玉)を装着している。
(新品購入価格 6,000円)
こちらは、ミラーレス・マニアックス第61回、第69回記事で
紹介の2010年代の特殊アタッチメント型レンズだ。

さて「宙玉」を使用するには、ワーキング・ディスタンス
(以下WD)が短いマスター(主)レンズを使用しなくては
ならない。「WD」とは、最短撮影距離時等での、レンズの
先端部から被写体までの距離を言う。
ところが最短WDの短いレンズは、そう多くは無い、
一般的な標準ズームレンズ等では、WDは20数cm程度であり、
単焦点レンズでも同様か、さらに長い。
「宙玉」とは、球体のレンズの事であり、そこにピントを
合わせる必要がある。それらの一般レンズでは、20cm以上
「宙玉」を前に出す必要があり、ボール紙やプラスチックス
等で、簡易鏡筒を自作しないとピントが合わない。
自作は少々面倒なので、ミラーレス第61回記事では、
一般的な広角レンズの SIGMA AF24mm/f2.8を使用した。
最短撮影距離が最も短い24mmレンズではあるが、それでもまだ
WDが長く、それを縮める為に、様々な付属品を用いる等して、
とてつもなく複雑なシステムとなってしまった(以下写真)

これでは流石に酷い(苦笑)
そこで、代替としてWDが10数cm程度である標準マクロを使う
事を考え、ミラーレス第69回記事ではMINOLTA AF50mm/f2.8
Macroを使用した(以下写真)

これでだいぶスッキリとはしたが、WDがまだ結構長い為に
システムの全長が長く、かつ接合部が脆い為に、取り廻しに
とても神経を使う。
なので、WDが最も短いレンズを探す事とした。
WDは「最短撮影距離-レンズ長-フランジバック長」で求まるが、
それが数cm台であったのが、DT30/2.8Macroだ(以下写真)

つまり、SONY DT30/2.8は等倍の準広角マクロで、そのWDは
僅かに数cmである。なので今回の記事では、最小限の全長の
「宙玉」システムを構築しようと考えての実験である。
宙玉及び付属リングに対しては、ステップアップリングを
4個用いてフィルター径を合わせこんでいる。
DT30/2.8のフィルター径はφ49mm、これを最終的には、
「宙玉」におけるアタッチメント径のφ72mmにまで広げた。
全長は旧来よりもだいぶ短くなったが、依然、接合部は
脆い構造なので取り扱いは慎重に行う必要がある。
ちなみにDT30/2.8のWDの仕様は未公開だが、
最短撮影距離12.8cm-レンズ全長7cm-αマウントの
フランジバック4.45cm=1.35cm と計算する事が出来る。
この場合「宙玉」は、レンズ前面から1.35cm以上離して
しまえば、ピントを合わせる事が可能になるので、まあ適当な
長さのフードやステップアップリングを組み合わせれば良い。
しかし、実際には計算通りには行かず、上写真のように
3~4cm程度のWDを確保しないと宙玉にはピントが合わなかった。
原因は不明だが、最短撮影距離又はレンズ全長のスペックが
若干違っているのか、あるいは宙玉の球体中心迄の、半径を
加えた長さでピントを合わせる必要があるのかも知れない。

ちなみに、撮影距離が変わると、写る「宙玉」の大きさも変わる。
一般的な「宙玉」の作例では、「宙玉」の直径が小さく写り
過ぎているものが多い、これはつまり、WDの長いレンズにより
遠くの「宙玉」を写しているシステムが多いからであろう。
でも、ちょっと不思議に思う、DT30/2.8のような、やや特殊
なレンズを使わないまでも、一般的な標準マクロを使ったり
すれば、そこそこ「宙玉」は大きく写るのだ。

