コストパフォーマンスに優れたマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
第18回目は、やや高価なオールドレンズを紹介する。
ここで言う「やや高価」とは、新品価格で10万円程度迄、
又は中古購入の場合は、概ね3万円~8万円程度迄の相場の
銀塩用オールドMFレンズを指す事とする。
そして、そもそも中古で10万円を超える相場のオールドレンズ
は、本ブログでのコスパの定義からは通常は有りえない。
そういう高価なレンズが中古市場で流通していたとしても、
それは性能が良いから値段が高いのではなく、別の理由からだ、
(例:希少品である、ブランドイメージが高い、投機目的等)
くれぐれも「高価だから良いレンズだ」と思い込まないように
する事がマニアとしての必須要件である。
まずは、最初のシステム、
カメラは、NIKON D300
レンズは、NIKON Ai Nikkor 135mm/f2
(中古購入価格 47,000円)
ミラーレス・マニアックス第18回記事で紹介の、
1970~1980年代のMF単焦点大口径望遠レンズ。
描写力が大変高いレンズである。ボケ質の良さは、ニコンの
MF(Ai)レンズ群の中では、トップクラスである事は間違い無い。
まあでも、他の記事でも繰り返し書いてきた事だが、ニコン
のMF時代のレンズは、報道や学術用途を主眼として、ボケ質
よりもピント面の解像度に重きを置いて設計されたレンズ
ばかりであるので、ボケ質が良いというのはニコンレンズ群
の中での相対的な比較という面もある。
が、絶対的な評価、すなわち他社の同時代のレンズや、より
新しい時代のレンズと比べても、まあまあ優秀と思われる
レベルである。
弱点は、ズバリ、重い事である。
本レンズの重慮は860gもある。
同時代の他社対抗製品として、
CANON New FD135mm/f2 (ミラーレス第15回)があるが、
そちらは670gと、本レンズより200g近くも軽い。
また、ほぼ同スペックの近代のレンズとして
SONY ZA135/1.8(ハイコスパ第16回記事)があるが、
そちらは約1kgと、逆に本レンズより100g以上重い。
さらにはSIGMA Art135/1.8(後日紹介予定)は、もっと重い。
だが、本レンズはZA135/1.8よりも、さらに重く感じるのだ
その理由は、いくつかある。
まずは重量バランスの問題だ、トップヘビーであり、
レンズ重心がMFでのピント操作位置と合致しにくい。
ただ、これについては、カメラ本体の重量にも関連し、
適切な重心位置が得られるようなシステムであれば問題点は
若干緩和できる。
次いで、ピントリングの重さとそれに関わる問題だ、
まあ、MFレンズの場合、ピントリング(ヘリコイド)は
適度なトルク(粘り)がある事が必須である(もしスカスカ
であれば、それは故障品だ)
で、ある程度重いピントリングの場合、それを廻す左手の
操作に負担がかかり、手首が疲れる。
さらに言えば、本レンズはピントの回転角が比較的大きい。
回転角が大きいという事は、左手は必ず持ち替えなければ
ならない、その際にレンズとカメラをホールドするのは
右手によるカメラのグリップのみに一瞬なる。
小型のミラーレス機などでは、右手のグリップをしっかり
することはカメラの構造上難しい。しかし左手の持ち替えの
たびに瞬間的に合計1kgを軽く超える重さが右手のグリップの
部分のみにかかってくる、まあそれは一瞬ではあるのだが
左手のピント操作とその持ち替えは、撮影の最中、ほとんど
ずっと繰り返し発生する。結局、両手が非常に疲れる。
本レンズと同様に「疲れる」という短所を持つMFレンズ
としては、NIKON ED 180mm/f2.8(ミラーレス第46回)
CONTAX Makro Planar 100mm/f2.8(同第16回)
CONTAX Sonnar 180mm/f2.8(同第49回)
そして極め付きは、フォクトレンダー マクロアポランター
125mm/f2.5SL(同第28回、補足編第6回)がある。
マクロアポランター125は、無限遠から最短撮影距離(等倍だ)
までヘリコイドを廻すのに、十数回の左手の持ち替えが必要だ。
大型で重量級、そして回転角が大きい、という事が、これらの
「問題ありレンズ」の特徴ではあるが、レンズに限らず回転角
が大きいという点においては、近年の「ヘリコイドアタプター」
や、銀塩時代の「マクロテレプラス」も同様に問題だ。
しかし、回転角が狭ければ良いというものでもない、
近代のレンズでも、例えばSIGMA AF30mm/f1.4(ミラーレス
