所有している銀塩一眼レフの名機を紹介するシリーズ記事。
今回は第二世代(自動露出の時代、世代定義は第1回記事参照)の
NIKON F3(1980年)を紹介する。

装着レンズは、AiニッコールED180mm/f2.8S
(ミラーレス・マニアックス第46回記事で紹介)
本シリーズでは、例によって紹介カメラでのフィルム
撮影は行わず、デジタル実写シミュレータ機を使用するが、
今回は、NIKON Dfを使用する。

以降はシミュレーターでの撮影写真と、本機F3の機能紹介
写真を交えて記事を進める。毎回そうだが記事の内容と
実写写真は特に関連は無い。
ちなみに、使用レンズ AiニッコールED180mm/f2.8Sは、
本機F3と同時代のレンズであり、旧版の時代からオリンピック
やスポーツの撮影で分野で評判が高かった高性能望遠レンズで
あるが、それをED(特殊低分散ガラス)化して、さらに性能を
高めたニコン屈指の名望遠レンズである。
が、さすがにAFでもズームでも無く、大きく重いのでスポーツ
撮影等では、さほど使い易いレンズでは無いとは思うが、
その当時の雰囲気を現代でも味わってみる事としよう。

さて、F3はニコンの銀塩フラッグシップ機の3代目だ。
本シリーズでは、第2回記事で、NIKON F2(フォトミックA)
を紹介しているが、当時のフラッグシップ機のモデルチェンジ
の間隔は、およそ10年と言われていた。
奇しくもCANON F-1とNIKON F2の二大フラッグシップ機は
同じ1971年に発売された。
キヤノンでは「10年はモデルチェンジを行わない」と公言して
いたので、まあニコンも同じくらいのペースになるかと
思われたのだろうが、公言通りにキヤノンの次の旗艦
(New F-1)が発売される1981年の少し前に本機NIKON F3は
発売された。
まあ、場合により「またキヤノンと同じ時期の発売は嫌だ」
等の考えがあって、ちょっとフライング(笑)気味で開発を
急いだのかもしれない(?)ただ、先に出したから話題になって
良いとも限らず、他社の仕様を見てから対抗する手段もある事
だろうし、発売時期に関しては、あまり勘ぐるのは止めておこう。
で、この時期、1980~1981年に関しては、前記事のPENTAX
LXをはじめ、本NIKON F3、そしてCANON New F-1と、銀塩MF
一眼の名機が次々に発売された時代だ。ある意味、最も「熱く」
マニアからすれば、非常に興味深い時代だと思う。

さて本機F3だが、ノーマルのF3ではなく派生型だ。
これは、本シリーズ第2回のF2の際も同様であったが、
交換式ファインダー等の差で、F2にもフォトミック系の様々な
派生型が存在し、各々発売時期も異なっていた。
そういう点からすれば、本機はNIKON F3/T(1982年)という
モデルで、これは「F3チタン」と読む。文字通り外装をチタン
仕上げとした高級(高耐久性)機だ。なお後年にはブラック
チタン仕上げのNIKON F3/T(1984年)が発売されている。
型番がF3/Tで同じなので、マニアの間では両者を識別する為、
「白チタン」「黒チタン」と呼んでいる。他にもチタン外装の
カメラは色々とあるのに「F3」と言わずとも通じるのは、
特殊な限定モデルを除き、色が異なるチタンボディがあるのは
一眼ではNIKON F3とOLYMPUS OM-4Tiのみであり、通常は、
機種名を挙げなければF3の事を指している。
なにせ、F3/Tはチタン系一眼ボディでは最も多く流通していた
事と、人気機種である為、マニア間においては頻繁に話題と
なっていて、普段はそうした略語で会話をしたのだ。
で、OMの場合は、まずOM-4Tiを「4Ti(ヨンチ)」と呼び、
その後に必要に応じて「ヨンチ白」「ヨンチ黒」と加える。
なお、OM-3Tiには色のバリエーションは無いので
「サンチ」と言えば通じる、また他のOM機にチタン版は無い。