「宙玉」のユーザー層は、マクロレンズは持っていないので
あろうか?逆に言えば、レンズマニアのようなユーザー層が
使うレンズではなく、標準ズームしか持っていないような
初級者が買うレンズで、ちょっと「色モノ」(=正統派では
無い)的と思われているのであろうか・・?
まあでも、「宙玉」はビギナー以外が使っても十分に楽しめる。
中級者以上であればWDの意味もわかっているだろうし、フードや
ステップアップリング等のアタッチメント(付属品)に関する
知識もあるだろうから、「宙玉」撮影に適正なシステムを組む
ことができると思う。

使用上の注意点だが、WDを短くしたマクロ撮影では被写界深度が
かなり浅くなる。その状態では「宙玉」の周囲に写る映像も
ボケ量が非常に大きくなる。・・と言うか、ボケすぎるので
主レンズの絞り値は出来る限り絞って、被写界深度を適正にして
用いるのが良いであろう。
その点では、ボケ量のチェックを行わなければならないので、
一眼レフよりもミラーレス機が適切だ。
(注:今回使用のα65は一眼とミラーレスのハイブリッド機
であるので、絞り込みボタンを押す事でEVF上での被写界深度の
確認が容易だ)
なお、「宙玉」システムでは画面の上下が反転するので、
構図決めには若干の感覚上の慣れが必要だ。
「宙玉」は必須のシステム、という訳ではないが、
一眼レフ用の標準マクロ又は準広角マクロを所有している
ユーザーであれば「宙玉」を容易に利用できる事であろう、
価格は、さほど高価なものでは無いので、試してみる価値は
十分にあると思われる。
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さて、次のシステム、

カメラは、OLYMPUS Pen Lite E-PL2(μ4/3機)
レンズは、OLYMPUS Body Cap Lens BCL-1580 15mm/f8
(新品購入価格 5,000円)
ミラーレス・マニアックス第0回、第33回、補足編第4回で
紹介した、2010年代のMF単焦点広角レンズ。
レンズ、とは言え、オリンパスでは本製品はアクセサリー
扱いであり、正式な交換レンズとは見なされていない。
μ4/3専用レンズであり、ミラーレス補足編第4回では
実験的にEマウントAPS-C機NEX-3に装着してみたが、案の定
イメージサークルが足らず、画像周辺がケラれてしまった。
そして、今回のカメラは「トイレンズ母艦」のE-PL2だ、
トイレンズ母艦というのは、カメラ自身のAF/MF性能があまり
高くない場合等で、ピント合わせの負担の少ないレンズ、
特に被写界深度の深い広角単焦点やトイレンズを使う為の
ボディである、という意味だ。
他の条件としては、開放F値の暗いトイレンズを使う場合に備え、
内蔵手ブレ補正機能、AUTO ISOのままでも高感度が得られる事、
小型軽量である事(EVFは無くて良い)フラッシュ内蔵である事、
エフェクトを多数搭載している事、露出補正操作がダイレクトに
可能である事、ピーキング機能がある事、優れた画面拡大操作系
を備えている事、そして(中古)が安価である事、である。
E-PL2は、この多くの条件を満たす理想的に近いトイレンズ母艦
である。ただし、ピーキング機能は無く、拡大操作系は不便だ。
それと、使えるエフェクトはさほど多くは無い、まあ使えて
ダイナミック系(擬似HDR)位であろうか・・

ちなみに本BCL-1580は、15mm/f8とスペック的にはトイレンズ
相当であるが、写りはさほど酷くは無く、まあ、トイレンズと
写真用レンズの中間くらいの描写力だと言える。
そして、レンズ前面にはMF用のレバーがついていて、ちゃんと
ピント合わせができる。ただ、上記のように、E-PL2のMF性能
は弱いので、レンズのMFレバーを、無限遠から少し手前の
パンフォーカス位置(クリックストップがある)に入れて
おくのを通常の使用法として、近接撮影時のみ厳密なピント
合わせを行えば良い。