第75回)は回転角が非常に狭く、おまけに大口径であるから
MF操作の際にピント位置の精度が出ず(細かい操作が出来ず)
問題であった。まあ、近年の超音波モーター搭載レンズでは、
AF合焦速度向上の為にも、あまり大きな回転角を持つ事は
不利であるから、MF性能を犠牲にしても、そういう仕様に
せざるを得ない。
それと、近年のミラーレス用純正AFレンズの殆どは無限回転式
のピントリングであり、これは技法的にMF撮影が困難だ。
余談が長くなったが、本レンズAi135/2であるが、
価格次第ではコスパが良いレンズとなる。
が、近年の中古相場を見ていると、程度によりけりだが
概ね5万円~10万円程度となっている模様だ。
しかし、10万円というのは、いかにも高すぎる、
本レンズの性能、および生産時期、生産数等からすれば、
4~5万円程度が適正な相場だ、それが何故10万円になって
しまうかと言えば、ニコンと言うブランド名に、初級マニアや
シニア層、投機層等が過剰に反応してしまうからだろう。
本来あるべき相場より高騰する事は、売る側の責任のみならず
買う側の問題も大きい。つまりモノの価値感を正しく判断できる
感覚をユーザー側が持つ事が非常に重要だ、という事である。
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さて、次のシステム、
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6
レンズは、OLYMPUS OM SYSTEM Zuiko 100mm/f2
(中古購入価格 35,000円)
ミラーレス・マニアックス第19回記事で紹介の、
1970~1980年代頃のMF単焦点中望遠レンズ。
OM用のレンズとしては大柄である。
つまり、OM-1の開発時のコンセプトとして、小型軽量化が
あった事はあまりに有名だ。OM-1(M-1)の発売時(1972年)
には、その小型化思想は衝撃と共に市場に受け入れられた。
が、カメラだけ小さくしても意味が無い。
OM SYSTEM用のZuikoレンズ群もまた、カメラボディと同様に
小型軽量化の思想を強く打ち出した。
(近年のミラーレス機では、ボディは小さいのに純正レンズが
高性能化で肥大化してしまい、アンバランスなシステムが多い)
オリンパスのOM Zuikoの多くは、同じ焦点距離であっても
大口径版(概ねf1.2~f2)と、小口径版(f2.8~f3.5)が
並存している。小口径版は非常に小型軽量であり、広角系は
薄型で、望遠レンズであっても全長が短い。
凄いのは、多くの大口径版のレンズのフィルター径は
φ55mmであり、小口径版の多くはφ49mmで統一されている。
ここまで徹底した「標準化思想」は、「設計や生産の効率化」
というメーカーメリットよりも、あるいは「利用者の利便性」
という点よりも、ある種の強い「拘り」を感じる。
さて、本レンズOM100mm/f2は、大口径版である。
他の例に漏れずフィルター径はφ55mmとなっていて、
まあ大柄なレンズではあるが、一応標準化の対象だ。
ちなみに、小口径版のOM100/2.8は未所有であるが
重量が本レンズの520gに対し230gと半分以下だ。
そちらのフィルター径はφ49mmと、ここも統一感がある。
それと、本レンズの最短撮影距離が70cm(これは優秀だ)に
対して小口径版は1mと標準的だ。
本OM100/2だが、OM Zuikoの中では、かなりお気に入りの
レンズである、名玉であると言っても過言ではない。
ただし銀塩時代にはあまり使っていなかった。これを入手した
のが2000年初頭と銀塩末期であり、以降OM-4Ti等の銀塩機で
少し使った後は、デジタル一眼レフにアダプターで装着して
使っていた。
初期のマウントアダプターは高価であったので、フォーサーズ
機のE-300を新品購入時に、オリンパスが無償で送ってきて
くれたOM→4/3アダプターを用いて、しばらくは遊んでいた。
だが、4/3機(μ4/3機も同じ)では換算焦点距離が2倍だ、
つまり、200mm相当の望遠レンズとなる為、まあ、一般的な
屋外環境では被写体選びには苦労するレンズとなった。
で、100mmのf2級レンズは、中距離の被写体でも適切な立体感を
得るボケ量が魅力だ、85mm/f1.4の方がその点では顕著だが
そのスペックのレンズはピント歩留まりが悪くて使い難い。
本レンズの6群7枚というレンズ構成は、たとえばCONTAXで
言うところの、プラナーともゾナーとも違う様相だ。
あまり詳しい情報は無いのだが、大口径標準(50mm)レンズ
にある変形ダブルガウス型を踏襲したのかも知れない(??)
