さて、新シリーズの開始だ。

本ブログでは、カメラやレンズなどの紹介を行う際、当然
様々な「専門用語」を用いるのであるが、これまで一般的に
普及している色々な技術的な専門用語の範疇では説明できない
新しい概念や、独自の経験則からなる、新しい写真用語を
定義して、本ブログ内の範囲内でのみ用いる事が多々ある。
勿論そうした「独自用語」を使う際には、毎回簡単な説明を
加えてはいるが、冗長になったり重複する場合も良くあるし、
新たに検索などで本ブログを読み始めた読者では「どういう
意味だか、さっぱり不明」というケースも有りえるだろう。
そこで、今回、主に本ブログの範囲でのみ使われたり、
又は専門的な分野での用語で、初級中級のカメラユーザーには
普及していない用語、あるいは定義が曖昧な用語や、一般に
広まっている用語の概念が正しいとは言えない場合等について、
十数回の連載記事で独自用語の概要を説明していく事とする。
なお、こういう趣旨であるから、既に書籍やWEB等で一般的に
普及していて容易に誰でも同じ意味として把握できる写真用語
(例えば”開放F値”とか"ISO感度"等)は説明を省略する。
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まず最初に目次を兼ねて、独自用語のカテゴリーを分類し、
各記事でその詳細について説明していく。
*システム編
<機器・システム>(カメラやレンズのハードウェア全般関連)
<操作性・操作系>(カメラやレンズを使いやすくする概念)
*画像編
<画質・絵作り>(ユーザーの画像利用目的に合った品質を得る)
<画像編集>(ユーザーの用途や好みに合った画像として編集)
*機材編
<機材評価>(利用目的に合う機材をどう判断・評価するか)
<機材購入>(機材の商品コンセプトが自分のニーズに合致するか)
*ノウハウ編
<MF技法・MF関連>(MFの撮影には、どういう点に留意するか)
<撮影技法・特殊技法>(あまり一般的ではない撮影技法について)
*ルール・法則編
<ルール・法則>(機材を購入する際等に自身で決めておくルール)

では早速だが、今回は「システム編(Part 1)」として、
撮影に必要な機材(主にカメラとレンズ)の性能や機能に
おける独自(特殊)用語を個別に説明していく。
<機器・システム> Part 1
★超絶性能
これは本ブログ独自の用語だ。
2010年代後半以降のデジタル一眼レフやミラーレス機は
従前より既に普及している携帯・スマホ等の内蔵カメラや
コンパクト機、ビデオカメラ等、そして、この時代から普及が
始まったアクションカメラやドライブレコーダー、ドローン
等の、やや特殊な用途での撮影機材商品群との差別化の為、
一眼レフやミラーレス機で無いと実現不可能な、非常に高い
性能(仕様)を与える事が多い。
これを本ブログでは「超絶性能」と呼んでいる。

「超絶性能」の具体例としては「フルサイズ化」「超高感度化」
「ローパスレス化」「超高画素化」「超強力なAFやドライブ性能」
「動画撮影機能の充実」「エフェクト機能の充実」「WiFi等での
スマホやネットワークとの連携機能」「顔認識AF」「連写合成」
等がある。

だが、これらは例えば、最高ISO感度が数百万であったり、
毎秒数10コマの連写性能や、数百点のAF測距点などは、
一般ユーザーが撮影に必要とするレベルの性能を遥かに
超えてしまっている場合も多々あり、本当にそれらの
「超絶性能」が自分の撮影用途において必要か否か?は
良く考える必要がある。

ユーザーに必要か否かに加え、実用的かどうかという点もある。
例えば、ISO数十万が要求される漆黒の闇の中での撮影は、
いくら一眼レフ側に、それ以上の超高感度が搭載されていたと
しても、(AF補助光でも投射しない限りは) AFでもMFでも
ピントを合わせる術(すべ)が殆ど無い。
「超絶性能」が実用的か否か?というのは例えばそういう事だ。

