コストパフォーマンスに優れたマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事、第13回目は
MF中望遠レンズを紹介する。
「中望遠レンズ」の定義だが、前回記事と同様に、
「70mm~120mm程度の焦点距離を持つ単焦点レンズ」
とする(注:換算画角では無く、レンズ本体焦点距離)
まずは、今回最初のシステム、

カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6
レンズは、PENTAX Super Takumar 105mm/f2.8
(中古購入価格 3,000円)
ミラーレス・マニアックス第64回記事で紹介した、
1960年代のMF単焦点中望遠レンズ。

およそ50年以上も前の古いレンズだ、M42マウントであり、
SMCタイプではないので、モノ(単層)コート型である。
M42というのはマウント口径がφ42mm、ピッチが1mmの規格
を指す言葉である。例えばホームセンター等でネジを買う時、
その太さがφ4mmであればM4、φ5mmであればM5と言う風に
書いてあると思うが、それが42mmになったものだと理解して
貰えれば良い。この時のMの意味は「メートル規格ネジ」だ。
ただ、さすがにその呼び方は「工業的」すぎる。なので
カメラ界一般では、プラクティカ・スクリュー、又はPENTAX
スクリュー(いずれも「PSマウント」)あるいは、それらの
特定メーカー名を出したくない場合、稀にスレッドマウント
(=TMと書く、ベッサフレックスTMというM42カメラがあった)
と呼ばれる事もある。
概ね、1950年代から1970年代の20年間位がM42マウントの
全盛期であったが、コシナ等では近年までM42のレンズを
生産していた。
初期M42時代においては、まだ一眼レフ自体、一般的ではない。
つまり、ごく一部の職業写真家や、お金持ちの趣味の世界の
ものであった、その中でも、一般レベルにまで降りてきて
最もポピュラーだった機種は、PENTAX SP(1964年)であろう。
だが、それ以前も、それ以降もM42機は勿論存在している。

本レンズも PENTAX SPと同時期の1960年代製と思われるが
詳しい出自は情報が少なく、わからない。
PENTAX SP系は、大衆機として、かなりヒットし、多くの
機体が1990年代くらいまで中古市場を賑わしていた。
その標準レンズ(キットレンズ)である、銀のタクマーこと
Takmar 55mm/f1.8(ハイコスパ第2回記事)も現代に至るまで
多く見かけることができる(注:多数のバージョンがある)
前回記事でも書いたが、一眼レフを購入しても交換レンズを
購入しない事は、今も昔も同じだ。それでもPENTAX SP系は
多数販売されたカメラだから、相対的に交換レンズも
そこそこ売れたと思う。
しかし、沢山の焦点距離の単焦点を集めるのは厳しい、そこで
一般的には広角と望遠を1本づつ買う位だったのではなかろうか、
現代でも比較的玉数が多いSMCT系レンズとしては、
SMCT28mm/f3.5、SMCT35mm/f3.5、SMCT135mm/f3.5
がある。
つまり、55mm/f1.8(あるいは50mm/f1.4)の上は、いきなり
135mm望遠になってしまうのだ。だが、これはM42時代だけでは
なく、銀塩MF時代を通して1980年代位までその傾向であった。
そんな状況の中だが、実は、この時代のM42 PENTAXレンズにも、
中望遠は一応存在していた。具体的には、
85mm/f1.9 , 105mm/f2.8 , 120mm/f2.8 である。
これら以外にも、仕様がわずかに違うバリエーション製品が
ある模様だが、超レア品なので紹介しても意味が無いだろう。
で、上記3本の中望遠もまた、レア品である。
つまり、殆どのPENTAX SP系ユーザーは55mm標準の上は135mm
望遠を買っていたのだ。105mmや120mm等の中途半端な
焦点距離を買ったり、あるいは、びっしりと55,85,105,120
のようにラインナップを埋めれるユーザーなど居なかった。
したがって、どれも販売台数が少なく中古流通も極端に少ない。
また、50年も前のレンズを今になって中古屋やオークションで
売りに来る人も居ない、今売っても、どうせ二束三文であろう。
流通があるとすれば、遺品整理等で偶然出てきたケース等だ、
たまたま、あくまでたまたまで見つけないかぎり、このような
PENTAX M42の中望遠レンズは入手し難い。
本レンズも、2010年代に、たまたま中古屋のジャンクコーナー
で見つけ「サルベージ」(=救い上げる)したものだ。
サルベージと言っているのは、まあ一般的に見ればゴミの
ような古いレンズであるが、良く見れば「お宝」である、
という意味だ。
レンズの性能だが、正直言えばたいしたことは無い、
まあ普通に写る50年前のオールドレンズだ。普通にというのは
一般的には、皆、「オールドレンズは酷い写りだ」と誤解して
いるのだが、実際は50年前のレンズでも撮影条件をきちんと
整えて撮れば現代のレンズに遜色無い写りをする、という事だ。
世の中に、オールドレンズの酷い写りの写真集等があるのは、
オールドレンズとタイトルに書く以上、綺麗に写っている写真は
誰も期待しないからである。あえて酷い写り、つまり、現代の
レンズ性能からは想像もつかないような、古いレンズの欠点の
部分を助長したような写真ばかりを集めているからそうなる。
それがオールドレンズの「個性」そして「表現」になる訳だ。