ちょっと余談だが、チタン外装の銀塩一眼を記憶にある限り
挙げていくと、まず一眼レフでは、NIKON F3/T(白、黒)
NIKON FM2/T 、OLYMPUS OM-3Ti,OLYMPUS OM-4Ti(白、黒)、
CONTAX S2(銀),同S2b(灰茶)があったと思う。
通常販売では無く限定版では、NIKON F2 (チタン、ノーネーム)
やFM2/Tの限定バージョン、それからMINOLTA α-9Tiや、
PENTAX LXにも限定版チタンがあった。
コンパクト機ではNIKON 28Ti,NIKON 35Ti,MINOLTA TC-1
(銀、限定版の黒),CONTAX T2,T3(銀,黒),Tvs/Ⅱ/Ⅲ,
APS機のCONTAX Tix
レンジ機では、CONTAX G1,G2、そしてレンジ機の限定版では、
Konica HEXAR RF Limited、
また、ライカにも限定チタン版がある。
これらは、ちゃんと調べてはおらず、記憶に頼っているので
間違いや抜けもあるかもしれないが、概ねこんなものだろう。
まあ、ニコンとコンタックスにチタン版カメラは多いと思う。
ブランド力があるので、高価なカメラでも売れるからだ。
で、個人的にはチタン版カメラはかなり好みであり、上記の内、
十数機種位までは過去所有していた事があったが、銀塩末期に
処分してしまい、現在まで引き続き所有しているのは、5機種位
でしか無い。本記事での、F3/T(白チタン)はその1台だ。
さて、余談が長くなったが、以降は、本機をF3と呼び、
初代F3発売時(1980年)の時代背景を考慮する事としよう。

ニコンではF2の時代(1971年~)において、フラッグシップ機
以外のカメラも勿論展開している。
代表的なものは、
1972年 ニコマートEL(ニコン初の絞り優先AE機)
1977年 ニコンFM(機械式シャッター機、初のAi爪対応機)
1978年 ニコンFE(FMの電子シャッターAE版、最速1/1000秒)
となっている、この時代は従来のニコマート系からFM/FE系に
転換された時期であり、使用部品等も細かい近代化が行われた。
しかし、こうした普及機では、最高シャッター速度は、依然
1/1000秒迄であり、旗艦F2の1/2000秒とは差別化されていた。
ちなみに、1/4000秒初搭載のNIKON FM2が発売されるのは、
本機F3より2年後の1982年である。
まあ、この時代のニコンの場合、フラッグシップ機には
特徴的な新技術を搭載する事は少なく、技術的にこなれた
信頼性の高いものを後から旗艦に搭載する事も多かったと思う。
ただ、その傾向は近年では変化していて、たとえば旗艦D4や
D5には、普及機に先駆けて超絶的なスペックの新技術を搭載する
ようになっている。その理由は、デジタル時代では「開発費」
と言う要素が、昔の機械・電気式のカメラとは比較にならない位
大きい為、それを回収するには、まず旗艦で技術アピールを行い
続く普及機にその技術を転移し、「D5と同等」などの売り文句で
普及機の多数の販売数をもって、その開発費を回収するのだるう。
このどちらが良いとか悪いとかは言えない、そもそも時代が違うし
カメラ開発を取り巻く状況も数十年ですっかり変化してしまった。
むしろ、全く異なる「デジタルの世界」に各社良く対応している、
とも思えるほどであるが、いかんせんデジタル開発費の負担は
一般ユーザーが想像する以上に遥かに大きい。その為、機体の
価格も高価にせざるを得ず、高価な故に販売数が伸びなければ
さらなる高性能な新機種の開発の為に、また膨大な開発費がかかる
という悪循環に繋がってしまうし、そもそもそうした超絶スペック
は一般ユーザーが必要なレベルを、とうに超えてしまっている。
(この事業構造は傍目から見ても危うく感じる為、ニコンDfや
D500等の代表的な現代機を押さえておこう、と思った)