結局これらの超絶性能は、他の映像機器の発達で縮退した
カメラ市場を支える為の高付加価値(=高利益)型の製品
コンセプトでもあるからだ。
それがユーザーにとって本当に必要な機能かどうかは、
個々に良く考える必要がある。
★銀塩(ぎんえん)
一般用語。
フィルム(感光媒体)においては、銀塩(ハロゲン化銀)を
乳剤化したものが塗ってあり、これに光を当てて映像(潜像)
として記録、さらにはそれを化学的処理で現像し、やっと
映像として定着する事(見る事、印刷する事)ができる。
デジタル撮影とは全く原理や概念が異なる為、デジタル時代
に入ってからは、こうしたフィルム等による感光・化学的な
処理を「銀塩(写真)」と呼ぶようになった。

ただし「フィルム」に対して、2文字で書ける「銀塩」は
記事記載などの便宜上、簡略化の為に用いられる事もあり
専門用語としての定義と一般ユーザーでの利用法は異なる
事もある。
本ブログにおいても「35mm判フィルム換算」では冗長なので
「銀塩換算」と簡略化して書いてしまう場合もあるのだが、
単に「銀塩」がフィルムの意味を表していても、フィルムの
フォーマット(サイズ、仕様)は様々なので、あまり正しい
用法とは言えない。これについては次項で説明する。
★フルサイズ換算
一般用語。
フィルム(銀塩)撮影の時代、最も一般的に普及していた
フィルムフォーマットは「35mm判」(注:版ではなく判が正解)
である。35mm判は他にも「135」(型・判)とも呼ばれる
事もある。こちらはコダックで定義した用語である。
35mm判フィルムは36mmx24mmの撮像範囲を持ち、フィルムの
幅は35mmである。これは元々映画撮影用に使われていた
70mm判フィルムを一般撮影用途向けに半分のサイズにした
物で、およそ100年前の1910~1920年代より発売されている。

デジタル時代(2000年代)に入ると、当初35mm判と同等の
サイズのセンサーを作るのは、コスト面や技術的に困難で
あった。それ故、初期のデジタル一眼レフでは、殆どが
35mm判の約半分の面積を持つ約24mmx約16mm程度の
サイズのセンサー(撮像素子)を用いて設計された。
このサイズは銀塩時代のAPS(IX240)フィルムをC型式で
使用した際の値(23.7mmx16.7mm)に近かった為、
「APS-C型センサー」と呼ばれるようになる。
(ちなみに、IX240フィルムの、Cはクラッシックで3:2比率、
Hはハイビジョンで16:9比率、Pはパノラマで3:1比率だ)
この時代の多くのカメラメーカーでは、銀塩からデジタル
に移行する際、一眼レフでは同じマウントを踏襲したが、
銀塩時代の交換レンズはAPS-C型のデジタル一眼レフに
装着すると画角が変わる(約1.5倍前後望遠になる)ので、
広角側の不足を補う為、銀塩時代よりも焦点距離の短い
APS-C機専用交換レンズが作られる事になった。
これらは例えば、18mmといった焦点距離であったので、
銀塩35mm判の感覚からは「超広角レンズ」という誤解を
ユーザーに与えてしまう。
そこで「35mm判フィルム換算画角」というスペック記載
が必要となるのだが、さすがにこれは長すぎる表記だ。
なので、一般的には「フルサイズ換算」と呼ばれている。
ただ、何のフルサイズだ?という風に定義が曖昧になる
恐れもあるが、これは一般的に35mm判(36mmx24mm)
の事である、という風に広まっている。
2000年代の初期の本ブログにおいては、まだこの用語が
世間一般的ではなかった為、文字数の省略を意図して
便宜上「銀塩換算」と書く事もあったが、
2010年代以降は、そういう不正確な用語表現は避けて、
一般的になった「フルサイズ換算(画角)」としている。
★弱点相殺型システム
これは本ブログ独自の概念(用語)である。
一般に、カメラや交換レンズは個々に長所や短所を持つ。
これは設計や性能の未成熟という面も確かにあるのだが、
21世紀の現代においては、既にカメラや交換レンズが
登場してから100年以上が経過している。十分な熟成
(技術の進歩)の期間があった為、性能の未成熟という面は
現代においてはあまり考えられず、差があるとすれば、
その機材のコストと性能のバランスや、ターゲットとなる
ユーザー層における製品コンセプトの差異であろう。
具体的には、超絶性能が必要なユーザーには高価で高性能な
機材を売り、それが必要でない人へは安価で簡便な機材を
売ればよい。
・・と言う事で、全ての機材には長所も短所もある。
だが、初級中級層は自身が購入した機材に弱点があると
それについて不満を言う事しかしない。まあ確かに自分で
高いお金を出して買った機材の性能に満足がいかなければ、
そういう不満を持つ事は、いたしかたない。
だが、不満を抱えたままでの撮影は非常にストレスになる。
機材を買い替えるにも またお金がかかってしまう。
そういう場合にどうするか?だが、例えばカメラとレンズ
の組み合わせにより、お互いの弱点を消してしまうシステム
構成を考える訳だ。