しかし、最近どうもこのE-PL2は不調だ、老朽化が原因と
思われるので、ぼちぼち後継機にリプレイスする必要がある。
が、トイレンズ母艦の候補のPEN LITEシリーズ後継機では
殆どがフラッシュを内蔵していないし、ピーキング機能も
近年のE-PL7に至るまで搭載されていないので、良い選択肢が
無い状況だ。(注:最新型のE-PL9はフラッシュ内蔵)
OLYMPUSの小型ミラーレス機は、2010年代初頭より、
その多くがフラッシュ外付けとなってしまっている。
まあ、他社との小型軽量化の競争の為に、やむなくそうしたの
かも知れないが、銀塩時代のオリンパスであれば、カメラ
(やレンズ)の基本性能を一切犠牲にする事なく、小型化に
命を掛けたコンセプトであったはずだ。
まあ、その背景には「天才技師」と呼ばれた米谷美久氏
(1933-2009)の存在も非常に大きかったのかも知れない。
彼は銀塩PENシリーズやOMシリーズを開発する際、極限まで
それらのサイズを小さくしたのだ。
その影には想像を絶する苦労や試行錯誤があった事は、
数々の書物や著作などより、うかがい知る事が出来る。
で、PEMもOMも、いずれも歴史に残る名機であり、半世紀を
超えて今なお、現代のオリンパス製ミラーレス機に名前が
残っている。
彼の代表作の名前を引き継ぐ現代のデジタル時代のPENやOMが
「小型軽量化するために、フラッシュを外しました」では
なんとも情け無い状況ではなかろうか?米谷氏がご存命であれば
「性能を一切妥協せず、極限まで小型化を目指せ!」と
言われたかも知れない。
まあそれは良い。どのカメラを買うかは、あくまでユーザー側の
選択だ。それに、全てがパーフェクトなカメラなんて存在しない、
仮に超高性能のカメラがあっても、それは必ず、大きく、重く、
高価である、という課題を抱えている。
結局のところ、ユーザーの目的としている仕様に合致したカメラ
を買えば良いわけだ、けど、その結果、トイレンズ用とか
アダプター母艦とか、望遠母艦とか、あれこれと目的別に
カメラが増えてしまうのは、まあ、私自身はやむを得ない事だと
思っている。そんなに沢山カメラを所有するのが嫌だとか面倒
だとか言う場合は、万能機に近いカメラは一応は存在している。
けど、それも時期によりけりだ。その時代において他を圧倒する
高性能や高コストパフォーマンスであったとしても、次の時代
では、そうでは無いかも知れない。
勿論、他社も、そのライバル機の性能を目指して、次の世代の
カメラを開発するからだ。
結局、最新のものを追いかけていたらキリが無いという事に
なってしまう。だから私は、今はもう最新のカメラを追わない、
ある時代において優れていたカメラをその数年後に中古で購入
するのだ。結局常に、1~2世代古いカメラを使っている事に
なるが、古いままでは止まらずに、また数年後には、現代の
優秀な新鋭機を入手する事になる。
こうやって常時「型遅れ」を狙って購入する事で、コスパ的に
自分が納得が行く買い物が出来る訳だ。
なお、購入したカメラには「減価償却の法則」を適用し、
すなわち十分に元を取るまでは次の機種は買わない、という
自身のルールを設けている。これをしないと次々に型遅れの
カメラを買ってしまいかねないから、歯止めの意味のルールだ。

さて、余談ばかりでレンズの話が無いのだが、
まあ前述のように、本レンズは正式なレンズと言うより
アクセサリーの類である。
中古も良く見かけ、2000円台で出ている場合もあるので、
μ4/3ユーザーであれば、とやかく言う前に買ってしまうのが
良いであろう。
なお、パナソニック製のμ4/3機でも問題なく使用できるが、
古い機種は内蔵手ブレ補正が無い事と、それとAUTO ISOの
ままではあまり高感度域まで上がらない機種もあるので、
使用する際は、シャッター速度の低下に注意する必要がある。
オリンパス機では内蔵手ブレ補正と、AUTO ISOでも高感度域
が使える設定が出来る機種も多いので、本レンズの場合、
シャッター速度や手ブレ限界の意味が良くわからない初級者で
あれば、オリンパス機で使うのがベターだと思う。
(注:多くのμ4/3機では、AUTO ISOが切り替わる「低速限界」
を自由に設定する事が出来ない。本レンズは広角なので問題
無いが、(超)望遠レンズを使用する場合、これの設定機能が
無いと、いくら手ブレ補正機能があっても手ブレしてしまう)
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次は今回ラストのシステム、

カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)
レンズは、FUJIFILM XF 56mm/f1.2R APD
(中古購入価格 110,000円)
ミラーレス・マニアックス第17回、第30回、名玉編第3回で
紹介した2014年発売のAF単焦点大口径標準レンズ。
APS-C機専用レンズなので中望遠レンズと呼ぶ事もできるかも
知れないが、まあ、そのあたりの定義は、本ブログではあえて
曖昧にしている。レンズによっては、無理やりセンサーサイズ
の異なる他マウントにアダプターで装着する事も可能だからだ。
それがあるので、レンズ本来の焦点距離で区別しないと、
単純に広角だとか望遠だとかは決め付ける事ができない訳だ。

さて、本レンズは「アポダイゼーション光学エレメント」を
内蔵した特殊レンズである。それが何か?という事については
XF56/1.2APD関連記事のみならず、STF135/2.8やLAOWA105/2
関連の記事でも何度も述べているので、ばっさりと割愛する。
ともかく、ボケ質を最良にするように設計されたレンズである。
2018年時点では、この仕組みを持つレンズは4機種しか存在せず、
うち2本がAFであり、史上初のAF版が本XF56/1.2APDだ。
(その4本全てを所有する事を「グランドスラム」と呼んでいる、
後日、その手の記事を掲載予定だ)
ただ、FUJIのミラーレス初期のX-E1では、本レンズでのAF性能
(精度、速度)は貧弱なレベルでしかない。
また、X-E1のMF性能(仕様、操作系)も同じく貧弱である。
その点、もし本レンズを入手して使う際には、古い機種では
ピント合わせ全般が苦しい状態になる事に関しては、良く理解
しておく必要がある。

さて、描写表現力だが、さすがにAPDであり、申し分無い。
ただ、ボケ質は良いのだが、ピント面の解像感などは、
最善という訳では無く、特に、2010年代以降の最新の超高性能
単焦点レンズと比べてしまうと若干の物足りなさを感じるかも
知れない。けどまあ、本レンズに求めるべき仕様(性能)は
そういう類のものでは無い、あくまでも史上4本しか存在しない
アポダイゼーション・レンズのボケ質を楽しむべきものなのだ。
(ただし、稀にボケ質破綻が出る場合もあるので要注意だ)
本レンズは、ミラーレス名玉編で第6位にランクインしたが、
「コスパ」以外の評価項目は、ほぼ満点に近いレンズであった。
よって、「高コスパ」をコンセプトとする本シリーズ記事には
そぐわないレンズでもある。
ただ、何度も記事で紹介するのは、私なりの理由もある。
つまり、この手の特徴を持つレンズはSTF135/2.8しか
存在しなかった時代が、およそ16年間続き、世間一般でも
アポダイゼーション・レンズの事は、忘れ去られていたか、
あるいは、その仕組み自体理解されていない状況であったのだ。
だが、2014年、突如として史上2番目のアポダイゼーションで
ある本レンズXF56/1.2が発売されると、2016年にLAOWAから、
2017年にSONYからと、次々とアポダイゼーションが発売され、
この市場が活発化してきた。
私は、アポダイゼーションの効果が非常に好きであり、
4機種全てを購入しているのだが、1つ重大な課題があり、
それは「どのレンズも非常に高価である」という点だ。
中国製のLAOWAこそ10万円程度の定価であるが、他の3機種は
20万円前後の定価となってしまう、このレベルの価格帯では
おいそれと簡単に購入する訳にはいかない。
だがもし、多くのユーザー層がアポダイゼーションの
原理や効果を正しく理解して、その結果、市場が活性化し、
数多くの、この仕組みを持つレンズが発売、流通するように
なってくれれば、必然的に価格水準は下がってくる。
私は、そういう状況を待ち望んでいる訳だ。

