コストパフォーマンスに優れ、かつマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。今回第11回目は、
MF単焦点広角レンズを4本紹介する。
まず、最初のシステム、

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、OLYMPUS OM SYSTEM G-ZUIKO AUTO-W 28mm/f3.5
(中古購入価格 9,000円)
ミラーレス・マニアックス第23回記事で紹介した、
1970年代のMF小口径単焦点広角レンズ。

前回記事、AF広角編に引き続き、MF広角レンズの場合も
”広角の焦点距離”の定義が、使用するカメラ側のセンサー
サイズのバリエーションの多さの理由で難しいが、そのあたり
はアバウトに考える事としよう。
それから、銀塩MF時代のレンズともなると、現代のデジタル
一眼レフには、マウントアダプターを介して装着するのも
マウント等の条件によっては、なかなか難しい。
よって、今回の記事では、母艦は全てミラーレス機だ。
で、NEXシリーズやX-E1は、APS-Cサイズのセンサー機なので、
画角は各々1.5倍相当となる。また、μ4/3機の場合は2倍相当
となるので、銀塩時代の広角焦点距離であっても、これらの
母艦を使うと、いわゆる標準画角となってしまう。
例えばフルサイズ機を使えば、元々の銀塩時代の焦点距離の
ままの画角で撮影する事が出来、そのあたりの心理的違和感は
少ない。
けど、フルサイズ機では、これらの時代の広角レンズに
たいてい存在する画面周辺の性能低下(周辺光量落ちや
周辺収差等)がモロに出てしまうし、ミラーレスのフルサイズ
機では、テレセントリック特性や内面反射の問題もかなり大きく、
母艦とレンズの組み合わせの条件によっては、ゴーストも
頻繁に発生する。
非フルサイズ機であれば、画面周辺部分はカットされるので、
逆に画質的なメリットは出てくる。おまけに非フルサイズ
ミラーレス機は母艦としては安価でコスパが良い。
まあつまり、そのあたりは「良し悪しある」という事である。

さて、OM 28mm/f3.5であるが、銀塩OM全盛期の極めて
ポピュラーな広角レンズである。
その特徴はOMシリーズのコンセプトである小型軽量な事は勿論、
開放f値等で無理をしない設計で、そこそこ良く写るレンズで
ある事だ。
f3.5という開放f値は銀塩機OM-1やOM-2の1/1000秒シャッター
でISO100級のフィルムで使用する上ではちょうど良かった。
しかも当時の撮影技法では、28mmレンズは、f8位に絞って
パンフォーカス化して使う事が一般的であっただろう。
多数のOMユーザーが使用したレンズであるので、現代の中古
市場における玉数も豊富だ、よって、中古相場も安価であり、
だいたい1万円以下で入手可能であろう、
コスパは極めて良いレンズと言える。
だが、現代の中古市場でのOMレンズは、発売から齢40年以上を
経過したものも多く、程度の良い個体は少なくなってきている。
特にカビ等が問題になり、3000円前後の相場で売られている
CランクのOMレンズは、大体そう(カビ、曇り、ゴミ等)だ。
逆にABランク等の程度の良い個体は、ポピュラーなレンズでも、
1万円を超える相場になってしまう事が多い。
狙い目は微妙にランクの低い(ややカビ有り、ややゴミ有り等)
もので、そうしたレンズを4000円とかの価格で買えれば最も
価格的な面では得なのだが、購入時にレンズを見極める眼力が
必要となるので、ビギナーには少々難しいかも知れない。
まあでも、今時、このようなOMレンズを欲しがる人は、相当の
マニアであろうから、中古レンズの見極め位は出来るだろう。

それと、OMレンズを紹介する記事で良く書いて来た事だが、
OM単焦点レンズには同一焦点距離で、開放f値の明るい
高級品と、暗い普及品の2本が同時ラインナップされている
場合が多い。
その際、必ずしも開放f値の明るい方が高性能(高描写力)か?
と言うと、そんな事も無い。いや、むしろ開放f値の暗い
レンズの方が良く写る場合も多々ある。
当時、1970年代頃にはレンズの大口径化が進んだ時代であり、
標準レンズは開放f1.2級の物も各社からラインナップされていた。
まあ、そういうトレンド(流行、時代背景)であったから
大口径版レンズは高価だった(付加価値が高い=高く売れる)
と思われる。
まあ、高性能版と言うより、高スペック版と言い換えた方が
良いであろう。
で、現代の中古市場では、その高スペック版のOMレンズは、
ほとんど流通しておらず、たまに出てきても、恐ろしく高価な
プレミアム相場となってしまっている。
まあ、レンズにもよるが、最低5~8万円程度になる事もある。
けど、これらはマニア向けとか、コレクター向けという
要素が強く、前述のように値段が高いからといって、必ずしも
良く写るものでは無いケースも多々あるので要注意だ。

