本シリーズでは、写真撮影に係わる用語のうち、主に
本ブログの範囲でのみ使われたり、あまり一般的では無い
専門用語を解説している。
今回第2回目は、システム編Part2という事でカメラやレンズ
関連の用語をとりあげる。
なお、本シリーズ記事での掲載写真は、できるだけ本文内容と
関連のあるものをセレクトしているが、省力化の為、他の記事
で掲載済み、または掲載予定のものが殆どだ。
<機器・システム>Part 2
★旗艦機(フラッグシップ機)又はハイエンド機
一般用語であるが、定義がやや曖昧だ。
フラッグシップとは、元々船団(軍事においては艦隊)に
おける旗を立てた艦(旗艦、指揮艦)を語源としていて
これが転じて、他の分野で使われる際には「最も重要な物」
や「最も優れた物」と言う意味となる。
カメラでは、各社のラインナップ(製品群)の内、概ね
最高級機(最も高性能かつ最も高価な機体)を指す事が多い。
銀塩一眼レフ時代には、ニコンFヒトケタ機や、
キヤノン新旧F-1等、フラッグシップ機と呼ぶに値する
堂々の性能を持つ最高級機が発売されてはいたが・・
他社においては製品サイクルの狭間や、ラインナップの
構成上で、旗艦(最高級)機が不在な事もあった。
その具体例としては、1980年代前後のMINOLTAには
かなり古い旗艦機X-1(銀塩一眼第4回記事)の発売が
継続されてはいたが、その後高性能な新機種が無く、
実質上では旗艦機が不在な状態であった。
また、OLYMPUSは、OMシリーズ銀塩一眼レフにおいて、
OMヒトケタ機は、一応最上位機ではあるものの、
旗艦機と呼べる程の圧倒的なスペックを持たないと言う
ラインナップ上のコンセプトを守っていた。
PENTAXでも1990年代後半~2000年代初頭の
銀塩末期においてAF一眼レフの旗艦機が不在だったし、
デジタル時代に入ってもPENTAX K-1(2016年)迄の間、
旗艦機と呼ぶに値する機体は殆ど無かった。
現代のデジタル時代では、各社とも一応旗艦機と呼べる
一眼レフ製品を発売してはいるが、ミラーレス機の
市場においては旗艦機と呼びにくいものも多々ある。
これは2010年代前半のミラーレス機では、技術的進歩が
速く、新機種が次々に出てきていたので、仮に旗艦機級を
作って発売したとしても、長い期間に渡って性能優位性を
保てなかったからだと思われる。
これらの状況から、便宜上、その期間における各社の
最上位機を「ハイエンド機」と呼ぶ事も、市場では
一般的になってきた。
現代においては、銀塩時代の一眼レフのように
「フラッグシップ」と呼ぶべき機体はむしろ珍い。
そこで、わざわざその定義を詳しく決めるよりも、
最上位機全てを「ハイエンド機」と呼んでしまう方が、
ユーザーには遥かにわかりやすいようにも思われる。
★仕様的差別化、下克上
独自用語。
各メーカーのカメラの製品ラインナップにおいては、
前記のような「ハイエンド機」(最高級機・最上位機)が
存在し、それ以下に価格帯別に、例えば高級機(上級機)、
中級機、初級機(普及機)のように呼ばれる製品群が
存在する場合が殆どだ。
で、この状態において、基本的には、より高価な機体の
方が安価な機体よりも性能や機能といったスペックが
高くなくてはならない。そうで無いと、高いお金を
出して高級機等を買ったユーザーが怒ってしまう。
なので、ラインナップの下位の機種に行くほど性能的
にも落とさなくてはならなくなってしまう。
だが、そうして微妙に性能や仕様が違う製品群を
それぞれ別々に開発していたら、お金(開発経費)が
かかりすぎてしまう。
よって、例えば、上位機種と同じ部品を使っていたと
しても、下位機種には性能上の「制限」がかけられて
しまう場合が多々ある。
具体例としては、最高ISO感度が低い、連写性能が低い、
操作子が少ない、特定の機能が省略されている、等である。
これを「仕様的差別化」と本ブログでは呼んでいるが
メーカーの市場戦略上では、価格帯と性能に矛盾が
生じず、好ましいのかも知れないのだが、実のところ、
ユーザー側から見れば、あまり気分が良いやりかたでは
