本シリーズ記事では、所有しているデジタル一眼レフについて
評価を行っている。
第16回からはデジタル一眼「第五世代」として、主に2012年
以降に発売された機種について紹介している。
なお、世代の定義(新版)は第16回記事を参照の事。
今回は第五世代、2014年発売の「SONY α77Ⅱ」を取り上げる。
レンズは、SONY Sonnar T* 135mmm/f1.8 ZA (SAL135F18Z)
(ハイコスパ第16回記事参照)を使用。
以降、このシステムで撮影した写真を交えながら、α77Ⅱの
特徴について紹介していこう。
さて、前回記事 NIKON Dfの評価は散々なものであった。
銀塩機のように非常に格好良いカメラであるのに、アナログの
見かけとデジタルの中身が全く調和していない。
Dfのfは、Fusion(融合)と言う意味だと聞くが、むしろDfから
連想する単語はDiffusion (発散してしまった)という印象だ。
別の言い方では「美人なのでデートの相手としては最高だが、
(何も出来ないので)結婚はしたく無いタイプだ!」と評した。
しかし、今回のSONY α77Ⅱは大丈夫だ、高機能でデジタル機
らしさがあり、良いカメラに仕上がっている。
Dtと同じような下世話な例えでは「第一印象では、ちょっと
変わっているなと思っていたが、付き合ってみると、遊びに
仕事に家事と、何でも出来て、思っていたよりもずっと凄い人だ」
という感じだろうか・・
さて、本機の購入目的であるが、私は旧来から、
α(A)マウントのデジタル一眼レフを
KONICA MINOLTA α-7 Digital (2004年、本シリーズ第4回)
SONY α700 (2007年、同第7回)
SONY α65(2012年、同第13回)
と、引き継いで使用してきたが、近年から使っているα65が、
なかなかの高性能機であり、かつ小型軽量な事とあいまって
極めて重宝していた。
α機の主たる用途は、実用、趣味用が半々である、その
どちらにも使える、と言う点で「重宝している」と書いた訳だ。
で、そのα65は、本来ならばα77を購入予定であったのが、
α77の中古流通が少ないタイミングであったので、代替機
として購入したのだが、思いの他α65が良かったので、
αフタケタ機の追加購入を模索していた。
2016年頃には、α77はもとよりα77Ⅱまでが中古市場に豊富に
流通が再開されていたので、α77を飛ばして本機α77Ⅱを
入手した次第である。
旧来使用していたα65は、減価償却ルール(1枚3円の法則)を
完了している為、今後は雨天等の過酷な撮影環境、つまり
万が一壊れても良いような状況で、寿命まで使用し続ける事に
なるだろう。
なお、それ以前の銀塩時代では、MINOLTA α-9000(1985年)
α-9(1998年),α-SweetⅡ(2001年),α-7 Limited(2001年)
と順次使用して来ていたので、α(A)マウントのレンズは
1980年代の最初期のものから近年の物まで多数を所有している。
このように、レンズは30年程前の古いものですら使用可能で
あるが、ボディはさすがに長期間使用するのは難しい。
銀塩一眼レフ機では10年以上の使用を可能とした機種も
多々あったのだが、2000年代前半にデジタル時代に入ってから
事実上、フィルム撮影の時代は終焉してしまっている。
デジタル一眼レフの寿命は短い。・・とは言え故障して使えなく
なるという意味ではなく、私が所有しているα-7 Digitalも
α700も、使用10年を超えてまで何も問題なく動作している。
(本シリーズ記事で、それぞれ実写紹介済み)
だが、デジタル技術は進歩が早い。よって、新しい時代の
機種に比べて、古い機種は、どうしても性能や仕様的に
見劣りして使いたく無くなってしまうのだ。
本ブログの別シリーズ「ミラーレス・クラッシックス」記事では、
【仕様老朽化寿命】という評価項目を設けている。
これは、2008年から発売が始まったミラーレス機は、2014年頃
迄の(ミラーレス・クラッシックスで定義した第三世代)
6年間は極めて進歩が速く、それを裏がえして言えば、旧機種が