まあ、そのあたりの技術的な仕様は、ある意味どうでも良い、
まずは問題は、ちゃんと写るか否か、という点なのだ。
「技術」というものに詳しくないユーザー層は、あるメーカー
で、「なんとか」という技術が出来たといえば、それを妄信
して「凄い」(だから優れている)と思い込んでしまう。
しかし、私の観点からすれば、技術というものは、目的とする
性能を達成する為の解法(ソリューション)の1つでしかない。
その方法論は複数あり、ある瞬間(時期)に、あるメーカーの
技術に優位性があったとしても、次の時代には他社は当然
それを超える技術開発を目指してくる。
つまり、発売された(発表された)時点で、もうそれは古い
技術となってしまう訳だ。
熾烈な開発競争、と言えるかも知れないが、それについて
行けなくなった製品やメーカーは淘汰される(滅びる)
厳しい世界かも知れないが、でも逆に言えば、生き残って
いる製品や技術は、それなりに信頼がおける、という事だ。
他の例で言えば、古くて汚いラーメン屋は常に美味しいのだ、
そうでなければ、客が来ず、生き残れていない。
それが当たり前の市場原理だ。
で、技術も市場もわからないビギナー層が良く言う質問で
「どこのメーカーの製品が良いのですか?」がある。
まあ、それは無意味な質問であろう。
つまり、ある日に、このメーカーの製品に優位性があった
としても、次の日(時期)には、他のメーカーの新製品の方が
優れているわけだ。何故ならば、メーカーは、必ず先行機種を
上回るスペックや性能の製品を発売してくるからだ。
(可哀想な話だが、新型カメラの発売直前に、他社の製品が
発表され、それが圧倒的に優位な性能であった為、新製品の
カメラの発売をやめてしまった前例がある)
で、もし、いつまでも他社に追いつけないメーカーが
あったとしたら、製品が売れずに、とっくに市場から撤退して
いる事であろう。だから、生き残ったメーカーの製品は、
どこのメーカーの物を買っても特に問題は無いのだ。
ただ、注意するべきは、メーカーの優劣は無かったとしても
製品の優劣はあるという事だ。それは、設計思想とかで
決まってくる事が多いのであるが、もう1つ重要な事は、
ユーザー側が、その製品のどこに必要性(ニーズ)を感じるか
という点だ、つまり、使う側の目的にマッチしない製品は、
そのユーザーにとっては意味の無い(用途に対する性能が低い)
製品となってしまう。
単純な例を挙げると、私は、初級中級者層に人気の最新鋭の
超高性能の高級カメラや高級レンズを殆ど使っていない。
私に言わせると「大きく、重く、高価」という三重苦が
あるので、使い難い(買い難い)製品なのだ。
だから「カメラの性能や価値はユーザー次第で決まる」
と言っても過言では無い。
逆に言えば現代においては、メーカー側もユーザーのそうした
様々なニーズに合致した製品を、ターゲットを絞って作ってくる。
これは当たり前の話だ、インスタントラーメンですら、
定番、激辛、バリ固、新味、有名店コラボなど、いくらでも
種類がある、個々のユーザーの好み(ニーズ)に合わせないと
商品が売れない時代なのだ。
まあ、こんな世の中なので、ブランド信奉やメーカー信奉は
現代の世情においては、少々的外れになってきている。
あえて言えば、ブランドを信奉する、というユーザーニーズに
合わせて商品展開を行っているメーカーもあるという事だ。
それはそれで、一部のユーザーにとっては
「誰でも知っているブランドの高価な商品を持つことで、
他の周囲の人に対して自慢できる(精神的満足度を得る
あるいは社会的ステータスを得る)」
という事なのであろう。
しかし、まあそれは「金がかかり過ぎる」消費行動である。
少なくとも私には、そういった機材の購入動機は無い。
そして「ブランドイメージ」を維持するメーカー側も大変だ。
・・結局、そういった様々な市場原理を理解して、消費行動を
行わないといけない、という事になる。そして、これは消費者
(ユーザー)側に、100%選択責任がある、という意味である。
何も知らないで、自身にとって不必要な仕様を持つ高価すぎる
商品を買う事は、現代の世情では消費者側の問題だ。