さて、余談が長くなったが、1970年代のこの時代のニコン機の
時代背景はそんな感じであり、まあ、ある意味現代から比べると
おおらかで、のんびりした時代だ。なにせ旗艦機の発売を10年
前後も保留していても何ら問題無かった訳だから・・
(この時代のビジネスモデルが、むしろ正しいのでは?とも
思ってしまう、現代のように数年間隔で旗艦をモデルチェンジ
するのは、どう見ても急ぎすぎるように思えてしまう)
で、次なる三代目の旗艦は、当然絞り優先AEなどの自動化が
期待されていたし、従来のFフォトミックやF2フォトミックでの
不恰好な露出計内蔵ファインダーも、どうにかして欲しかった
事だろう、つまりボディ内測光方式が期待されていたのだ。
しかし、その他の革新的なスペックは、どうにも採用しづらい
状況だ。AF機の登場は本機F3よりも、さらに5年程後の時代で
あるし、高速シャッターも無理。であれば、最初から機体に高い
システム拡張性を持たせておく事で、FやF2のように時代の変遷に
よる新技術に後からでも対応できるようにする。ということは
勿論当然であろう。が、それは本機F3だけの話ではなくF2の時代
からの常識なので、あまり目を引くものでは無い。
じゃあ、F3の最大の特徴は何か?というと、実は、あまりそれが
見当たらないのだ。
まあ逆に言えば、目を引く部分は無いまでも個々の技術による
完成度や信頼度が極めて高い機体になった、という事であろうか。

という事で、個人的には実はF3はあまり好きな機体では無い、
私は、カメラの1つの価値評価として「唯一の個性を持つ機体で
ある事」を結構重要視していて、それが結局「マニアック度」
等の要素となり、本シリーズでの記事文末の評価項目の1つと
なっている。
で、恐らく心理的には「ノーマルなF3は、何ら個性が無い」
という事から、無理して高価な「白チタン」版を買ってしまった
のだと思う。だが、やはり現実的には本機F3はニコン旗艦の中
では最も実用範囲の狭い機体となってしまい、恐らくは1000枚
も撮影していなかった事であろう、結局、私が後の時代で考える
ところの「減価償却」の概念では、所有カメラ中、最悪の結果と
なってしまい、これでは「ただ所有して眺めているだけ」の
コレクション機と等しい状況だ。
まあでも、ニコンの歴史的に重要な本機F3を所有しない、という
選択肢はマニア的にはちょっと考えにくく、そのあたりの葛藤が
あった。(ニコンとしては確かに重要だが、一眼レフカメラ全体
を見れば、歴史的な価値はあまり高くないカメラだとも思う)
さて、ここで本機F3の仕様(基本性能)について述べておく、
マニュアルフォーカス、35mm判フィルム使用AEカメラ
最高シャッター速度:1/2000秒(電子式)
チタン幕フォーカルプレーン横走り
シャッターダイヤル:倍数系列1段刻み、A,X,B,T位置あり
電池切れなどの非常時用に、1/60秒と
T(タイム)の機械式シャッターを使用可
フラッシュ:非内蔵、シンクロ速度1/80秒 X接点
ホットシュー:無し、ただしフィルム巻上げ部に
ガンカプラーを装着可能。
ファインダー:交換式、スクリーンも多種交換可能
倍率0.8倍 視野率100%(一例)
使用可能レンズ:ニコンFマウント Ai対応レンズ専用
絞り込みプビュー:有り
露出制御:絞り優先、マニュアル、タイム露出
測光方式:TTL中央重点(ややスポット測光的)SPD素子
露出補正:専用ダイヤルあり(±2EV)、ロック有り
露出インジケーター:LCD方式だが、スケール式ではなく
+、-式表示
露出メーター電源:SR44 2個使用 (LR44使用可)
フィルム感度調整:ASA(ISO)12~6400(1/3段ステップ)
フィルム巻き上げレバー角:137度、予備角30度、分割巻上げ可
セルフタイマー:有り
ミラーアップ:可
多重露光:可
本体重量:700g(ボディのみ)
発売時定価:139,000円(ボディのみ、アイレベル)
(注;本機F3/Tは発売時199,000円、後年では263,000円となる)