すぐに仕様的に古くなり、かつ中古相場も急速に低下した時代で
あった為、各ミラーレス機の評価をするにあたり、「どれだけ
仕様が他機に比べて見劣りしにくいか」すなわち「長く使えるか
否か?」と言う点を評価の上で考慮していたのであった。
・・とは言え、その評価項目が高かったミラーレス機は僅かに
2機種しか存在せず、1つは史上初のミラーレス機で、操作系が
かなり優れていた PANASONIC DMC-G1(2008年)と、もう1機種は、
SONY NEXシリーズの、ほぼ最終機種NEX-7(2012年)のみであった。
前者DMC-G1は完成度が高い。勿論後継機は色々出たが、仕様が
改悪になった部分もあって、最初期型が依然使い易かった。
あるいは近年の新型機DC-G9は、高付加価値型商品となって、
価格が極めて高価になってしまい、実質的に代替機に成り得ない。
後者NEX-7は、後継機が操作系的にダウングレードした「α7」
(2013年)であった。NEX-7の優れた「動的操作系」のコンセプト
は同時に最終搭載機となり、古くなる心配が無くなった訳だ。
なお、SONYは2013年からNEXシリーズと旧来のAマウントαを
統合して、両者を「α」と呼ぶブランディング戦略に転換したが、
現在、Aマウントのαは国内市場においては、もうほとんど
ラインナップが残っておらず、本機α77Ⅱと、2016年発売の
α99Ⅱの2機種しか無い。(注:日本国内未発売の輸出専用の
αは存在するかも知れない。まあこれは日本国内のデジタル
一眼レフ市場が縮退している、という事を如実に示している)
さて、ここで、αフタケタ機の最初の機種α55(2010年)から
本機α77Ⅱ(2014年)迄の間のSONYデジタル一眼レフの歴史を
示しておこう。(注:Aマウント機主体)
<2010年>
α55 中級機 初のトランスルーセントミラー搭載一眼
α33 普及機 α55のスペックダウン版
<2011年>
α77 上級機 秒12コマの高速連写性能
<2012年>
α99 最上位機 フルサイズ
α65 中上級機 本シリーズ第13回記事で紹介
α57 中級機 α55の後継機
α37 普及機 α35の後継機
<2013年>
α58 中級機 α57の後継機
α7/R 初のフルサイズ・ミラーレス機(Eマウント)
(一眼レフとミラーレスのブランドを「α」で統一)
<2014年>
α77Ⅱ 上級機(本機)APS-C高速連写機
<2016年>
α99Ⅱ 最上位機 α99の後継機、ローパスレス
ミラーレス機を含めてブランドを「α」に統合後は、Aマウント
機の新発売は縮小の一途だ、今後ゆるやかにEマウント機のみの
状態に移行されるであろう。
さて、ここで本機α77Ⅱの基本スペックを抜粋してあげておく。
抜粋、というのは、この時代のカメラは機能が多すぎて、書いて
いくときりが無いし、数字や文字だけでは説明しきれないような
スペック(例:どんなピクチャーエフェクトがあるか等)もあり、
全てを記載しても意味が無いからだ。
有効画素数:約2430万画素
最高シャッター速度:1/8000秒、電子シャッターなし
ファインダー:EVF方式、約236万ドット
倍率1.09倍(換算) 視野率100%
AF性能:測距点79点(内15点がクロスタイプ)
ドライブ性能:連続撮影優先AE時 秒12コマ
高速連写 秒8コマ、低速連写 秒3コマ
連続撮影枚数、最大93コマ(高速時)
ISO感度:50~25600(AUTO時100~最大25600)
内蔵手ブレ補正:有り(焦点距離手動設定不可)
ローパスフィルター:有り(ローパスレスでは無い)
フラッシュ:内蔵GN12、シンクロ速度1/250秒
撮影機能:クリエイディブスタイル、ピクチャーエフェクト等多数
記録メディア:メモリーステイックPRO DuoまたはSD系
重量:647g(本体のみ)
発売時価格:13万円台後半(オープン)
カタログスペック的には何ら文句の無い高性能機であるが、
色々と細かい問題点はある、そのあたりは後述して行こう。
まず、ここで本機α77Ⅱの長所をあげておく。
本機はトランスルーセント(半透過)ミラー搭載カメラである。
これは、旧来の一眼レフとミラーレスのハイブリッド機のような