さて、余談が長くなったが、「OMレンズだから良い」などと
言うことは全く無い、それぞれ長所も短所もある。
本レンズ OM100/2だが、長所は、その高描写力だ。
短所は、殆ど入手不能である事、もし中古市場に出たとしても
希少であるから高価な値づけになる可能性もある。
製品としてのコスパ感覚は、やはり4万円程度までであろう、
それを超えてまで購入する価値や意味は無い。
それは他の中古4万円クラスのレンズ群と比較してみれは
容易に実感できる事だと思う。
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さて、次のシステム、
カメラは、CANON EOS 7D
レンズは、CONTAX PLANAR 100mm/f2
(新品購入価格 106,000円)
ミラーレス・マニアックス第32回記事で紹介の、
1980年代頃のMF単焦点中望遠レンズ。
CONTAXのY/C(RTS)レンズ中では、個人的に最も好きなレンズだ。
RTS P85/1.4を処分し、本レンズに買い換えたと言う話は、
他の記事でも書いた通り。
ボケ質破綻が起こり難く、絞り値による描写力の変化が
少ないという安定した性能は、被写体のシチュエーションへの
適応範囲が、かなり広いと言える。
1つ問題点があるのは、これはこのレンズ自体の責任では無いが
Y/C→EF(EOS)アダプターを2000年代前半に装着したら、
それが外れなくなってしまい、以降ずっとEFマウント専用
として使っている事だ。まあ、現在、わざわざCONTAXの銀塩
一眼を持ち出して使う事はまず無いので、あまり問題は無い、
EOSあるいは、EF→ミラーレス機のアダプターを用いれば
問題なく使用できる。EF用アダプターは、電気制御式絞りを
調整する事が課題となるが、本レンズは勿論絞り環がついて
いるので、直接絞り値を変更すれば問題は無い。
(追記:ごく最近、アダプターを分解して、外す事に成功した)
基本的には、絞りをあまり絞らずに使うレンズである、
よって、EOSに装着した場合でもファインダーがあまり暗く
ならずに使用できる。ただしEOS 7Dの光学ファインダーは
CANONで初めて透過型液晶を使用したファインダーであり
ファインダーの見えは極めて良く無いし、MFのフォーカス
エイドも効かないので、ピント合わせはかなり難しい。
(デジタル一眼レフ・クラッシックス第10回記事)
今回、MFの苦手なEOS 7Dに装着したのは「限界性能テスト」
の意味もある。
実際の使用感は、予想通りあまり良くなく、これであれば
高精細EVFやピーキング機能を持つミラーレス機で使った方が
本レンズはずっと快適に使える事であろう。
やはり、EOS 7Dは高性能なAFと高速連続連写性能を活用して
使うべき業務用機であって、趣味撮影には向いていない事を
再確認した次第だ。(EOS 6Dを趣味撮影専用EOS機としての
目的で導入している。デジタル一眼第16回記事参照)
さて本レンズ P100/2であるが、目だった欠点は無い優秀な
レンズである。
最大の問題はその価格であり、1990年代には17万8000円の
定価であった。
現代でこそ、超音波モーターや内蔵手ブレ補正機能で、
それくらい高価な単焦点レンズは珍しく無いが、当時と
しては、かなり高額な部類だ。
私は1990年代後半に本レンズを新品在庫処分で、定価の
6掛け(4割引)で購入したのだが、それでも10万円を若干
超える価格となってしまった。
現在の中古市場では、本レンズはセミレアになっている。
人気があった P85/1.4は、程度によりけりで5~7万円程度で
玉数は豊富だが、実のところ、P85/1.4は販売時定価も
10万円そこそこであったので、さほど中古相場も高く無い。
P85/1.4は、デジタル初期の2000年代前半には不人気で
3万円台まで相場が下がった事があったが、近年また相場が
上がってきている(CONTAXというブランドバリューであろう)
P100/2は、セミレアな為、中古相場が安定しない。
1つの目安として、販売時定価の半額、つまり8万円台程度が
基準で、それより安価であれば購入の検討の余地がある。