本機F3 の長所だが、
感触性能が高いという事がまず言える。
特筆すべきは、フィルム巻上げであり、巻き上げトルクが軽くて
フィルムの撮影枚数によっても、それが変わる事は無い
(他機では変化する)また、他機のようにゴリゴリとした
巻き上げ感触は一切なく、非常にスムースで気持ち良い。
この点においては、銀塩一眼レフ中、最強(最良)の巻上げ感
を持つカメラは、本機F3であろう。
ただし、モータードライブを使うと、その長所は活かせない。

それと、高いシステム性もあるだろう。
交換パーツの豊富さは、これまでの過去のフラッグシップ機をも
上回り、一般的な交換ファインダーやモータードライブに留まらず
ボディそのものも、超高速連写機(F3H)やAF試作機(F3AF)まで
あった。
そらら全てのシステムが信頼性・堅牢性が高い事も長所であろう。
この結果、報道や屋外撮影、学術分野や、果ては冒険家などの
職業的撮影分野においても、その信頼性は高く評価された。
そうした信頼性や堅牢性の長所があり、結局長期に渡って販売
され続け、1990年代にF4/F5のAF機に主軸が移った後も、2000年
頃まで生産が継続され、20年ものロングセラー機になっていた。
デジタル時代に入った事と製造部品調達の面でやむなく生産中止
になったのであろうが、ちょっと世の中の状況が変わっていれば、
今なお継続生産されていたとしても不思議では無いカメラだ。

さて、本機F3の弱点であるが、
まずは値段の高さか?新品中古を含め、ともかく高いのであるが
新品に関しては、型式によるが、ノーマルのF3の本体で14万円
程であった。1980年の物価水準は、現代では値上がりした商品も
値下げした物もあり、なんとも比較が難しいが、概ね2倍程度
異なるであろう。そうなると、ノーマルF3は現代の30万円弱
という感じの定価である。(注:チタン版は約40万円相当)
なお、本機の前年1979年に発売された初代「ウォークマン」の
発売時定価は33,000円とのことである(ちょっと高目?)
F3の中古価格ついては、詳しくは後述する。
それから、特徴的なスペックが無い、という点はあげれると思う。
ただし、それは前述の「信頼性」とは裏腹なトレードオフの話だ。
あと、ファインダー内表示が貧弱な点がある。
(注:F3のファインダーは各種あるが、本記事ではHP型についてだ)
絞り値は、レンズの絞り環を光学的に直読する方式で
旧来のニコン機と同様、つまり電子化はされていない古い方式だ。
シャッター速度は、LCD(液晶)型になったのだが、この時代の
液晶は経年劣化の可能性がある、また、低温時や温度変化にも
弱いかも知れない。
最大の問題は、露出値のスケール(メーター)が無い事であり
+、-、という簡便な液晶表示でしか露出値の差異がわからない。
ただ、ファインダーの数値スペックは視野率100%と優秀であり、
ここはニコン機では初の仕様だったかも知れない。

露出スケールの問題に関連して、露出補正ダイヤルのロック機構
も大問題だ。絞り優先機であるので露出補正操作が必要だが、
それを行う為には、小さいボタンを押してロックを解除ながら
ダイヤルを廻さなければならない(片手では、極めてやりにくい)
まあ、初級ユーザー等が不用意に露出補正を行ってしまう事への
安全対策と思われるが、そもそも初級ユーザーを対象にするべき
機体では無いので、そこが大きく矛盾している。
(ニコン業務用機を欲しがるビギナー層が極めて多い事が
主な原因であり、これは現代に至るまで解決されていない)
それと、次世代のF4のように優れた分割測光を搭載しておらず、
スポット測光に近い本機では、露出補正操作は、ある意味必須で
あり、ここの操作性の悪さが大きな弱点となっている。
フラッシュを焚いてシンクロ速度で撮る報道系や室内系
(結婚式等)や学術系であれば、こういう仕様でも良いかも
知れないが、屋外で使う、あるいはアート系では、露出補正が
出来ないと苦しい。
このため一部には「F3はマニュアル露出で使うべき」と主張する
職業写真家も居た模様だが、それはある意味、解決策ではあるが、
しかし、その際、前述の露出メーター(スケール)が無い事が
別の問題点となり、露出差分がわからない。よってマニュアル
露出で使い易い機体では決して無い。