で、本レンズに関しても、これ以上は、あれこれ長所や短所を
あげる必要も無いであろう、どうせレア品だから現代では入手
困難であるし、ある意味、マニアックさだけが取り得かも
しれないレンズだ。
まあ、こういう古いレンズを使う際は、たいていの場合逆光耐性
とボケ質は要注意だ、だからフレアなどが発生しにくい状況を
選ぶ、または作り出し、ボケ質はミラーレスマニアックス記事で
散々書いてきたボケ質破綻回避の技法を使う必要がある。
上記レアもの中望遠の内、性能からすればSMCT120mm/f2.8
(ミラーレス第21回記事)は、なかなか優秀だ。
オールドとしては良い、ではなく、現代のレンズと比較しても
対等に勝負できる描写力だ。
ただ、そのレンズはマニアックな中古店で偶然見つけたものの、
レア品で、かつ程度も良かったため、「骨董品」としての
プレミアム相場となり、2万円という高価な購入価格だったので、
いくら写りが良くても、「コスパ」という観点から見れば、
本シリーズ記事で紹介するには、少々ふさわしく無いかも
知れない。(まあ、いずれ機会があれば紹介しよう)
さて、次のシステム、

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、Voigtlander Color-Heliar 75mm/f2.5SL
(新品購入価格 43,000円)
ミラーレス・マニアックス第2回記事で紹介した、
2000年代のMF単焦点中望遠レンズ。

これは、コシナが1990年代末に「フォクトレンダー」の
ブランドを取得して、ベッサL/R等のレンジファインダー機と
ライカL/M互換マウントレンズ群をリリースした、その後に
一眼レフ用のレンズ群を「SLシリーズ」として製品化した
もののうちの1本である。
SLは、勿論 Single Lens Reflex(一眼レフ)の意味であろう。
コシナが1990年代まで「ブランドバリュー」が無くて苦戦して
いたのは様々な記事で書いた通りだ。
やっと強力なブランドを手に入れ、気合を入れて作ったレンズ
である。
「SLシリーズ」は、2000年代前半の当時は各種MFマウント用
として発売された。本レンズもミノルタMDマウントだ。
その後、デジタル時代となって、アダプターの互換性から、
SLシリーズは、2000年代後半にはニコンAiとM42マウント
のみとなり、2010年代前半ではCPU内蔵のAi版、EF(EOS)版、
PK版となって、2010年代後半では、ニコンAi(CPU)版のみの
販売となっている。
ただ、現代まで残っているSLシリーズのレンズは、数機種
のみであり、本Color-Heliar 75mm/f2.5SL (以下CH75/2.5)
は、とうの昔にディスコン(生産終了)となっている。
さて、本レンズというと、前回第12回記事で紹介した
PENTAX DA70mm/f2.4Limited と、レンズ構成がほぼ同等
であるというのが、マニア間での噂であるが・・
まあ、方やフルサイズ対応、方やAPS-C機専用であるので
レンズ構成が同じでも、写りの雰囲気を含めてかなり異なる。
レンズ構成図は、実寸が書いていないので、同じような
レンズ構成でも、大きいレンズなのか小さいレンズなのかが
わからないのだ。それに、今回のように、フルサイズ対応の
CH75/2.5レンズをAPS-C機で使い、レンズ真ん中の美味しい
(収差が少ない)部分だけを使った場合と、APS-C用レンズの
DA70/2.4をAPS-C機で、いっぱいいっぱいで使った場合とでは
描写性能が異なるのも当然であろう。
まあでも、私も、この噂(CH75/2.5とDA70/2.4は同じ)に
若干振り回されて、DA70/2.4の購入が遅れたのだが・・
(その分、十分に相場が下がってから買ったので良かったか?)