構造であり、いわば両者の「いいとこ取り」である。
高精細236万ドットのEVFは、ピーキング機能や拡大機能といった、
ミラーレス機同様のMFアシスト機能が使え、AFのみならず
MF性能もかなり高い。
また、電子プレビュー併用で、撮影前にボケ量およびボケ質の
確認もできる。これは一眼レフの光学ファインダーでは
暗くなったりする為、実質的に使用できない機能だったのが、
αフタケタ機やEVF搭載ミラーレス機で初めて実用的になった。
ただし欲を言えば、ミラーレス機でマウントアダプターを
使った際、あるいはSONYミラーレス機のように「絞り込み測光」
(実絞り測光)であった方が、さらにボケの事前確認は容易
なのではあるが、本機α77Ⅱは開放測光だ。まあ、これは
旧来の一眼レフの操作概念に合わせたのであろう。
そして、EVFが使えるという事は、露出補正やWB、ピクチャー・
エフェクト等の効果の撮影前確認が出来る事や、EVF内に数多くの
撮影情報や撮影メニューすらも表示できる為、EVFを覗きながら
「カメラの構えを解く必要が無く」殆ど全てのカメラ設定操作が
出来てしまう。
この事は、ある一瞬を絶対に撮らなくてはならない実用(業務)
撮影では勿論、趣味撮影でも、望遠レンズを使う際などで
極めて有効である。
これは非常に大きなメリットであるが、世の中の初級中級層は、
「カメラ設定を殆ど変えないで撮る」からか? あるいは撮る
行為をミスしたとしても何ら問題(責任)が無い事からか?
こうした利点を高く評価している例は少ない。
前記事NIKON Dfが多数のアナログダイヤルを持ちながら、
ロック機構を外す為に、その全ての操作で「カメラの構えを
一旦解く」必要があった効率の悪さに比べると雲泥の差だ。
さて、本機の特徴として良くあげられる「高速連写性能」で
あるが、実際の評価はなんとも言えないところだ。
そもそも、前機種SONY α77(2011年)、ミラーレス機NEX-7
(2012年)、α65(2012年)等の機種群は、ほぼ同じセンサー
周りの部品と、同等のドライブ性能を持ち、速度優先高速連写
(若干の機能制限がある)モードでは、秒10~12コマで撮れるが
最大連写枚数が僅かに18枚程度であった。
これでは、1.5秒から2秒間で高速連写が途絶えてしまう他、
使用するSD系カードの性能(クラス等)によっては、途中で
連写速度が低下したり、さらにそこからの復帰時間(再度高速
連写が効くようになる)も長く、事実上、高速連写機能は
使い物にならなかった。
本α77Ⅱでは、連続撮影時、JPEGで画質スタンダード(最低)
であれば、最大93コマまでの連写が可能である。
通常高速連写(秒8コマ)であれば、これでおよそ11秒間の
連写が可能となる。が、最初から最後までその高速連写が効く
ケースは皆無で、途中で遅くなったりはするが、まあともかく、
これでやっと「実用レベル」の連写性能となった。
なお、NIKON機やOLYMPUS機の一部にある「ISO感度を
高めると連続撮影枚数が極端に減る」という不条理な制限事項は、
本機α77Ⅱでは無い。
しかし秒12コマの連続撮影優先AE時では、連続最大64コマ迄で、
かつ、このモードでは絞り値が限定(又は開放のまま)となる。
ただし、アダプターでMFレンズ等を装着した場合は、絞りの
制御動作が無い為、この高速連写は全ての絞り値で有効だ。
なお、この時代のフルサイズ機、α99(2012年),α7(2013年)
では、連写速度が5~6枚/秒程度と、かなり遅かった。
(注:速度優先高速連写モードがあるが、機能制限がある)
フルサイズ機であっても、APS-C機と同じ画素数であれば、
内部メモリーやメディアへの転送に必要なバンドワイズ
(データ量x時間)は同じ筈だ、なのに何故フルサイズ機は
連写が遅いのか?と言えば、これは「仕様的差別化」だと
思われる。つまり、フルサイズ機で高速連写まで出来て
しまったら、その万能カメラを1台買えば事足りてしまう。
だが「フルサイズ機は連写が遅く、APS-C機は連写が速い」
という”常識”を作り出しておけば、それを信じたユーザー層は、
あわよくば、両者を同時に購入してくれるかも知れない訳だ。