無いとも思える。と言うのも、安いカメラを買った場合、
中身は同じ部品なのに性能を低められてしまっているのは、
あまり納得が行く話ではないからだ。
そのあたりは、各カメラの詳細な仕様等を熟読すれば、
ある程度は見えてくる。だから、あまりに「不条理だ」
と思うようならば、そういうカメラは買わなければ
良いだけだ。
ただ、発売から年月が経って中古相場も安価になった状態
では、たとえそういう性能制限がかかっていたとしても、
その結果の絶対的性能が相場と見合うようになっている
かもしれない。
そうした場合は、逆に「コスパが良い」と見なし、購入に
値する。
さて、デジタル技術の進化は速いので、中古で安く
なる程には年月が経っていなかったとしても、
その機種の翌年や2年後に発売されたカメラの方が
安価なカテゴリーであっても、ずっと性能が上がって
いる場合も何度もあった。
こういう場合、もし旧機種が生産中止にならずに
発売が継続されているのであれば、それを「下克上」と
本ブログでは呼んでいる。
つまり下位機種が上位機種を倒してしまうと言う意味だ。
なお、その例は多数あるが、上位機種を所有している
人にとっては、ある意味「不快な情報」であろう、
よって具体例を上げる事は省略する。
★NDフィルター(の使用)
一般用語であるが、これを使用する概念はやや専門的だ。
1960年代~1980年代前半での、銀塩MF一眼レフは
その最高シャッター速度が一般的には1/1000秒止まりで
一部の旗艦機においてのみ1/2000秒であった。
1980年代後半~2000年代初頭での銀塩AF一眼レフは
普及機が最高1/2000秒、中級機が最高1/4000秒、
高級機が最高1/8000秒(まれに1/12000秒)と、
ほぼ明確に「仕様的差別化」が計られていた。
ところが2000年代、デジタル時代に入ると、
多くのデジタル一眼レフの最高シャッター速度は、
1/4000秒までとなってしまい、銀塩時代にはあれほど
沢山あった1/8000秒機は、数える程でしか無くなった。
(この理由は良くわからない、コストダウンだろうか?)
「デジタルではISO感度が自由に変えれるから、あまり
強力なシャッター性能は要らないのでは?」と思った
としたら、それは全く逆の誤解である。
「露出決定の法則」というものがあり、それを用いると
快晴時(EV=15の場合)に最低ISO100の場合、1/4000秒
シャッターでの絞り値はF2.8となる。
つまり、快晴時にこれ以上レンズの絞りを開けたいと
しても、カメラを最低感度にしても、高速シャッターが
足りない状態だ。
「ズーム使い」のユーザーであれば、近年の特殊な
ズームを除き、たいていのズームレンズの開放F値は
高価な物でもF2.8止まりだ、だからこの性能でも
不自由を感じる事は無いであろう。
だが「単焦点使い」の感覚としては、F1.4が普通で
場合によりF1.2やF0.95のレンズを使う事すらある。
F2.8などは「小口径」もいいところなのだ。
つまり、完全快晴時に開放F1.4を使おうとしたら、
シャッター速度は1/8000秒でも足らず、さらにISO感度も
ISO50とし、すなわちISO50と1/8000秒の両者のスペック
を同時に持っているカメラで無いとならないという事だ。
2010年代からは、こういうスペックのカメラも若干
ある事はあるが、ISO50は珍しく、普通AUTO ISOでは
そこに到達できない。それと、以前の2000年代では
カメラの最低感度(ベース感度)も全般に高目で、
ISO200からの機種も多かった。
さて、すなわち単焦点レンズ(オールドレンズも含む)
の殆どは、現代のデジタル機(一眼レフ、ミラーレス)
において、日中では絞り値が最小から開放までの
「フルレンジ」では使えないという事だ。
これでは撮影上での様々な表現意図実現に適さない。
であれば、オールドレンズや近代レンズで、開放F値が
F2.8未満の単焦点レンズを晴天時にデジタル機で使う場合
必ずND(ニュートラル・デンシティ、すなわち減光)
フィルターを装着する事が望ましい。
必要なNDの減光量は、カメラの最高シャッター速度と
