第十一回:「和歌浦ドラゴンボート大会 最後の死闘」
好評(?)連載中の「ドラゴンボート」特集
第十一回は、10/10に行われた和歌浦大会のレポートである。
和歌山マリーナシティ・・・
テーマパーク「ポルトヨーロッパ」や、海の幸が食べれる「黒潮市場」を含む
総合エンタティンメント施設である。
過去数回遊びに行った事があるが、大阪からでは少々遠い。
最寄の駅はJRの海南である、海南からはバスで十数分。 南海和歌山市からも行ける。
まあ、しかし着いてしまえば、遊び場所には事欠かず、丸一日遊んでも足りない場所
である。
今日は、このマリーナシティの水域でのドラゴンボート全国選手権大会である。
今年最後のメジャー大会とあって、行きの電車の中でも、今年の数々の熱戦や選手達の
様子が思い浮かぶ。 天神、関空、琵琶湖・・ どれも熱い戦いだった・・
ドラゴンボートはまだ一般的にはあまり知られていない競技であるが、その熱気たるや
ものすごいパワーがあり、私がとても好きなスポーツである。
ずっとその大会を撮らせてもらっている事は、まさにカメラマンとして幸せな事であり、
同時に出来ればこの素晴らしい競技を多くの人に知ってもらいたいと考えている。
私のブログでドラゴンボートの記事の連載を始めてから、今回ですでに11回目である。
ドラゴンボートの撮影を通して、写真を撮る事についても色々考えさせらる事もあった、
一番重要だったことは、ともかく自分も選手あるいは大会の一員になって、一緒に楽しみ
ながら撮る事であった。 最初の頃は遠くからへっぴり腰で望遠で撮るだけであり、
ごく一部のチーム以外の選手とはなかなか話しができなかった。 でも、撮影の経験を
重ねるにつれ、競技の中に同化するという事を学んでいった。
今回の大会は今年の撮影の集大成である、ボートの試合という点では同じなのであるが、
匠流の目線での撮影を心がけようと思った。
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10月・・ もはやマリンスポーツには厳しい季節である、事実上のシーズンオフである、
それでも昨日はかなり暖かい陽気であったのが、今日はあいにくの雨である、気温も
20度を下回り、肌寒い。
前回の琵琶湖大会から3週間もたっていないというのに、前回はTシャツ1枚でも汗が
噴出す撮影だったのが、今日はジャンパーを着込み、雨なので(大会記念で作った)
タオルを首に巻きながらの撮影である。
さて、開会式だ、いつものように、銀塩28-90mm相当の標準ズームと300-600mm相当
の超望遠ズームをそれぞれデジタル一眼レフにつけて撮影を始める。
標準ズームは、選手と近接したスナップ撮影、超望遠ズームは、遠距離のボート撮影が
メインとなる。アシスタントはドラゴン撮影3回目のU嬢である、U嬢は、デジタル一眼に
銀塩42-300mm相当の高倍率ズームでスナップから近距離のボート撮影を担当。
時折雨がパラパラと降り、また止む、そんな天気の繰り返し。
どうやら和歌山大会では雨がよく降るらしい、大会の実行委員の方は自ら雨男と仰って
いるようだが(笑)まあ、どうせ水上競技であるから、多少の雨は関係が無い。
ドンドンドン・・さて、いよいよドラゴンの太鼓の音がひびく。
次々と予選のチームが走り出す、今回は全部で40チーム程であり、男女混合とオープン
のみである、今年で6回目、進行も手馴れたものであるし、他の大会のように芸能人
やチアガールのゲストを呼ぶわけでもない、今年最後のメジャー大会を真面目に淡々と
戦う本格派の大会となっている。
したがって、あまり初心者のチームも参加していない、出るチームは全部強豪ばかりである。
女子やシニアのレースが無い分、チームも地区ごとに若干再編成されている、
だから、知らない名前の新しいチームでもメンバーは実はバリバリの一流どころを
集めたものであったりするので、競う方もさるものの撮る方も予選から気が抜けない、
内容の濃いレース展開となる。 取材に回ってもどのチームが強いのかわからない、
知った顔が多いチームは強いかというとそうでも無い、勿論個性的な選手と実力とは
関連しないし、チーム編成や合同での練習量も関係してくるのであろう。
・・・おっと、また個性的なおねいさんを発見したぞ・・・
発走前の集合場所に駆け込む。 選手は緊張している場合もあるので、あまり無理な
撮影は迷惑になる事はわかっているが、まあ、その場の雰囲気を見ながら撮れるよう
であれば撮りまくる。
まずは1枚パシャ。
そして、話ができるようであれば、話ながら、ローアングル仮想円錐ノーファインダー
でシャカシャカと撮る。
最近のドラゴンは派手なコスチュームを着込んでいるチームあるいは選手も目立つ。
「それは強さとは関係ないだろう?」と思うかもしれないが、派手なパフォーマンスは
他のチームを圧倒したり萎縮させたりする効果があるので、結構効き目があるのである。
今回は目立つおにいさん、おねえさんを中心に撮っている、下手をすると協会のHPに
載せられる写真はそんな変わったものばかりになるかもしれない(汗)
しかし、ここで言っておくが、ドラゴンボートは真面目な競技であるので、決して仮装大会
とかでは無いので、その点誤解なきように(笑)
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雨で機材が濡れたり、もちろん超望遠を傘を差しながら撮影は無理なので、びしょぬれ
になりながらの撮影で大変であるが、いつも言っているように、これは楽しい撮影なので
全く苦にならない。 選手達の笑顔を追いまくる、また追う、ひたすら声をかけて、
話をして、笑って、喜んで撮る、撮り続ける・・・・
ボート自体はあまり撮らなくなった、全体の3割くらいか?