これはSONYだけのやり方ではなく、CANONでもNIKONでも同様の
「住み分け」を行っていた事が、2010年代前半までの各社の
一眼レフの特色だ。
だが、2010年代から国内一眼レフ市場が縮退、上記のような
一種の「トリック」を行っても、ユーザー層が両方を買って
くれる可能性は減少した。しかもカメラのラインナップを多数
準備する事は、メーカーとしても、それなりに「しんどい」訳だ。
そこで2010年代後半には、フラッグシップ機に、フルサイズでも
連写もいける超絶性能を持たすコンセプトに各社は転換する。
そうした機種には、CANON EOS-1D X(2012),NIKON D5(2016),
SONY α99Ⅱ(2016),α9(2017)等がある。
これらの超絶フラッグシップ機の価格は高価であり、すなわち
「付加価値」(=メーカーから見れば利益)を高くする事で
縮退した国内一眼レフ市場を支えようという戦略であろう。
ただ、単純に「市場戦略」だけの問題でもなく、こうした
ハイエンド機では、複数のプロセッサ(画像処理エンジン)を
搭載したり、積層型のセンサーを搭載したりと、それなりの
技術革新もあった。しかし、ここもよくよく注意して見ないと
それらの技術革新が本当に超絶性能に貢献していたのかどうか?
という部分がある。
やはり市場戦略的に、これまで「出し惜しみ」していた
「差別化要因」を、全て「てんこ盛り」や「全部乗せ」的に
搭載していかないと、付加価値が出せなくなってきたのでは
なかろうか?
さらに、フラッグシップ機のみならず、フルサイズ高級機でも
NIKON D850(2017)、SONY α7RⅢ(2017)は連写性能等を充実させ、
他に、APS-C機でもNIKON D7500(2017)やPENTAX KP(2017)
がある、これらは現代で考えられる機能の殆どを高スペックで
搭載している中上級機だ。
これらの状況を鑑みて、2015年以降の機種を「第六世代」と
定義するかもしれないが、もう数年、市場の様子を見よう。
さて、引き続き本機α77Ⅱの長所であるが、
DMF(ダイレクト・マニュアル・フォーカス)機能の復活がある、
(α65等では廃止されていた)
銀塩αから引き継ぐ、なかなか便利な機能ではあるが、一部の
超音波モーター搭載レンズ(SSM)では動作しない問題もあった。
近年ではSAM(スムースAFモーター搭載)レンズの一部に
DMF対応のものがあり、これを使えばDMF機能が使える。
また、α77やα65にあったヘルプボタン([?]ボタン)の
廃止も好ましい。そもそも、これは無駄なボタンであったのだ。
本機では[?]ボタンの代わりに、[C]ボタンとなり、カスタム
ファンクションとして、何か1つだけ機能をアサイン可能だ。
小さい事だと思うかも知れないが、実は、私がα77をパスして
α77Ⅱを選んだのは、この「ヘルプボタンの廃止」が最大の
ポイントであった、無駄な操作子があるカメラは嫌いなのだ。
また、ミラーレス機α7(2013年)から搭載された「ゼブラ」
機能も本機にあり、露出決定においては便利である。
それと、スマートテレコンバーターに加えて、デジタルズーム
機能を選択できるようになった(ただし後述の弱点あり)
ISO感度だが最大ISOが25600は、この時代のカメラとしては
やや物足りない(前年発売のNIKON Dfは最大ISOが20万だ)
なお、α65等にあった機能制限で「AUTO ISO時は、最大で
1600までしか上がらない」という不条理な制限事項は
本機では撤廃されていて、AUTOのままでISO25600まで上がる。
ただし、ここは初期設定のままでは無理で、メニューの奥から
手動で最大追従感度を上げなくてはならない。
SONY機の評価記事を書くたびに毎回問題としている事だが、
「SONYのカメラは、ユーザーがISO感度を高める事を嫌う仕様」
になっているのだ。
また、低感度ISO50が使えるのは、1/8000秒シャッターと
あいまってF1.4級レンズを日中開放で使える可能性が出るので
好ましいのだが、AUTO ISOでは100が最低でISO50まで下がらない。