OM28/3.5の話に戻るが、総合的には、描写力の点では
大きな弱点は無く、最短撮影距離も30cmと標準的だ。
開放f3.5とやや暗いので、近接撮影でも大きな背景ボケは
得られにくい。
レンズとしての作りは良く、かつ安価であるので、まあ
コスパは十分に良いレンズだと思われる、
ただし、ありふれたレンズでもあるので、マニアックさは
殆ど無いとも言えるが・・
OMシステムのレンズを集める(知る)上では、歴史的にも
重要なポジションを占める意味はあるので、そういう視点
では、抑えておくのも良いかも知れない。
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さて、次のシステム、

カメラは、FUJIFILM X-E1
レンズは、NIKON シリーズE 35mm/f2.5
(中古購入価格 18,000円)
ミラーレス・マニアックス第9回記事で紹介した、
1980年代のMF単焦点準広角レンズ。
シリーズEとは、1980年代前半に発売された「リトル・ニコン」
ことNIKON EM用のレンズ群の名称だ。

最大の特徴は、マニアックかつ、そこそこ写りが良い事である。
マニアックさというのは、1980年代のニコン機は、F3等の
本格的なカメラが人気であり、つまり、ブランド力が高かった
と言う事でもあり、コスト(スペック)ダウンを図った
EM等の「シリーズE」は不人気であった、という点がある。
この為、シリーズE製品の一部は、「日本国内ではウケない」と
ニコンも判断したのか、海外(主に米国)への輸出専用だった
物もある。
1990年代後半の第一次中古カメラブームにおいても、
シリーズEは、中上級マニアが狙うシステムであり、
一般的な初級マニアや投機層が注目するものではなかった。
本レンズの購入価格は18000円と、現代の感覚からはやや高価
すぎるが、まあ、購入したのが、その1990年代のブームの最中
であったので若干プレミアム相場になっていたのだと思われる。
その後、2000年代には、このレンズはほとんど中古市場では
見なくなり、レア品となってしまった。私の知人も長く
本レンズを探していたが、あきらめた模様であった。
近年、2010年代になって、関西の中古店で3度程、本レンズを
見かけた事がある。相場は昔よりかなり下がって5000円前後と
1万円前後であったと思うが、安価な方は、カビ等による、
ジャンク品に近い状態だったと思う(いずれもすぐ売れた模様)
依然、なかなか入手しずらいレンズだと思うが、1万円程度で
買えるのであれば、まあ、マニアックさはもとより、コスパも
そこそこ良い、と見なす事ができる。

弱点は、外装がプラスチックで、これはコストダウンと軽量化
を図っていると思わるが、さすがに安っぽい作りである事だ。
(この個体は、ヘリコイド前部の飾りリングが外れて、接着剤
で補修した)
まあでも、現代のAF「エントリーレンズ」よりかは、きちんと
レンズとしての外観が備わっている点がまだ救われる。
例えば、前記事AF広角編で紹介した、本レンズと同等の相場
である SONY DT35/1.8等は、レンズには勿論絞り環も無く、
絞り指標も無い事はもとより、ピントや被写界深度の指標も
無く、のっぺりとしたデザインで、かつヘリコイドもスカスカで
およそレンズとしての「所有満足感」は欠片も無い。
まあでも、そのレンズは性能的にはかなり優れているので、
そうした「モノ」としての価値感覚が少なくてもまだ許せる。
本レンズの場合は、準オールドのMFレンズであるので、やはり
作りの良さを期待してしまうので、そういう視点からの
「安っぽさ」が気になるだけである。
ちなみに、「ミラーレス名玉編」で紹介した第20位までの
レンズは、5項目の総合評価の平均が5点満点で4点以上のものが
ノミネートされたのだが、本レンズの総合評価平均は、4点に
わずかに届かない3.8点であって、あと一歩で「名玉」として
紹介されただろうというレベルであった。
すなわち、評価点の項目で、購入価格の18000円だけがネックと
なってコスパの評価項目が下がってしまったのが、その原因で
あったのだ。