なぜセミレアなのか?というのは明白であり、P85/1.4の人気が
高すぎた為、それと似たような用途で、かつ価格が倍近くも
高価な本レンズを購入するユーザー層が極めて少なかった
からであろう。
また、CONTAXの100mmには、これも有名かつ人気のあった
マクロプラナー 100mm/f2.8(ミラーレス第16回記事)がある。
そちらは本レンズよりさらに高価な定価19万8000円であった。
で、さすがに、P85/1.4やMP100/2.8の隙間を縫って、本レンズ
P100/2を購入したいと考えるユーザー層は、あまり居ない。
ただ、紹介記事でも書いたが、MP100/2.8も、かなり使い難い
レンズである、そのあたりが理由か?現代、MP100/2.8の中古
玉数は豊富であり、程度や仕様(日本版とドイツ版がある)に
応じて、6~9万円程度で取引されている。
それらの中で、どれを購入するべきか?というのは、現代に
おいては、あまり意味の無い事であろう。いずれも、40年も
前の古いレンズだ、いくら当時人気があった名玉でも、
例えば現代の真面目に作った単焦点レンズに比べると、
様々な面で性能的に見劣りするかも知れない。
「真面目に作った」という点は重要であり、歴史を振り返ると
1970~1980年代の銀塩MF単焦点時代、当時の技術においては、
各社単焦点はほぼ完成の域に達しており、それが、その後の
1980~1990年代の銀塩AF単焦点レンズとして引き継がれた。
つまり1990年代はAFズーム全盛期であり、あまり売れない
単焦点にメーカ-としても力を入れる事が無かったのであろう。
その傾向は2000年代まで続いたが、2010年代以降に関しては
各社から、まったくの新設計の単焦点レンズが多く発売される
ようになってくる。これはデジタルカメラの超高画素化等に
対応したものである(注:他にも、レンズ市場の縮退を原因
とした「高付加価値化戦略」がある)
35mm判フィルムをデジタルに換算した場合の画素数は、およそ
1000~2000万画素と言われていて、銀塩用レンズの性能は
そのあたりの解像度を基準に設計していた。
近年のデジタル一眼では、この画素数を超えてしまった為、
さすがに旧来の設計の単焦点レンズでは苦しくなってきた、
という訳である。
ただまあ、だから古いレンズが使えなくなる訳ではない、
解像感などについては、ローパスレスの超高画素機などを
使わなければ、さほど気になる問題では無いと思う。
それに近年の最新単焦点レンズはどれも高価だ、下手をすると
本レンズP100/2の定価よりも高い物もいくつもある。
そういう状況の中で、本レンズを購入する意味があるのか
どうか?そこは良く考える必要があるだろう。
なにせ、本「ハイコスパ」シリーズにおいては、
CONTAXレンズは初登場であり、実を言うと、今後の本シリーズ
記事でも他の所有しているCONTAXレンズが登場する予定は無い。
つまり、コスパという観点からすれば、本シリーズに登場する
意味が無いからである。
ただまあ、CONTAXというブランドへの憧れも確かにある。
そして、その代表的なRTS系レンズを1本選ぶとしたら、本レンズは
(入手できるのであれば)その候補の1本になりうる名玉だ。
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次は今回ラストのシステム、
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7
レンズは、OLYMPUS OM SYSTEM Zuiko Macro 90mm/f2
(中古購入価格 50,000円)
ミラーレス・マニアックス第5回、名玉編第3回記事で紹介の、
1970~1980年代のMF単焦点大口径中望遠マクロレンズ。
希少な大口径(f2級)マクロである、ただし、一般的な国産
f2級マクロは、近年のTAMRON 60mm/f2 (ミラーレス第75回記事)
を除き、全て1/2倍止まりだ。それは、本レンズも例外ではなく、
1/2倍までの撮影倍率である。
(ただしTAMRON 60/2はフルサイズ非対応ではあるが・・