CH75/2.5の最大の課題は、購入価格であった。
新品だが、43000円もした事である。
これは発表直後に予約し、発売日に購入したからであった、
それでも定価より2割近くまけてもらっているのだが、
やはり高い。
購入したカメラ店の店主いわく
店「卸価格が強気だね、コシナ時代みたいに割引できないよ」
と言っていたように記憶している。
つまり、1980~1990年代のコシナはブランド力がなくて、
コシナ銘のレンズは、なんと定価の7~8割引で新品販売
されていたのだ。
それ故に、コシナは、「ブランド」を強く欲したわけだ、
「フォクトレンダー」を購入し、その後「ツァイス」を
取得した。
そういう名前がつきさえすれば、製品を高く売る事が出来る
わけだ。
勿論、高く売るためには、それなりのブランドに見合う「品質」
も要求されるだろう。が、コシナはその技術力を持っている。
しかし、所詮は、レンズなんて金属とガラスの塊にすぎない。
1990年代に、コシナ銘で1万数千円で売っていたレンズは、
2010年代には、コシナ・ツァイス銘であれば、十数万円で
売れるわけだ、その差、実に10倍、いくら原材料などが多少
良いものを使っているとしても、あるいは、いくら開発費と
その減価償却が乗ってきているとしても、10倍も値段が違う
というのは、同種類の商品としては、かなりの差異である。
たとえば、高級ブランド卵が、1パック(10個)2000円も
したら、誰がそれを買うのであろうか?
まあ、この話は「ブランド・バリュー(価値)」というものを
深く考えさせられる。有名メーカーの名前がついているから、
と言って、高いものを購入してしまうのが、ビギナーなのだ。
コシナの場合は、ツァイスのブランドはさすがに強力だが、
実際それで10倍も値段が違うのはどうなのだろうか?
たとえば、SONYでの別の例をあげると、類似仕様の製品で
価格が大きく違うものがある。
35mm/f1.4G(SAL35F14)が、定価18万円+税
DT35mm/f1.8(SAL35F18)が、定価24000円+税であり、
その値段差は7.5倍、中古の場合は約10倍程の開きがある。
ちなみに、35mm/f1.4はミノルタ時代の1990年代のものと
中身は同一であり、SONY銘に変えられただけである。
DTは2010年代の新設計、ミラーレス名玉編第14位の逸品だ。
両者は、ミラーレス第60回記事、「最強35mm選手権」で対決
したが、安価なDT35/1.8の圧勝であった。
絶対的価値感覚からすると、f1.4版は値段が高すぎるのだ。
(ただし写りが酷いわけでは無い、デジタル一眼第7回記事)
値段が高ければ良いものでもなく、ブランドの名前がついて
いれば良いものでもない、モノの価値を消費者側がしっかりと
絶対的なスケール(物差し)を持って判断しないと、無駄に
高すぎる買い物をしてしまうわけだ、
もっとも、その事実(実態)を、わかっているマニア等も多い
事であろう、じゃあ何故高いものを買うか?その理由の1つは、
「その分野の事を良く知らない周囲の人にも自慢できるから」
であろうか・・
私の住む地域、すなわち関西人は、絶対それ(高く買う事を
自慢)をしないが、その他の地域などでは、
「このレンズ18万円もするんだぜ、凄いだろう」と
自慢げに言うらしい・・
・・まあ、馬鹿馬鹿しく、つまらない話だ、このあたりで
やめておこう。