ごく単純な具体例を挙げれば、初期のミラーレス機(2010年
前後)では、AF性能の未成熟により、殆どピントが合わない
という重欠点を抱えている。
そうであれば、AF性能の必要性を問わないMFレンズ
(広角系やトイレンズ)を装着すれば性能上の課題が消えて
極めて快適に撮影する事ができ、精神衛生上でも好ましい。
この例以外にも機材の弱点を消すコンビネーションは様々
に考える事ができる、これらの事を本ブログにおいては、
「弱点相殺(型)システム」と呼んでいる。
★マニュアルシフト
一般用語。
M(マニュアル)露出モード時に必須となる操作であり、
銀塩時代からの一般的な用語だが、現代ではこのような
撮影技法を使う人や必要なケースも減った為、ほとんど
絶滅した概念(操作技法)である。
だが、マニア層等においては、古い時代の銀塩カメラを
今なお使いたい、というユーザーも居るであろうし、
初級者が露出の概念を学ぶ為にも、これについては知って
おいた方が良いと思う。

ISO感度がフィルムの種類によって固定であった銀塩時代
においては、他に露出を決定する要素は「絞り値」および
「シャッター速度」の2つしか無い。
”たった2つ”であり、露出原理の理解は初級者でも容易な
筈なのだが、これらに用いる「数値」がわかりにくい事が
初級者での理解を妨げている部分もある。
(例:何故F5.6という中途半端な数字なのか?等)
さて、あるISO感度のフィルム(またはデジタルでも同じ)
を用いて、ある場所の、ある明るさで、撮影に必要な露出を
計ると(別途露出計を使っても良いし、カメラのプログラム
露出モードでその露出値を出しても良い)
それが、絞り値F4 、シャッター速度1/250秒と出たとする。
古い銀塩カメラのマニュアル露出専用機を使っていたり
または現代機でも、マニュアル露出モードを使って、
露出原理を学ぼうとする場合は、まず、これらの露出値を
カメラにセットする。あとはピントを合わせれば、これで
正しい露出値で写真が撮れる(つまり、正しい明るさの
写真が撮れる。この通りにしないと、写真が明すぎたり
暗すぎたりして写ってしまう)
カメラは一番都合の良い平均的な明るさで写真を撮ろうとする
(=その為の露出値を提示する) 当たり前の事であるが、
今撮っている場所が暗いから(室内や夜だから)と言って
写真全体が暗く写る訳では無い。それがあるとすれば、照明が
当たっていない背景等での話か、あるいはカメラ等の性能の
限界値を超えたりして、正しい露出値になっていないからだ。
勿論「ワタシのカメラは暗く写る」等という状況は、故障又は
露出値の設定ミスでしか有り得ない。
さて、もしカメラ(露出計)が提示した露出値がユーザーに
とって気に入らない(もっと明るく写したい、さもないと
逆光で人物の顔が暗くなって見えない等)の場合は、
「露出補正」の操作を行うのだが、その説明は割愛しよう。
マニュアル露出でセットした絞り値とシャッター速度で
とりあえず写真は正しい明るさ(露出)で撮影できる。
だが「あまり背景をボカしたく無いので、絞り値を絞って
(値を大きくして)被写界深度を深くする」あるいは
「この遅いシャッター速度では、速く動く被写体がブレて