あと、ホットシューが無い事と、シンクロ速度が低い事も
使い難さにつながる。
ただ「報道用」が本機の業務用途としては最大のターゲットで
あっただろうから、シンクロ速度が低い事は、当初はあまり
問題視されておらず、フラッシュ(ニコンではスピードライトと
呼ぶ)を焚いて確実に被写体が写っている事が報道用では最重要
であった。しかしシンクロ速度が遅いと、ブレたり、露光間に
他のカメラマンのフラッシュ光が写りこんでしまう場合もあり、
この頃の報道写真の中には、明らかにフラッシュの二重焚き、
三重焚きの影響で露出オーバーとなっている写真も良く見かけた。
これらの事からか、後年、シンクロ速度の高速化は報道分野に
おいても要望されるようになっていく。
それと、ホットシューが無いので、外付けスピードライトの
装着はやりにくい。ガンカプラーを使うとフィルム巻き戻しが
とても面倒だし、カメラの重量バランスも悪くなる。
この為、後のNIKON F3P(1983,プレス用限定モデル)では、
ホットシューをDE-5ハイアイポイント・ファインダーの
ペンタプリズム上部に固定新設するなどの措置が行われた。
なお、この仕様機は、後にF3 Limited (1993)として、
一般向けにも限定発売されている。
ちなみに、ハイ・アイポイント(HP)とは、ファインダー接眼部の
アイポイントが長い、という意味であり、すなわちファインダー
から目を遠く離しても見えやすいという事だ。これは眼鏡使用の
ユーザーとか、スポーツ撮影等で被写体がファインダー内に
見えてからシャッターを切ったのでは間に合わない状況でも
ファインダーから目を離して全体の状況を見ながら、そのまま
ファインダー内の像を見てシャッターを切れる等の長所を持つ。
F3の場合はアイレベルDE-2ファインダー以外の交換ファインダー
の多くがハイアイポイント仕様になっていると思われる。
(そうであれば、ファインダー前部には「HP」と書かれている。
が、他社機では、わざわざハイアイポイントと言わないまでも、
それが元々長い機種もあった)
なお、1990年代の第一次中古カメラブームの際は、購入側の
ユーザー層も、その多くは、あまりカメラの事に詳しく無く、
下手をするとバブル期の土地売買のように、ニコンという
名前がついた高級機あるいは珍しい機体を、値上がり期待の
投機目的で買う人達も数多く居た。
売る側も、中古カメラ店が林立したりしていて詳しく無い場合も
多々あり、「ハイハイポイント」と、「VOW」(看板の誤記等を
面白おかしく紹介する読者投稿本)にでも出そうな表記すら
あった。
その「わからずに売買している」という点が、当時の大きな
問題であり、F3においても、リミテッドとかチタンとか、
いかにも限定品のレア物のような名前が付いていれば、
「後で高く売れるかも知れない」と、高価な相場で取引される
ケースが殆どであり、結局、本当にニコン機を実用的に必要と
する立場からすれば、非常に迷惑な話でもあった。

なお、現代のデジタル時代に至るまで、その傾向は根本的には
解決されておらず、銀塩時代のカメラやレンズ機材は、ニコン、
ライカ、コンタックスといったブランド銘があれば、投機の対象に
なってしまう。まあ、ネットオークションや海外での売買も
普通である現代であるから、なにも分からずに買うユーザー層は
依然多いし、仮に性能や実用性等の本質が分かっていたとしても、
「これを買えば高く売れる」という心理も働いている事であろう。
実際に、外国人の「ブローカー」(せどり)も知人に居るので
そういう仕事が実在している事も知っている。
その人は「中古カメラ売買で儲けて、中国に家を建てた」という
話も聞きおよんでいるが、本人曰く「デジタルでは儲からないヨ、
すぐ安くなるし」とも言われていた、まあ、それはそうであろう、
ニコンのデジタル一眼などは、どんな高級機でも10年もすれば
陳腐化してしまうのだ。
まあしかし、カメラが投機やビジネスの対象になってしまうのは
ある意味「マニア道」からすれば、残念な話でもある。