余談が長くなった、本レンズCH75/2.5だが、現在はレア品で
入手不能だ。
しかし、もし中古で見つけたら、2万円程度であれば、即購入
しても惜しくないレンズであり、コスパは十分に高い。
どうしても入手できず、かつ、このレンズの写りが気になる
のであれば、その際は、代替品としてDA70/2.4を買えば良い、
こちらは、しばらくは中古市場で豊富に見つかる事であろう。
さて、次のシステム、

カメラは、FUJIFILM X-E1
レンズは、NIKON シリーズE 100mm/f2.8
(中古購入価格 16,000円)
ミラーレス・マニアックス第24回記事で紹介した、
1980年代のMF単焦点中望遠レンズ。
「シリーズE」については、当該記事や、あるいは本シリーズ
の第11回「MF広角編」でも、シリーズE35mm/f2.5の紹介時に
詳しく書いてあり、重複するため今回は割愛する。

本レンズも冒頭のST105/2.8と同様に、モノコートだ。
コーティングとはそもそも何の目的であるか?といえば、
レンズの表面反射を抑える為、金属成分などを含んだ化学
物質をレンズ表面に塗る(蒸着する)すると、レンズの
透過率があがって画質が向上したり色再現性が良くなる。
現代のレンズは多数の単レンズで構成されていて、それぞれ
の表面の反射などが互いに影響し、フレアなど、画質を低下
させる要因となるので、コーティングの良し悪しは重要だ。
そのコーティングを1層(単層)だけで行うのがモノコート。
光の波長別の複数の層を用いて行うのがマルチコートだ。
冒頭のペンタックスのレンズのSMC(Super Multi Coated)
は、1970年頃の技術であるが、当時は相当にインパクトの
ある先進技術だった模様だ。同様にカール・ツアイスの
T*(ティースター)コーティングも写真用では著名である。
ただ、これらコーティング技術も、勿論日進月歩だ、SMCを
開発したPENTAXでさえも、近年は、エアロブライトや、HD
コーティングなどの新技術を開発し、それらをレンズ製品名
にも冠する場合がある。
で、レンズ構成が非常に複雑であるズームレンズ等では、
コーティングの良し悪しが性能に直結する場合もあるが、
本E100/2.8では、レンズ構成は、わずかに4群4枚だ。
このような単純構成レンズの場合は、モノコートであっても、
さほどマルチコートとの性能差は出ないと言われている。
現代ではマルチコートでは無いレンズは皆無と思われるが、
2000年代、コシナ社では、わざわざ単層コーティング仕様
としたレンズを発売し「オールドレンズ風の写りが得られる」
という事で評判であった。これはかなりマニアックな仕様だ。