アポダイゼーションの効果は、「ボケ質の改善」である。
ただ、これが初級者には、なかなか理解できない概念だ。
LAOWA 105mm/f2 Bokeh Dreamer の特集記事でも書いたが、
「ボケ」(ボケ質、ボケ味)という日本語が、カメラ界で
世界標準となって、「Bokeh」という用語となった。
つまり英語においては、「ボケ」という概念が無かった訳だ、
(注:「Out Focus」という英語があるが、それはどちらかと
言えば、日本語での「(全体が)ピンボケ」に近い概念だと思う。
この用語を日本語で使う場合は「アウトフォーカス部」と
書いて、それを「ボケ」と等価とするのが良いと思う)
これは外国人のカメラユーザーが「ボケ」(ボケ質、ボケ味)
について無頓着であったか、あるいは理解できていなかったか、
まあそんなところであろう。日本のビギナー層でも、それを
理解できないのもやむを得ない。
しかし、現代、その一眼レフの市場を支えているのは
初級中級ユーザーなのだ。周りを見渡してもらえればわかる
と思うが、最新の高価な一眼レフや交換レンズを買うのは、
初級中級層ばかりである。
そして彼らは、周囲の人が「良い」と評価した機材しか
購入対象にしない、自身で機材の価値を評価する術(すべ)を
残念ながら持ち合わせていないのだ。
アポダイゼーション・レンズが、初級中級ユーザーの目に
止まる範囲の雑誌やWEBの記事に載る事は殆ど無いし、
あったとしても、「ボケ味が良い」等ごく簡単な説明のみだ。
「その手のレンズはマニア向けだ」という判断からであろう、
読者の誰も興味を持たない(あるいは難解である)ような
記事を書いても、機材紹介の意味が無いからだ。
個人で色々と機材の長所短所をレビューするのは、商売的な
意味を持たない趣味のケースが多いと思うが、逆に、一般的な
メディア上のレビュー記事はビジネスに直結することが殆どだ。
だから、近年(2000年代後半以降)のレビュー記事は、
製品の弱点を書く事をしなくなってしまった訳だ。
つまり、レビュー記事を読んだ人が、その製品を購入したい、
という気持ちになって貰わないと、世の中がうまく廻らない。
特に、現代ではカメラ市場が縮退しているので、なおさらだ。
初級中級層が、せっせと新製品を買ってくれないと、メーカー
も流通も、皆が困ってしまう。ちなみに、コスパの良い中古品
が出てこないと、私も困る。
私は、もうそれらのメディア上のレビュー記事を一切読まなく
なってしまった。チェックするのは、どのような仕様の新製品が
出たか、というただそれだけであり、その評価は、他人の評価を
鵜呑みにするのではなく、自分自身の価値感覚で評価を下すべき
ものだ、という意識が非常に強くなったからだ。

余談が長くなったが、本レンズXF56/1.2APDは高価である。
だからコスパは悪い、そこは当然だし、中古レンズの場合、
どんなに安くなったとしても定価の半額以下になる事は殆ど無い。
でもまあ、コスパというのは絶対的な金額だけで決まるものでも
無いとも思っている、他の製品では代替の効かないもので、
かつ、その製品(レンズ)の特徴が、購入者にとって十分に
意味(価値)があるのであれば、コスト高は、ある程度は
やむを得ない。
けど、それも限度はある、スペック競争のあげく、際限なく
高価になったり、有名ブランドで投機要素が加わって高価な
中古相場になってしまったレンズやカメラも市場には沢山ある。
それらは、真の意味で「コスパが悪い」機材と、私は判断する
事にしている、そして、本シリーズ記事や本ブログでは、
そういう意味で、本当にコスパが悪いレンズは、1本も紹介して
いないし、そもそも所有もしていない・・
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、広角編(Ⅱ)の記事とする。