最低ISO感度性能、レンズの開放F値、および撮影条件
での明るさ(快晴や曇り、室内等、様々)の4つの要素で
だいたい決まる。計算方法は組み合わせパターンが
多すぎるので割愛するが、概ねND2(1段)~ND8(3段)
の範囲に収まるであろう。
なお、最小絞り値くらいまで絞り込んだ際の
シャッター速度低下(手ブレ)の問題だが、現代の
デジタル機での(超)高感度性能や、多くのカメラ又は
レンズに内蔵されている手ブレ補正機能で回避が可能
であろう。
★露出倍数
やや専門的な一般用語。
マクロレンズ等を用いて近接撮影を行う際、
一般の遠距離撮影の場合と同じ明るさで、同じISO感度、
同じ絞り値でも、シャッター速度が勝手に遅くなって
しまう。(注:絞り優先露出モード時の話)
この暗くなる度合いを「露出倍数」と呼ぶ事が一般的
なのだが、実は「露出倍数」というのは、近接撮影時
のみならず、フィルターを使った場合に暗くなる度合い
について表す等、いくつかの他のケースでも使われる。
今回は、上記の「近接撮影時の露出倍数」のみについて
言及するが、この場合の暗くなる度合いの計算式は
露出倍数=(1+撮影倍率)x(1+撮影倍率)
で決まる。
(何故1を足すかは理由があるが、長くなるので割愛する)
ここで撮影倍率とは、マクロレンズの仕様上での撮影
倍率と同じ意味だ。ただし「APS-C用マクロレンズの
フルサイズ換算」とかを色々と言い出すと面倒なので、
ここではフルサイズの場合で考えてみよう。
では、等倍マクロレンズ(1倍、または1対1)で
等倍になるまで最大に近接した場合、その露出倍数は
(1+1)x(1+1)=4 となり、これは、シャッター速度が4倍
遅くなる(例:1/125秒→1/30秒)か、または絞り値を
2段明るくする(例:F8→F4)か、あるいは
ISO感度を4倍高める(例:ISO200→ISO800)のいずれか
を行う事で、正しい露出値で撮影できる事になる。
なお、この露出変更は、近接撮影時には光学的に
見かけ上の口径(入射瞳・径)が減る事から起こるので
カメラのAE(自動露出)は、この変化に自動的に追従する。
つまり、カメラが決めた露出値に従って撮るだけなので
ユーザー側で露出倍数に応じた設定変更等を行う必要はない。
でも、近接撮影時にはシャッター速度が遅くなる等を
十分に意識しておかないと、意図せず手ブレを起こして
しまう等にも繋がる。
この(近接)「露出倍数」の原理は、必ず知っておく
必要があるだろう。
★EVF機等でのタッチパネル操作不要論
独自概念。
まあこれは単純な話だ。EVF(電子ビューファインダー)
搭載のミラーレス機や一部のEVF搭載のデジタル一眼レフ、
あるいは光学ファインダーの一眼レフでも同様だが、
これらの機種の背面モニター上で何らかのタッチパネル
操作を行うには、ファインダーを覗く構えを一旦解いて、
モニター(タッチパネル)上で操作を行う必要がある。
しかも、この時には、指での操作の為、ほぼ必ず片手で
しかカメラがホールドできない。軽量カメラ+軽量レンズ
ならばいざ知らず、重量級レンズ使用時は、ミラーレス機で
1kg超え、一眼レフでは2kg超えとなる事は普通だ。
こういう重量級システムを片手で支え、タッチパネル操作
など出来る訳が無いでは無いか・・
で、EVF等のファインダーを見ながら、構図やズーム画角の
調整、あるいはMFでのピント合わせや、被写界深度の
調整、ボケ質破綻の回避など、色々撮影の為の操作を
やっている最中に、他の何らかの設定を変える為に、
タッチパネル操作を強要され、ファインダーを覗く
構えを解かなくではならないならば、いままでの作業が
御破算(ごわさん)になってしまう。これは最悪だ。
(なお、背面モニターによるメニュー変更操作でも同様だと
思うかも知れないが、両者は異なるし、どの設定操作を
どういう指動線で行うかにも影響する。ここで、その件の
詳細を述べると冗長になるので、また別の機会としよう)
タッチパネル操作自体が存在していても別に差し支えは
無いが・・
「タッチパネル上でしか操作できない項目がある」
という状態は、操作系概念上では極めて好ましくなく、