(注:低感度も画質が低下するからである)
背面モニターはバリアングル式で、このこと自体は長所だが、
ちょっと脆い構造と思われるので、過酷な撮影条件では、
モニターを起こしたままの撮影は避ける事と、場合により、
裏返して収納位置にしてしまう方法もある。EVF機なので、
背面モニターでの操作は不要な為、この方法が安全で良いのだ。
なお暗所でのイベント撮影時(ライブ、演劇、ステージ、花火等)
において、撮影後の自動再生画面が他の観客等に見えてしまう
(モニターが光って観客の邪魔である事と、撮影写真を観客等に
見られたく無い場合もある)のを避ける為には、モニターの背面
収納位置がある事は極めて有効だ。
業務撮影においては、この事が、バリアングル方式モニターの
最大の利点かも知れない。
それから、他機とのバッテリー互換性が高い事も長所だ。
本機用の「NP-FM500H」バッテリーは、多くのα-Aマウント
機で共通で使える。
なお、SONYミラーレス機のNEXシリーズやα7シリーズも
それぞれバッテリーの互換性が高い長所を持つ。
ただし、バッテリーはメーカー専用のインフォリチウム型であり、
互換バッテリーが使えない事で高価になったり、そしてこれらの
機種のバッテリー消費が、やや速いのは弱点と言える。
ちなみに他社の例を見れば、NIKONおよびCANONも、一眼レフ用
バッテリーは多くの機種で共通に使用でき好ましい。
しかし、それでも機種の世代や、バッテリー自身の進化により、
若干のばらつきがあり、完全に高い互換性を持つという訳には
いかないし、そもそも同じ世代の同じメーカーの機種を複数台
保有するという事自体が、あまり一般的ではない事だろう。
また、ミラーレス機等では機種によりバッテリーが全くバラバラ
であったりして、予備バッテリーとか充電器の種類が際限なく
増えるなど、かなり面倒である事も多い。
さて、長所の最後としては、本機α77Ⅱは実に多機能なカメラ
であると言う事だ。
まあこれは本機に限らず、第四世代以降の時代のカメラは殆どが
同様だ。ちなみに、これらの全ての機能を理解する事は
初級者中級者では絶対に無理であり、上級者クラスであっても
機能の意味は把握しても、それを使いこなす事は困難であろう。
なので、多少「過剰な高機能」とは言えるが、本機α77Ⅱの場合
操作系は良く、この多機能に追従して上手く設計されているので、
そこに不満は無い。
なお、ここまでの高性能機であるのに、本体重量647gと軽量だ。
さて、本機α77Ⅱの短所だ。
まず、秒12コマの超絶性能を誇る「連続撮影優先AE」は、なんと
「絞りが開放(等)に制限」されてしまう。
注1:前述のように、アダプター使用時にはこの制限は起こらない。
注2:絞り値はF3.5または開放となる。が、絞り込んでも一応
連写は行えるのだが、速度が遅く、加えて動作が不安定だ。
注3:シャッター速度が1/30秒以下になると、連写が遅くなる。
この制限は、作画の自由度を狭めるケースもあるので、多くの
場合、通常の秒8コマの「連続撮影HI」モードでしか使えない。
でもまあ、秒12コマで撮ったら、撮影枚数が多すぎて後編集が
大変なので、そういう意味でも非現実的な要素がある。
それと、低速連写速度が自在に設定できないのも不満だ。
それから、勿論、ボデイ内手ブレ補正機能が入っているが、
あいかわらずレンズ焦点距離の手動設定機能が無い為、マウント
アダプター等で他社のレンズを装着時に手ブレ補正が効かない。
なお、上位機種α99Ⅱであれば、焦点距離の手動設定機能が
入ったのだが、これは上位機種だから、と言うわけではなく、
本機より後の2015年頃からのSONYの新機種群にやっと搭載された
機能だ。
SONY初のデジタル一眼レフα100が2006年に発売されてから
α99Ⅱで丁度10年、技術的には何ら難しく無いのにもかかわらず、
ここまで手ブレ補正の焦点距離手動設定機能の搭載を拒み続けて
いた(他社製レンズを使わせたく無い排他的仕様だ)のは、
ある意味、よくもまあ、粘りに粘ったものだと思う。
ユーザーからの要望は相当にあっただろうに・・
(もう、機能の出し惜しみは通用しない時代だ、という事か?)