「シリーズE」の単焦点レンズは、他に28mm,50mm,100mmが
存在するが、28mmは輸出専用だったので国内では入手しにくい。
50mmは、Ai-S 50mm/f1.8(ミラーレス第21回記事)と同等の
レンズで外観が異なるだけだ、このレンズはなかなか写りが良い。
(ちなみに、そのままAF化されて、AiAF 50mm/f1.8となった
→ハイコスパ・マニアックス第1回記事)
また、E100mm/2.8(ミラーレス第21回記事)も、モノコート
ながら優秀な写りを見せる。ニコンには珍しい100mmという
焦点距離で、なかなかマニアックだ。
現在、これらシリーズEの単焦点レンズ群は、中古市場に
おいてはセミレア品となっていて入手が難しいが、まあ、
程度の良いものを見つけたら買いであろう。いずれも1万円台
前半迄であれば、コスパは良いと見なすことができると思う。
なお、Ai対応レンズであるから、ニコンのデジタル一眼に装着
する際は、高級機でないとAiレンズには対応していない。
(装着は出来るが、露出計が動作しない)
ある意味、ミラーレス機で使った方が使いやすいかも知れない。
(ただし、今回使用の FUJI X-E1は、MF性能に優れるカメラでは
無いので、若干の使いにくさはあった。他の、例えばNEX-7を
使えば快適に使えたかも知れないが、同一記事で同じカメラを
複数回使いたくなかったという理由もある)
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さて、次のシステム、

カメラは、SONY NEX-3
レンズは、COSINA 20mm/f3.8(Macro)
(新品購入価格 13,000円)
ミラーレス・マニアックス第14回、第74回記事で紹介した、
1980~1990年代のMF単焦点超広角レンズ。
本レンズは、異なるマウントで2本所有しており、いずれも
1990年代に新品で購入したものだ。

銀塩MF時代では、広角といったら普通は28mmまでであり、
それ未満の焦点距離のレンズは、純正の場合、急に高価になる
という問題があった。この為、COSINAをはじめSIGMAや
TAMRON,TOKINAといったサードパーティ・レンズメーカーは
24mm以下の焦点距離のMF/AF単焦点レンズ群を、各メーカー
のマウント向けに販売していたのである。
本レンズも1990年代に、そういう目的で購入したものだ。
具体的には、MFのCANON FDと,MINOLTA MDマウントにおいて
純正超広角レンズが高価で入手しずらかった為の対応である。
ちなみに、より広角の17mmだが、TAMRONからアダプトール2
交換マウント対応のSP17mm/f3.5(ミラーレス第8回記事)
があったので、かなり重宝した。
ただ、TAMRON、SIGMA、TOKINAは1990年代のAF時代ともなると、
超広角単焦点レンズも、コストアップからか、安価なレンズ製品
は作れず、仕様も描写性能も高性能化するコンセプトに転換し、
結果的に価格もかなり上がってしまっていた。
COSINAは、AF時代に入ってもなお、MFレンズを作り続けて
いたが、特に本20mm/f3.8は実勢新品価格が1万円台前半と
安価であり、1990年代の第一次中古カメラブームにおいては
マニア層に、そこそこ注目されていたレンズである。
マニアの注目点は「安価な価格で、超広角ラインナップの
穴を埋めることができる、おまけに、値段の割りに写りも
そこそこ良い」というあたりだった。
まあ、うるさく言えば、画面周辺での諸収差が目立つという
弱点はあったのだが、値段が値段なので、皆、そのあたりは
「不問」としていたと思う。
画面周辺の画質問題は、前述のように、今回使用のNEX-3の
ようなAPS-C機においては画面周辺が写らない為、課題の
改善が図れる。ただし、超広角という画角にはならず、
30mm相当の平凡な広角画角となる事と引き換えだ。
(トリミングしている事と等価になる。銀塩時代においては
トリミングからの拡大プリントでの閲覧は画質劣化が伴ったが、
デジタルにおいては”閲覧条件が揃えば”、トリミングでの
画質劣化は原理的に起こらない)

本レンズは、最短撮影距離が20cmと、そこそこ寄れる事も
特徴の1つである。ただし、最短撮影距離には「焦点距離の
10倍が目安」という性能評価の法則があり、つまり、レンズの
焦点距離mmを、cmに変えた距離より寄れれば高性能だ。
焦点距離が20mmで最短20cmなので、まあ標準的な性能で
あると言える。COSINAでは本レンズにMACROの称号を与えて
いたが、現代の感覚では、これをマクロレンズとは言い難い。
しかし、APS-C機やμ4/3機で使うと、同じ(最短)撮影距離
において被写体はフルサイズ機よりも大きく写るので、見かけ上
の撮影倍率は上がる。今回使用のNEX-3は、デジタルズームは
AF単焦点でないと出来ないという欠点があるが、他のNEX/αや
PANA Gシリーズ等のμ4/3機では、本レンズを装着しても
デジタルズーム機能が使えるので、ほぼマクロレンズ並みの
扱いは可能だ。
広角レンズで、何故寄れる事が要求されるか?といえば、
広角・近接撮影における背景取り込みの調整は、できるだけ
被写体に寄れないと、それが難しいからである。
ビギナーの場合、広角レンズを中遠景を広く撮るという目的
にしか使わないと思うが、広角レンズ(広角ズーム含む)で
近接撮影を行ってみれば、その際に、最短撮影距離がどれだけ
構図や撮影アングルの自由度に強く影響するかが、わかるで
あろう。
ただ、今回使用のNEX-3との組み合わせにおいては、そうした
寄れる広角レンズとしての特徴は出難い。中途半端な広角
画角により、被写体における用途も、なんとなく不明だ。