写ってしまう為、もっと速いシャッター速度に変えたい」
と言ったユーザー側のニーズがあったとしよう・・
この場合に、同じ露出値でも絞り値とシャッター速度の
組み合わせを、カメラやレンズの性能制限範囲内で変更
する事ができる。
具体的には、絞り値F4、シャッター速度1/250秒は
F2.8と1/500秒、F2と1/1000秒、F1.4と1/2000秒
と同じ露出値であり、あるいは絞り込む方向であれば
F5.6と1/125秒、F8と1/60秒、F11と1/30秒
も、全て同じ露出値(写真の明るさ)となる。
この組み合わせは、絞り値Fが小さくなると、
シャッター速度の分母の数字が大きくなる。
(一般的にカメラ内部で表示されるシャッター速度は、
何分の1秒という表記ではなく、分母の数値しか出ない)
逆に、絞り値Fの数値が大きくなると、シャッター速度の
(分母の)値が小さくなる。
つまり人間の感覚的には、カメラにおける絞りとシャッター
の数字は、同一露出を得る場合に逆方向に動いているように
感じる訳だ。
(ここで注釈だが、本ブログ記事では、絞り値(口径比)を
表す際に大文字のFではなく、小文字のfを用いる事が通例だ。
しかし本来の光学用語では、Fは絞り値で、fは焦点距離と
なっていて異なる。だが、カメラ市場は学術的な光学分野が
発達して用語定義が明確化されていった以前の時代から既に
始まっている為、現代に至るまで用語が統一されておらず
メーカーによっては依然、小文字のf(あるいは f/等)を
絞り値の意味で使っている場合もいくつかある。
あるいは、1:2.8 f=50mm のような書き方等、様々ある。
これらはドイツ式とかアメリカ式と呼ばれる記載法だ。
・・で、ここは悩ましい所であるが、本ブログでは殆どの場合、
小文字のfを絞り値の単位として書いている。が、本シリーズ
記事は用語解説なので、正しい光学的な意味・用語として、
口径比を「F値」と記載している。
ちなみにレンズの仕様で、開放絞り値と焦点距離のどちらを
先に書くかも、2種類の流儀がある。本ブログでは、必ず
200mm/F4のように、焦点距離を先に書く事としている)
・・さて、絞りとシャッターが逆に動くという件だが、
多くの銀塩マニュアル露出機では、絞り値(環)の操作と
シャッター(速度)ダイヤル等の操作の方向が、この
概念に合わせてあって。同一露出値をキープしようと
する際には逆方向への操作を要求される。
これは銀塩マニュアル露出機に限らず、カメラ本体の
前後ダイヤルで、絞り値とシャッター速度を設定する
銀塩AF一眼レフや、デジタル一眼レフ、ミラーレス機や
高機能(デジタル)コンパクト機でも同様の操作である。
(注:一部の機種の電子ダイヤルは回転方向を逆に設定可能)
つまり、これらの機体でマニュアル露出を使う場合、
多くのケースにおいて、露出値を一定に保つ為、絞り値と
シャッター速度設定の「同時逆方向操作」が必須となる。
これを同時に行うのは、特に銀塩機では、ダイヤル類の位置、
操作性、カメラの重量の保持等の面で困難な場合が多く、
まず絞り値、次にシャッター速度など、順番に設定する必要が
あり、操作性上好ましくない(時間が掛り撮影が間に合わない、
面倒である)