手ブレ補正に関連し、ISO感度の調整機能だが、AUTO-ISO時の
切り替わりシャッター速度が変更できると、望遠レンズ使用時
等、手ブレ補正とあいまって有効だが、この機能が無い。
それと、デジタル拡大機能の種類が増えたのは良いが
スマート・テレコンバーターと(デジタル)ズーム機能は
二者択一でしか動かない。また、デジタルズームを選択した
場合も、デジタル(拡大)ズームか又は超解像(スマート)
ズームの二者択一だ。
パナソニックのミラーレス機では、デジタルテレコンとデジタル
ズームを常時併用できるので、このあたりの本機の仕様は不満だ。
それから、ファンクション「Fn」ボタンに割り振れるメニューの
カスタマイズ性は高いが、Fnでは、その後の選択操作が必要と
なる為、単一機能ボタンが欲しいが、自在アサインボタンは
「C」の1個のみと物足りない(マルチセレクターの中央ボタンは、
やや特殊だ)動画ボタンとか露出補正±ボタンを他の機能に
割り振れると良かった事であろう。
(FUJI X-T1等ではそれが可、SONY機では動画ボタンの無効化は
可能だが、他機能のアサインは出来ない)
なお、MF時の画像拡大の専用ボタンが無いので、「C」あるいは
マルチセレクターの中央ボタンにアサインするしか無いのだが、
ここでまた貴重なアサイナブルなボタンが1つ減ってしまう。
それと、細かい事だが「管理ファイル修復」というエラーが
良く出る、これは、PCでメモリーカード上のファイルを操作
(消去等)を行った際に出るのだが、他のSONY機等のカメラと
メモリーカードを交換してもやはり出てしまうし、稀には
何も悪い事をしていなくても、このエラーが出る場合がある。
これは、本機α77Ⅱのみならず、2012年のNEX-7や、2013年の
α7でも起こる。(シャッターを切った瞬間に、このエラーが
出て、修復処理を掛ける間の撮影機会を逃した事がある。
他社機では、こうした管理ファイルを持たず、これの必要性が
良く理解できない)
さらに細かい点だが、1~2年前の時代のNEX-7やα7、
α65等では、背面モニターのコーティング禿げが多発する
(この時代の部品または製造プロセスの欠陥だと思う)が、
本機については良くわからない(現在は発生していない)
それは、ほとんどの場合、本機のモニターは収納位置で使って
いるので、コーティングに負荷を掛けないからだろう。
本機の操作系全般は特に問題は無いが、α77とα77Ⅱに共通の
欠点として良く言われているのが「ダイヤル操作が重い(遅い)」
という点だ。
α77ではそれが顕著に感じたので、その機体を見送った理由
でもあったのだが、本機α77Ⅱでも依然「重い」ので不満だ。
本機の場合、まず電源ONが遅いし、メニューを選択操作する
二次元操作子(マルチセレクター)の動作も遅くて、ワンテンポ
遅れて感じる。それから、ダイヤルによる絞り値や露出補正の
動作も同様に遅い。
操作系制御CPUの割り込み処理動作が追いついていないのかも
知れない、あるいは並列プログラミング処理での「セマフォ」
(計算資源の競合を避ける方法論)が不十分、または組み込み
OS全体の構造的な問題なのかも知れないが、ファームアップ等で
改善を要望したい所だ(多分、大改造になるので対処困難か?)