総合的には、本レンズが高コスパかどうか?は、実は微妙な
ところがある。フルサイズ機で使うと超広角だが収差が目立ち、
非フルサイズでは収差は減るが、画角が平凡な広角~準広角だ。
また中古市場での入手性もあまり良く無い。安価なレンズで
あったので、マニアは売却せずに死蔵したままにしているの
かも知れない。
結局、本レンズの必要性は不明であるが、マニアック度が高い
ので、見つけたら抑えておくのも良いかも知れない。
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次は今回ラストのシステム、

カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7
レンズは、KONICA HEXANON AR 35mm/f2.8
(新品購入価格 10,000円)
ミラーレス・マニアックス第8回、第60回記事で紹介した、
1970~1980年代のMF単焦点準広角レンズ。
ミラーレス第60回は、最強の35mmレンズを決める記事で
あった、1位こそ逃したが、最終候補の4本にノミネートされた
事は、本レンズがコスパ等の評価が高かった事実を示している。
「ミラーレス名玉編」では、5つの5点満点の評価項目の平均点
が4点を超えるものが20位以上のレンズとなって紹介されたが、
本レンズは、平均3.8点で、僅かにランクインはならなかった。

評価が低かった項目は「必要度」であり、まあ、確かに、
世の中に、35mmレンズは沢山ある。
銀塩一眼やレンジファインダー機又はデジタルのフルサイズ機
では、35mmは使いやすい準広角画角となる。
銀塩単焦点コンパクトも、その多くが35mmレンズを搭載して
いる。すなわち、もし使用レンズの焦点距離がたった1つしか
選べないような状態では、35mmを使うのが最も汎用性が高い、
という事になるのだろう。
また、APS-Cデジタル機では35mmレンズはおよそ50mm程度の
いわゆる「標準画角」となり、中上級ユーザーは銀塩時代で
つちかった画角感覚が活かせるというメリットがあった。
そして、銀塩一眼からデジタル一眼への移行が進んだ2000年代
前半では、初期デジタル一眼レフの殆どがAPS-Cサイズの
センサーを搭載していた為、銀塩時代の50mm標準が
75~80mm相当の、やや狭い画角になってしまった。
これを嫌った一部の中上級ユーザーは中古市場で35mmレンズ
を買い漁った。そして、すぐに業者等による35mレンズの
買占めも起こり、2000年代後半に至るまで、中古市場では、
35mmのAFレンズは完全な供給不足となった。
デジタル一眼では使いにくいと思われるMF35mmレンズ
ですらも、だいぶ中古の玉数が減った位であった。
まあ、つまり35mmは「必要性が高いレンズだ」とは言えるの
だが、2000年代中頃以外の時代では、いつの時代でも入手
しやすいレンズであったが故に、マニアであれば、
数本~十数本の35mmレンズを保有している事が普通だ。
ミラーレス・マニアックス記事でも、およそ20本程の35mm
レンズを紹介してきていると思う。だが、そうした中で、
どうしても本レンズ HEXANON AR 35mm/f2.8でなくては
ならないと理由があまり無いのだ。
「記事で紹介する」という視点よりも、実使用上での、
本レンズの用途の少なさは。より顕著だ。
「今日は35mmレンズを持って行こう(必要だ)」といった
状況において、わざわざ本レンズにこだわる必然性が無い。
なのでまあ、「必要度」という意味での評価点が下がって
しまったのだが、もし仮に、MFの35mmレンズは本レンズしか
持っていなかったとすれば本レンズの所有価値は高いと思う。
なにせ、前述のミラーレス第60回記事の最強35mm選手権で、
MFレンズとして唯一ノミネートされた位なのだ。
まあしかし、本レンズの最大の特徴は「マニアック度」で
あろう、ヘキサノンという名称は、やはりマニア心をくすぐる
点がある。
描写力、という観点からしても、ヘキサノンの名に恥じない
写りであり、1万円という中古購入価格からすればコスパは
良いと思われる。