慣れてくると選手達と色々知り合いになる、そのメリットを十分に生かして
選手達の素顔を捕らえることが私の撮影の使命だと思って撮る。
これはプロでも出来ない、いや、今回もお金を貰って撮影する以上はプロとしての
仕事であるが、匠として、他の誰にも出来ない撮影を目指しているのである。
次々と選手達に話しかけながら撮影を続ける。
・・・「ソルト&ペッパーのおねいさん・・今日は河童から編成? 調子はどう?」
・・・「楽打艇のおねいさん、今日はマスコットは? いつものポーズしてよ!」
・・・「琵琶湖ドラゴンのおにいさん、先日はカヨさんがお世話になりました・・」
・・・「金竜隊のおねいさん、あれ、今日は鼓手やるの? うん、がんばってな~」
・・・「もっこりドラゴンのおにいさん、チームウエア、すごいピチピチだねえ・・笑」
そんな調子の会話の中、「あ、匠さん、ブログ楽しみにしています」とか、
「私も美女に撮ってください・・」とか、匠ファンの方も少し増えてきたようで嬉しい
かぎりである。
・・・お、見つけたぞ、あそこにいるのはかの有名な、吹田龍舟の、H/G氏ではないか。
ちなみに、強豪である。 決してコスチュームは伊達では無いのである(笑)
もちろん、選手達は誰も手を抜いていない・・ もうすぐシーズンオフである、
皆今年最後の戦いで、燃え尽きるまで、漕いで、漕いで、漕ぎまくる・・・
レースを終えた選手達が帰って来て言う。。「寒いぞ~!」
気温は19度くらい、水上の方が温かいのであろうか? いや、あるいは、漕いで、
漕ぎまくったその熱気が陸上で急速に冷えるのであろうか?
私もTシャツに薄手のジャンパーであるが、雨に濡れても寒くは無い、走って、撮って、
この会場の熱気の中に同化してくる・・・
ジャンジャ~ン 次のレース開始のドラが鳴る、
今日も何十回と聞くこのシーン。 熱気で騒がしい会場もその一瞬だけは静まる。
和歌山大会は250m、1分少々の試合であるが、レース中に音楽が鳴るのが特徴である、
音楽は、1970年代のディスコから2000年前後のJPOPSまでの誰でも知っているような曲
をテンポを速めに現代風にアレンジしたものである、意外にと言っては失礼であるが、
以前音楽関連を生業としていた私が聞いても、なかなかレースの雰囲気にマッチして
いると思うし、試合の合間に同じように流れるBGM音楽もセンスが良いと思った。
さすがに6回もやっている和歌山大会、運営もなかなか慣れている。
ただ、厳密に言うとレース最中の音楽と、ドラゴンボートの太鼓とはビートが合わずに
専門的な耳には少し違和感があるが、まあそこまでは合わせるのは無理な話であるし、
別々のものとして聞く事もできるから、そういう野暮なツッコミはやめておこう。
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午後になると隣接する黒潮市場でも海の幸やバーベキューを楽しむお客さんが増えてくる。
食べながらすぐ横で競技をやっている様子に興味がある模様だ。
「なにあれ? ドラゴンボール? あ、ボートか?」
「へえ、あっち行くときはそのまま行って、あ、太鼓叩いて帰ってくるよ」
「1,2、3・・・ 20人くらい乗ってるなあ」
「おお、速い速い、それ、2番の船がんばれ~」
さすがに手馴れた和歌山大会、これでまたドラゴンボート競技のファンがだいぶ増えて
いくのであろう・・(笑)
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さあ、レースもいよいよ後半戦。
ドンドンドン・・ 太鼓の音と、選手の掛け声と喚声とがMIXして、
会場はレース毎に熱気につつまれる。
「がんばれ~、行け~」チームメイトだろうか? 数百メートル先で漕いでいる選手達に
届かんばかりの大声をはりあげて応援している。
こんな光景はレースが終盤に差し掛かるにつれてどんどん盛り上がりを見せる。
予選で敗退した遠方のチームは帰路に付く者もいる。
大会開始当初1000数百人いた選手達も、テントがひとつ減り、ふたつ減りして、
決勝のころには、半分以下に減っているのであるが、その分盛り上がりは倍以上あるので、
トータルとしての熱気はむしろ増していく。
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決勝前、緊張感がピークに達する。
さすがに出走前のこの選手達のスナップ撮影は難しい。
望遠を持ち出して遠距離から選手達をとらえたりする。
あるいは、緊張感をほぐすためにリーダーが面白い事をやりだしたチームを見て、