全く賛同ができない。
事実そうした劣悪な操作系設計を持つカメラもいくつも
あるのだ、
なお、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)
の設計概念からすれば、タッチパネル等によるアイコン型
操作系は、「階層化された下位メニューが直接見れない」
と言う大きな弱点を持っている。だから、下位メニューが
存在しない単純機能や浅い階層の場合のみに使用を限るか、
または直接の操作が必要な数だけ多数のアイコンを
並べなくてはならない。
後者の場合、アイコンは視覚的に理解しやすいもので
あれば良いが、様々な新機能に応じた新しいアイコンを
多数並べても、それが何を意味するか直感的にわからない。
まあ、EVF搭載機や一眼レフにおいてのタッチパネル操作は
色々と問題がある事は確かだ、個人的には、いっそ無くして
もらいたいとも思っている。
★リバースシステム
やや専門的な一般用語。
一眼レフ用レンズ(MF広角等)を前後逆にカメラに装着し、
等倍以上の「超マクロ撮影」を行う事を可能とする
システム、又は それを実現する為の「レンズ逆付け用」
アクセサリー(リバース・リング等)を使ったシステム。
一眼レフ用広角レンズの殆どは、焦点距離を短くする際
カメラのミラーボックスの長さを「バックフォーカス」で
稼ぐ為、レンズ後群からの焦点を延ばす(レトロフォーカス
または逆望遠型と呼ぶ)設計になっている。
こうした(広角)レンズを逆付けする事で、逆望遠の逆、
つまり望遠の光学系になり、等倍以上の大きな撮影倍率
が得られる。
フルサイズ時の概算だが、50mm標準レンズで約1倍(等倍)
28mm広角レンズで約2倍の撮影倍率となる。
さらなる詳細は、ミラーレス・マニアックス第67回記事
においても、リバース・リングを使って実写を行って
いるので、興味があれば参照されたし。
★絞り故障回避、
独自用語。
オールドレンズ等で、経年劣化により、絞り羽根の
油分などが固化し、絞りが開放のまま等で閉じなくなって
しまう事が良くある。
これは写真撮影には適さない状態なので、普通は修理に
出すしか無いのだが、オールドでかつ安価なレンズだと
修理代を使うのも勿体無い。あるいは古いレンズだと
もうそれを生産したメーカーそのものが存在せず、
修理専門業者(一般に高価だ)に頼むしか無い。
・・であれば自分で修理するか?と言うと、まず経験や
技能や専用工具が無いと難しいし、分解して再組み立て
しても直るとは限らないし、下手をすれば再組み立て不可
になってしまうなど、失敗するリスクが極めて高い。
そこで、絞り故障(開放のまま)を回避して使う手段で
あるが、「マウントアダプターの重複使用」がある。
これは例えば、故障したレンズがニコンFマウントで
あったとして、使用するカメラがSONY Eマウント、
この場合、NIKON F→CAONON EFの第一アダプターと、
CANON EF-SONY E(機械絞り羽根内蔵)の第二アダプター
を組み合わせる。これでEFマウントアダプターの機械
絞り羽根を使って、故障したレンズの絞り操作の
代用とする訳だ。
ただし注意事項としては、この構成での絞り羽根は、
レンズの後部にあり、光束を遮るだけの「視野絞り」
となっている。
本来、絞りはレンズの内部にある(開口絞り)訳で、
この両者の光学的な効能はだいぶ異なる。
すなわち、代用の「視野絞り」では、光量(露出)の
調整の目的には十分であるが、被写界深度の調整には
あまり効かず、さらに高度な「ボケ質破綻回避」等の
技法は全く使えない。
そういう細かい点を気にしない場合にのみ、この
手法で「絞り故障を回避」する事が可能だ。
なお、面倒だ、あるいは適切なアダプターが無い、等の
状況においては、簡便にはND(減光)フィルターを用いて、
適切な「露出倍数」を掛けて、後はカメラ側のISO感度と
シャッター速度頼りで、全て絞り開放等のままで撮るのも
有りであろう、被写界深度の調整は殆ど不可能だが、
まあ、それでも写真は撮れる事は撮れる。
なお、さらなる高度な撮影技法を用いれば、撮影距離を