他の弱点だが、電子カメラなので電池切れとなるとシャッターが
切れないのだが、「緊急用機械シャッター」が使える。
マウント部にあるレバーを倒すのだが、まずこれは使い難い。
そして、1/60秒の単速でしか無い。
ライバルのPENTAX LXとCANON New F-1がいずれも電池切れ時の
機械シャッターは、1/125~1/2000秒が自由に使えるのと違い、
この仕様では電池切れでは撮影を続けるのが難しい。
(実際に電池切れのF3で撮影をした事もある)
また、カメラ上部の、電源レバー(レリーズロック)、多重露光
レバー、セルフタイマースイッチ、ISOダイヤル、ファインダー
照明スイッチ、のいずれも、廻し難かったり、小さすぎたりして
操作性がかなり悪い。
それから、あいかわらず、レンズ装着や絞り環の回転方向が
他社機とは逆になっているが、これはもう、この時代では変更する
事は残念ながら無理であろう。やるならばF2の時であったと思う。

さて、最後に本機F3の総合評価をしてみよう。
評価項目は10項目だ(項目の意味は本シリーズ第1回記事参照)
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NIKON F3 (1980年)
【基本・付加性能】★★★☆
【操作性・操作系】★★
【ファインダー 】★★☆
【感触性能全般 】★★★★☆
【質感・高級感 】★★★★☆
【マニアック度 】★★
【エンジョイ度 】★★
【購入時コスパ 】★ (中古購入価格:125,000円)
【完成度(当時)】★★★★★
【歴史的価値 】★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
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【総合点(平均)】3.0点
残念ながら平均的な評価点に留まった。
ニコン党やF3党からしたら、怒られそうな低評価結果であるが、
それでも、「完成度満点」という評価は、今まで本機だけなので、
ある側面から見れば、名機である事は間違いない。
しかし、多角的に見れば、どうしてもこういう普通の評価点に
なってしまう。完成度すなわち信頼性等が高かったとしても
操作性やファインダー仕様などに細かい欠点が多々あり、
決して使い易いカメラでは無い。
最大の問題の「コスパ」の低さは、本機を無理して「白チタン」
で買ってしまったので、私の責任だ。
しかし、これでもキズ有りのB級品を買ったので、本来ならば
白チタンの中古相場は、銀塩時代を通じて、15~22万円程
していたので、かなり安価に購入した方である。
もう少し後の時代であれば、もっと安価にF3を入手できたかも
しれないが、デジタル時代に入った2000年代中頃までは、
F3の中古市場での人気は全く衰えず、高い中古相場のまま
推移していた。まあそういう意味では、白チタンでは無くとも、
いずれのF3を買ったにしてもコスパの減点は避けられない。

信頼性の高い機体ではあるが、値段の高さともあいまって、
あまりラフに実用的に扱うという訳にもいきにくかった。
実用機として買ったはずが、細かい弱点を含めると実際に撮影に
持ち出してもあまり楽しめない事となってしまい「エンジョイ度」
の低評価にも繋がっている。
業務用で使うならば、この信頼感や耐久性の高さは何物にも
変えがたい重要な要素となるのかもしれないが、趣味的に使う
ならば、その長所は残念ながら活かせない。
結局、プロ用機ということで、多くのニコン党の初級中級層が
F3を欲しがってしまった事が、中古相場を押し上げていた原因
だったのであろう、冷静に考えてみれば特筆的な性能とか個性に
優れるカメラではなく、優等生的でマニアックさの無いカメラだ。
FやF2と並んで投機の対象になってしまった事も残念な事実だ。
ただまあ、現代においても問題なく現役で使えるであろう
「最後のNIKON銀塩MF旗艦」である事も確かだ、マニア的には
抑えておく必要があるカメラであろう。
次回記事では、引き続き第二世代の銀塩一眼レフを紹介する。