ところで、私は、35mmという焦点距離は「コニカのお家芸で
ある」ようにも思っていたが、意外にそうでもなさそうだ。
銀塩時代には、いくつかのメーカーでそういう傾向があり、
例えばオリンパスでは35mmのレンズに優秀なものが多かった。
またリコーは28mmである事は、GRシリーズ等を見れば明白で
あろう。
ではコニカは何mmが主力なのか?というと、あまりはっきり
しない。
コニカは、1903年(注:ライト兄弟の初飛行の年)に国産初の
カメラを発売した後、2006年にカメラ事業から撤退するまで、
100年以上のカメラの製造販売の歴史を持つ超老舗のメーカーで
あった。銀塩135判フィルムのMF時代には40~50mmの
焦点距離の単焦点レンズを搭載したカメラが多かったが、
1980年代以降のAF時代では、35~38mmの単焦点コンパクトが
多かった。
また、コニカは基本的にフィルムメーカーでもある為、
フィルムのフォーマットのバリエーションは昔から多かった。
1990年代後半~2000年代前半の銀塩終焉期においては、
コニカは、新規格のAPSフィルムにも注力していて、当時の
コニカ製コンパクト機も、殆どがAPS(IX240)対応であった。
よって、搭載レンズの焦点距離も、フィルムフォーマットに
応じてまちまちであり、なんとも「これがコニカらしい」
という焦点距離は無さそうである。
ただまあ、コニカはその長い歴史の中の初期、高性能なレンズに
「ヘキサノン」(またはヘキサー)の名前を冠するネーミング
戦略があった為、ヘキサノンという名前自身に付加価値が
あった。
しかし「ヘキサノンAR」の時代、つまり1960年代~1980年代
においては、ARマウントレンズの全てにヘキサノン名称が
つけられていたので、その神話も薄れてしまっていた。
が、マニアの間では「ヘキサノン」には十分なブランド
バリューが残っていて、1990年代の第一次中古カメラブームの
際にも、新規に発売されたレンジ機用の新型「ヘキサノン」は
高値で取引されていた。
その後2000年代、世の中は急速に変貌し、カメラはデジタル化
され、コニカはミノルタと合併後、前述のように100年以上の
カメラ事業の歴史を閉じてしまう。
2010年代の現代、既に「ヘキサノン」という名前は、忘れ去られ
かけているかも知れない。
だが、かつて「ヘキサノン」という名レンズが存在した事実は
歴史的な意味が十分にあると思う。
上級マニアに言わせれば、本レンズのようなARマウント版は、
いわゆる「量産ヘキサノン」であって、本物のヘキサノンは
1950年代の元祖Lマウント版か、あるいは1990年代後半の
復刻L/Mマウント版のものを指す、と言うかもしれないが、
確かにそれらは、マニアック度は高いかも知れないが、なにせ
コスパが悪すぎる。私は2001年発売の限定ヘキサーRF+M50/1.2
というセットを一度購入したが、新品定価が40万円以上という
とんでも無い高価なものであった、2002年頃には店頭在庫で
持て余した模様であり、約半額でそれを新品購入したが、
レンジ機ではf1.2という大口径レンズは事実上使用困難であり、
すぐに知人に適価で譲渡してしまっていたのだ。
で、2000年代前半からのデジタル一眼時代では、ARヘキサノンも
レンジ機用ヘキサノンも、デジタル機での使用が事実上不可能
であった。この期間に多くの「ヘキサノン」は、処分されたり
忘れられたりしてしまったのであろう。私は、ARマウントでの
数本のヘキサノンを残してあったが、実際にも、ほとんど忘れて
いたと言っても過言では無い。が、2010年代以降、ミラーレス機
の普及により、各ヘキサノンはマウントアダプターで使用可能と
なり、これらの復活を見た。
だが、その間およそ10年、前述のように、コニカも、もはや
カメラ事業から撤退しており、マニアもヘキサノンは手放して
いただろうし、新規のユーザー層には、全く知られていない
ブランド名となっていた。

本レンズ HEXANON AR 35mm/f2.8は、最強の35mmレンズ
とは言いがたいし、コストもあまり安価であるともいえない、
ただ、こうしたコニカやヘキサノンの長い歴史の中、1つの
時代の重要な証人であるとも言えるであろう。
「マニアック度」は高い、コスパをどうみるかは微妙だが、
このレンズの事を知っておく意義は十分にあると思う。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、AF中望遠レンズを紹介していく事にする。