変えながら、デジタルズーム機能を併用して、絞り故障や
絞りの無いミラーレンズやトイレンズでも、被写界深度を
擬似的にコントロールできる(別記事で説明予定)
★ピクセルピッチ(画素ピッチ)
一般用語。
撮像素子(CCDやCMOSセンサー)の1画素(Pixel)の
大きさ(幅)がいくつなのか?という意味。
簡単な計算をすれば、撮像センサーの横幅サイズを
画素数の横で割ってみればわかる。
例えば、フルサイズ機(センサー幅36mm)で
2400万画素機(約6000x約4000pix.)であれば、
36mmを6000pixelで割ると、6μm(マイクロメートル、
旧称=ミクロン)となる。
この値が大きいと、1画素が大きいので、ダイナミック
レンジ向上やノイズが少ない等のメリットが出るが
反面、有効画素数(解像度)は減る。
さて、一般的に言われている概念はこのあたりまでだ。
もう少し深堀りすると、まず、このピクセルピッチは
センサーの製造精度に依存する、だから、技術革新が
進めば、ピクセルピッチをさらに小さくでき、そうなると
画素数を上げたり、または同じ画素数でも小さいサイズの
センサー(例:スマホ用等)を作る事が可能となる。
ただ、画素数がいくら上がっても、それにレンズの性能が
追いついているのだろうか? 前述のピクセルピッチ=
6μmで考えれば、これはつまり約1/160mmである。
すなわち、1mmあたり160本の線を解像できるレンズで
無いと、これ以上ピクセルピッチが小さくなると対応
できない(=画素数の方だけ過剰に大きい状態)
1mmあたり160本の線を解像、と言えばこれは解像度
チャートで試験する等の状態では、80LP(ラインペア)/mm
を解像できる、という性能だ。ラインペアとは白と黒の
交互の線を細かく印刷し、それが分離して見えるか
どうかの指標(単位)だ。
銀塩時代の一般的な性能のレンズは、80LP/mm位は
余裕であり、高性能なレンズであれば120LP/mmや
それ以上あっても不思議では無い。
だが、今後、これ以上ピクセルピッチが小さくなって、
3μmや2μmともなれば、もう銀塩時代の一眼レフ用
レンズでは対応不能となる。
よって、2010年代以降の各社の新鋭単焦点レンズでは
「超高画素時代へ対応できる高解像力」を謳っていて、
近い将来のピクセルピッチの縮小に備えている。
ただ、ここにはさらなるややこしいいくつかの要素があって、
例えば「モアレ現象」と「ローパスフィルターの有無」である、
センサーの画素ピッチよりも、あまりにレンズの解像力が
優れていると、モアレ発生の一因となる、だからローパス
フィルターが必須になるのだが、逆にあまりにセンサーの
画素ピッチが大きいと、解像力は得られないが、ローパス
の必要性は減る訳だ。
また、画素数をあえて最高では使わず、適当に下げて使った
場合は原理上では画素ピッチは大きくなる筈だが、
実際には低画素時に、カメラ内部(画像処理エンジン)で
どのような補間あるいは演算処理をしているのかは非公開の
為に不明だ。
ここら辺はややこしく、個々のカメラの仕様・性能や
その設定、組み合わせるレンズや被写体の特性(空間周波数
分布)によっても状況は変わってくることであろう。
だから「こうである」という正解は殆ど無い。
個別に色々と試してみるしか無い状況だ。
まあ、いずれにしても、撮像センサーとレンズの性能バランス
が重要だ、という事になるだろう。
★電磁絞り
一般用語。
ニコン一眼レフFマウント用レンズは、旧来では、
絞りの開閉操作の為に機械式レバーを用いていたが
これでは連写速度がこれ以上(秒10数コマ以上)に
向上した際、機械的な動作が追いつかないケースもある。
そこで、Fマウント用レンズも、CANON製レンズのように
電磁絞りによる電気的駆動方法を持つレンズが2010年代
より少しづつ増えてきていて、これをEタイプレンズと
ニコンでは呼ぶ。
また、TAMRON,SIGMA等のレンズメーカーの一部のニコン用
レンズも同様に電磁絞りを採用している場合がある。
一見、良い改善に思えるが、3つの課題を上げておく。