以前のドラゴンの記事で書いたが、本機ではなくα7だが、
ダイヤル操作が遅くて、エフェクトがOFF位置から1つ遅れて
進んだまま電源を切ってしまい、続く撮影が全てエフェクトが
かかった状態(気付き難い)になってしまった(汗)
AF時だが、測距点の点数が多すぎて操作系がややこしい。
面倒なのでフレキシブルスポットにするのだが、それを選んでも
AF精度が高いとか合焦が速いという訳ではなく、効果的では無い。
ここはなんとも、測距点数の「カタログスペック優先」のようで
好ましく無い。
記録メディアだが、SD/MSの共用スロットだが、デュアルスロット
では無い。このクラスの上級機では SONY α700(2007年)は、
CFとMSの「デュアル」(二枚装着可)スロットだったので、予備
カードの面等で重宝したのだが、本機では簡略化されてしまった。
(同時代の他社機でもCANON EOS 7D MarkⅡはCFとSDの
デュアルだ)
まあ、本機を全般的に言えば、カタログ上の数値スペック優先で
実使用上で、そのカタログ性能を引き出そうとした場合、
様々な機能制限が出てくる事(例:超高速連写は絞り開放でしか
使えない)は、どうにもユーザーを騙しているようで、気分が
良いものでは無い。
ただし、最大性能を使わなくても、例えば秒12コマの連写等は
非現実的な撮影技法なので、通常連写モードの秒8コマで十分だ。
連写以外のスペックについても同様であり、そういう意味では、
他の機能制限が無い通常状態においても、本機α77Ⅱの基本性能は
かなり高目であり、総合的には不満は無いと言える。
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さて、本機α77Ⅱに対応する銀塩名機であるが、
MINOLTA α-7 Limited をあげておく。
2001年発売の「銀塩AF一眼レフ最強」と称される傑作機。
(なお、通常版のα-7は前年2000年に発売されている)
α-7の操作系や性能バランスの完成度に比べると、本機α77Ⅱは
かなり見劣りしてしまう部分もあるが、まあでも、デジタル機の
中では、本機は相当に頑張っている方である。
本機α77Ⅱの入手価格だが、中古で約76,000円であった。
若干高価ではあるが、発売後2~3年程の現行機種としては
中古相場の下落幅が大きかった。
この時代(2010年代後半)は、フルサイズ機の人気が高く、それら
は中古も高価に取引されているが、APS-C機はあまり人気が無い。
連写性能やAF性能が、かなり鈍重な使用感のある前世代の
フルサイズ機をイライラしながら使うよりは、本機のような
APS-C高性能機を使った方が、気持ちよく撮影が出来る事は
間違いない。
最後にSONY α77Ⅱの総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★★★☆
【描写力・表現力】★★★☆
【操作性・操作系】★★★★
【マニアック度 】★★★
【エンジョイ度 】★★★★
【購入時コスパ 】★★☆
【完成度(当時)】★★★★☆
【歴史的価値 】★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
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【総合点(平均)】3.4点
総合点は、本シリーズ第13回記事のα65の時と全く同じ。
ただし、項目毎の評価点は勿論異なっている。
完成度が高く、SONY α(Aマウント)一眼レフとしては
現在の所、最もバランスが良いカメラだと思われる。
中古購入価格が若干高く、コスパ点が少し減点されたのであるが、
これでも、フルサイズミラーレス機「α7」と、ほぼ同様の中古
相場であった。
ちなみにα7は、フルサイズという特徴以外は、色々と問題のある
カメラである(ミラーレス・クラッシック第13回記事予定)
これでも、α7に比べるとコスパはだいぶ良い方である。
本機α77Ⅱは「名機」とは呼びにくいが、相当にレベルが高い
優秀な機体である。
最後に注意点としては、本機の多機能を使いこなすには、上級者
クラスのカメラ知識やデジタル知識が必要になると言う点だ。
ビギナークラスが使う安直なカメラでは無い事は述べておく。
次回シリーズ記事に続く。