すかさず近づいて撮影を敢行する。
皆、目指すのは勿論「優勝」の2文字である。
大会本部の立派なトロフィがその手に渡るのを待って光っている。
オープン決勝・・・ 前日に行われた地元和歌山の地区予選を勝ち抜いた和歌山のチーム
「田辺の谷地自動車」が残っている、強豪のブラックシャドウズや金竜隊を押さえれば
快挙であり、地元に錦を飾れる。
会場全体の緊張の空気がピーンと張り詰める。
「4号艇、下がって・・・ 3号艇、少し前へ・・・」 大会役員から指示が出る。
「スタート1分前」 ジャンジャンジャ~ン、銅鑼が響く。
「オールクルー、アテンション・・・・・ レディー、ゴー!」
・・・ドンドンドン
「ワ~!」 「ウォ~!」
・・・ドンドンドン
興奮で何がなんだかわからない・・・ ともかくシャッターを切る、撮る。
・・・ドンドンドン・・・ 「ワ~!」
いつもながら決勝はコンマ何秒を争う接戦となる。
30秒、40秒・・・ 時間の進行がだんだんスローになる錯覚が出てくる。
・・・ドンドンドン。 撮る、撮る・・・ 「ウォー、がんばれ~」大声援がこだまする。
・・・・・・・・・
どんどん遅くなった時間が、ついに止まったようになり、何も聞こえなくなる。
緊張感が極限まで高まると全部がスローモーションに見えてくる。
カシャ・・・・・カシャ・・・・・・ 静寂の中、シャッターを切りつづける。
会場全員の視線がゴールラインを通過するドラゴンの首に注がれる。
・・・カシャ~。 ゴールの瞬間を600mm望遠が捉える。
・・・・
ほんの一瞬の後、急速に時間の流れは回復して。
ゴールを過ぎた地元和歌山の「田辺の谷地自動車」のボート全員がパドルを上げて
歓喜のパフォーマンスをしている様子が見えた。
カシャ、カシャ・・ また撮る。 声が聞こえる、歌も聞こえる。
ウイニングランの後、選手達が帰ってくる、もみくちゃになる。
カシャ、カシャ・・ 撮る、ともかく撮る・・・
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・・・雨が強くなった、でも表彰式でまた盛り上がる、
「オープンの部、優勝は・・・・」
「ウヮー!!」 チームの喜びと感動が全部この一瞬に込められる。
大会に参加した選手達、関係者全員の満足そうな笑顔がそこにある。
・・・終わった・・・
協会のPCにCFから写真データをコピーして今日の撮影の役目は終わった。
アシスタントのU嬢も沢山撮った様子だった。
二人してフラフラになって、バスと電車を乗り継いで帰る。
快速の電車に乗って大阪に向かう、いつのまにか2人とも爆睡している。。。
途中目が覚めると、U嬢も満足そうな笑顔で寝ていた。
こうして、今年の「熱い季節」は幕を閉じた。
今年も1年、大会カメラマンとして責任を果たしたと同時に、沢山の人達に出会え、
沢山の笑顔に包まれて、私も写真をやっていて幸せであったとつくづく思った。
「ドラゴン撮影は腕や機材じゃないよ・・・」 いつのまにか、またJRの中で寝ていた。
家に帰り着くころ、ブロガー諸氏や、撮影仲間から沢山のメールが来ていた。
「ドラゴン撮影お疲れ様、雨で大変だったでしょう・・・」
返事を打ちながら、幸せをかみしめていた、そして途中でそのままベッドで眠っていた・・
【補記】 第6回和歌浦ドラゴンボートボート選手権大会結果
◇男女混合の部
優勝 関西龍舟(西宮市) 1分06秒75
準優勝 Maihamagawa椿(東京都) 1分07秒32
3位 琵琶湖ドラゴンボートクラブ(大阪市)1分07秒72
4位 チーム絆(相生市) 1分09秒22
5位 吹田龍舟倶楽部(吹田市)1分12秒83
◇オープンの部
優勝 田辺の谷地自動車(田辺市) 1分07秒34
準優勝 金竜隊(境港市) 1分08秒99
3位 ブラックシャドウズ(大阪市)1分09秒72
4位(同着) 浦島太郎25(和歌山市)1分16秒02
4位(同着) SALT&PAPPER(大阪市)1分16秒02
【追記】 業務連絡です。
琵琶湖ドラゴンボート、フォトコンテスト出品希望の方は、締め切りが迫っておりますので、
速やかに四つ切りもしくはワイド四つ切りで、滋賀県ドラゴンボート協会宛、作品を発送
してください。 協会の櫻井氏によりますと、すでに大津市の市民会館?あたりの施設に
展示の為のスペースを準備しているとのことです、入賞者には勿論賞金がでます。
さらに、来年の琵琶湖大会のポスターや各種広報の紙面に掲載される予定です。
なお、私の撮った写真は全部HP用の解像度ですので(汗)、皆様の写真が頼りです。