さて、本E100/2.8だが、「マニアック」さ、という点で
言えば、その単層コートである事の他には、ニコンでは非常に
珍しい100mmの焦点距離のレンズという事もある。
100mmのレンズは、ニコンにはこれ1本しか無いかも知れない。
類似の仕様のレンズとして、Ai105mm/f2.5が存在する。
それは、MF銀塩時代を通じてロングセラーかつ名玉として
著名である。105/2.5は、私も銀塩時代に所有していて良く
使っていたが、事情があって2000年代に譲渡してしまった。
近年、再度買いなおそうとしたが、中古相場が高いものが多く
現在に至るまで再購入できていない。
ちなみに現代の中古市場において、MFの単焦点レンズの中古は、
ニコン、コンタックス、ライカの名前がついているものだけが
異常なまでの高価であり、他のブランドの中古レンズは逆に
二束三文だ。まあ他メーカーでも、レア品にはそこそこの
値段がつく場合も多いが・・ で、いずれもブランド力または
希少価値での相場であり、レンズの性能と中古価格は一切関係が
無い状態だ。
コスパを最優先の命題とする私としては、意味もなく相場が
上がってしまっているレンズは絶対に買う気がしない。
ニコンAi105mm/f2.5も同様だ、そのレンズの性能面からの
絶対的価値は1万円まで、しかも古くて流通量も多いレンズだ
8000円というのが、実質的な適正相場であろう。
それが2万円も3万円もしてしまうのは、どうにも許しがたい。
モノの絶対的価値が測れず、ブランド銘がついていて、レアで
高価なものを買えば自慢できる、という、真のカメラ好きでは
無いユーザー層が多数存在するが故の問題であろう。
ちなみに「ノクトニッコール」等、一部のレンズは実用では
なく「投機」の対象となっていて、昔から30万円~50万円
の超高値相場で取引されている。そのレンズの実用価値が
どれくらいあるのかは、使った事が無いのでわからないが、
・・というか、恐らく誰も使っていないのに違いない。
近年、ノクトの再来とも言えるAF-S NIKKOR 58mm/f1.4G
が出たので、旧ノクトも相場が下がるかな?と思っていたが、
投機目的である以上、実用的な意味は全く無いので、相場の
変動には全然関係が無い模様であった。
実用的視点からは、新ノクトを買った方が良いに決まっている、
それならば中古で12万円強位なので、ちょっと無理をすれば
買える値段なのだ。
で、ニコンに限らず、コンタックスやライカのレア品も
投機の対象となっている。まあ、実用派の私としては関係の
無い話だと思ってはいるが、それにつられて、他のセミレア
レンズも相場が上がってしまうのは、どうにも納得が行かない。

余談が長くなったが、本E100/2.8もセミレアである。
現代においては入手は難しいであろう。
性能的には殆ど問題の無いレンズだ、逆光耐性やボケ質は
オールドでは問題があっても当然だが、回避は容易だと思う。
けど、入手性が悪いので、これ以上写りをとやかく言っても
始まらないし、変に褒めたり、持ち上げたりして、もし相場が
上がってしまったら面白くは無い。
その視点からすると、今回の記事で紹介しているレンズは
全て失敗だったかも知れない。マニアック度を優先するばかり
現代では入手困難なレンズばかりになってしまっている。
欲しいと思った時に、すぐに安価に中古が入手できるモノで
無いかぎり、コスパを云々言っても始まらないかも知れない、
・・・やはり、ちょっと失敗だったと、反省している。
そういう事もあり、本記事の最後のレンズは、容易に入手可能
なものを選んでみるとしよう。

カメラは、CANON EOS 7D
レンズは、SAMYANG 85mm/f1.4 AS IF UMC
(新品購入価格 30,000円)
ミラーレス・マニアックス第64回、補足編第6回記事で
紹介した2010年代の韓国製MF単焦点大口径中望遠レンズ。

85mm/f1.4レンズ全般において、この新品価格は、どの中古
品よりも安価だ、ちなみに私が安く買った85/1.4としては、
α用AF85/1.4初期型、PENTAX FA★85/1.4、
NIKON Ai85/1.4S、CONTAX RTS Planar 85/1.4があり、
それぞれ、およそ4万円台の中古購入価格であった。
中には、十数万円で買ったものもある、例えばAiAF85/1.4D
ツァイスプラナー85/1.4ZF,ミノルタAF85/1.4GD Limited
CONTAX Nプラナー85/1.4、キヤノンEF85/1.2L等である。
けど、私がお気に入りの85/1.4は全て安価な価格帯のもの
ばかりだ、高価な方はNプラナーを除き、いずれもイマイチ
という評価であった。性能がイマイチであると高価な分だけ、
コスパの点数は酷いものになる。ほとんど、ぼったくりレンズ
として、ハイコスパのワースト側、すなわち、嫌いなレンズの
代表格となってしまうのだ。
本レンズ、SAMYANG 85mm/f1.4だが、上記のどれよりも
安価だ、これはMFだから安いという訳ではない、上記の
85/1.4には、MFレンズが3本含まれているが、それらの中古
よりもサムヤン新品は安価である。
一般的には「安かろう、悪かろう」と想像してしまうかも
知れないが、けれども、本記事でも散々書いてきたが、
「金属とガラスの塊を高く売る方がおかしい」のであって、
本来の部品代等から考えたら、レンズは1万円以下で作れても
不思議では無いのだ。