ここでやっと「マニュアルシフト」の話であるが・・
この機能が搭載されたカメラでは、AEロックボタンを押す等の
簡便な操作を事前に行うと、1つの電子ダイヤルを廻す事で
絞り値とシャッター速度の設定を同時に逆方向に行う事が
できる。
これは全ての一眼レフ等に搭載されている機能ではなく、
銀塩MF機では皆無であるが、銀塩AF一眼レフの時代
(1990年代前後)では、露出操作概念に主体を持って設計
されたMINOLTAのAF一眼(α-7等が代表)や、PENTAXの一眼
(Z-1等が代表)に搭載された機能だ。
その後、デジタル時代に入ってからも一部のメーカーや
一部の機体では搭載され続けているが、ここでは個々の
カメラにその機能があるか無いかは到底説明しきれないので、
自身の所有するカメラに「マニュアルシフト」が搭載されて
いるかどうかは、自身で取扱説明書等を読んで確認する必要が
あるだろう。
で、もし「マニュアルシフト」がある場合は、初級層でも
M露出モードが比較的簡単に使えるようになり、露出概念の
勉強をしたり理解を早めるのに役に立つと思う。
そういう意味では有効な機能ではあるのだが、注意点として
その際、デジタル機ではISO感度自動補正(AUTO ISO)の
ままにしておくと、絞り値とシャッター速度の露出要素に
加えて、第三の露出要素である「(ISO)感度」まで追加されて
しまい、それら3つの要素の関連が複雑化してしまう。
初級者では、何がなんだか、わからなくなってしまう恐れが
ある為、この「マニュアルシフト」の練習(勉強)をする
際にはISO感度は固定(ISO400等)にしておくのが賢明だ。
勿論、被写体の条件(明るさ等)によっては、自身のカメラ
の性能(最高シャッター速度)や、自身の撮影スキル
(低速シャッターでの手ブレ限界)や、レンズの性能
(開放F値の制限)などで、正しい露出値にならなかったり、
ブレなどで、写真が撮れなくなってしまう場合が出てくる
その際に、初めてISO感度を変更する事を意識すればよい。
このスタイル(方式)で露出概念を勉強するのは初級者に
とって非常に役に立つ。
旧来から、ベテラン層やシニア層が「マニュアルで撮れ」
と初級者にアドバイスする事は、そういう意味が本来は
あってしかるべきだが、正しく内容を説明出来ない場合が
殆どで、それを聞いた初級者は、まず「MFで撮るのか
M露出で撮るのか」それすらもわかっていないし、おまけに
それ以上の詳しい説明や指導もしないのであれば、初級者の
写真原理理解は進まず、勉強どころか「わざわざ撮り難く
するような意地悪をされている」ような状態にもなる。
ここは極めて重要な事だ、詳しい説明や指導ができないならば、
ベテラン層等が余計なアドバイスをする事は好ましく無い。
★ハイパー操作系
一般用語。
1991年のPENTAX銀塩一眼レフZ-1/Z-10に初搭載された、
露出設定操作の為の概念やその機能。

この概念は初級層等には難解であった為か、その後の銀塩一眼
1990年代後半のPENTAX MZシリーズ等では搭載が廃止されたが、
2000年代のPENTAX製デジタル一眼レフ(*istD,K10D等)で
復活し、以降2010年代に至っても、PENTAXのデジタル一眼の
中級機以上には搭載されつづけている機能だ。
ここでその詳細を書くと際限なく文字数が増えてしまう、
デジタル一眼レフ・クラッシクス第6回K10Dの記事や、
銀塩一眼レフ・クラッシックス第17回Z-1(予定)を
参照されたし。
★左手思想
これは「マニア用語」である。
1970年代の OLYMPUS M-1(後にOM-1)に初搭載された
操作性の概念(コンセプト)だ。
これは「機能」ではなく。あくまて思想的な「概念」である。
(「操作系編」に入れてもよかったが便宜上ここで解説する)
小型化を1つの目的として開発された「OM SYSTEM」においては、
カメラ操作において、右手はカメラの保持(ホールデイング)と
シャッターを切る動作に集中し、左手では、ピントおよび
露出の設定操作を集中する、という操作概念である。
まず、これ以前に「カメラの3要素」というものがあり、
3要素とは「ピント、絞り(値)、シャッター(速度)」
であると言われている。
これら3つを最低限設定すれば写真が撮れる、という銀塩
時代の基本的な考え方だ(注:ISO感度は銀塩時代には
フィルム毎で固定なので、これを基本要素には含めない)
オリンパスの(というか、設計者の米谷技師の)コンセプト
では、レンズ側先端部に絞り環を儲け、レンズのピントリング
での合焦操作、そしてレンズを装着するマウント部に
シャッター速度変更リングを設けて、カメラの基本3要素が
全て左手だけで行えるようにしたものだ。