それと近年、中国の中一光学から20mm/f2の4.5倍マクロが
発売された→後日紹介予定)
1/2倍マクロレンズに対する撮影倍率の不満は、現代の
ミラーレス機では若干解消できる。
今回は、換算焦点距離2倍相当の、μ4/3機であるDMC-GX7に
装着しており、撮影倍率も換算2倍なので等倍相当となる。
(注:このあたりは、センサーサイズ換算やフルサイズ換算の
定義や表記が複数あってややここしい。だから、本来は
「撮影範囲」で判断するのが良く、あまり「倍率の数値」は
気にしないのも良いであろう)
さらに、ミラーレス機ではデジタルテレコンやデジタルズーム
を自在に利用できる為、ワーキングディスタンスや撮影アングル
の自由度が上がらない点と、内蔵手ブレ補正の設定方法の不便さ
を除き、見かけ上の撮影倍率は、いくらでも上げる事ができる。
DMC-GX7の内蔵手ブレ補正は、本レンズを180mm/f2相当の
望遠レンズとして考えた場合は重宝するのだが、マクロとして
考えると、被写体ブレや撮影者の前後ブレまでは、内蔵手ブレ
補正では吸収できないので、あまり使う意味の無い機能となる。
おまけに、デジタル拡大機能を使うと、それに応じて手ブレ
補正の焦点距離設定も変えないとならないので、それは実用上
では煩雑すぎて使えない。
さて本レンズの描写力だが、オリンパスのマクロレンズは
基本的には定評がある。それは、医療用の「内視鏡」を日本で
初めて開発したのがオリンパスである事からの、ユーザーの
マクロへの期待や印象もあるし、メーカー側も企業イメージの
維持の視点でマクロに力を入れて開発するから、そうなる訳だ。
ただ、私個人としては、オリンパスのMFのマクロは2本しか
所有していない、本レンズの他には、OM50/3.5(ミラーレス
第66回記事)だけだ。そのOM50/3.5は非常にクセのあるレンズ
であり、それこそ医療用で患部を拡大して撮影するような
用途には向くだろうが、あまり一般写真撮影向けではない。
(注:μ4/3用のオリンパス30mmマクロは後日紹介予定)
本OM90/2は、OM50/3.5のような「カリッカリ」の描写
ではなく、柔らかいボケ質を特徴としたマクロである。
ある意味、ポートレートなどの中距離撮影にも向き、
そういう点では、TAMRON 90/2.5(ミラーレス第8回、
ハイコスパ第15回)と類似の性格だ。
この特徴を持つマクロレンズは珍しく、この時代以降の
大抵のマクロレンズは近接撮影時に最良の性能を発揮する
設計コンセプトとなっていて、これは逆に言えば、中遠距離
撮影は弱いという事である。
そういう意味では、本レンズを持つ価値は十分にある、
被写体の距離にあまり依存しない汎用的な高性能は、
それなりの用途がある事であろう。
弱点であるが、コントラストが低い、逆光耐性が低い、
そして大きく重く、絞り環の位置も他のOMレンズとは異なり、
MF操作性が悪い事、があげられる。
そして最大の弱点だが、「入手性の悪さ」である、
中古はほとんど見ず、レア品となってしまっている。
たまに見かけても、プレミアム相場で7~8万円、あるいは
それ以上もしてしまう。
そうなると「コスパ」の観点では厳しくなってしまう。
「最新のマクロを買った方が安くて良く写るではないか」
という事になる。
ただまあ、良く写る、というのが、いったいどういう状況で
どんな被写体を撮った場合か? という点が実は大きい。
本レンズの特性をよく理解した上で使うのであれば、例えば
中近距離でf2の大口径を生かし、解像度とボケ質を両立させる
ような撮り方においては、唯一無二のレンズになるかも知れない。
まあ、そのあたりの、レア度も含めた「マニアック度」の
高さが本レンズを所持するに値する最大の理由であろう。
総合的には、上級マニア向けのレンズである、
「ハイコスパ」という本シリーズの主旨にはちょっと合わない
かも知れないが、まあ、本記事に関しては「やや高価な
オールド」であるから、その観点においては、紹介する意味の
あるレンズだ。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、ロシアンレンズを紹介する。