じゃあ視点を変えよう、このサムヤン85/1.4は、性能に比べて、
高いか安いか、つまりコスパが良いか悪いか?である。
まずスペックは凄い、なにせ85mm/f1.4だ。
最低でも10数万円とか、下手をすれば50万円もする物もある、
それが新品3万円で買えるならば、コストは十分に安い。
最短撮影距離が1mである、若干長いが重欠点ではない。
MFレンズである、まあそれはある意味どうでも良い。
と言うのも、85mm/f1.4は、どうせAFでもピントは合わない。
被写界深度が浅すぎて厳しい状況だ、具体的には、1mの
近距離で開放撮影する場合、その被写界深度は1cm強しかない。
これではAFでも精度が厳しく、被写体が人物等の場合は、
なおさら問題で、1cmも動かずにじっとしていられる人間は
まず居ない。
だから、85mmレンズを開放近くで使う場合、AFであろうが、
MFであろうが、いずれにしてもピントは、まぐれ当たり的に
しか合わない訳だ。
ボケ質破綻が少し出る、というか、ボケ質が全般的にやや汚い。
破綻回避技法は、今回使用のEOSのような一眼レフでは
使いにくい。一応本レンズには絞り環がついていて、
それは非常に良い長所であるが、一眼レフの光学ファインダー
では、あまり絞り込むと像が暗くなる、まあ、大口径レンズ
を絞って使うのでは意味が無くなってくるので、あくまで
ボケ質破綻の回避程度の範囲で、開放近くで絞りを使うのが
良いであろう。
それと、EOS 7DはEOSで初めて透過型液晶を用いた機種で
あるが、その光学ファインダーとしての性能は極めて劣悪だ。
(デジタル一眼レフ第10回記事参照)
このファインダー性能では、ボケ質破綻などの確認や回避は
もともと無理だと思った方が良い、それに、非純正レンズ
では、フォーカスエイドも効かない。
今回はあえてEOS 7DとMFレンズとして最も難しいレベルの
85mm/f1.4との組み合わせとしているのは、限界性能チェックの
意味もある(=使い物になるか否か?)
SAMYANG 85/1.4 の最大の弱点は、致命的と言えるほどの
逆光耐性の低さだ。少しでも逆光条件となっただけで、
盛大なフレアが発生する。これがどの程度問題となるかは、
ミラーレス第64回記事では、その問題の結論を出せず、
ミラーレス補足編第6回で追加検証を行う事となった。
その結果としては、
「撮影条件を整えれば逆光耐性は問題なし」となった。
ただ、繊細な条件コントロールは必須だ。

上手に使えば、なんとかなるレンズではあるが、そのように
上手く使うのは極めて難しい。難易度は全レンズ中でも
相当に高い方であり、上級者向けのレンズである。
値段が安いということは、性能が悪いという事のみならず
「使いこなしが難しい」という点もあるのだ、と実感させ
されるレンズでもある。
そうなると、コスパが良い否か?という評価についても、
ユーザーの技量によって変わってくるのかも知れない。
もし、ビギナーがこのレンズを使った場合、うまく使い
こなせず、コスパの評価は最低点になるかもしれない・・
本レンズが買いか否か?というのも、そのあたりが非常に
強く影響する、使いこなせるのであれば良いのだが、
やはり、かなり難しいレンズなので、場合により買っても
無駄になってしまうリスクを覚悟しておく必要があるだろう。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、AFマクロレンズを紹介していく事にする。