ただ、OM-1系,OM-3系等の「マニュアル露出専用機」に
おいては、本記事で前述の「マニュアルシフト」操作が、
この構造では難しい。だから、実際にはスピーディな操作
には向かず、後年のAF機やデジタル機においてカメラ本体の
電子ダイヤル等で、より迅速な露出設定操作が可能となると、
この優秀な「左手思想」も廃れてしまう。
まあでも、この時代1970年代に、まだカメラの操作性や
操作系という概念が未発達な状況において、こうした先進的
なコンセプトを導入した事は、さすがに「天才技術者」と
呼ばれた米谷技師(故人)の功績であると言える。
★標準化/汎用化思想
言葉の意味は一般的だが、カメラ界では用語化はされて
いない、その理由は、下記の状況だからだ。
自社カメラやレンズのラインナップ(製品群)において、
あるいは他社も含めた製品群において、仕様や規格を
できるだけ統一し、同じレンズを他社機でも使えたり、
同じアクセサリーが様々な機材間で使いまわしが可能に
なるという考え方(設計思想)である。
古くは、1950年代~1970年代の「M42マウント」は国内外の
多くのカメラで採用されで「ユニバーサル(汎用的な)
マウント」と呼ばれる事もあった。
(M42は”絞り優先への対応”などのユーザーニーズに
そのままでは応えられず、各社独自にこれを改良して
しまった為、汎用性が失われ、廃れてしまった)

その後1990年代では、新しいフィルムの規格「APS」
(IX240フィルムを使用)が提唱され、多くのフィルムメーカー
やカメラメーカー、現像機メーカーなどが参入したが、
2000年代、デジタル時代に入って銀塩自体の用途が無くなって
絶滅してしまった。
近年では2008年の「マイクロフォーサーズ規格」が著名
であろう、が、これも大メーカー等は乗って来ていない。
(=自社のカメラの優位性が失われる為)

さて、前述のオリンパスの米谷技師は「標準化」に強い
拘りを持っていて、1970年代からの銀塩一眼レフ
OM SYSTEMでは、多くの機体で同じアクセサリーが使用でき、
OM用レンズのフィルター径も、概ね2種類に統一されていた。
この話も、その時代においては、まあ先進的な発想だ。
で、こうした「標準化」は、いずれもユーザー利便性を
向上させるものであり、ユーザーにとってはありがたい。
いや、カメラの市場以外では、こうした事は当たり前の
話でもあり、例えば蛍光灯のサイズやパソコンのUSBメモリー
がメーカー毎にまちまちな仕様だったら非常に困ってしまう。
また電子楽器でも、それがデジタル化された1980年代
から、MIDI規格が採用され、それ以降の時代の各社の
電子楽器同士やPCや音響機材等、ほぼ全ての新旧機材が
接続可能で、連動して動作するのだ。
カメラ界は、メーカー間での標準化が殆ど行われず
「世の中の動向から非常に遅れた市場である」と言っても
過言ではない。
現代2010年代末では、カメラ市場が縮退している為
各社とも自社製品に、なんらかの付加価値(特徴)を
持たせようとしている。これはたいてい各メーカー独自
のもので、例えば他社のレンズを使うと、使えない機能が
沢山出てきて閉口してしまう。
この分では、カメラ市場においては、いつまでたっても
共通規格、共通仕様等は出来て来ないであろう、
「マウントの統一」など、夢のまた夢である。
このように、ユーザー利便性を阻害し、自社の製品にのみ
優位性を持たせる排他的な製品コンセプトは、下手を
すればユーザー層からそっぽを向かれてしまいかねない。
現代、カメラ市場が縮退しているのは、単にスマホ等が
台頭しているからだけが理由ではなく、同一メーカーの
製品でそろえた高価なシステムを構築しないかぎり、
カメラの性能が発揮できない、という現状も、原因の
ひとつになっているのかもしれない。
現に私は、他社カメラにつけるとMFでのピントリングすら
動かなくなるような排他的仕様の交換レンズは、殆ど購入
していない、こういう製品思想には賛同出来ないのだ。
余談だが、アニメ「ガンダムUC」で、モビルスーツの整備中、
ジオン軍のパーツが連邦軍のモビルスーツにも装着できる事で
エンジニアいわく「ユニバーサル仕様だからね」というくだりが
あった。
「メーカーの都合でしょう?」と主人公が聞くと、エンジニアは
「いや、現場の都合でもある。現に今、役立っているだろう?」
まさしく、このやりとりが、”ユーザー利便性”そのものだ。
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さて、長くなって来たので今回の記事はこの辺までとし、
以降の用語解説はシステム編Part2に続く・・