1)2007年製より古いニコン機では使用できない。
(D3/D300より前の機種は使用不可となっている、
所有しているD300で試したが、一応問題無く動作した)
2)通常のマウントアダプターでは他社機で使用できない。
(ノーマルおよびG型対応のアダプターでは当然無理だった、
今後E型対応の電子アダプターが出てくるかも知れないが
高価であろう。ニコンFマウントレンズは、およそ他の
どのミラーレス機でも一眼レフの一部でも、アダプターで
利用できる利便性があったが、このE型では、実質的には
互換性・汎用性が無くなってしまった)
3)電磁絞りでも確実に絞りが動くとは限らない。
(今は電磁絞りレンズは新しいから、ちゃんと動作して
いる。しかし電子制御化したとは言え、絞り羽根が
機械的動作をしている点では変わりない。
現に、秒6コマ以上のニコン高速連写機では、多くの
通常レンズで絞りを小さく設定すると、絞り羽根の
機械動作が追いつかず、コマ毎の露出がばらつく現象が
多々発生している(D2H,D300,D500で確認済み)
今後、電磁絞りレンズでも経年劣化等で同様の問題が
起こらない、という保証は無い
なお、ここでもし、絞りが適正な位置に来るまで
レリーズを待つようなインテリジェントな処理を加えた
としても、今度は絞り羽根動作が粘っていると連写速度が
低下してしまう)
★M42レンズ等のMの意味
一般用語。
古い時代のカメラ用のねじ込み(スクリュー)マウント
のレンズとしては、
M42(PENTAX等、多数のメーカーが採用)
M39(=L39。ライカ等、多数のメーカーが採用)
M37(アサヒフレックス(PENTAX)等、少数が採用)
がある、他にも若干あるがマイナーなので省略する。
あるいは近年のボードカメラ(工業用やロボット用等
でのセンサー基板一体型カメラ)においても、
M12等のねじ込み規格が採用されている。
また、ホームセンターや工具店に行けば、
M3,M4,M5といった、ネジ(ビス)やナット、ワッシャー
等が多数販売されている。
このMの意味だが「メートル規格ネジ」である。
これに対して一部の欧米圏での「インチ規格ネジ」
がある。今時では、殆どインチ規格ネジは無いのだが、
カメラ関係では、3/8インチの三脚ネジが一般的だ。
(注:これは多くの雨傘の頭頂部のネジ径と同じであり
雨傘の上にカメラを装着する事も(危険だが)可能だ)
さて、Mの後の数値はmm単位でのサイズだ。
M42と言えば、メートル規格で外形φ42mmのネジ
という意味だ(注:マウントから見れば内径φ42mm)
実はこれ以外にも、ネジには「ピッチ」という規格が
あり、これはネジ山の幅(ピッチ)の事であって、
M42マウントの場合は、1mmとなっている。
ちなみに天体望遠鏡や顕微鏡用、またはKENKO製等の
一部の古いレンズでは「Tマウント」を採用している。
「Tマウント」は口径こそφ42mmで、M42と同じだが、
ピッチが 0.75mmであり、M42と互換性がない。
これを「嵌りそうだ」と無理にねじ込むのは禁物だ。
ネジ山が壊れて故障等のリスクに直結してしまう。
「Tマウント・アダプター」が市販されているので、
ちゃんと、それを使うと良い。
なお、ピッチの差は不便なので、「Tマウント」を
ピッチ1mmとした「Pマウント」又は「T1マウント」
と呼ばれる規格もある。例えば、KENKO PINHOLE 02
レンズでは、Pマウントを採用している為、一般的な
ピッチ1mmのM42マウント機に装着またはM42アダプターを
介して使用しても何ら問題無い。
(そのレンズはピンホールなので、フランジバックの
差異はあまり重要では無く、M42アダプターで十分だ)
まあ、いずれにしても、このあたりは「基礎常識」だ、
知らなければ、これらのレンズ等を使おうとしても、
うまく嵌らない、機材を壊す等で、損をするのは
自分自身である。
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さて、長くなってきたので、本記事はこのあたりまでとする。
続きは次回システム編Part3にて。